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明細書 :光学顕微観察用高圧力試料容器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5207300号 (P5207300)
公開番号 特開2010-096812 (P2010-096812A)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 光学顕微観察用高圧力試料容器
国際特許分類 G02B  21/34        (2006.01)
FI G02B 21/34
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2008-264944 (P2008-264944)
出願日 平成20年10月14日(2008.10.14)
審査請求日 平成23年10月11日(2011.10.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】西山 雅祥
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
【識別番号】100155228、【弁理士】、【氏名又は名称】市岡 牧子
審査官 【審査官】森内 正明
参考文献・文献 特開平10-28576(JP,A)
特開2006-30583(JP,A)
特開2001-108913(JP,A)
特開2002-214139(JP,A)
調査した分野 G02B 21/00 - 21/36
特許請求の範囲 【請求項1】
高圧力下における試料を光学顕微観察するための、容器本体と蓋体とから成る高圧力試料容器において、
前記容器本体は、試料導入路を内部に有すると共に、高圧に加圧された試料を前記試料導入路に取り込むための高圧ライン取付口と、前記蓋体が嵌合可能な凹部とを有し、
前記蓋体は、前記凹部に嵌合されたときに前記試料導入路側で開口し、外部に向かって先細となる円錐部と、試料から放射される光を放出する観察窓とを有し、
前記観察窓は、前記円錐部の先端に形成された透孔と、前記蓋体の外側面に接着固定された、前記透孔を閉塞する窓材とから成ることを特徴とする光学顕微観察用高圧力試料容器。
【請求項2】
前記窓材は、サファイア製の薄板であることを特徴とする請求項に記載の光学顕微観察用高圧力試料容器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧力下での試料の光学顕微観察に用いられる光学顕微観察用高圧力試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧力技術は、地球深部をはじめとする高圧力環境の再現、新規物質の合成、食品加工並びに殺菌手法の開発等、幅広い分野で用いられている技術である。このような高圧力技術に光学顕微鏡を組み合わせた高圧力光学顕微観察は、高圧力環境下における物質の物理的特性、化学的特性の変化等を観察する手法として用いられている(非特許文献1)。
【0003】
高圧力光学顕微観察では、例えば金属製の高圧力試料容器が観察用セルとして用いられる。この高圧力試料容器は、内部に収容された液体試料に光を照射したり、液体試料からの光(透過光や反射光、蛍光等)を取り出すための窓を有している。前記窓は、高圧力試料容器に形成された透孔を石英ガラス等の窓材で塞いだ構成になっており、液体試料からの光は窓材を通して放出され、対物レンズによって結像される。
【0004】

【非特許文献1】B. Frey, M. Hartmann, M. Herrmann, R. Mayer-Pittroff, K. Sommer, and G. Bluemelhuber, Microscopy Research and Technique 69, (2006) pp. 65-72
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の高圧力試料容器では、高耐圧性を確保するために厚みが数mmの窓材を高圧力試料容器の内側から貼り付けて透孔を塞いでいた。このため、対物レンズを試料に近づけることができず、高開口数の対物レンズを用いることができなかった。
本発明が解決しようとする課題は、試料の近くに対物レンズを配置することができる光学顕微観察用高圧力試料容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明の光学顕微観察用高圧力試料容器は、高圧力下における試料を光学顕微観察するための、容器本体と蓋体とから成る高圧力試料容器であって、
前記容器本体は、試料導入路を内部に有すると共に、高圧に加圧された試料を前記試料導入路に取り込むための高圧ライン取付口と、前記蓋体が嵌合可能な凹部とを有し、
前記蓋体は、前記凹部に嵌合されたときに前記試料導入路側で開口し、外部に向かって先細となる円錐部と、試料から放射される光を放出する観察窓とを有し、
前記観察窓は、前記円錐部の先端に形成された透孔と、前記蓋体の外側面に接着固定された、前記透孔を閉塞する窓材とから成ることを特徴とする。
ここで、本発明の光学顕微観察用高圧力試料容器は光学顕微観察の際に観察窓と対物レンズとが対向するように配置される。
【0007】
