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明細書 :並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体、触媒カラム、および、植物栽培用固形培地の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5414090号 (P5414090)
公開番号 特開2010-088358 (P2010-088358A)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
公開日 平成22年4月22日(2010.4.22)
発明の名称または考案の名称 並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体、触媒カラム、および、植物栽培用固形培地の製造方法
国際特許分類 C12N  11/00        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C05F  17/00        (2006.01)
C05F   1/00        (2006.01)
C05F   3/00        (2006.01)
C05F   5/00        (2006.01)
C05F   7/00        (2006.01)
C05F   9/00        (2006.01)
A01G   1/00        (2006.01)
FI C12N 11/00
B09B 3/00 A
B09B 3/00 D
C05F 17/00
C05F 1/00
C05F 3/00
C05F 5/00
C05F 7/00
C05F 9/00
A01G 1/00 303C
請求項の数または発明の数 12
全頁数 31
出願番号 特願2008-262385 (P2008-262385)
出願日 平成20年10月9日(2008.10.9)
審査請求日 平成23年6月22日(2011.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】篠原 信
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 特開2007-119260(JP,A)
特開昭64-016533(JP,A)
調査した分野 C12N 11/00
A01G 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS(STN)
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
容器に、通気性を有する固体担体を充填し、;これに有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置することにより、;並行複式無機化反応(下記(A1)及び(A2)に記載の条件を満たす反応)を行う微生物群を固定化させる固体担体の製造方法であって、;
前記固体担体を洗浄する際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めていなかった場合、下記(B)に記載の処理を、洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで繰り返して行う、;ことを特徴とする、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法。
(A1) 有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する反応であり、有機物からアンモニア態窒素への分解と、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化とが、同一の反応系で連続的に行われる反応。
(A2) 有機物の分解において、有機物に含まれる有機態窒素がアンモニア態窒素に分解され、アンモニア態窒素が硝酸化成による酸化反応を経て硝酸態窒素が生成される反応。
(B) さらに有機物を添加して静置し、水を添加して前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する処理。
【請求項2】
前記容器が排水口を備えた容器であり、前記流出液が前記排水口から流出された流出液である、請求項1に記載の固体担体の製造方法。
【請求項3】
固形形状が維持されるように一体成形された通気性を有する固体担体に、;有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置することにより、;並行複式無機化反応(下記(A1)及び(A2)に記載の条件を満たす反応)を行う微生物群を固定化させる固体担体の製造方法であって、;
前記固体担体を洗浄する際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めていなかった場合、下記(B)に記載の処理を、洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで繰り返して行う、;ことを特徴とする、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法。
(A1) 有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する反応であり、有機物からアンモニア態窒素への分解と、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化とが、同一の反応系で連続的に行われる反応。
(A2) 有機物の分解において、有機物に含まれる有機態窒素がアンモニア態窒素に分解され、アンモニア態窒素が硝酸化成による酸化反応を経て硝酸態窒素が生成される反応。
(B) さらに有機物を添加して静置し、水を添加して前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する処理。
【請求項4】
前記静置が、前記流出液中に50mg/L以上の硝酸イオンが生成され始めるまで行うものである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項5】
前記固体担体が、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、砂、鹿沼土、ガラス、セラミック、ウレタン、ナイロン、メラミン樹脂、木質チップ、わら、水苔、炭、木綿、紙、ポリアクリルアミドゲル、および、寒天、よりなる群から選ばれた1種以上の多孔質の固体担体である、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項6】
前記微生物群を添加した直後に、前記固体担体中に硝酸態窒素が含まれる場合、;水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄し、硝酸態窒素を除去することによって、;前記有機物を添加した際に、前記固体担体中でアンモニア化成反応および硝酸化成反応が中間生成物を蓄積することなく進行し、且つ、脱窒反応がおこらない、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項7】
前記並行複式無機化反応を行う微生物群が、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させて得られた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、土壌、水道水、湖沼の水、湧き水、井戸水、川の水、海水よりなる群から選ばれた1種以上の、アンモニア化成を行う微生物群および硝酸化成を行う微生物群を含む微生物源に由来するものである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項8】
前記有機物の量が、前記担体1Lに対して0.1~10gである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項9】
前記有機物が、炭素と窒素の含有比であるC/N比が19以下の高窒素含有有機物である、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の固体担体の製造方法において、前記高窒素含有有機物が、魚煮汁、魚粉、油粕、生ゴミ、トウモロコシ浸漬液、米ぬか、大豆粉、植物体残渣、牛乳、粉ミルク、家畜糞よりなる群から選ばれた1種以上である、固体担体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法により得られた固体担体を、並行複式無機化反応を行う触媒カラムの担体として用いることを特徴とする、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の方法により得られた前記固体担体を、植物栽培固形培地とすることを特徴とする、植物栽培固形培地の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法に関する。
また、本発明は、前記固体担体を用いた、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムの製造方法に関する。さらに、本発明は、前記固体担体を植物栽培固形培地とする、植物栽培固形培地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会を構築すべきとの観点から、化学肥料の使用を控え有機質肥料の使用を推進する動きが世界的に活発になっている。
しかし、トマトなどの野菜や花き等の生産で広がりを見せている、土壌を用いない‘養液栽培’では、養液に有機物を直接添加すると有害な中間分解産物が発生し、植物の根が傷んでしまうため、養液栽培での有機質肥料の利用は考えられなかった。それゆえ、現在でも養液栽培では化学肥料のみが使用されている。
【0003】
養液栽培で有機質肥料を利用するには、有機物を硝酸態窒素などの有用な無機肥料成分に無機化する技術が必要である。従来、有機物を無機化する技術としては、微生物群を利用した排水処理技術(例えば、特許文献1参照)などがあるが、これらは生成された硝酸態窒素を還元し窒素ガスとして放出させる脱窒反応を伴うため、硝酸態窒素が失われてしまい、無機肥料を製造する目的に合致するものではなかった。
【0004】
そこで、有機物から硝酸態窒素(硝酸イオンとして)を効率よく回収して、無機肥料成分として利用できる技術としては、特許文献2、非特許文献1に記載の並行複式無機化法が発明されている。
この技術は、脱窒反応を抑えながら有機態窒素を分解し、高効率で硝酸態窒素である硝酸イオンを、無機肥料成分として回収できる、再現性の高い方法であり、従来にみられなかった技術である。これにより、これまで実現困難であった「有機質肥料を活用する養液栽培」と「有機物を原料として硝酸態窒素を含有する無機肥料の製造」が可能になった(例えば、非特許文献1、3参照)。
この特許文献2に記載の発明は、有機質肥料を活用した養液栽培を実現するとともに、有機質資源を原料にして、硝酸態窒素などの無機肥料成分を製造する技術として注目を集めている。このため、新たな養液栽培技術として関心を持つ農家や植物工場の他、有機質資源の再資源化を計画する企業などから、多大な期待を集めている。
また、特許文献2に記載の並行複式無機化法を利用することによって、有機質肥料を直接養液に添加して硝酸態窒素を生成させ‘有機質肥料を用いた水耕での養液栽培’を行うことが可能となった。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の並行複式無機化法で無機肥料成分を含有する肥料を製造する場合、有機物の分解(アンモニア化成)および硝酸イオンの生成(硝酸化成)のうちの硝酸化成を、培養タンク内の培養タンク壁面に付着した微生物群の働きのみによって行うため、壁面の表面積が律速になり、有機物を硝酸態窒素に無機化する反応速度の点で、時間がかかりすぎる課題があった。
