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明細書 :抗豚インターロイキン-18抗体を用いた動物のストレス評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5219048号 (P5219048)
公開番号 特開2010-096751 (P2010-096751A)
登録日 平成25年3月15日(2013.3.15)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 抗豚インターロイキン-18抗体を用いた動物のストレス評価方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI G01N 33/53 P
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 9
微生物の受託番号 FERM P-17527
FERM P-17528
FERM P-17529
FERM P-17530
FERM P-17531
FERM P-21672
全頁数 12
出願番号 特願2009-207047 (P2009-207047)
出願日 平成21年9月8日(2009.9.8)
優先権出願番号 2008238416
優先日 平成20年9月17日(2008.9.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年2月24日(2012.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】宗田 吉広
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】三木 隆
参考文献・文献 国際公開第2007/094472(WO,A1)
特開2001-103967(JP,A)
特表2006-526140(JP,A)
国際公開第2006/003927(WO,A1)
調査した分野 G01N 33/53
G01N 33/15
G01N 33/50
特許請求の範囲 【請求項1】
被験家畜動物由来の唾液サンプルにおいて、抗インターロイキン-18抗体を用いてインターロイキン-18を測定する工程と、
非ストレス下の家畜動物由来の唾液サンプルにおけるインターロイキン-18量と比較してインターロイキン-18量が多いことにより、被験家畜動物がストレスを有すると評価する工程と、
を含む、家畜動物のストレス評価方法であって、前記抗インターロイキン-18抗体が受託番号FERM P-17527、FERM P-17528、FERM P-17529、FERM P-17530、FERM P-17531及びFERM P-21672で特定されるハイブリドーマから成る群より選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、且つ前記ストレスが拘束ストレス、移動ストレス、離乳ストレス、感染ストレス、暑熱ストレス、寒冷ストレス、採血若しくは注射ストレス、密飼ストレス及び絶食ストレスから成る群より選択される、前記方法
【請求項2】
家畜動物がブタ、ウシ、ウマ及びヤギから成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ストレスが拘束ストレス、移動ストレス及び離乳ストレスから成る群より選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
抗インターロイキン-18抗体を含む、家畜動物ストレス評価用キットであって、前記抗インターロイキン-18抗体が受託番号FERM P-17527、FERM P-17528、FERM P-17529、FERM P-17530、FERM P-17531及びFERM P-21672で特定されるハイブリドーマから成る群より選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、且つ前記ストレスが拘束ストレス、移動ストレス、離乳ストレス、感染ストレス、暑熱ストレス、寒冷ストレス、採血若しくは注射ストレス、密飼ストレス及び絶食ストレスから成る群より選択される、前記キット
【請求項5】
家畜動物がブタ、ウシ、ウマ及びヤギから成る群より選択される、請求項4記載のキット。
【請求項6】
ストレスが拘束ストレス、移動ストレス及び離乳ストレスから成る群より選択される、請求項4又は5記載のキット。
【請求項7】
ストレス下の被験家畜動物に候補物質を投与する工程又は被験家畜動物に候補物質を投与した後、該被験家畜動物をストレスに供する工程と、
該候補物質を投与した被験家畜動物由来の唾液サンプルにおいて、抗インターロイキン-18抗体を用いてインターロイキン-18を測定する工程と、
候補物質を投与していない、ストレス下の被験家畜動物由来の唾液サンプルにおけるインターロイキン-18量と比較してインターロイキン-18量が少ないことにより、候補物質がストレス抑制剤であると判定する工程と、
を含む、ストレス抑制剤のスクリーニング方法であって、前記抗インターロイキン-18抗体が受託番号FERM P-17527、FERM P-17528、FERM P-17529、FERM P-17530、FERM P-17531及びFERM P-21672で特定されるハイブリドーマから成る群より選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、且つ前記ストレスが拘束ストレス、移動ストレス、離乳ストレス、感染ストレス、暑熱ストレス、寒冷ストレス、採血若しくは注射ストレス、密飼ストレス及び絶食ストレスから成る群より選択される、前記方法
【請求項8】
家畜動物がブタ、ウシ、ウマ及びヤギから成る群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ストレスが拘束ストレス、移動ストレス及び離乳ストレスから成る群より選択される、請求項7又は8記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば唾液等のサンプル中のインターロイキン-18(以下、「IL-18」という)を、抗IL-18抗体を用いて測定することにより、IL-18を指標として動物のストレスを評価する方法及びストレス抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、ストレスに対する生化学的マーカーとしては、例えば副腎皮質ホルモンであるコルチゾール、カテコールアミンであるアドレナリンやノルアドレナリンが知られる。また、近年において、非侵襲的なストレス評価のためのサンプルとして尿、唾液、涙及び汗等が注目されている。これらサンプルの中でもサンプル採取が容易であり、且つ研究の進展が著しい唾液をサンプルとしたストレスマーカーの検討が進展している。例えば、アミラーゼ、クロモグラニンA及びイムノグロブリンAが唾液中のストレスマーカーとしての重要性が報告されている。
