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明細書 :部分放電発光検出方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305384号 (P5305384)
公開番号 特開2010-101671 (P2010-101671A)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
公開日 平成22年5月6日(2010.5.6)
発明の名称または考案の名称 部分放電発光検出方法及び装置
国際特許分類 G01N  21/67        (2006.01)
FI G01N 21/67 C
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2008-271606 (P2008-271606)
出願日 平成20年10月22日(2008.10.22)
審査請求日 平成23年10月20日(2011.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】大塚 信也
【氏名】原 知輝
【氏名】中山 裕太
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開平07-005222(JP,A)
特開平11-231013(JP,A)
特開平11-287838(JP,A)
特開2002-233012(JP,A)
特開昭58-170310(JP,A)
特開2002-084611(JP,A)
特開2000-152447(JP,A)
特開2009-300357(JP,A)
永良俊治, 大塚信也, 匹田政幸,放電分野における最近の技術開発 SF6ガスの使用量低減を目的としたSF6混合ガスの絶縁特性に関する研究,放電研究,日本,1999年10月14日,No.162,Page.74-77
調査した分野 G01N 21/62-21/74
G01R 31/12-31/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
圧力容器内部に高電圧を印加する導体を有し、かつ絶縁ガスを充填したガス絶縁機器を備えて、圧力容器内部の部分放電発光を検出して観察する部分放電発光検出方法において、
前記絶縁ガスとしての電気負性ガスに0.1vol%~10vol%の窒素ガスN2を混入した混合ガスを用いて、部分放電発光の発光強度を上げて、検出感度を向上させ、かつ、
部分放電発光検出は、少なくとも所定時間行い、その発光強度の分布を取得し、或いは、前記高電圧を印加する導体に交流電圧を印加している場合は、印加されている交流1サイクルに相当する時間を周期として、複数サイクル間信号を取得することで、強度の異なる二つの分布の有無により放電信号かノイズかを区別することを特徴とする部分放電発光検出方法。
【請求項2】
前記混合ガスは、さらに、希ガスの一種あるいは複数種を混合した請求項1に記載の部分放電発光検出方法。
【請求項3】
圧力容器内部に高電圧を印加する導体を有し、かつ絶縁ガスを充填したガス絶縁機器と、圧力容器内部の部分放電発光を検出して観察することのできる光学測定装置を備えた部分放電発光検出装置において、
前記絶縁ガスとしての電気負性ガスに0.1vol%~10vol%の窒素ガスN2を混入した混合ガスを用い、かつ、
部分放電発光検出は、少なくとも所定時間行い、その発光強度の分布を取得し、或いは、前記高電圧を印加する導体に交流電圧を印加している場合は、印加されている交流1サイクルに相当する時間を周期として、複数サイクル間信号を取得することで、強度の異なる二つの分布の有無により放電信号かノイズかを区別することを特徴とする部分放電発光検出装置。
【請求項4】
絶縁スペーサで区分されたガス区画毎に少なくとも一つの観測フランジを備え、該観測フランジの内部或いは外部に部分放電発光の波長領域の検出感度が高い発光検出器を備え、その出力を光学測定装置で観測する請求項3に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項5】
前記観測フランジには、観測窓を設け、この観測窓外部に、前記発光検出器を配置した請求項4に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項6】
前記発光検出器として、光電子増倍管或いはフォトダイオードを用いる請求項4に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項7】
前記発光検出器は、ガス区画毎に少なくとも1つ設置することで、その区画の放電源の有無を評価し、或いはガス区画毎に複数設置することで、信号到達時間や強度差に基づき、放電発生位置の推定を行う請求項4に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項8】
