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明細書 :複素環化合物及び発光方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5194258号 (P5194258)
登録日 平成25年2月15日(2013.2.15)
発行日 平成25年5月8日(2013.5.8)
発明の名称または考案の名称 複素環化合物及び発光方法
国際特許分類 C07H  19/20        (2006.01)
C09K  11/07        (2006.01)
C12Q   1/66        (2006.01)
G01N  21/76        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C07H 19/20 CSP
C09K 11/07
C12Q 1/66
G01N 21/76
G01N 21/78
請求項の数または発明の数 4
全頁数 30
出願番号 特願2008-509744 (P2008-509744)
出願日 平成19年3月26日(2007.3.26)
国際出願番号 PCT/JP2007/056227
国際公開番号 WO2007/116687
国際公開日 平成19年10月18日(2007.10.18)
優先権出願番号 2006086175
優先日 平成18年3月27日(2006.3.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年2月10日(2010.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】牧 昌次郎
【氏名】小島 哲
【氏名】丹羽 治樹
【氏名】平野 誉
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
審査官 【審査官】植原 克典
参考文献・文献 特開平08-047399(JP,A)
特開2000-319280(JP,A)
特開2002-191396(JP,A)
Agric.Biol.Chem.,1988年,52(11),pp.2803-2809
Journal of Biological Chemistry,1958年,vol.233,pp.1528-1537
Methods in Enzymology,1978年,vol.57,pp.15-28
Science,1962年,vol.138,pp.683-685
調査した分野 C07H 19/20
C09K 11/07
C12Q 1/66
G01N 21/76
G01N 21/78
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(A)又は(B)で示される複素環化合物(但し、一般式(A)においてYが硫黄原子である化合物を除く)。
【化1】
JP0005194258B2_000010t.gif
(一般式(B)中のXは、硫黄原子、酸素原子、イミノ基及びメチレン基からなる群より選択される一種であり、一般式(A)及び(B)中のYは、硫黄原子、酸素原子又はメチレン基の何れかである。)
【請求項2】
請求の範囲1に記載の複素環化合物を含み、酸化反応させる酵素又は化合物を前記複素環化合物の発光によって検出する発光検出剤。
【請求項3】
一般式(A)で示される複素環化合物の、分離精製されたD-体を含み、酸化反応させる酵素を前記複素環化合物の発光の検出によって定量するための発光検出剤。
【化1-1】
JP0005194258B2_000011t.gif
(一般式(A)中のYは、硫黄原子である。)
【請求項4】
請求の範囲2又は3に記載の発光検出剤と、ピロリン酸と、Mgイオンとを有する発光検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光甲虫ルシフェラーゼによる発光系の発光基質として利用可能な、ホタルルシフェリン類似構造を有する複素環化合物、及び、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系用発光基質を用いた発光における発光強度の向上及び発光挙動の安定化が可能な発光方法に関する。より詳細には、ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系を用いた生化学物質の定量や遺伝子導入・発現の解析等においてホタルルシフェリンに代えて利用可能な複素環化合物、及び、ホタルルシフェリン又はその類似構造を有する発光基質を用いた発光系の発光強度及び発光挙動を生化学物質の測定・解析に利用できるように改善可能な発光甲虫ルシフェラーゼ発光系用発光基質の発光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物発光として有名なホタルの発光は、ホタルルシフェリン-ホタルルシフェラーゼ発光系の反応によるものであり、発光基質であるホタルルシフェリンが、ATP及びマグネシウムイオンの存在下でホタルルシフェラーゼによって発光体であるオキシルシフェリンに変換されることによって発光する。
【0003】
ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系は、遺伝子組換えベクターや細胞に発光甲虫ルシフェラーゼ遺伝子を導入することによって遺伝子発現・遺伝子導入効率の解析や細胞増殖のモニター等に利用できることが知られており、生化学や医学、薬学、免疫学など様々な分野において注目され、応用が検討されつつある。発光系の各種用途への応用においては、発光の制御が重要であり、発光波長や発光挙動等を随意に変更可能になれば、多色発光が可能になって実用性が高まり、用途の拡大が容易になる。このようなことから、発光甲虫ルシフェラーゼによる発光系の発光基質として利用可能なホタルルシフェリン以外の物質についての研究が進められている。
【0004】
例えば、発光甲虫ルシフェラーゼによる発光系に利用可能な発光基質として、ホタルルシフェリンのベンゾチアゾール環に結合するヒドロキシ基をアミノ基に置き変えた化合物(下記文献1参照)や、チアゾリジン環をジメチル置換しカルボキシル基をAMP(アデノシン-1リン酸)化した化合物(下記文献2参照)、ベンゾチアゾール環をナフタレン環又はキノリン環に置き変えた化合物(下記文献3参照)が報告されている。
【0005】
また、下記公報1では、ホタルルシフェリンのカルボキシル基又はヒドロキシ基をアミド化又はエステル化することによって得られるホタルルシフェリン誘導体が開示され、免疫定量等の生化学物質の定量への利用を提案している。
【0006】
文献1: White E. H.; Worthr H.; Seliger H. H.; McElroy W.D., J. Amer. Chem. Soc., 88, 2015-2019 (1986).
文献2: Branchini B. R.; Murtiashaw M. H.; Magyar R. A.; Portier N. C.; Ruggiero M. C.; Stroh J. G., J. Am. Chem. Soc., 124, 2112-2113 (2002).
文献3: Branchini B. R.; Hayward M. H.; Bamford S.; Brennan, P. H.; Lajiness E., J. Photochem. Photobiol., 49, 689- (1989).
公報1: 特表昭63-501571号公報
【発明の開示】
【0007】
しかし、これまでに研究が進められているホタルルシフェエリン類似化合物には、発光系に用いた時にホタルルシフェリンと同等の発光強度を示すものは見られず、何れも発光強度が極めて弱い。従って、ホタルルシフェリン類似化合物を生化学物質の測定・解析に利用して多色発光を実現するには、発光強度がより強い新規のホタルルシフェリン類似化合物を探索するか、あるいは、発光系の発光強度や発光挙動を改善可能な手法を見出す必要がある。
【0008】
本発明は、ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系を生化学物質の定量や遺伝子発現・導入の解析に応用する際に、ホタルルシフェリン類似構造の発光基質を用いてホタルルシフェリンとは異なる発光特性の発光の導入を可能とすることを課題とする。
【0009】
又、本発明は、ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系を応用した生化学物質の定量や遺伝子発現・導入の解析において、ホタルルシフェリンとは異なる発光特性の発光が利用可能な発光基質として有望な新規な複素環化合物を提供することを目的とする。
[0010]
また、本発明は、ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光基質を用いて、より強い発光強度で安定な発光挙動を示す発光を実現可能な発光方法を提供することを課題とする。
[0011]
上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光基質となる化合物のカルボキシル基をAMPと脱水縮合し、これにルシフェラーゼを作用させると、立ち上がりが素早く発光強度が増大した発光が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
[0012]
本発明の一態様によれば、複素環化合物は、一般式(A)又は(B)で示される(但し、一般式(A)においてYが硫黄原子である化合物を除く)。
[化1]
JP0005194258B2_000002t.gif[0013]
(一般式(B)中のXは、硫黄原子、酸素原子、イミノ基及びメチレン基からなる群より選択される一種であり、一般式(A)及び(B)中のYは、硫黄原子、酸素原子又はメチレン基の何れかである。)
上記一般式(A)においてYが酸素原子である複素環化合物は特に好適に発光基質として使用できる。
【0014】
又、本発明の一態様によれば、発光検出剤は、上記(A)又は(B)で示される複素環化合物を含み、酸化反応させる酵素又は化合物を前記複素環化合物の発光によって検出することを要旨とする。
又、発光検出剤は、一般式(A)で示される複素環化合物の、分離精製されたD-体を含み、酸化反応させる酵素を前記複素環化合物の発光の検出によって定量することを要旨とする。
【化1-1】
JP0005194258B2_000003t.gif(一般式(A)中のYは、硫黄原子である。)
[0015]
上記発光において、前記複素環化合物は、ピロリン酸及びMgイオンの存在下で酸化反応させることにより、発光挙動が安定化し、発光甲虫ルシフェラーゼによる発光強度の定量分析が可能になる。従って、本発明の一態様によれば、発光検出キットは、上記発光検出剤と、ピロリン酸と、Mgイオンとを有する。
[0016]
[0017]