さらに、前記微生物群の培養と当該反応は、恒常的な曝気(エアレーション等で好気条件を常に保つ操作)が必要であり、大規模な処理を想定した場合、電力コストが問題になる可能性がある。そのため、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する上で、反応速度が顕著に高められ(効率よく)、且つ、曝気や恒常的な電力を要することなく行うことができる方法の開発が求められていた。
【0006】
ところで、トマト栽培などでよく利用されるロックウールなどの固形培地を用いた養液栽培(‘固形培地耕での養液栽培’)を行う場合において、有機質肥料を直接養液に添加した場合、有機物の分解がうまくいかず腐敗し、硝酸態窒素がほとんど生成されないという問題があった(例えば、非特許文献2参照)。
そこで、特許文献2に記載の並行複式無機化法の利用が検討されたが、この場合においても、直接養液に有機質肥料を添加する方法をとると、有機成分が養液中に溶存するため、ドリップチューブや固形培地内で目詰まりをおこす恐れや、固形培地内で目詰まりをおこした有機物の腐敗などの問題が起きる恐れがあり、そのままでは応用が難しいという問題があった。
従って、特許文献2に記載の方法を利用して固形培地耕を行うには、あらかじめ有機物を完全に無機化し、無機養液(有機成分を極力含まない養液)にしてからでないと、固形培地耕の養液に用いることができなかった。
そのためこの場合、栽培前に行う準備操作が煩雑で時間がかかるため、もっと簡易な方法で、固形培地耕での有機質肥料の活用を可能にする技術の開発が求められていた。
なお、固形培地に微生物を定着させる方法は従来でもあるものの(例えば、特許文献1参照)、これらは脱窒反応を伴い肥料成分(硝酸態窒素)が失われてしまうものであり、有機質肥料を直接添加して養液栽培を行うことができる固形培地として利用することができなかった。
【0007】

【特許文献1】特開2001-300583号公報
【特許文献2】特開2007-119260号公報
【非特許文献1】「有機肥料の養液栽培」農業および園芸、第81巻 p. 753-764(2006年)
【非特許文献2】「養液土耕と液肥・培地管理」博友社、p.119-155(2005年)
【非特許文献3】「生ゴミ・糞尿から輸出用無機肥料を生産」農林水産技術研究ジャーナル、第31巻 p. 44-46 (2008年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決し、曝気などの恒常的な電力を用いる操作を行うことなく、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を効率よく生成する方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、固形培地耕での養液栽培を行った場合においても、有機質肥料を直接添加して養液栽培を行うことができる、植物栽培固形培地の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を、通気性を有する固体担体に固定化させ、並行複式無機化反応を行う触媒カラムの担体として用いることにより、;曝気などの恒常的な電力を用いる操作を全く行うことなく、並行複式無機化反応の反応速度を顕著に向上させることができ、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を効率よく生成できることを見出した。
また、本発明者は、前記固体担体を植物栽培固形培地として用いることで、固形培地耕での養液栽培を行った場合においても、有機質肥料を直接添加して養液栽培を行うことができることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至った。
【0010】
即ち、請求項1に係る発明は、容器に、通気性を有する固体担体を充填し、;これに有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置することにより、;並行複式無機化反応(下記(A1)及び(A2)に記載の条件を満たす反応)を行う微生物群を固定化させる固体担体の製造方法であって、;
前記固体担体を洗浄する際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めていなかった場合、下記(B)に記載の処理を、洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで繰り返して行う、;ことを特徴とする、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法である。
(A1) 有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する反応であり、有機物からアンモニア態窒素への分解と、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化とが、同一の反応系で連続的に行われる反応。
(A2) 有機物の分解において、有機物に含まれる有機態窒素がアンモニア態窒素に分解され、アンモニア態窒素が硝酸化成による酸化反応を経て硝酸態窒素が生成される反応。
(B) さらに有機物を添加して静置し、水を添加して前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する処理。
また、[請求項2に係る発明は、前記容器が排水口を備えた容器であり、前記流出液が前記排水口から流出された流出液である、請求項1に記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項3に係る発明は、固形形状が維持されるように一体成形された通気性を有する固体担体に、;有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置することにより、;並行複式無機化反応(下記(A1)及び(A2)に記載の条件を満たす反応)を行う微生物群を固定化させる固体担体の製造方法であって、;
前記固体担体を洗浄する際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めていなかった場合、下記(B)に記載の処理を、洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで繰り返して行う、;ことを特徴とする、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法である。
(A1) 有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する反応であり、有機物からアンモニア態窒素への分解と、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化とが、同一の反応系で連続的に行われる反応。
(A2) 有機物の分解において、有機物に含まれる有機態窒素がアンモニア態窒素に分解され、アンモニア態窒素が硝酸化成による酸化反応を経て硝酸態窒素が生成される反応。
(B) さらに有機物を添加して静置し、水を添加して前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する処理。
また、[請求項4]に係る発明は、前記静置が、前記流出液中に50mg/L以上の硝酸イオンが生成され始めるまで行うものである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項5]に係る発明は、前記固体担体が、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、砂、鹿沼土、ガラス、セラミック、ウレタン、ナイロン、メラミン樹脂、木質チップ、わら、水苔、炭、木綿、紙、ポリアクリルアミドゲル、および、寒天、よりなる群から選ばれた1種以上の多孔質の固体担体である、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項6]に係る発明は、前記微生物群を添加した直後に、前記固体担体中に硝酸態窒素が含まれる場合、;水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄し、硝酸態窒素を除去することによって、;前記有機物を添加した際に、前記固体担体中でアンモニア化成反応および硝酸化成反応が中間生成物を蓄積することなく進行し、且つ、脱窒反応がおこらない、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項7]に係る発明は、前記並行複式無機化反応を行う微生物群が、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させて得られた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、土壌、水道水、湖沼の水、湧き水、井戸水、川の水、海水よりなる群から選ばれた1種以上の、アンモニア化成を行う微生物群および硝酸化成を行う微生物群を含む微生物源に由来するものである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項8]に係る発明は、前記有機物の量が、前記担体1Lに対して0.1~10gである、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項9]に係る発明は、前記有機物が、炭素と窒素の含有比であるC/N比が19以下の高窒素含有有機物である、請求項1~のいずれかに記載の固体担体の製造方法である。
また、[請求項10]に係る発明は、請求項に記載の固体担体の製造方法において、前記高窒素含有有機物が、魚煮汁、魚粉、油粕、生ゴミ、トウモロコシ浸漬液、米ぬか、大豆粉、植物体残渣、牛乳、粉ミルク、家畜糞よりなる群から選ばれた1種以上である、固体担体の製造方法である。
また、[請求項11]に係る発明は、請求項1~10のいずれかに記載の方法により得られた固体担体を、並行複式無機化反応を行う触媒カラムの担体として用いることを特徴とする、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムの製造方法である。
また、[請求項12]に係る発明は、請求項1~10のいずれかに記載の方法により得られた前記固体担体を、植物栽培固形培地とすることを特徴とする、植物栽培固形培地の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、並行複式無機化反応の反応速度を顕著に向上させることができ、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を効率よく生成できることができる、触媒カラムを提供することを可能とする。
これにより本発明は、有機質資源や有機質肥料を原料にして、曝気などの恒常的な電力を用いる操作を行うことなく、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を効率よく生成することを可能にする。
また、本発明は、固形培地耕での養液栽培を行った場合においても、有機質肥料を直接添加して養液栽培を行うことを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造方法に関する。
また、本発明は、前記固体担体を用いた、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムの製造方法に関する。さらに、本発明は、前記固体担体を植物栽培固形培地とする、植物栽培固形培地の製造方法に関する。
なお、図1は、固体担体へ微生物群を固定化する方法の一態様を示す説明図である。図2は、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムの一態様を示す説明図である。図3(a),(b)は、固体担体を、排水口を備えた容器に充填した状態を示す写真像図である。
【0013】