前記観測フランジの内部に前記発光検出器を備え、該発光検出器の電源線及び信号線は、観測フランジに設けた気密端子を通して外部に導出する請求項4に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項9】
前記混合ガスは、さらに、希ガスの一種あるいは複数種を混合した請求項3に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項10】
前記圧力容器底面にガス導入口を備え、電気負性ガスが充填されている圧力容器に対してその底面から窒素ガス或いは希ガスを充填する請求項3又は9に記載の部分放電発光検出装置。
【請求項11】
前記電気負性ガスは、SF6や、C3F8, C2F6, c-C4F8を含むPFC系ガス、CF3Iガス、あるいはCO2ガスである請求項3に記載の部分放電発光検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電力分野や電気絶縁、高電圧分野、あるいは放電物理を取り扱う分野で、微弱な放電発光の発光強度を増加させ、絶縁診断を実施したり放電発光現象を測定する部分放電発光検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力機器や電気機器の高電圧化、コンパクト化が要求される中、これら機器の高電界化が進み、機器の絶縁は厳しくなっている。また、経年機器も増加している。このような背景のもと、機器の絶縁破壊を未然に防ぐ、あるいは絶縁異常を早期に検出し評価するために、絶縁破壊の前駆現象である部分放電信号の測定が行われている。現在は、部分放電信号として電流や、電磁波、弾性波の検出が主流であるが、これから光学技術、特に受光素子の性能が向上すると電気的ノイズに強い光学測定が注目されることが期待されている。
【0003】
図10は、特許文献1に記載の従来の光学測定による部分放電検出装置を示す概略構成図である。測定対象とする電力ケーブルの絶縁材料などの試料を、暗所内に設置する。さらにこの暗所に設けられた観測窓に、発光測定装置(光電子増倍管)の発光測定部を隙間なく密着させ、この発光測定装置に、発光量を表示することができるカウンタを接続する。そして、試料に電圧を印加したときの発光量を測定する。この発光量は、発光測定装置にて放電光の波長に相当する波長300~800nmの発光を検出すると同時に、カウンタに発光量が表示されるようになっている。
【0004】
絶縁破壊の前駆現象である部分放電は、微弱な発光であり、かつ高速の現象であるから、一般に目視では観測できない。そのため、光学装置を用いて、イメージインテンシファイヤでゲインを上げ、かつトリガ機能とゲート機能を利用して、あるタイミングの像を捕らえて観測される。絶縁破壊が絶対におこらないと仮定できれば、ゲインを最大限にして発光強度を増幅して観測できる。一方で、そのような状況で絶縁破壊が起こると破壊発光は非常に強く、測定器が壊れる恐れがあり、微弱高速放電現象を感度よく安全に測定することが困難であった。また、測定器の価格は非常に高価であるため、故障した際の経済的損失は大きい。このために、測定器の保護を考えると、これまで安心してゲインを上げた絶縁破壊電圧近傍の部分放電観測ができなかった。受光素子の性能向上と共に、部分放電発光自体の発光強度が上がれば、検出感度も向上し、絶縁診断には有利となる。
【0005】
ガス絶縁開閉機器(GIS, Gas Insulated Switch)は、遮断器・断路器・母線電線路・避雷器・計器用変成器・作業用接地装置などを、絶縁性が高い六フッ化硫黄(SF6)ガスが充てんされた単一の接地容器内に収めた縮小形開閉設備として知られている。このようなガス絶縁開閉機器に用いられている六フッ化硫黄(SF6)ガスは、絶縁性が高いものの、高価である。このため、SF6ガスの使用量を削減したり、或いは低温地域での液化防止のために、SF6/N2混合ガスが用いられている。窒素N2を混合しても絶縁性能は混合率に比例して低下せず、絶縁性能の低下は比較的低いため(シナジズム効果)、また、最近では温暖化防止の観点から混合されるものであるために、窒素N2の混合量は多く、SF6と同等あるいはそれを超える量を混合することが一般的であった(例えば、30%SF6/70%N2)。但し、絶縁性能の低下が低いとは言え、N2を混合することにより、絶縁性能が低下する。このため、SF6ガスのガス取り扱い基準(電力用SF6ガス取り扱い基準:電協研第54巻3号(1998)参照)によれば、SF6の純度について、以下のように記載されている。即ち、絶縁、遮断、通電の遮断器性能の中で、遮断性能がもっとも不純物の影響を受けると言われており、不純物濃度が3vol%以下であれば十分に安全であるものの、10vol%以下であれば実用上支障は無いとされている。