【0003】
また、ストレスと密接に関連する内分泌系や免疫系との関連から、TNF-α等の幾つかのサイトカインについて、ストレスマーカーとしての評価がなされている。例えば、マウスストレスモデルにおいて、IL-18はストレスマーカーとして有用であることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
従来のストレス評価方法の多くは、採血による血液中のストレスマーカーの測定により行われてきた。しかしながら、採血はそれ自体がストレスを伴うことから、正確なストレス評価が困難となり、問題であった。また、唾液等を用いた非侵襲的なストレスマーカーの測定においては、ストレスマーカーによっては血液中に比べ含有濃度が低く、測定が不可能であり、問題であった。
【0005】
また、ヒトにおいては多くのストレスマーカーの検討がなされているものの、家畜等の動物においては唾液サンプル採取の困難さや高感度なアッセイ方法が確立されていない等の理由からこれまでほとんどストレスマーカーの検討は行われていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Sekiyama A.ら, Immunity, 2005年, Vol.22, No. 6, p.669-677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、家畜等の動物においてはこれまで唾液等の非侵襲的なサンプルにおいてストレスマーカーの測定を試みた報告はほとんどない。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、簡便に行うことができる動物のストレス評価方法及びストレス抑制剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、抗IL-18抗体を用いてブタの唾液においてIL-18を測定した結果、IL-18がストレスマーカーであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、被験動物由来のサンプルにおいて、抗IL-18抗体を用いてIL-18を測定することを含む、動物のストレス評価方法である。当該評価方法では、非ストレス下の動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が多いことにより、被験動物がストレスを有すると評価することができる。
【0011】
また、本発明に係るストレス評価方法における被験動物としては、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ゾウ、ヤク、ミンク等の家畜動物及びイヌ、ネコ、フェレット、サルやモルモット、ハムスター、リス等のげっ歯類動物等の愛玩動物が挙げられる。
【0012】
さらに、本発明に係るストレス評価方法におけるサンプルとしては、唾液、尿、涙及び汗等の非侵襲的サンプルが挙げられる。
【0013】
本発明に係るストレス評価方法における抗IL-18抗体としては、抗ブタIL-18モノクローナル抗体が挙げられる。抗ブタIL-18モノクローナル抗体として、例えばY. Muneta et al., J. Immunol. Methods, 236, 99-104, 2000及びY. Muneta et al., J. Interferon Cytokine Res., 20, 331-336, 2000に記載のものが挙げられる。特に、ブタIL-18に反応し、ヒトIL-18との交差反応性を示さないモノクローナル抗体が挙げられ、このようなモノクローナル抗体としては、例えば受託番号FERM P-17527、FERM P-17528及びFERM P-17529で特定されるハイブリドーマにより産生されるものが挙げられる。また、特にブタ、ウシ、ウマ及びヤギ等が被験動物である場合には、抗IL-18モノクローナル抗体として受託番号FERM P-17530、FERM P-17531及びFERM P-21672で特定されるハイブリドーマにより産生されるものも使用できる。
【0014】
さらに、本発明は、抗IL-18抗体を含む動物ストレス評価用キットである。本発明に係るキットの対象動物並びに含まれる抗IL-18抗体としては、上述のものが挙げられる。
【0015】
また、本発明は、ストレス下の非ヒト被験動物に候補物質を投与する工程又は非ヒト被験動物に候補物質を投与した後、該非ヒト被験動物をストレスに供する工程と、該候補物質を投与した非ヒト被験動物由来のサンプルにおいて、抗IL-18抗体を用いてIL-18を測定する工程とを含む、ストレス抑制剤のスクリーニング方法である。当該スクリーニング方法では、候補物質を投与していない、ストレス下の非ヒト被験動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が少ないことにより、候補物質がストレス抑制剤であると判定することができる。本発明に係るスクリーニング方法における非ヒト被験動物並びに使用するサンプル及び抗IL-18抗体は、上述の本発明に係るストレス評価方法に準じたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高感度に動物のストレスを評価することができる。さらに、本発明によれば、非侵襲的サンプルを用いてもストレスを評価することができることから、簡便にストレス評価を行うことができる。また、ヒト、家畜動物、愛玩動物等の動物に対して有効なストレス抑制剤を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】拘束ストレス下におけるブタの唾液中のIL-18の変動を示すグラフである。
【図2】拘束ストレス下におけるブタの唾液中のコルチゾールの変動を示すグラフである。
【図3】ストレス抑制剤投与とブタの血清中のIL-18との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るストレス評価方法は、被験動物由来のサンプルにおいて、抗IL-18抗体を用いてIL-18を測定し、IL-18を指標(すなわち、ストレスマーカー)として動物のストレスを評価する方法である。評価は、非ストレス下の動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が多いことにより、被験動物がストレスを有すると判定することにより行われる。

