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明細書 :近似触感材料推奨システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4469908号 (P4469908)
公開番号 特開2010-092423 (P2010-092423A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年6月2日(2010.6.2)
公開日 平成22年4月22日(2010.4.22)
発明の名称または考案の名称 近似触感材料推奨システム
国際特許分類 G06Q  50/00        (2006.01)
G06F  17/30        (2006.01)
FI G06F 17/60 124
G06F 17/30 350C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2008-264234 (P2008-264234)
出願日 平成20年10月10日(2008.10.10)
審査請求日 平成21年10月15日(2009.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】渡邊 淳司
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100091443、【弁理士】、【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
審査官 【審査官】宮地 匡人
参考文献・文献 特開2002-117059(JP,A)
原田隆司、斎藤実,“風合い”の検索システム,繊維学会誌,1990年,Vol.46,No.6,P.259-264
天野敏彦、その外3名,質的なデータを用いた布の風合い評価,繊維学会誌,2000年,Vol.56,No.1,P.1-5
小林茂雄,皮膚感覚-風合いをめぐって,フレグレンス ジャーナル,1995年 2月15日,Vol.24,No.2,P.11-16
川端季雄,布風合いの客観評価システム,シミュレーション,日本シミュレーション学会,1994年 3月15日,Vol.13,No.1,P.20-24
山口美佐子、その外5名,アパレル素材のデータベース化(第3報),東京都立繊維工業試験場研究報告書,1994年12月,No.42,P.92-95
調査した分野 G06Q 10/00-50/00
G06F 17/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
触感を表現する言葉によって指定された触感と近似した触感を示す材料を推奨する近似触感材料推奨システムであって、
予め定めた触感を表現する複数の言葉と、該複数の言葉が表現する触感をそれぞれ有する複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータを分析して得た複数の仮想材料パラメータと、各種の実際材料の表面の物理特性を定めたデータを分析して得た複数の実際材料パラメータとを保存したデータ保存部と、
前記触感を表現する言葉を入力する入力部と、
前記データ保存手段に保存されている前記複数の仮想材料パラメータと前記複数の実際材料パラメータとから、前記入力部から入力された複数の前記触感を表現する言葉に対応する複数の前記仮想材料パラメータに近い前記実際材料パラメータを有する1以上の材料を推奨材料として決定する推奨材料決定部と、
前記推奨材料決定部が決定した前記1以上の材料を特定するデータを表示する表示手段とを備え、
前記データ保存部には、前記複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータに基づいて得た変換係数を用いて、前記データを2次元の座標値に変換したものが前記複数の仮想材料パラメータとしてマッピングされ、前記複数の実際材料の表面の物理特性を定めたデータをそれぞれ前記変換係数を用いて2次元の座標値に変換したものが前記複数の実際材料パラメータとしてマッピングされたマップのデータ構造で、前記複数の仮想材料パラメータと前記複数の実際材料パラメータとが保存されており、
前記推奨材料決定部は、前記入力部から入力された複数の前記触感を表現する言葉に対応する複数の前記仮想材料パラメータが、それぞれ前記マップにおいて重合する類似範囲内にあるときには、前記重合する類似範囲内にある1以上の前記実際材料パラメータを有する材料を前記推奨材料として決定し、前記入力部から入力された複数の前記触感を表現する言葉に対応する複数の前記仮想材料パラメータが、それぞれ前記マップにおいて前記重合する類似範囲内にないときには、推奨材料がないことを決定するように構成され、
前記表示手段は、前記推奨材料決定部が推奨材料がないことを決定したことを表示するように構成されている近似触感材料推奨システム。
【請求項2】
