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明細書 :血管内皮増殖因子結合性アプタマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5223086号 (P5223086)
公開番号 特開2008-237042 (P2008-237042A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 血管内皮増殖因子結合性アプタマー
国際特許分類 C12N  15/115       (2010.01)
FI C12N 15/00 ZNAH
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2007-078642 (P2007-078642)
出願日 平成19年3月26日(2007.3.26)
審査請求日 平成21年10月30日(2009.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】池袋 一典
【氏名】早出 広司
個別代理人の代理人 【識別番号】100088546、【弁理士】、【氏名又は名称】谷川 英次郎
審査官 【審査官】小倉 梢
参考文献・文献 特開2007-014292(JP,A)
日本化学会講演予稿集,2007年 3月12日,Vol.87th, No.2 ,p. 1273,4 J1-17
Biotechnol. Lett.,2006年,Vol. 28,p. 1377-1381
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,2005年,Vol. 102, No. 52,p. 18902-18907
調査した分野 C12N 15/00-90
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
WPI



特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1又は配列番号2記載の塩基配列から成る一本鎖ポリヌクレオチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、以下、「VEGF」と呼ぶことがある)に結合する新規なアプタマーに関する。
【背景技術】
【0002】
VEGFは、血管の内皮細胞に存在する受容体に結合し、内皮細胞の増殖を促すことで、血管新生を促進する。このためVEGFは、血管新生が重要な役割を果たす各種疾患との関連が注目されており、例えば、固形腫瘍患者の血清中での濃度上昇が報告されている。このため、VEGFに結合する物質が得られれば、血管新生を伴うさまざまな疾患の診断を行ううえで有用なセンサー素子となることが期待される。
【0003】
試料中のタンパク質等の被検物質の測定は、現在、主として免疫測定法により行なわれている。免疫測定法としては様々な方法が知られており、実用化されているが、いずれの方法においても、被検物質に対する特異抗体が用いられる。被検物質に対する特異抗体の作出は常法により行なうことができるが、手間がかかり、このため特異抗体は高価である。
【0004】
一方、任意の分子と特異的に結合するポリヌクレオチド分子であるアプタマーが知られている。アプタマーは、市販の核酸合成機を用いて化学的に全合成できるので、特異抗体に比べてはるかに安価であり、修飾が容易であるため、センシング素子としての応用が期待されている。所望の標的分子と特異的に結合するアプタマーは、SELEX (Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment)と呼ばれる方法により作出可能である(非特許文献1)。この方法では、標的分子を担体に固定化し、これに膨大な種類のランダムな塩基配列を有する核酸から成る核酸ライブラリを添加し、標的分子に結合する核酸を回収し、これをPCRにより増幅して再び標的分子を固定化した担体に添加する。この工程を10回程度繰り返すことにより、標的分子に対して結合力の高いアプタマーを濃縮し、その塩基配列を決定して、標的分子を認識するアプタマーを取得する。なお、上記核酸ライブラリーは、核酸の自動化学合成装置により、ランダムにヌクレオチドを結合していくことにより容易に調製可能である。このように、ランダムな塩基配列を有する核酸ライブラリーを用いた、偶然を積極的に利用する方法により、任意の標的物質と特異的に結合するアプタマーを作出できる。
【0005】