【0019】
ここで、ストレスとしては、例えば感染ストレス、拘束ストレス、輸送(移動)ストレス、離乳ストレス、暑熱ストレス、寒冷ストレス、採血・ワクチン接種(注射)ストレス、密飼ストレス、絶食ストレス等が挙げられる。

【0020】
また、被験動物としては、哺乳動物が挙げられ、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ゾウ、ヤク、ミンク等の家畜動物及びイヌ、ネコ、フェレット、サルやモルモット、ハムスター、リス等のげっ歯類動物等の愛玩動物が挙げられる。好ましくはブタ、ウシ、ウマ、ヤギであり、特に好ましくはブタである。

【0021】
IL-18は、主に活性化マクロファージから産生され、T細胞やNK細胞からのインターフェロン-ガンマ(以下、「IFN-γ」という)の産生を誘導するサイトカインである(H.Okamura et al., Nature, 378, 88-91, 1995)。
IL-18は、例えばマウス(H. Okamura et al., Nature, 378, 88-91, 1995)、ヒト(S. Ushio et al., J. Immunol., 156, 4274-4279, 1996)、ラット(B. Conti et al., J. Biol. Chem., 272, 2035-2037, 1997)及びイヌ(F. Okano et al., J. interferon cytokine Res., 19, 27-32, 1999)について、それらのIL-18をコードする遺伝子の塩基配列が報告されている。

【0022】
また、本発明者により、ブタにおけるIL-18をコードする遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列が明らかにされた(Muneta Y. et al., Cytokine , 12, 566-572, 2000, Genbank公開データAB01003)。なお、ブタIL-18は、生体内で活性のない前駆体が変換酵素(IL-beta converting enzyme又はcaspase-1と呼ばれる)の作用により切断(ブタIL-18のアミノ酸配列の35-36のAsp-Tyr間でcaspase-1により切断)されて初めて活性を持つという特徴を有し、他のサイトカインが保有するシグナルペプチドを有していない。

【0023】
さらに、ウシ、ウマ及びヤギのそれぞれについても、IL-18をコードする遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列が報告されている(ウシ(Shoda, L.K., et al., J. Interferon Cytokine Res., 19, 1169-1177, 1999)、ウマ(Nicolson, L., et al., Immunogenetics, 50, 94-97, 1999)、ヤギ(Hosamani, M., et al., Eur. J. Immunogenetics, 32, 293-297, 2005))。