【特許文献1】特開平11-231013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、電力分野や電気絶縁、高電圧分野、あるいは放電物理を取り扱う分野で、ガス絶縁媒体である電気負性ガスの放電発光を、遮断性能に影響のない10vol%以下で新たなガスを少量混合することで、絶縁体の性能を変化させないで、放電発光自体の発光強度を上げて、検出感度を向上させることを目的としている。これによって、微弱な発光であり、かつ高速の現象であるから、一般に目視では観測できない絶縁破壊の前駆現象である部分放電を観測して、絶縁診断を有利に行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部分放電発光検出方法は、圧力容器内部に高電圧を印加する導体を有し、かつ絶縁ガスを充填したガス絶縁機器を備えて、圧力容器内部の部分放電発光を検出して観察する。この絶縁ガスとしての電気負性ガスに0.1vol%~10vol%、さらに望ましくは3vol%~10vol%の窒素ガスN2を混入した混合ガスを用いて、部分放電発光の発光強度を上げて、検出感度を向上させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の部分放電発光検出装置は、圧力容器内部に高電圧を印加する導体を有し、かつ絶縁ガスを充填したガス絶縁機器と、圧力容器内部の部分放電発光を検出して観察することのできる光学測定装置を備える。この絶縁ガスとしての電気負性ガスに0.1vol%~10vol%、さらに望ましくは3vol%~10vol%の窒素ガスN2を混入した混合ガスを用いることを特徴とする。
【0009】
この混合ガスには、さらに、希ガスの一種あるいは複数種を混合することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気負性ガス中の部分放電の発光強度を向上させ、部分放電発光の検出感度を上昇させることができる。ガスの絶縁特性を維持し、且つ管理基準に抵触しない条件(純度)で、ガス自体の放電発光強度を向上させることが可能となる。本発明によれば、絶縁性能に影響を与えることなく従来の2~3倍、或いはそれ以上の強度で放電発光を観測できるようになる。
【0011】
また、本発明は、光学測定によるガス絶縁における絶縁異常の検出感度向上および絶縁異常の早期発見に貢献する。このため、ガス絶縁電力機器だけでなく、実験室の放電研究にも利用でき、発光現象を感度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成されるガス絶縁機器に備えた部分放電発光検出装置を例示する図であり、(A)は、ガス絶縁機器を軸方向から見た断面図であり、(B)は、観測窓を手前にしてガス絶縁機器の側面から見た概念図である。
【0013】
図1に示すガス絶縁機器は、例えばガス絶縁開閉機器GISであり、その機器内部に高電圧導体を備えた圧力容器と、内部の放電源の部分放電発光を観察することのできる観測フランジを備えている。圧力容器は、接地電位の筒状の金属容器から構成される。図示の放電源は、例えば、高電圧導体或いは接地した圧力容器内壁のような部分放電が起こり得る部位を示している。そして、この圧力容器内には、詳細は後述する本発明の特徴とする絶縁ガスが充填される。絶縁ガスとしては、電気負性ガス、例えば、SF6や、C3F8, C2F6, c-C4F8などのPFC系ガス、CF3Iガス、あるいはCO2ガスなどを用いることができる。
【0014】
観測フランジは、一つのガス区画(ガス絶縁開閉機器GISでは絶縁スペーサで区分された範囲)に少なくとも1つは設置することが望ましい。観測フランジには、石英ガラス或いはアクリル窓などで構成した観測窓を設けると共に、この観測窓外部に、発光検出器(受光素子)を配置する。発光検出器としては、例えば、光電子増倍管(PMT)、或いは高感度のフォトダイオードを用いる。発光検出器の出力は発光強度の時間変化を示す。発光検出器には、部分放電発光(特に300nm~600nmの波長領域)の検出感度が高い受光素子を用いる。受光素子は、ガス区画毎に設置することで、その区画の放電源の有無を評価できる。また、1つのガス区画に、複数の受光素子を設置することで、信号到達時間や強度差を検討でき、放電発生位置の推定が可能となる。受光素子の出力は光学測定装置(例えば、オシロスコープなどの波形観測装置)で観測する。光電子増倍管(PMT)は、直流電源で駆動するので(例えば800V)、その電源接続が必要となる。
【0015】
また、部分放電発光が圧力容器タンク内を伝搬しやすいように、圧力容器タンク内壁及び高電圧導体は反射しやすい処理をすることが望ましい。受光素子取り付け部位のフランジ面も同様な処理をすることができる。また、受光素子の前に集光レンズを備えることができる。
【0016】
