TOP > 国内特許検索 > 着果処理装置 > 明細書

明細書 :着果処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5652756号 (P5652756)
公開番号 特開2010-094127 (P2010-094127A)
登録日 平成26年11月28日(2014.11.28)
発行日 平成27年1月14日(2015.1.14)
公開日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発明の名称または考案の名称 着果処理装置
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
A01C  23/00        (2006.01)
A01G   7/06        (2006.01)
FI A01G 7/00 603
A01C 23/00 G
A01G 7/06 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2009-217070 (P2009-217070)
出願日 平成21年9月18日(2009.9.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年3月20日 農業機械学会発行の「第67回農業機械学会年次大会講演要旨」に発表
優先権出願番号 2008239772
優先日 平成20年9月18日(2008.9.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2013-015700(P2013-015700/J1)
審査請求日 平成24年7月17日(2012.7.17)
審判請求日 平成25年8月13日(2013.8.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】黒崎 秀仁
【氏名】大森 弘美
【氏名】高市 益行
【氏名】鈴木 克己
【氏名】中野 明正
個別代理人の代理人 【識別番号】110000383、【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
参考文献・文献 特開2009-55829(JP,A)
調査した分野 A01G 7/00
A01G 7/06
A01C 23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
作物を撮影するカメラ部と、作物にホルモン剤を散布する散布部と、前記カメラ部及び前記散布部が取付けられた走行部と、前記カメラ部、前記散布部及び前記走行部の動作を制御する制御部とを有する着果処理装置であって、
前記カメラ部と前記散布部は、前記着果処理装置に対して上下左右動自在に設けられ、
前記制御部は、前記カメラ部によって撮影された画像から前記作物の花の位置を特定する画像処理手段と、
該画像処理手段によって特定された前記花の位置に基づいて決定された場所に散布部を移動させる移動処理手段とを有することを特徴とする着果処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記カメラ部によって撮影された画像に複数の花の位置を特定した場合に、互いの花の位置が一定の距離以内のとき、前記複数の花を同一花房とみなして前記花房の位置を特定し、
前記移動処理手段は、該画像処理手段によって特定された前記花房の位置に基づいて決定された場所に散布部を移動させることを特徴とする請求項1に記載の着果処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、ホルモン剤を散布した位置を記憶する記憶手段を有し、前記決定された場所が前記記憶手段に前記ホルモン剤を散布した位置として記憶されているときは散布を実行しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着果処理装置。
【請求項4】
前記制御部と通信手段によって接続可能なサーバを有し、該サーバはホルモン剤を散布した位置を記憶する記憶手段を有し、前記決定された場所が前記記憶手段にホルモン剤を散布した位置として記憶されているときは前記制御部に対しホルモン剤の散布を許可しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着果処理装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記カメラ部によって撮影された画像において、前記カメラ部からの距離が所定距離以上の部分を除去することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の着果処理装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は撮影された画像からHSV表色系における色相によって花を識別することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の着果処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、作物の着果処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の農業従事者の減少や高齢化を受け、農作業の低コスト化及び省力化を図るべく農作物に対する栽培の機械化、自動化が重要な課題となっている。