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明細書 :顕微鏡装置及びそれを用いた蛍光観察方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第4288323号 (P4288323)
登録日 平成21年4月10日(2009.4.10)
発行日 平成21年7月1日(2009.7.1)
発明の名称または考案の名称 顕微鏡装置及びそれを用いた蛍光観察方法
国際特許分類 G02B  21/06        (2006.01)
FI G02B 21/06
請求項の数または発明の数 20
全頁数 29
出願番号 特願2008-235795 (P2008-235795)
出願日 平成20年9月13日(2008.9.13)
審査請求日 平成20年11月20日(2008.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】五十嵐 康伸
【氏名】小原 健
【氏名】出口 雄規
【氏名】鈴木 健史
【氏名】橋本 浩一
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100109807、【弁理士】、【氏名又は名称】篠田 哲也
【識別番号】100148127、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 耕太
要約 【課題】細胞等の被観察物の位置制御と蛍光記録を制御する顕微鏡装置及び蛍光観察方法を提供する。
【解決手段】顕微鏡装置1は、被観察物2を載置するステージ3と、被観察物2の照明用光源4と、被観察物2に蛍光Fを励起する励起光用光源5と、照明光による光T、励起光5A及び蛍光Fの光路を形成している鏡筒部15と、被観察物2で生じた光Tによる画像情報を検出する画像情報検出部16と、蛍光Fによる蛍光画像情報を検出する蛍光画像情報検出部17と、被観察物2の運動モデルと画像情報検出部16から入力された被観察物2の画像情報とに基づいて被観察物2の蛍光観察領域を決定し、画像情報検出部16から入力された被観察物2の画像情報と蛍光画像情報検出部17から入力された蛍光画像情報とを蛍光観察領域内の所定の間隔毎に取得する制御部20と、を備えている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被観察物を載置するステージと、
上記被観察物に照明光を照射する第1の光源と、
上記被観察物に蛍光を励起するための励起光を照射する第2の光源と、
上記照明光の照射によって上記被観察物で生じた光、上記励起光及び上記蛍光のそれぞれの光路が形成されている鏡筒部と、
上記被観察物で生じた光による画像情報を検出する画像情報検出部と、
上記被観察物で生じた蛍光による蛍光画像情報を検出する蛍光画像情報検出部と、
上記被観察物の運動モデルと上記画像情報検出部から入力された上記被観察物の画像情報とに基づいて上記被観察物の蛍光観察領域を決定し、上記画像情報検出部から入力された上記被観察物の画像情報と上記蛍光画像情報検出部から入力された蛍光画像情報とを上記蛍光観察領域内の所定の間隔毎に取得する制御部と、
を備えたことを特徴とする、顕微鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記蛍光観察領域を最適制御則に従って決定することを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被観察物の運動モデルに従って前記蛍光観察領域の中心位置を決定することを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の光源を制御するための第1光源制御部と前記第2の光源を制御するための第2光源制御部とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記ステージは、前記被観察物の位置を移動させる三次元ステージであることを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記蛍光画像情報検出部は、少なくとも1波長以上の蛍光を分離する波長選択手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記第2の光源と前記被観察物との間に配設される第1のピンホールと、前記蛍光と前記蛍光画像情報検出部との間に配設される第2のピンホールと、を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記第1のピンホール又は前記第2のピンホールを移動及び/又は回転させるピンホール駆動部を、備えたことを特徴とする、請求項7に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記第1の光源と前記被観察物との間に配設される対物レンズと、該対物レンズの駆動部と、を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
前記被観察物で生じた光と前記画像情報検出部との間に配設される結像レンズと、該結像レンズの駆動部と、を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記蛍光と前記蛍光画像情報検出部との間に配設される結像レンズと、該結像レンズの駆動部と、を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記被観察物を収容すると共に、雰囲気ガスで満たされる環境制御部を備えたことを特徴とする、請求項11記載の顕微鏡装置。
【請求項13】
前記環境制御部は、複数の前記被観察物を収容することができる収容部を備えたことを特徴とする、請求項12に記載の顕微鏡装置。
【請求項14】
前記被観察物を刺激する被観察物刺激手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項15】
被観察物の画像情報と該被観察物の蛍光画像情報とを取得する顕微鏡装置を用いた蛍光の観察方法であって、
上記被観察物の画像情報と上記被観察物の運動モデルとに基づいて上記被観察物の蛍光観察領域を決定する第1段階と、
上記蛍光観察領域内の所定の位置で上記蛍光画像情報を取得する第2段階と、
を備えたことを特徴とする、蛍光観察方法。
【請求項16】
前記第1段階の蛍光観察領域を、最適制御則に従って決定することを特徴とする、請求項15に記載の蛍光観察方法。
【請求項17】
前記第1段階と前記第2段階との間において、前記被観察物の画像情報と上記被観察物の運動モデルとに基づいて前記蛍光観察領域の中心位置を決定することを特徴とする、請求項15に記載の蛍光観察方法。
【請求項18】
前記第2段階において、前記被観察物の画像情報を取得することを特徴とする、請求項15に記載の蛍光観察方法。
【請求項19】
前記各段階を、前記蛍光観察領域内の所定の位置毎に所定の回数繰り返し行うことを特徴とする、請求項15~18の何れかに記載の蛍光観察方法。
【請求項20】
前記運動モデルのパラメータは、前記被観察物の位置、速度、分布、種類、形状の何れか又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする、請求項15に記載の蛍光観察方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織等の蛍光観察などに使用される顕微鏡装置及びそれを用いた蛍光観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学分野等において、生体組織や細胞内イオン、分子等の観察は必須の技術である。光学顕微鏡は、主に生体組織を観察するときに用いられる。また、レーザ共焦点顕微鏡は、光を生体細胞の一部に照射し、その照射位置を移動させ、細胞の一部を観察するときに用いられる。
【0003】
光学顕微鏡の主な観察技術の一つに、生体組織の細胞内のイオンや分子に蛍光色素を付け、その蛍光色素に励起光を照射し、励起された蛍光色素が発する蛍光を観察する蛍光観察法がある。
蛍光と励起光の波長は異なっている。従って、蛍光を解析することで細胞内分子の検出や濃度の計測が可能になる。このため、蛍光観察は以下の長所を持つ。
(i)イオンや分子の大きさでも観察できる。
(ii)特定のイオンや分子のみを観察できる。
(iii)蛍光の明るさがイオンや分子濃度に応じて変化するので、これらの濃度を測定することができる。
【0004】
しかしながら、一般に蛍光観察は以下の短所も有している。
(i)励起光の波長帯域が紫外の場合、励起光が細胞にとって有毒となる。
(ii)励起光を当て続けると蛍光色素が退色する。退色とは、蛍光の強さが弱まることである。
【0005】
蛍光観察が可能な蛍光顕微鏡を使用して動く細胞を観察していると、細胞が顕微鏡の視野外に出て観察が中断してしまう場合がある。
【0006】
この問題の解決方法として、(1)対物レンズの倍率を下げ視野を広げる、(2)機械的又は化学的に細胞の動きを抑制する、(3)ステージを動かし細胞の位置を視野の中心にする。しかし、(1)の方法は空間解像度が低下し、(2)の方法は細胞へ悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
上記(3)の解決方法に関して特許文献1及び2には、微小な観察物を観察するために被観察物を追跡する機構を備えた光学顕微鏡が開示されている。これらの光学顕微鏡は、透過光を用いた細胞位置及び観察領域の制御と透過光記録とを行うことができる。
【0008】
特許文献3~5には、蛍光を用いた細胞位置及び観察領域の制御と蛍光記録とを行うことができる蛍光顕微鏡が開示されている。
【0009】
非特許文献1~5には、比較的大きな被観察物として動くゾウリムシを視野に固定して観察する方法が報告されている。
【0010】
培養液中を自由に動くことが可能な細胞のうち、医学及び生物学分野で重要視されているものとして、細菌やウイルスから人体を守る機能を持つ免疫細胞が挙げられる(非特許文献6参照)。
【0011】
免疫機能に関連する細胞内分子は数多く存在するが、それらの分子の検出や分子濃度の時間変化を計測するためには蛍光観察を用いなければならない。
【0012】
免疫細胞の中でも、スライドガラスの表面にはあまり付着せず、浮遊している細胞は浮遊細胞に分類される。シャーレ中の浮遊細胞は、培養液の対流、重力、シャーレの壁及び底部、水面及び細胞同士の相互作用などにより、常に位置を変えている。浮遊細胞の観察には、例えば非特許文献1で報告されている奥らの手法を用いて、一つの細胞を追跡する方法も考えられる。
【0013】

