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明細書 :抗結核化合物、及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5391721号 (P5391721)
公開番号 特開2009-242376 (P2009-242376A)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月15日(2014.1.15)
公開日 平成21年10月22日(2009.10.22)
発明の名称または考案の名称 抗結核化合物、及びその利用
国際特許分類 A61K  31/7008      (2006.01)
A61P  31/06        (2006.01)
FI A61K 31/7008
A61P 31/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 40
出願番号 特願2009-037185 (P2009-037185)
出願日 平成21年2月19日(2009.2.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/128/web/ 掲載日 :平成20年2月1日
優先権出願番号 2008059903
優先日 平成20年3月10日(2008.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年1月30日(2012.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
発明者または考案者 【氏名】瀧井 猛将
【氏名】堀田 康弘
【氏名】小野嵜 菊夫
【氏名】千葉 拓
【氏名】森 雅美
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】福永 千尋
参考文献・文献 Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas,1969年,Vol.88, No.3,p.241-253
調査した分野 A61K 31/7008
A61P 31/06
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の化学式(1)又は(2)で表される抗結核化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する抗結核薬
【化1】
JP0005391721B2_000011t.gif
式中、R1、R2は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R3はS又はOであり、R4は以下の化学式(3)又は(4)で表される基である;
【化2】
JP0005391721B2_000012t.gif
式中、R5、R6は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R7はS又はOである。
【請求項2】
前記抗結核化合物が、以下の化学式(5)~(8)のいずれか一つで表されることを特徴とする、請求項1に記載の抗結核薬
【化3】
JP0005391721B2_000013t.gif

【請求項3】
抗結核薬を製造するための、請求項1又は2に記載の抗結核化合物の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は抗結核活性を示す化合物及びその利用(抗結核薬、結核の予防や治療など)に関する。
【背景技術】
【0002】
結核は、世界中で、毎年800万人の新規の患者が発生し、200万人以上が死亡している再興感染症である。1980年代半ば以降、特に大都市部における公衆衛生上の諸問題(失業者、ホームレス、スラム化)の深刻化を背景に、都市部で漸増傾向に転じている。増加の理由として、化学療法の失敗例に起因する多剤耐性結核(MDR-TB)の出現が挙げられている(明細書の最後に示す参考文献1~8)。MDR-TB に対しては1994年に打ち出されたDOTS(Directly Observed Treatment, Short Course)戦略が世界的に著しい成果を挙げている。そして近年、MDR-TBで、第二選択薬であるカナマイシン(KM)や、キノロン系薬剤にも耐性を示す広範囲薬剤耐性結核菌(Extensively Drug-resistant TB; XDR-TB)、あるいは超多剤耐性結核菌と呼ばれる菌群が出現し、世界的な関心事になっている(参考文献9、10)。WHOは2006年10月に、この問題について専門家会議を開催し、XDR-TBをMDR-TBで、フルオロキノロン(FQ)に耐性、かつアミカシン(AMK)、カプレオマイシン(CPM)、KMなど注射可能な薬剤の一種以上にも薬剤耐性をもつ結核菌と定義している(参考文献11、12)。一方、現在わが国の抗酸菌症の約2割を占める非結核性抗酸菌Mycobacterium avium-intracellulare complex(MAC)感染症は、薬剤感受性(MIC値)・毒力ともに非常に広範囲で幅のある性状を示し、既存の抗結核薬に対しては自然耐性を有するため、new macrolide (Clarithromycin)以外に有効な治療法を欠いている(非特許文献1(参考文献8))。
【0003】
新しい抗菌薬の開発と導入は、結核化学療法の治療の短縮や多剤耐性結核の治療、薬剤耐性菌の発生防止、治療完了率の向上、総医療費の削減をはじめ結核対策において多くの効果が期待できる。結核治療薬の開発は、1944年の米国でのストレプトマイシン(SM)に始まり、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)を始めとする抗結核薬が開発され結核医療を支えてきた(非特許文献2(参考文献13))。日本では、従来11種の薬剤が使用されてきた。一方でFQは保険適用が認められていないことやCPMの薬価基準からの削除、CSが製造中止されるなど使用できる薬剤が減少しているのが現状である。さらに、1965年のRFPの開発を最後に、過去40年、新規の化学構造と新たな作用機序を有する強力な新薬は1剤も開発されることなく現在に至っている(非特許文献3(参考文献14))。
【0004】
慢性の呼吸器感染症である結核に対する新しい抗結核薬は、細胞内移行性と肺内移行性に優れ、対数増殖期と分裂休止期いずれの感染菌に対しても殺菌的な活性を示す新規系統の化合物が望ましく、できれば抗酸菌に対してのみ特異的な抗菌活性をしめす狭域の抗菌スペクトルを持った候補化合物が理想である(非特許文献2)。
【0005】
我が国では、1951年に制定された結核予防法により、結核患者は国費で治療を受けることができるが、その一方で特定の抗菌薬が抗結核薬として指定を受けると薬価が切り下げられるため、製薬会社にとって抗結核薬の開発が大幅な収益向上に結びつき難い。また、結核の新薬の臨床治験では、単剤による治験が人道上の理由で実施不可能なために「準単用の臨床治験」を組む以外に方法がなく、治験薬の評価が難しい。抗結核薬の長期間の治療投与で惹起され顕在化する諸種の副作用を回避する難しさ。これらの背景要因が重なり合い、結果として結核の新薬開発が遅れている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Barradell LB, Plosker GL, McTavish D. Clarithromycin. A review of its pharmacological properties and therapeutic use in Mycobacterium avium-intracellulare complex infection in patients with acquired immune deficiency syndrome. Drugs. 1993 Aug;46(2):289-312.
【非特許文献2】土井教生. 総説-新しい抗結核薬開発の現状. 日本化学療法学会誌 2002 (50):765-776.
