TOP > 国内特許検索 > オオバアサクサノリの判別方法及びそれに用いるプライマー > 明細書

明細書 :オオバアサクサノリの判別方法及びそれに用いるプライマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5371035号 (P5371035)
公開番号 特開2010-094053 (P2010-094053A)
登録日 平成25年9月27日(2013.9.27)
発行日 平成25年12月18日(2013.12.18)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 オオバアサクサノリの判別方法及びそれに用いるプライマー
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2008-265893 (P2008-265893)
出願日 平成20年10月15日(2008.10.15)
審査請求日 平成23年8月22日(2011.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】小林 正裕
【氏名】阿部 真比古
【氏名】藤吉 栄次
【氏名】玉城 泉也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】北村 悠美子
参考文献・文献 Aquaculture,2008年 1月31日,Vol.274,p.126-131
Theor Appl Genet,2002年,Vol.104,p.562-570
Theor Appl Genet,1999年,Vol.98,p.1-10
Theor Appl Genet,1997年,Vol.95,p.961-968
AF114794 Porphyra purpurea mitochondrion, complete genome, 2006年, [online], 2013年6月20日検索、インターネット、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF114794
調査した分野 C12Q 1/68
C12N 15/00-15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ミトコンドリアATP6遺伝子の部分塩基配列を含むDNAを増幅するプライマーを用いてアマノリ属に属するノリ由来のDNAを増幅し、得られる増幅産物に含まれる配列番号13~19で示される塩基配列の145位に相当する位置の塩基の多型を識別することを特徴とするオオバアサクサノリとオオバアサクサノリ以外のアサクサノリとの判別方法。
【請求項2】
前記プライマーが、配列番号1および2で示す塩基配列もしくはこれらに対応する相補的な塩基配列を有するものである請求項1に記載の判別方法。
【請求項3】
前記ノリ由来のDNAが糸状体から抽出したものである請求項1または2に記載の判別方法。
【請求項4】
請求項1記載の判別方法におけるミトコンドリアATP6遺伝子の部分塩基配列を含むDNAを増幅するための配列番号1及び2で示される塩基配列もしくはこれらに対応する相補的な塩基配列を有するプライマーセット
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアDNAによるオオバアサクサノリの判別方法およびこれに用いられるプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国のノリ養殖では、スサビノリPorphyra yezoensis Uedaから選抜育種された高生長・多収性のナラワスサビノリP. yezoensis Ueda form. narawaensis Miura に属する養殖品種が養殖されており、野生種やアサクサノリP. tenera Kjellman に属する養殖品種はほとんど養殖されなくなっている。ところが、最近、味を重視する海苔作りを目指す生産者が増え、食味のよいアサクサノリが注目されるようになってきた。しかし、ナラワスサビノリと比較して生長が悪く、病気にかかりやすいため淘汰され、現在までのところ既存の産地を除きアサクサノリの養殖は定着していないようである。アサクサノリの養殖が再び普及するためには、良好な食味と高生長・多収性を併せ持つ優良な養殖品種の開発が必要である。
【0003】