【特許文献1】特開平5-80255号公報
【特許文献2】特開平7-2535487号公報
【特許文献3】特開平7-261097号公報
【特許文献4】特開2005-214924号公報
【特許文献5】特開2006-292420号公報
【特許文献6】WO2003/102636号公報
【非特許文献1】H. Oku, N. Ogawa, Ishikawa, K. Hashimoto, “Two-dimensional tracking of a motile micro-organism allowing high-resolution observation with various imaging techniques”, Review of Scientific Instruments, Vol.76, No.3, 2005
【非特許文献2】H. Oku, M. Ishikawa, Theodorus, and K. Hashimoto, “High-speed autofocusing of a cell using diffraction patterns”, Optics Express, Vol.14, No.9, pp.3952-3960, 2006
【非特許文献3】奥寛雅,石井抱,石川正俊:マイクロビジュアルフィードバックシステム,電子情報通信学会誌 D-II,Vol.J84-D-II,No.6,pp.994-1002, 2001
【非特許文献4】奥寛雅,石川正俊:キロヘルツオーダーで応答可能な高速ビジョンチップ用可変焦点レンズの構造,光学,Vol.31,No.10,pp.758-764, 2002
【非特許文献5】橋本浩一:微生物を用いたアクティブセンシング,SORSTジョイントシンポジウム(6)講演要旨集,pp.23-26,2007年1月30日
【非特許文献6】D.M.ディビス:会話する免疫細胞,日経サイエンス, pp. 52-60, 2006年5月号
【非特許文献7】谷村保明:白血球分類の自動化, MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, Vol.14, No.1, pp.14-22, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
蛍光観察パラメータは、現在、観察者が経験則に従って決めている。つまり、客観的評価に従って決定しているのではないというのが現状である。この場合、細胞の位置、分布、種類等が変化しても、観察者は臨機応変に蛍光観察パラメータを調整することも困難になっている。
観察者が多くの細胞を観察しようとして、励起光の照射範囲や照射時間を過剰に広げた場合には、細胞と蛍光色素に不必要な悪影響を与えることになる。また、取得される蛍光画像データが大量となり、解析に多くの時間が掛かるようになる。
【0015】
従来の蛍光顕微鏡においても、励起光の種類や強度を自動的に制御することで細胞内の複数のイオンや分子の活性化状態を継時的に観察し、一回の実験中に起こった細胞内の複数のイオンや分子の相互作用を一括して可視化することが行われてきた。しかしながら、この自動制御は、予め決められた時間スケジュールに従ったものであるか、蛍光画像から得られる細胞情報と連動したものであった。
【0016】
蛍光画像だけを制御に用いた場合、蛍光は光の強度が弱いために制御用の画像を得るための露光時間が長くなる。つまり、制御にかかる時間が長くなってしまう。このため、細胞が移動する最大速度が早いと、制御が有効に機能しなくなる場合が多くなる。このような制御法は、本来動かない細胞を長時間観察した際に起こるずれを補正することを主目的としていた。
【0017】
本発明は上記課題に鑑み、被観察物からの透過光等を制御に用いることで、蛍光観察時の被観察物の位置や観察領域等の自動制御を行うことができる、顕微鏡装置及びそれを用いた蛍光観察方法を提供することを目的としている。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の顕微鏡装置は、被観察物を載置するステージと、被観察物に照明光を照射する第1の光源と、被観察物に蛍光を励起するための励起光を照射する第2の光源と、照明光の照射によって被観察物で生じた光、励起光及び蛍光のそれぞれの光路が形成されている鏡筒部と、被観察物で生じた光による画像情報を検出する画像情報検出部と、被観察物で生じた蛍光による蛍光画像情報を検出する蛍光画像情報検出部と、被観察物の運動モデルと画像情報検出部から入力された被観察物の画像情報とに基づいて被観察物の蛍光観察領域を決定し、画像情報検出部から入力された被観察物の画像情報と蛍光画像情報検出部から入力された蛍光画像情報とを蛍光観察領域内の所定の間隔毎に取得する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
上記構成において、制御部は、好ましくは、蛍光観察領域を最適制御則に従って決定する。
制御部は、好ましくは、被観察物の運動モデルに従って蛍光観察領域の中心位置を決定する。
制御部は、好ましくは、第1の光源を制御するための第1光源制御部と第2の光源を制御するための第2光源制御部とを備えている。
ステージは、好ましくは、被観察物の位置を移動させる三次元ステージである。
蛍光画像情報検出部は、好ましくは、少なくとも1波長以上の蛍光を分離する波長選択手段を備えている。
好ましくは、第2の光源と被観察物との間に配設される第1のピンホールと蛍光と蛍光画像情報検出部との間に配設される第2のピンホールとを備えている。
好ましくは、第1のピンホール又は第2のピンホールを移動及び/又は回転させるピンホール駆動部を、備えている。
好ましくは、第1の光源と被観察物との間に配設される対物レンズと対物レンズの駆動部とを備えている。
好ましくは、被観察物で生じた光と前記画像情報検出部との間に配設される結像レンズと、結像レンズの駆動部と、を備えている。
好ましくは、蛍光と蛍光画像情報検出部との間に配設される結像レンズと、結像レンズの駆動部と、を備えている。
好ましくは、被観察物を収容すると共に、雰囲気ガスで満たされる環境制御部を備えている。
環境制御部は、好ましくは、複数の被観察物を収容することができる収容部を備えている。
好ましくは、被観察物を刺激する被観察物刺激手段を備えている。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の蛍光観察方法は、被観察物の画像情報と被観察物の蛍光画像情報とを取得する顕微鏡装置を用い、被観察物の画像情報と被観察物の運動モデルとに基づいて被観察物の蛍光観察領域を決定する第1段階と、蛍光観察領域内の所定の位置で蛍光画像情報を取得する第2段階と、を備えている。
【0021】
上記構成において、第1段階の蛍光観察領域を、好ましくは、最適制御則に従って決定する。
第1段階と第2段階との間において、好ましくは、被観察物の画像情報と被観察物の運動モデルとに基づいて蛍光観察領域の中心位置を決定する。
第2段階において、好ましくは、被観察物の画像情報を取得する。
各段階を、好ましくは、蛍光観察領域内の所定の位置毎に、所定の回数繰り返し行う。
運動モデルのパラメータは、好ましくは、被観察物の位置、速度、分布、種類の何れか又はこれらの組み合わせからなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の顕微鏡装置によれば、被観察物からの画像情報と被観察物の運動モデルに基づいて蛍光観察領域を決めるので、蛍光観察を自動的に行うことができる。
【0023】
本発明の顕微鏡装置を用いた蛍光観察方法によれば、被観察物の運動モデルに基づいて評価関数と自動制御則を導出するために被観察物の位置、分布、種類、状態等をフィードバック情報として用いることで、被観察物の動的変化に対しても臨機応変かつ自動的に蛍光観察パラメータを調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
(第一実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の顕微鏡装置1の構成を示す模式図である。
本発明の顕微鏡装置1は、被観察物2を載置し、被観察物2の位置を自由に移動し得るステージ3と、光学系10と、ステージ3の位置等を制御する制御部20と、を備えている。
光学系10は、被観察物2の像や位置を検出するために被観察物2に照明光を照射する照明用光源4と、被観察物2からの蛍光を励起するための励起光を照射する励起用光源5と、照明用光源4の光が照射されて被観察物2で生じた透過光Tの光路、励起光5Aを被観察物2に導く光路及び被観察物2で生じた蛍光Fの光路を形成するための光学部品を配置した鏡筒部15と、鏡筒部15から出射した被観察物2からの透過光からなる画像情報を検出する画像情報検出部16と、鏡筒部15から出射された被観察物2の蛍光画像情報を検出する蛍光画像情報検出部17と、を有している。被観察物2は、例えば、生体試料である細胞等であってよい。
【0025】
ステージ3には被観察物2が載置され、後述する制御部20により被観察物2の位置が制御される。このステージ3は、所謂電動ステージであり、被観察物2の載置される二次元の平面(X-Y平面)、さらには、三次元で駆動制御されるXYZステージであってもよい。三次元の駆動は、ロボットアーム型のマニュピレータで行ってもよい(非特許文献3参照)。
ここで、XY軸方向の位置制御は照明用光源4や励起用光源5の照射位置や、後述するピンホールの位置で行ってもよい。また、Z軸方向の位置制御は、後述する対物レンズ、結像レンズやピンホールで行ってもよい(特許文献6、非特許文献2,4参照)。
【0026】
照明用光源4が透過光用の光源(以下、透過光用光源と呼ぶ。)である場合、照明用光源4は、被観察物2が吸収又は反射する波長を含む光を発するものであれば何でもよい。透過光Tが励起光5Aや蛍光Fと干渉しないように、励起光5Aや蛍光Fと同じ波長帯は光学フィルタ8等でカットすることが望ましい。このような透過用光源4としては、ハロゲンランプ等の各種ランプ、発光ダイオード、各種レーザを使用することができる。照明用光源4から被観察物2へ照射された照明光が、被観察物2からの透過光Tや反射光となって画像情報検出部16で検出される。被観察物2からの画像は、所謂明視野像や暗視野像等の画像情報である。
【0027】
励起用光源5は、被観察物2又は被観察物2に含有させた蛍光体を励起できる光源であれば何でもよい。この励起用光源5としては、キセノンランプ、水銀ランプ等のランプ、アルゴンレーザ等の各種レーザを励起光5Aとすることができる。励起光5Aを、透過光Tや蛍光Fと干渉させないためには、不必要な波長帯を光学フィルタ9等でカットすることが望ましい。励起用光源5は、図示しない投光管を介して被観察物2に導入されてもよい。
【0028】
鏡筒部15は、照明用光源4の光によって被観察物2で生じた光、励起光5A及び蛍光Fを通過させる光路を形成するために、第1及び第2のビームスプリッター18,19、対物レンズ6及び結像レンズ7からなる光学部品を含んで構成されている。図示の場合には、倒立型の顕微鏡装置の一例を示している。ここで、照明用光源4の光によって被観察物2で生じた光は、透過光Tではなく反射光であってもよい。
【0029】