【非特許文献3】The WHO/IUATLD global project on anti‐tuberculosis drug resistance surveillance: In Anti‐tuberculosis drug resistance in the world, World Health Organization,Geneva Switzerland,1997:18-21.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は抗結核活性の高い化合物、及びそれを有効成分とする抗結核薬を提供することを課題とする。また、当該抗結核薬を用いた治療法などを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記背景の下、本発明者らは結核菌に対して抗菌活性を有する糖誘導体の合成及びライブラリースクリーニングを進め、ヒト型結核菌に抗菌活性を有する新規糖誘導体No. 313(2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル N,N-ジメチルジチオカルバメイト:2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate)に抗結核作用があることを見出した。更に検討を進めた結果、No.313の構造活性相関と抗菌スペクトル、及び作用点について重要且つ有意義な知見が得られた。本発明は主として上記知見に基づき、次の通りである。
[1]以下の化学式(1)又は(2)で表される抗結核化合物:
【化1】
JP0005391721B2_000002t.gif
式中、R1、R2は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R3はS又はOであり、R4は以下の化学式(3)又は(4)で表される基である;
【化2】
JP0005391721B2_000003t.gif
式中、R5、R6は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R7はS又はOである。
[2]以下の化学式(5)~(8)のいずれか一つで表されることを特徴とする、[1]に記載の抗結核化合物:
【化3】
JP0005391721B2_000004t.gif
[3][1]又は[2]に記載の抗結核化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する抗結核薬。
[4][3]に記載の抗結核薬を対象に投与するステップを含む、結核の予防又は治療方法。
[5]抗結核薬を製造するための、[1]又は[2]に記載の抗結核化合物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】薬剤感受性試験の結果。No.313を添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図1b】薬剤感受性試験の結果。No.313を添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図1c】薬剤感受性試験の結果。No.313を添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図1d】薬剤感受性試験の結果。Glc-N-Ac DEDTCBを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図1e】薬剤感受性試験の結果。Thiuramを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図2a】既存の薬剤を使用した薬剤感受性試験の結果。INHを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図2b】既存の薬剤を使用した薬剤感受性試験の結果。RFPを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図2c】既存の薬剤を使用した薬剤感受性試験の結果。SMを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図2d】既存の薬剤を使用した薬剤感受性試験の結果。EBを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図2e】既存の薬剤を使用した薬剤感受性試験の結果。PASを添加。光学濃度(A)、ATP量(B)、コロニー数(C)で評価した。薬剤を0日目に添加し、2週間観察した。
【図3A】細胞障害活性試験の結果。Isoniazidの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3B】細胞障害活性試験の結果。Ryfampicinの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3C】細胞障害活性試験の結果。Streptmycinの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3D】細胞障害活性試験の結果。Ethambutolの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3E】細胞障害活性試験の結果。PASの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3F】細胞障害活性試験の結果。No.313の存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3G】細胞障害活性試験の結果。DMDTCBNaの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3H】細胞障害活性試験の結果。Thiuramの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3I】細胞障害活性試験の結果。Glc-N-Ac DEDTCBの存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図3J】細胞障害活性試験の結果。No.359の存在下、MRC-5細胞を3日間培養した。薬剤を添加しない場合(コントロール)の吸光度を100%としたときの相対%で示した。3ウェル又は3回の独立した試験の平均±標準偏差である。3回以上試験を行い、代表的なデータを示した。
【図4】ペプチドグリカンに対するNo.313の作用。No.313とペプチドグリカンを2日間インキュベートした。SDS-PAGE(銀染色)でペプチドグリカンを検出した。
【図5】ペプチドグリカンに対するNo.313及びリゾチームの作用。
【図6】既存の抗結核薬のMIC(BDTで評価)を示す表。
【図7】M.Bovis BCG (Tokyo)に対する抗結核活性を示す表。
【図8】No.313及びその誘導体のMIC(BDTで評価)を示す表。
【図9】合成に使用した原料のMIC(BDTで評価)を示す表。
【図10】No.313と既存の抗結核薬との治療域の比較。A:Isoniazid、B:Ryfampicin、C:Streptmycin、D:Ethambutol、E:PAS、F:No.313、G:DMDTCBNa、H:Thiuram、I:Glc-N-Ac DEDTCB、J:No.359。
【図11】各薬剤の投与に伴う体重変化を示すグラフ。Aはリファンピシン投与に伴う体重変化。BはNo. 313投与に伴う体重変化。Cはストレプトマイシン投与に伴う体重変化。Dは対照。R20:リファンピシンを20mg/kg投与、R10:リファンピシンを10mg/kg投与、R5:リファンピシンを5mg/kg投与、O160:No. 313を160mg/kg投与、O80:No. 313を80mg/kg投与、O40:No. 313を40mg/kg投与、S160:ストレプトマイシンを160mg/kg投与、S80:ストレプトマイシンを80mg/kg投与、S40:ストレプトマイシンを40mg/kg投与。
【図12】各薬剤を投与したときの肝障害マーカーの発現量を示すグラフ。S160:ストレプトマイシンを160mg/kg投与、S80:ストレプトマイシンを80mg/kg投与、S40:ストレプトマイシンを40mg/kg投与、O160:No. 313を160mg/kg投与、O80:No. 313を80mg/kg投与、O40:No. 313を40mg/kg投与。
【図13】No. 313のin vivoでの効果を示すグラフ。肺(左)と脾臓(右)の寄生菌数を示した。エラーバーは平均±標準誤差(n=5)。スチューデントのt検定による。**:p<0.01(対コントロール)、***p<0.001(対コントロール)。NS:有意差なし。S160:ストレプトマイシンを160mg/kg投与、S80:ストレプトマイシンを80mg/kg投与、S40:ストレプトマイシンを40mg/kg投与、O160:No. 313を160mg/kg投与、O80:No. 313を80mg/kg投与、O40:No. 313を40mg/kg投与。【0010】
本発明の第1の局面は抗結核化合物(結核菌に対して抗菌活性を示す化合物)に関する。本発明の抗結核化合物は以下の化学式(1)又は(2)で表される。
【化4】
JP0005391721B2_000005t.gif
式中、R1、R2は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R3はS又はOであり、R4は以下の化学式(3)又は(4)で表される基である;