図2は、図1とは異なる別の例の部分放電発光検出装置を備えたガス絶縁機器の軸方向から見た断面図である。図2の例においては、発光検出器の取付け位置のみが、図1に例示の構成とは相違する。図2の例において、発光検出器は、観測フランジの内部(圧力容器内部)に備えられ、発光検出器の電源線とか信号線は、観測フランジに設けた気密端子を通して、外部に導出される。発光検出器を機器内部に設置する場合は、観測窓は必要なく(逆に外部から光が入らないように)窓無しの板で封じきりとする。発光検出器の取付け位置を除いて、図1を参照して説明したような構成とすることができるので、その他の構成の詳細な説明は省略する。
【0017】
次に、圧力容器内に充填される絶縁ガスについて説明する。この絶縁ガスとして、電気負性ガス(例えば、六フッ化硫黄ガスSF6)に0.1vol%~10vol%の窒素ガスN2を混入した混合ガスを用いる。あるいは電気負性ガスに0.1vol%~10vol%の窒素ガスN2とNeやXeガス、あるいはHe, ArやKrなど希ガスの一種あるいは複数種を混合する。ガス導入は、混ざりやすいように、タンク底面のガス導入口から行う。電気負性ガスが充填されている既存機器に対して窒素ガスを充填する場合、タンク底面から充填する。電気負性ガスで最も一般的なSF6ガスは重いガスのため、窒素を下から吹き上げるようにして充填することにより、混合を良好にすることができる。
【0018】
図3は、SF6に窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。(A)は負極性放電を、(B)は正極性放電の場合である。いずれのグラフにおいても、横軸は部分放電電流ip(mA)を示し、縦軸は、部分放電発光強度L(任意単位a.u.)を示している。
【0019】
測定条件は、以下の通りである。絶縁ガスを充填した圧力容器内に、電源側高電圧電極及び接地側電極を有する電極系を設置する。この電極系は、不平等な高電界部を模擬するために、電極間のギャップ1cm以上の針状電極(電源側高電圧電極)、及び平板電極(接地側電極)とした。この圧力容器には、観測窓を備え、その観測窓を通して部分放電発光を測定した。また、接地側電極に部分放電電流を測定できるように電流検出回路を取り付けた。負極性放電は、電源側電極に交流電圧の負極性の半サイクルが印加されている時間、また、正極性放電は、電源側電極に交流電圧の正極性の半サイクルが印加されている時間に測定した結果である。ガス圧力は、略1気圧であり、正確には1気圧SF6に他のガスを加えていったために、3%混入時は1.03気圧となる。測定は、混合ガスを所定の値に設定した後、印加電源電圧を上昇させ、部分放電を発生させた。そのときの放電電流及び発光強度を測定した。さらに、印加電源電圧を上昇させることにより増加する放電電流を、グラフの横軸に示している。但し、直流の一定電圧でも電流値は変化し、また、交流では、電圧位相により瞬時値が異なるため、同一の実効値電圧でも放電電流は変化する。
【0020】
図3に示すように、部分放電発光強度(y軸)は放電電流に依存する。窒素ガスN2の混合割合は、グラフ中に記号で示している。N2ガスの発光は、主に中性窒素励起分子の脱励起の際の発光(second positive band (SPB)の発光)である。N2=0の場合を、記号+で示している。N2を増加させるにつれて発光強度は増し、N2を0.1%(容量比)混合すると発光強度は、正極性では2倍程度に、負極性では3倍程度に増加し、さらに、N2を3%(容量比)混合すると発光強度は、正極性では10倍に、負極性では20~30倍に増加する。このように、N2を0.1%以上にすることによって、より望ましくは、3%以上にすることによって、圧力容器内部の部分放電発光を検出して観察するのに十分な発光強度となる。N2混合率をさらに増加すると、発光強度はさらに上昇するが、上述したように、不純物(N2)濃度は、絶縁性能を低下させないために、10%以下にする必要がある。
【0021】
図4は、SF6に希ガスNe及び窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。(A)は負極性放電を、(B)は正極性放電の場合である。いずれのグラフにおいても、横軸は部分放電電流ip(mA)を示し、縦軸は、部分放電発光強度L(任意単位)を示している。測定条件は、図3を参照して説明した上述の場合と同じである。Neだけを1%まで混合しても、殆ど発光強度に変化は無かった。1%のNeに加えて、さらにN2を2%混合すると発光強度は顕著に増加した。正極性放電では10~30倍に、負極性放電では20倍に増加した。
【0022】
図5は、SF6に希ガスAr及び窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。(A)は負極性放電を、(B)は正極性放電の場合である。Arだけを1%まで混合しても、殆ど発光強度に変化は無かった。1%のArに加えて、さらにN2を2%混合すると発光強度は顕著に増加した。正極性放電では10~20倍に、負極性放電では20~30倍に増加した。