また、本願発明者らは、通常のSELEXにおいて、被検物質との結合能がより高いアプタマーを効率的に得ることができるSELEXの改良法を発明した(特許文献1)。特許文献1に記載されるSELEX改良法では、通常のSELEXにおいて、所望の標的物質と核酸ライブラリー中の核酸とを結合させる際に、非標的物質を固定化した担体を共存させ、所望の標的物質と結合した核酸のみを回収し、PCRにより増幅し、増幅物から一本鎖核酸を取得し、これを核酸ライブラリーとして、標的物質を固定化した領域に接触させ、固相に結合した核酸を回収し、同様にPCRで増幅し、一本鎖を取得し、これを核酸ライブラリーとして再度、標的物質と非標的物質をそれぞれ固定化した領域と接触させ、以下同様にサイクルを繰り返す方法である。この方法によれば、非標的物質や担体に結合するアプタマーは淘汰され、標的物質に特異的に結合するアプタマーが濃縮されていく。
【0006】
上記の通り、アプタマー自体及びその創製方法は公知であるが、VEGFに結合するアプタマーは知られていない。また、上記の通り、アプタマーの創製方法は、偶然を積極的に利用する方法であるので、標的物質に対して高い結合能を有するアプタマーが得られるかどうかはやってみなければわからない。
【0007】

【特許文献1】特開2007-14292号公報
【非特許文献1】Tuerk, C. and Gold L. (1990), Science, 249, 505-510
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、VEGFとの結合能が高い新規なアプタマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、アプタマーの創製方法におけるスクリーニング工程として、特許文献1に記載された、本願発明者が発明した方法と、溶液中で結合させた標的物質とポリヌクレオチドとの複合体をゲル電気泳動により分離し、採取する、ゲルシフト法とを組み合わせた新規なアプタマー創製方法を駆使することにより、VEGFとの結合能が高いアプタマーを得ることに成功し、その塩基配列を決定し、さらに、その欠失変異体を複数合成し、それらのVEGFとの結合能を調べて、VEGFとの相互作用部位を突き止め、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、配列番号1又は配列番号2記載の塩基配列から成る一本鎖ポリヌクレオチドを提供する。

【0011】
また、本発明は、配列番号2に示される塩基配列の4nt~55ntの領域を含む一本鎖ポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドの二次構造に含まれる、4nt~6ntと20nt~18ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt~17ntにより形成される第1のループ部と、27nt~35ntと55nt~47ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、36nt~46ntにより形成される第2のループ部とを具備する二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造(ただし、第1のステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、各ループ部を構成する塩基数は±2個の範囲でもよく、第2のステム部を構成する塩基対の数は±2個の範囲でもよく、第1のステム部と第2のステム部の間の塩基数は±2個の範囲でもよい)を形成する領域を含むその修飾体から成り、血管内皮増殖因子と結合するポリヌクレオチドを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、VEGFとの結合能が高い新規なアプタマーが初めて提供された。本発明のアプタマーとVEGFとの特異的な結合性を利用することにより、VEGFを高感度、高精度に検出及び定量することが可能である。従って、本発明は、癌の診断等に貢献するものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のVEGF結合性アプタマーは、下記実施例に詳述する方法により創製された。簡単に述べると、特許文献1に記載されている方法、すなわち、通常のSELEXにおいて、VEGFとDNAライブラリー中のDNAとを結合させる際に、非標的物質としてピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ(以下、「PQQGDH」)を固定化した担体を共存させ、VEGFと結合したDNAのみを回収し、PCRにより増幅し、増幅物から一本鎖DNAを取得し、これをDNAライブラリーとして、VEGFを固定化した領域に接触させ、固相に結合したDNAを回収し、同様にPCRで増幅し、一本鎖を取得し、これをDNAライブラリーとして再度、VEGFとPQQGDHをそれぞれ固定化した領域と接触させ、以下、同様にサイクルを繰り返す方法と、VEGFとDNAライブラリー中のDNAとの結合を溶液中で行わせ、結合したVEGFとDNAとの複合体をゲル電気泳動により分離し、採取する、ゲルシフト法とを組み合わせた新規なアプタマー創製方法を駆使することにより創製された。