アサクサノリには、養殖漁場において分離された生長のよい変種オオバアサクサノリP. tenera Kjellman var. tamatsuensis Miura(以下、「オオバアサクサノリ」という)が知られており、かつては広く養殖されていたが、ナラワスサビノリよりも色調が劣り、生産方法によっては製品の品質が低下するため、近年ではほとんど養殖されなくなった。オオバアサクサノリはアサクサノリの中でも養殖しやすく多収性で、かつナラワスサビノリよりも薄く滑らかで仕上がりの良い製品となる特性を持っている。そのため、アサクサノリの特性を持つ養殖品種を作出するための素材として大変有望であると考えられ、新品種開発にも利用されている。
【0004】
近年、DNAの塩基配列比較やPCR-RFLP分析などの分子生物学的手法の進歩により、スサビノリとアサクサノリの判別が容易となってきた(非特許文献1~5)。オオバアサクサノリと野生のアサクサノリについては、核rDNAのITS領域および葉緑体DNAのRuBisCOスペーサー領域を用いたPCR‐RFLP分析が行われ、そのバンドパターンは同じであったため (非特許文献5参照)、その判別のためにはそれぞれの葉状体を培養し、その生長特性を比較することが必要であった。したがって、オオバアサクサノリの判別には保存糸状体から葉状体の細胞形態(単胞子性能能や成熟細胞形成の違い)の観察と生長特性を把握するまでの数ヶ月の培養期間とその培養技術が必要であった。
【0005】
一方、「アサクサノリ種」には、養殖しやすい「オオバアサクサノリ」グループと養殖しにくい「アサクサノリ」グループに分けられると言われて、個別の学名が付けられているが、これらを形態や生態で明確に区別する方法はなく、実は全く同一の種ではないかとの意見もあった。
【0006】
アサクサノリの養殖品種の育成を進めていくためには、その素材候補となるオオバアサクサノリを判別、収集することが重要である。現在、試験研究機関や漁連等には、膨大な数のアマノリ養殖品種の保存株(糸状体)が存在する。育種素材を確保するためには、その保存株あるいは野生アサクサノリの中からオオバアサクサノリを迅速、簡便かつ正確に選別する技術の開発が必要とされていた。

【非特許文献1】Kunimoto et al. J. Appl. Phycol.,11,203‐209(1999)
【非特許文献2】Kunimoto et al. J. Appl. Phycol.,15,337‐343(2003)
【非特許文献3】Niwa et al. J. Phycol.,41,294‐304(2005)
【非特許文献4】Niwa et al. Phycol. Res.,53,296‐302(2005)
【非特許文献5】Niwa et al. Aquaculture,274,126‐131(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、一般には変異速度が速いため、種判別が困難と考えられているミトコンドリアDNA領域に着目し、鋭意、研究を進めた結果、ミトコンドリアATP synthase F0 subunit 6 (ATP6) 遺伝子(770塩基)のうち約75%(580塩基)を含むミトコンドリアDNA部分塩基配列(670塩基)をマーカーとして用いることにより、オオバアサクサノリとアサクサノリとを迅速に判別できることを見出した。
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、オオバアサクサノリを迅速に判別する方法、およびそのための新規なプライマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、次のとおりである。
(1)ミトコンドリアATP6遺伝子に関連したミトコンドリアDNA部分塩基配列を増幅するプライマーを用いてノリ由来のDNAを増幅し、得られる増幅産物の多型を識別することからなるオオバアサクサノリの判別方法。
【0009】
(2)上記プライマーが、配列番号1または2で示す塩基配列もしくはこれらに対応する相補的な塩基配列を有するものであ上記(1)に記載のオオバアサクサノリの判別方法。
【0010】
(3)前記ノリ由来のDNAが糸状体から抽出したものである上記(1)または(2)に記載のオオバアサクサノリの判別方法。
【0011】