ファイアガラスは薄くても高強度であることから、窓材をサファイア製の薄板から構成すると良い。サファイアガラスは、可視領域を含む幅広い波長領域にわたって光の透過率が高いことから、この点においても窓材の材料として優れている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学顕微観察用高圧力試料容器によれば、対物レンズを試料の観察点に近づけることができるため、作動距離が短い開口数が大きな対物レンズを用いて光学顕微鏡観察を行うことができる。このため、高圧力環境下においても、通常圧力下と変わらぬ高解像度、高感度の光学顕微鏡観察を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施の形態に係る光学顕微観察用高圧力試料容器(以下、高圧力試料容器という)の構造を示している。図1において、ほぼ直方体状の高圧力試料容器10は、金属製の容器本体12及び蓋体14から構成されている。容器本体12及び蓋体14は、十分な耐圧性を確保するために、ハステロイC276等のニッケル基合金、或いはステンレス鋼等から構成されている。
【0010】
容器本体12の内部には液体試料の導入路16が形成されていると共に、側部には圧力ポンプからの圧力ライン(図示せず)を取り付けるための2個の取付口18a、18bが設けられている。前記圧力ラインは、その接続形状に応じて2個の取付口18a、18bのうちの一方に接続され、他方の取付口は栓で閉塞される。以上の構成により、圧力ポンプによって高圧に加圧された液体試料が導入路16を通って高圧力試料容器10内に導入される。
なお、図示しないが、容器本体12内には流水路が形成されている。この流水路には恒温槽からの流水管が接続されるようになっている。恒温槽からの水が流水路を流通することにより高圧力試料容器10内の温度が調節される。
また、容器本体12の下部中央には、光照射窓20が設けられている。光照射窓20は、透孔21と透孔21を閉塞する窓材22から構成されている。この窓材22は例えば石英ガラスから成り、接着剤によって容器本体12の内側面に貼り付けられている。高圧力試料容器10の液体試料には、光照射窓20を通して光が照射される。
【0011】
一方、蓋体14は円柱状をなし、容器本体12の上部中央のねじ穴24に螺挿されるようになっている。蓋体14の底面にはO-リング26が取り付けられている。蓋体14をねじ穴24に装着したとき、O-リング26は当該ねじ穴24の底面に当接する。このような構成により、蓋体14と容器本体12との間が気密に封止される。
ねじ穴24の底部には光照射窓20と対向する開口28が形成されている。また、蓋体14の下面のほぼ中央には光照射窓20と対向する凹部30が形成されており、この凹部30の上面部(以下、上底部ともいう)に観察窓32が設けられている。観察窓32は、蓋体14に形成された透孔33と、この透孔33を閉塞する窓材34から構成されている。窓材34は例えばサファイア製の薄板から成り、蓋体14の外側面に接着剤で貼り付けられている。ここで、「外側面」とは蓋体14を容器本体12に取り付けたときに高圧力試料容器10の外面となる面をいう。液体試料から発せられた光は観察窓32を通して放出され、対物レンズ100(図2参照)で結像される。
【0012】
図2は蓋体14の観察窓32周辺部分を対物レンズ100と共に示す拡大図である。図2に示すように、凹部30の上面には上方に向かって先細となる円錐部30aが形成されている。この円錐部30aの傾斜面の角度は45度に設定されており、その先端に直径が0.4mmの透孔33が形成されている。このような円錐部30aを設けたことにより、液体試料中の観察対象物を窓材34の近くに導入することができる。
また、蓋体14の上面のうち前記透孔33を中心とする部分には円形状の凹部36が形成されており、この凹部36に窓材34が接着剤により貼り付けられている。凹部36は、当該凹部36に窓材34を固定したときに窓材34の外面が蓋体14の外面とほぼ面一になるような寸法に設計されている。
【0013】
本実施の形態では、観察窓32の窓材34として直径寸法が7mm、厚さ寸法が0.2mmの非常に薄いサファイア製の薄板を用いた。このような薄い窓材34でも十分な耐圧性を確保するために、窓材34の直径を透孔33の直径よりも非常に大きく設定し、窓材34と蓋体14との接着面を広くしている。
また、本実施の形態では、蓋体14に対して窓材34を強固に接着するために窓材34に所定の前処理を施してから蓋体14に貼り付けている。以下に、窓材34の貼り付け手順1~5を示す。以下の手順は、ニッケル基合金(ハステロイC276)から成る蓋体14に一液性エポキシ樹脂接着剤(ナガセケムテックス株式会社製、EPOXY RESIN XD911)を用いて窓材34(サファイア製の薄板)を接着する手順の例である。
【0014】
1.サファイア製の窓材(以下、サファイア窓材)34をアセトン中で30分間超音波洗浄する。
2.アセトンからサファイア窓材34を取り出し、飽和NaOH溶液で30分間超音波洗浄する。
3.飽和NaOH溶液からサファイア窓材34を取り出し、蒸留水で洗浄する。
4.サファイア窓材を乾燥させる。
5.乾燥後、サファイア窓材34に接着剤を塗布し、当該窓材を蓋体14の凹部36に押し当てて120度で2時間加熱する。
【0015】
以上の手順でサファイア窓材34を固定した蓋体14を容器本体12に取付け、50MPaの耐圧試験を行ったところ、12時間経過しても、サファイア窓材34に割れが発生したり、サファイア窓材34が凹部から剥がれたりしなかった。2時間あれば高圧下での光学顕微鏡観察を十分に行えることから、前記高圧力試料容器10は高圧下での試料の光学顕微鏡観察に使用可能であるといえる。
