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明細書 :非晶質薄膜の結晶化装置及び方法、並びに薄膜トランジスタの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5207535号 (P5207535)
公開番号 特開2010-103160 (P2010-103160A)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
公開日 平成22年5月6日(2010.5.6)
発明の名称または考案の名称 非晶質薄膜の結晶化装置及び方法、並びに薄膜トランジスタの製造方法
国際特許分類 H01L  21/20        (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/324       (2006.01)
FI H01L 21/20
H01L 29/78 627G
H01L 21/324 P
請求項の数または発明の数 12
全頁数 12
出願番号 特願2008-270942 (P2008-270942)
出願日 平成20年10月21日(2008.10.21)
審査請求日 平成22年4月14日(2010.4.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】白井 肇
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
審査官 【審査官】杢 哲次
参考文献・文献 特開平11-145148(JP,A)
特開2006-060130(JP,A)
調査した分野 H01L 21/20
H01L 21/324
H01L 21/336
H01L 29/786
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に所定膜厚の非晶質薄膜を形成した絶縁基板を、前記非晶質薄膜が上向きになるように載置するためのステージと、前記非晶質薄膜と対向する位置に設けられ、内部に所定のプラズマ生成ガスを導入してプラズマジェットを発生し、前記非晶質薄膜に対して照射したプラズマ照射領域を上から取り囲むトンネル状の被覆部材と、該被覆部材の頂部外面に被覆部材の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極と、前記絶縁基板の下方であって、かつ前記上側電極と対向して配設される下側電極と、前記上側電極及び下側電極に高周波電力を供給するための高周波電源とを具え、
前記プラズマジェットの発生は、前記被覆部材中で、前記プラズマ生成ガスに対して、高密度の誘導電力を加えてプラズマ化することにより、10000K以上の高温プラズマジェットを生成し、大気中で前記非晶質薄膜に対して照射することで、前記非晶質薄膜を結晶化することを特徴とする非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項2】
前記プラズマ照射領域は、その長さが1cm以上で、幅が10mm以下のライン状のプラズマ照射領域である請求項1記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項3】
前記被覆部材と前記上側電極との接触面積が、前記上側電極の長手方向の長さ1cmあたり20mm2以下である請求項1記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項4】
前記プラズマ生成ガスはアルゴンであり、10L/分以下の流量で前記被覆部材中に供給する請求項1、2又は3記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項5】
前記高周波電源の周波数は、13~500MHzの範囲である請求項1~4のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項6】
前記被覆部材は、Si又はAlからなる請求項1~5のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【請求項7】
前記結晶化装置は、前記プラズマジェットを前記ステージに対して相対移動させて、前記非晶質薄膜全体を結晶化するための、移動手段をさらに具える請求項1~6のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置
【請求項8】
絶縁基板上に、所定膜厚の非晶質薄膜を形成し、該非晶質薄膜に対して、大気中でプラズマジェットを照射することにより、前記非晶質薄膜を溶融し、結晶化させる方法において、
