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明細書 :赤外線2波長処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257436号 (P4257436)
公開番号 特開2007-240164 (P2007-240164A)
登録日 平成21年2月13日(2009.2.13)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成19年9月20日(2007.9.20)
発明の名称または考案の名称 赤外線2波長処理方法
国際特許分類 G01J   5/06        (2006.01)
G01J   5/48        (2006.01)
FI G01J 5/06
G01J 5/48 E
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2006-058869 (P2006-058869)
出願日 平成18年3月6日(2006.3.6)
審査請求日 平成18年3月6日(2006.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】岡村 壽洋
【氏名】長嶋 満宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開2006-162369(JP,A)
岡村 壽洋 他,“赤外線2波長処理方式(その1)の研究”,防衛庁技術研究本部技報,2006年 2月,第6926号
調査した分野 G01J5/00-5/62
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
第1及び第2の波長帯の赤外線について2波長赤外線カメラで撮像した目標画像の画素又は画素群毎の出力値に2波長演算処理を行うことにより、目標までの距離が不明でも目標の温度分布を算出する赤外線2波長処理方法であって、
前記第1及び第2の波長帯での、波長λに依存して変化する単位距離あたりの大気減衰率k(λ)を算出し、
前記第1の波長帯(λ=λ1-~λ1+)について、波長λ1の目標の赤外線放射強度Aが距離xだけ伝搬し減衰した後の放射強度S(λ)を下記式
(λ)=A(λ)exp(-k(λ)x)
より求め、前記第1の波長帯全体の放射強度Sを、λ=λ1-~λ1+にわたりS(λ)を加え合わせて求め、
同様に、前記第2の波長帯(λ=λ2-~λ2+)について、波長λ2の目標の赤外線放射強度Aが距離xだけ伝搬し減衰した後の放射強度S(λ)を下記式
(λ)=A(λ)exp(-k(λ)x)
より求め、前記第2の波長帯全体の放射強度Sを、λ=λ2-~λ2+にわたりS(λ)を加え合わせて求めることにより、
前記2波長赤外線カメラの前記第1及び第2の波長帯での出力値となる前記放射強度S,S目標の温度及び距離との間の関係式を導出し、
測定された前記2波長赤外線カメラの出力値を前記関係式に代入し、2元非線形連立方程式を解くことにより、目標の温度を演算することを特徴とする赤外線2波長処理方法。
【請求項2】
前記2波長演算処理を実施するために、前記2波長赤外線カメラの前記第1及び第2の波長帯に対応した感度帯域内において波長の違いによって大気透過率が一定でなくても温度、湿度及び視程から求められた波長毎の大気透過率を既知の値とする請求項1記載の赤外線2波長処理方法。
【請求項3】
前記2波長演算処理において、目標の温度決定後又は目標の温度決定前に、目標までの距離を算出する請求項1又は2記載の赤外線2波長処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、距離が不明な目標から放射され、大気を伝搬して減衰した2波長赤外線を2波長赤外線カメラで撮像し、赤外線2波長処理を行うことで、1波長では不可能な、目標の正確な温度分布を求めることが可能な赤外線2波長処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、赤外線画像センサを用いて赤外線放射率が既知の目標の温度分布を測定するためには、目標からの赤外線を赤外線センサで捉え、センサの各画素が捉えた目標の赤外線放射量を測定するとともに、大気の減衰率及び目標までの距離から赤外線の減衰量を算出し、測定した赤外線放射量にその減衰量を加算して、目標の放出する正確な赤外線放射量から目標の温度分布を求めなければならない。つまり、大気の赤外線減衰率及び目標までの距離が既知でなければ、目標の温度分布を正確に測定することができない。
【0003】
しかしながら、野外測定においては、目標までの距離を正確に求めることが困難な場合が多く、その場合には、目標までの距離を任意に設定することで、目標の温度を測定していた。しかし、この方法では誤差が大きく目標の温度を正確に求めることは困難であった。
【0004】
なお、2波長赤外線画像を取得する装置としては、下記特許文献1等が知られているが、距離が不明な目標から放射された2波長赤外線の画像処理により、目標の正確な温度分布を求めることを目的としたものは見当たらない。
【0005】