【化5】
JP0005391721B2_000006t.gif
式中、R5、R6は独立して炭素数1~4のアルキル基であり、R7はS又はOである。

【0011】
好ましくは、本発明の抗結核化合物は以下の化学式(5)~(8)のいずれか一つで表される。
【化6】
JP0005391721B2_000007t.gif

【0012】
化合物(5)はスクリーニングの結果、見出された新規糖誘導体であり、結核菌に対して高い抗菌活性を示した。本明細書では当該化合物のことを便宜上「No.313」とも呼ぶ。化合物(6)~(8)は、No.313の構造活性相関を検討する中で見出された化合物群である。化合物(6)は母核がガラクトサミン(galactosamine)である点においてNo.313と相違する。当該化合物はNo.313よりも高い抗菌活性を示した。化合物(7)はC1位の官能基末端がエチル(ethyl)基である点においてNo.313と相違する。当該化合物はNo.313と同等の抗菌活性を示した。化合物(8)はC位に加えC位にもジメチルジチオカルバメイト(dimethyldithiocarbamate)基が結合している点においてNo.313と相違する。当該化合物の抗菌活性はNo.313よりは低いものの結核菌特異的な抗菌活性を示した。

【0013】
本発明の他の局面は、上で示した抗結核化合物、又はその塩を有効成分とする抗結核薬に関する。ここでの塩は薬学的に許容可能な限りその種類は特に限定されず、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等との塩(無機酸塩)や、ギ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸等との塩(有機酸塩)をその例として挙げることができる。これらの塩の調製は慣用手段によって行なうことができる。

【0014】
有効成分の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0015】
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び坐剤などとして調製できる。
このように製剤化した本発明の薬剤はその形態に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射など)によって対象に適用され得る。ここでの「対象」は特に限定されないが、好ましくはヒトである。
本発明の抗結核薬における有効成分の含量は一般に剤型によって異なるが、所望の投与量を達成できるように例えば約0.001重量%~約90重量%とする。

【0016】
上記の有効成分に加え、既存の抗結核剤を含む抗結核薬としてもよい。異なる作用点の薬剤を組み合わせることにすれば多面的な抗結核作用を発揮することができる。同一又は類似の薬剤を組み合わせた場合には抗結核作用の増強を期待できる。既存の抗結核剤の例として、イソニアジド(Isoniazid)、リファンピシン(Ryfampicin)、ストレプトマイシン(Streptmycin)、カナマイシン(Kanamycine)、アミカシン(Amikacin)、エタンブトール(Ethambutol)、パラアミノサリチル酸(p-aminosalicylate)が挙げられる。

【0017】
本発明の他の局面では以上の抗結核薬を使用した結核に対する予防方法又は治療方法(以下では、便宜上これら二つの方法を包括して「治療方法」と呼ぶ)が提供される。本発明の治療方法は、上記本発明の抗結核薬を生体に投与するステップを含む。投与経路は特に限定されず例えば経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜などを挙げることができる。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。尚、投与が容易である点から経口投与によることが好ましい。

【0018】
抗結核薬の投与量は症状、投与対象の年齢、性別、及び体重などによって異なるが、当業者であれば適宜適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約3g~約60g、好ましくは約3g~約30gとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回~数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの設定においては、投与対象の病状や薬剤の効果持続時間などを考慮することができる。
【実施例】
【0019】
A.実験材料と方法
1. 抗結核薬
以下に示す市販の抗結核薬を使用した。全ての抗結核薬についてSIGMAより購入した。
イソニアジド(Isoniazid):INH
リファンピシン(Rifampicin):RFP
ストレプトマイシン(Streptmycin):SM
カナマイシン(Kanamycine):KM
アミカシン(Amikacin):AMK
エタンブトール(Ethambutol):EB
パラアミノサリチル酸(p-aminosalicylate):PAS
【実施例】
【0020】
2. 細胞及び培養方法
細胞
・MRC-5(ヒト胎児肺由来正常線維芽細胞)
ヒューマンサイエンス研究資源バンクより分譲を受けた。
<試薬>
培養液 (1000 ml中)
・Dulbecco’s modified Eagle’s medium:DMEM(SIGMA)
・ペニシリンGカリウム(萬有製薬) 1.0×105 U
・硫酸ストレプトマイシン明治(明治製菓) 0.1 g
ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)
・FBS(JRH Bioscience)
56 ℃、30分熱処理により非動化した。
Phosphate Buffered Saline:PBS (1000 ml中)
・NaCl(Wako) 8.0 g
・KCl(Wako) 0.2 g
・NaHPO4・12H2O(Wako) 2.9 g
・KH2PO4(Wako) 0.2 g
EDTA溶液(0.02 % EDTA・3Na/PBS)
・エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(Nakalai Tesque)
トリプシン・EDTA溶液(0.25 % Trypsin/0.02 % EDTA)
・トリプシン(Difco)
【実施例】
【0021】
MRC-5細胞の培養は100 mm dish(FALCON、No.3003)に非動化FBSを10 %含む培養液(DMEM)を加え、5 %のCO2存在下、37 ℃で培養した。細胞を継代する際には、EDTA溶液とトリプシン・EDTA溶液を用いて細胞を剥がして遠心後、培養液で5倍希釈した。なお、実験する際には、ストレプトマイシン無添加のDMEM/10 % FBS培養液を用いた。
【実施例】
【0022】
3. 菌及び培養方法

・Mycobacterium tuberculosis H37Rv ATCC 25618、Mycobacterium avium 724S、Mycobacterium avium SmOはColorado State Universityより供与された。Mycobacterium bovis、Mycobacterium smegmatisは結核研究所より供与された。
・BCG(Mycobacterium bovis bacillus Calmete-Guerin;M. bovis BCG)
Tokyo 日本BCGより供与された。
・Staphylococcus aureus
・E. coli JM109
【実施例】
【0023】
Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80溶液 (900 ml中)
・Middlebrook 7H9 Broth(Difco) 4.7 g
・Tween 80(Katayamakagaku) 0.5 g
調整後、オートクレーブした。
ADC Enrichment(albumin・dextrose・catalase) (500 ml中)
・Albumin, Bovine(Sigma) 25 g
・Glucose(Wako) 10 g
・Catalase, Bovine Liver(Calbiockem) 0.015 g
調整後、ろ過滅菌した。
抗酸菌培養液(Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80/10 % ADC溶液)
(1000 ml中)
・Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80溶液 900 ml
・ADC Enrichment 100 ml
Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80溶液をオートクレーブした後ADC Enrichment 100 mlを無菌状態で加えた(以下、これを7H9ADCとする。)
黄色ブドウ球菌及び大腸菌の培養液(LB broth)
(1000 ml中)
・Tryptone (Difco) 10 g
・Yeast Extract (Difco) 5 g
・NaCl (Wako) 5 g
・1N NaOH (Wako) 1 ml
調整後、オートクレーブした。
【実施例】
【0024】
4. 既存の抗結核薬及び糖化合物の抗菌活性
4-1. 既存の抗結核薬及び糖化合物の結核菌に対する抗菌活性