上記酸化反応は、発光甲虫ルシフェラーゼ、酸化酵素又は酸化剤を用いて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
[0018]
[図1]図1は、ホタルルシフェリン及びAMP化したホタルルシフェリンの各々を発光基質としたホタルルシフェラーゼによる発光挙動を示すグラフ(縦軸:発光強度(カウント)、横軸:時間(秒))である。
[図2]図2は、本発明に係る複素環化合物(Pa)及び複素環化合物(a)の各々を発光基質としたホタルルシフェラーゼによる発光挙動を示すグラフ(縦軸:発光強度(カウント)、横軸:時間(秒))である。
[図3]図3は、AMP化したホタルルシフェリンを発光基質としたホタルルシフェラーゼによる発光挙動に対して添加剤が及ぼす影響を示すグラフ(縦軸:発光強度(カウント)、横軸:時間(秒))である。
[図4]図4は、AMP化したホタルルシフェリンを発光基質とした発光系におけるホタルルシフェラーゼ濃度と発光強度との関係を示すグラフ(縦軸:発光強度(カウント)、横軸:ホタルルシフェラーゼ濃度(M))である。
[図5]図5は、複素環化合物(Pa)の質量分析によるスペクトルチャートである。
発明を実施するための最良の形態
[0019]
ホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系を用いた生化学物質の定量や遺伝子発現・導入の解析は、発光光量を測定して決定される発光甲虫ルシフェラーゼの酵素活性に基づくものである。従って、定量や解析の精密さは、発光光量の測定における正確さに依存する。測定が正確になされるためには、測定対称の発光波長域近辺に、測定の障害となるような他の原因による光が存在しないことが重要であり、このためには、測定系によっては、ホタルルシフェリンの発光波長域とは異なる波長で発光が得られる発光基質が必要となる場合がある。
【0020】
発光、発色等の光学的特徴を有する化合物において、その光学的特徴は、化合物のπ電子系構造との関連性が大きいことが知られている。本願発明者らは、ホタルルシフェリンの複素環構造と発光における光学的特徴との関係を解明して発光波長や光量変化等がホタルルシフェリンとは異なる発光基質を開発すべく、ホタルルシフェリンの複素環構造を構成する窒素原子及び/又は硫黄原子を他の原子又は基に置き換えた類似化合物の合成を行い、特開2006-219381号公報において、発光甲虫ルシフェラーゼの作用によって発光を伴う反応が進行する発光系(以下、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系と称する)の発光基質として利用可能なホタルルシフェリン類似化合物を提案している。
【0021】
しかし、上述の本願発明者らによる提案化合物を含む従来の類似化合物を発光基質とした場合、何れもホタルルシフェリンのような強い発光ではなく、また、発光の立ち上がりが遅いため、定量や解析に応用するには不十分である。従って、発光強度を増大させ、発光の立ち上がりが素早く発光時間がプラトーになるような発光挙動に改善する必要がある。このため、本願発明者らは、発光甲虫ルシフェラーゼの反応機構について検討した。発光甲虫ルシフェラーゼはCoA化酵素の類に属し、その反応では、ATP(アデノシン三リン酸)によるホタルルシフェリンのAMP化(アデニリル化)反応(Aポケット)とその後の酸化反応(Oポケット)による過酸化物の生成とが進行することが解明されている。このようなCoA化酵素に属するホタルルシフェラーゼはAMP化反応の能力を本質的に有すると一般に考えられ、Oポケットの酸化反応が律速段階であると言われている。しかし、本願発明者らは、むしろ、その前段階であるAポケットのAMP化反応が律速であると考え、ホタルルシフェリンやその類似化合物のカルボキシル基を予めAMP化した後にホタルルシフェラーゼを作用させたところ、発光挙動が緩慢な状態から鋭角的なフラッシュ発光に変化して発光強度の立ち上がりが非常に早くなり、最大発光強度も極めて高くなることが判明した。このことから、ルシフェラーゼの酸化反応自体は極めて進行し易いことが理解される。従って、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光基質は、カルボキシル基を予めAMP化することによって、発光強度及び発光挙動を好適に改善することができ、また、カルボキシル基をAMP化したホタルルシフェリン類似化合物は、発光強度及び発光挙動が好適な発光基質となる。この場合、ルシフェラーゼのAポケットは作用しないので、ルシフェラーゼに限らず、酸化反応のみの酵素(酸化酵素)も発光に使用可能となる。また、酸化剤等の酸化能を有する化合物を用いた化学発光も可能になる。
【0022】
以下、本発明に係る新規ホタルルシフェリン類似化合物及び発光方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明に係るホタルルシフェリン類似化合物は、下記一般式(A)又は(B)で示される複素環化合物であり、これらは、前述の特開2006-219381号公報においてホタルルシフェリン類似化合物として提案した複素環化合物(a)~(n)のカルボキシル基がAMP化した化合物である。カルボキシル基のAMP化は、既知の手法に従って行うことができ、例えば、前駆体である複素環化合物(a)~(n)をDMSO中でAMP(アデノシン一リン酸)及びジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させることによって、カルボキシル基とAMPのリン酸基とが脱水縮合してAMP化する。
【化2】
JP0005194258B2_000004t.gif【0024】
(一般式(B)中のXは、硫黄原子、酸素原子、イミノ基及びメチレン基からなる群より選択される一種であり、一般式(A)及び(B)中のYは、硫黄原子、酸素原子又はメチレン基の何れかである。)
上記一般式(A)又は(B)で示される複素環化合物を個別に記載すると、表1の複素環化合物(Pa)~(Pn)のようになる。
【表1】
JP0005194258B2_000005t.gif【0025】
上記複素環化合物(Pa)~(Pn)は、発光甲虫ルシフェラーゼとの接触によって酸化が進行して過酸化物を生成し、これが分解する際に発光する。従って、発光甲虫ルシフェラーゼの存在する系に投入することによって、発光基質として作用する。単独で発光基質として利用可能であるが、必要に応じて、他の発光基質と組み合わせて用いてもよい。又、発光基質の発光によって発光甲虫ルシフェラーゼ活性を検出することを利用した測定・検出に本発明の複素環化合物を応用することができ、例えば、pHを適切に調整した発光基質組成物を発光剤キットとして用いることもできる。
【0026】
本発明に係る複素環化合物(Pa)~(Pn)において、AMP化したカルボキシル基が結合する炭素は不斉炭素であるので、複素環化合物(Pa)~(Pn)には光学異性体が存在し、合成プロセスにおいてL又はD型のシステイン、セリン等を用いることにより光学活性な複素環化合物(a)~(n)が得られ、これをAMP化して光学活性な(Pa)~(Pn)が調製される。従来、L型のホタルルシフェリンでは発光せず、発光基質となるのはD体のみであると考えられていたが、近年、L型のホタルルシフェリンにおける発光は初期においては極めて微少で検出し難く、非常に緩慢に経時増加することが明らかになり(参照:Lembert N., Biochem. J., 317, 273-7 (1996)等)、何れの異性体も発光基質となり得ることが判明した。本発明に係る上記複素環化合物に関しても、D体及びL体の何れもが発光甲虫ルシフェラーゼに対する発光基質となる。
【0027】
上記複素環化合物(Pa)~(Pn)又はAMP化したホタルルシフェリンを発光基質とする発光甲虫ルシフェラーゼによる発光(特にD体による発光)は、鋭角的なフラッシュ発光の挙動を示し、発光系の発光基質濃度が高くなるに従って、発光強度の増強(立ち上がりの急速化及び最大値の増大)傾向は顕著になる(但し、半減期は短くなる)。立ち上がった発光強度は減衰するが、完全には失活せず、ある程度のレベルに止まる。発光の波長域は、AMP化しない複素環化合物(a)~(n)の場合と同じで、例えば複素環化合物(Pa)における発光極大波長は約582nm、複素環化合物(Pc)では約537nmである。
【0028】
発光系は水性系であり、親水性有機化合物の存在は許容される。例えば、テトラフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸等を含有してもよい。酵素活性の検出による測定・分析に発光系を応用する場合、好適な発光強度を得るためには発光基質の濃度が1μM以上であることが好ましく、5μM以上がさらに好ましい。又、発光系のpHは特に限定しないが4~10であることが好ましく、より好ましくは6~8であり、必要に応じて、pHを安定化させるためにリン酸カリウム、トリス塩酸、グリシン、HEPES等の緩衝剤を適宜使用できる。
【0029】
また、上記複素環化合物(Pa)~(Pn)又はAMP化したホタルルシフェリンを発光基質とする発光は、酸化酵素によっても可能であり、使用可能な酸化酵素として、例えば、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼ、イリオモテボタルルシフェラーゼ、フラビン含有モノオキシゲナーゼ等が挙げられる。
【0030】
上記複素環化合物(Pa)~(Pn)又はAMP化したホタルルシフェリンを発光基質とする生物発光は、CoA(コエンザイムA)、ピロリン酸又はMgイオン(Mg2+)が発光系に共存すると、更に増強される。つまり、CoA、ピロリン酸又はMgイオンを発光系に配合すると、発光の立ち上がりは急激になって最大発光強度が大きくなるので、発光挙動は更に鋭角的なピーク形状を示す。つまり、これらは発光増強能を有し、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光増強剤として利用できる。中でも、Mgイオンの発光増強効果が大きく、しかも、Mgイオンが発光系に存在すると、立ち上がり後の発光強度の減衰もある程度緩和される。これらの化合物の発光増強効果は、発光系のCoA、ピロリン酸又はMgイオンの濃度が5μM以上において顕著であり、濃度の増加に従って大きくなる。
【0031】