本発明において、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造は、容器に、通気性を有する固体担体を充填し、;これに有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置する;ことによって行うものである。
【0014】
なお、本発明において、固体担体として、固形形状が維持されるように一体成形されたものを用いる場合には、前記容器に当該固体担体を充填することなく、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体を製造することもできる。
即ち、固形形状が維持されるように一体成形された通気性を有する固体担体に、;有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加し、;次いで、有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで静置する;ことによって行うことができる。
【0015】
本発明の並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体の製造における最初の工程は、まず、通気性を有する固体担体を容器に充填する工程(充填工程)である。
なお、固体担体を積み上げて(具体的には、野積みした山にするなど、平面構造物の上に、通気性を有する固体担体を積み上げて)、当該固体担体からなる山に直接水を添加して流出させる操作をした際に崩れない山に積み上げることで、当該容器に充填する充填工程を行うことなく、次工程である微生物群添加工程を行うこともできる。
また、固体担体として、前記固形形状が維持されるように一体成形されたものを用いる場合にも、当該容器に充填する充填工程を行うことなく、直接、次工程である微生物群添加工程を行うこともできる。
【0016】
本発明において、前記微生物群を固定化させる固体担体としては、微生物、有機成分、水分を担持することが可能であり、通気性を有し、多孔質のものであれば、如何なるものでも用いることができる。特には、体積に対して微生物が固定化(定着)する表面積が大きい素材のものが好ましい。
なお、ここで「通気性を有し」とは、固体担体をカラム(カラム様の容器)に充填した際や積み上げて山にした際の固体担体間及び/又は固体担体内の空隙の環境が、もしくは、前記固形形状が維持されるように一体成形された固体担体であれば固体担体内の空隙の環境が、好気条件が保たれることで硝酸化成が進行しやすく、且つ、脱窒素反応がおこりにくいような気相の確保された状態である。
なお、以下、当該固体担体間と固体担体内の全体の環境を、単に「固体担体中」あるいは「固体担体全体」と表現することがある。
【0017】
そのような固体担体として具体的には、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、砂、鹿沼土、ガラス(具体的にはグラスビーズ)、セラミックなどの岩石鉱物系の資材や、ウレタン、ナイロン、メラミン樹脂、ポリアクリルアミドゲル、などの合成樹脂系の資材、木質チップ(具体的にはスギチップ)、わら、水苔、炭(具体的には活性炭)、木綿、紙(具体的にはろ紙)、寒天などの生物由来の資材などを用いることができる。
本発明においてはこれらの素材のうち、好ましくは、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、ウレタン、スギチップ、わら、水苔、ろ紙を用いることが望ましく、さらに好ましくは、ロックウール、ウレタンを用いることが望ましい。
なお、当該固体担体として、一般の土壌を用いた場合、有機物と水を添加することで、微生物が過剰繁殖しやすいため通気性が悪化し、土壌に生息する脱窒菌による脱窒反応が起こり、最終的に硝酸態窒素が得られなくなってしまい、好ましくない。
【0018】
なお、固形形状が維持されるように一体成形された固体担体としては、キューブ状、球状、円筒状、棒状などに成形され、担体全体が一体なものか、適度な熱による溶着や接着、圧着などを施すことにより一体成形されたものであればよい。
具体的には、このように成形されたロックウール、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、砂、鹿沼土、ガラス(具体的にはグラスビーズ)、ウレタン、ナイロン、メラミン樹脂、木質チップ(具体的にはスギチップ)、わら、水苔、炭(具体的には活性炭)、木綿、紙(具体的にはろ紙)、ポリアクリルアミドゲル、寒天などの素材で、それ自体が一体の固体担体として扱えるものや、接着などで一体成形できるものを用いることができる。好ましくは、ロックウールを用いることが望ましい。
また、固形形状が維持されるように一体成形された固体担体の大きさとしては、具体的には、10ml以上の体積を有するものであればよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
前記固体担体を充填する容器としては、前記固体担体を充填できる容器であり、水を添加した後に、水を流出させることができる容器であれば如何なる容器でも用いることができる。
好ましくは、排水口を備えた容器であり、水を添加した後、水を効率よく流出できる構造のもの(前記固体担体を充填した後、カラムとして用いることができる構造のもの)であればよい。具体的には、コップ状の上部に開口した構造のものや、カラム状の下部に開口したもの、容器の全体が網目状のものなどを用いることができる。
なお、当該容器が排水口を備えた容器でない場合であっても、当該容器を傾けるなどの操作を行って、水を流出させる操作(デカンテーション)を行うことができる容器であれば用いることができる。
【0020】
当該容器への前記固体担体の充填は、水を添加して流出させた後に、毛細管現象で全体が湛水状態になってしまわないよう、固体担体間及び/又は固体担体内の空隙(気相)が確保されるようにする。毛細管現象による液面の上昇高さh(単位m)は以下の公式(I)で与えられている。なお、公式(I)における各記号は、T=表面張力(N/m),θ=接触角,ρ=液体の密度(kg/m),g=重力加速度(m/s),r=管の内径(半径)(m)を表すものである。
【0021】
【数1】
JP0005414090B2_000002t.gif

【0022】
当該固体担体間及び/又は固体担体内の空隙が狭くなり、hが固体担体の充填高を超えると、水を添加した場合に排水口を開口していても担体のすべてが湛水して嫌気状態となり、硝酸化成が十分に進まなくなるおそれがある。
このため、固体担体間及び/又は固体担体内の空隙は、hが充填高さを超えないサイズを確保することが望ましく、空隙のすべてが狭くなり、hが固体担体の充填高を超えることは好ましくない。
最も望ましくは、固体担体間及び/又は固体担体内の空隙を粗密のあるものにし、空隙の大きい粗の部分で通気性を確保し、空隙の狭い密の部分で保水性を確保することにより、担体全体としての通気性と保水性の両方を確保したものにすることが好ましい。
もし固体担体間及び/又は固体担体内の空隙が狭く、hが固体担体の充填高を超える場合は、当該容器の壁面を通気性のある素材や構造(網目状)にしてガス交換が行われやすくするか、添加する水分の溶存酸素濃度を高める、あるいは添加する水の交換を高い頻度で行うことによりガス交換が行われるようにするなどの工夫が必要になる。
【0023】
なお、具体的な実施形態として、上記を踏まえて当該容器への前記固体担体の充填する場合、0.1~100000ml、好ましくは、1~10000mlの前記固体担体を充填することができる。また、充填高さとしては、0.1~100cmの層になるように前記固体担体を充填することができる。
【0024】
上記の充填工程にて、前記固体担体を前記容器に充填した後、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応を行う微生物群を添加する工程(微生物群添加工程)を行う。
なお、前記したように、前記固体担体を容器に充填せずに積み上げた場合や、前記固体担体として固形形状が維持されるように一体成形されたものを用いる場合は、上記の充填工程を行わずに、直接当該微生物群添加工程を行うこともできる。
【0025】
本発明において、「並行複式無機化反応」とは、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成する反応であり、有機物からアンモニア態窒素への分解(アンモニア化成)とアンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化(硝酸化成)とが、同一の反応系で連続的に行われるものである。
詳しくは、有機物の分解において、有機物に含まれる有機態窒素がアンモニア態窒素に分解され、アンモニア態窒素が硝酸化成による酸化反応(硝化反応)を経て、硝酸態窒素が生成される反応を指すものである。
【0026】
なお、本発明において、有機物を無機化して生成される硝酸態窒素とは、硝酸イオンや硝酸塩であるが、具体的には、硝酸イオンを想定したものである。
【0027】
本発明における並行複式無機化反応を行う微生物群とは、アンモニア化成を行う微生物群および硝酸化成を行う微生物群を含むものである。
本発明に用いることができる‘並行複式無機化反応を行う微生物群’としては、アンモニア化成を行う微生物群および硝酸化成を行う微生物群を含み、添加した有機物を無機化して硝酸態窒素を生成させるのに必要な微生物群を含むものであればよい。
なお、上記微生物群を構成する微生物群の種類としては、アンモニア化成を行う微生物群としては、例えば原生動物や、細菌、糸状菌等のアンモニア化成菌などを挙げることができ;硝酸化成を行う微生物群(硝化菌)としては、アンモニア酸化菌(もしくは亜硝酸生成菌)のNitrosomonas属、Nitorosococcus属、Nitrosospira属(Nitrosolobus属、Nitrosovibrio属を含む)亜硝酸酸化菌(もしくは硝酸生成菌)のNitrobacter属、Nitrospira属;などを挙げることができる。
【0028】
本工程で添加する当該微生物源としては、具体的には、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、;土壌、水道水、湖沼の水、湧き水、井戸水、川の水、海水など自然界に由来するもの;を用いることができる。
特には、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、を用いることが、並行複式無機化反応を進めるのに必要な微生物生態系を構成する当該微生物群を十分量含んだものとなっているため、脱窒反応を誘発するおそれも小さい点で好ましい。
なお、‘前記微生物群が固定化された固体担体’としては、前記微生物群が固定化された前記固体担体であれば如何なるものでもよいが、好ましくは、本発明の工程を経て製造されたものを用いることが望ましい。
【0029】
脱窒反応とは、脱窒菌により硝酸態窒素が亜酸化窒素ガスあるいは窒素ガスなどに還元され、硝酸態窒素が失われてしまう現象で、脱窒菌のエネルギー源になる有機成分と酸素供給体になる硝酸態窒素とが共存するときに誘発しやすい反応である。
本発明の前記固体担体中においては、水を添加して担体中の硝酸態窒素を除去する前に有機物を添加してしまい、有機成分と高濃度の硝酸態窒素の共存という脱窒反応を誘発しやすい条件を作り出してしまった場合や、前記固体担体間及び/又は固体担体内の空隙が狭く、毛細管現象により湛水状態となり固体担体中が嫌気条件となって脱窒菌が活動しやすい条件が揃った場合に脱窒反応が起こりやすくなる。
本発明においては、前記固体担体中で脱窒反応が起こると、無機肥料成分として優れている硝酸態窒素がガス化して失われるため好ましくない。このため本発明では、i)固体担体中に高濃度の硝酸態窒素が生成した場合は、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄し、硝酸態窒素を除去する、ii)植物などにより肥料成分として吸収させることで硝酸態窒素を除去してから有機物を添加するようにする、iii)固体担体間及び/又は固体担体内の空隙が全体に狭くなりすぎて毛細管現象が強まり、固体担体全体が湛水して嫌気性状態になることのないようにする、などの注意を払う必要がある。