<準備>
抗結核薬(1.参照)及び糖化合物(12.参照)
Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80溶液
結核菌
操作は以下のように行った。
1) 96穴プレート(FALCON No. 3075)に既存の抗結核薬及び糖化合物の2倍希釈系列を作製した。各穴100 μlずつまいた。
2)前培養しておいた結核菌液を吸光度(530 nm)を0.1にあわせ、さらに100希釈した懸濁液を作製した。
3) 2)を1)に各穴100 μlずつまいた。
4) 37 ℃、2週間培養した。
M. smegmatisについては培養時間を3日とした。
5) 4)において、結核菌が増殖している場合、その穴は、完全に白濁しており、コントロールと比較して明らかな変化が観察された。
【実施例】
【0025】
4-2. 糖化合物の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性
<準備>
糖化合物(12.参照)
LB Broth
黄色ブドウ球菌
操作は以下のように行った。
1) 96穴プレート(Falcon No. 3075)に糖化合物の2倍希釈系列を作製した。各穴100 μlずつまいた。
2)前培養しておいた黄色ブドウ球菌液を吸光度(530 nm)を0.1にあわせ、さらに100希釈した懸濁液を作製した。
3) 2)を1)に各穴100 μlずつまいた。
4) 37 ℃、2日培養した。
5) 4)において、結核菌が増殖している場合、その穴は、完全に懸濁しており、コントロールと比較して明らかな変化が観察された。
【実施例】
【0026】
4-3. 糖化合物の大腸菌に対する抗菌活性
<準備>
糖化合物(12.参照)
LB Broth
大腸菌
操作は、4-2と同様の操作を行った。
【実施例】
【0027】
5. 細胞毒性の測定(Simple Fibroblast-Cell Based Assay)
<準備>
Crystal violet染色液
(1000 ml)
Cristal Violet (Katayamakagaku) 0.5 g
1 % (w/v) SDS溶液
(1000 ml)
Sodium Dodecyl Sulfate (Wako) 1.0 g
Methanol (Wako)
操作は以下のように行った。
1) 培養しておいたMRC-5細胞をEDTA液とトリプシン・EDTA液を用いて細胞を剥がして、1,000 ppmで5分間遠心した。
2) 遠心により生じた細胞のペレットにストレプトマイシン無添加のDMEM/10 % FBSを加え、100 μlあたり1.5×10個となるように調製し、細胞懸濁液を作製した。
3) 2)で作製した細胞懸濁液を96穴プレート(Falcon No. 3075)に各穴100 μlずつまいた。
4) 既存の抗結核薬及び糖化合物の希釈系列を作製する。
5) 3)に4)を各穴100 μlずつまいた。
6) 5)を3日間5 % CO2存在下37 ℃の条件で培養した後、培養上清を取り除いた。
7) 次にCrystal Violet染色液で細胞を15分間染色した。
8) プレートごと10回くらい水洗し、37 ℃で1日乾燥させた。
9) 1 % SDSを各穴100 μlずつ加えて染料を溶かした。
10) それをマイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
11) 595 nmの吸光度から630 nmの吸光度を引いた値を算出した。
なお、エラーバーは、S.D.を示している。また、DDW又はDMSOを添加した穴の値をコントロールとした。
【実施例】
【0028】
6. コロニーアッセイ法
<準備>
MYCOBACTERIA 7H11 Agar (900 ml中)
・MYCOBACTERIA 7H11 Agar(Difco) 4.7 g
・Glycerol(Wako) 5 ml
調整後、オートクレーブした。
OADC Enrichment(oleic acid・albumin・dextrose・catalase) (500 ml中)
・Oleic acid 1 % solution(Wako) 15 ml
・Albumin,bovine(Sigma) 25 g
・Glucose(Wako) 10 g
・Catalase,Bovine Liver(Calbiochem) 0.02 g
・NaCl(Wako) 4.25 g
BCGコロニーアッセイ用寒天培地(MYCOBACTERIA 7H11 Agar/10 % OADC)
(1,000 ml中)
・MYCOBACTERIA 7H11 Agar 900 ml
・OADC Enrichment 100 ml
MYCOBACTERIA 7H11 Agarをオートクレーブした後、湯浴を用いて60 ℃にし、OADC Enrichment 100 mlを無菌状態で加えた。
1)M. bovis BCGを含んだ培養液を使用し、BCG培養液で10倍希釈系列を作成した。
2)1)を10 %のOADCを含むBCGコロニーアッセイ用寒天培地を加えたペトリディッシュ(Falcon No. 3075)に各希釈倍数毎に100μlずつまき、37 ℃で培養した。
3)2週間後、寒天培地上に現れたM. bovis BCGのコロニー数を計測し、以下の計算式により培養液中に含まれる菌数を、CFU(colony forming unit)/mlで表した。
培養液1 ml中の菌数(cfu/ml)=(各希釈段階毎のコロニー数×希釈倍×10)の総和/コロニーが現れた希釈段階の総和
【実施例】
【0029】
7. ATP法
<準備>
ATP測定用試薬キット(ルシフェール 250 (Kikkoman))
発光試薬(ルシフェリン、ルシフェラーゼ、酢酸マグネシウム)
発光試薬溶解液(トリシン緩衝液)
発光試薬1本に対し、発光試薬溶解液1本を混合し、250 μlずつ分注し、冷凍庫に保存した。使用する際、遮光して解凍した。
ルシフェール ATP消去試薬セット (Kikkoman)
ATP消去試薬(ATP分解酵素、MES緩衝液)
ATP消去試薬溶解液(MES緩衝液)
ATP消去試薬1本に対し、ATP消去試薬溶解液1本を混合し、180 μlずつ分注し、冷凍庫に保存した。使用する際、解凍して用いた。
ルシフェール ATP標準試薬(Kikkoman)
ATP標準試薬(ATP、硫酸マグネシウム、ウシ血清アルブミン)
標準試薬溶解希釈液(HEPES緩衝液)
ATP消去試薬1本に対し、ATP消去試薬溶解液1本を混合し、100 μlずつ分注し、冷凍庫に保存した。使用する際、解凍して用いた。
ATP標準試薬の10倍希釈系列を作製し、発光量を測定し、検量線を作成した。
ATP抽出バッファー
(100 ml中)
1 M Tris-HCl 10 ml
0.5 M EDTA(pH 8.0) 400 μl
DDW 適量
試薬の調製後、pHを7.75に合わせて使用した。
操作は以下のように行った。
1)培養菌液20 μlをATP消去試薬180 μlと混合し30分放置した。
2)1)の懸濁液50 μlをATP抽出バッファー450 μlに混合し、5分間98 ℃の湯浴につけ、ATP抽出を行った。
3) 15分間冷ました後、96穴プレート(SUMILON Multi Well Plate for ELISA)
に各穴50 μlずつまいた。
4)迅速に、発光試薬(遮光)25 μlを添加し、FLUOROSCAN ASCENT FL (Thermo Electron Corpration )測定を行った。
5) 発光量とATP量の検量線を用いて、ATP量を算出した。
【実施例】
【0030】
8. Broth Dilution Test (BDT)法(参考文献15)と最小殺菌濃度(MBC)の測定
操作は以下のように行った。
1)Middlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80/10 % ADC溶液を使用して、薬剤又は糖化合物の2倍希釈系列を作成した。
2)96穴プレート(FALCON No. 3075)に1)を各穴100 μlずつまいた。
3) 次に前培養しておいたM. tuberculosis H37RvをMiddlebrook 7H9 Broth/0.25 % Tween 80/10 % ADC溶液を用いて吸光度0.1にまで希釈し、さらに100希釈した菌液を用いた。
4)2)に3)で調製した菌を含む懸濁液を各穴100 μlずつ加え、5 %のCO2存在下37 ℃で2週間培養した。
5) 4)において結核菌が増殖している場合、その穴は完全に白濁しており、コントロールと比較して明らかな変化が観察された。ここで薬剤の抗菌活性を評価するためのMICは結核菌の増殖を阻害した最小の濃度とした。なお、本実験において、コントロールは結核菌を加えていないものを使用した。
6) MIC測定に供した各ウェルの液体培地を被験菌液とした。この菌液を薬剤を含まない寒天培地に10 μl接種した後、37 ℃で20時間培養した。培養後、菌の発育が認められない最小の薬剤濃度をもってMinimum Bactericidal Concentration (MBC) (99.9 %殺菌) とした(参考文献16、17)。
【実施例】
【0031】
9. SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
試薬の調製
<準備>
Peptidoglycan from Micrococcus luteus (PGN)(Wako)
原液は1 μg/mlのため、使用する際DDWで希釈して使用した。
Sample
・No. 313(12.で合成した糖誘導体)