【0024】
本発明に係るストレス評価方法においては、先ず抗IL-18抗体及びサンプルを準備する。
抗IL-18抗体は、サンプルが由来する動物のIL-18に対して特異的に反応する抗体である。抗IL-18抗体は、上述の各動物のIL-18をコードする塩基配列又はアミノ酸配列に基づいて作製した組換えIL-18又はその断片を免疫原として動物に免疫し、単離・精製することで作製することができる。このように作製した抗IL-18抗体は、ポリクローナル抗体である。また、免疫した動物から得られる抗血清を抗IL-18抗体として使用してもよい。免疫する動物としては、例えば、ウマ、サル、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、ハト、ニワトリ等が挙げられる。

【0025】
一方、免疫した動物から得られる抗体産生細胞(リンパ節細胞、脾臓細胞等)とミエローマ細胞とを細胞融合させ、適宜選択を行うことで、ハイブリドーマを作製する。このように作製されたハイブリドーマは、抗IL-18モノクローナル抗体を産生することとなる。

【0026】
本発明においては、抗IL-18抗体として、抗ブタIL-18モノクローナル抗体が挙げられる(Y. Muneta et al., J. Immunol. Methods, 236, 99-104, 2000及びY. Muneta et al., J. Interferon Cytokine Res., 20, 331-336, 2000)。特に、ブタIL-18に反応し、ヒトIL-18との交差反応性を示さないモノクローナル抗体が挙げられる。当該モノクローナル抗体としては、例えば、特許第3230220号に記載の受託番号FERM P-17527、FERM P-17528、FERM P-17529で特定されるハイブリドーマにより産生されるものが挙げられる。また、特にブタ、ウシ、ウマ及びヤギ等が被験動物である場合には、抗IL-18モノクローナル抗体として、受託番号FERM P-17530、FERM P-17531及びFERM P-21672で特定されるハイブリドーマにより産生されるものも使用できる。受託番号FERM P-17527、FERM P-17528、FERM P-17529、FERM P-17530及びFERM P-17531で特定されるこれらハイブリドーマは、工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター)に寄託されている(寄託日:平成11年8月25日)。また、受託番号FERM P-21672で特定されるハイブリドーマは、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成20年(2008年)9月11日付けで寄託されている。なお、これらハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体は、ブタIL-18を抗原として用いて作製されたものであるが、ブタに限らず、ウシ、ウマ及びヤギ等に由来するIL-18にも交差反応性を示すものもある。

【0027】
抗IL-18抗体として、例えば、Serotec社、BenderMedsystem社等から市販されているものを使用してもよい。
また、抗IL-18抗体の免疫グロブリン(Ig)クラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgE等のいずれのクラスのものであってもよい。さらに、抗IL-18抗体は、一本鎖抗体、抗体フラグメント(FabフラグメントやF(ab')2フラグメント)等であってもよい。

【0028】
抗IL-18抗体は、検出方法に準じて適宜標識することができる。標識としては、例えば、酵素、蛍光色素、ビオチン等を使用することができる。酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ等が挙げられる。蛍光色素としては、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等が挙げられる。例えば、標識として酵素を使用する場合には、酵素の基質を加え、反応産物による発色や反応前後の吸光度の変化に基づいて抗原抗体複合体を検出することができる。また、標識として蛍光色素を使用する場合には、蛍光顕微鏡等により蛍光を観察することによって抗原抗体複合体を検出することができる。また、標識としてビオチンを使用する場合には、酵素標識アビジンを加え、次いで酵素の基質を加えて、反応産物による発色や反応前後の吸光度の変化に基づいて抗原抗体複合体を検出することができる。

【0029】
一方、本発明に係るストレス評価方法におけるサンプルとしては、例えば、組織、臓器、血液(血清)、リンパ液、胃液、唾液、尿、涙、汗、鼻水等の生物学的サンプルが挙げられる。特に、唾液、尿、涙、汗等の非侵襲的サンプルによれば、動物にストレスを与えることなく、サンプルを容易に採取できるので好ましい。

【0030】
本発明に係るストレス評価方法では、次いで、抗IL-18抗体を用いて、サンプル中のIL-18を検出する。抗IL-18抗体量やサンプルの希釈率等は、適宜決定することができる。サンプル中に含まれるIL-18の検出は、例えば、ウェスタンブロッティング及び免疫染色の組合せ、エンザイムイムノアッセイ、免疫組織化学染色、フローサイトメトリー等によって行うことができる。