前記非晶質薄膜が上向きになるように載置するためのステージと、前記非晶質薄膜と対向する位置に設けられ、内部に所定のプラズマ生成ガスを導入してプラズマジェットを発生し、前記非晶質薄膜に対して照射したプラズマ照射領域を上から取り囲むトンネル状の被覆部材と、該被覆部材の頂部外面に被覆部材の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極と、前記絶縁基板の下方であって、かつ前記上側電極と対向して配設される下側電極と、前記上側電極及び下側電極に高周波電力を供給するための高周波電源とを具える結晶化装置を用い、
前記プラズマジェットは、温度が10000K以上であり、前記非晶質薄膜に照射したとき、その長さが1cm以上、幅が10mm以下であるライン状のプラズマ照射領域を形成することを特徴とする非晶質薄膜の結晶化方法。
【請求項9】
前記プラズマジェットの照射は、プラズマ生成ガスに対して、100W以上の高周波誘電力を加えることによりプラズマ化して、高エネルギーのプラズマジェットをライン状に生成してなる請求項8記載の非晶質薄膜の結晶化方法。
【請求項10】
前記プラズマ生成ガスはアルゴンであり、10L/分以下の流量で供給する請求項8又は9記載の非晶質薄膜の結晶化方法
【請求項11】
前記プラズマジェットは、前記非晶質薄膜を形成した基板に対して相対移動させることで前記非晶質薄膜全体を結晶化する請求項8~10のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項記載の方法で多結晶薄膜を形成した後、該多結晶薄膜の所定位置にソース領域及びドレイン領域を形成し、さらに、ゲート酸化膜及びゲート電極を形成する薄膜トランジスタの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン等のアモルファス薄膜を結晶化する装置及び方法に関し、特に、絶縁基板の表面上に形成した所定膜厚の非晶質薄膜を、大気中でプラズマジェットを照射して溶融し、結晶化させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶駆動用薄膜トランジスタ(TFT)、太陽電池素子等の大面積電子デバイス用多結晶シリコン半導体薄膜及び透明導電薄膜のガラス基板上への形成技術に関して、各社精力的に技術開発が進められている。その中でも、絶縁基板上の多結晶薄膜製造技術は、デバイス性能を決定するために重要な技術である。
そして、この多結晶薄膜は、通常、ガラス基板等の絶縁基板上に、プラズマCVD法などにより非晶質薄膜を形成した後、この非晶質薄膜に対して、レーザー(例えば、パルス発振のエキシマレーザー)を照射して、前記非晶質薄膜を融解させた後、速やかに結晶化させる方法によって、主に警醒されている。
【0003】
しかし、レーザーを用いた非晶質薄膜の結晶化方法は、チャンバー全体を減圧雰囲気に真空引きする必要があり、大掛かりで高価な装置を用いなければならず、製品(トランジスタ)の製造コストが高騰するという問題があった。さらに、レーザーの照射エネルギーを均一に制御することは困難であるため、再結晶化した前記多結晶薄膜の粒子径にバラツキが生じるという問題もあった。
【0004】
そのため、上記問題を解決すべく、本発明者らは、特許文献1に開示しているように、大気中において、細管に導入したプラズマ生成ガスを前記細管の先端から噴出させ、前記細管の先端にマイクロマイクロプラズマジェットを生成し、前記マイクロマイクロプラズマジェットを非晶質薄膜に照射して前記非晶質薄膜を溶融・再結晶化させる非晶質薄膜の結晶化方法を発明した。この方法によれば、非晶質薄膜を簡単な装置で短時間に溶融・再結晶化させることができるため、多結晶薄膜を形成した製品を低コストで提供することが可能となった。また、プラズマ生成ガスの導入流量や、高周波電力等を制御して、前記非晶質薄膜に照射するマイクロプラズマジェットの温度やエネルギーを調整することができるため、前記多結晶薄膜の粒子径の均一化についても効果を奏する。
【0005】
しかしながら、特許文献1の非晶質薄膜の結晶化方法は、上記効果を有するものの、前記非晶質薄膜が結晶化する速度のさらなる高速化、及び、非晶質薄膜からのさらなに均一性の高い溶融・結晶化が望まれていた。