前記推奨材料決定部は、前記推奨材料として決定された複数の前記実際材料の表示と一緒に、前記1つの仮想材料パラメータと前記推奨材料の前記実際材料パラメータとの間の距離を表示する機能を有する請求項1に記載の近似触感材料推奨システム。
【請求項3】
前記触感を表現する言葉が、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられる複数のオノマトペである請求項に記載の近似触感材料推奨システム。
【請求項4】
前記物理特性は、粘性、摩擦及び空間周波数である請求項に記載の近似触感材料推奨システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の触感に近似した触感を有する材料を簡単に推奨することができる近似触感材料推奨システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の材料の表面の質感を選択する技術は提案されている。例えば、特開2003-276031号公報(特許文献1)には、樹脂材料の表面に設けられるシボに対する触感による官能評価に基づいて上質感予測値を特定し、上質感予測値の範囲を選定してシボを選択する技術が開示されている。

【特許文献1】特開2003-276031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら所望の触感を持った材質を探すことができるシステムは、いまだ提案されていない。そのため例えば、洋服のデザイナは、多くの材質を手で触って、所望の触感の材質を選択しているのが実情である。また工業デザイナも、触感を含めて製品のデザインを決定するが、所望の触感を有する材料を探すことにかなりの苦労をしているのが実情である。
【0004】
本発明の目的は、所望の触感に近似した触感を有する材料を簡単に推奨することができる近似触感材料推奨システムを提供することにある。
【0005】
本発明の目的は、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペを入力して所望の触感に近似した触感を有する材料を簡単に推奨することができる近似触感材料推奨システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、触感を表現する言葉によって指定された触感と近似した触感を示す材料を推奨する近似触感材料推奨システムに関するものである。本発明の近似触感材料推奨システムは、データ保存部と、入力部と、推奨材料決定部と、表示部とを備えている。これらの少なくともデータ保存部及び推奨材料決定部は、コンピュータを利用して実現されている。
【0007】
データ保存部は、予め定めた触感を表現する複数の言葉と、この複数の言葉が表現する触感をそれぞれ有する複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータを分析して得た複数の仮想材料パラメータと、各種の実際材料の表面の物理特性を定めたデータを分析して得た複数の実際材料パラメータとを保存する。物理特性には、粘性、摩擦、空間周波数、温度等の触感に影響を与えるものが含まれる。しかしこれら物理特性の中でも、特に、粘性、摩擦、空間周波数は触感を判別するのに適している。また仮想材料パラメータ及び実際材料パラメータを得るために、物理特性を定めたデータを分析する手法は任意である。入力部は、触感を表現する言葉を入力できるものであればどのようなものでもよく、例えば、キーボード等を用いることができる。
【0008】
推奨材料決定部は、データ保存手段に保存されている複数の仮想材料パラメータと複数の実際材料パラメータとから、入力部から入力された1またはそれ以上の触感を表現する言葉に対応する1またはそれ以上の仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータを有する1以上の材料を推奨材料として決定する。1またはそれ以上の仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータを有する1以上の材料をどのように決定するかは、使用するパラメータに応じて、またどの程度近いものまで探すことが望まれるのかに応じて、適宜に定めることになる。表示部は、推奨材料決定部が決定した1以上の材料を特定するデータを表示する。ここで特定するデータとは、材料の名称であっても、材料の写真であっても、また材料の特性であってもよい。
【0009】
本発明の近似触感材料推奨システムによれば、入力部から触感を表現する言葉を入力するだけで、その言葉で表現された所望の触感に近似した触感を有する材料の推奨を簡単に得ることができる。特に本発明によれば、触感を表現する言葉を触感を有する仮想材料の表面の物理特性と実際材料の表面の物理特性を基礎データとして用いているので、入力が言葉であっても、客観的な根拠に基づいて、触感が近似した材料を推奨することができる。そのため各種製品のデザイナに、所望の触感を有する材料を推奨することが可能になる。
【0010】