・Lysozyme, Egg White(6× crystallized)(Seikagaku Corporation)
・Albumin,bovine(BSA)(Sigma)
2×SDS sample buffer
(約9 ml)
・0.25 M Tris/HCl (pH 6.8)(Sigma) 4.0 ml
・20 % SDS(Wako) 2.0 ml
・glycerol(Wako) 2.0 ml
・超純水 0.8 ml
・1 % BPB (Bromphenol Blue) 数滴
使用する直前に、2-ME(Wako)を 120 μl/ml になるように加えた。
分子量マーカー
・Precision Protein StandardsTM(Bio-Rad)
操作は以下のように行った。
1) 各希釈Sample 2.8 μlとPGN懸濁液(1 μg/ml)25.2 μlをチューブに入れた。
2) 遠心し、壁についた液体を完全に落とした。
3) 2日間37 ℃で培養した。
4) 氷上で、チューブにSDS sample bufferを4 μl添加した。
5) 98 ℃、5分ヒートブロックを行った。これを流動用試料とした。
【実施例】
【0032】
電気泳動
<準備>
running gel 溶液
(7 ml)
アクリルアミド濃度 10 %
Solution I (44 %) 1.61 ml
2 M Tris/HCl (pH 8.8) (Sigma) 1.26 ml
超純水 4.06 ml
20 % SDS (Wako) 70 μl
10 % APS (ammonium peroxodisulfate) (Wako) 17.5 μl
TEMED(Wako) 7μl
stacking gel 溶液
(2.5ml)
Solution II (31 %) 250 μl
0.25 M Tris/HCl (pH 6.8) (Sigma) 6.25 ml
超純水 0.97 ml
20 % SDS (Wako) 25 μl
10 % APS (Wako) 12 μl
TEMED (Wako) 6.25 μl
Solution I [ II ]
acrylamide (monomer) (Nakarai Tesuku) 44 g (31 g)
N,N'-methylenebisacrylamide (Nakarai Tesuku) 0.8 g (0.8 g)
超純水に溶解し 100 mlとした。
Electrode Buffer
TRIZMA BASE (Sigma) 30.3 g
Glycine (Nakarai Tesuku) 143.1 g
SDS (Wako) 10 g
超純水に溶解し1,000 mlとした。
操作は以下のように行った。
1)上記の組成で 10 % アクリルアミドゲルを作製した。
2)泳動用試料の調製で調製した試料と分子量マーカーをゲルにのせ、running gel に達するまでは 100 V 、その後180 Vまで徐々に電圧を上げて電気泳動を行った。
3)試料溶液中の BPB により形成される青色のラインがゲルの下端近く(1-2 cm)に達した時点で泳動を終了した。
【実施例】
【0033】
10. Coomassie Brilliant Blue法(CBB法)
<準備>
染色液
脱イオン水 200 ml
MeOH (Wako) 250 ml
酢酸 (Wako) 50 ml
CBB R-250 0.5 g
30分以上攪拌して完全にCBB R-250を溶解した。
脱色液
脱イオン水 875 ml
MeOH (Wako) 50 ml
酢酸 (Wako) 75 ml
操作は以下のように行った。
1)SDS-PAGE終了後のゲルをタッパに移し、染色液をゲルがつかるまで注ぎ、1時間振とうした。
2)染色液を捨て、脱色液を注ぎ、1日振とうした。
染色液は、再利用するため、ボトルに捨てた。
【実施例】
【0034】
11. 銀染色法
<準備>
電気泳動用銀染色キット (Wako)
固定液-1
(200 ml)
脱イオン水 80 ml
MeOH (Wako) 100 ml
酢酸 (Wako) 20 ml
固定液-2
(200 ml)
脱イオン水 135 ml
MeOH (Wako) 10 ml
酢酸 (Wako) 15 ml
固定原液 (グルタルアルデヒド) (Wako) 40 ml
増感液
(200 ml)
増感原液 (ジチオスレイトール) (Wako) 1.0 ml
脱イオン水 199 ml
染色液
(200 ml)
染色液A (硝酸銀) (Wako) 10 ml
染色液B (アンモニア、水酸化ナトリウム) (Wako) 10 ml
脱イオン水 180 ml
染色液は、放置すると爆発性物質が生じる危険性があるため使用時調製した。
現像液
(200 ml)
現像原液 (ホルムアルデヒド、くえん酸) (Wako) 10 ml
脱イオン水 190 ml
操作は以下のように行った。
1) SDS-PAGE終了後のゲルをタッパに移し、固定液-1をゲルがつかるまで注ぎ、15分間振とうした。
2) 固定液-1を捨て、固定液-2を注ぎ、15分間振とうした。
3) 脱イオン水で、5分間振とうした。これを3回繰り返した。
4) 増感液を注ぎ、10分間振とうした。
5) 増感液を捨て、脱イオン水を注ぎ、5分間振とうした。
6) 脱イオン水を捨て、染色液を注ぎ、正確に15分間よく振とうした。
7) 染色液を容器に捨て、脱イオン水を注ぎ、5分間振とうした。
これを3回繰り返した。
8) 脱イオン水を捨て、現像液を注ぎ、5分程度振とうした。
9) バンドが見えた段階を現像の停止とし、酢酸を2、3滴添加し、3分振とうした。
10) 現像液を捨て、脱イオン水を注ぎ、2分振とうした。
これを3回繰り返した。
【実施例】
【0035】
12. 糖誘導体の合成
<測定装置>
融点は微量融点測定装置(Yanagimoto MP-S2)で測定した未補正値である。溶媒はRotary evaporatorを用いて減圧濃縮した。旋光度は、10 cmのセルを使用し、JASCO P-1020型旋光計で測定した。赤外吸収スペクトルは、JASCO FT/IR-4100 Spectrometerを使用し、KBr法で測定した。核磁気共鳴スペクトルは、1H と13C NMRは、BRUKER-AV600、JNM-α500又はJNM-ECA500/KJを使用した。化学シフトは、tetramethylsilane(TMS)を基準(0.00 ppm)とし、δ値で示した。また、NMRデータの記載には、s = singlet、d = double、t = triplet、dd = double-doublet、m = multipletの略号を用いた。TLCは、0.25 mm precoated silica gel plate(kieselgel 60F254 Merck)を使用した。検出は、UV照射、20 %硫酸噴霧後の加熱により行った。カラムクロマトグラフィーの吸着剤は、シリカゲルBW-820MH(Fuji-silysia chemical LTD. Nagoya)を使用した。
【実施例】
【0036】
12.1 2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate (1) の合成(参考文献18)
2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-α-D-glucopyranosyl chloride(参考文献19)(26.77 g, 73.2 mmol)を無水アセトン(200 ml)に溶解し、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(21 g, 146.6 mmol)を加え、15分間加熱還流した。TLCで原料の消失を確認後、反応液を濃縮し、残さにクロロホルムと水を加えて有機層を分離した。有機層を水洗(2回)後、脱水(MgSO4)し、濾過して濃縮した。得られたシロップを少量のクロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーにかけ、溶出溶媒として、クロロホルム-アセトン(10:1~3:1, v/v)を用い、溶出した。新しい生成物のフラクションを濃縮乾固し、(1)(12.4 g,37.8 %)を、無晶型粉末として得た。[α]D20+49.6° (C=1.36,CHCl3), IR (KBr) cm-1 : 3282(NH),1749 (C=O),1666(amide I),1547(amide II). 1H NMR(CDCl3)δ: 1.92,2.05(×2),2.08(s,12H,Ac×4), 3.37,3.54 (each s,6H,NCH3×2), 3.85 (m,1H,H-5), 4.13(dd,1H,J5,6a=2.1Hz,J6a,6b=12.5Hz,H-6a), 4.25(dd,1H,J5,6b=4.6Hz,,H-6b), 4.57(ddd,1H,J1,2=11.0Hz,J2,NH=9.8Hz,J2,3=9.8Hz,H-2),5.16(dd,1H,J3,4=9.2Hz,J4,5=9.8Hz,H-4),5.20(dd,1H,H-3),5.79(d,1H,H-1),and6.13(d,1H,NH).13CNMR(CDCl3)δ:20.8,20.9,21.0,23.3(COCH3×4),42.1,45.8(NCH3×2),52.2(C-2),62.1(C-6),68.1(C-4),74.8(C-3),76.7(C-5),89.3(C-1), 169.5,170.3,170.9,171.4(COCH3×4), and 193.7 (C=S).