【0031】
ウェスタンブロッティング及び免疫染色の組合せは、例えば、次のようにして行うことができる。サンプル又はサンプルから精製したタンパク質を例えばSDS-ポリアクリルアミド電気泳動により分離した後、電気的にPVDF膜等に転写する。洗浄及びブロッキング後、標識した抗IL-18抗体を反応させる(例えば、37℃で1時間)。次いで、免疫反応により生じた抗原抗体複合体を、標識を指標として検出する。これにより、サンプル中のIL-18を検出することができる。あるいは、標識した二次抗体を用いて、IL-18と抗IL-18抗体との抗原抗体複合体を検出することができる。次いで、検出されたバンド密度を計算することにより、IL-18量を定量することができる。当該バンド密度によれば、非ストレス下の動物由来のサンプルにおけるIL-18バンド密度と比較してIL-18バンド密度が大きいことにより、被験動物がストレスを有すると判定できる。

【0032】
エンザイムイムノアッセイは、例えば、次のようにして行うことができる。抗IL-18抗体を至適濃度に希釈して固相(例えば、市販のELISA用プレート)に固定化した後、洗浄及びブロッキングする。次いで、固相にサンプルを加えて反応させ、サンプル中のIL-18と抗IL-18抗体とを反応させる(例えば、37℃で1時間)。次いで、免疫反応によって生じた抗原抗体複合体に、標識した抗IL-18抗体(固相に固定化したものとは別の抗IL-18抗体が好ましい)を反応させ、標識を指標として抗原抗体複合体を検出する。これにより、サンプル中のIL-18を定量的に検出することができる。あるいは、標識した二次抗体を用いて、IL-18と抗IL-18抗体との抗原抗体複合体を検出することができる。なお、本発明者は、ブタIL-18のELISAによる測定法自体を既に確立している(Muneta Y. et al., J. Interferon and Cytokine Res., 20, 331-336, 2000)。当該エンザイムイムノアッセイによれば、標識を指標としてIL-18量を算出し、非ストレス下の動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が多いことにより、被験動物がストレスを有すると判定できる。

【0033】
免疫組織化学染色は、例えば、次のようにして行うことができる。サンプルとして被験動物から組織又は臓器を採取し、公知の方法(例えば、「病理組織標本の作り方(第6版)」、医学書院、慶応義塾大学医学部病理学教室編、p27-41(1986))によりパラフィン包埋組織切片を作製する。そして、該組織切片上に抗IL-18抗体を感作させた後、市販の免疫組織化学染色キット(例えば、ニチレイ社製シンプルステイン)を用いてIL-18を検出する。これにより、IL-18を組織切片(組織標本)上で検出することができる。当該組織切片上の検出によれば、非ストレス下の動物から作製された組織切片上で検出されたIL-18の面積と比較してIL-18の面積が大きいことにより、被験動物がストレスを有すると判定できる。

【0034】
フローサイトメトリーは、次のように行うことができる。蛍光色素標識した抗IL-18抗体とサンプルとを反応させ、サンプル中のIL-18と該抗IL-18抗体とを反応させる。次いで、免疫反応によって生じた抗原抗体複合体を、BD FACSCaliburTM等のフローサイトメーターに供し、蛍光色素を指標として抗原抗体複合体を検出する。これにより、サンプル中のIL-18を定量的に検出することができる。あるいは、蛍光色素標識した二次抗体を用いて、IL-18と抗IL-18抗体との抗原抗体複合体を検出することができる。当該フローサイトメトリーによれば、蛍光色素を指標として、非ストレス下の動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が多いことにより、被験動物がストレスを有すると判定できる。

【0035】
本発明に係るキットは、上述の抗IL-18抗体を含む動物ストレス評価用キットである。本発明に係るキットには、抗IL-18抗体以外に、例えば洗浄や希釈用のバッファー、標識二次抗体、標識が酵素の場合の発色用基質、使用説明書等を含むことができる。