例えば、トマトの収穫作業を自動化しようとした場合には、果実単位で収穫すると作業が繁雑となるため、複数の果実がまとまって生る房単位での収穫が望ましい。しかし、このためには同一時期に同一果房の全果実が収穫の適正時期となっていなければならず、複数の花がまとまって咲く花房単位での着果の斉一性と確実性を確保する必要がある。
【0003】
従来のトマトの着果処理には、例えば特許文献1に記載されるように作物に繋げられたピアノ線を振動させることによって、作物の花を振動させて花粉を飛散させる装置があった。しかし、この場合には、開花しなければ受粉を行い得ないので、花房内の花が開花した順番に受粉が行われ、着果時期にズレが生じていた。そのため、同一花房内で収穫時期が異なってしまうため房単位での収穫が困難であった。また、花房内の全ての花に着果させるためには複数回処理しなければならなかった。また、例えばトマトは気温が30℃以上の環境では、高温障害が発生し花粉の機能が低下するという問題があり、夏季には使用ができなかった。
【0004】
ところで、着果処理には上述した受粉によるもののほかに、受粉の有無とは無関係にオーキシン剤と呼ばれるホルモン剤によって着果させる方法がある。例えばトマトの場合にはパラクロロフェノキシ酢酸を花房に散布することで行うが、この方法は受粉の成否に関係なく開花後の花も開花直前の花も着果が可能であり、1回の処理で着果できるため斉一性向上に有効である。また、このホルモン剤による着果処理は、季節を問わず一年中使用することができるため、受粉による着果が困難な夏季にも使用ができる。
【0005】
このようなホルモン剤の散布に関し、特許文献2には移動式栽培装置として、レールによって吊り下げられる移動式の容器に栽培されている植物に自動でホルモン剤を散布することで、花粉が少ない時期に受粉の促進をする装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には汎用の液体散布装置として、上下動可能な昇降体と、該昇降体に連動して上下動する液体散布体とが自動走行車に搭載されており、広範囲に液体散布が可能な発明が記載されている。
【0007】

【特許文献1】特開2002-112653号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2000-209949号公報(請求項1、[0029])
【特許文献3】特開平06-217672号公報(請求項1、請求項6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ホルモン剤の成長点への散布や重複散布は、植物の生理障害を引き起こすため、成長点を含む幼葉等にかからないよう花房単位での処理や、一回のみの散布処理とすることが望ましい。特許文献2及び3に記載の発明では、単に自動で散布を行うだけであるため花房以外の幼葉等への散布や重複散布の虞がある。
【0009】
そこで、本発明は上記欠点を解決し、作物の花房に対してのみ自動でホルモン剤を散布する着果処理装置を供することを目的とする。
また、重複処理を防止し、同一花房に対し一回のみの散布処理を行う着果処理装置を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明の着果処理装置は、作物を撮影するカメラ部と、作物にホルモン剤を散布する散布部と、前記カメラ部及び前記散布部が取付けられた走行部と、前記カメラ部、前記散布部及び前記走行部の動作を制御する制御部とを有する着果処理装置であって、前記カメラ部と前記散布部は、前記着果処理装置に対して上下左右動自在に設けられ、前記制御部は、前記カメラ部によって撮影された画像から前記作物の花の位置を特定する画像処理手段と、該画像処理手段によって特定された前記花の位置に基づいて決定された場所に散布部を移動させる移動処理手段とを有することを特徴とする。
また、前記画像処理手段は、前記カメラ部によって撮影された画像に複数の花の位置を特定した場合に、互いの花の位置が一定の距離以内のとき、前記複数の花を同一花房とみなして前記花房の位置を特定し、前記移動処理手段は、該画像処理手段によって特定された前記花房の位置に基づいて決定された場所に散布部を移動させることを特徴とする。
また、前記制御部はホルモン剤を散布した位置を記憶する記憶手段を有し、前記決定された場所が前記記憶手段に前記ホルモン剤を散布した位置として記憶されているときは散布を実行しないことを特徴とする。