上記第1及び第2のビームスプリッター18,19は、鏡筒部15に設けた図示しないポートに配置されてもよい。ビームスプリッター18,19は、透過用光源4の波長と被観察物2から発生する蛍光Fの波長とを分離できるダイクロイックミラーなどを使用することができる。以下の説明においては、ビームスプリッター18,19をダイクロイックミラーとして説明する。
【0030】
第1のダイクロイックミラー18は、短波長の光を反射し、長波長の光を透過させる作用を有しているので、励起光5Aは反射し、紙面上方の被観察物2へ入射する。一方、被観察物2からの透過光Tは、励起光5Aの波長よりも長波長の光を用いることにより、第1のダイクロイックミラー18を透過する。
【0031】
第2のダイクロイックミラー19は、第1のダイクロイックミラー18の下方に配置されている。第1のダイクロイックミラー18を透過した被観察物2からの透過光Tは、第2のダイクロイックミラー19と結像レンズ7を通過し、鏡筒部15から画像情報検出部16へ出射される。この場合、透過光Tが蛍光Fの励起光5Aや蛍光Fと干渉しないように、図示しないフィルタを介して画像情報検出部16へ入射させてもよい。
【0032】
第1のダイクロイックミラー18を透過した被観察物2からの蛍光Fは、第2のダイクロイックミラー19で反射され、結像レンズ7を通過し、鏡筒部15から蛍光画像情報検出部17へ出射される。この場合、蛍光Fが、蛍光Fの励起光5Aや透過光Tと干渉しないように、図示しないフィルタを介して蛍光画像情報検出部17へ入射させてもよい。
【0033】
画像情報検出部16は、照明用光源4からの光が被観察物2からの透過光Tや反射光による画像情報を取得できる検知器を備えている。透過光Tの光軸で、かつ、透過光Tを検出する画像情報検出部16の直前には結像レンズ7が設けられている。検知器には、撮像素子を用いることができ、CCD型撮像素子やCMOS型撮像素子を使用できる。さらに、これらの撮像素子は、S/N比(信号対雑音比)を向上させるために雑音を減らすように、例えば液体窒素やペルチェ素子を使用した冷却装置で冷却してもよい。検知器は、画像処理を行う計算機を備えていてもよい。また、目視観察用として接眼レンズを備えていてもよい。
【0034】
蛍光画像情報検出部17は、被観察物2からの蛍光画像を取得できる検知器を備えている。この検知器は、目的に応じて銀塩カメラや撮像素子を用いることができる。撮像素子には、画像情報検出部16と同様に、CCD型撮像素子やCMOS型撮像素子を使用できる。さらに、これらの撮像素子は、S/N比(信号対雑音比)を向上させるために雑音を減らすように、液体窒素やペルチェ素子を使用した冷却装置で冷却してもよい。蛍光Fの光路上で、かつ、蛍光Fを検出する蛍光画像情報検出部17の直前に結像レンズ12を設けてもよい。また、目視観察用として接眼レンズを備えていてもよい。
【0035】
画像情報検出部16用の結像レンズ7と蛍光画像情報検出部17用の結像レンズ12は異なるレンズでもよい。例えば、画像情報検出部16用の結像レンズ7の倍率を下げると共に、蛍光画像情報検出部17用の結像レンズ12の倍率を上げるようにしてもよい。この場合、画像情報検出部16で取得する透過光Tの画像の視野を広げることができると共に、蛍光画像情報検出部17では、被観察物2のより拡大した蛍光画像を得ることができる。
【0036】
図1においては、説明のために透過光Tの光路や励起光5A及び蛍光Fの光路を重ならないように示しているが、これらの各光路は一致させてもよい。画像情報検出部16と蛍光画像情報検出部17との間で、視野中心位置及び焦点位置のズレが生じる場合がある。この場合、予めそれらのズレを測定し、被観察物2の位置制御及び観察領域制御におけるオフセットとして利用してもよい。オフセットを掛けることによって、視野中心位置や焦点位置のズレを補正することができる。
【0037】
制御部20は、被観察物2の透過光Tや反射光による画像情報が、画像情報検出部16を介して入力される。制御部20は、画像情報の処理と画像情報の処理結果に基づいたステージ3の制御とを行う。制御部20は電子計算機から構成されている。このような電子計算機としては、パーソナルコンピュータ21を用いることができる。パーソナルコンピュータ21は、被観察物2の画像などを表示するディスプレー装置22を備えている。
【0038】
上記制御部20は、光学系10により被観察物2を透過した透過光Tの画像情報が入力され、この画像情報によりステージ3上の被観察物2の位置を制御する。
【0039】
顕微鏡装置1においては、画像情報検出部16から入力された被観察物2の画像情報と被観察物2の運動モデルとに基づいて、被観察物2の蛍光観察領域を決定し、ステージ3を動かして、蛍光観察領域内の所定の間隔毎の位置で、画像情報検出部16から入力された被観察物2の画像情報と蛍光画像情報検出部17から入力された蛍光画像情報とを取得する。
ここで、運動モデルのパラメータは、被観察物2の位置、速度、分布、種類、形状の何れか又はこれらの組み合わせからなる。
具体的には、蛍光観察のために、制御部20は、画像情報検出部16から入力された被観察物2の透過光の画像情報により、被観察物2の蛍光観察領域を決定する第1段階と、被観察物2の運動モデルに従って蛍光観察領域の中心位置を決定する第2の段階と、所定の間隔で蛍光観察領域内の蛍光観察と明視野観察とを行う第3の段階と、を含む制御を行い、被観察物2の蛍光情報の取得を制御することができる。ここで、蛍光観察領域は、後述する最適制御則等に従って決定することができる。
【0040】
(位置制御アルゴリズム)
先ず、第1段階における被観察物2の透過光の画像情報により、被観察物2の細胞位置を制御する方法、即ち細胞位置制御アルゴリズムについて説明する。
画像情報検出部16において、被観察物2の透過光の画像を取得し、次に、画像情報から画像特徴量を抽出する。画像特徴量は、画像情報の二値化によって観察対象の存在する領域を抽出し、このとき、直前に観察対象が存在していた領域の近傍でのみ抽出を行うセルフウィンドウ法を用いることで、障害物に惑わされることなく観察対象のみを抽出することができる(非特許文献1参照)。
【0041】
具体的には、透過光画像特徴量として、上記の二値データから0,1,2次モーメントを計算する。この画像特徴量を、制御部20のパーソナルコンピュータ21で読み出し、被観察物2の重心と方向を求める。
【0042】
次に、被観察物2の重心が視野中心に移動するように、ステージ3のモーター回転角の目標値を定め、このモーターをフィードバック制御する。例えば、ステージ3にはXYZステージを使用することができる。このフィードバック制御には、比例、積分、微分の何れか、またはこれらの組み合わせによる制御手法を用いることができる。
【0043】
透過光画像特徴量は、上記セルフウィンドウ法以外を用いてもよく、例えば、被観察物2の回折像から抽出してもよい(非特許文献2参照)。
【0044】
被観察物2の軌跡を再構成、つまり、再現するためには、上記のXYZステージ3の変位情報をパーソナルコンピュータ21に記録しておく。これにより被観察物2の軌跡を得ることができる。
【0045】
透過光Tを使用するのは、追跡対象となる被観察物2の全体像を高輝度で安定して写すためである。透過光T以外には、落斜照明を用いた被観察物2からの反射光を用いることもできる。反射光の光源は、透過光用光源4と同様の光源を用いることができる。この場合、被観察物2からの画像は反射光画像である。
【0046】
(蛍光観察方法)
次に、本発明の顕微鏡装置1を用いた蛍光観察方法について説明する。
被観察物2には、蛍光試薬を担持または注入する。被観察物2が細胞の場合には、Indo-1(AM体、同仁化学研究所)のような蛍光試薬を使用し、適度な濃度で所定時間負荷すればよい。Indo-1(AM体)は蛍光Fを発しないが、微生物の細胞膜を通過する。
【0047】
細胞膜を通過したIndo-1(AM体)は、体内の酵素エステラーゼによって脱AM体になる。つまり、蛍光Fを発するが細胞膜を通過できないIndo-1に変化する。Indo-1はCa2+イオンと結合した場合と解離した場合で異なる波長の蛍光Fを発する。
【0048】
結合と解離のそれぞれの状態にあるIndo-1の量は、Ca2+濃度によって変化する。つまり、Ca2+濃度の上昇に伴い、結合状態のIndo-1による蛍光Fは増え、逆に、解離状態のIndo-1による蛍光Fは減少する。この特性により、それぞれの波長の蛍光F強度を比較することで、Ca2+濃度を求めることができる。具体的には、後述する顕微鏡装置40を用いた場合には、2波長蛍光観察像を波長ごとに分割し、各画素ごとに計算した蛍光強度比を、予め作成しておいた検量線に代入することで、Ca2+濃度を求めることができる。
【0049】
Ca2+イオンのみならず、顕微鏡装置1のフィルタ9及びダイクロイックミラー18,19,26を交換することで、他のイオンや分子を対象とした蛍光色素を利用することも可能である。
【0050】
(蛍光観察領域の制御アルゴリズム)
顕微鏡装置1を用いて、蛍光観察枚数を減らすこと及び蛍光観察できる細胞数を増やすための制御について説明する。
制御としては、上記蛍光観察のためにステージ3のZ軸方向、つまり、結像レンズ7の位置、より具体的には蛍光観察領域幅の時間的変化として与える。
【0051】
蛍光観察の手順として、最初に蛍光観察する領域を決定する。
図2は、蛍光観察領域のモデルを示す図である。図の斜線で示した箇所は蛍光観察する領域を示す。その観察領域を等分割する。分割する幅d(ここで、d>0)は、観察する対象によって決定する。次に、観察領域の各点で蛍光観察を行う。そして、数十秒の時間をおいた後、観察領域を再設定し、蛍光観察を行う。これらの観察をT回(ここで、T>0)繰り返す。
【0052】
一枚の蛍光観察で励起光5Aを照射する時間e(>0)と、観察点の数N(k)(ここで、k>0)とを掛けた値であるeN(k)が、一回の蛍光観察で励起光5Aを照射した総時間となる。eは可変にも拡張できるが、ここでは簡単のために固定とする。k∈{0,1,・・・,T-1}回目の蛍光観察の領域幅2x(k)は、下記(1)式によって与えられる。【数1】
JP0004288323B1_000002t.gif
蛍光観察時間は、k回目の試行からk+1回目の蛍光Fに移行するときに、x(k)をx(k+1)と更新する。
【0053】
蛍光観察の評価関数として、下記(2)式によって与えられるJ(T)を導入する。【数2】
JP0004288323B1_000003t.gif
ここで、q(>0)、r(>0)は、それぞれ、蛍光観察に要する時間と観察される細胞数に関する重みである。y(k)は蛍光観察領域幅2x(k)内で蛍光観察される細胞数である。(2)式において、右辺は蛍光観察枚数N(k)が少ないほど小さくなり、蛍光観察される細胞数y(k)が多いほど小さくなる。一方、N(k)が少なくなると、y(k)も少なくなる。
よって問題は、評価関数J(T)を最小化する蛍光観察パラメータN(k)を探す問題と置き換えられる。(1)式より、N(k)とx(k)とは線形の関係にあるので、以下ではx(k)の最適制御側を求める。
【0054】
時刻kにおけるx(k)を、下記(3)式によって更新する。【数3】
JP0004288323B1_000004t.gif
ここで、x(k)は正の値である。次の時刻のx(k+1)は、今の時刻のx(k)に、制御則u(k)を加えたものであることを意味する。制御則u(k)は細胞数の観測値をフィードバックする出力フィードバック則であり、細胞数の観測値集合である下記(4)式に依存する。【数4】
JP0004288323B1_000005t.gif