推奨材料決定部は、入力部から一つの触感を表現する言葉が入力されると、推奨材料として決定された複数の実際材料の表示と一緒に、1つの仮想材料パラメータと推奨材料の実際材料パラメータとの間の距離を表示する機能を有しているのが好ましい。このような距離を表示できるようにすると、推奨された複数の実際材料の中で「一つの触感を表現する言葉に対応する仮想材料」の表面の触感により近い実際材料を見つけることができる。
【0011】
なおデータ保存部として、複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータを主成分分析して得た変換係数を用いて、前記データを2次元の座標値に変換したものが複数の仮想材料パラメータとしてマッピングされ、複数の実際材料の表面の物理特性を定めたデータを前記変換係数を用いて2次元の座標値に変換したものが複数の実際材料パラメータとしてマッピングされたマップのデータ構造で、複数の仮想材料パラメータと複数の実際材料パラメータが保存されたものを用いることができる。
【0012】
推奨材料決定部は、各パラメータの2次元の座標値に基づいて、前述の距離を求めることができる。また推奨材料決定部は、入力部から入力された1つの触感を表現する言葉に対応する仮想材料パラメータを中心にして、マップ上において予め定めた類似範囲内にある1以上の実際材料パラメータを有する材料を推奨材料として決定し、類似範囲内に実際材料パラメータが存在しないときには推奨材料がないことを決定するように構成することができる。
【0013】
また、推奨材料決定部は、入力部から入力された複数の触感を表現する言葉に対応する複数の仮想材料パラメータが、それぞれマップにおいて重合する類似範囲内にあるときには、重合する類似範囲内にある1以上の実際材料パラメータを有する材料を推奨材料として決定し、入力部から入力された複数の触感を表現する言葉に対応する複数の仮想材料パラメータが、それぞれマップにおいて重合する類似範囲内にないときには、推奨材料がないことを決定するように構成することができる。そして表示部は推奨材料決定部が推奨材料がないことを決定したことを表示するように構成する。
【0014】
主成分分析を利用して得た2次元の座標値を複数の仮想材料パラメータ及び複数の実際材料パラメータとしてマッピングしたマップをデータ保存部に保存すれば、マップ上における類似範囲をどのように設定するかにより、パラメータどうしの近似範囲を設定することができる。したがって複雑な演算を必要とすることなく、類似範囲を任意に設定することにより、任意の近似幅を持って触感が近似する材料を推奨することができる。また2以上の言葉の組合せ方によっては、近似する材料を推奨することができないことも簡単に判別することができる。
【0015】
なお触感を表現する言葉として、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられる複数のオノマトペを用いることができる。ここで物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペとは、擬音語と擬態語の総称で、擬声語(ぎせいご)の訳語である。「ころころ」、「さらさら」、「かさかさ」、「しわしわ」、「ちくちく」等の言葉が、このオノマトペに該当する。物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペは、音の響きと触感のイメージが似ている。そのためオノマトペは、最も簡単に且つ適切に表面の触感を言葉で表現しており、言葉の入力として最も適しており、システムへの言葉の入力が非常に容易になって、操作が簡単になる利点が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の近似触感材料推奨システムによれば、入力部から触感を表現する言葉を入力するだけで、その言葉で表現された所望の触感に近似した触感を有する材料の推奨を簡単に得ることができる利点が得られる。特に本発明によれば、入力が言葉であっても、触感が近似した材料を推奨することができ、各種製品のデザイナに、所望の触感を有する材料を適切に推奨することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の近似触感材料推奨システムの実施の形態について説明する。図1は、本発明の近似触感材料推奨システムをコンピュータにインストールしたソフトウエアを利用して実現する場合の機能実現手段を含むブロック図である。また図2には、コンピュータにインストールするソフトウエアのアルゴリズム示すフローチャートである。
【0018】
入力部1は、触感を表現する言葉を入力するキーボード等の入力装置によって構成される。入力部1からの指定データは、制御部2に入力される。後述するデータ保存部3に、新たな保存用データを制御部2を介して入力する場合にも、入力部1を利用することができる。制御部2は、入力部1から新たな保存データを入力する指令を受け取ると、データ保存部3にその保存データを記憶させる。
【0019】