また、前記制御部と通信手段によって接続可能なサーバを有し、該サーバはホルモン剤を散布した位置を記憶する記憶手段を有し、前記決定された場所が前記記憶手段にホルモン剤を散布した位置として記憶されているときは前記制御部に対しホルモン剤の散布を許可しないことを特徴とする。
また、前記画像処理手段は、前記カメラ部によって撮影された画像において、前記カメラ部からの距離が所定距離以上の部分を除去することを特徴とする。
また、前記画像処理手段は撮影された画像からHSV表色系における色相によって花を識別することを特徴とする。
【0011】
着果処理装置に設けられたカメラ部から制御用コンピュータに映像が取り込まれると、制御用コンピュータの画像処理手段によって花房の位置が算出される。算出された花房の位置情報は、制御用コンピュータのデータテーブル又は外部サーバのデータテーブルと比較され、該花房に対し既にホルモン剤の散布が行われたか否かが判定される。散布が行われていない場合には散布部が花房の位置に移動し散布が実行されてデータテーブルが更新される。散布が既に行われている場合には散布が行われず、その株に対する処理が終了し、次の株に移動する。このようにして着果処理装置は畝間を自走しながら開花した花房を自動的に探索し、ホルモン剤のスポット散布を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明による着果処理装置によれば、画像処理によって作物画像から花のみを抽出することができ、この抽出された花の位置に散布部を移動できるので作物の花房に対してのみ自動でホルモン剤を散布することができる。
また、一度散布した花房の位置は記憶され次回以降の散布で除外されるため、同じ花房に対する複数回の散布が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による着果処理装置の側面の模式図である。
【図2】本発明による着果処理装置の側面の模式図である。
【図3】(a)トマトの画像に対する花(破線)と背景(実線)とのHSV表色系による色相(H)のヒストグラムである。(b)トマトの画像に対する花(破線)と背景(実線)とのHSV表色系による彩度(S)のヒストグラムである。(c)トマトの画像に対する花(破線)と背景(実線)とのHSV表色系による明度(V)のヒストグラムである。
【図4】本発明による着果処理装置の動作を表す模式図である。
【図5】本発明による着果処理装置を制御する制御用コンピュータの動作を表すフローチャートである。
【図6】図5の制御用コンピュータの動作における画像処理を表すフローチャートである。
【図7】図5の制御用コンピュータの動作における画像処理の他の実施例を表すフローチャートである

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本発明による着果処理装置をトマトの着果処理を例にさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に本発明に係る着果処理装置1の側面の模式図を示す。着果処理装置1は、作物を撮影するためのカメラ3とホルモン剤を散布するための散布部5とが設けられた可動台7を有しており、該可動台7は垂直に設けられた上下動自在の電動シリンダである上下動シリンダ9に上下動自在に設けられ、該上下動シリンダ9は作物に対して左右動自在(進行方向に対して前後動自在)の電動シリンダである左右動シリンダ11に左右動自在に設けられる。このため、カメラ3及び散布部5を備えた可動台7は上下動シリンダ9及び左右動シリンダ11の可動範囲内において上下左右動自在となる。なお、散布部5にはホルモン剤用のタンク(図示省略)が設けられる。また、ローラ12がガイドレール14に沿って動くため、左右動シリンダ11にぶれが生じ難くなり安定して動作することができる。
【0016】
なお、図示例ではカメラ3及び散布部5を備えた可動台7が上下軸(上下動シリンダ9)及び左右軸(左右動シリンダ11)の2軸によって作物に対して上下左右動自在に動作する例を示したが、例えば、この2軸に対してさらに1軸追加して作物に対する散布部5の距離を制御できるようにしても構わない。この場合、例えば可動台7に対して前後動自在の電動シリンダを設け、該電動シリンダにカメラ3及び散布部5を設けることで、カメラ3及び散布部5が上下前後左右動自在となり、散布精度が向上し、また散布部5が移動する際に作物に干渉しないようにすることができる。また、例えばカメラ3及び散布部5をいわゆるロボットアームの先端に設けることによって、上下前後左右動自在とすることとしても良い。
【0017】
上記左右動シリンダ11は昇降自在に設けられた手動のパンタアーム式昇降装置13の昇降台13aに載設されており、上下動シリンダ9の可動範囲外に可動台7を移動させる際にはこの昇降装置13が用いられる。昇降装置13は、昇降台13aとパンタアーム13bと基台13cとからなり、該基台部分が車体部15の上面に載設される。該車体部15には、作物の株が複数栽培される畝間に敷設されたレール20上を走行するための車輪17が設けられ、該車輪17はバッテリーに接続されたモータ(図示省略)によって動力を得る。なお車体部15には着果処理装置1を制御するための制御用コンピュータ19が搭載される。