【化7】
JP0005391721B2_000008t.gif
【実施例】
【0037】
12.2 2-Acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate (2, No.313)の合成
化合物(1)( 9.3 g,20.7 mmol)を無水メタノール(93 ml)に懸濁させ、0.5 Mナトリウムメトキシド(1 ml)を加え、室温で2時間撹拌した。陽イオン交換樹脂Amberlite IR120Bで中和後、濾過して濃縮した。得られたシロップをエタノールから結晶化させ、さらにエタノールから再結晶化し、(2)(4.0 g,59.0 %)を白色結晶として得た。mp 184~185゜(decomp.), [α]D24+50.7゜(C=1.16, H2O), IR(KBr) cm-1 : 3600-3100 (br.OH),1656(amide I),1562(amide II). 1H NMR(CD3OD)δ: 1.95(s,3H,NCOCH3),3.37, 3.51 (each s,6H, NCH3×2),3.39 (m,1H, H-5),3.44(dd,1H, J3,4=8.6Hz,J4,5=9.5Hz,H-4), 3.56 (dd,1H,J2,3=9.8Hz, H-3), 3.69 (dd, 1H,J5,6a=2.1Hz, J6a,6b=12.2Hz,H-6a),3.83 (dd,1H,J5,6b=4.9Hz, H-6b),4.07(dd,1H,J1,2=11.0Hz,H-2), and 5.67 (d,1H,H-1).13C NMR(CD3OD)δ: 22.9(COCH3),42.0,45.7(NCH3×2),54.6 (C-2),62.6 (C-6), 71.6(C-4), 77.6(C-3),82.3(C-5),90.4(C-1),173.7(C=O),and195.4 (C=S).
【化8】
JP0005391721B2_000009t.gif
【実施例】
【0038】
12.3 2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-diethyldithiocarbamate (3)
2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-α-D-glucopyranosyl chloride(参考文献19)(28.18 g,77.0 m mol)を無水アセトン(200 ml)に溶解し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(34.7g,154.1 mmol)を加え、15分間加熱還流した。化合物(1)の場合と同様に処理し、(3)(30.3g,82.6%)を無晶型粉末として得た。[α]D26+54.3゜(C=1.36,CHCl3), IR (KBr) cm-1 : 3283(NH), 1749(C=O), 1667(amide I), 1545(amide II). 1H NMR(CDCl3)δ: 1.27(m,6H,CH2CH3×2), 1.91,2.05(×2),2.08(s,12H,Ac×4), 3.72,4.01(m,4H, CH2CH3×2), 3.85 (m,1H,H-5), 4.13(dd,1H,J5,6a=1.7Hz, J6a,6b=12.6Hz,H-6a), 4.26(dd,1H,J5,6b=4.6Hz, H-6b),4.55(ddd,1H,J1,2=10.9Hz,J2,NH=9.7Hz,J2,3=7.4Hz,H-2),5.16(dd,1H,J3,4=7.4Hz,J4,5=10.3Hz,H-4), 5.19(dd,1H,H-3), 5.86(d,1H,H-1), and 6.11(d,1H,NH). 13C NMR(CDCl3)δ: 11.4,12.6(CH2CH3×2), 20.7(×2), 20.8, 23.2(COCH3×4), 47.3,50.0(CH2CH3×2), 52.4(C-2), 61.9(C-6), 68.0(C-4), 74.6(C-3), 76.7(C-5), 88.9(C-1), 169.5, 170.1, 170.8, 171.2 (COCH3×4), and 192.1 (C=S).
【実施例】
【0039】
12.4 2-Acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-diethyldithiocarbamate (4)の合成
化合物(3)(3.43 g,7.2 mmol)を無水メタノール(60 ml)に懸濁させ、0.5 Mナトリウムメトキシド(1 ml)を加え、一晩室温で拡拌した。化合物(2)の場合と同様に処理し、エタノールから結晶化させ、さらにエタノールから再結晶化し、(4)(1.36 g,53.8 %)を白色結晶として得た。mp 173~174゜(decomp.), [α]D24+58.6゜(C=1.34, H2O), IR(KBr) cm-1 : 3600-3100 (br.OH), 1634(amide I), 1541(amide II). 1H NMR(CD3OD)δ: 1.29(q,6H,J=7.2Hz,CH2CH3×2),1.97(s,3H,NCOCH3),3.44(m,1H,H-5),3.48(dd,1H,J3,4=8.5Hz,J4,5=9.5Hz,H-4), 3.59 (dd,1H, J2,3=9.8Hz,H-3), 3.74(dd,1H,J5,6a=2.1Hz,J6a,6b=12.2Hz,H-6a), 3.81,4.05(m,4H, CH2CH3×2),3.88(dd,1H,J5,6b=4.9Hz, H-6b), 4.11(dd,1H, J1,2=11.0Hz,H-2), and5.74(d,1H,H-1). 13C NMR(CD3OD)δ: 11.7,12.8 (CH2CH3×2),22.9(COCH3), 48.1,50.7 (CH2CH3×2), 54.6 (C-2), 62.6 (C-6), 71.6(C-4), 77.6(C-3), 82.3(C-5), 90.1(C-1), 173.7(C=O), and 195.4 (C=S).