データ保存部3には、複数の仮想材料パラメータと複数の実際材料パラメータとが、マップのデータ構造で保存されている。ここで複数の仮想材料パラメータとは、予め定めた触感を表現する複数の言葉と、この複数の言葉が表現する触感をそれぞれ有する複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータを主成分分析、多次元尺度構成法、独立成分分析等のように、分類対象物の関係を低次元空間における点の配置位置で表現する分析手法を用いて得た複数のパラメータである。ここで仮想材料の表面の物理特性とは、触感を表現する言葉に対応する表面の触感を有するであろうと仮定した、想像上の材料(または代表例として選定した材料)の表面の物理特性である。仮想材料の表面の物理特性は、専門家またはそれに準ずる人が仮想材料を仮想して主観的且つ感覚的に決定することになる。なお複数の専門家が感覚的に定めた結果の平均値を物理特性として採用すると、精度を高めることができるのは勿論である。なお実際材料パラメータは、仮想材料パラメータを決定する際に使用した分析手法により得られる変換係数を用いて求められる。
【0020】
本実施の形態では、触感を表現する言葉として、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられる複数のオノマトペを用いる。ここで物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペとは、擬音語と擬態語の総称で、擬声語(ぎせいご)の訳語である。「ころころ」、「さらさら」、「かさかさ」、「しわしわ」、「ちくちく」等の言葉である。図3に示した表には、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペの例を、左端の「名前」の項目の下に列記してある。列記したオノマトペは、小学館発行の「擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典」より、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペを選定したものである。言葉の中で特に、オノマトペは意味よりも、その単語の響き自体が対象の性質を表している語である。すなわち物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペは、単語の音の響きと触感のイメージが似ている。そのためこのオノマトペは、最も簡単に且つ適切に表面の触感を言葉で表現しており、言葉の入力として最も適している。したがってオノマトペを採用すると、システムへの言葉の入力が非常に容易になって、操作が簡単になる。
【0021】
また図3の最上欄の「粘性」「摩擦」「空間周波数」「温度」が、本実施の形態で用いる仮想材料の表面の物理特性である。これらの物理特性の数値は、前述のように、各オノマトペの言葉に対応して仮想した材料の表面の物理特性を専門家またはそれに準ずる人が主観的且つ感覚的に決定したものである。これらの数値は、5段階評価による相対的な値であって、実測値と一致するものではない。なおこれらの数値を決定するにあたっては、例えば、予め表面の触感が異なる材料を複数用意し、複数の専門家または専門家に準ずる者に、それらの材料を実際に触ってもらい、オノマトペの言葉に対応して仮想した材料の物理特性を感覚的に定めることができる。具体的には、複数の専門家または専門家に準ずる者に、用意した複数の材料の中から各オノマトペの言葉に対応する触感を有すると思う材料をそれぞれ選択してもらう。そして選択した材料を触りながら、実際に触った触感で物理特性を決定してもらう。選択した材料について予め計測器を用いて計測した物理特性を物理特性のデータとして採用してもよいのは勿論である。そしてこのようにして集めたオノマトペの言葉に対応する材料についての、複数人の主観と感覚で定められた物理特性の平均値を、図3に示す各物理特性として定めることができる。図3に示した物理特性は、その特性が実質的に無いと考えられるものを「1」とし、その特性が顕著になるほど、値が大きくなるという規則(5段階評価)の下で相対化した値である。触感の程度は、個人によって異なるため、物理特性の値を厳密に定める必要はない。
【0022】
ここで「粘性」とは、物理学上は、ある物体に力を加えたとき、物体はその力によって変形するが、その変形は力を取り除いてももう元には戻らないという性質である。「粘性」を物の表面の触感で表現すると、「粘性」が大きい場合の触感とは、指に付着しやすい触感であり、「粘性」が小さい場合の触感とは、指に付着しにくい触感である。
【0023】
「摩擦」とは、物理学上は、面及び物体の材質や表面状態である。「摩擦」を、物の表面の触感で表現すると、「摩擦」が大きい場合の触感とは、指の表面が引っかかり易い触感であり、「摩擦」が小さい場合の触感とは、指の表面が引っかかり難い触感である。
【0024】