【0018】
昇降台13aが最下位置の場合において、可動台7が上下動シリンダ9の最下部にあるときの散布部5の高さh1が例えば地上から約90cmに設定される。そして、上下動シリンダ9の可動範囲は例えば約30cmであり、左右動シリンダ11の可動範囲は例えば約60cmである。また、昇降台13aの可動範囲は例えば上下に約40cmである。このとき、昇降台13aが最上位置の場合において、上下動シリンダ9の最上部に可動台7があるときの散布部5の高さh2は地上から約160cmとなる。このように散布部5の地上からの高さは90cm~160cmまで対応可能であり、これはトマトを低段密植栽培した際の第1段花房から第3段花房までに対応できるものである。なお、上下動シリンダ9及び左右動シリンダ11の位置は制御用コンピュータ19によって制御されており、昇降台13aの高さは使用者によって制御用コンピュータに入力されるようになっている。昇降台13aの高さ情報並びに上下動シリンダ9及び左右動シリンダ11の位置情報によってカメラ3の位置が特定される。なお、図1は昇降台13aが最下位置のときに可動台7が上下動シリンダ9の最下部であって左右動シリンダ11の最左部にある様子を示す。また図2は昇降台13aが最上位置のときに可動台7が上下動シリンダ9の最上部であって左右動シリンダ11の最右部にある様子を示す。
【0019】
車体部15の移動制御は制御用コンピュータ19によって行われる。レール20間において各株の前には磁性体(図示省略)が設けられており、これが車体部15に設けられた磁気センサ(図示省略)によって読み取られる。これにより制御用コンピュータ19には着果処理装置1がどの株の前に位置しているかが記録される。
【0020】
制御用コンピュータ19は花房に対するホルモン剤散布の状況を管理するためのデータテーブルを有する。このデータテーブルは株のID、株の位置情報、花房の位置情報及びホルモン剤散布の有無を構成データとして有する。なお、ホルモン剤散布の有無は、処理済みフラグを設定しておき「0」が格納されていれば未処理、「1」が格納されていれば処理済みとすれば良い。
【0021】
カメラ3の解像度は画像処理の高速化のために低く設定されており、例えば720×480pixelとされる。そして、撮影された映像は例えばIEEE1394をインターフェースとして制御用コンピュータ19に取り込まれる。
【0022】
取り込まれた画像から制御用コンピュータ19によって花が識別されるが、これは予め設定される閾値によって行われる。ここで、花の識別に用いられる閾値の決定方法について説明する。まず、使用者が着果処理装置1のカメラ3を用いて花が含まれた映像を撮影し、表示装置(図示省略)に表示された映像を参考にして閾値の決定に利用するための静止画像を抽出する。すると、この静止画像は制御用コンピュータ19のエッジング処理によって輪郭線が抽出され、該輪郭線で囲まれた各領域がラベリングされる。
【0023】
次いで使用者は輪郭線が書き込まれた静止画像から花に対応する領域を全て選択する。すると、選択された領域のHSV表色系(色相(H)=0~360、彩度(S)=0~255、明度(V)=0~255)における色相(H)を花の色相としてヒストグラムが生成され、それ以外の領域の色相を背景の色相としてヒストグラムが生成される。そして、これら2つのヒストグラムが比較され上限値及び下限値からなる最適の閾値が算出される。
【0024】
図3はトマトの株に対する花部分及び背景部分のHSV表色系の各成分のヒストグラムを示したグラフである。(a)は色相(H)のヒストグラムであり、横軸が色相を0~360の範囲で表し、縦軸が各色相のしめる面積の割合(%)を表す。(b)が彩度(S)のヒストグラムであり、横軸が彩度を0~255の範囲で表し、縦軸が各彩度のしめる面積の割合(%)を表す。(c)が明度(V)のヒストグラムであり、横軸が明度を0~255の範囲で表し、縦軸が各明度のしめる面積の割合(%)を表す。(a)乃至(c)は全て破線が花、実線が背景を表す。このヒストグラムから分かるように、トマトの場合には花部分と背景部分とが色彩(H)によって最も明確に分離できる。トマト以外の作物の場合には色彩によって花部分と背景部分とが分離可能かどうかヒストグラムから判断しなくてはならないが、通常、花部分は目立つような色彩をしているため分離可能である。
【0025】
閾値の設定または変更は、品種による花の色相の違いや栽培環境による背景色の違いに対応するために適宜行うことができる。また、閾値は複数登録することが可能であり、状況や品種の違いによって使い分けることができる。例えば光源の状態によって複数の閾値を登録した場合において、光源の状態と閾値を関連づけておけば、光源の状態をスペクトル等によって検知するセンサを設けることで閾値の設定を自動で切り替えることができる。このようにすれば、例えば太陽高度の変化や温室内での光源の種類によって、自動で閾値が切り替わることになり、常に最適の状態で識別作業を行うことができる。