【特許文献1】特開2006-60130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大気中でプラズマジェットを照射することにより、前記非晶質薄膜を溶融し、結晶化させる方法において、より短時間で、均一な多結晶薄膜を得ることができる非晶質薄膜の結晶化装置及び結晶化方法、並びに薄膜トランジスタの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)表面に所定膜厚の非晶質薄膜を形成した絶縁基板を、前記非晶質薄膜が上向きになるように載置するためのステージと、前記非晶質薄膜と対向する位置に設けられ、内部に所定のプラズマ生成ガスを導入してプラズマジェットを発生し、前記非晶質薄膜に対して照射したプラズマ照射領域を上から取り囲むトンネル状の被覆部材と、該被覆部材の頂部外面に被覆部材の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極と、前記絶縁基板の下方であって、かつ前記上側電極と対向して配設される下側電極と、前記上側電極及び下側電極に高周波電力を供給するための高周波電源を具え、前記プラズマジェットの発生は、前記被覆部材中で、前記プラズマ生成ガスに対して、高密度の誘導電力を加えてプラズマ化することにより、10000K以上のプラズマジェットを生成し、大気中で前記非晶質薄膜に対して照射することで、前記非晶質薄膜を結晶化することを特徴とする非晶質薄膜の結晶化装置。
【0008】
(2)前記プラズマ照射領域は、その長さが1cm以上で、幅が10mm以下のライン状のプラズマ照射領域である上記(1)記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【0009】
(3)前記被覆部材と前記上側電極との接触面積が、前記上側電極の長手方向の長さ1cmあたり20mm2以下である上記(1)記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【0010】
(4)前記プラズマ生成ガスはアルゴンであり、10L/分以下の流量で前記被覆部材中に供給する上記(1)、(2)又は(3)記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【0011】
(5)前記高周波電源の周波数は、13~500MHzの範囲である上記(1)~(4)のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【0012】
(6)前記被覆部材は、Si又はAlからなる上記(1)~(5)のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置。
【0013】
(7)前記結晶化装置は、前記プラズマジェットを前記ステージに対して相対移動させて、前記非晶質薄膜全体を結晶化するための、移動手段をさらに具える上記(1)~(6)のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化装置
【0014】
(8)絶縁基板上に、所定膜厚の非晶質薄膜を形成し、該非晶質薄膜に対して、大気中でプラズマジェットを照射することにより、前記非晶質薄膜を溶融し、結晶化させる方法において、前記非晶質薄膜が上向きになるように載置するためのステージと、前記非晶質薄膜と対向する位置に設けられ、内部に所定のプラズマ生成ガスを導入してプラズマジェットを発生し、前記非晶質薄膜に対して照射したプラズマ照射領域を上から取り囲むトンネル状の被覆部材と、該被覆部材の頂部外面に被覆部材の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極と、前記絶縁基板の下方であって、かつ前記上側電極と対向して配設される下側電極と、前記上側電極及び下側電極に高周波電力を供給するための高周波電源とを具える結晶化装置を用い、前記プラズマジェットは、温度が10000K以上であり、前記非晶質薄膜に照射したとき、その長さが1cm以上、幅が10mm以下であるライン状のプラズマ照射領域を形成することを特徴とする非晶質薄膜の結晶化方法。
【0015】
(9)前記プラズマジェットの照射は、プラズマ生成ガスに対して、高密度の誘導電力を加えることによりプラズマ化して、高エネルギーのプラズマジェットをライン状に生成してなる上記(8)記載の非晶質薄膜の結晶化方法。
【0016】
(10)前記プラズマ生成ガスはアルゴンであり10L/分以下の流量で供給する上記(8)又は(9)記載の非晶質薄膜の結晶化方法
【0017】
(11)前記プラズマジェットは、前記非晶質薄膜を形成した基板に対して相対移動させることで前記非晶質薄膜全体を結晶化する上記(8)~(10)のいずれか1項記載の非晶質薄膜の結晶化方法。
【0018】