(4)配列番号1または2で示される塩基配列もしくはこれらに対応する相補的な塩基配列を有するプライマー。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、保存株あるいは野生のアサクサノリの中からオオバアサクサノリを迅速、簡便かつ正確に選別することができるため、膨大な数のアマノリ養殖品種の保存株から最適な育種素材を選別でき、アサクサノリの養殖品種の育成を早めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の判別方法に供するノリは、アマノリ属に属するノリであれば、養殖ノリ、野生ノリのいずれでもよく、オオバアサクサノリであるかどうかの選別対象とされるノリである。
なお、本明細書においては、オオバアサクサノリに属する養殖品種の他、野生のアサクサノリ等を材料として使用しているので、用語の混乱を避けるために、アサクサノリに属する株のうちオオバアサクサノリではないものをアサクサノリ系統と便宜上定義している。
【0014】
本発明では、まず、本判別方法に供するノリからミトコンドリアDNAを抽出するが、この場合、ミトコンドリアDNAのみを選別して抽出する必要はなく、ミトコンドリアDNAを含む全DNAを抽出することで十分である。このDNAは、胞子、糸状体、葉状体のいずれから抽出してもよいが、一般には保存が糸状体でなされているので、この糸状体から抽出することが好ましい。この抽出は、分子生物学の分野で慣用されている手法にしたがって行い、必要に応じて精製し、供試試料として調製すればよい。たとえば、市販の植物などからのDNA抽出キット〔例えば、ISOPLANT II(NIPPON GENE Co. Ltd.)を用いると簡便である。
【0015】
本発明において、ミトコンドリアATP6遺伝子に関連したミトコンドリアDNA部分塩基配列とは、ミトコンドリアDNAのATP synthase F0 subunit 6 (ATP6) 遺伝子(770塩基)の全部またはその大部を含むDNAで、特には、このATP6遺伝子のうち約75%(580塩基)を含むミトコンドリアDNA部分塩基配列(670塩基)とすることが好ましい。
【0016】
このミトコンドリアDNAの670塩基の部分配列は、実施例で後述するように、本発明者らが明らかにした国内産ノリのミトコンドリアDNA内の遺伝子の配置および配列順序を基に解析を行い、判別に利用可能であることを見つけたものである。
この塩基配列部分を増幅するために、特に好適に使用できるプライマーの組み合わせの例を表1に示す。
【0017】
【表1】
JP0005371035B2_000002t.gif

【0018】
上記プライマーを用いた前記ミトコンドリアDNA部分塩基配列の増幅は、公知のDNA増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)などを用いることができる。また、この増幅を行う際の反応液の組成やサイクリングの条件は、プライマーのTm値、サーマルサイクラーの仕様などに合わせて適宜選定するとよい。
【0019】
本発明の方法では、このようにして得られたDNA増幅産物を制限酵素で処理し、このパターンに基いて、オオバアサクサノリを識別する。すなわち、DNA増幅反応終了後の反応液に、例えば、Taa I等の制限酵素を加えて、制限酵素処理を行い、反応液を電気泳動して得たバンドパターンおよびそのバンドの相対的な濃さにより判別する。
【実施例】
【0020】
次に実施例に基いて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
使用した株を表2に示した。
オオバアサクサノリの養殖品種としては、オオバアサクサノリ4(水産総合研究センター西海区水産研究所保存株番号4)、オオバグリーン(株番号10)およびナルトオオバ(株番号 SN47)の3株を用いた。比較対照として、アサクサノリ系統の数少ない自生地として知られる熊本県天草市河浦町産の野生アサクサノリ(株番号 78、以下「河浦産アサクサノリ」とも云う)、三重県伊勢市大湊産の野生アサクサノリ(株番号 MU1、以下「大湊産アサクサノリ」とも云う)、オオバアサクサノリではないことが明らかにされたアサクサノリ系統の“サシキ”(株番号 57)および養殖品種ナラワスサビノリのU-51(株番号 1)を用いた。使用した材料は全て糸状体で、三重大学より分譲された大湊産アサクサノリを除き、西海区水産研究所において保存培養されている。
【0021】
【表2】
JP0005371035B2_000003t.gif