【0026】
次に図4乃至図6を参照しながら着果処理装置1の動作を説明する。図4(a)に示すように、着果処理装置1は、畝間に敷設されたレール20上において、予め上下動シリンダ9の中間の位置が開花段の平均の高さHになるように昇降装置13によって合わせられる。このとき使用者は昇降台13aの高さを制御用コンピュータに入力する。自動走行開始後は図4(b)に示すように、着果処理装置1が自走して株30の前までくると、磁気センサによってレール20間の磁性体の磁界が読み取られる。すると制御用コンピュータ19によって一旦停止するように走行が制御され、停止位置が記憶される(ステップS100、S101)。
【0027】
次いで、可動台7が上下動シリンダの中央に移動して(ステップS102)、カメラ3によって第1の静止画像が撮影される(ステップS103)。その後、可動台7は上又は下方向に所定距離、例えば5cm程度移動して(ステップS104)、カメラ3によって第2の静止画像が撮影される(ステップS105)。
【0028】
この第1の静止画像と第2の静止画像とが画像処理され散布の目標が決定される(ステップS106)。以下、詳しく説明する。撮影された第1の静止画像と第2の静止画像とがステレオマッチング処理されることによって、撮影された各物体までの距離が計算され、一定の距離以上離れていると判断された部分が除去される(ステップS200,S201)。これにより、対象となる株30と明らかに距離の異なる遠景部分が除去されるため、以降の画像処理が高速化されるとともに花の認識率が高くなる。なお、一定の距離とはカメラ5から株30までの距離より余裕を持たせた距離であり、例えばカメラ5から株30の中心までの距離の2倍程度である。
【0029】
次いで、RGB表色系によるフィルタ処理において、予め設定されている花の色と明らかに異なる色の部分が除去される(ステップS202)。例えばトマトの花は黄色が主な色であるから青(B)の比率が高い部分等が除去される。このようにすることで以降の処理が高速化される。なお除去される色は花の色の補色として定義づけても良い。
【0030】
次に画像の色情報がRGB表色系からHSV表色系に変換される(ステップS203)。そして、予め設定されている閾値によって、対象となる花30aとそれ以外の部分とで2値化される(ステップS204)。これによって花であると判定された領域は、領域ごとにラベリングされ、該ラベリングされた領域ごとに面積が算出される(ステップS205)。ここで、面積が一定以下の場合は、遠方の花やその他のノイズであるとして除去される。そして、画像における花30aの面積の重心位置が算出される(ステップS206)。
【0031】
次いで、花30a同士が一定の距離以内、例えば花30a同士の重心の距離が5cm以内にあるときは同一花房30bであると判定され(ステップS207)、同一花房30b内の花30aの面積とカメラの位置情報をもとに花房30bの重心位置が算出される(ステップS208)。この重心位置の情報と前述した車体部15の停止位置の情報とからなる花房30bの位置情報は一旦制御用コンピュータ19に記憶され、散布の目標として設定される(ステップS209)。そして、目標に設定された位置情報は制御用コンピュータ19のデータテーブルの情報と比較され、ホルモン剤が散布済みであるか否かが判定され、散布済みであると判定された位置情報が目標設定から除去される(ステップS107)。判定後は、目標が残っているかが判定され(ステップS108)、目標が残っていれば、つまり花房30bの位置情報がデータテーブルに登録されていないか、登録されていても散布済みフラグとして「0」が格納されていれば、上下動シリンダ9及び左右動シリンダ11によって重心位置に散布部5を移動させ散布を実行する(ステップS109,S110,図4(b)参照)。なお、ステップS108において、目標がなければ使用者に確認を促すための警告記録を行い後述のステップS115に進む。
【0032】
散布を実行すると、この花房30bの位置情報を散布済み花房として記録すべくデータテーブルが更新される(ステップS111)。花房30bの位置情報が未登録であった場合には、株のID、株の位置情報、花房の位置情報及びホルモン剤処理済みフラグ「1」を登録し、既に位置情報が登録されている場合には、ホルモン剤処理済みフラグのみを「0」から「1」に更新する。これにより、次回以降(例えば後日)の動作において、この花房30bが認識されたとしてもデータテーブルとの比較により散布済みであると判定されるので散布が実行されることがなく、重複散布が防止される。
【0033】
散布の実行後は、設定目標の全てに散布したかが判定され、目標が残っていればステップS109に戻る(ステップS113)。散布は探索範囲内に未散布の花房がなくなるまで続けられ、全ての花房に散布をしたと判定されると走行部15が走行を再開し、株31,32,33…と順番に同様の処理が行われる(ステップS113,S115,図4(c)参照)。そして、全ての株の処理が終了すると着果処理装置1は予め設定された場所において動作を停止する。