(12)上記(8)~(11)のいずれか1項記載の方法で多結晶薄膜を形成した後、該多結晶薄膜の所定位置にソース領域及びドレイン領域を形成し、さらに、ゲート酸化膜及びゲート電極を形成する薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ライン状のプラズマジェットを生成し、前記非晶質薄膜の溶融・結晶化を行うため、従来の点状のプラズマジェットに比べて、より短時間で、均一な多結晶薄膜を得ることができる非晶質薄膜の結晶化装置及び結晶化方法、並びに薄膜トランジスタの製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明に従う非晶質薄膜の結晶化装置の一部について模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、本発明の別の実施形態である非晶質薄膜の結晶化装置の一部について模式的に示した斜視図である。
また、図2は、図1の結晶化装置の一部を拡大して側面から見た図(図1のA方向から見た図)である。
さらに、図3は、図1においてプラズマジェットの照射を受けている非晶質薄膜について、上部から見た状態を模式的に示した図である。
さらにまた、図4は、従来のプラズマジェットを用いた結晶化装置を模式的に示した断面図である。
【0021】
本発明による非晶質薄膜の結晶化装置10は、図1(a)に示すように、表面に所定膜厚の非晶質薄膜20を形成した絶縁基板21を、前記非晶質薄膜20が上向きになるように載置するためのステージ30と、前記非晶質薄膜20と対向する位置に設けられ、内部40aに所定のプラズマ生成ガス52を導入してプラズマジェットを発生し、前記非晶質薄膜20に対して照射したプラズマ照射領域を上から取り囲むトンネル状の被覆部材40と、該被覆部材40の頂部外面に被覆部材40の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極60と、前記絶縁基板21の下方であって、かつ前記上側電極60と対向して配設される下側電極70と、前記上側電極60及び下側電極70に高周波電力を供給するための高周波電源80とを具える。
【0022】
そして、本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10による前記プラズマジェット50の発生は、前記被覆部材40中で、前記プラズマ生成ガス52に対して、高密度の誘導電力を加えてプラズマ化することにより、10000K以上のプラズマジェット50を生成し、大気中で前記非晶質薄膜20に対して照射することで、前記非晶質薄膜20を結晶化することを特徴とする。
【0023】
本発明の結晶化装置10を用いれば、図3に示すように、前記プラズマ照射領域51がライン状となる。そのため、図4に示すような、コイル130を巻いて内部に高周波電場が発生したプラズマトーチ120(照射口120aの直径2mm程度)によってマイクロプラズマジェット150を非晶質薄膜を形成した基板160に対して照射して、点状に前記非晶質薄膜のプラズマ化を行う従来の結晶化装置100(図4)に比べて、本発明の結晶化装置10によるプラズマジェット50の照射は、そのプラズマ照射領域51(同時に溶融し、結晶化する面積)が大きくなる結果、より短時間で非晶質薄膜20を溶融し、結晶化することが可能となり、加えて、より均一な前記非晶質薄膜20の結晶化が可能となる。
【0024】
なお、前記プラズマジェット50とは、高温(10000K以上)で、電子密度が1012~1017個/cm3程度のプラズマのことであり、このプラズマジェット50によって前記非晶質皮膜20へ熱照射を行えば、大気中であっても、拡散することなくエネルギーを伝えることができるため、有効な前記非晶質薄膜20への熱照射31ができ、真空装置等の複雑な装置を必要とすることなく、前記非晶質薄膜20結晶化が可能となる。また、上述のように、前記プラズマジェットは、前記誘導電力を高密度にすることによって、その温度が10000K以上の高エネルギーのプラズマジェットにする必要がある。10000K未満では、前記非晶質薄膜20を、短時間で十分に溶融することができず、所望の多結晶薄膜を得ることができない恐れがあるためである。
【0025】
さらに、図3に示すように、前記プラズマ照射領域は、長さが1cm以上で、幅が10mm以下のライン状であることが好ましい。幅が10mmを超える場合、多大なガス流および高い高周波電力供給が必要となるため前記プラズマジェット50を高エネルギー化することが難しく、10000Kを下回る恐れがあるからであり、一方、その長さが1cm未満の場合、所望の効果を得ることができるものの、一度に処理できる範囲が小さくなるため、短時間で均一に前記非晶質薄膜20を処理する点から好ましくないためである。
【0026】
以下に、本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10の各構成部材についての詳細を述べる。
(ステージ)