【実施例】
【0040】
13. マウスの体重変化の記録
5週齢のメス健常マウスにヒト型結核H37Rvを感染させ、28日間飼育した。その後、各薬剤(リファンピシンは経口投与。ストレプトマイシンとNo.313は腹腔内投与)を28日間反復投与し、体重の変化を記録した。
【実施例】
【0041】
14. in vivoにおける肝障害についての検討
5週齢のメス健常マウスにヒト型結核H37Rvを感染させ、28日間飼育した。その後、各薬剤を28日間反復投与した。そして、摘出した肝臓ホモジネート及び血清中の肝障害マーカーの発現を既報の方法に従い測定した。
【実施例】
【0042】
15. マウスモデルを用いたNo.313のin vivoでの効果
5週齢のメス健常マウスにヒト型結核H37Rvを感染させ、28日間飼育した。その後、各薬剤を28日間反復投与した。肺及び肝臓を摘出し、結核菌数を計測した。
【実施例】
【0043】
略号の正式名は次の通りである。
1. No.313(Glc-N-Ac DMDTCB) free
2-Acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N- dimethyldithiocarbamate
2. No.313-peracetate
2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate
3. No.313-C6Ac
2-Acetamido-6-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate
4. No.313-C3,4Ac
2-Acetamido-3,4-di-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate
5. Glc-N-Ac 1,6 DMDTCB free
2-Acetamido-6-S- N,N-dimethyldithiocarbamyl-2,6-dideoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate
6. Glc-N-Ac DEDTCB
2-Acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N- diethyldithiocarbamate
7. Glc-N-Ac DEDTCB peracetate
2-Acetamido-3,4,6-tri-O-acetyl-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-diethyldithiocarbamate
8. Man-N-Ac DMDTCB
2-Acetamido-2-deoxy-α-D-mannopyranosyl N,N- dimethyldithiocarbamate
9. Gal-N-Ac DMDTCB
2-Acetamido-2-deoxy-β-D-galactopyranosyl N,N- dimethyldithiocarbamate
10. Glc-N-Ac urea
1-N-Acetyl-3-N-(2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)-urea
【実施例】
【0044】
B.実験結果
1. No. 313及び誘導体の抗菌活性の菌種特異性についての検討
本発明者らの研究グループが所有する糖誘導体210種類について、BDT(Broth Dilution Test)法によりヒト型結核菌H37Rv株及び黄色ブドウ球菌に対する増殖阻害活性を検討した。その内の一つであるサンプルNo. 313は、H37Rvに対してMIC(Minimum Inhibitory Concentration)は25μg/mlであり、抗菌活性があることが分かった(図8)。No. 313と比較を行うため既存の薬剤のMICも測定した(図6)。
No. 313はMycobacterium smegmatis、M. avium、結核菌と同じグラム陽性菌Staphylococcus aureus及びグラム陰性菌E. coliには抗菌活性を示さなかった(図8)。
また、No. 313のMBCは25μg/mlであり、MBC/MICは1であった(図7)。
No. 313の原料についても抗菌活性を測定した。Thiuramや官能基であるN,N-dimethyl dithiocarbamic acid sodium salt (DMDTCA. SS)にMIC 0.78と高い活性があった。No. 313 の母核となるN-acetyl glucosamine (Glc-N-Ac)には抗菌活性は無かった(図9)。
【化9】
JP0005391721B2_000010t.gif
No. 313の構造
【実施例】
【0045】
2. No. 313の構造活性相関の検討
最初に、No. 313の母核の化学修飾を行った。No. 313の母核であるglucosamineに代えてmannosamineを有する物質では抗菌活性は失われたが、逆にgalactosamineにすることで、二倍活性が強くなった(図8)。
次に、No. 313の水酸基の化学修飾を行った。No. 313の全てのhydroxyl基をacetyl化することで抗菌活性は失われた。また、6位や3位、4位を特異的にacetyl化しても抗菌活性は失われた(図8)。
最後に、No. 313の官能基の化学修飾を行った。No. 313の官能基末端のmethyl基をethyl基に伸長させても抗菌活性に変化は無かった。また、このethyl体の水酸基をすべてacetyl化すると抗菌活性は失われた(図8)。
No. 313は、C1位にdimethyldithiocarbamate基がβ結合した化合物であるが、C6位にもdimethyldithiocarbamate基を結合させた。その結果、No. 313に比べ活性が下がった。No. 313の抗菌活性に重要であると考えられるC=S(二重結合)をC=Oにして活性の変化をみた。その結果、No. 313に比べ抗菌活性が低下した(図8)。
【実施例】
【0046】
3. 結核菌に対するNo. 313の作用点についての検討
M. bovis BCGとM. tuberculosis (MTB)は、遺伝子学的に99.5 %以上の相同性を示すことが明らかとなっている。M. bovis BCGとMTBは、増殖においても相関が見られたため、M. bovis BCGを用いて薬剤感受性試験を行った。
既存の薬剤の薬剤感受性試験により、INH, RFP, SMは、殺菌的薬剤とEB, PASは、静菌的薬剤であることが確認できた(図2a)。
No. 313について、培養9日(2.0×106 CFU/ml)、12日(2.5×106 CFU/ml)の結果より、No. 313は、対数増殖期の菌に対して、殺菌的に作用することが分かった。また、50 mic、10 micでは、死菌を残さず溶けたように死滅したので、溶菌的作用を有することがあることが示唆された(図1a、1b)。ThiuramやNo. 313の誘導体のひとつGlc-N-Ac DEDTCBでも同様の結果が得られた(図1d、1e)。21日目(7.0×108CFU/ml)の菌液を半休止期の菌液とし、増殖阻害を見た所、対数増殖期よりは少ないが、生菌数が減少した。(図1e)
No. 313の構造は、glucosamimeにN, N-dimethyldithiocarbamateが結合した構造で、官能基は、Thiuramに由来している。N, N-dimethyldithiocarbamic acid sodium salt及びThiuramは、ヒト肺線維芽細胞 (MRC-5)に強い細胞傷害活性を有することが分かった(図3G、3H)。一方、No. 313は、100 μg/mlでも、80 %以上コントロール出来ることが分かった。また、検量線を引き、TD50 (Toxic dose)値を求め、651 μg/mlとした。また、TD50/MICは、28.1であった(図10)。
図1a~1e及び他の検討結果より、No. 313の50 mic、10 micでは、溶菌的活性が認められた。そこで、結核菌の細胞壁への影響を検討した。結核菌の細胞壁は、特有の脂質構造を有しており、他の菌同様、ペプチドグリカンも構造に含んでいる。そこで今回は、結核菌と同じグラム陽性偏性好気性桿菌Micrococcus luteusの細胞壁を用いて、No. 313のペプチドグリカンへの影響について検討した。No. 313の50 mic、10 micで、約50 kDa付近のフラクションのバンドの消失が観察された(図4)。同様にリゾチームでも観察された(図5)。リゾチームの場合、37 kDa付近にもバンドが確認できた。Thiuramでは見られなかった(データ示さず)。
【実施例】
【0047】
4. No. 313の毒性の検討
No. 313の投与に伴う体重の変化を調べた。その結果、大幅な体重変化は認められなかった(図11のB)。また、肝臓への影響を検討した結果からもNo. 313の毒性が低いことが示された(図12)。
【実施例】
【0048】
5. No.313のin vivoでの効果
ストレプトマイシンは40mg/kgで体内寄生菌を有意に減少させた(図13)。脾臓においてNo. 313投与量160mg/kgで結核菌の減少が見られた(図13)。肺で効果が見られなかったのは、No. 313の投与経路が腹腔内投与であったためと考えられる。
【実施例】
【0049】
以上の結果の中で特に重要な事項をまとめると次の通りである。