【0055】
以上のことから、x(k)を求める問題は、最適制御則U(T-1)を求めることに帰着できる。これは、制御理論において最適な出力フィードバック則を求める問題となる。従って、下記(5)式の最適制御則U(T-1)を満たす最適制御則U(T-1)=[u(0),u(1),・・・,u(T-1)]を求める。【数5】
JP0004288323B1_000006t.gif

【0056】
いま、制御則u(k)を求める上で問題となるのは、顕微鏡装置1の光軸方向に沿った細胞2の運動である。これは、顕微鏡装置1の光軸方向の運動によって、細胞2が蛍光観察領域に存在しなくなることが問題であるためである。従って、顕微鏡装置1の光軸における細胞2の運動を予想するためのモデルを用いる。そして、蛍光観察領域幅2x(k)とその領域内に存在する細胞数y(k)の関係を求める。
【0057】
全細胞数をAとする。細胞2を識別するための番号をiとする。iは、i∈{1,2,・・・,A}の範囲とする。細胞2の顕微鏡装置1の光軸方向の位置z(>0)を、下記(6)式とする。【数6】
JP0004288323B1_000007t.gif
ここで、vは細胞2の移動速度の集団平均を表す定数である。ω(k)は、細胞2の運動の項に入るノイズである。その特性は、平均E[ω(k)]=0で、分散は下記(7)式によって与えられるとする。なお、【数7】
JP0004288323B1_000008t.gif
ここで、δkτ及びδijはクロネッカーのデルタである。tは、転置を表す。
【0058】
初期位置z(0)は、下記(8)式によって与えられる平均と下記(9)式によって与えられる分散が既知である確率変数とする。vとω(k)とは独立であるとする。ここで、【数8】
JP0004288323B1_000009t.gif
【数9】
JP0004288323B1_000010t.gif