【0036】
一方、本発明に係るスクリーング方法は、ストレス下の非ヒト被験動物に候補物質を投与する工程又は非ヒト被験動物に候補物質を投与した後、該非ヒト被験動物をストレスに供する工程と、該候補物質を投与した非ヒト被験動物由来のサンプルにおいて、抗IL-18抗体を用いてIL-18を測定する工程とを含み、IL-18を指標としてストレス抑制剤をスクリーニングする方法である。判定は、候補物質を投与していない、ストレス下の非ヒト被験動物由来のサンプルにおけるIL-18量と比較してIL-18量が少ないことにより、候補物質がストレス抑制剤であると判定することにより行われる。本発明に係るスクリーニング方法は、上述の本発明に係るストレス評価方法に準じてサンプル中のIL-18を測定することで、候補物質がストレス抑制剤であるか否かを判定することができる。

【0037】
ここで、ストレス抑制剤とは、ストレス負荷を抑制する物質を意味する。なお、ストレス下の非ヒト被験動物に候補物質を投与し、当該候補物質を投与していないストレス下の非ヒト被験動物由来のサンプル(陰性対照)におけるIL-18量と比較してIL-18量が少ないことにより、候補物質がストレス抑制剤であると判定した場合には、当該候補物質はストレス治療剤として使用することもできる。一方、非ヒト被験動物に候補物質を投与した後、該非ヒト被験動物をストレスに供し、当該候補物質を投与していないストレス下の非ヒト被験動物由来のサンプル(陰性対照)におけるIL-18量と比較してIL-18量が少ないことにより、候補物質がストレス抑制剤であると判定した場合には、当該候補物質はストレス予防剤として使用することもできる。

【0038】
候補物質としては、例えば核酸、ペプチド、タンパク質、合成化合物、微生物、微生物の培養上清、植物や海洋生物由来の天然成分、植物抽出物、動物組織抽出物等が挙げられる。

【0039】
本発明に係るスクリーニング方法における候補物質の投与は、適宜経口又は非経口投与経路により行うことができる。あるいは、候補物質を混ぜた飼料を給餌することで、候補物質を非ヒト被験動物に投与することもできる。