発光強度の減衰は発光酵素の失活を意味するが、発光を測定・検出に用いるには、酵素の失活を防止してプラトーな発光挙動を示すように発光を安定化させることが肝要である。AMP化された発光基質を用いた発光の安定化にはMgイオンが有効であり、発光系にMgイオンが存在すると、発光強度は立ち上がった後の減衰が抑制される。特に、ピロリン酸とMgイオンとが発光系に共存すると、発光挙動は大きく異なる。具体的には、発光安定化は極めて顕著になり、発光基質に対して大過剰のピロリン酸及びマグネシウムの共存下では、急速に立ち上がった発光強度が維持されて発光挙動にプラトー領域が形成される。Mgイオン単独の場合、発光安定化効果は、発光系のMgイオン濃度が0.5mM以上において顕著であり、Mgイオン濃度の増加に従って大きくなる。プラトーな発光挙動を得るためには、ピロリン酸マグネシウムとして10μM以上の濃度であることが好ましく、より好ましくは100μM以上となる配合が適切であるが、ピロリン酸とMgイオンとの割合は当量比でなくてもよい。ピロリン酸マグネシウムは水溶性が低いが、ピロリン酸及びMgイオンを各々個別に遊離又は塩の形態で発光系に配合可能であり、使用可能なMg塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機酸塩、酢酸マグネシウム等の有機酸塩が挙げられ、ピロリン酸塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩、鉄等との塩が挙げられる。これらは、水溶液の状態で発光系に配合すればよく、酵素への影響の点から、発光系のpHが2~10になるように考慮して設定することが好ましい。
【0032】
上記複素環化合物(Pa)~(Pn)は、化学発光性も有する。化学発光は、上記複素環化合物を酸化して過酸化物を生成することにより、過酸化物の分解物が励起状態の発光種となって起こる。酸化は、DMSO中でt-ブトキシカリウムを用いて空気酸化することによって進行する。化学発光において、AMP化されたホタルルシフェリンの場合よりも短波長の発光が可能である。
【0033】
上記複素環化合物(Pa)~(Pn)又はAMP化したホタルルシフェリンを発光基質とする発光の最大発光強度は、AMP化していない複素環化合物(a)~(n)及びホタルルシフェリンの場合より2~3桁大きくなり得るので、上述のようにMgイオン及びピロリン酸を用いて発光を安定化させることによって実用可能なレベルのプラトーな発光が得られ、ホタルルシフェリンの場合と類似の形態での測定・分析への応用が実現できる。つまり、微弱で緩慢な発光挙動を示す発光基質による発光を増強して応答が速く発光強度が高い発光に変換する手段として、発光基質のカルボキシル基のAMP化は非常に有効である。従って、既知又は新規のルシフェリン類似化合物の中から所望の波長域で発光する化合物を選択してAMP化を施せば、発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の発光基質として、ホタルルシフェリンとは異なる波長域の発光を実用可能な高レベルの発光強度で提供できる。更に、ピロリン酸及びMgイオンを発光系へ導入することによって、発光強度が安定化してプラトーになり、発光酵素の定量に適用した場合の精度が向上する。従って、発光甲虫ルシフェラーゼアッセイ等の測定・検出に利用すると、確実性及び再現性が高い測定が可能であり、発光甲虫ルシフェラーゼ活性の経時変化を観測するのに都合が良いので、ルシフェリン類似化合物の発光基質としての有用性を高めることができる。
【0034】
ホタルルシフェリンより短波長(約500nm以下)で発光する発光基質は、発光オワンクラゲの緑色蛍光タンパク(GFP)にエネルギー移動が可能であるので、緑色のGFP蛍光(約520nm)が観測される。従って、この発光基質を用いて、GFP/発光甲虫ルシフェラーゼ融合タンパク質によるBRET(Bioluminescence Resonance Energy Transfer)型発光系を構成することができる。BRET型発光系は、種々のタンパク質翻訳後修飾や遺伝子発現のバイオイメージングを可能にする。例えば、GFPと発光甲虫ルシフェラーゼ融合タンパク質とがタンパク質プロセッシング配列を介している状態で、融合タンパク質がプロセッシングを受けないと、GFPの緑色蛍光が検出され、融合タンパク質がプロセッシングを受けると、発光基質の青色発光が検出される。従って、発光状態に基づいて、タンパク質プロセッシング酵素の発現やタンパク量のアッセイ、タンパク質の局在化状態のバイオイメージングができる。また、タンパク質の熟成に必要な糖鎖の付加プロセスをバイオイメージしたり、タンパク質/タンパク質間の相互作用等を観測することも可能である。
【0035】
以下、実施例を参照して本発明を詳述する。本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。尚、本願において、「%」は、特に説明がない場合、「質量%」を示すものとする。
【0036】
<実施例1>
[複素環化合物(a)]
複素環化合物(a)は、下記の反応プロセスに従って、市販の6-ヒドロキシ-ベンゾチアゾール-2-カルボニトリルから調製した。
【化3】
JP0005194258B2_000006t.gif【0037】
(エステルの合成)
6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボニトリル(126.2 mg、0.7162 mmol)のメタノール溶液(20 ml)に1 mol/lナトリウムメトキシド溶液(メタノール溶液) (1.5 ml、1.5 mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応混合物に1 M塩酸(40 ml)を加え、酢酸エチル(3×60 ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボン酸メチルエステル(化合物1)(159.4 mg、quant.)を薄黄色結晶として得た。
【0038】
(化合物1の分析値)
mp: 197-200℃. IR (film): 3157, 1739 cm-1
H NMR (270 MHz, CD3OD): δ 4.01 (3H, s), 7.11 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 7.37 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.95 (1H, d, J = 8.9 Hz)
13C NMR (67.8 MHz, CD3OD): δ 53.83 (q), 107.30 (d), 119.05 (d), 126.57 (d), 139.95 (s), 147.84 (s), 155.76 (s), 159.61 (s), 162.16 (s)
MS (EI): m/z 209 (M+, 100), 178 (30), 151 (95)
(セリンメチルエステルの導入)
上記化合物1(344.4 mg、1.646 mmol)の1,2-ジメトキシエタン溶液(25 ml)に、アルゴン雰囲気下、市販のD-セリンメチルエステル塩酸塩(2.5611g、16.462mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(4.0523g、33.169mmol)を加え、2時間加熱還流した。この反応混合物に4 M塩酸(120ml)を加え、酢酸エチル(4×100ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を2度のシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル50g; クロロホルム‐メタノール(10:1)}、{シリカゲル50 g; クロロホルム‐酢酸エチル(2:1)}で精製し、更に分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×6枚 ; クロロホルム-酢酸エチル(1:1)}にて精製し、原料エステル(182.1mg、0.870mmol)と3-ヒドロキシ-2-[(6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-カルボニル)アミノ]プロピオン酸メチルエステル(化合物2)(163.6mg、変換収率71%)を薄黄色油状物として得た。
【0039】
(化合物2の分析値)
H NMR (270 MHz, CDOD):δ 3.80 (3H, s), 3.97 (1H, dd, J = 3.6, 11.5 Hz), 4.07 (1H, dd, J = 4.3, 11.5 Hz), 4.75 (1H, dd, J = 3.6, 4.3 Hz), 7.08 (1H, dd, J = 2.6, 8.9 Hz), 7.36 (1H, d, J = 2.6 Hz), 7.94 (1H, d, J = 8.9 Hz)
13C NMR (67.8 MHz, CD3OD):δ 53.13 (q), 56.47 (d), 62.80 (t), 107.51 (d), 118.49 (d), 126.33 (d), 140.09 (s), 148.14 (s), 158.86 (s), 160.25 (s), 162.09 (s), 171.83 (s)
(アセタートの合成)
上記化合物2(30.2mg、0.102mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8ml)に無水酢酸(50ml、0.53mmol)、炭酸水素ナトリウム(17.6mg、0.209mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物に50%塩化アンモニウム水溶液(30ml)を加え、酢酸エチル(3×35ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×2枚 ; クロロホルム-酢酸エチル(3:2)}にて精製し、2-[(6-アセトキシベンゾチアゾール-2-カルボニル)アミノ]-3-ヒドロキシプロピオン酸メチルエステル(化合物3)(22.8mg、66%)を薄黄色油状物として得た。
【0040】
(化合物3の分析値)
H NMR (270 MHz, CDCl):δ 2.36 (3H, s), 2.73 (1H, br.s), 3.84 (3H, s), 4.09 (1H, br.dd), 4.18 (1H, br.dd), 4.88 (1H, m), 7.28 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 7.71 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.06 (1H, d, J = 8.9 Hz), 8.24 (1H, d, J = 7.9 Hz)
H NMR (270 MHz, CDOD):δ 2.33 (3H, s), 3.80 (3H, s), 3.98 (1H, dd, J = 4.0, 11.5 Hz), 4.07 (1H, dd, J = 4.6, 11.5 Hz), 4.76 (1H, dd, J = 4.0, 4.6 Hz), 7.38 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 7.89 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.16 (1H, d, J = 8.9 Hz)