【0030】
前記固体担体を充填した容器への、当該微生物源の添加は、微生物群の固定化を短期間ですませたい場合は、並行複式無機化反応を行う微生物群の培養物を添加することで行う。なお、当該微生物源は、当該微生物源が液体の状態であっても粉末の状態であっても添加することができる。
当該微生物源の添加量としては、特に限定されないが、前記固体担体1Lに対して、培養液では1~1000ml、乾燥菌体の場合では、1~1000mg、前記固体担体からの流出液の場合では、1~1000mlを添加することが望ましい。
【0031】
当該工程において、当該微生物源として硝酸態窒素を含むものを用いることによって(もしくは、前工程で充填した固体担体に硝酸態窒素を含むものを用いることによって)、前記固体担体中に硝酸態窒素が含まれる場合、当該微生物源の添加後に、水を添加し前記固体担体から流出させることで、前記固体担体を洗浄することが好ましい。
なお、ここで、「前記固体担体中に硝酸態窒素が含まれる場合」とは、有機物と共存した際に脱窒反応が誘発される濃度および分布で硝酸態窒素が含まれる場合をいう。
即ち、当該工程において、前記固体担体中に、有機物と共存した際に脱窒反応が誘発される濃度および分布で硝酸態窒素が‘含まれない’場合においては、「前記固体担体中に硝酸態窒素が含まれない場合」と見なされる。
【0032】
なお、当該「洗浄」の具体的な操作としては、i)前記固体担体を‘排水口を備えた容器’に充填した場合においては、水を添加した後、前記固体担体からの流出液を前記排水口から流出させることによって行う。
また、ii)前記固体担体を‘排水口を備えない容器’に充填した場合においては、水を添加した後、当該容器を傾けるなどの操作を行い、前記固体担体からの流出液を流出させる(デカンテーションする)ことによって行う。
また、iii)前記固体担体を容器に充填せずに積み上げた場合や、前記固体担体として‘前記固形形状が維持されるように一体成形されたもの’を用いた場合においては、水を添加した後、前記固体担体からの流出液を直接流出させることによって行う。
当該洗浄を行った後、当該固体担体中は多くの硝酸態窒素が除去された状態、即ち、有機物と共存した際に脱窒反応が誘発される濃度および分布で硝酸態窒素が含まれない状態になる。また、余分な水分も流出した状態になる。
【0033】
当該微生物源添加後の洗浄において用いる水としては、純水(蒸留水、イオン交換水、逆浸透膜水など)、井戸水、河川水、湖水、水道水、海水などを用いることができる。なお、高濃度の硝酸態窒素(具体的には50mgNO/ml以上)を含む水は望ましくない。
当該洗浄に用いる水の添加量としては、前記固体担体全体をリンスするのに十分な量の水であることが望ましく、1Lあたり100~10000mlであることが望ましい。
当該洗浄を行うことで、硝酸態窒素を除去し固体担体中に含まれる硝酸態窒素濃度を低下させることができるため、脱窒反応を誘発する条件(有機成分と高濃度の硝酸態窒素の共存)が成立しなくなり、脱窒反応を抑制することができる。
従って、前記固体担体中を、有機物を添加した際にアンモニア化成反応および硝酸化成反応が、中間生成物を蓄積することなく進行し、且つ、脱窒反応がおこらない状態にすることができる。
なお、当該微生物源の添加後、前記固体担体中に‘有機物と共存した際に脱窒反応が誘発される濃度および分布で硝酸態窒素が含まれない’場合、当該固体担体の洗浄を行わなくても、脱窒反応が起こらない状態にあるため、洗浄を特に行う必要はない。
【0034】
上記微生物群添加工程にて微生物源を添加した後、;有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで「静置する」ことにより、;並行複式無機化反応を行う微生物群を固定化する工程(固定化工程)を行う。
当該固定化工程により、目的とする、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体を製造することができる。
本工程は、前記固体担体に、前記微生物群を定着、馴化、増殖させることで、固定化するための工程である。
【0035】
本固定化工程において、有機物の添加は、固体担体に有機物を直接添加することで行う。なお、当該有機物は、液体の状態であっても粉末の状態であっても添加することができる。
当該有機物としては、有機質肥料や、食品残渣、植物残渣、畜産廃棄物、排泄物といった有機質資源など、如何なるものを用いることができるが、炭素と窒素の含有比であるC/N比が24以下、好ましくは19以下の高窒素含有有機物を用いることが、硝酸態窒素の回収効率を高める点で望ましい。
前記有機物としては、タンパク質、タンパク質分解物、アミノ酸などを多く含むものが望ましい。
具体的には、魚煮汁、トウモロコシ浸漬液、油粕、魚粉、大豆粕、酵母粕、酒粕、焼酎粕、米ぬか、生ゴミなどの食品残渣などを挙げることができる。なお、これらは、食品製造過程で得られる廃棄物であり、毒性のあるような成分が含まれていない点で望ましい。また、家畜糞を挙げることができ、アンモニア態窒素を含む有機物も利用できる。さらには、大豆粉、だしの素(アミノ酸高含有物)、牛乳、粉ミルク、などの食品そのものも利用できる。加えてさらには、可食部として利用できない植物の組織や器官である植物体残渣も利用することができる。
これらのうち、魚煮汁、魚粉、油粕、生ゴミ、トウモロコシ浸漬液、米ぬか、大豆粉、植物体残渣、牛乳、粉ミルクおよび家畜糞を用いることがさらに望ましい。
なお、具体的に、魚煮汁としては、鰹煮汁を挙げることができる。また、トウモロコシ浸漬液としては、コーンスティープリカー(CSL:トウモロコシでんぷん製造時の副産物であるトウモロコシ浸漬液)を挙げることができる。また、油粕としては、菜種油粕、コーン油粕、を挙げることができる。また、植物体残渣としては、トマトなどの栽培管理中に摘葉処理で発生した茎葉などを挙げることができる。また、生ゴミとしては、魚のアラ、調理後の野菜くず、肉切片などを挙げることができる。また、家畜糞としては、牛糞や鶏糞などを挙げることができる。
なお、さらに特には、鰹煮汁、コーンスティープリカーが液体であるため前記固体担体に浸透しやすい点で望ましい。
【0036】
当該有機物の添加量としては、前記固体担体1Lに対して、0.01~20g(乾燥重量換算)、好ましくは、0.1~1g(乾燥重量換算)を添加することができる。
なお、具体的には、当該有機物が液体の状態の場合、鰹煮汁を用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.07~14g))であり、コーンスティープリカーを用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.05~10g))である。
なお、有機物の添加量が、上記所定量よりも多い場合、前記固体担体の有機物の担持量を超えることがあり好ましくない。また、有機物の添加量が、上記所定量よりも少ない場合、肥料成分として硝酸態窒素を回収する目的からすれば、硝酸態窒素の濃度が低くなるため好ましくない。
【0037】
次いで、有機物の添加後、前記微生物群を定着、馴化、増殖させるために「静置」する。
静置する温度は、アンモニア化成、硝酸化成の微生物の生育に適した温度である10~42℃、好ましくは15~37℃である。なお、温度が10℃よりも低い場合、微生物の増殖が遅延し固定化に時間を要するため好ましくない。また、温度が37℃よりも高い場合、並行複式無機化反応を進めるのに必要な微生物の一部が死滅することがあり、好ましくない。
【0038】
本工程における「静置」する期間は、‘水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで’の期間、即ち、‘前記固体担体に、前記微生物群が(定着、馴化、増殖させることで)固定化されたと判定されるまで’の期間静置するものである。
本工程における「静置」する期間は、具体的には、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させて得られた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、等を微生物源として用いた場合、一晩(約8~24時間)以上、好ましくは3日以上、さらに好ましくは5日以上、最も好ましくは7日以上を要するものである。
また、前記微生物源として、自然界に由来するものを用いた場合、当該工程を完了するのに、約5日以上、好ましくは7日以上、さらに好ましくは2週間以上を要するものである。
なお、本工程における静置する期間が、硝酸態窒素が生成され始めるまでの期間よりも短い場合、硝酸化成を行う微生物群(硝化菌)の順応が十分ではなく、アンモニア態窒素の発生が主となるため好ましくない。
【0039】
次に、上記のように静置した後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を「洗浄」する。
なお、当該「洗浄」の具体的な操作としては、i)前記固体担体を‘排水口を備えた容器’に充填した場合においては、水を添加した後、前記固体担体からの流出液を前記排水口から流出させることによって行う。
また、ii)前記固体担体を‘排水口を備えない容器’に充填した場合においては、水を添加した後、当該容器を傾けるなどの操作を行い、前記固体担体からの流出液を流出させる(デカンテーションする)ことによって行う。
また、iii)前記固体担体を容器に充填せずに積み上げた場合や、前記固体担体として‘前記固形形状が維持されるように一体成形されたもの’を用いた場合においては、水を添加した後、前記固体担体からの流出液を直接流出させることによって行う。
当該洗浄を行った後、余分な水分も流出した状態になる。
なお、当該洗浄を行った後は、固体担体内の環境が好気的な状態(カラカラに乾いていてもよい)にした方が、脱窒反応を行う微生物群(脱窒菌)の繁殖を抑制するために好適である。
【0040】
当該静置後の洗浄において用いる水としては、純水(蒸留水、イオン交換水、逆浸透膜水など)、井戸水、河川水、湖水、水道水、海水などを用いることができる。なお、高濃度の硝酸態窒素(50mgNO/ml以上)を含む水は望ましくない。
当該洗浄に用いる水の添加量としては、前記固体担体1Lあたり100~3000mlであることが望ましい。
当該洗浄を行うことで、前記固体担体中に生成された硝酸態窒素を除去し、固体担体中に含まれる硝酸態窒素濃度を低下させることができるため、脱窒反応を誘発する条件(有機成分と高濃度の硝酸態窒素の共存する条件)が成立しなくなり、脱窒反応を抑制することができる。
従って、前記固体担体中を、有機物を添加した際にアンモニア化成反応および硝酸化成反応が、中間生成物を蓄積することなく進行し、且つ、脱窒反応が抑制された状態にすることができる。
【0041】
前記固体担体に、前記微生物群が(定着、馴化、増殖させることで)固定化されたかどうかの判定は、当該洗浄の際の流出液の硝酸態窒素の濃度を測定することで行うことができる。
即ち、当該流出液中の硝酸態窒素の濃度を測定し、‘当該流出液に有機物が無機化されて硝酸態窒素が生成され始めた’と認められた場合、‘前記固体担体に前記微生物群が固定化された’と判定することができる。
また、好ましくは、当該流出液に、50mgNO/L以上、さらに好ましくは200mgNO/L以上、の硝酸イオンの生成が認められた場合に、前記固体担体に前記微生物群が、‘十分に’固定化されたと判定することができる。
このように、前記固体担体に当該微生物群が固定化されたと判定されたものは、前記固体担体中の並行複式無機化反応の反応速度が(特に硝化能が)顕著に向上したものとなる。そのため、添加した有機物は速やかに分解され、硝酸態窒素が生成され始める時点では、脱窒反応を行う微生物群(脱窒菌)のエネルギー源となる有機成分が失われた状態になり、当該固体担体中は、脱窒反応がおこりにくい環境になる。
【0042】