【0040】
本発明に係るスクリーニング方法により得られたストレス抑制剤は、当該方法に使用した非ヒト被験動物に限らず、他の動物(例えば、ヒトを含めた哺乳動物)に対しても効果を有し得る。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
ブタの唾液中のIL-18を測定することによる拘束ストレス評価
本実施例では、ブタを実験的拘束ストレス下に置いた後、当該ブタから採取した唾液におけるIL-18を測定することで、拘束ストレスを評価した。
【実施例】
【0043】
IL-18の測定にはELISAを使用した。ビオチン標識した検出用抗ブタIL-18抗体として受託番号FERM P-17528で特定されるハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体5-C-5を使用し、プレート固定化用抗ブタIL-18抗体として受託番号FERM P-21672で特定されるハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体11-H-5を使用した(特許第3230220号)。
【実施例】
【0044】
実験には、6~8週齢のランドレース種とヨークシャー種のF1去勢ブタを8頭使用し、4頭ずつ、4.8×3.7×2.4mの部屋で飼育した。飼育舎には南向きにガラス窓がついており、遮音、防塵のために常時閉じた状態とし、明かりは自然採光とした。8時と18時に育成用養豚飼料を使用基準に従い給餌し、飲水は常時供給とした。
【実施例】
【0045】
唾液は、4×5cmに切った脱脂綿に約50cmのタコ糸を結びつけたものを、ブタの顔の前に垂らし、ブタが脱脂綿を自発的に噛み付くことで採取した。ブタが2分間ほど脱脂綿を噛んだ後に、タコ糸を引っ張り、脱脂綿を回収し、直ちに10mlのプラスチックシリンジに脱脂綿を詰め込み、そのシリンジを50mlスピッツ管に入れ、氷上に置いた。その後、2500gで15分間遠心分離し、唾液サンプルを得た。得られた唾液サンプルは、測定時まで-30℃で保存した。全ての測定においては、測定直前に唾液サンプルを37℃の湯煎で解凍し、15000rpmで5分間遠心分離した後、上清のみを測定に使用した。
【実施例】
【0046】
ブタを実験部屋の角側に誘導し、側面と尻側から鉄製のケージを利用し、120×35×70cmの空間内に遮蔽し、拘束ストレスを与えた。この状態では、ブタの頭側と一側面がコンクリート壁に接し、反対側面と尻側は鉄製のケージで圧迫されているため、ブタは身動きをとることができない。実験開始時間は、9時とし、一回の拘束ストレスは2頭ずつとした。ブタを飼育部屋に接する同じ大きさの実験部屋に誘導し、まずブタの口腔を洗浄するために、唾液を採取した。この唾液は測定対象から除外した。次いで5分後、拘束直前に唾液を採取し、基準値とした。その後直ちに前述の方法で拘束を開始した。拘束時間は20分間とし、拘束開始10分後と20分後に唾液を採取した。また、拘束終了後直ちに、ブタを開放し、同室内を自由歩行させ、拘束終了10分後に唾液を採取し、ブタを飼育部屋に戻した。
以上のように、拘束開始直前・拘束開始10分後・拘束開始20分後・拘束終了10分後の計4回、唾液を採取し、IL-18を測定した。
【実施例】
【0047】
一方、別の日に対照として拘束を施行せずに同様の時間間隔で唾液採取を行った。拘束を施行しないこと以外は全て同じである。
【実施例】
【0048】
採取した唾液について、ELISAによるブタIL-18の検出・定量を行った。モノクローナル抗体11-H-5を10μg/mlになるように0.05M炭酸バッファー(pH9.6)に溶解し、96穴Maxisorp plate(Nunc社製)の各ウェルに100μlずつ分注し、4℃で一晩静置した。
【実施例】
【0049】
一晩の静置後、プレートを0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、ブロッキングバッファー(0.8%NaCl、0.01M Na2HPO4、0.02% KH2PO4・2H20、0.02% KCl、0.5% BSA、pH7.4)を各ウェルに100μlずつ分注して、室温で1時間静置し、ブロッキングを行った。
【実施例】
【0050】
ブロッキング後、プレートを0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、希釈バッファー(0.8%NaCl、0.01M Na2HPO4、0.02% KH2PO4・2H20、0.02% KCl、0.5% BSA、0.1% Tween 20、pH7.4)で2倍希釈した唾液サンプル100μlを各ウェルに分注して、室温で2時間静置した。
【実施例】
【0051】
2時間の静置後、プレートを0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、ビオチンで標識したモノクローナル抗体5-C-5を150ng/mlになるように上記希釈バッファーに溶解し、各ウェルに100μlずつ分注して、室温で1時間静置した。
【実施例】
【0052】
1時間の静置後、プレートを0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、HRP-streptoavidin(Biosource社製)を上記希釈バッファーで2500倍に希釈し、各ウェルに100μlずつ分注して、室温で1時間静置した。
【実施例】
【0053】
1時間の静置後、プレートを0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した後、ペルオキシダーゼの活性をTMB Peroxidase substrate(KPL社製)を基質として波長450nmにおける吸光度として測定した。