13C NMR (67.8 MHz, CDCl):δ 21.15 (q), 53.01 (q), 54.97 (d), 63.08 (t), 115.00 (d), 121.76 (d), 125.17 (d), 137.77 (s), 149.39 (s), 150.62 (s), 159.89 (s), 162.92 (s), 169.33 (s), 170.22 (s)
(オキサゾリンの合成)
上記化合物3(22.8mg、0.0674mmol)のジクロロメタン溶液(20ml)に、アルゴン雰囲気下、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(18ml、0.14mmol)を加え、90℃で30分間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0.5ml加え、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリドを分解した後、30%塩化アンモニウム水溶液(30ml)を加え、ジクロロメタン(1×30ml)酢酸エチル(2×40ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×1枚 ; クロロホルム-酢酸エチル(3:1)}にて精製し、2-(6-アセトキシベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-4-カルボン酸メチルエステル(化合物4)(16.6mg、77%)を無色結晶として得た。
【0041】
(化合物4の分析値)
H NMR (270 MHz, CDCl3):δ 2.36 (3H, s), 3.85 (3H, s), 4.77 (1H, dd, J = 8.9, 10.9 Hz), 4.88 (1H, dd, J = 8.2, 8.9 Hz), 5.08 (1H, dd, J =8.2, 10.9 Hz), 7.29 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 7.73 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.17 (1H, d, J = 8.9 Hz)
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3):δ 21.15 (q), 52.99 (q), 68.79 (d), 70.95 (t), 114.59 (d), 121.74 (d), 125.55 (d), 136.83 (s), 149.68 (s), 151.01 (s), 154.96 (s), 161.04 (s), 169.26 (s), 170.46 (s)
(複素環化合物(a)の合成)
上記化合物4(16.6mg、0.0318mmol)を、エタノール(2ml)及び10mM炭酸水素アンモニウム水溶液(8ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、少量のブタ肝臓由来エステラーゼを加えた。35℃で15時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、その濾液を減圧濃縮して、D型の2-(6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-4-カルボン酸(複素環化合物(a))(18.5mg、quant.)を黄色結晶として得た。
【0042】
(複素環化合物(a)の分析値)
H NMR (270 MHz, CD3OD):δ 4.65-4.88 (3H, complex), 7.07 (1H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 7.34 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.88 (1H, d, J = 8.9 Hz)
13C NMR (67.8 MHz, CD3OD):δ 72.48 (d), 73.91 (t), 107.24 (d), 118.39 (d), 125.74 (d), 139.02 (s), 147.85 (s), 153.62 (s), 158.97 (s), 161.22 (s), 177.69 (s)
MS (FAB): m/z 378 (M+H+, 10), 243 (100)
[複素環化合物(c)]
複素環化合物(c)は、下記の反応プロセスに従って、市販の2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドから調製した。
【化4】
JP0005194258B2_000007t.gif【0043】
(モノヒドロキシアルデヒドの合成)
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(1.0g、7.24mmol)のジクロロメタン溶液(200ml) にt-ブチルジメチルシリルクロリド(1.2eq., 8.69mmol)及びジメチルアミノピリジン(0.9eq., 6.52mmol)を加え、摂氏零度で30分間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル130g; ヘキサン‐酢酸エチル(10:1)}にて精製し、4-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(化合物5)(1.6g、87%)を薄橙色油状物として得た。
【0044】
(ジエステルの合成)
上記化合物5(1.53g、6.06mmol)のトルエン溶液(50ml)に、アルゴン雰囲気下、臭化マロン酸ジエチル(1.2eq., 7.27mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(3.2eq., 19.4mmol)を加え、摂氏80度で50分間加熱撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150g;ヘキサン‐酢酸エチル(3:1)}にて2回精製し、6-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-3-ヒドロキシクマロン-2-ジカルボン酸ジエチルエステル(化合物6)(881.6mg、35%)を黄色油状物として得た。
【0045】
(モノエステルの合成)
上記化合物6(471.1mg、1.15mmol)のメチルエチルケトン溶液(50ml)に、アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(5.1eq., 5.87mmol)を加え、摂氏80度で20時間加熱環流した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル120g; ヘキサン‐酢酸エチル(3:1)、含0.01%トリフルオロ酢酸}で精製し、更に分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×6枚 ; ベンゼン-酢酸エチル(10:1)}にて2回精製し、6-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2-カルボン酸エチルエステル(化合物7)(122.7mg、51.7%)を無色固体として得た。
【0046】
(ベンゾフランカルボン酸の合成)
上記化合物7(99.8mg、0.484mmol)のイソプロパノール溶液(25ml)に1M水酸化ナトリウム(3ml)を加え、室温で3日間撹拌した。この反応混合物を陽イオン樹脂(アンバーライトIR-120B)で処理し、樹脂を濾過して除去した後、濾液を減圧濃縮し、6-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2-カルボン酸(化合物8)(87.5mg、100%)を淡黄色固体として得た。
【0047】
(システイン保護体の合成)
市販のD‐システイン-S-トリチル化合物(932.8mg, 2.566mmol)をメタノール(200ml)に溶解し、4 N塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(10ml, 40mmol)を加えた。この混合液を室温で2日間撹拌した後、陰イオン交換樹脂(IRA400 OH AG)を用いて中和した。樹脂を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{シリカゲル85g; ヘキサン‐酢酸エチル(2:1)→クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、2-アミノ-3-(トリチルスルファニル)プロピオン酸メチルエステル(化合物9)(414.6mg、43%)を薄黄色油状物として得た。
【0048】
(化合物9の分析値)
IR (neat):3381, 3315, 1739, 1595 cm-1
H NMR (270 MHz, CDCl3):δ2.47 (1H, dd, J = 7.7, 12.4 Hz), 2.60 (1H, dd, J = 4.8, 12.4 Hz), 3.20 (1H, br.dd, J = 4.8, 7.7 Hz), 3.65 (3H, s), 7.18-7.31 (9H, complex), 7.40-7.45 (6H, complex)
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3):δ36.90 (t), 52.16 (q), 53.78 (d), 66.83 (s), 126.76 (d)×3, 127.94 (d)×6, 129.57 (d)×6, 144.51 (s)×3, 174.18 (s)
MS (FAB):m/z 378 (M+H+, 10), 243 (100)
(化合物10の合成)
上記化合物8(35.1mg、0.197mmol)のジメチルホルムアミド溶液(30 ml)に、アルゴン雰囲気下、上記化合物9(1.4eq., 0.276mmol)、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(3.1eq., 0.611mmol)及びジメチルアミノピリジン(5.1eq., 1.00mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル50g; クロロホルム‐メタノール(10:1)}、{シリカゲル200g; ヘキサン‐酢酸エチル(1:1)}にて精製し、2-[(6-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2-カルボニル)アミノ]-3-(トリチルスルファニル)プロピオン酸メチルエステル(化合物10)(32.6mg、31%)を薄黄色油状物として得た。
【0049】
(チアゾリンの合成)