【0059】
の分散Pの時間更新式は、上記の(6)式から、下記(10)式によって与えられる。【数10】
JP0004288323B1_000011t.gif

【0060】
細胞2の運動モデルとして、細胞2の分布を与えることによって、各時刻の細胞位置の平均と分散を求めることができる。細胞数が十分に多いときは、中心極限定理によって、細胞2の分布は正規分布と見なすことできる。この場合、細胞位置の集団平均zバー(k)は下記(11)式によって与えられ、細胞位置の分散の集団平均P(k)は下記(12)式によって与えられる。【数11】
JP0004288323B1_000012t.gif
【数12】
JP0004288323B1_000013t.gif

【0061】
kにおける細胞2の顕微鏡装置1の光軸方向における位置の分布は、下記(13)式の確率密度関数h(z(k))によって与えられるとする。【数13】
JP0004288323B1_000014t.gif

【0062】
この場合、P(k)とz(k)の時間更新は、上記(10)~(13)式によって、それぞれ、下記(14)式及び(15)式によって与えられる。蛍光観察領域の中心は、(15)式のzバー(k+1)に一致するように制御する。【数14】
JP0004288323B1_000015t.gif
【数15】
JP0004288323B1_000016t.gif

【0063】
kにおける顕微鏡装置1の光軸方向の細胞数分布f(k,n(k))を、下記(16)式のように確率密度関数h(n(k))のA倍であるとする。【数16】
JP0004288323B1_000017t.gif

【0064】
顕微鏡装置1の光軸方向の観測領域幅2x(k)内に存在する細胞数y(k)は、下記(17)式によって与えられる。【数17】
JP0004288323B1_000018t.gif

【0065】
y(k)に関する上記(17)式をx(k)に関して線形近似すると、下記(18)式となる。【数18】
JP0004288323B1_000019t.gif
ここで、c(k)はx(k)に掛かる係数であり、下記(19)式によって与えられる。(19)式より、x(k)>0のときc(k)>0となることがわかる。これは、観測幅に対して、その領域内に存在する細胞数が単調増加することを意味する。【数19】
JP0004288323B1_000020t.gif
d(k)はx(k)を含まない項であり、下記(20)式によって与えられる。【数20】
JP0004288323B1_000021t.gif

【0066】
次に、最適制御則の導出について説明する。
(1)式と(18)式を(2)式に代入して、評価関数J(T)を整理すると、J(T)は下記(21)式によって与えられる。【数21】
JP0004288323B1_000022t.gif
ここで、q(k)、α(k)及びβ(k)は下記(22)式によって与えられる。【数22】
JP0004288323B1_000023t.gif

【0067】
そして、評価区間をl(lはLの小文字)からT回目までの観察における評価関数の総和Jバー(l)を、下記(23)式によって定義する。【数23】
JP0004288323B1_000024t.gif
ここで、lは、l∈{1,2,・・・,T-1}の範囲である。
【0068】
数学的帰納法を用いてl=mにおける一般解Jバー(m)を求めると、それは下記(2
4)式となる。【数24】
JP0004288323B1_000025t.gif
ここで、Q(m),R(m),α(m),β(m)は、それぞれ下記(25)~(28)式で与えられる。【数25】
JP0004288323B1_000026t.gif
【数26】
JP0004288323B1_000027t.gif
【数27】
JP0004288323B1_000028t.gif
【数28】
JP0004288323B1_000029t.gif

【0069】
(24)式に最適性の原理を適用すると、u(k)が下記(29)式によって与えられる。【数29】
JP0004288323B1_000030t.gif
また、T回目までの各観察における制御則u(k)は、下記(30)で与えられる。【数30】
JP0004288323B1_000031t.gif

【0070】
さらに、(29)式の最適制御則を(18)式を用いて書き直すと、最適制御則は下記(31)式によって与えられる。【数31】
JP0004288323B1_000032t.gif