「空間周波数」とは、物理学上は、空間的な周期をもつ構造の性質であり、単位長に含まれる構造の繰り返しの多さを表すものである。「空間周波数」を、物の表面の触感で表現すると、「空間周波数」が高い場合の触感とは、単位長に含まれる構造の数が多いと感じる触感であり、「空間周波数」が低い場合の触感とは、単位長に含まれる構造の数が少ないと感じる触感である。
【0025】
「温度」とは、物理学上は、物質を構成する分子運動のエネルギーの統計値である。「温度」を物の表面の触感で表現すると、「温度」が高い場合の触感とは、指で感じる材料の相対的な温度を暖かいと感じる触感であり、「温度」が低い場合の触感とは、指で感じる材料の相対的な温度を冷たいと感じる触感である。
【0026】
図4は、触感により定めた各種の実際材料の表面の物理特性の例を示している。実際材料の表面の物理特性を専門家またはそれに準ずる人が主観的且つ感覚的に決定したものである。実際材料の表面の物理特性のデータは、仮想材料の表現の物理特性のデータを得た場合と同様に、5段階評価により得た。したがって仮想材料の表面の物理特性も実際材料の表面の物理特性も同じ評価基準により定められている。実際材料の表面の物理特性の数値を決定するにあたっては、例えば、各実際材料を複数の専門家または専門家に準ずる者に実際に触ってもらい、各物理特性を主観的且つ感覚的に定めることができる。具体的には、複数の専門家または専門家に準ずる者に、各実際材料を触ってもらい、実際に触った触感で物理特性を5段階評価により主観的且つ感覚的に決定してもらう。そしてこのようにして集めた複数人の感覚で定められた物理特性の平均値を、図4に示す各物理特性として定めることができる。なお実際材料の表面の物理特性を決定する場合にも、各実際材料について予め計測器を用いて計測した物理特性を、物理特性のデータとして採用してもよいのは勿論である。
【0027】
本実施の形態では、データ保存部3に、マップのデータ構造で、複数の仮想材料パラメータと複数の実際材料パラメータが保存されている。マップのデータ構造は、複数の仮想材料の表面の物理特性を定めたデータ(粘性、摩擦、空間周波数)を用いてそれぞれ主成分分析して得た変換係数を用いて、前記データを2次元の座標値に変換したものが複数の仮想材料パラメータとしてマッピングされ、複数の実際材料の表面の物理特性を定めたデータをそれぞれ変換係数を用いて2次元の座標値に変換したものが複数の実際材料パラメータとしてマッピングされて構成されたものを用いることができる。マッピングでは、第1主成分をx軸に対応させ、第2主成分をy軸に対応させている。図5は、図3のデータを主成分分析した分析結果から求めた第1主成分及び第2主成分に座標変換する際に使用する変換係数の一例を示している。図5において、一番上の行中の「1」は第1主成分軸を意味し、「2」は第2主成分軸を意味している。また「粘性」の文字の横の変換係数、「摩擦」の文字の横の変換係数及び「空間周波数」の文字の横の変換係数は、図3及び図4に示した物理特性のデータを主成分分析して2次元の座標値を求める際に使用する変換係数である。例えば、図3の表中の一番上の「ころころ」の第1主成分軸の座標値を求める場合には、図3の表中の一番上の「ころころ」の物理特性(粘性、摩擦、空間周波数)の値(1.28,1.75,2.75)をそれぞれ標準化した値に図5の第1主成分軸の変換係数(-0.59747,0.515456,0.614273)を乗算した結果の合計値を「ころころ」の1次元の座標値とする。同様に、「ころころ」の第2主成分軸の座標値を求める場合には、図3の表中の一番上の「ころころ」の物理特性(粘性、摩擦、空間周波数)の値(1.28,1.75,2.75)をそれぞれ標準化した値に図5の第2主成分軸の変換係数(0.443814,0.85057,-0.28206)を乗算した結果の合計値を「ころころ」の2次元の座標値とする。図6は、その他のオノマトペについても同様にして座標値を求めてマッピングした結果を示している。
【0028】
図6において、アルファベットの表記は、図3のオノマトペの言葉の最初の2音を表示したものである。例えば「Beto」が付された点は、「べとべと」のオノマトペの仮想材料パラメータをマッピングした点である。同様に「Neba」は「ねばねば」の仮想材料パラメータをマッピングした点である。
【0029】
本実施の形態では、実際材料パラメータについても、図6のマップ上にマッピングする。以下の説明では、図6に示した○印が、複数の実際材料の実際材料パラメータ(座標値)の点を示しているものと仮定する。実際材料パラメータは、複数の実際材料の表面の物理特性を定めたデータをそれぞれ前述の変換係数を用いて2次元の座標値に変換したものである。すなわち実際材料パラメータは、前述の第1主成分軸の変換係数(-0.59747,0.515456,0.614273)と第2主成分軸の変換係数(0.443814,0.85057,-0.28206)を、実際材料の表面の物理特性を示すデータを標準化した値に、それぞれ乗算した値の合計値により得た2次元の座標値である。実際材料パラメータを決定する場合にも、仮想材料パラメータを決定する場合に用いた変換係数と同じ変換係数を用いているので、同一マップ上で各パラメータの対比が可能になっている。