さらに、血清中に含まれるVEGFに特異的なアプタマーを創製するため、上記担体を血清でブロッキングした。アプタマーの作出に、標的物質を固定化した担体を血清でブロッキングすることはこれまでに知られておらず、本願発明者らが初めて考え出した手法である。
【0014】
上記方法により、VEGFとの結合能を有するDNAが13種類得られ、それらのうち、VEGFとの結合能が特に高い2種を選び、その塩基配列を決定した。それらの塩基配列を配列番号1及び配列番号2にそれぞれ示す。以下、配列番号1に示す塩基配列を有するポリヌクレオチドを「アプタマーA」、配列番号2に示す塩基配列を有するポリヌクレオチドを「アプタマーB」と呼ぶことがある。さらに、アプタマーAの欠失変異体等の修飾体であって、VEGFとの結合能を有するアプタマーを総称して「第1のアプタマー」と呼ぶことがある。同様に、アプタマーBの欠失変異体等の修飾体であって、VEGFとの結合能を有するアプタマーを総称して「第2のアプタマー」と呼ぶことがある。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「塩基配列を有する」とは、ポリヌクレオチドの塩基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号1で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」とは、配列番号1に示される塩基配列を持つ66塩基のサイズのポリヌクレオチドを意味する。
【0015】
最近接塩基対法を用いた核酸構造予測プログラムであるm-fold(商品名、Nucleic Acids Res. 31 (13), 3406-15, (2003)、The Bioinformatics Center at Rensselaer and Wadsworth のウェブサイトからダウンロード可能)を用い、本発明の第1及び第2のアプタマーが形成する二次構造を決定した。それらを図1及び図2に示す。図1中、Clone 2と記載されている図がアプタマーAの二次構造を示し、図2中、Clone 1と記載されている図がアプタマーBの二次構造を示す。図1及び図2に示されるように、本発明のアプタマーは、一本鎖のポリヌクレオチド分子の一部の領域が分子内で塩基対合して二本鎖の部分(ステム部)を形成し、各ステム部の先端又は中間の部位に、塩基が対合していないループ部を形成している。
【0016】
アプタマーの結合能は、主としてステム-ループ構造により発揮されることが知られているので、各アプタマーに含まれるステム部及びループ部の全部又は一部を含む欠失変異体を作製し、それらとVEGFとの結合性を調べた。調べたアプタマーAの欠失変異体は、図1中、del2-1(配列番号1の1nt~50nt)、del2-2(配列番号1の4nt~50nt)、del2-3(配列番号1の4nt~38nt)及びshortdel(配列番号1の4nt~20nt)と記載されている4種類である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「Xnt」(Xは数字)は、その配列における、5'末端からX番目の塩基を示す。これら4種類の欠失変異体のうち、shortdel以外の全ての欠失変異体がVEGFとの結合能を有していた。従って、配列番号1で示される塩基配列のうち、少なくとも4nt~38ntの領域を含むものがVEGFとの結合能を有することが明らかになった。
【0017】
一方、調べたアプタマーBの欠失変異体は、図2中、del1-1(配列番号2の1nt~55nt)及びdel1-2(配列番号2の4nt~55nt)と記載されている2種類である。これらは両方ともVEGFとの結合能を有していた。従って、配列番号2で示される塩基配列のうち、少なくとも4nt~55ntの領域を含むものがVEGFとの結合能を有することが明らかになった。
【0018】