上記化合物10(30.1mg、0.056mmol)のジクロロメタン溶液(10ml)に、アルゴン雰囲気下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.7eq., 0.151mmol)及びトリフェニルホスフィンオキシド(5.3eq., 0297mmol)を加え、室温で40分間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×3枚 ; ヘキサン-酢酸エチル(2:3)}にて精製し、2-(6-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(化合物11)(12.0mg、77%)を淡黄色固体として得た。
【0050】
(複素環化合物(c)の合成)
上記化合物11(12.0mg、0.043mmol)を、エタノール(3ml)及び10 mM炭酸水素アンモニウム水溶液(12ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、触媒量のブタ肝臓由来エステル加水分解酵素を加えた。この溶液を36℃で18時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、その濾液を減圧濃縮して、D体の2-(6-ヒドロキシベンゾ[b]フラン-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸(複素環化合物(c))(14.3mg、quant.)を黄色固体として得た。
【0051】
(複素環化合物cの分析値)
H-NMR (270MHz, MeOH-d4):δ3.64 (1H, dd, J = 13.1, 9.2 Hz), 3.78 (1H, dd, J =13.1,8.9 Hz), 5.10 (1H, dd, J = 9.2, 8.9 Hz), 6.80 (1H, dd, J = 8.6, 2.3 Hz), 6.93 (1H, d, J = 2.3 Hz), 7.31 (1H, s), 7.47 (1H, d, J = 8.6 Hz)
MS (FAB):m/z 264 (M+H+, 31), 192 (100)
[複素環化合物(h)]
複素環化合物(h)は、下記の反応プロセスに従って、市販の5-インダノールから調製した。
【化5】
JP0005194258B2_000008t.gif【0052】
(ケトンの合成及びヒドロキシ基の保護)
市販の5-インダノール(2.5g、18.6mmol)の80%含水アセトニトリル溶液(20ml) に2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(1.2eq., 22.3mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル500g; クロロホルム‐メタノール(10:1)}にて精製し、5-ヒドロキシインダン-1-オン(2.1g、75%)を赤褐色固体として得た。
【0053】
5-ヒドロキシインダン-1-オン(433.0mg、2.93mmol)のジクロロメタン溶液(100ml) にt-ブチルジメチルシリルクロリド(5.0eq., 14.6mmol)及びジメチルアミノピリジン(5.1eq., 14.9mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150 g; ヘキサン‐酢酸エチル(4:1)}にて精製し、5-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)インダン-1-オン(化合物12)(591.1mg、77%)を薄黄色油状物として得た。
【0054】
(ジエステルの合成)
上記化合物12(455.1mg、1.74mmol)のトルエン溶液(20ml)に、アルゴン雰囲気下、クロロ炭酸エチル(3.0eq., 5.22mmol)及びビス(トリメチルシリル)アミドカリウム(7.8eq., 13.6mmol)を加え、摂氏-78度で15分間撹拌し、続いて室温で15分間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150g;ヘキサン‐酢酸エチル(5:1)}にて精製し、5-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-オキソインダン-2,2-ジカルボン酸ジエチルエステル(化合物13)(682.0mg、96%)を赤橙色油状物として得た。
【0055】
(ケトンの還元)
上記化合物13(1.03g、2.53mmol)のジオキサン-メタノール(9:1)の混合溶液(80ml)に、アルゴン雰囲気下、水素化ホウ素ナトリウム(5.2eq., 13.2mmol)を加え、摂氏零度で40分間撹拌した。この反応混合物に希塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、粗5-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-ヒドロキシインダン-2,2-ジカルボン酸ジエチルエステル(化合物14)(1.02g、99%)を薄黄色油状物として得た。
【0056】
(インデンの合成)
上記化合物14(488.4mg、1.20mmol)の1,2-ジクロロエタン溶液(40ml)に、アルゴン雰囲気下、塩化メタンスルフホニル(3.3eq., 3.96mmol)及びジメチルアミノピリジン(5.2eq., 6.24mmol)を加え、30分間摂氏60度で加熱撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー{20cm×20cm×0.5mm×6枚; ヘキサン-酢酸エチル(4:1)}にて精製し、6-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1H-インデン-2-カルボン酸エチルエステル(化合物15)(240.4mg、63%)を薄黄色油状物として得た。
【0057】
(アルデヒドの合成)
上記化合物15(432.4mg、1.36mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50ml)に、アルゴン雰囲気下、1 M水素化ブチルアルミニウム(1.2eq., 1.63mmol, 1.63ml)を加え、摂氏-40度で3時間撹拌した。この反応混合物にロッシェル塩を加え、室温で18時間撹拌し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル300g; ヘキサン‐酢酸エチル(10:1)}にて精製し、6-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1H-インデン-2-カルバルデヒド(化合物16)(354.0mg、95%)を無色油状物として得た。
【0058】
(ジチアンの合成)
上記化合物16(233.1mg、0.851mmol)のジクロロメタン溶液(20ml)に、アルゴン雰囲気下、プロパンジチオール(1.1eq., 0.936mmol)及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.5eq., 1.28mmol)を加え、摂氏零度で1時間撹拌し、続けて室温で3時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150g; ヘキサン‐酢酸エチル(10:1)}にて精製し、t-ブチル[2-(1,3-ジチアン-2-イル)-3H-インデン-5-イロキシ]ジメチルシラン(化合物17)(310mg、100%)を無色油状物として得た。
【0059】
(ホモセリン誘導体の合成)
市販のホモセリン(965mg, 8.11mmol)をメタノール(300 ml)に溶解し、4N塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(10ml, 40mmol)を加えた。室温で2日間撹拌した後、陰イオン交換樹脂(IRA400 OH AG)を用いて中和した。樹脂を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をジクロロメタンに溶解し、二炭酸ジt-ブチル(1.5eq., 12.2mmol)及びジメチルアミノピリジン(1.5eq., 12.2mmol)を加えた。摂氏零度で1時間撹拌し、続けて室温で3時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{シリカゲル85g; ヘキサン‐酢酸エチル(2:1) → クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、精製物を直ちにテトラヒドロフラン(150 ml)に溶解してヨウ化メチルトリフェノキシホスホニウム(1.5eq., 12.2mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー{シリカゲル300g; ヘキサン‐酢酸エチル(2:1) → クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、ホモセリン誘導体18(2.4g、87%)を薄黄色油状物として得た。
【0060】
(化合物19の合成)
上記化合物17(154.3mg、0.424mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20ml)に、アルゴン雰囲気下、0.98Mブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.5eq., 0.636mmol, 0.65ml)及びホモセリン誘導体18(1.5eq., 0.636mmol)を加え、摂氏零度で20分間続いて室温で3時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150g;ヘキサン‐酢酸エチル(2:1) → クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-{2-[6-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1H-インデン-2-イル]-1,3-ジチアン-2-イル}ブタン酸メチルエステル(化合物19)(228mg、93%)を無色油状物として得た。
【0061】
(ケトンの合成)
上記化合物19(126.8mg、0.219mmol)の80%含水アセトン溶液(10ml)にヨウ化メチル(20eq., 4.38mmol)を加え、室温で43時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150 g;ヘキサン‐酢酸エチル(2:1) → クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-5-[6-(t-ブチルジメチルシリルオキシ)-1H-インデン-2-イル]-5-オキソペンタン酸メチルエステル(化合物20)(106.0mg、99%)を無色油状物として得た。