【0071】
(画像処理)
最適制御則を得るために必要な細胞数等の計測のための画像処理について説明する。
細胞2の運動モデルの同定として必要なのは、顕微鏡装置1の光軸方向への細胞2の移動速度の集団平均vと、細胞位置の分散の時間変化Wiである。なお、被観察物2が静止物の場合は、移動速度の集団平均v及び位置の分散の時間変化Wiを0として扱うことができる。
【0072】
細胞数を計測していくと、細胞2が焦点からずれた位置に存在するときにも数える場合がある。この場合、実際に細胞2が存在しない位置に、細胞2が存在すると計測していることになるので測定誤差となる。よって、細胞位置を推定する手法が必要不可欠であり、ベッケ線法等を応用することができる。
【0073】
細胞2の位置が焦点距離よりも対物レンズ6側に近いとき、細胞2の内側に明るい縞が生じ、外側に黒い縞が生じる。細胞2の位置が焦点距離よりも対物レンズ6側から遠いとき、細胞2の外側に明るい縞が生じ、内側に黒い縞が生じる。これらはベッケ線と呼ばれている。これは、細胞2を観察すると、焦点面を境に光の回折が大きく変化することによる。このベッケ線を画像処理に応用することにより、細胞2の顕微鏡装置1の光軸方向位置を推定することができる(非特許文献2参照)。
【0074】
上記の画像処理方法によれば、ベッケ法を用いて細胞位置を推定するので、細胞2が焦点からずれた位置に存在するときの、細胞数測定誤差を小さくすることができる。
【0075】
透過光画像処理は、以下の手順によって行うことができる。
(i)細胞2が浮遊する試験溶液の観察領域を顕微鏡装置1の光軸方向とし、被観察物2を画像情報検出部16に設けたカメラ等で撮像する(これを観察画像1とする)。この場合、観察画像1は、明視野像である。
(ii)(i)の観察画像よりも所定の距離だけ対物レンズ6に近い画像を撮影する(これを観察画像2とする)。所定の距離としては、例えば1μmのオーダーとすることができる。
(iii)観察画像1と観察画像2との差分をとる。
(iv)画像上の差分値の二値化を行う。
(v)半径が所定の大きさの画素の円形マスクを使用して膨張処理を行い、同一細胞2の離れた画素を一つに纏める。
(vi)上記画素の円形マスクを使用して縮小処理し、細胞2以外の小さなノイズを除去する。
(vii)八近傍の画素を連結させてラベリングし、細胞数を計測する。
(viii)ラベリングした細胞2の大きさによってフィルタリングする。つまり、大きすぎれば二つと数え、手順(v)で別の細胞2を同一細胞2とみなした場合に対処する。小さすぎればノイズとみなし、細胞2以外の存在を消しきれなかった場合に対処する。
【0076】
上記の画像処理は、顕微鏡装置1の画像情報検出部16と制御部20とステージ3を用いて、以下の(1)~(7)の手順によって行うことができる。
(1)パーソナルコンピュータ21が指示を出す。
(2)パーソナルコンピュータ21から指示を受けたD/Aボードが電圧を出力する。
(3)ステージ3を動かす。
(4)対物レンズ6を通して得た画像をカメラで取り込む。
(5)取り込んだ画像を、パーソナルコンピュータ21に送る。
(6)パーソナルコンピュータ21が画像処理を行う。
(7)画像処理した情報をもとに、パーソナルコンピュータ21がD/Aボードに指示を出す。
【0077】
画像処理によって各画像の細胞数を計測し、この細胞数が、観察領域の各観察点の細胞数となる。これより、観察領域内の細胞分布が求められる。各観察点の細胞数を用いて、zバー(k)を計算し、時間変化に対するzバー(k)の変化量を細胞の移動速度の集団平均vとして求めることができる。
【0078】
さらに、細胞位置の分散の時間変化Wiも求めることができる。
【0079】
次に、上記蛍光観察の最適制御則と、最適制御則の適用に必要な細胞数等の計測のための画像処理と、を組み合わせた蛍光観察について説明する。
図3は、本発明の顕微鏡装置1を用いた蛍光観察手順を示すフロー図の一例である。
先ず、ステップST1において、被観察物2を所定の間隔として、d(μm)間隔で(以下、d間隔と呼ぶ)、観察領域内の明視野観察を行う。被観察物2は、例えば免疫細胞の一種であるT細胞である。
【0080】
ステップST2において、観察領域内の被観察物2の平均位置と分散を算出する。
ステップST3では、観察したい被観察物2の数に応じて蛍光観察領域を決定する。
ステップST4において、d間隔で、蛍光観察領域の蛍光観察と明視野観察を行う。透過光画像の情報を増すために、蛍光観察と比べて明視野観察の観察間隔を狭めたり、観察領域を広げてもよい。
ステップST5において、所定の時間、例えば20秒待機する。制御に用いる透過光の画像情報を増すために、蛍光観察と比べて明視野観察の待機時間を短くしてもよい。
【0081】
次に、ステップST6において、最適制御則に従って蛍光観察領域を決定する。
ステップST7において、被観察物2の運動モデルに従って蛍光観察領域の中心位置を決定する。
【0082】
次に、ステップST8において、d間隔で、蛍光観察領域の蛍光観察と明視野観察を行う。d間隔は、例えば300μmとすることができる。透過光画像の情報を増すために、蛍光観察と比べて明視野観察の観察間隔を狭めたり、観察領域を広げてもよい。
【0083】
ステップST9において、蛍光観察を終了するか否かを判定する。そして、ステップST9において、蛍光観察が所定回数、例えばT回繰り返していないと判定した場合には、再びステップST5からステップST8の蛍光観察を行う。
【0084】
ステップST9において、ステップST5からステップST8までの被観察物2の測定がT回行われたと判定したとき、蛍光観察を終了する。このようにして、被観察物2の蛍光観察を、最適制御則に従って行うことができる。
【0085】
最初のk=0回目の試行では、例えば観察領域内をd間隔で全観察領域を観察する。k=1回目以降の試行以降は,蛍光観察領域幅2x(k)を観察する。x(k)は,最適制御則U(k)によって決定する。
【0086】
ここで、蛍光観察領域の中心zバー(k)は、上記(i)~(viii)で求めた細胞2の運動モデルパラメータvを利用して更新する。中心zバー(k)、幅x(k)で、所定ビット、例えば8ビットグレースケールの明視野観察像を、画像情報検出部16に設けたカメラで撮像し、このグレースケール画像を画像処理し、k+1回目の試行のx(k+1)を決定する。同時に,蛍光画像情報検出部17に設けた蛍光観察用カメラで蛍光観察像を撮像する。
【0087】
顕微鏡装置1によれば、従来、蛍光観察前に観察者が手動で行っていた蛍光観察のパラメータを自動化することができる。このため観察者の負担を軽減することができる。
【0088】
制御部20によって、さらに、蛍光観察の制御や蛍光画像の記録を行うことができる。図1に示すように、制御部20はさらに、励起用光源5を制御するための第2光源制御部としての励起用光源制御部23を備えて構成されてもよい。励起用光源制御部23は、被観察物2の透過光Tによる画像データに基づいて、励起光5Aにおける点滅や点灯時間を制御する機能を有している。また、励起光5Aの波長及び強度を選択して照射する機能を備えていてもよい。
【0089】
蛍光画像の記録や画像処理を行うために、蛍光画像情報検出部17からの検知出力が制御部20に入力される。
【0090】
さらに、顕微鏡装置1によれば、透過光画像から得られる被観察物2の情報は、被観察物2からの蛍光Fに比較して光量が多く、かつ、高速に記録されている。したがって、蛍光Fと同時に取得した透過光画像を、蛍光画像の解析処理に用いることで解析結果の時空間精度が向上する。
【0091】
顕微鏡装置1では、透過光画像から得られる位置などの細胞情報と連動させて、蛍光画像情報検出部17の蛍光画像を記録することができる。つまり、蛍光Fが照射されている時間だけ蛍光画像を記録すればよい。したがって、被観察物2が顕微鏡装置1の視野に入っていない時間の蛍光画像記録が不要となる。このため、蛍光画像記録のための演算時間や記憶装置の容量を減らすことができ、パーソナルコンピュータ21を有効利用することができる。無駄な蛍光画像記録をする必要がなくなるので、蛍光画像の解析時間も大幅に短縮することができる。
なお、本発明において、透過光画像を用いた蛍光観察の制御は、スケジューリング問題と一般化できる。このため、蛍光観察の制御には、上記した最適制御則以外に、準最適制御や、ニューラルネットワーク制御、ファジィ制御、遺伝的アルゴリズム等の知的制御等を用いてもよい。
【0092】
さらに、顕微鏡装置1の構成は、以下に示す種々の実施形態とすることができる。
(第二実施形態)
図4は、第2実施形態の顕微鏡装置30の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置30が顕微鏡装置1と異なるのは、対物レンズ6を透過光Tの光軸、即ちZ軸方向に移動できるように対物レンズ用駆動部32を設けた点にある。対物レンズ用駆動部32は、制御部20によって制御される。対物レンズ用駆動部32は、ピエゾ素子のような駆動部品を用いて構成することができる。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので説明は省略する。
【0093】
(第三実施形態)