なお、本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10は、図1(a)に示すように、前記絶縁基板21を、前記非晶質薄膜20が上向きになるように載置するためのするためのステージ30を具える。ステージ40の形状は、前記基板21を載置することができれば、特に限定されるものではないが、安定して前記基板21を載置でき、かつ前記減圧を実現できるよう、例えば、平板状や円盤状であることが好ましい。また、前記ステージ30の材質についても特に限定はされないが、例えば、窒化アルミやアルミナ等のセラミックス又は石英等を用いることができる。
【0027】
なお、前記結晶化装置は、前記プラズマジェット50を前記ステージに対して相対移動させて、前記非晶質薄膜20全体を結晶化するための、移動手段(図示せず)をさらに具えること、つまり、前記被覆部材40及び前記ステージ30のうちの少なくとも一方に、移動手段を設けることが好ましい。前記プラズマジェット50が相対的に移動すれば、前記基板21を一度ステージ30に載置すれば、その後に何度も前記基板21の位置を手動により移動させる必要がないからである。
【0028】
また、前記プラズマジェット31の相対移動は、装置の構造上、前記ステージ30を移動させることが好ましく、プラズマのガス温度に依存するが前記非晶質薄膜20が溶融するまでの時間を考慮すると、その移動速度を5~200mm/秒の範囲にすることがより好適である。
【0029】
(絶縁基板、非晶質薄膜)
さらに、本発明に用いる絶縁基板21は、特に限定はされないが、例えば、Si、セラミックス、アルミナ又は石英等の材料からなり、その膜厚は100~10000μm程度であることが好ましい。また、前記絶縁基板21の上に形成される非晶質薄膜20については、用いられる用途等によって任意の材料を選択することができ、例えば、非晶質シリコン、シリコンゲルマニウム又は非晶質酸化物薄膜(SnO、ZnO、ZnO:Al、InGaZnO)等からなる非晶質薄膜であり、その膜厚は0.01~2μm程度であることが好ましい。
【0030】
(被覆部材)
本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10は、図1(a)に示すように、前記非晶質薄膜20と対向する位置に設けられ、内部40aに所定のプラズマ生成ガスを導入して前記プラズマジェット50を発生し、前記非晶質薄膜20に対して照射したプラズマ照射領域51を上から取り囲むトンネル状の被覆部材40を具える。被覆部材40の形状としては、アーチ状のトンネル全体にライン状プラズマジェット50を効果的に放出することができる形状であれば特に限定はせず、例えば、図1に示すようなアーチ状のトンネル形状とすることができるし、矩形のトンネル状とすることも、図1(b)に示すように、プラズマ生成ガス52が通るガス管と一体化された被覆部材400であっても構わない。可能である。前記被覆部材40の形状をアーチ状のトンネル形状とした場合、その内径は2~10mmの範囲とすることがプラズマ照射領域51の温度を精密に制御できる点で好ましい。
【0031】
また、前記被覆部材は、石英、窒化アルミ、アルミナ、酸化マグネシウム等からなることが好ましい。それぞれ誘電率、熱伝導性、電子放出率が高いからである。
【0032】
さらに、前記被覆部材40は、所定のプラズマ生成ガス52を導入するための、プラズマ生成ガス供給手段(図示せず)と接続されている。このプラズマ生成ガス供給手段は、プラズマ生成ガス52を必要に応じて供給するためのガス供給源(図示せず)と、前記被覆部材40へと流入するプラズマ生成ガスの圧力を調整するためのガス流量調節器(図示せず)と、プラズマ生成ガス52の通り道であるガス管(図示せず)とを具えている。
【0033】
なお、前記所定のプラズマ生成ガス52は、プラズマジェットを発生できるキャリアガスであれば特に限定はしないが、比較的安価で大気圧プラズマ生成が容易である点より、アルゴンであることが好ましく、10L/分以下の流量で前記被覆部材中に供給することが高エネルギーの高温プラズマジェット50を得ることができる点で好ましい。流量が10L/sを超える場合、前記被覆部材40に流入するプラズマ生成ガスが多すぎるため、十分な誘導電力を印加することができず、また所望の温度(10000K以上)のプラズマジェットを得ることができない恐れがあるためである。
【0034】
(上側電極、下側電極)