【特許文献1】特開平9-166400号公報「2波長分離光学系による2波長赤外線画像ホーミング装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、異なった2波長帯域の赤外線を用いることで、目標までの距離が不明であっても、波長毎の大気透過率データ(例えば大気の温度、湿度及び視程で決定できる)から、目標の温度を正確に求めることのできる赤外線2波長処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、この時、大気透過率が2波長赤外線カメラの感度帯域において一定でなく、波長毎に大きく変動していても適用可能な赤外線2波長処理方法を提供する。
【0008】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の赤外線2波長処理方法は、第1及び第2の波長帯の赤外線について2波長赤外線カメラで撮像した目標画像の画素又は画素群毎の出力値に2波長演算処理を行うことにより、目標までの距離が不明でも目標の温度分布を算出する方法であって、
前記第1及び第2の波長帯での、波長λに依存して変化する単位距離あたりの大気減衰率k(λ)を算出し、
前記第1の波長帯(λ=λ1-~λ1+)について、波長λ1の目標の赤外線放射強度Aが距離xだけ伝搬し減衰した後の放射強度S(λ)を下記式
(λ)=A(λ)exp(-k(λ)x)
より求め、前記第1の波長帯全体の放射強度Sを、λ=λ1-~λ1+にわたりS(λ)を加え合わせて求め、
同様に、前記第2の波長帯(λ=λ2-~λ2+)について、波長λ2の目標の赤外線放射強度Aが距離xだけ伝搬し減衰した後の放射強度S(λ)を下記式
(λ)=A(λ)exp(-k(λ)x)
より求め、前記第2の波長帯全体の放射強度Sを、λ=λ2-~λ2+にわたりS(λ)を加え合わせて求めることにより、
前記2波長赤外線カメラの前記第1及び第2の波長帯での出力値となる前記放射強度S,S目標の温度及び距離との間の関係式を導出し、
測定された前記2波長赤外線カメラの出力値を前記関係式に代入し、2元非線形連立方程式を解くことにより、目標の温度を演算することを特徴としている。
【0010】
前記赤外線2波長処理方法において、前記2波長演算処理を実施するために、前記2波長赤外線カメラの前記2つの波長帯に対応した感度帯域内において波長の違いによって大気透過率が一定でなくても温度、湿度及び視程から求められた波長毎の大気透過率を既知の値としてもよい。
【0011】
また、前記2波長演算処理において、目標の温度決定後又は目標の温度決定前に、目標までの距離を算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る赤外線2波長処理方法によれば、目標までの距離が不明であっても、2波長赤外線カメラで撮像した2波長赤外線画像から目標の温度分布を正確に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、赤外線2波長処理方法の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1乃至図4を用いて本発明に係る実施の形態について説明する。なお、説明を簡略化するために目標の赤外線放射率を1(黒体)と仮定する。また、2波長赤外線カメラ3は2つの波長帯域の赤外線画像を同一画角、同一画素数で取得するものである。また以下の処理は、2波長赤外線カメラ3のそれぞれの波長帯域における対応画素毎に行われるものとする。
【0015】
図1において、目標1から波長λ1及び波長λ2の赤外線が放射されているものとする。それぞれの赤外線は、大気2中を伝搬距離Lだけ伝搬し、2波長赤外線カメラ3で検出するものとする。Aを目標1から放射された直後の波長λ1の赤外線放射強度、Aを目標1から放射された直後の波長λ2の赤外線放射強度、Sを大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラ3に入射する直前の波長λ1の赤外線放射強度、Sを大気伝搬後の減衰した2波長赤外線カメラ3に入射する直前の波長λ2の赤外線放射強度とする。なお、λ1を波長λ1-からλ1+の帯域の波長帯、λ2を波長λ2からλ2の帯域の波長帯とすれば、カメラ3の感度帯域は、例えば図2の様な形状と仮定できる。図2のw(λ)は赤外線カメラ3の感度である。
【0016】
大気が同一温度、湿度及び視程で均一と仮定すれば、単位距離あたりの大気減衰率k(λ)は、市販ソフトウェアのMODTRAN等を用いて計算された単位距離あたりの大気透過率τ(λ)から求めることができる。ここで、大気透過率τは波長λの関数であり、例えばλ1-からλ1+まで図3の様に変動すると仮定する。λ2の帯域についても同様である。ここでk(λ)をτ(λ)を用いて表すと、
【数1】
JP0004257436B2_000002t.gif
(1)式により、単位距離あたりの大気減衰率k(λ)は既知となる。
【0017】
次に図4に示す様に、目標までの距離L及び目標の温度Toを2波長赤外線カメラ3を用いて測定した出力値S及びSから求める手法を説明する。
【0018】