【0030】
図1の推奨材料決定部4は、データ保存手段3に保存されている複数の仮想材料パラメータと複数の実際材料パラメータとから、入力部1から入力された1以上の触感を表現する言葉に対応する1以上の仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータを有する1以上の材料を推奨材料として決定する。1つの仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータを有する1以上の材料をどのように決定するかは、使用するパラメータに応じて、またどの程度近いものまで探すことが望まれるのかに応じて、適宜に定めることになる。
【0031】
本実施の形態の推奨材料決定部4は、入力部から入力された1以上の触感を表現する言葉に対応する1以上の仮想材料パラメータが、それぞれ図6に示すようなマップ上において類似範囲内にあるときには、予め定めた類似範囲内にある1以上の実際材料パラメータを有する材料を推奨材料として決定する。具体的に説明すると、入力部1から入力された触感を表現する言葉が「べとべと」一つであったとする。この場合には、図6のマップ上において、「Beto」の仮想材料パラメータを中心にして予め定めた距離内即ち類似範囲A1内に2つの実際材料パラメータ(○印で示されている)が在る。したがってこの場合、推奨材料決定部4は、類似範囲A1内にある2つの実際材料パラメータに対応する2種類の実際材料を、表示部5に文字等によって表示する。本実施の形態の推奨材料決定部4は、入力部1から一つの触感を表現する言葉が入力されると、推奨材料として決定された複数の実際材料の表示と一緒に、1つの仮想材料パラメータと推奨材料の実際材料パラメータとの間の距離を表示する機能を有している。この距離は、各パラメータの座標値を用いて演算することができる。このような距離を表示すると、推奨された複数の実際材料の中で「一つの触感を表現する言葉に対応する仮想材料」の表面の触感に、より近い実際材料を見つけることができる。すなわち、推奨された材料の中で、より「べとべと」な触感を有する実際材料を見つけることができる。
【0032】
次に、入力部1から2つの言葉(オノマトペ)「もちもち」と「ぐにゃぐにゃ」が入力された場合を説明する。この場合には、「もちもち」に対応する仮想材料パラメータを中心にした類似範囲A2と「ぐにゃぐにゃ」を中心にした類似範囲A3の双方が重なる範囲(重合する類似範囲)内に実際材料パラメータが1つ在る。したがって推奨材料決定部4は、この重合する類似範囲内にある実際材料パラメータに対応する1つの実際材料を、表示部5に表示する。すなわち表面の触感が、「もちもち」感と「ぐにゃくにゃ」感の両方を備えた材料が1つ表示部5に表示される。
【0033】
また入力部1から2つの言葉(オノマトペ)「もちもち」と「さらさら」が入力された場合を仮定する。この場合には、「もちもち」に対応する仮想材料パラメータを中心にした類似範囲A2と「さらさら」を中心にした類似範囲A4の双方が重なる範囲(重合する類似範囲)はない。したがって推奨材料決定部4は、推奨する実際材料がないことを決定する。表示部5は、推奨材料決定部4の決定を受けて、推奨材料がないことを文字等で表示する。すなわち表面の触感として、「もちもち」感と「さらさら」感とを備えた材料のデータは、データ保持部3に保存されておらず、そのような材料は推奨できないことが表示部に表示される。
【0034】
表示部5は、推奨材料決定部4からの出力に基づいて表示動作をするように構成されている。表示部5として、推奨材料決定部4が決定した1以上の材料を特定するデータを表示することができるものであれば、どのようなものでもよい。なおここで特定するデータとは、材料の名称であっても、材料の写真であっても、また材料の特性であってもよい。
【0035】
本実施の形態の近似触感材料推奨システムをコンピュータを用いて実現する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズを示す図2を参照して、近似触感材料推奨システムの動作を説明する。ステップST1で触感を表現する1以上の言葉を入力部1からの入力する。ステップST2では、入力された1以上の言葉に対応する保存データがデータ保存部3にあるか否かの判定が行われる。この判定は推奨材料決定部4が実行する。対応する言葉が無い場合には、推奨材料決定部4からの判定結果を受けて、表示部5がその旨を表示する(ステップST3での「エラー表示」)。入力された1以上の言葉に対応する保存データがデータ保存部3にある場合には、ステップST4へと進む。ステップST4では、入力された言葉が1つかまたは2以上かが判定される。すなわち入力された言葉に対応する仮想材料パラメータが1つか、または2以上か判定される。入力された言葉が1つで、仮想材料パラメータが1つの場合には、ステップST5へと進む。ステップST5では、仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータがあるか否かの判定が行われる。ここで「近い」とは、パラメータ間のマップ上の距離が近いことを意味する。例えば、前述の類似範囲(A1~A4)の例であれば、仮想材料パラメータのマッピング点を中心にして予め定められた距離を半径とする類似範囲内にある実際材料パラメータは、「近い」実際材料パラメータであり、類似範囲外の実際材料パラメータは近くない実際材料パラメータである。なおこの類似範囲は、円形の範囲でも、楕円形の範囲でも、多角形の範囲でもよく、その形状及び大きさは、用途に応じて任意に定めればよいものである。