また、本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10は、図1(a)に示すように、前記被覆部材40の頂部外面40bに被覆部材40の長手方向に線状に接触した状態で配設される上側電極60を具え、前記絶縁基板21の下方であって、かつ前記上側電極60と対向して配設される下側電極70を具える。前記被覆部材内部40aで、プラズマ生成ガス52が充填した状態で、上側電極60及び下側電極70によって誘導電力を発生させれば、前記プラズマ生成ガスは電離して高温(10000K程度)のプラズマが発生するためである。なお、前記上側電極60及び下側電極70の材料は、特に限定をする必要はないが、高い電気伝導率の点から本発明では銅からなる電極を用いている。
【0035】
ここで、前記上側電極60と前記被覆部材40の頂部外面40bは線状に接触しているが、前記上側電極60と前記被覆部材40の頂部外面40bとの接触面積を小さくすることで、前記プラズマ生成ガス52に加える誘導電力のエネルギーを高め、高温のプラズマジェット50を生成するためである。そして、その接触面積は、前記被覆部材と前記上側電極との接触面積が前記上側電極の長手方向の長さ(図1では説明のためMと表示)1cmあたり20mm2以上であることが好ましい。20mm2以下の場合、誘導電力がライン状に均一に集中し難く、異常放電を生成しやすく10000K以上の高温のプラズマを均一に得ることができない恐れがあるためである。
【0036】
また、本発明の非晶質薄膜の結晶化装置10は、図1(a)に示すように、前記上側電極及び下側電極に高周波電力を供給するための高周波電源80を具える。さらに、前記上側電極70及び下側電極70と、前記高周波電源80との間には、前記高周波電源80への反射波が最小となるように調整するためのマッチング回路(図示せず)を具えることが好ましい。
【0037】
さらに、前記高周波電源80の周波数は、13~500MHzの範囲であることが好ましい。この範囲にすることで高エネルギーの誘導電力を形成し、高温のプラズマジェット50を形成することができるからである。
【0038】
次に、本発明による非晶質薄膜の結晶化方法について説明する。本発明による非晶質薄膜の結晶化方法は、絶縁基板上に、所定膜厚の非晶質薄膜を形成し、該非晶質薄膜に対して、大気中でプラズマジェットを照射することにより、前記非晶質薄膜を溶融し、結晶化させる方法であり、前記プラズマジェットは、温度が10000K以上であり、前記非晶質薄膜に照射したとき、その長さが1cm以上、幅が10mm以下であるライン状のプラズマ照射領域を形成することを特徴とする。
本発明による非晶質薄膜の結晶化方法によれば、図3に示すように、前記非晶質薄膜20上の前記プラズマ照射領域51がライン状となる。そのため、従来の点状のマイクロプラズマジェット(図4)による結晶化方法に比べて、そのプラズマ照射領域51が大きくなる結果、同時に溶融・結晶化する面積が大きくなるため、より短時間で非晶質薄膜20を溶融し、結晶化することが可能となる点で有効である。加えて、同時に溶融・結晶化する面積が大きくなるため、従来の方法よりも、さらに均一な多結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0039】
また、前記プラズマジェットの照射は、プラズマ生成ガスに対して、高密度の誘導電力を加えることによりプラズマ化して、高エネルギーのプラズマジェットをライン状に生成してなることが面内の一括処理には好ましい。高密度の高周波誘導電力を局所領域に加えることで、所望の温度(10000K以上)のプラズマジェットを得ることができるからである。具体的な高密度の誘導電力を得る方法としては、例えば図1(a)に示すように、上側電極60と被覆部材40の頂部外面40bを線状に接触させて、前記上側電極60と前記被覆部材40の頂部外面40bとの接触面積を小さくする方法がある。
【0040】
なお、本発明の非晶質薄膜の結晶化方法によって多結晶薄膜を形成した後、該多結晶薄膜の所定位置にソース領域及びドレイン領域を形成し、さらに、ゲート酸化膜及びゲート電極を形成することで、短時間で形成された均一な多結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを製造することができる。
【0041】
また、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0042】
次に、本発明に従う非晶質薄膜の結晶化装置を用いて半導体材料を試作し、その性能を評価した。
(実施例1)