【0062】
(化合物21及びイミンの合成)
上記化合物20(106.0mg、0.217mmol)のジクロロメタン溶液(5ml)にトリフルオロ酢酸(1ml)を加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物をそのまま減圧濃縮し、2-アミノ-5-(6-ヒドロキシ-1H-インデン-2-イル)-5-オキソペンタン酸メチルエステル(化合物21)を粗収率100%で得た。
【0063】
上記化合物21を含む残渣を直ちにエタノールに溶解し、ジメチルアミノピリジン(3.0eq., 0.651mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー{シリカゲル150 g;ヘキサン‐酢酸エチル(2:1) → クロロホルム-メタノール(10:1)}にて精製し、5-(6-ヒドロキシ-1H-インデン-2-イル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-2-カルボン酸メチルエステル(化合物22)(49.1mg、88%, 2 steps)を無色油状物として得た。
【0064】
(複素環化合物(h)の合成)
上記化合物22(23.5mg、0.091mmol)を、エタノール(3ml)及び10mM炭酸水素アンモニウム水溶液(12ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、触媒量のブタ肝臓由来エステル加水分解酵素を加えた。35℃で16時間撹拌した後、この反応混合物を濾過し、その濾液を減圧濃縮して、5-(6-ヒドロキシ-1H-インデン-2-イル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-2-カルボン酸(複素環化合物(h))(23.2mg、quant.)を黄色結晶として得た。
【0065】
(複素環化合物(h)の分析値)
MS (FAB): m/z 244 (M+H+, 31), 199 (100)
[複素環化合物(b)]
前記化合物15の代わりに前記化合物1を用いて、前記化合物15から複素環化合物(h)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(b)を合成した。
【0066】
[複素環化合物(d)]
前記化合物1の代わりに前記化合物7を用いて、前記化合物1から複素環化合物(a)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(d)を合成した。
【0067】
[複素環化合物(e)]
前記化合物15の代わりに前記化合物7を用いて、前記化合物15から複素環化合物(h)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(e)を合成した。
【0068】
[複素環化合物(f)]
前記化合物7の代わりに前記化合物15を用いて、前記化合物7から複素環化合物(c)までの合成プロセスに従って反応を進めることによって、複素環化合物(f)を合成した。
【0069】
[複素環化合物(g)]
前記化合物1の代わりに前記化合物15を用いて、前記化合物1から複素環化合物(a)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(g)を合成した。
【0070】
[複素環化合物(i)]
6-ヒドロキシ-ベンゾチアゾール-2-カルボニトリルから前記化合物1を合成したプロセスに従って、6-ヒドロキシ-ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボニトリルから6-ヒドロキシ-ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボン酸メチルエステルを合成し、さらに前記化合物7から複素環化合物(c)までの合成プロセスに従って反応を進めることによって、複素環化合物(i)を合成した。
【0071】
[複素環化合物(j)]
前記化合物1の代わりに、上記複素環化合物(i)の合成途中において得られた6-ヒドロキシ-ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボン酸メチルエステルを用いて、前記化合物1から複素環化合物(a)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(j)を合成した。
【0072】
[複素環化合物(k)]
前記化合物15の代わりに、上記複素環化合物(i)の合成途中において得られた6-ヒドロキシ-ベンゾ[b]チオフェン-2-カルボン酸メチルエステルを用いて、前記化合物15から複素環化合物(h)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(k)を合成した。
【0073】
[複素環化合物(l)]
前記化合物7の代わりに6-ヒドロキシ-インドール-2-カルボン酸メチルエステルを用いて、前記化合物7から複素環化合物(c)までの合成プロセスに従って反応を進めることによって、複素環化合物(l)を合成した。
【0074】
[複素環化合物(m)]
前記化合物1の代わりに6-ヒドロキシ-インドール-2-カルボン酸メチルエステルを用いて、前記化合物1から複素環化合物(a)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(m)を合成した。
【0075】
[複素環化合物(n)]
前記化合物15の代わりに、6-ヒドロキシ-インドール-2-カルボン酸メチルエステルを用いて、前記化合物15から複素環化合物(h)までの合成プロセスに従って同様に反応を進めることによって、複素環化合物(n)を合成した。
【0076】
[ホタルルシフェリンのAMP化]
ジメチルスルホキシド1ml中で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(50mg)を用いてD-ルシフェリン(1.8mg)及びアデノシン一リン酸(11.2mg)を縮合した。反応溶液に冷アセトン3mlを加え、析出した不溶物を遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。得られた不溶物を冷アセトン4mlに懸濁させて洗浄した後、再度遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。この洗浄操作を更に2回繰り返し、得られた不溶物から残留アセトンを留去した後、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液0.5mlに溶解した。遠心沈降及び0.45μmシリンジフィルターを用いて不溶物を除去した後、溶液中の成分を高速液体クロマトグラフィーによって下記の分離条件1で分離したところ、未反応D-ルシフェリン、D-ルシフェリン-AMP及びL-ルシフェリン-AMPの混合物が得られた。
【0077】
この混合物を、更に下記の分離条件2によってHPLCにより分離精製し、得られた活性画分(HPLCの保持時間9分)から減圧濃縮によってアセトニトリムを留去した後、再度分離条件1でHPLCにより精製した。得られた画分から減圧濃縮によってアセトニトリルを留去して、D-ルシフェリン-AMP(600μM)を得た。これは、HPLCによって単一成分であることを確認した。又、D-ルシフェリン-AMPの収量は、既知濃度のルシフェリン溶液を標準物質として、HPLCにおける330nmの吸収面積に基づいて算出した。尚、D-ルシフェリン及びD-ルシフェリン-AMPの330nmにおける分子吸光係数は、各々、文献記載(1) Branchini, B.R.; Murtiashaw, M.H.; Magyar, R.A.; Portier, N.C.; Ruggiero, M.C.; Stroh, J.G., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2112-2113, 2) Morton, R.A.; Hopkins, T.A.; Seliger, H.H. Biochemistry, 1969, 8, 1598-1607)に従って1.82×104及び1.51×104とした。
【0078】
(分離条件1)
溶離液1:0.05%TFA水溶液、溶離液2:アセトニトリル
濃度勾配:0~2分(溶離液1:溶離液2=1:9)、2~15分(溶離液1:溶離液2=1:9 → 2:8)、15~20分(溶離液1:溶離液2=2:8)
カラム:ZORBAX SB C-18 150 - 4.6mm 3.5μm
流速:0.5ml/分
(分離条件2)
溶離液:0.05%TFA水溶液:アセトニトリル=85:15
カラム:Mightysil RP-18 GP(ODS) 250 - 4.63μm
流速:0.5ml/分
(分析データ)
HRMS(ESI+) Calcd for C21H21N7O9PS2 (M+H+), 610.0580; found, 610.0580.
[複素環化合物(Pa)]
ジメチルスルホキシド0.5ml中で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(28mg)を用いて複素環化合物(a)(1mg)及びアデノシン一リン酸(5.8mg)を縮合した。反応溶液に冷アセトン1.5mlを加え、析出した不溶物を遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。得られた不溶物を冷アセトン1mlに懸濁させて洗浄した後、再度遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。この洗浄操作を更に2回繰り返し、得られた不溶物から残留アセトンを留去した後、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液0.2mlに溶解した。遠心沈降及び0.45μmシリンジフィルターを用いて不溶物を除去して、複素環化合物(Pa)のTFA水溶液を得た。
【0079】
溶液中の成分をHPLCによって前述の分離条件1で分離したところ、未反応の複素環化合物(a)、AMP化した複素環化合物(Pa)及びL体の複素環化合物(Pa)の混合物が得られた。
【0080】
この混合物を、更に前述の分離条件2によってHPLCにより分離精製し、得られた活性画分(保持時間25分)から減圧濃縮によってアセトニトリムを留去した後、再度分離条件1でHPLCにより精製した。得られた画分から減圧濃縮によってアセトニトリルを留去して、複素環化合物(Pa)(40μM)を得た。これは、HPLCによって単一成分であることを確認した。この質量分析データは、図5及び以下の通りである。
【0081】
(分析データ)
HRMS(ESI+) Calcd for C21H21N7O10PS (M+H+), 594.0870; found, 594.0808.