(1)糖誘導体No. 313は、ヒト型結核菌Mycobacterium tuberculosis H37Rvに対し、最小発育阻止濃度が25μg/mlで活性を示した。
(2)No. 313の構造相関の結果、母核をgalactosamineにすると抗菌活性が二倍上昇し、官能基のmethyl基をethyl基に伸長させると細胞毒性が2分の1緩和された。
(3)No. 313は、溶菌的に作用し、その作用点は、細胞壁のペプチドグリカンである可能性が示唆された。
(4)No. 313の毒性が低いことが明らかとなった。
(5)No. 313のin vivoでの効果が確認された。
【実施例】
【0050】
C.考察
新しい抗結核薬の開発と導入は、結核化学療法の治療の短縮や多剤耐性結核の治療をはじめ結核対策において多くの効果が期待できる(参考文献13、14)。抗結核薬の開発は、1944年の米国でのストレプトマイシン(SM)に始まり、イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)等、日本では、従来11種の薬剤が使用されてきた(参考文献17)。一方でフルオロキノロン (FQ)は保険適用が認められていないことや、カプレオマイシン(CPM)の薬価基準からの削除、サイクロセリン(CS)が製造中止されるなど、使用できる薬剤が減少しているのが現状である。さらに、1965年のRFPの開発を最後に、過去30年間、新規の化学構造と新たな作用機序を有する強力な新薬は1剤も開発されることなく現在に至っている(参考文献14)。そこで、本発明者らの研究グループでは、結核菌に対して抗菌活性を有する糖鎖誘導体の合成及びスクリーニングを進め、ヒト型結核菌に抗菌活性を有する新規糖化合物No. 313 (2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl N,N-dimethyldithiocarbamate)に抗結核作用があることを見出した。更にNo. 313の構造活性相関と抗菌スペクトル及び作用点について検討を行った。
【実施例】
【0051】
No. 313は、ヒト型結核菌Mycobacterium tuberculosis H37Rv、ウシ型結核菌M. bovis BCGに対して抗菌活性があることが分かった。一方、迅速発育型M. smegmatis、トリ型結核菌M. aviumや、結核菌と同じグラム陽性菌Staphylococcus aureus、及びグラム陰性菌E. coliには抗菌活性を示さなかったことから、結核菌に特異的に作用すると考えられる。MICは25μg/mlであり、既存の薬剤と比べると高いことが分かった。そこで、構造活性相関を行い、抗菌活性の変化について検討した。No. 313は、細菌細胞壁構成成分であるN-acetyl glucosamineを母核とし、C1位にdimethyldithiocarbamate基がβ結合した単糖の化合物である。官能基は、dithiocarbamate系殺菌剤のThiuram(水不溶性)に由来する。また、性状は水溶性を示す。最初に、No. 313の母核の化学修飾を行った。No. 313の母核は、glucosamineであるが、mannosamineにすることにより、抗菌活性は失われた。逆にgalactosamineにすることで、二倍活性が強くなった。この事から、4位の水酸基も活性に重要であることが示唆された。
【実施例】
【0052】
次に、No. 313の水酸基の化学修飾を行った。No. 313の全てのhydroxyl基をacetyl化することで抗菌活性は失われた。また、6位や3位、4位を特異的にacetyl化しても抗菌活性は失われた。このことから、No. 313は、hydroxyl基でなければならないことが示された。最後に、No. 313の官能基の化学修飾を行った。No. 313の官能基末端のmethyl基をethyl基に伸長させても抗菌活性に変化は無かった。また、acetyl化すると、No. 313の場合と同様に、抗菌活性は失われた。しかし、diethyl体は、No. 313よりも細胞障害活性が減弱することが示唆されており(図3I)、官能基末端の伸長は細胞毒性を下げる可能性がある。最後に、No. 313の抗菌活性に重要であると考えられるC=S(二重結合)をC=Oにして活性の変化をみた。その結果、No. 313に比べ抗菌活性が低下した。さらに構造活性相関として2位のN-acetyl基の化学修飾を検討が必要であると考えられる。
【実施例】
【0053】
No. 313と既存の薬剤の薬剤感受性試験の結果より、No. 313は、対数増殖期の菌(培養9日、12日目)に対して、殺菌的に作用することがわかった(図1a-C、1b-C)。また、50 mic、10 micでは、濁度が減少しており、溶菌的作用を有することが示唆された。50 mic、10 mic では、既存の薬剤(INH, EB)よりも、迅速な菌の死滅が確認できた(data not shown)。50 micでは、半休止期の菌(培養21日目)に対しても殺菌的作用があることが示された(図1c-C)。現在求められている抗結核薬は、対数増殖期及び半休止期の菌に殺菌的作用を有する化合物である(参考文献14)。既存の薬剤では、リファンピシンがそれに相当する(参考文献20)。
【実施例】
【0054】
No. 313のC1位の官能基に由来するN,N-dimethyldithiocarbamic acid sodium salt、及びThiuramは、ヒト肺線維芽細胞 (MRC-5)に強い細胞傷害活性を有することがわかった(図3G、3H)。一方、No. 313は、100 μg/mlでも、80 %以上コントロール出来ることがわかった。しかし、TD50/MIC値は26で、既存の薬剤よりは治療域が狭い事が示された。しかし、官能基単体N, N-dimethyldithiocarbamic acid sodium salt(参考文献21-23)及びThiuram(参考文献24)は、細胞をコントロール出来ないのに対し、糖を付加することでNo. 313は細胞毒性が軽減されたと考えられる。この結果から、糖の付加による細胞内への移行性の変化が推察された。一方で、官能基がDisulfiram(抗酒薬)に由来するジエチル体のTD50/MIC値は69であり、治療域が広くなることが示唆された。このことからも、C1位の官能基末端の伸長は細胞毒性軽減の面からも有益であると考えられる。
【実施例】
【0055】
図1a~1c及び他の検討結果より、No. 313の50 mic、10 micでは、溶菌的活性が認められた。溶菌的活性は、既知化合物リゾチームにあるような細胞壁の崩壊を伴うことがわかっている(参考文献25-27)。そこで、結核菌の細胞壁への影響を検討した。結核菌の細胞壁は、微生物の中でも最も複雑とされ、化学的にも多種類の分子から構築されている。P. Brennanらのモデルでは、結核菌細胞壁の特徴は、ペプチドグリカン層のムラミン酸と結合したarabinogalactan mycolateの厚い層があり、ミコール酸やその他の糖脂質がさらに外層に存在するとされる(参考文献28)。No. 313の構造が細胞壁由来成分である事と以前の結果から、No. 313とグルタミン酸との相互作用が認めらたことから細胞壁に含まれるペプチドグリカン(PGN)への影響について検討した。今回は、結核菌と同じグラム陽性偏性好気性桿菌Micrococcus luteusの細胞壁を用いて検討した。No. 313の50 mic、10 micで、約50 kDa付近のフラクションのバンドの消失が観察された(図4)。このことから、No. 313がリゾチームのようにPGNを切断する作用を有することが示唆された。同様にリゾチームでは同じ現象が確認できた(参考文献29)。しかしこの作用は、Thiuramでは見られなかった(データ示さず)。Thiuramは、一般的には、SH酵素阻害や金属酵素阻害作用(金属キレート作用)が明らかになっている(参考文献23、24、30-32)。No. 313の殺菌的作用はThiuramに由来すると考えられ、銅、亜鉛をキレートする作用も確認できたが(data not shown)、今回の結果より、Thiuramとは別の作用点を持つ事が示唆された。現在使用されている薬剤にペプチドグリカン切断活性を有するものはなく、既存の薬剤との相乗効果が期待できることも示唆された。また、作用点が既存の薬剤と異なることで多剤耐性結核菌への有用性が考えられる。
No. 313は、特に細胞毒性及び作用点の面から、非常に有用な化合物であると考えられる。
【実施例】
【0056】
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【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の抗結核化合物は結核菌特異的な抗菌活性を示す。本発明の抗結核化合物又はその塩を有効成分とする抗結核薬は結核の予防ないし治療に極めて有用である。
【0058】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図面
【図3A】
0
【図3B】
1
【図3C】
2
【図3D】
3
【図3E】
4
【図3F】
5
【図3G】
6
【図3H】
7
【図3I】
8
【図3J】
9
【図6】
10
【図7】
11
【図8】
12
【図9】
13
【図10】
14
【図11】
15
【図12】
16
【図13】
17
【図1a】
18
【図1b】
19
【図1c】
20
【図1d】
21
【図1e】
22
【図2a】
23
【図2b】
24
【図2c】
25
【図2d】
26
【図2e】
27
【図4】
28
【図5】
29