【0034】
なお、データテーブルにおいて花房の位置情報を「点」として登録すると、作物の生育状態によって日々変化する花房の位置に対応することができず、重複散布が行われる可能性がある。そこで、データテーブルにおける花房の位置情報は重心位置を中心として例えば半径5cm程度の幅を持たせることができる。これにより、日々の花房の位置変化は誤差として処理されるので重複散布されることがない。また、誤差として処理を行った場合には最新の位置情報に更新されるようにすれば、常に生育状態に対応していることになる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、着果処理装置1の各サイズは上記したものに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0036】
また、閾値の設定または変更を適宜行うことができる例を示したが、例えば自動又は手動で閾値を補正できるようにしても良い。例えば、標準白色板や色見本を用意しておき、スタート時又は任意の地点において上記標準白色板や色見本をカメラで写して閾値を補正しても良い。標準白色板を写すことにより光源の色温度が測定でき、これから光源のRGB比がどのように偏っているかが算出できるので閾値の補正ができる。また、予め色彩が分かっている色見本であれば本来の色彩と撮影時の色彩とから光源の状態を推定して閾値の補正をすることができる。また、着果処理装置に光センサを内蔵し、色温度や照度を測定して閾値を補正しても良いし、外部サーバから光環境に関する情報や遮光の有無を受信して閾値を補正しても良い。さらに、上記手法を複合的に使用して補正しても構わない。
【0037】
また、例えば晴天の日中などに入射光が過剰でカメラに内蔵された絞りの機能では補正しきれないというように、光環境が適切でないと判断される場合には、例えばフィルタ等によってカメラのレンズを覆い、入射光を制限することとしても構わない。このようにフィルタを用いる場合には、例えばND(Neutral Density)フィルタ、PL(Polarized Light)フィルタ、色温度変更フィルタ等を、状況に応じて作業者が手動でレンズに装着することができる。また、着果処理装置に光センサが内蔵されている場合には、光センサによって得られる照度や色温度等の光環境を制御部によって判定して、作業者に光環境を通知してフィルタの装着を促したり、自動的にレンズをフィルタによって覆う機能を追加したりすることで、入射光を最適な状態に制御することができる。
【0038】
また、ステップS107のステレオ照合による背景除去を行うために、カメラ3を移動させ2地点で画像の撮影を行ったがこれに限られず、例えばカメラ3を回転させ、別視点から撮影しても良いし、カメラを2台用いても良い。
【0039】
また、ステップS106の画像処理において、最初にステレオマッチングを行ったが、例えば、図7に示すようにしても良い。すなわち、第1の静止画像と第2の静止画像とが処理用バッファに転写され(ステップS300)、次いで、RGB表色系によるフィルタ処理において、予め設定されている花の色と明らかに異なる色の部分が除去される(ステップS301)。次に画像の色情報がRGB表色系からHSV表色系に変換され、予め設定されている閾値によって、対象となる花30aとそれ以外の部分とで2値化される(ステップS302)。これによって花であると判定された領域は、領域ごとにラベリングされ、該ラベリングされた領域ごとに面積が算出され、結果が記録される(ステップS303)。第1の静止画像及び第2の静止画像の処理が終了したと判定されると(ステップS305)、処理後の第1の静止画像及び第2の静止画像によってステレオマッチング処理が行われる(ステップS306)。処理後の第1の静止画像及び第2の静止画像からは花と明らかに異なる色が除去されているので、花の遠近のみを比較し、一定の距離以上離れていると判断された遠方の花が除去される(ステップS307)。このステレオマッチング処理を行った画像は記録され、花同士が一定の距離以内にあるときは同一花房であると判定され(ステップS309)、同一花房内の花の面積をもとに花房の重心位置が算出、記憶され、散布の目標として設定される(ステップS310)。このように、時間のかかるステレオマッチング処理を花に対してのみ行うことで、処理の高速化を図ることができる。
【0040】
また、花房の位置情報として、花の面積から求められる重心を利用したが、花房内の花に満遍なくホルモン剤が散布される位置であれば良く、例えば各花の重心を結んだ線によって形成される面積の重心であっても良い。また、花の識別手段として色相を利用したが、これに限られず、例えば形状で識別可能であればこれを利用しても良い。また、花房の重心位置に散布部を移動させる制御としたが、重力の影響によりホルモン剤が放物線状に散布され花房にかかりにくい場合には、重心位置より上方に散布部を移動させても良い。