【0022】
上記ノリの糸状体を液体窒素で凍結・粉砕し、ISOPLANTII(NIPPON GENE Co. Ltd.)を用いて、プロトコールにしたがって、全DNAを抽出し、精製した。
ミトコンドリアATP6遺伝子の一部を含む領域の増幅を行うため、前述の表1に示した2種類のプライマーと上記方法で抽出・精製したDNA溶液を用い、i-Cycler サーマルサイクラー(BIO-RAD社製)で、表3に示した条件で、PCR反応を行ない、GFXTMPCR DNA精製キット(Amersham Biosciences社製) を使用し、プロトコールにしたがって精製した。
【0023】
【表3】
JP0005371035B2_000004t.gif

【0024】
増幅したPCR反応液について、制限酵素Taa Iを用いて、表4に示した条件で処理を行った。
【0025】
【表4】
JP0005371035B2_000005t.gif

【0026】
変種オオバアサクサノリ株の3種とアサクサノリ系統株3種について、得られた処理液を用いて、制限断片長多型(RFLP : Restriction Fragment Length Polymorphism)によるアサクサノリとオオバアサクサノリの判別を行った。すなわち、2%アガロースゲル、1×TAEバッファーを用いて電気泳動し、泳動後に、エチジウムブロマイドにより染色し、紫外線により、DNA断片を比較判別した。
【0027】
この結果を図1に、PCR増幅産物(a)とともに、(b)に示した。図1中、Lane 1;野生アサクサノリ(株番号78)、Lane 2;サシキ(株番号57)、Lane 3:野生アサクサノリ(株番号MU1)、Lane 4;オオバグリーン(株番号10)、Lane 5ナルトオオバ(株番号SN47)、Lane 6;オオバアサクサノリ4(株番号4)である。この結果から明らかなように、Lane 1~3のアサクサノリ系統とLane 4~6オオバアサクサノリとの間でバンドパターンの差異が認められ、アサクサノリとオオバアサクサノリが判別できた。
【0028】
一方、精製したDNA断片を鋳型とし、BigDye Terminator Sequencing Kit Ver. 3.1(Applied Biosystems社製)によりサイクルシークエンスを行った。塩基配列の決定にはABI PRISM 310型ジェネティックアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いた。また、非特許文献3および4により解析されているITS-1領域とRuBisCOスペーサー領域についても使用した全株で塩基配列を決定し、GenBankに登録されているオオバアサクサノリC-32、Sashiki 90-02およびオオバグリーンF1 HGT-6の延べ6配列と比較した(GenBank accession number: ITS-1: C-32、 AB193583; 90-02、 AB193584; F1 HGT-6、 AB365190: RuBisCO spacer: C-32、 AB193585; 90-02、 AB193586; HGT-6、 AB365191)。
【0029】
ITSおよびRuBisCOスペーサー両領域におけるPCR-RFLP分析の結果からは、オオバアサクサノリ4(Oba-Asakusanoru4)、オオバグリーン(Oba-Green)およびナルトオオバ(Naruto-Oba)のオオバアサクサノリ3株はいずれも河浦産アサクサノリ(Kawaura)、サシキ(Sashiki)および大湊産アサクサノリ(Ohminato)のアサクサノリ系統3株とバンドパターンが一致し、ナラワスサビノリU-51(U-51)株とは異なっていた。したがって、本実施例に用いたオオバアサクサノリ3株はいずれもアサクサノリであると判断された。
【0030】