本発明のアプタマーは、一本鎖のポリヌクレオチドから成り、所定の条件下(フォールディング条件下)では、図1及び図2に示すように、一部の領域同士が分子内で塩基対合して二本鎖から成るステム部を形成する。なお、フォールディング条件は、アプタマーの一部の領域同士が分子内で塩基対合して二本鎖から成るステム部を形成する条件であり、公知の通常のアプタマーの使用条件でもある。通常、室温下で、所定の塩濃度を有し、カルシウムキレート剤、さらに所望により界面活性剤を含む水系緩衝液中である。例えば、下記実施例で採用した、室温下、10 mM Tris-HCl、100 mM NaCl、0.05 mM EDTA(さらに0.05% Tween(商品名)界面活性剤を含んでいてもよい)を含む水溶液中でフォールディングを行うことができる。なお、SELEX又はその改良法でアプタマーを創製した場合には、アプタマー創製時に、VEGFとの結合条件として採用したフォールディング条件下で所定の二次構造をとってVEGFと結合するアプタマーが得られる。
【0019】
本発明のアプタマーを構成するポリヌクレオチドは、DNAでもRNAでも人工核酸でもよいが、安定性の観点からDNAが好ましい。
【0020】
アプタマーAでは、上記の通り、VEGFとの結合能は、配列番号1中の4nt~38ntの領域(del2-3)が存在すれば発揮される。アプタマーの結合能は、主としてステム-ループ構造により発揮されることが知られている。従って、del2-3中に含まれる、4nt~6nt(配列番号1中。以下、第1のアプタマーの説明において同じ)と20nt~18ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt~17ntにより形成される第1のループ部と、22nt~24ntと38nt~36ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、25nt~26ntと35ntにより形成される第2のループ部と、27nt~28ntと34nt~33ntとの塩基対合により形成される第3のステム部と、29nt~32ntにより形成される第3のループ部とを具備する二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造を形成する領域を含むポリヌクレオチドであってVEGFとの結合能を有するものも、本発明の範囲に包含される。なお、VEGFとの結合能を有するか否かは、下記実施例に具体的に記載するアプタマーブロッティング法により調べることができる。二次構造は、上記したm-fold(商品名)のような周知の二次構造解析ソフトにより容易に予測できる。また、ここで、「同じ形状及びサイズの二次構造」とは、各ステム部及びループ部のサイズとそれらの位置関係が等しい二次構造という意味である。従って、同じ形状及びサイズの二次構造が形成される限り、その塩基配列は、配列番号1の4nt~38ntに示される塩基配列に限定されるものではない。例えば、ステム部では、相補的な塩基対が対合するが、塩基対合が起きればステム部が形成されるので、ステム部を形成する塩基としては、相補性を有する他の塩基を採用することができる。例えば、第1のアプタマーでは、4ntのcと20ntのgが対合するが、これらを入れ替えて、4ntをgとし、20ntをcとしてもよい。すなわち、ステム部を構成する塩基対は、それぞれ互いに入れ替わってもよい。また、g-c対に代えてa-t対とすることも可能である。また、ループ部についても、その位置に同じサイズのループ部が形成される限り、他の塩基配列を採用してもよい。また、第1のアプタマーにおいては、各ステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、第1のループ部を構成する塩基数は±2個の範囲でもよく、第2及び第3のループ部を構成する塩基数は1個又は2個多くてもよく、第1のステム部と第2のステム部の間の塩基数は1個又は2個多くてもよい。もっとも、第1のアプタマーは、del2-3と同一の形状及びサイズを持つ二次構造を形成する領域を含むものであることが好ましい。また、各ループ部の塩基配列も、配列番号1に示される塩基配列と同じ塩基配列を有するもの、すなわち、前記第1のループ部がgtctattcaatから成り、前記第2のループ部がgtとtから成り、前記第3のループ部がgtatから成るものが好ましい。また、各ステム部も配列番号1に示される塩基配列と同じ塩基配列を有するものが好ましい。さらに、配列番号1の4nt~38ntの領域と同じ塩基配列を有する領域を含むものが特に好ましい。
【0021】