【0041】
また、認識された花がホルモン剤散布済みでなければ一様に散布を実行する例を示したが、これに限られない。例えば、同一花房内であると判定された花の面積を算出し面積が小さすぎる花がある場合には蕾あるいは開花初期と判定し花房全体への散布を実行しない制御や、開花面積、開花日数、積算温度等からホルモン剤の散布に最適な時期に散布を実行する制御を行っても良い。
【0042】
また、花房の重心位置のみにホルモン剤を散布する構成としたが、これに限られない。例えば、花房の重心位置のみにホルモン剤を散布しただけでは、花房全体にホルモン剤が散布されない程度に花房の花が広く分布している場合には、重心位置だけでなく花房全体にホルモン剤が散布されるように複数箇所に散布部を移動させ散布を行うように制御しても良い。
【0043】
また、着果処理装置1の移動制御をレール20と磁性体とによって行う例を示したが、自走型であり現在位置が把握できれば良く、例えばケーブル誘導式としても構わない。また、昇降装置13を手動式とし高さ情報を使用者が制御用コンピュータに入力する例を示したが、例えば、センサを取り付けて高さを自動で読み込むようにしても良い。また、制御用コンピュータによって昇降装置13を制御しても良い。この場合、カメラの画像から開花段の平均の高さを算出して自動で高さ調節を行うことが可能である。
【0044】
また、1株ごとに着果処理装置を移動させる例を示したが、例えば、左右動シリンダの可動範囲が複数の株をカバーできる場合には、1株処理するごとに移動するのではなく、左右動シリンダの可動範囲内にある複数の株を処理した後に移動することによって着果処理を効率化しても良い。
【0045】
また、着果処理装置が使用される作物はトマトに限られず、例えばキュウリ、スイカ、ナス、カボチャ、しろうり、メロン、ズッキーニ等様々な作物に使用できる。また、オーキシン剤以外のホルモン剤を使用しても良く、例えばジベレリン剤を使用した場合にはブドウ、ブルーベリー、グミ、アセロラ等に使用できる。また、トマト以外の作物に利用する場合において、対象とする作物が房で着果する作物でないときは花房を形成しないため、検出された花の重心位置にホルモン剤を散布すれば良いので花房の重心位置の算出を行わない構成としても良い。
【0046】
また、ホルモン剤の重複散布を防止すべくデータベースとの比較を行う構成としたが、これに限られない。例えば、ホルモン剤の重複散布が禁止されていない作物の場合には、データベースとの比較を行わない構成としても良い。また、ホルモン剤を複数回にわたって散布したい場合には、何日間隔に散布するか、合計何回散布するか等設定できるように構成しても良い。このように重複散布を防止する機能は、使用者によって設定を適宜変更できることが好ましい。
【0047】
また、位置情報や散布状況を制御用コンピュータ19にデータテーブルとして蓄積する例を示したが、例えば外部に無線通信によって接続可能なサーバを設け、該サーバに位置情報やホルモン散布の状況を記憶させても良い。この場合、サーバに蓄積された情報はデータベースとして着果処理装置以外にも利用可能な構成とすることができる。例えば、果実認識手段を設けた制御用コンピュータを有する収穫装置にも利用可能な構成とした場合、収穫装置はホルモン剤散布からの日数と果実の色や大きさなどとから総合的に収穫時期を判断することができる。
【0048】
また、着果処理装置に光源を搭載させても良い。このようにすることで夜間にも動作が可能となり、また、昼間でも陰に入った花房が認識できない場合は搭載された光源を点灯することで補光を行い、探索精度を上げることが可能となる。
【0049】
また、カメラ3を可動台7に取り付け、上下左右又は上下前後左右動自在に動作する例を示したが、カメラ3の取付位置はこれに限られることなく、花房が識別可能であれば着果処理装置1の様々な位置に取付可能である。例えば、上下動自在の位置、左右動自在の位置及び前後動自在の位置並びにこれらの動作の組合せが可能な位置等に取付可能であり、この取付位置は対象とする作物によって適宜選択することができる。また、例えば、カメラを車体部に取り付けても良く、この場合にはカメラ位置が固定されるため花房が識別可能となるように広角なカメラを用いて全体を見渡すことで花房を発見することが好ましい。さらに、複数のカメラを異なる位置に取り付けることによって、より正確に花房の位置を認識できる構成にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…着果処理装置、3…カメラ、5…散布部、7…可動台、9…上下動シリンダ、
11…左右動シリンダ、12…ローラ、13…昇降装置、13a…昇降台、
13b…パンタアーム、13c…基台、15…車体部、17…車輪、
19…制御用コンピュータ19、20…レール、30,31,32,33…株、
30a…花、30b…花房
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6