なお、前記固体担体に、前記微生物群が固定化された(もしくは‘十分に’固定化された)と認められない場合には、「前記有機物を添加してその後静置し水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する処理」を、上記基準を満たすまで繰り返して行う。
即ち、前記固体担体を洗浄する際に流出される流出液に、硝酸態窒素が生成され始めていなかった場合、当該処理を、当該洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで、繰り返して行う。
【0043】
上記のように、本固定化工程は、微生物群添加工程にて微生物源を添加した後に、(1)‘有機物を添加して、その後、水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する際に、当該流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで「静置する」’ことにより行うものであるが、前記固体担体に、前記微生物群が固定化されたと認められない場合には、(2)‘前記有機物を添加してその後静置し水を添加し前記固体担体から流出させることで前記固体担体を洗浄する’処理を、当該洗浄の際に流出される流出液に硝酸態窒素が生成され始めるまで「繰り返して行う」ことにより、行われる。
即ち、本固定化工程は、当該(1)の操作に、(2)の操作を組み合わせて行うこともできる。
また、(1)の操作で、静置する時間を上記に記載の所定の期間のように長くとった場合、有機物の添加後に1回の洗浄を行っただけで、当該工程を完了することが可能となる。
【0044】
なお、本工程において、当該洗浄の際に流出される流出液に含まれる硝酸態窒素の生成状況をモニタするため、好ましくは、前記固体担体への当該微生物群の固定化されたかどうかを確認するために、(2)のような「繰り返し」操作を行ってもよい。
なお、具体的には、(2)のような「繰り返し」操作を行う場合、1~7日に1回、さらに好ましくは連日繰り返し行うことで、硝酸態窒素の生成を詳細に把握することができる。
なお、脱窒反応を行う微生物群(脱窒菌)の繁殖を抑えるという意味では、(2)の繰り返し操作はできるだけ少ない回数であることが好ましい。(2)のような「繰り返し」操作を頻繁に行った場合、洗浄の回数が多くなることで固体担体中の水分が多くなり、嫌気的な条件が成立しやすくなる。そのため、硝酸化成を行う微生物群(硝化菌)の活動が抑えられ、脱窒反応を行う微生物群(脱窒菌)の繁殖を招きやすくなる。
【0045】
上記した全工程を完了するのにかかる期間、換言すると、前記固体担体に、前記微生物群が固定化された、もしくは‘十分に’固定化されたと認められるのにかかる期間は、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液、前記培養液を乾燥させて得られた前記微生物の乾燥菌体、前記微生物群が固定化された固体担体、前記微生物群が固定化された固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液、等を微生物源として用いた場合、一晩(約8~24時間)以上、好ましくは3日以上、さらに好ましくは5日以上、最も好ましくは7日以上を要するものである。
また、前記微生物源として、自然界に由来するものを用いた場合、当該工程を完了するのに、約5日以上、好ましくは7日以上、さらに好ましくは2週間以上を要するものである。
このようにして、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体を製造することができる。
【0046】
以上の工程を経ることにより、前記並行複式無機化反応を行う微生物群が(定着、馴化、増殖させることで)固定化された固体担体は、‘有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成するための触媒カラム’の担体として用いることができる。
なお、前記排水口を備えた容器を用いて上記工程を行った場合においては、前記排水口を備えた容器に充填された状態のままで、触媒カラムとして用いることができる。
また、前記微生物群が固定化された固体担体を新たな別の容器に充填して使用することもできる。
また、前記固形形状が維持されるように一体成形された前記固体担体を用いて、前記充填工程を行なわなかった場合においても、得られた前記微生物群が固定化された固体担体を、必要に応じて裁断、粉砕して新たな別の容器に充填することによって、触媒カラムとして使用することもできる。
【0047】
本発明の当該触媒カラムとしては、分解する有機物が1日あたり1gの場合、100ml以上の前記微生物群が固定化された固体担体を充填したものであればよい。
また、本発明の当該触媒カラムは、前記固体担体がカラム担体として機能するよう、担体間あるいは担体内の空隙の一部が一定以上大きく、通気性と保水性の両方が確保されるよう充填するものである。
すなわち、毛細管現象による液面の上昇高さh(単位m)(上記した公式(I)により算出される)が、固体担体の充填高さを超えないような空隙の大きさ(管の内径(半径)(m)であるrに該当)が一部で確保されるように充填する。また、当該充填の際には、固体担体を均一になるように充填しても構わないが、粗密になるように充填するとより好ましい。
なお、担体間あるいは担体内の空隙がすべて小さく、そのために毛細管現象による液面の上昇高さhが担体の充填高さを超える場合は、触媒カラムに水を添加したときに湛液状態となって嫌気的になり、脱窒反応を誘発しやすくなるため好ましくない。
【0048】
本発明の当該触媒カラムを用いることで、有機物から生成された無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を得ることができる。
当該無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料としては、当該触媒カラムからの流出液のうち、50mgNO/L以上、好ましくは200mgNO/L以上の硝酸イオンを含むものを、肥料としたものである。
また、本発明の当該触媒カラムを用いた場合の、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素の1日あたり生成量は、前記固体担体1Lに対して硝酸イオン約270mgNO以上、窒素換算で約60mgN以上の硝酸態窒素が生成される。
なお、前記微生物を固定化させた前記固形形状が維持されるように一体成形された前記固体担体を、容器に充填しないままの場合においても、直接前記固体担体に水を添加し前記固体担体から流出された流出液を回収することで、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を得ることが可能である。
【0049】
本発明の当該触媒カラムを用いて、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を製造する際に添加する当該有機物の添加量としては、前記微生物が固定化された固体担体1Lに対して、0.01~20g(乾燥重量換算)、好ましくは、0.1~1g(乾燥重量換算)を添加することができる。なお、具体的には、当該有機物が液体の状態の場合、鰹煮汁を用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.07~14g))であり、コーンスティープリカーを用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.05~10g))である。
なお、有機物の添加量が、上記所定量よりも多い場合、硝酸化成の反応が追いつかず、当該流出液のアンモニア態窒素の濃度が上昇し、好ましくない。ただし、アンモニア含有率の高い肥料(例:土耕栽培用の肥料)の製造を目的とする場合は問題ない。
【0050】
当該無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料は、野菜、果実、花卉、樹木、観葉植物など、あらゆる植物の栽培の肥料として用いることができる。
特には、葉菜類であるチンゲンサイ、コマツナ、レタス、ホウレンソウなど、;果実を収穫対象とする果菜であるトマトなど、;花卉;果樹の栽培に好適に用いることができる。さらに特には、葉菜類であるチンゲンサイ、コマツナの栽培に好適に用いることができる。
なお、当該無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料は、水耕での養液栽培、固形培地耕での養液栽培、通常の土壌を用いた栽培など、一般的に行われている植物の栽培においても用いることができる。
【0051】
以上のように、本発明の当該触媒カラムは、並行複式無機化反応の反応速度を顕著に向上させることができ、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を効率よく生成することができる。
これは、従来法の水中で行う湛液状態の並行複式無機化反応と異なり、高い触媒表面積と高い好気反応条件を確保できるためである。すなわち、微生物群が高密度で固定化した固体担体を用いることで反応を触媒する表面積が大きくなり、担体の細い空隙で保水性を確保する(毛細管現象による:一定の保水性は微生物の生育に必要)と同時に大きな空隙で通気性も確保する(好気反応条件)ことで、並行複式無機化反応を触媒する微生物を活性化し、脱窒反応を抑制できるためである。
さらに、本発明の当該触媒カラムを用いることで、曝気や恒常的な電力を用いる操作を行うことなく(省エネルギーな方法で)、有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を生成することを可能にする。
特に、大規模な製造を行う際に有利である。これにより、これまではコストがかかるだけで価値あるものを生み出せなかった有機性廃棄物の処理において、運転コスト、設置コストを安価に抑えながら、有機質資源や有機物を含む肥料を原料にして、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を生成し、製造・販売することが可能になる。これは、利益を生むことがなかった廃棄物処理産業において、画期的な技術になる。
【0052】
さらに、本発明においては、以上の工程を経ることで、前記並行複式無機化反応を行う微生物群が(定着、馴化、増殖させることで)固定化された前記固体担体を、‘有機質肥料を直接添加して養液栽培を行うことができる植物栽培固形培地’として用いることができる。
即ち、当該植物栽培固形培地を用いることで、‘固形培地耕においても有機質肥料を直接添加して養液栽培’を行うことが可能となる。
なお、当該固形培地耕での養液栽培は、潅水後、有機質肥料を固形培地に直接添加する操作を繰り返すことで行うことができる。
【0053】
有機質肥料の添加は、当該植物栽培固形培地に、直接添加することで行う。なお、当該有機物を含む肥料は、液体の状態であっても粉末の状態であっても添加することができる。
当該植物栽培固形培地を用いて養液栽培を行う場合に直接添加して用いることができる有機質肥料としては、上記に記載の有機物を肥料として用いることができるが、好ましくは、添加操作の自動化が容易な液体の有機質肥料、すなわち魚煮汁やコーンスティープリカー、あるいは固体有機物を微粉砕した懸濁液や腐敗液を用いることができる。
また、有機質肥料の添加は、当該植物栽培固形培地に、直接添加することで行う。なお、当該有機物を含む肥料は、液体の状態であっても粉末の状態であっても添加することができる。
【0054】
当該有機質肥料の添加量としては、前記微生物が固定化された固体担体1Lに対して、0.01~20g(乾燥重量換算)、好ましくは、0.1~1g(乾燥重量換算)を添加することができる。なお、具体的には、当該有機質肥料が液体の状態の場合、鰹煮汁を用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.07~14g))であり、コーンスティープリカーを用いた場合0.1~20g(液体重量:(乾燥重量換算で0.05~10g))である。
なお、有機質肥料の添加量が、上記所定量よりも多い場合、硝酸化成の反応が追いつかず、当該流出液のアンモニア態窒素の濃度が上昇し、好ましくない。但し、栽培時に生育障害を起こさない程度であれば問題ない。