【0036】
ステップST5で、類似範囲内に実際材料パラメータがある場合には、ステップST6へと進み、ステップST6では実際材料パラメータに対応する実際材料を推奨することを決定する。ステップST5で、類似範囲内に実際材料パラメータが存在しない場合には、ステップST7で推奨材料がないこと決定して、その旨を表示部5で表示する。
【0037】
なおステップST5においては、推奨材料として決定された複数の実際材料の表示と一緒に、1つの仮想材料パラメータと推奨材料の実際材料パラメータとの間の距離を表示してもよい。このような距離を表示すると、推奨された複数の実際材料の中で「一つの触感を表現する言葉に対応する仮想材料」の表面の触感により近い実際材料を見つけることができる。
【0038】
ステップST4で、2以上の言葉が入力されていること、すなわち2以上の言葉に対応する2以上の仮想材料パラメータがデータ保存部3に保存されていることが判定された場合には、ステップST8へと進む。ステップST8では、データ保存部3に保存されたデータのマップから、入力された2以上の言葉に対応する仮想材料パラメータが類似範囲内にあるか否かが判定される。この判定は、マップ上の1つの仮想材料パラメータを中心にした類似範囲と別の1つの仮想材料パラメータを中心にした類似範囲とが、重なるか否か(重なった類似範囲があるか否か)により判断される。この判断も推奨材料決定部4が行う。2以上の類似範囲が重なる場合には、ステップST9へと進む。ステップST9では、2以上の仮想材料パラメータの全てに近い実際材料パラメータがあるか否かの判定が行われる。近い実際材料パラメータがあるか否かの判定は、前述のように、2以上の仮想材料パラメータを中心にした2以上の類似範囲が相互に重なる重合範囲内に、1以上の実際材料パラメータが存在するか否かで判定する。重合範囲内に1以上の実際材料パラメータが存在する場合には、ステップST10へと進んで、重合範囲内にある1以上の実際材料パラメータに対応する実際材料を推奨する材料として表示部5に表示する。重合範囲内に実施材料パラメータが存在しない場合には、ステップST7へと進んで、推奨材料がないことが表示部5に表示される。
【0039】
上記実施の形態では、仮想材料パラメータに近い実際材料パラメータを探す判定方法としてマップ上に類似範囲を重ねる判定方法を用いたが、その他の判定方法を用いてもよいのは勿論である。
【0040】
なおデータ保存部3に保存されたマップ構造を図6に示すような2次元マップとしてシート上に印刷し、印刷したシート上に実際材料の小片を貼り付けて、近似触感材料見本を作成してもよい。このような見本があれば、例えばデザイナーは、この近似触感材料見本を見ることにより材料を設定することもできる。また近似触感材料見本を触感が近似する材料を、それぞれグループにして材料の小片を並べるように作成してもよい。
【0041】
上記実施の形態では、触感を表現する言葉として、物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられる複数のオノマトペを用いたが、その他の言葉を用いても良いのは勿論である。
【0042】
また上記実施の形態では、列挙した物理特性のうち、温度をパラメータを決定する際の要素として利用していないが、温度、その他の物理特性を用いてもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の近似触感材料推奨システムをコンピュータにインストールしたソフトウエアを利用して実現する場合の機能実現手段を含むブロック図である。
【図2】コンピュータにインストールするソフトウエアのアルゴリズム示すフローチャートである。
【図3】物の表面の質感・手触りを表現する場合に用いられるオノマトペと触感により定めた物理特性との関係を表にした図である。
【図4】触感により定めた各種の実際材料の表面の物理特性の例を表にして示した図である。
【図5】主成分分析の結果得られた変換係数の一例を示す表である。
【図6】2次元の座標値からなる複数の仮想材料パラメータ及び実際材料パラメータをマッピングした例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 入力部
2 制御部
3 データ保存部
4 推奨材料決定部
5 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5