図5は、第3実施形態の顕微鏡装置35の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置35が顕微鏡装置1と異なるのは、画像情報検出部16側の結像レンズ7を光軸方向(Z軸方向)に移動できるように透過光用の結像レンズ用駆動部37を設けた点にある。結像レンズ用駆動部37は、制御部20によって制御される。結像レンズ用駆動部37は、ピエゾ素子のような駆動部品を用いて構成することができる。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0094】
(第四実施形態)
図6は、第4実施形態の顕微鏡装置40の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置40が顕微鏡装置1と異なるのは、蛍光画像情報検出部17の前に蛍光波長選択部25を設けた点にある。蛍光波長選択部25は、2つの蛍光波長を分離して検出できる構成を有している。蛍光波長選択部25は、第3のダイクロイックミラー26とミラー27とプリズム28とから構成されている。さらに、レンズ29を設けてもよい。この構成によれば、2波長の蛍光Fを分離して検知することができる。蛍光波長選択部25は、鏡筒部15又は蛍光画像情報検出部17に配置することができる。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0095】
蛍光波長選択部25は、2波長の蛍光Fの分離を行う態様を示しているが、分光器を用いることで多波長の蛍光Fを検知してもよい。つまり、蛍光波長選択部25は、少なくとも1波長以上の蛍光Fを分離するプリズムや分光器等の部品からなる波長選択手段を備えて構成することができる。
【0096】
顕微鏡装置40によれば、励起光5Aの種類や強度の制御が可能になる。つまり、複数の蛍光色素に対して、観測時間の自動割り振りなどが可能になる。一般に、細胞2は、その運動状態や外部からの刺激により、活性化または不活性化する細胞2内のイオンや分子が異なることが知られている。このため、透過光画像から得られる被観察物2の運動情報や細胞2の形状及び刺激の種類や強度等と連動させて、被観察物2へ励起する励起光5Aの波長や強度の選択制御が可能となる。これにより、透過光画像から得られる被観察物2の情報に連動させて、被観察物2からの蛍光情報を効率よく取得することができる。
なお、複数種類の細胞2を同時に観察するときには、透過光画像に含まれる各細胞2の面積、形状、色の濃度、色調、テクスチャ等を用いて、細胞2の種類を画像処理で自動判別することも可能である(非特許文献7参照)。
【0097】
(第五実施形態)
図7は、第5実施形態の顕微鏡装置45の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置45が顕微鏡装置1と異なるのは、蛍光画像情報検出部17の光軸方向に挿入された結像レンズ12を光軸方向に移動させるように、結像レンズ用駆動部52を設けている点にある。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0098】
顕微鏡装置45によれば、結像レンズ12を、結像レンズ用駆動部52によって駆動することによって被観察物2の焦点位置を変えることができる。結像レンズ12の駆動は、透過光Tを検出する画像情報検出部16に対して独立して行うことができる。これにより、被観察物2からの蛍光Fの光軸方向の観察を行うことができる。
【0099】
(第六実施形態)
図8は、第6実施形態の顕微鏡装置50の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置50が顕微鏡装置1と異なるのは、光学系10中に、さらに2つのピンホール53,54を設けて共焦点光学系で構成した点にある。第1のピンホール53は、励起用光源5とフィルタ9との間の光軸上に配設されている。第1のピンホール53とフィルタ9の配置順は入れ替えてもよい。第2のピンホール54は、蛍光画像情報検出部17と結像レンズ12との間の蛍光Fの光軸上に配設されている。第2のピンホール54と結像レンズ12との配置順は入れ替えてもよい。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0100】
顕微鏡装置50によれば、蛍光Fを観察する光学系が共焦点光学系で構成されている。第1のピンホール53を設けることによって、励起用光源5の照射位置を制御することができる。第2のピンホール54を設けることによって、焦点以外からの光が蛍光画像情報検出部17へ入射しなくなる。このため、明瞭な蛍光像が得られるようになる。さらに、被観察物2を載置するステージ3の制御がXYステージで行う構成の場合には、XYステージ3の移動に応じて被観察物2の走査が行われる。
【0101】
(第七実施形態)
図9は、第7実施形態の顕微鏡装置55の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置55が顕微鏡装置50と異なるのは、さらに、第2のピンホール54を蛍光Fの光軸方向に移動及び/又は回転させるように第2のピンホール54を駆動するピンホール駆動部56を設けている点にある。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0102】
顕微鏡装置55では、蛍光の光軸方向に挿入された第2のピンホール54を、ピンホール駆動部56によって駆動することによって被観察物2から蛍光Fの焦点及び観察位置を変えることができる。第2のピンホール54の駆動は、透過光Tを検出する画像情報検出部16に対して独立して行うことができる。また、第2のピンホール54は、複数の穴から構成されていてもよい。
【0103】
さらに、第1のピンホール53を駆動するピンホール駆動部58を設けてもよい。第1のピンホール53を光軸上で移動及び/又は回転させることで、励起用光源5の照射位置を制御することもできる。また、第1のピンホール53は、複数の穴から構成されていてもよい。
【0104】
(第八実施形態)
図10は、第8実施形態の顕微鏡装置60の構成を示す模式図である。
顕微鏡装置60が顕微鏡装置1と異なるのは、被観察物2の下方から透過光Tが照射される、所謂正立型の光学系10Aを有している点である。他の構成は顕微鏡装置1と同じであるので、説明は省略する。
【0105】
顕微鏡装置60の光学系10Aは、第2~第7の実施形態の顕微鏡装置30,35,40,45,55の光学系10の何れか又はこれらを組み合わせた構成とすることができる。例を挙げると、顕微鏡装置60において、顕微鏡装置30のように対物レンズ6を光軸方向(Z軸方向)に移動できるように対物レンズ用駆動部32を設けてもよい。
【0106】
さらに、顕微鏡装置60において、顕微鏡装置35のように画像情報検出部側16の結像レンズ7を光軸(Z軸方向)に移動できるように結像レンズ用駆動部37を設けてもよい。
【0107】
顕微鏡装置30,35,40,45,50,55,60の何れにおいても、顕微鏡装置1と同様に透過光画像及び蛍光画像の観察を行うことができる。
【0108】
(被観察物の環境制御)
被観察物2の環境制御について説明する。
図11は環境制御部60の構成を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のX-Xに沿った断面図である。
環境制御部60は、本体部62と、本体部62の下部に配置され被観察物2を収容する収容部64と、を含んで構成されている。
本体部62は、収容部64に対応する開口を有している長方形の樹脂板65と、樹脂板65の上部に配設され樹脂板65を覆うスライドガラス66と、樹脂板65の下部に配設され樹脂板65を覆う樹脂フィルム67と、を備えている。さらに、樹脂板65の開口部65Aに接続するガス配管68が設けられており、ガス配管68の入力側68Aから出力側68Bへ雰囲気ガス69が導入される。雰囲気ガス69としては、二酸化炭素(CO)と空気の混合ガス等を挙げることができる。
ここで、樹脂板65は、例えばアクリル樹脂を用いることができる。樹脂フィルム67は、マイラーからなるフィルム等を用いることができる。さらに、板65、スライドガラス66及び樹脂フィルム67を保持する保持手段70を備えていてもよい。
【0109】
収容部64は皿状の容器構造を有しており、容器最上部の外周部が樹脂フィルム67に接続されている。収容部64の低面にはカバーガラス71が配設されている。樹脂フィルム67において、収容部64と対向する下面にはカバーガラス72が設けられている。雰囲気ガス69は、樹脂フィルム67の細孔67Aを介して収容部64へ導入される。収容部64は、図示しない被観察物2と被観察物用の培養液74で満たされる。これにより、収容部64内の被観察物2と被観察物用の培養液74は、雰囲気ガス69の曝されるようになる。
【0110】
環境制御部60を顕微鏡装置1のステージ3に載置することで、被観察物2を培養液74に保持した状態で観察することができる。さらに、顕微鏡装置1を恒温槽内に収容すれば、培養液74の温度を一定とすることができる。これにより、被観察物2を培養液74に保持し、温度と雰囲気ガス69を一定の状態として、被観察物2の透過光Tや蛍光Fを観察することができる。
【0111】