[複素環化合物(Pb)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(b)0.5mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pb)25μgを得た。
【0082】
[複素環化合物(Pc)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(c)1.0mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pc)30μgを得た。
【0083】
[複素環化合物(Pd)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(d)0.5mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pd)10μgを得た。
【0084】
[複素環化合物(Pe)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(e)0.7mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pe)16μgを得た。
【0085】
[複素環化合物(Pf)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(f)0.9mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pf)20μgを得た。
【0086】
[複素環化合物(Pg)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(g)0.5mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pg)10μgを得た。
【0087】
[複素環化合物(Ph)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(h)0.8mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Ph)20μgを得た。
【0088】
[複素環化合物(Pi)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(i)1.2mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pi)35μgを得た。
【0089】
[複素環化合物(Pj)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(j)0.9mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pj)20μgを得た。
【0090】
[複素環化合物(Pk)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(k)0.5mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pk)10μgを得た。
【0091】
[複素環化合物(Pl)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(l)1.1mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pl)25μgを得た。
【0092】
[複素環化合物(Pm)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(m)0.8mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pm)20μgを得た。
【0093】
[複素環化合物(Pn)]
前述の複素環化合物(Pa)の調製において、複素環化合物(a)の代わりに前述で調製した複素環化合物(n)0.5mgを用いたこと以外は同様にして縮合反応を行い、得られた反応混合物を前記分離条件1及び2に従って同様に精製して複素環化合物(Pn)10μgを得た。
【0094】
<実施例2>
[AMP化ホタルルシフェリンの生物発光]
下記の条件1又は条件2に従って、下記の試薬1~5を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2200を用いて、波長560nmにおける発光を55秒間モニターした。得られた発光パターンを図1(図中、符号1は条件1、符号2は条件2)に示す。
【0095】
試薬1:0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
試薬2:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が10pg/μlの50mMトリス塩酸緩衝液
試薬3:ホタルルシフェリン濃度が1.5mMの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)
試薬4:10mM Mg-ATP水溶液(シグマ社製、A9187)
試薬5:AMP化ホタルルシフェリン濃度が500μMの0.05%TFA水溶液
(条件1)
各20μlの試薬1、試薬2及び試薬3を混合し、この混合物に40μlの試薬4を添加することによって発光を開始した。
【0096】
(条件2)
各20μlの試薬1及び試薬2を混合し、この混合物に60μlの試薬5を添加することによって発光を開始した。
【0097】
(結果及び評価)
条件1における55秒間の総発光量及び最大発光強度を各々1とすると、条件2における総発光量は0.9、最大発光強度は14.7となった。従って、ホタルルシフェリンをAMP化することによって、発光が増強されて、発光挙動が鋭角的なフラッシュ発光になることが明らかである。
【0098】
<実施例3>
[複素環化合物(Pa)の生物発光]
下記の条件1又は条件2に従って、下記の試薬1~4を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2300を用いて、波長582nmにおける発光を60秒間モニターした。得られた発光パターンを図2(図中、符号1は条件1、符号2は条件2)に示す。
【0099】
試薬1:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が260pg/μlの0.13Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
試薬2:複素環化合物(a)濃度が50μMの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)
試薬3:10mM Mg-ATP水溶液(シグマ社製、A9187)
試薬4:複素環化合物(Pa)濃度が40μMの0.05%TFA水溶液
(条件1)
10μlの試薬2及び15μlの試薬3を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0100】
(条件2)
25μlの試薬4に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0101】
(結果及び評価)
条件1における60秒間の総発光量及び最大発光強度を各々1とすると、条件2における総発光量は170、最大発光強度は250となった。
【0102】
条件2における発光パターンは、ホタルルシフェリン類似化合物をAMP化することによって、発光挙動が鋭角的なフラッシュ発光になることを示している。但し、発光開始から約5秒後以降において発光強度の減衰は止って発光強度が一定レベルに保たれ、つまり、発光が安定化することを示している。この安定化した発光強度は、実施例2の条件1(1.5mMホタルルシフェリン)における発光強度に匹敵することから、この安定化した発光強度を利用すると、ホタルルシフェリンと同様にして、複素環化合物(Pa)を発光酵素の定量分析に応用することが可能であることが理解される。
【0103】
更に、複素環化合物(a)及び(Pa)の代わりに複素環化合物(c)及び(Pc)を発光基質として用いたこと以外は上記と同様にして生物発光を行い、波長537nmにおける発光をモニターしたところ、AMP化した発光基質(Pc)において同様に発光が増強されることが確認された。
【0104】
<実施例4>
[AMP化ホタルルシフェリンの生物発光の増強及び安定化]
下記の条件A~Eに従って、下記の試薬1,2及び添加剤1~5を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2300を用いて20秒間発光をモニターした。各条件において得られた発光パターンを図3(図中、符号Aは条件A、符号Bは条件B、符号Cは条件C、符号Dは条件D、符号Eは条件E)に示す。
【0105】
試薬1:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が150pg/μlの0.13Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
試薬2:AMP化ホタルルシフェリン濃度が100μMの0.05%TFA水溶液
添加剤1:1mMCoA水溶液
添加剤2:0.5mMピロリン酸ナトリウム水溶液
添加剤3:2.5mM硫酸マグネシウム水溶液
添加剤4:(0.5mMピロリン酸ナトリウム+2.5mM硫酸マグネシウム)水溶液
添加剤5:純水
(条件A)
15μlの試薬2及び10μlの添加剤5を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0106】
(条件B)
15μlの試薬2及び10μlの添加剤1を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0107】
(条件C)
15μlの試薬2及び10μlの添加剤2を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0108】
(条件D)
15μlの試薬2及び10μlの添加剤3を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0109】
(条件E)
15μlの試薬2及び10μlの添加剤4を混合し、この混合物に75μlの試薬1を添加することによって発光を開始した。
【0110】
(結果及び評価)
条件Aにおける20秒間の総発光量を1とすると、条件Bにおける総発光量は1.1、条件Cにおける総発光量は0.8、条件Dにおける総発光量は1.9、条件Eにおける総発光量は3.4となった。
【0111】
図3の発光パターンによれば、条件Aの発光を基準とすると、条件B~D(CoA、ピロリン酸又はMgイオン添加)では何れも発光増強効果が認められ、最大発光強度が5~20%程度向上している。また、条件D(Mgイオン添加)においては、発光強度の減衰がかなり抑制され、最大発光強度の約半分の強度が維持されている。これらに比べ、条件E(ピロリン酸及びMgイオン添加)における発光パターンは著しく異なり、発光強度は、立ち上がった後に減衰せず、発光開始から約2秒後以降は安定化してプラトーな発光挙動を示している。つまり、Mgイオン及びピロリン酸の共存下では酵素が失活せず、発光強度は高いレベルで一定の値を示す。故に、この発光系を発光酵素の定量分析に利用できることが明らかである。
【0112】
<実施例5>
[発光酵素の定量]
下記の条件1又は条件2に従って、下記の試薬1~4(試薬1のホタルルシフェラーゼ濃度:3pM)を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2200を用いて、発光開始後20秒における波長560nmの発光強度を測定した。更に、試薬1のホタルルシフェラーゼ濃度を3pM~1.5nMの範囲で変更したこと以外は上記と同様にして発光強度の測定を繰り返し、試薬1のホタルルシフェラーゼ濃度と発光強度との関係をグラフにした。この結果を図4に示す。
【0113】
試薬1:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が3pM~1.5nMの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH8)
試薬2:純水
試薬3:50μMピロリン酸マグネシウム水溶液
試薬4:AMP化ホタルルシフェリン濃度が10μMの0.05%TFA水溶液
(条件1)
80μlの試薬1及び10μlの試薬2を混合し、この混合物に10μlの試薬4を添加することによって発光を開始した。
【0114】
(条件2)
80μlの試薬1及び10μlの試薬3を混合し、この混合物に80μlの試薬4を添加することによって発光を開始した。
【0115】
(結果及び評価)
条件1における発光の結果から、AMP化したホタルルシフェリンを発光基質とした発光系を用いて発光強度を測定することによって、ホタルルシフェラーゼの定量が可能である(R2=0.9825)ことが解る。又、条件2においても同様にホタルルシフェラーゼの定量が可能である(R2=0.9912)ことから、ピロリン酸マグネシウムの発光系への添加は測定における定量性を損なわないことが明らかであり、条件1の場合より発光強度が高いことからピロリン酸マグネシウムの添加によって検出感度が向上し、検出限界をより低濃度にすることが可能なことが理解される。
【0116】
<実施例6>
[複素環化合物(Pa)の化学発光]
複素環化合物(Pa)の濃度が1mMのDMSO溶液を調製し、t-ブトキシカリウムを加えて空気酸化したところ、緑色の発光を示した。PMA化したD-ホタルルシフェリンについて同じ条件で参加した場合には黄色の発光を示し、複素環化合物(Pa)のPMA化物の方が発光波長が短い。
【0117】
<実施例7>
ルシフェリン類似化合物(30),(31)を準備し(30:下記に従って調製、31:前記文献3参照)、各々、下記に従ってカルボキシル基のAMP化を行った。
【化6】
JP0005194258B2_000009t.gif【0118】
[ルシフェリン類似化合物(30)の調製]
アルゴン雰囲気下で、p-シアノフェノール(229.6mg, 1.93mmol)及びD-システイン塩酸塩一水和物(1.73g, 9.82mmol)を、脱気したエタノール(5.0ml)と1M水酸化ナトリウム水溶液(15.0ml)との混合溶液に溶解し、80℃で18時間加熱攪拌して反応させた。反応混合物を放冷後、陽イオン交換樹脂を用いて中和した。陽イオン交換樹脂を濾別して得られた溶液に水(80ml)を加え、酢酸エチル(130ml×3)で抽出した。抽出後の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、無色固体のルシフェリン類似化合物(30)(388.2mg,収率90%)を得た。
【0119】
(分析データ)
mp 200-204℃ decomp.