まず、図1の赤外線放射強度Aを温度T(絶対温度)で表すことを考える。Δλを大気減衰率がほぼ一定と仮定できる微小な波長範囲とすれば、λ~λ+Δλの波長範囲において、黒体が放出する放射強度をA(λ)とおけば、赤外線カメラ3の感度を図2のw(λ)として、A(λ)はプランクの式を用いて
【数2】
JP0004257436B2_000003t.gif
ここで、C=2πhc、C=ch、c:光速度、h:プランク定数である。
【0019】
(2)式を計算の簡略化のためTのm1次(m1:正整数)の多項式で近似すると、
【数3】
JP0004257436B2_000004t.gif
ここでai(λ)は波長に依存する多項式係数である。
【0020】
次に図1において赤外線放射強度A(λ)が距離xだけ伝搬した後の減衰後の放射強度S(λ)をA(λ)とx及び(1)式の大気減衰率k(λ)を用いて表すと、
【数4】
JP0004257436B2_000005t.gif
(4)式は赤外線放射強度が大気中を指数関数的に減少することを示している。波長帯全体の放射強度Sは、λ=λ1-からλ=λ1+の波長帯まで、S(λ)を加え合わせたものであるから、
【数5】
JP0004257436B2_000006t.gif
ここで(3)式を(4)式に代入するとともに、(4)式の指数関数をxのn1次(n1:正整数)の多項式で展開し、多項式展開された(4)式を(5)式に代入すると、(5)式の形は、
【数6】
JP0004257436B2_000007t.gif
ここでC1ijはT及びxの多項式の係数であり、またm1及びn1は、それぞれT及びxの多項式近似次数である。またSに関しても同様な議論が成立するため、同様に以下の式が成立する。
【数7】
JP0004257436B2_000008t.gif
ここで、C2ijはT及びxの多項式の係数であり、またm2及びn2は、それぞれT及びxの多項式近似次数である。
【0021】
次に(6)式において、(m1+1)(n1+1)個の C1ijの決定法であるが、これは計算機シミュレーションにより行う。つまりある温度T及び距離xに対して、(2)式のプランクの式の積分により発生させた微小な波長範囲の赤外線放射強度を用いて、(4)式により大気減衰後の赤外線放射強度を計算する。この時、(2)式の赤外線カメラ3のw(λ)は、赤外線光源、可変フィルタ及び分光放射計測装置等を用いて実測し、正確に求めておく必要がある。また、距離xにおける大気減衰率k(λ,x)は、前述したMODTRAN等を用いて決定される。Sは、(5)式を用いてカメラの検出波長範囲において、計算される。温度Tに関してM個、距離xに関してN個のパラメータを用いれば、MN個のSが求められる。(m1+1)(n1+1)≦MNであれば、最小2乗法を用いて、C1ijを決定することができる。以上の手法はλ2に関しても適用され、同様にC2ijも決定することができる。以上の様に、赤外線2波長処理方法は、2波長赤外線カメラ3で得た赤外線放射強度S及びSと、計測された温度、湿度及び視程とから、C1ij及びC2ijを決定する機能を持つ。
【0022】
以上で、目標から発せられた赤外線を2波長赤外線カメラ3を用いて検出し、温度及び距離を求めるための準備が終了した。目標の温度T及び距離xの算出は、2波長赤外線カメラ3で計測したS及びSから、(6)式及び(7)式を連立させて、T及びxを変数とする2元非線形連立方程式を解くことにより行う。単純に解こうとすると、非常に時間がかかってしまうが、Tが増加すれば、S及びSは単調に増加し、xが増加すれば、S及びSは単調に減少するという性質を使えば、この2元非線形連立方程式を高速で解くことができる。最終的に、xは距離の真値Lに、Tは温度の真値Toに収束する。
【0023】
以上説明した赤外線2波長処理方法は、目標までの距離が不明であっても、2波長赤外線カメラで撮像した目標の各画素毎の2波長赤外線データから画素毎の温度を求めることにより、目標の温度分布を正確に求めることができる。また同時に目標までの距離を求めることも可能である。前記目標までの距離は目標の温度決定後に求めてもよいし、又は目標の温度決定前に求めてもよい。
【0024】
なお、1画素毎に目標温度Tを演算する代わりに、隣接する複数画素を1つの画素群と考えて、画素群毎に目標温度Tを演算するようにしてもよい。
【0025】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る赤外線2波長処理方法の実施の形態であって、目標から放射された2波長帯域の赤外線が、大気により減衰を受け、2波長赤外線カメラに入射される場合の説明図である。
【図2】実施の形態で用いる2波長赤外線カメラのλ1波長帯及びλ2波長帯におけるセンサの感度線を表すグラフである。
【図3】赤外線大気透過率が一定でなく、波長に対して連続的に変化することを表すグラフである。
【図4】実施の形態において、温度Toの目標から2波長赤外線が放出され、距離Lを伝搬し、2波長赤外線カメラに入射される場合の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 目標
2 大気
3 2波長赤外線カメラ
:波長λ1の放射強度
:波長λ2の放射強度
:波長λ1の減衰後の放射強度
:波長λ2の減衰後の放射強度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3