また、下記実施例に具体的に記載されるように、del2-2(4nt~50nt)は、del2-3(4nt~38nt)よりもVEGFに対する結合能が高かった。従って、第1のアプタマーは、配列番号1に示される塩基配列の38ntの下流に39nt~50ntの領域をさらに含むポリヌクレオチド又は二次構造が、43nt~44ntと50nt~49ntとの塩基対合により形成される第4のステム部と、45nt~48ntにより形成される第4のループ部をさらに含む二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造を形成する領域を含むものがより好ましい。ただし、第4のステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、第4のループ部を構成する塩基数は1個又は2個多くてもよく、第2のステム部と第4のステム部の間の塩基数は±2個の範囲にあってもよい。もっとも、del2-2の二次構造と同一の二次構造を形成する領域を含むものが好ましく、特に、第4のループ部がggccから成るものが好ましい。また、ステム部も配列番号1に示される塩基配列と同じ塩基配列を有するものが好ましい。さらに、配列番号1の4nt~50ntの領域と同じ塩基配列を有する領域を含むものが特に好ましい。del2-2(4nt~50nt)及びdel2-1(1nt~50nt)のVEGFとの結合能は十分に高く、アプタマーAの50ntよりも下流の領域は結合能にほとんど寄与しておらず、不要であり、また、本発明の効果を阻害しない他の任意の配列であってもよい。
【0022】
アプタマーBでは、上記の通り、VEGFとの結合能は、配列番号1中の4nt~55ntの領域(del1-2)が存在すれば発揮される。従って、第1のアプタマーと同様、第2のアプタマーは、配列番号2に示される塩基配列の4nt~55ntの領域を含む一本鎖ポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドの二次構造に含まれる、4nt~6ntと20nt~18ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt~17ntにより形成される第1のループ部と、27nt~35ntと55nt~47ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、36nt~46ntにより形成される第2のループ部とを具備する二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造を形成する領域を含むその修飾体から成り、VEGFとの結合能を有するポリヌクレオチドである。ただし、第1のステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、各ループ部を構成する塩基数は±2個の範囲でもよく、第2のステム部を構成する塩基対の数は±2個の範囲でもよく、第1のステム部と第2のステム部の間の塩基数は±2個の範囲でもよい。もっとも、第2のアプタマーは、del1-2と同一の形状及びサイズを持つ二次構造を形成する領域を含むものであることが好ましい。また、各ループ部の塩基配列も、配列番号2に示される塩基配列と同じ塩基配列を有するもの、すなわち、前記第1のループ部がgtctattcaatから成り、第2のループ部がatgtgtgtgggから成るものが好ましい。また、各ステム部も配列番号2に示される塩基配列と同じ塩基配列を有するものが好ましい。さらに第1のステム部と第2のステム部を結ぶ一本鎖領域(21nt~26nt)の塩基配列も、配列番号2に記載されるものに限定されないが、配列番号2に記載されるものであることが好ましい。従って、配列番号2の4nt~55ntの領域と同じ塩基配列を有する領域を含むものが特に好ましい。なお、del1-2のVEGFとの結合能は十分に高く、アプタマーBの50ntよりも下流の領域及び1nt~3ntは結合能にほとんど寄与しておらず、不要であり、また、本発明の効果を阻害しない他の任意の配列であってもよい。
【0023】
なお、本発明の第1及び第2のアプタマーは、上記した各二次構造を形成する領域を含み、VEGFとの結合能を有するものであればよく、そのサイズの上限は特に限定されないが、あまりに長いものは合成の手間とコストがかかるので、アプタマーのサイズは、通常、100塩基程度以下、好ましくは80塩基程度以下である。
【0024】
本発明の第1及び第2のアプタマーは、下記実施例に詳述する新規な方法により創製されたが、本発明によりその塩基配列が明らかとなったので、市販の核酸合成機を用いて容易に化学合成することができる。
【0025】