なお、対照として、非拘束下に置いたブタから採取した唾液についても同様の方法でIL-18を測定した。
【実施例】
【0054】
結果を図1に示す。図1において、縦軸は拘束0分におけるIL-18量を100%とした場合のIL-18増加率(%)である。一方、横軸は拘束ストレス下に置いた時間(分)である。
図1に示すように、拘束ストレス20分で非拘束との間に有意差があり(p<0.05)、IL-18が拘束ストレス時のストレスマーカーとして利用可能であることが明らかになった。【0055】
[比較例1]
ブタの唾液中のコルチゾールを測定することによる拘束ストレス評価
従来から利用されているストレスマーカーのコルチゾールを、ブタから採取した唾液において測定することで拘束ストレスを評価した。
【実施例】
【0056】
唾液中コルチゾール濃度を、ELISA法で測定した。まず抗マウスIgG(Vecter Laboratories Inc., USA)を0.1M炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)で10μg/mlに調整し、96穴イムノプレート(Nunc International, USA)に100μl/wellで加えた。その後、プレートを4℃で一晩振盪した。
【実施例】
【0057】
翌日、アッセイバッファー(0.1%ゼラチン及び0.1%Tween20含有PBS)にてプレートを洗浄し、1:10000に希釈した抗コルチゾールマウスモノクローナル抗体(Chemicon International, USA)を100μl/wellで加え、4℃で一晩静置した。
【実施例】
【0058】
翌日、上記アッセイバッファーにてプレートを洗浄した後、段階希釈(8~1024pg/100μl)したスタンダード用のコルチゾール(Hydrocortisones, Sigma Chemical Co., USA)並びに希釈した実施例1と同様の唾液サンプルをそれぞれ100μl/wellでプレートに入れ、さらに0.005μg/mlに調整されたHRP標識コルチゾール(Sigma Chemical Co., USA)を100μl/wellで添加した。
【実施例】
【0059】
2時間室温で振盪後、プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ発色反応を行った。発色には、ABTS(Sigma Chemical Co., USA)を0.05Mクエン酸-リン酸水素ナトリウム溶液で10μg/mlに調整し、30%過酸化水素水を10μl混和することで得られた溶液を使用した。当該溶液を50μl/wellずつ添加し、30分間反応させた。
【実施例】
【0060】
反応後、1N硫酸を75μl/wellで入れ、発色反応を停止した後、波長415nmにおける吸光度を測定し、コルチゾール濃度を算出した。
【実施例】
【0061】
結果を図2に示す。図2において、縦軸は拘束0分におけるコルチゾール量を100%とした場合のコルチゾール増加率(%)である。一方、横軸は拘束ストレス下に置いた時間(分)である。
【実施例】
【0062】
図1及び2から判るように、コルチゾール(図2)と比較して、IL-18(図1)は拘束終了後速やかに元のレベルに回復することから、ストレスマーカーとして優れていることが示唆された。
【実施例】
【0063】
[実施例2]
ストレス抑制剤投与とブタの血清中のIL-18との相関関係の評価
本実施例では、ブタに既知のストレス抑制剤を投与し、ストレス下に置いた後、当該ブタから採取した血清におけるIL-18を測定することで、ストレス抑制剤によるストレス抑制をIL-18を指標に評価できることを示す。
【実施例】
【0064】
本実施例で使用するストレス抑制剤は、既にストレス抑制剤としての効果が実証されている乳酸菌FERM P-19169である(特開2009-102292号公報)。なお、以下では、当該乳酸菌FERM P-19169を「乳酸菌」と称する。
【実施例】
【0065】
生後7~10日齢のブタ28頭を2群(乳酸菌投与群及び非投与群)に分けて、乳酸菌投与群には、33日間、代用乳(バースデーミルク伊藤忠(株))及び哺乳期子豚育成用飼料(モアアップ伊藤忠(株))に乳酸菌を飼料中3%となるように添加したものを給餌(投与)し、一方、乳酸菌非投与群には、乳酸菌を含まない同様の代用乳及び哺乳期子豚育成用飼料を給餌した。乳酸菌は、バケツ中で飼料に均等に混和し、自由給餌する。なお、給餌は、採食量により、1日に1~2回給与した。
【実施例】
【0066】
乳酸菌投与群及び非投与群をそれぞれ上述の給餌から15日目に離乳し、離乳ストレスに供した。さらに、上述の給餌から25日目に豚舎を移動させることで乳酸菌投与群及び非投与群をそれぞれ移動ストレスに供した。
【実施例】
【0067】
次いで、離乳前後、移動直後及び移動1週間後(計4回)、各ブタから採血し、血清中のIL-18を測定した。測定は、実施例1に記載のELISAによるブタIL-18の検出・定量に準じて行った。
【実施例】
【0068】
結果を図3に示す。図3において、縦軸は血清サンプルにおけるIL-18量(pg/ml)である。一方、横軸は各血清サンプルである。なお、数値は、各群の平均値+標準偏差である。
【実施例】
【0069】
図3に示すように、乳酸菌投与群では試験期間全体に渡って、非投与群に比べて、ストレスマーカーであるIL-18が低い傾向で推移している。また移動ストレスを受けた直後のブタでは、IL-18が急激に増加したが、乳酸菌投与群では非投与群に比べ、IL-18の上昇は有意に抑えられた。これらの結果は、当該乳酸菌のストレス抑制剤としての効果を、ブタIL-18の測定により定量的に示した結果であり、ブタIL-18のストレスマーカーとしての有用性を示すものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2