【0055】
なお、前記微生物群が固定化された固体担体を当該植物栽培固形培地として用いる場合、前記固体担体としては上記に記載の全ての固体担体の素材を用いることができるが、好ましくは、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、鹿沼土、ウレタン、さらに好ましくはロックウールを用いることが、特に好適である。
【0056】
当該植物栽培固形培地を用い、有機物を含む肥料を直接添加した養液栽培では、野菜、果実、花卉、樹木、果樹、観葉植物など、あらゆる植物の栽培に用いることができる。
特には、植物の栽培、葉菜類であるチンゲンサイ、コマツナ、レタス、ハーブなど、;果実を収穫対象とする果菜であるトマト、ナス、ピーマン、メロン、スイカ、イチゴなど、;花卉;果樹;の栽培に好適に用いることができる。さらに、特には葉菜類であるチンゲンサイ、コマツナの栽培に好適に用いることができる。
【0057】
さらに本発明においては、上記工程を経ることで得られる、前記並行複式無機化反応を行う微生物群が(定着、馴化、増殖させることで)固定化された固体担体を、並行複式無機化反応を触媒する微生物資材(微生物源)として利用することが可能である。
具体的には、本発明における充填工程で添加する並行複式無機化反応の微生物群の‘微生物源’として利用することができる。さらには、水中での‘並行複式無機化反応用に最適化された微生物群の種菌’として利用することが可能である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0059】
実施例1(固体担体の素材の検討1)
各種の固体担体の素材(ロックウール粒状綿(Grodan社製)、バーミキュライト(ビーエスライト株式会社製)、パーライト(コメリ製)、鹿沼土(瀬戸ヶ原花苑製)、ウレタン(ワコー株式会社製))に、並行複式無機化反応を行う微生物群を固定化させて、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成できるか、検討を行った。
まず、ワグネルポット(藤原製作所製)に10Lの水を入れ、80gのバーク堆肥(清水港木材産業協同組合製)、8gの鰹煮汁(鰹節工場の副産物、枕崎漁業組合製)(以下記載がない時は同じもの)を添加し、エアーポンプで曝気して、並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した。
次に、500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器に、上記の各種固体担体100mlを充填した。図4は、各種固体担体を、排水口を備えた容器に充填した状態を示す写真像図である。
次に、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液200mlを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることで、上記の各種固体担体を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1g(液体重量)を添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図5に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
硝酸イオン濃度の測定は、リフレクトクァント硝酸試験紙(メルク社製)を使ってRQ-flex(メルク社製)で測定することによって行った。(以下、本実施例においては、同様の方法で硝酸イオン濃度を測定した。)
また、上記の各種固体担体を充填した容器に、前記微生物源を添加しなかったものを、対照実験(control)とした。結果を図5に示す。
【0060】
その結果、上記の各種固体担体のいずれの素材においても、前記流出液から硝酸イオンの生成が認められた。即ち、上記の各種固体担体のいずれの素材にも前記微生物群が固定化され、並行複式無機化反応を触媒することが示された。なお、前記微生物源を添加しなかった対照実験(control)では、硝酸イオンの生成は認められなかった。
なお、これら上記の各種固体担体の素材はいずれも、通気性を有する、多孔質の素材である。
【0061】
また、図5の結果について詳しくは、前記微生物源の添加から2~12日後以降の流出液には30mg/L以上の、硝酸イオンが生成されることが示された。
さらに、鹿沼土以外の上記各種固体担体、即ち、ウレタン、ロックウール、パーライト、バーミキュライトを用いた場合には、前記微生物源の添加から6~7日後以降の流出液に、約50mg/L以上、特に約70mg/L以上の硝酸イオンが生成され、さらに特には、ウレタン、ロックウールを用いた場合には、約200mg/L以上の硝酸イオンが生成されることが示された。
これらの結果は、これらの素材が特に通気性がよく脱窒反応がおこりにくい素材であり、また、体積あたりの表面積が大きく多くの前記微生物群を固定化させることができる素材であるため、効率よく並行複式無機化反応が進行するためと考えられる。
【0062】
従って、上記の各種固体担体のいずれの素材を用いた場合でも、添加した有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する触媒カラムが製造できることが示された。
【0063】
実施例2(乾燥菌体の接種)
並行複式無機化反応を行う微生物群の微生物源として、(液体でなく)乾燥菌体の状態で用いることができるかを検証した。
実施例1に記載の並行複式無機化反応後の培養液の上清を廃棄し、壁面に形成されたバイオフィルム(微生物群集構造)を風乾して乾燥させ、前記微生物群の乾燥菌体を得た。
次に、500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿20g(容積100ml)を充填した。
これに前記微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1g(液体重量)を添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、2日が経過するまで繰り返した。
そして、その後、前記鰹煮汁の添加と洗浄処理を行わず、22日が経過するまで(前記微生物源の添加から24日経過するまで)、37℃で静置した後、蒸留純水100mlで洗浄した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。結果を図6に示す。
【0064】
その結果、微生物源として乾燥菌体の形状のものを用いて接種した場合においても、前記ロックウール粒状綿に前記微生物群が固定化され、並行複式無機化反応を触媒することが示された。
この結果から、接種する微生物源は、乾燥菌体の形状のものでもかまわないことが分かった。
【0065】
実施例3(固体担体の素材の検討2)
上記の固体担体の素材に加えて、さらに15種類の固体担体の素材(わら(フジワラ化学株式会社製)5g、水苔(株式会社コメリ製)2g、スギチップ(株式会社三浦商事製)10g、活性炭(ジェックス株式会社製)80g、竹炭(株式会社スドー製)20g、木綿(アイセン工業株式会社製)10g、ろ紙(アドバンテック東洋製)10g、1.25% ポリアクリルアミドゲル(和光純薬製)100g、1.6%寒天(和光純薬製)100g、ゼオライト(有限会社タカムラ製)50g、砂(株式会社スドー製)50g、セラミック(株式会社スドー製)50g、グラスビーズ(株式会社スドー製)60g、ナイロン(株式会社コメリ製)6.3g、メラミン樹脂(株式会社コメリ製)1g)に、並行複式無機化反応を行う微生物群を固定化させて、有機物を無機化して硝酸態窒素を生成できるかの検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器に、上記の各種固体担体を上記重量分(20~100mlに相当する量)充填した。
これに、実施例2で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることで、上記の各種固体担体を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1g(液体重量)を添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図7あるいは図8に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
【0066】
その結果、上記15種類の固体担体のいずれの素材においても、前記流出液から硝酸イオンの生成が認められた。即ち、上記の各種固体担体のいずれの素材にも前記微生物群が固定化され、並行複式無機化反応を触媒することが示された。
また、これらの中でも、特には、ナイロン、水苔、ろ紙、スギチップ、砂、セラミック、ゼオライトを用いた場合には、前記微生物源の添加から8日後以降の流出液に約40mg/L以上の硝酸イオンが生成され、さらに特には、ナイロン、水苔、ろ紙、スギチップを用いた場合には約50mg/L以上(特に約60mg/L以上)の硝酸イオンが生成されることが示された。
この結果から、固体担体の素材としては、自然由来の有機性樹脂や化学樹脂、ガラスや砂などの鉱物質、セラミックなども利用可能であることが明らかとなった。
【0067】
実施例4(各種有機物の種類の検討1)
有機物として、実施例1で用いた鰹煮汁の他の有機物を用いた場合にも、並行複式無機化反応によって有機物を無機化して、硝酸態窒素を生成できるかの検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器に、バーミキュライト70g(容積250ml)を充填した。
これに実施例1で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液500mlを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水250mlを添加して前記排水口から流出させることで、バーミキュライトを洗浄した。
以後、有機物として、菜種油粕0.2gあるいはコーンスティープリカー(CSL:トウモロコシでんぷん製造時の副産物であるトウモロコシ浸漬液)0.2g(液体重量)を添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水250mlで洗浄する処理を、それぞれ図9あるいは図10に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
また、上記のバーミキュライトを充填した容器に、前記微生物源を添加しなかったものを、対照実験(control)とした。菜種油粕を添加した結果を図9に、CSLを添加した結果を図10に示す。
【0068】
その結果、有機物として、菜種油粕、CSLのいずれを用いた場合でも、前記流出液から硝酸イオンの生成が認められた。即ち、前記バーミキュライトに前記微生物群が固定化され並行複式無機化反応を触媒することが示された。なお、前記微生物源を添加しなかった対照実験(control)では、硝酸イオンの生成は認められなかった。
特に、CSLを含む液体の添加を継続したところ、前記微生物源の添加から6日後以降では、連日、安定した濃度の硝酸イオンが生成されることが示された。このCSLに含まれる有機態窒素の硝酸態窒素への変換効率は98.6%であり、極めて高い変換効率であることが分かった。
従って、CSLを有機物として添加した場合、特に高濃度の硝酸態窒素を含む流出液が回収できることが示された。
【0069】
実施例5(有機物の種類の検討2)
さらに、上記以外の有機物を用いた場合にも、並行複式無機化反応によって有機物を無機化して、硝酸態窒素を生成できるかの検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿10g(容積50ml)を充填した。