ITS‐1領域の塩基配列を比較した結果を、非特許文献4及び5に記載の結果とあわせて 図2に示した。オオバアサクサノリ3株は塩基配列が一致し、河浦産アサクサノリおよびサシキと1塩基置換が認められた(Sashiki 90-02;配列番号3、オオバアサクサノリC-32;配列番号4、オオバグリーンF1 HGT-6;配列番号5、オオバアサクサノリ4;配列番号6、オオバグリーン;配列番号7、ナルトオオバ;配列番号8、河浦産アサクサノリ;配列番号9、大湊産アサクサノリ;配列番号10、サシキ;配列番号11、ナラワスサビノリU-51;配列番号12)。大湊産アサクサノリに関しては、河浦産アサクサノリおよびサシキとの間に12塩基のギャップと2塩基の挿入および5塩基置換が認められ、アサクサノリ系統内での変異があった。一方、ナラワスサビノリU-51株は河浦産アサクサノリおよびサシキとの間に22塩基のギャップと24塩基置換(置換塩基番号:46、55、56、78、79、90、106、132、140、145、228、229、230、289、295、297、300、318、324、326、346、351、354、375)、オオバアサクサノリとの間には22塩基のギャップと25塩基置換(置換塩基番号:前述番号に加えて308)が認められた。また、本領域のPCR反応を行った際には、U-51株において複数の断片が増幅された。オオバアサクサノリ3株の塩基配列は、非特許文献4によるオオバアサクサノリのオオバグリーンF1株HGT-6およびオオバアサクサノリC-32株の塩基配列と一致し、河浦産アサクサノリおよびサシキはアサクサノリ系統の90‐02株(Sashiki)と一致した。
【0031】
RuBisCOスペーサー領域の塩基配列は、本研究で使用したアサクサノリ系統3株およびオオバアサクサノリ3株の全てで一致した。また、非特許文献3及び4のHGT-6、C-32および90-02における塩基配列を加えて比較してもアサクサノリ種内の全てで一致した。一方、ナラワスサビノリU-51株とアサクサノリでは7塩基置換が確認された。
【0032】
さらに、ミトコンドリアDNA中のATP6遺伝子(770塩基)の約75%(580塩基)を含むミトコンドリアDNA部分塩基配列670塩基を決定した。その結果を、図3に示した(オオバアサクサノリ4;配列番号13、オオバグリーン;配列番号14、ナルトオオバ;配列番号15、河浦産アサクサノリ;配列番号16、大湊産アサクサノリ;配列番号17、サシキ;配列番号18、ナラワスサビノリU-51;配列番号19)。オオバアサクサノリのオオバアサクサノリ4、オオバグリーンおよびナルトオオバのそれぞれの塩基配列は完全に一致した。また、アサクサノリ系統の河浦産アサクサノリ、大湊産アサクサノリおよびサシキについてもそれぞれの塩基配列は完全に一致した。一方、オオバアサクサノリとアサクサノリ系統との間には1塩基置換が確認された。アサクサノリとナラワスサビノリU‐51株の種間では20-21塩基の置換が認められた。
【0033】
本実施例で用いた7株に関して、ミトコンドリアDNA中のATP6遺伝子の約75%を含むミトコンドリアDNA部分塩基配列比較(670塩基)では、ナラワスサビノリとアサクサノリの間で20-21個の塩基置換、アサクサノリ系統とオオバアサクサノリの間で1塩基の置換が確認された(図3参照)。使用したオオバアサクサノリのうち2株は徳島県内の海産、1株は愛媛県西条市産の葉状体に由来するとされているが、産地に関係なくオオバアサクサノリ3株の本研究領域における塩基配列が一致した。また、ITS‐1領域では変異が見られたアサクサノリ系統においても本領域の塩基配列は一致した。したがって、ミトコンドリアATP6遺伝子の一部を含む本領域がアサクサノリ系統とオオバアサクサノリの判別マーカーとなることは明らかである。
【0034】
さらに、本領域はアマノリ類の中では近縁と推定されているアサクサノリとスサビノリとの間でも特異的な配列があり、アマノリ類の種判別に活用できるマーカーであることも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の判別方法は、保存株あるいは野生のアサクサノリの中からオオバアサクサノリを迅速、簡便かつ正確に選別することができ、膨大な数のアマノリ養殖品種の保存株から最適な育種素材を選別し、アサクサノリの養殖品種の育成に有用である。また、本発明のプライマーは、前記判別のために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】オオバアサクサノリ株の3種とアサクサノリ系統株3種のPCR増幅産物(a)と制限酵素Taa I処理後のPCR‐RFLP(b)のプロファイル写真である。
【図2】各種ノリについて、核rDNA中のITS‐1領域の塩基配列を比較した図である。
【図3】各種ノリについて、ミトコンドリアDNA中のATP6遺伝子を含むDNA部分塩基配列670塩基を比較した図である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2