環境制御部60は、複数の被観察物2の測定ができるように構成してもよい。具体的には、図11に示した環境制御部60を複数配設した構造としてもよい。
図12は複数の被観察物2の観察ができる環境制御部80の構成を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-Xに沿った断面図である。
環境制御部80が環境制御部60と異なるのは、収容部84が一体ではなく、格子状の障壁部85によって複数の収容区画86を有するように仕切られている点である。各収容区画86には培養液74が注入されている。他の構成は環境制御部60と同じであるので、説明は省略する。
【0112】
環境制御部80によれば、複数の収容区画86のそれぞれに被観察物2を収容することができるので、複数の被観察物2からの透過光Tや蛍光Fを、温度と雰囲気ガス69を一定の状態にして観察することができる。複数の収容区画86に注入する培養液74の種類を異なるようにし、被観察物2となる細胞の種類は同じものとしてもよい。これらの場合には、培養液74の条件を変えたときの各細胞2からの透過光Tや蛍光Fを、温度と雰囲気ガス69を一定の状態にして連続的に観察することができる。逆に、複数の収容区画86に注入する培養液74の種類を同じとして、被観察物2となる細胞の種類は異なるものとしてもよい。
【0113】
さらに、環境制御部60,80を備えた顕微鏡装置1を用いた蛍光観察では、透過光画像から得られる被観察物2の情報に連動させて、被観察物2からの蛍光情報を効率よく取得することができる。このため、被観察物2へ蛍光Fを発生させるための励起光5Aの照射時間を短くすることができる。従って、被観察物2が細胞等の生体試料である場合には、従来の蛍光観察に比較して、より長時間透過光Tや蛍光Fを観察することができる。
【0114】
さらに、環境制御部60,80は、被観察物2を刺激するための刺激手段を備えていてもよい。このような刺激手段としては、電気的刺激、磁気的刺激、力学的刺激、超音波刺激、温度的刺激、化学的刺激、光刺激等が挙げられる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
図4に示す顕微鏡装置30を製作した。光学系10としては、倒立顕微鏡(オリンパス株式会社製、IX71)を使用し、透過用光源4及び励起用光源5は、それぞれ、ハロゲンランプとキセノンランプを使用した。対物レンズ6(オリンパス株式会社製、UApo40×3/340)は40倍のものを用いた。
【0116】
明視野観察像をパーソナルコンピュータ21に取り込む画像情報検出部16には、カメラ(POINTGREY製、Dragofly Express)を用いた。このカメラは、100fps(フレーム/秒)で8ビットのグレースケール画像を取得することができる。画素サイズは、640×480である。
【0117】
対物レンズ6の位置を、顕微鏡装置30の光軸方向で制御する対物レンズ用駆動部32としては、ピエゾステージ(Physik Instrument 製、P-723)を用いた。ピエゾステージ32は、最大稼動距離が、350μmである。電圧入力により、ピエゾステージ32は動く。ピエゾステージ32への電圧入力には、D/A変換ボード(Interface製D/Aボード、PCI-3346A)を使用した。
【0118】
制御部20は、リアルタイム基本ソフトウェアとして、RT-Linuxを搭載したパーソナルコンピュータ21を用いた。
【0119】
蛍光画像情報検出部17の検知器は、冷却CCDカメラ(Q-Imaging社製、Retiga2000R、1600×1200画素)を用いた。冷却温度は、周囲温度よりも25℃低い温度とした。蛍光Fは、光学系10のデュアルポート内のダイクロイックミラー19(Semrock 製のダイクロイックミラー、FF01-520/35-25)によって透過光Tと分離した。蛍光Fの励起光5A、蛍光F及び追跡用の透過光Tが干渉しないように、それぞれの波長帯が異なるようにフィルタを選んだ。冷却CCDカメラは、4×4画素を一まとめにするビニング処理を行い、取得画素数を400×300画素とした。露光時間は33msとした。
【0120】
図3で説明したフロー図に従って、免疫細胞の一種であるT細胞2の観察を行った。d間隔は1.5μmとした。観察したい細胞数に応じて、蛍光観察領域幅x(0)を決定した。そして、蛍光観察領域内を、1.5μm間隔で蛍光観察と明視野観察を同時に行った。以降は、20秒間待機の後、最適制御則に従って蛍光観察領域を決定し、細胞2の運動モデルに従って蛍光観察領域の中心を求めた。そして、蛍光観察領域を、蛍光観察領域内を1.5μm間隔で蛍光観察と明視野観察を同時に行う、という作業を60回(T=60)繰り返した。
【0121】
図13は、観察開始直後の細胞分布の一例を示す図である。図13の横軸はピエゾステージ32の位置(μm)であり、縦軸は細胞数である。
【0122】
図14は、蛍光観察手順において、本発明の制御則U(k)を用いた実施例の評価関数Jと、蛍光観察領域幅を固定した場合の比較例の評価関数Jとを比較した模式図である。図14の横軸は固定した場合の蛍光観察領域の幅(μm)を示し、縦軸は、評価関数Jの値を示す。本発明の制御則を用いた場合の蛍光領域の幅は、動的に変えている。
図14から明らかなように、本発明の制御則と蛍光観察領域幅を固定した比較例の評価関数Jを比較すると、本発明の制御則を用いた実施例の評価関数Jの値が常に比較例のJの値よりも小さくなっており、最適化されていることが分かる。
【0123】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。上述した実施形態においては、第1及び第2の検出光学系16,17に撮像素子を用いたが、撮像素子位置で目視の観察や写真撮影なども行うことができるように、検出光学系は必要に応じて複数の検出光学系とすることも可能である。また、蛍光Fを検知する検出光学系17の構成などは、被観察物2に応じて最適な設計や使用部品を選定できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】第1実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図2】蛍光観察領域のモデルを示す図である。
【図3】本発明の顕微鏡装置を用いた蛍光観察手順を示すフロー図である。
【図4】第2実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図5】第3実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図6】第4実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図7】第5実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図8】第6実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図9】第7実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図10】第8実施形態の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。
【図11】環境制御部の構成を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-Xに沿った断面図である。
【図12】複数の被観察物の観察ができる環境制御部の別の構成を示す模式図で、(A)は平面図、(B)は(A)のX-Xに沿った断面図である。
【図13】観察開始直後の細胞分布の一例を示す図である。
【図14】蛍光観察手順において、本発明に係る制御則U(k)を用いた実施例の評価関数Jと、蛍光観察領域幅を固定した場合の比較例の評価関数Jとを比較した模式図である。
【符号の説明】
【0125】
1,30,35,40,45,50,55,60:顕微鏡装置
2:被観察物
3:XYまたはXYZステージ
4:照明用光源
5:励起用光源
5A:励起光
6:対物レンズ
7:結像レンズ(透過光用)
8,9:フィルタ
10,10A:光学系
12:結像レンズ(蛍光用)
15:鏡筒部
16:画像情報検出部
17:蛍光画像情報検出部
18,19:第1及び第2のビームスプリッター(ダイクロイックミラー)
20:制御部
21:パーソナルコンピュータ
22:ディスプレー装置
23:励起用光源制御部
25:蛍光波長選択部
26:第3のダイクロイックミラー
27:ミラー
28:プリズム
29:レンズ
32:対物レンズ用駆動部
37:透過光の結像レンズ用駆動部
52:蛍光用結像レンズ用駆動部
53:第1のピンホール
54:第2のピンホール
56,58:ピンホール駆動部
60,80:環境制御部
62:本体部
64,84:収容部
65:樹脂板
66:スライドガラス
67:樹脂フィルム
67A:細孔
68:ガス配管
68A:入力側
68B:出力側
69:雰囲気ガス
70:保持手段
71,72:カバーガラス
74:培養液
85:障壁部
86:収容区画
F:蛍光
T:透過光
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図2】
13