これに実施例2で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、魚粉(東商製)、コーン油粕(東商製)、あるいは、食品残渣(生ゴミ、窒素含有量6%)0.1gを添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を図11に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。結果を図11に示す。
【0070】
その結果、有機物として、魚粉(東商製)、コーン油粕(東商製)、食物残渣のいずれを用いた場合でも、前記流出液から硝酸イオンの生成が認められ、硝酸態窒素を含む流出液が回収できることが示された。
【0071】
実施例6(有機物の種類の検討3)
さらに、上記以外の有機物を用いた場合にも、並行複式無機化反応によって有機物を無機化して、硝酸態窒素を生成できるかの検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿10g(容積50ml)を充填した。
これに実施例2で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、米ぬか(つけもと株式会社製)、粉ミルク(森永乳業株式会社製)、だしの素(株式会社シマヤ製)、大豆粉(セーフテック・インターナショナル株式会社製)、牛乳(大内山酪農農業協同組合製)、植物体茎葉(トマト植物体の腋芽)、牛糞(株式会社東商製)、あるいは、鶏糞(株式会社東商製)0.1g(牛乳の場合は液体重量)を添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、それぞれ図12に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
【0072】
その結果、上記いずれの有機物を用いた場合でも、前記流出液から硝酸イオンの生成が認められ、硝酸態窒素を含む流出液が回収できることが示された。
なお、これらのうち米ぬかは、C/N比(炭素に対する窒素の含有比)が18.1と高く、従来の水中での並行複式無機化反応では硝酸態窒素を回収できなかった有機質資源であるが、上記カラムに添加することにより、無機化され硝酸態窒素が生成できることが明らかになった。
これは、前記固体担体内での並行複式無機化反応が、従来の水中での並行複式無機化反応に比べて、反応速度が顕著に向上したことが主な理由と考えられる。即ち、前記固体担体内は、通気性が高く好気的条件が常に維持され、また、反応を触媒する微生物群が固定化された表面積が大きいため、有機成分の分解硝化する反応速度が顕著に向上するためと考えられる。また、有機成分の拡散が固体担体内で起きにくいのに比して、アンモニアは担体に担持されている水分で拡散しやすく、微視的にC/N比が低くなる部位が生じることも理由として考えられる。
【0073】
実施例7(自然界由来の微生物源の利用)
土壌や海水、水道水などに含まれる自然界に由来の微生物群を、固体担体に固定化する微生物の接種源として利用できるかの検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿10g(容積50ml)を充填した。
これに海水100ml、水道水100ml、あるいは土壌1gを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁100mgを添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図13あるいは図14の各々に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
また、上記のロックウール粒状綿を充填した容器に、前記微生物源代わりに蒸留純水を添加したものを、対照実験(control)とした。海水もしくは水道水を微生物源として接種した結果を図13に、土壌を微生物源として接種した結果を図14に示す。
【0074】
その結果、微生物源として海水、水道水、土壌のいずれを添加し接種した場合においても、前記流出液から、硝酸イオンの生成が認められた。即ち、前記ロックウール粒状綿に自然界由来の前記微生物群が固定化され、並行複式無機化反応を触媒することが示された。なお、前記微生物源代わりに蒸留純水を添加した対照実験(control)では、硝酸イオンの生成は認められなかった。
この結果から、土壌、海水や水道水に含まれる自然由来の微生物群を接種源として利用することで、並行複式無機化反応を行う微生物の固体担体への固定化が可能なことが分かった。
ただし、海水や水道水に含まれる微生物の固定化には、実施例1で調製した微生物群の前記培養液を用いた場合に比べて、時間がかかる傾向があることが示された。土壌を接種源とする場合は、比較的早く固定化が可能であることがわかった。
【0075】
実施例8(カラム流出液の微生物源としての利用)
すでに並行複式無機化反応を触媒する微生物群が固定化された固体担体からの流出液(前記微生物群が固定化された固体担体を充填した触媒カラムからの流出液)を微生物源として利用して、別の固体担体に固定化する実験を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿20g(容積100ml)を充填した。
これに実施例1に記載のロックウール粒状綿を充填した触媒カラムからの流出液100mlを微生物源として添加し接種した後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1g(液体重量)を添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図15に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
また、上記のロックウール粒状綿を充填した容器に、微生物源を添加しなかったものを、対照実験(control)とした。結果を図15に示す。
【0076】
その結果、前記実施例1に記載の前記微生物群を固定化したロックウール粒状綿を充填した‘触媒カラムからの流出液’を微生物源として添加した場合、前記排水口からの流出液に生成された硝酸イオンの濃度は、7日経過後で約220mg/Lと高い値を示し、実施例1,2で示した培養液を微生物源として用いる場合と同等に、並行複式無機化反応を行う微生物群の固定化を速やかに行うことができることが分かった。
なお、前記微生物源を添加しなかった対照実験(control)では、硝酸イオンの生成は認められなかった。
この実験結果から、すでに固定化済みの固体担体を用いた触媒カラムからの流出液を、別の固体担体の微生物源として利用することが可能であることが分かった。
【0077】
実施例9(無容器での固定化の検討1)
上記カラム方式(排水口を備えた容器に固体担体を充填する方法)を用いずに、固形形状が維持されるように一体成形された固体担体に、直接前記微生物群を固定化できるかの検討を行った。
まず、実施例1に記載の並行複式無機化反応後の培養液を用いて水耕での養液栽培でコマツナを栽培し、その栽培後、‘硝酸態窒素を含まない前記微生物の培養液’を得た。
次に、固形形状が維持されるように一体成形されたロックウールキューブ(Grodan社製、100×100×100mm:容積1L)に直接、蒸留純水500ml添加して、余分な水分をロックウールキューブから流出させることでロックウールキューブを洗浄した。
これに、前記硝酸態窒素を含まない培養液500mlを微生物源として添加し接種した。なお、微生物源の添加後には、蒸留純水でのロックウールキューブの洗浄は行わなかった。
以後、有機物として、鰹煮汁0.5gを添加し、室温(約25℃)で‘6日が経過するまで静置した’後、蒸留純水500mlで洗浄した。ロックウールキューブから流出する液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。結果を図16に示す。
【0078】
その結果、上記カラム方式(排水口を備えた容器に固体担体を充填する方法)を用いずに、固形形状が維持されるように一体成形されたロックウール(固体担体)を用いた場合にも、前記微生物源の添加から6日後には、約50mg/Lの、硝酸イオンが生成されることが示された。
即ち、固体担体自体に微生物・有機物・水分を担持する多孔質構造が存在すれば、固体担体を固形形状が維持されるように一体成形することで、そのまま容器に充填せずに微生物の固定化行程を行うことができることが示された。
【0079】
また、硝酸イオンを含まない微生物源を用いた場合、接種後に水で固体担体(ロックウールキューブ)を洗浄しなくても、固体担体に前記微生物群が固定化され並行複式無機化反応を触媒することが示された。このことより、硝酸イオンを含まない微生物源を用いた場合には、微生物源添加後の水での洗浄する操作を省くことができることが分かった。
また、この場合、有機物添加後、静置して水で洗浄する操作は、繰り返さなくてもよく、有機物を添加して数日静置するだけでも微生物が順化、増殖し、固体担体への固定化を進めることができることが示された。
この結果は、有機物を添加する時点では固体担体中の硝酸態窒素濃度が低い状態にあり、脱窒反応を誘発しにくい状態になっているためと考えられる。
【0080】
実施例10(無容器での固定化の検討2)
上記カラム方式(排水口を備えた容器に固体担体を充填する方法)を用いずに、固形形状が維持されるように一体成形された固体担体について、さらに検討を行った。
まず、固形形状が維持されるように一体成形されたロックウールキューブ(Grodan社製、100×100×100mm:容積1L)、木綿(アイセン工業株式会社製、20g:容積100mL)、メラミン樹脂(株式会社コメリ製、2g:容積50mL)を準備した。なお、木綿とメラミン樹脂については、糸で吊り下げた状態にした(図17に写真像を示す)。
これに、実施例2で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した。なお、本実施例では、添加した微生物源の添加量自体が極めて微量であったため(即ち、微生物源に含まれている硝酸態窒素の量も極めて微量であったため)、微生物源の添加後には、蒸留純水での固体担体の洗浄は行わなかった。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1gを添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図18に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。結果を図18に示す。
【0081】
その結果、ロックウール以外の木綿やメラミン樹脂を、固形形状が維持されるように一体成形したものを用いた場合においても、前記微生物源の添加から6日後には、硝酸イオンの生成が認められることが示された。
即ち、樹脂などの固体担体を特に容器に充填しなくても、固形形状が維持されるように一体成形のものであれば、問題なく前記微生物群を固定化させることが可能であることが示された。
なお、これらのうちロックウールを用いた場合には、前記微生物源の添加から8日後の流出液に約240mg/Lの濃度の硝酸イオンの生成されることが示され、特に前記微生物群を固定化させる固体担体の素材として、好適であることが示された。これは、ロックウールが、通気性および微生物物群が固定化される表面積の点で優れた素材であるためと考えられる。
【0082】
実施例11(デカンテーションによる微生物群の固定)
上記カラム方式(排水口を備えた容器に固体担体を充填する方法)以外に、デカンテーションによって洗浄を行った場合にも、前記微生物群を固体担体に固定化できるか、検討を行った。
プラスチックカップ(200ml容)に、ロックウール粒状綿10g(容積50ml)を入れた。これに、実施例2で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群の乾燥菌体10mgを微生物源として添加し接種した。なお、本実施例では、添加した微生物源の添加量自体が極めて微量であったため(即ち、微生物源に含まれている硝酸態窒素の量も極めて微量であったため)、微生物源の添加後には、蒸留純水での固体担体の洗浄は行わなかった。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1gを添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlを添加して、数分間静置してから当該プラスチックカップを傾けることで余分な水分を流出させる処理(デカンテーションによる洗浄処理)を、図19に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