【0023】
図6は、SF6に、窒素ガスN2無しで、希ガスNe, Arを加えていった際の発光強度を示すグラフ(参考例)である。(A)は負極性放電を、(B)は正極性放電の場合である。N2混合がない場合は、Neを1.5%加えても、さらにArを1.5%追加しても、顕著な発光強度の増加は無かった。
【0024】
図7は、放電発光信号とノイズの識別を説明する図である。(A)は、放電発光信号の場合であり、(B)はノイズの場合である。数秒から数10秒の測定(数10周期から数100周期)を行って、データを取得することで強度の異なる二つの分布の有無により放電信号かノイズかを区別する。交流電圧を印加している場合は、印加されている交流1サイクルに相当する時間を周期として、複数サイクル間信号を取得する。印加交流電圧の周期で重ねて測定すれば、電圧位相に応じたパタンが現れる。例えば、0度からの周期を使うと、結果はサイン波のような山なりになるが、90度付近から周期を取ると、コサイン波のような山なりパタンが現れる。このように、パタンの形はどの時点からの周期性を使うかによって変わるが、正極性と負極性の放電発光強度の相違による二つのパタンが出ることに変わりはない。このような場合、図7(A)に示すように、発光強度の異なる二つの分布ができると、それはノイズでなく放電発光信号であることがわかる。強度の大きな方が負極性の放電である(図3~図5参照)。ノイズ信号の場合、発光強度分布は、ランダムとなる。光学測定においても、測定系に電磁ノイズが混入する場合、あるいは光学測定装置に暗流が発生する場合に、本手法は有効である。これらノイズはランダムに発生し、印加電圧依存性はない。
【0025】
図8は、N2混入量を変化させた場合の絶縁破壊電圧VB、正極性・負極性部分放電開始電圧VPD+?の関係を示すグラフである。N2を混入しても、絶縁破壊電圧VB、正極性・負極性部分放電開始電圧VPD+?に低下は見られず、むしろ上昇していることが分かる。但し、図中に×印で示すように、圧力Pを上昇させた状態での実験データである。
【0026】
図9は、電気負性ガスとしてC3F8(八フッ化プロパン)を用い、この電気負性ガスに窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。(A)は負極性放電を、(B)は正極性放電の場合である。いずれのグラフにおいても、横軸は部分放電電流ip(mA)を示し、縦軸は、部分放電発光強度L(任意単位a.u.)を示している。
【0027】
測定条件は、以下の通りである。C3F8絶縁ガスを充填した圧力容器内(73kPa)に、電源側高電圧電極及び接地側電極を有する電極系を設置する。この電極系は、上述の例と同じく、電極間のギャップ1cm以上の針状電極(電源側高電圧電極)、及び平板電極(接地側電極)とした。N2は圧力比が0, 0.1, 1, 3, 5, 10%となるように加えた。電圧=19,22,25 kVrms をそれぞれ印加して、5回ずつ測定した。
【0028】
C3F8(八フッ化プロパン)ガスの場合も、図9に見られるように、N2を添加すると発光強度は上昇する傾向がある。同じ電流値で見るとN2濃度が高くなるほど発光強度は大きくなることがわかる。但し、N2混合率を上げ過ぎると電流が小さくなり、それに伴い発光強度が低下する傾向も見られる。窒素ガスN2の混入は、0.1vol%~10vol%が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に基づき構成されるガス絶縁機器に備えた部分放電発光検出装置を例示する図であり、(A)は、ガス絶縁機器を軸方向から見た断面図であり、(B)は、観測窓を手前にしてガス絶縁機器の側面から見た概念図である。
【図2】図1とは異なる別の例の部分放電発光検出装置を備えたガス絶縁機器の軸方向から見た断面図である。
【図3】SF6に窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。
【図4】SF6に希ガスNe及び窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。
【図5】SF6に希ガスAr及び窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。
【図6】SF6に、窒素ガスN2無しで、希ガスNe, Arを加えていった際の発光強度を示すグラフ(参考例)である。
【図7】放電発光信号とノイズの識別を説明する図である。
【図8】N2混入量を変化させた場合の絶縁破壊電圧VB、正極性・負極性部分放電開始電圧VPD+?の関係を示すグラフである。
【図9】C3F8に窒素ガスN2を加えていった際の発光強度を示すグラフである。
【図10】従来の光学測定による部分放電検出装置を示す概略構成図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9