実施例1は、図1(a)に示すように、Siからなるステージ40と、内部にアルゴンからなるプラズマ生成ガス52を導入して(流量: 1L/分以下)プラズマジェット50を発生し、非晶質薄膜20に対して照射したプラズマ照射領域51を上から取り囲むトンネル状のSiからなる被覆部材40と、該被覆部材40の頂部外面40bに被覆部材の長手方向に線状に接触した状態で配設されるCuからなる上側電極60と(上側電極の長手方向の長さ1cmあたりの被覆部材40との接触面積:20mm2)、絶縁基板21の下方であって、かつ前記上側電極60と対向して配設されるCuからなる下側電極70と、前記上側電極60及び下側電極70に高周波電力を供給するための高周波電源80(周波数:144MHz)とを具えた非晶質シリコン薄膜20の結晶化装置10を用い、前記ステージ30上に膜厚0.01μmの非晶質シリコン薄膜20を形成した石英基板21を載置し、ステージ30を移動手段(図示せず)によって移動させながら、前記被覆部材40中で、前記プラズマ生成ガス52に対して高密度の誘導電力を加えてプラズマ化することにより、ライン状のプラズマジェット50(プラズマ照射領域の長さ:4cm、幅:5mm、プラズマジェットの温度:10000K、電子密度:1015個/cm3)を生成し、大気中で前記非晶質薄膜20に対して照射することにより、前記非晶質シリコン薄膜20が結晶化して多結晶薄膜となったサンプルとなる半導体材料を作製した。
【0043】
(比較例1)
比較例1は、図4に示すように、従来の結晶化装置1000を用いて、コイル130を巻いて内部に高周波電場が発生したプラズマトーチ120(照射口120aの直径10mm程度)にアルゴンからなるプラズマ生成ガスを導入し、マイクロプラズマジェット150(プラズマ照射領域の長さ:4cm、幅:5mm、プラズマジェットの温度:10000 K、電子密度:1015個/cm3)を、実施例1に用いられるものと同様の非晶質薄膜160に対して大気中で照射して、点状に前記非晶質薄膜のプラズマ化を行うことによって、前記被消失薄膜を多結晶薄膜として、サンプルとなる半導体材料を作製した。
【0044】
(比較例2)
比較例2は、従来のエキシマレーザーを用いた非晶質薄膜の結晶化方法により、前記非晶質シリコン薄膜を結晶化し、サンプルとなる半導体材料を得た。
【0045】
上記実施例及び比較例で作製した各半導体材料について評価を行った。評価方法を以下に示す。
【0046】
(評価方法)
(1)結晶の均一性
上記実施例及び比較例で作製したサンプルの、多結晶シリコン薄膜の表面を、透過電子顕微鏡を用いて観察するとともに、任意の視野範囲(100nm×100nm)あたりに存在する多結晶シリコンの結晶化率のバラツキ(%)を算出し、以下の基準に従って評価した。なお、ここでの結晶化率は、ラマン分光法を用い、ラマン散乱分光スペクトルの520、510、4780cm-1の結晶、ナノ結晶、アモルファス分率のSi相のピークの強度比で定義し、強度比のバラツキの大きさにより結晶化率のバラツキを決定した。
◎:結晶化率のバラツキが3%以内
○:結晶化率のバラツキが3%超え、5%以内
×:結晶化率のバラツキが5%超え
【0047】
(2)結晶化速度
上記実施例及び比較例において、それぞれサンプルの作製に要した時間、つまり、非晶質薄膜の全体を溶融・結晶化するのに要した時間(タクトタイム)を測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:1分以内
○:1分超え、3分以内
×:4分超え
【0048】
【表1】
JP0005207535B2_000002t.gif

【0049】
表1の結果から、実施例1のサンプルは、比較例1及び2のサンプルと比較して、均一であり、結晶化の速度も速いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、従来の点(同心円状)状のプラズマジェットによる非晶質薄膜の結晶化に比べて、より短時間で、均一な多結晶薄膜を得ることができる非晶質薄膜の結晶化装置及び結晶化方法、並びに薄膜トランジスタの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に従う非晶質薄膜の結晶化装置の一部について模式的に示した断面図であり、(a)は本発明の一実施形態、(b)は本発明の別の実施形態を示す。
【図2】図1の結晶化装置の一部を拡大して側面から見た図である。
【図3】図1においてプラズマジェットの照射を受けている非晶質薄膜について、上部から見た状態を模式的に示した平面図である。
【図4】従来のプラズマジェットを用いた結晶化装置を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 非晶質薄膜の結晶化装置
20 非晶質薄膜
21 絶縁基板
30 ステージ
40、400 被覆部材
50 プラズマジェット
51 プラズマ照射領域
52 プラズマ生成ガス
60 上側電極
70 下側電極
80 高周波電源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3