【0083】
その結果、上記カラム方式(排水口を備えた容器に固体担体を充填する方法)を用いずに、デカンテーションによって洗浄を行った場合にも、前記微生物源の添加から6日後に約40mg/L、8日後に約75mg/Lの、硝酸イオンが生成されることが示された。
このことから、カラム(排水口を備えた容器)に充填しなくても、デカンテーションによって洗浄を行うことで、当該固体担体に前記微生物群を固定化することができることが示された。
【0084】
実施例12(固形培地耕での有機質肥料を直接添加した養液栽培)
並行複式無機化反応を行う微生物群を固定化した固体担体を、植物栽培用固体培地として用いることで、固形培地耕での有機物を含む肥料を直接添加した養液栽培が可能であるかを検討した。
ロックウールキューブ(Grodan社製、100×100×100mm:容積1L、固形形状が維持されるように一体成形された固体担体)に実施例1で用いた前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した培養液500mlを微生物源として添加し接種した後、水道水500mlを添加して、水分をロックウールキューブから流出させることでロックウールキューブを洗浄した。なお、このロックウールが充填された容器20個を一区画とした。
以後、上記容器一区画分に対して、有機物を含む液体として、鰹煮汁0.5g(液体重量)を各ロックウールキューブに添加し、室温(約25℃)で一晩静置した後、水道水500mlで洗浄する処理を、前記微生物群の接種から7日が経過するまで繰り返した。
次に、前記微生物群の接種から8日後に、流出液に硝酸イオンが生成されたことを確認した後、チンゲンサイ種子をロックウールキューブに播種した。なお、播種後は、前記鰹煮汁の添加と洗浄処理は中断した。栽培は、2007年12月6日から2008年1月9日まで、ガラス温室内(暖房なし)で行った。
播種から10日後(前記微生物源の添加から18日後)、双葉が展開した段階から、前記鰹煮汁の添加と洗浄処理を繰り返す操作を再開し、播種から34日が経過するまで(前記微生物源の添加から42日が経過するまで)週に2回、鰹煮汁の添加と水道水での洗浄を行うことで栽培した。この一区画の栽培区を‘接種・鰹煮汁’区として本発明区とした。
また、上記のロックウールキューブを充填した容器に、前記微生物源を添加しなかった区画を、‘無接種・鰹煮汁’区の対照実験とした。
さらに、上記のロックウールキューブを充填した容器に、前記微生物源を添加せず、前記有機物を含む液体の代わりに化学肥料の添加を行った区画のものを、‘化学肥料’区の対照実験とした。結果を図20に示す。
【0085】
その結果、本発明区の‘接種・鰹煮汁’区のチンゲンサイは、‘化学肥料’区のものと同等の良好な生育を示した。
また、‘無接種・鰹煮汁’区(即ち、微生物源を接種せずに鰹煮汁を添加したロックウールキューブで栽培した区)では、チンゲンサイの生育が大幅に遅れた。これは、微生物源を接種しなかったために鰹煮汁の分解がアンモニア化成までしか進まず、アンモニア過剰障害が生じたためと考えられる。
【0086】
実施例13(触媒カラム流出液を用いた生育実験)
ロックウール粒状綿を微生物担体として100mgの鰹煮汁を連日無機化し、その流出液100mlをコマツナの生育実験に用いた。
実施例2で得られた、並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化されたロックウール粒状綿が充填された触媒カラムに、100mgの鰹煮汁を添加し室温(約25℃)で一晩静置した後、蒸留純水100mlを添加し流出液を回収する処理(有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成させる処理)を連日繰り返した。
この連日得られる流出液100mlを肥料として用いて、コマツナ苗10株に供する操作を毎日繰り返した(なお、その際、前日からの残液は廃棄した。)。苗は、昼夜25℃、自然光の条件下で静置した。
また、対照実験として、鰹煮汁を100mg含む蒸留純水100mlを供する操作を毎日繰り返した。結果を図21に示す。
【0087】
この結果、並行複式無機化反応を行う微生物群を固定化した固体担体(ロックウール粒状綿)が充填された触媒カラムによって有機物から生成された硝酸態窒素を含む流出液を肥料として用いた場合にも、コマツナは問題なく生育することが分かった。対照実験は、コマツナの生育がほとんど進まず、アンモニア過剰障害と思われる生育障害が現れた。
【0088】
実施例14(微生物群が固定化された固体担体の微生物源としての利用1)
すでに並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体そのものを、微生物源として利用することが可能か、検討を行った。
500ml用ペットボトルの底を切断し上半分側を得て、フタが開放した状態で上下逆にすることにより、ペットボトルのフタが排水口となった容器を用意し、この容器にロックウール粒状綿9gを充填した。
これに実施例1で得られた、すでに前記微生物群が固定化された(並行複式無機化反応を触媒するに至った)ロックウール粒状綿1gを、微生物源として添加し接種した(最終的なロックウール粒状綿の容積は50mlになった)後、蒸留純水100mlを添加して前記排水口から流出させることでロックウール粒状綿を洗浄した。
以後、有機物として、鰹煮汁0.1gを添加し、37℃で一晩静置した後、蒸留純水100mlで洗浄する処理を、図22に記載の日数が経過するまで繰り返した。なお、洗浄の際には、洗浄後の流出液を回収し、硝酸イオン濃度を測定した。
【0089】
その結果、実施例1で得られた前記微生物群が固定化されたロックウール粒状綿を微生物源として添加した場合、6日後に約20mg/L、8日後に約35mg/Lの濃度の硝酸イオンが生成されることが示された。
従って、前記微生物群が固定化された微生物担体を、別の未使用の固体担体への微生物源として利用可能であることが示された。
【0090】
実施例15(微生物群が固定化された固体担体の微生物源としての利用2)
すでに並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体が、水中での並行複式無機化反応の微生物源として利用できるか、検討を行った。
500ml容の三角フラスコに100mLの蒸留純水を入れ、実施例7において土壌を微生物源として添加して得られた、すでに前記微生物群が固定化された(並行複式無機化反応を触媒するに至った)ロックウール粒状綿1gを取り出し、微生物源として添加し接種した。
ここに、有機物として、鰹煮汁0.1gを添加し、120rpmで振蕩することで好気的条件になるように維持しながら、水温25℃で、図23に記載の日数が経過するまで培養し、硝酸イオン濃度の測定を順次行った。結果を図23に示す。
【0091】
この結果から、すでに並行複式無機化反応を行う微生物群が固定化された固体担体を微生物源として、水中での並行複式無機化反応を行うことができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、有機性廃棄物を原料とする無機肥料製造技術への応用を可能とする。廃棄物の再資源化産業は今後2兆5千億円の市場規模に拡大すると予想されており、本発明は、有機質資源を無機肥料に再資源化する初めての技術として、産業上の利用可能性は非常に大きなものである。
また、これまでの技術では、多く曝気を必要とするため、エアーポンプなどの動力を必要としたが、本発明ではカラム方式の採用を可能にしたことで、電力を要さない省エネルギーな分解法を可能にした点も、魅力を高めている。
また、本発明は、固形培地耕による有機肥料を用いた養液栽培を可能とし、農業や園芸分野への応用が期待できる。特に、トマト養液栽培では、ロックウールによる固形培地耕が主体であり、これに有機肥料活用型養液栽培を応用することが可能になれば、国内だけでなくオランダなどの環境意識の高い国々に普及することが予想される。特に、オランダのトマト養液栽培は、1000haを超え、この一部が有機肥料活用型養液栽培に置き換わるだけでも、その市場規模は大きなものになる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】固体担体へ微生物群を固定化する方法の一態様を示す説明図である。
【図2】並行複式無機化反応に最適化したバイオリアクターの一態様を示す説明図である。
【図3】固体担体を、排水口を備えた容器に充填した状態を示す写真像図
【図4】各種固体担体を、排水口を備えた容器に充填した状態を示す写真像図である。
【図5】実施例1における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例2における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例3における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例3における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例4において、有機物として菜種油粕を用いた場合の硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例4において、有機物としてコーンスティープリカー(CSL)を用いた場合の硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図11】実施例5における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例6における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例7において、海水、水道水を微生物源として用いた場合の硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図14】実施例7において、土壌を微生物源として用いた場合の硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図15】実施例8における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図16】実施例9における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図17】実施例10における各種固体担体を示す写真像図である。
【図18】実施例10における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図19】実施例11における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図20】実施例12におけるチンゲンサイの生育状態を示す写真像図である。
【図21】実施例13におけるコマツナの生育状態を示す写真像図である。
【図22】実施例14における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
【図23】実施例15における硝酸イオン濃度の測定結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図14】
11
【図15】
12
【図16】
13
【図18】
14
【図19】
15
【図22】
16
【図23】
17
【図3】
18
【図4】
19
【図17】
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【図20】
21
【図21】
22