【0016】
また、本実施の形態の高圧力試料容器10では、非常に薄いサファイア窓材34を蓋体14の外側の面に取り付けて観察窓32を構成した。このため、対物レンズ100を液体試料の近くに配置することができる。
図3は、高圧力試料容器10の蓋体として従来の蓋体14’を用いた場合の対物レンズ100から液体試料までの距離を説明するための図である。上述の図2との比較から明らかなように、従来の蓋体では内側面に窓材34が貼り付けられている。試料Sの観察ポイントは窓材34の内面であるため、窓材34の厚さ寸法が同じであっても、本実施の形態の蓋体14を用いた場合の対物レンズ100から液体試料までの距離d1は、従来の蓋体14’を用いた場合の距離d2よりも蓋体の厚みの分だけ短くすることができる。このため、本実施の形態の高圧力試料容器は、開口数が大きく、作動距離が小さな対物レンズを用いて光学顕微鏡観察することができる。
なお、開口数が大きい対物レンズ100は使用の際にレンズと観察窓との間にオイル101を満たす必要があるが、このことを考慮しても、本実施の形態の蓋体14を用いた場合の距離d1は、従来の蓋体を用いた場合の距離d2よりも短くなる。
【0017】
図4に、本実施の形態の高圧力試料容器10を用いて直径1μmの蛍光ビーズの光学顕微観察を行った結果を比較例の光学顕微観察結果と共に示す。比較例としては、厚さ1.5mmのBK7製窓材を蓋体の透孔に内側から貼り付けて成る高圧力試料容器を用いた。蛍光ビーズは窓材34に吸着させて観察した。
図4の(a)及び(c)は比較例及び本実施の形態の高圧力試料容器を用いたときの明視野像を、図(b)及び(d)は比較例及び本実施の形態の高圧力試料容器を用いたときの蛍光像をそれぞれ示す。
本実施の形態の高圧力試料容器10内の試料は、開口数NAが1.65の超高開口数対物レンズ(オリンパス株式会社製、Apo 100×OHR)を用いて観察した。この対物レンズは、レンズと窓材との間にオイルを満たして用いる油浸レンズである。一方、比較例の高圧力試料容器内の試料は開口数NAが0.6の対物レンズ(オリンパス株式会社製、LUCPLFLN40X)を用いて観察した。
図4の(a)と(b)及び(c)と(d)から、蛍光像はいずれも蛍光ビーズの発する蛍光であることを確認した。また、図4の(b)及び(d)から、従来の高圧力試料容器を用いた場合に比べて、本実施の形態の高圧力試料容器を用いた場合の方が、明るい蛍光像を観察できることが分かった。
【0018】
なお、本発明は上記した実施の形態に限らず、例えば次のような変形が可能である。
本発明者は、本発明の高圧力試料容器の観察窓の窓材と液体試料との界面で全反射するようにレーザー光を入射させは、窓材近傍の試料のみをエバネッセント照明により励起させることができることを確認した。このことから、本発明の高圧力試料容器を用いることにより、例えば生体分子に蛍光分子を修飾することで高圧力によって引き起こされる生体分子の構造変化や酵素活性の変化などを1分子ずつ検出することが可能になる。
【0019】
また、本発明者は、近赤外レーザー光を本発明の高圧力試料容器内部で集光させることにより、当該試料容器内に封入した微小球を集光点近傍に捕捉し三次元的に操作できることを確認した。これにより、微小球に生体分子を吸着させることで、高圧力環境下の溶液中で生体分子の位置を三次元的に操作可能となる。従って、微小球の光学像をカメラやフォトダイオードに投影し、その位置を検出することで、ナノメートルの精度で生体分子の重心位置を検出することができる。
【0020】
窓材は、光学的性質が均質な光学ガラスであれば良く、サファイア製の窓材の他、石英製、合成石英製、BK7製、ダイアモンド製の窓材等でも良い。
要求される耐圧性能や対物レンズの規格等を満たすのであれば、窓材は0.2mmよりも薄くても良く、また、0.2mmよりも厚くても良い。窓材を厚くした場合であっても蓋体の内側の面に固定する場合に比べて、対物レンズを試料の観察点に近づけることができる。
【0021】
観察窓の透孔の直径は0.4mmに限らず、観察対象の大きさに応じて適宜の直径に設定することができる。この場合、透孔の大きさに対する窓材の大きさの比が大きいほど窓材の接着面が大きくなり、窓材の耐圧性能が向上すると考えられることから、透孔の大きさに応じて、また、要求される耐圧性能に応じて、窓材を適宜の大きさにする必要がある。
【0022】
容器本体に観察窓を設け、蓋体に照射窓を設けても良い。
容器本体及び蓋体のいずれか一方に窓を設け、この窓が観察窓と照射窓を兼用するようにしても良い。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光学顕微観察用高圧力試料容器の縦断面図。
【図2】蓋体の観察窓部分の拡大図。
【図3】従来の光学顕微観察用高圧力試料容器の蓋体の観察窓部分の拡大図。
【図4】比較例の光学顕微観察用高圧力試料容器を用いたときの明視野像(a)、蛍光像(b)と本実施の形態の高圧力試料容器を用いたときの明視野像(c)、蛍光像(d)を示す図。
【符号の説明】
【0024】
10…光学顕微観察用高圧力試料容器
12…容器本体
14…蓋体
16…導入路
18…取付口
20…光照射窓
21…透孔
22…窓材
26…O-リング
32…観察窓
33…透孔
34…窓材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3