IR(film) 3066, 1652, 1583 cm-1
H NMR(270MHz, CD3OD): δ3.70(1H, dd, J=7.9, 11.5Hz), 3.76(1H, dd, J=8.9, 11.5Hz), 5.23(1H, dd, J=7.9, 8.9Hz), 6.85(2H, d, J=8.9Hz), 7.74(2H, d, J=8.9Hz)
13C NMR(67.8MHz, CDOD): δ35.95(t), 77.97(d), 116.53(d)×2, 124.48(s), 131.80(d)×2, 163.00(s), 173.94(s), 174.63(s)
MS (EI): m/z 223 (M+, 44), 178(100), 137(43), 119(46)
Optical rotation: L: [α]25 -1.0600°(c=1.2000, CH3OH), D:[α]25 +6.6979°(c=0.7692, CH3OH)
[ルシフェリン類似化合物(30)のAMP化]
ジメチルスルホキシド0.2ml中で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(28.9mg)を用いてD-ルシフェリン類似化合物(30)(0.8mg)及びアデノシン一リン酸(4.5mg)を縮合した。反応溶液に冷アセトン1.5mlを加え、析出した不溶物を遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。得られた不溶物を冷アセトン1mlに懸濁させて洗浄した後、再度遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。この洗浄操作を更に2回繰り返し、得られた不溶物から残留アセトンを留去した後、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液0.3mlに溶解した。溶液をHPLCにより前述の分離条件2(実施例1、ホタルルシフェリンのAMP化参照)で精製した。
【0120】
得られた活性画分から減圧濃縮によってアセトニトリムを留去した後、再度分離条件1(実施例1、ホタルルシフェリンのAMP化参照)でHPLCにより精製した。得られた画分から減圧濃縮によってアセトニトリルを留去して、ルシフェリン類似化合物(30)のAMP化物(P30)(10μM)を得た。この収量は、HPLC分析における330nmの吸収面積を利用して決定した。分析データは以下の通りである。
【0121】
(分析データ)
HRMS(ESI+) Calcd for C20H22N6O9PS (M+H+), 553.0907; found, 553.0883.
[ルシフェリン類似化合物(31)のAMP化]
ジメチルスルホキシド0.2ml中で、ジシクロヘキシルカルボジイミド(21mg)を用いてD-ルシフェリン類似化合物(31)(0.6mg)及びアデノシン一リン酸(5.2mg)を縮合した。反応溶液に冷アセトン1.8mlを加え、析出した不溶物を遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。得られた不溶物を冷アセトン1mlに懸濁させて洗浄した後、再度遠心沈降(10000g×10分)によって分離した。この洗浄操作を更に2回繰り返し、得られた不溶物から残留アセトンを留去した後、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液0.3mlに溶解した。溶液をHPLCにより前述の分離条件2(実施例1、ホタルルシフェリンのAMP化参照)で精製した。
【0122】
得られた活性画分から減圧濃縮によってアセトニトリムを留去した後、再度分離条件1(実施例1、ホタルルシフェリンのAMP化参照)でHPLCにより精製した。得られた画分から減圧濃縮によってアセトニトリルを留去して、ルシフェリン類似化合物(31)のAMP化物(P31)(10μM)を得た。この収量は、HPLC分析における330nmの吸収面積を利用して決定した。分析データは以下の通りである。
【0123】
(分析データ)
HRMS(ESI+) Calcd for C24H24N6O9PS (M+H+), 603.1063; found, 603.1046.
[AMP化物(P30)の生物発光]
下記の条件1又は条件2に従って、下記の試薬1~5を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2200を用いて、波長430nmにおける発光を60秒間モニターした。
【0124】
試薬1:0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
試薬2:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が200pg/μlの50mMTris/塩酸緩衝液(pH8.0)
試薬3:ルシフェリン類似化合物(30)濃度が100μMの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)
試薬4:10mM Mg-ATP水溶液(シグマ社製、A9187)
試薬5:AMP化物(P30)濃度が100μMの0.05%TFA水溶液
(条件1)
20μlの試薬1、20μlの試薬3及び40μlの試薬4を混合し、この混合物に20μlの試薬2を添加することによって発光を開始した。
【0125】
(条件2)
20μlの試薬1及び20μlの試薬5を混合し、40μlの純水で希釈した後、20μlの試薬2を添加することによって発光を開始した。
【0126】
(結果及び評価)
条件1及び2の何れにおいても、発光強度は、発光開始5秒後に急激に立ち上がった後に、一定レベルを維持した。条件1における60秒間の総発光量及び最大発光強度を各々1とすると、条件2における総発光量は15、最大発光強度は10となった。
【0127】
[AMP化物(P31)の生物発光]
下記の条件1又は条件2に従って、下記の試薬1~5を用いて発光を開始し、アトー社製ルミノメータAB-2200を用いて、波長555nmにおける発光を60秒間モニターした。
【0128】
試薬1:0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
試薬2:ホタルルシフェラーゼ(シグマ社製、L9506)濃度が200pg/μlの50mMTris/塩酸緩衝液(pH8.0)
試薬3:ルシフェリン類似化合物(31)濃度が10μMの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)
試薬4:10mM Mg-ATP水溶液(シグマ社製、A9187)
試薬5:AMP化物(P31)濃度が10μMの0.05%TFA水溶液
(条件1)
20μlの試薬1、20μlの試薬3及び40μlの試薬4を混合し、この混合物に20μlの試薬2を添加することによって発光を開始した。
【0129】
(条件2)
20μlの試薬1及び20μlの試薬5を混合し、40μlの純水で希釈した後、20μlの試薬2を添加することによって発光を開始した。
【0130】
(結果及び評価)
条件1及び2の何れにおいても、発光強度は、発光開始5秒後に急激に立ち上がった後に、一定レベルを維持した。条件1における60秒間の総発光量及び最大発光強度を各々1とすると、条件2における総発光量は25、最大発光強度は23となった。
【産業上の利用の可能性】
【0131】
本発明によれば、発光甲虫ルシフェラーゼによる発光系の発光基質として利用可能な、ホタルルシフェリン類似構造を有する新規な複素環化合物が提供され、ホタルルシフェリンとは異なる発光特性の発光を、実用に耐え得る発光強度及び発光安定性で提供可能になるので、生化学物質の定量や遺伝子発現・導入の解析等におけるホタルルシフェリン-発光甲虫ルシフェラーゼ発光系の応用範囲を広められる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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