また、本発明のアプタマーは、それ自体周知の方法により、標的物質であるVEGFの検出及び定量に使用することができる。被検試料としては血清や血漿等の体液やその希釈物を用いることができる。本発明のアプタマーを用いた、被検試料中のVEGFの検出又は定量は、アプタマーによる周知の通常の方法により行うことができ、例えば抗体の代わりに、本発明のアプタマーを利用した、免疫測定法(イムノクロマトグラフィーやELISA(Enzyme linked Immunosorbent Assay)で行うことが可能である。それだけでなく、本願発明者が開発した、アプタマーでしかできない測定法である、アプタマー酵素サブユニット(WO 2005/049826、特願2005-264504)や、capturable aptamer(PCT/JP2007/051050、特願2006-262048)の測定方法を利用することによっても行うことができる。また、VEGFの検出又は定量は、下記実施例に具体的に記載するアプタマーブロッティングや、表面プラズモン共鳴法(SPR)等の周知の方法によっても行うことができる。
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1 VEGF結合性アプタマーの創製
方法
1.VEGFに結合するDNAアプタマーのスクリーニング
(1) アプタマーブロッティングによるスクリーニング (2,4,5 ラウンド)
ニトロセルロース膜の各面に、VEGF(入手先 R&D systems)及びPQQGDH(入手先:有限会社Ultizyme International)を含む緩衝液を添加し(各物質の添加量を下記表1に示す)、自然乾燥させることにより固定化した後に、4 %の血清でブロッキングし、Binding Buffer(10 mM Tris-HCl、100 mM NaCl、0.05 mM EDTA、0.05 % Tween(商品名))で洗浄した。DNA自動合成機により化学合成した、DNAライブラリーをFITC修飾し、Binding Buffer中でフォールディングさせた後に、終濃度80 nMになるよう調製し、蛋白質を固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。DNAライブラリーは、1nt~18nt(以下、「5'側領域」と呼ぶことがある)及び49nt~66nt(以下、「3'側領域」と呼ぶことがある)が配列番号1に示される配列中の1nt~18nt及び49nt~66ntとそれぞれ同一で、19nt~48ntの30塩基の領域がランダムなものであった。洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)修飾された抗FITC抗体を用い、化学発光によりssDNAのターゲット蛋白質への結合を確認した。また、フェノールクロロホルム処理することにより、蛋白質を固定化した部分からDNAを抽出・回収し、PCR増幅後、一本鎖調製することで次のラウンドのライブラリーを作製した。PCRは、具体的には、前記5'側領域と同じ塩基配列を有する18塩基のフォワード側プライマーと、前記3'側領域に相補的な塩基配列を有する18塩基のリバース側プライマーとを用い、95℃、60秒の変性工程、52℃、60秒のアニーリング工程及び72℃、60秒の伸長工程から成るサイクルを40サイクル繰り返すことにより行った。一本鎖調製は、具体的には、PCR産物に、その1/10倍量の×50 TE Bufferおよび1/5倍量の5 M NaClを添加し、この溶液をアビジン固定化アガロースに加え、30分インキュベートした。その後、上清を取り除き、Column buffer (30 mM HEPES、500 mM NaCl、5mM EDTA、pH7.0)で2回洗浄した。上清を取り除いた後、0.15 M NaOHを加えて10分間攪拌し、上清を回収する操作を2回繰り返し行うことにより、ssDNAを溶出させた。ssDNAを含む上清を2M HClで中和し、エタノール沈殿によりssDNAを回収した。
【0028】
【表1】
JP0005223086B2_000002t.gif

【0029】
(2) Gel-shift法によるスクリーニング (1,3 ラウンド)
FITC修飾されたssDNAライブラリーをbinding buffer中でフォールディング後、ライブラリーとVEGFを混合し、室温で1時間インキュベートした。その後、10 %の未変性ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行うことにより、VEGFと結合したssDNAと遊離のssDNAを分離した。電気泳動後、FITCを検出することによりDNAのバンドを確認し、複合体と思われる部分を切り出した。ここへ0.1% SDSを含むTE bufferを添加し凍結させた後、90℃で5分間加熱し、室温で一晩撹拌することにより、ゲルからDNAを溶出させた。遠心分離後、上清を回収し、フェノール、フェノールクロロホルム、およびクロロホルムを用いてssDNAを抽出した後に、得られたssDNAを上記と同様にPCRにより増幅し、次のラウンドのライブラリーを作製した。
【0030】
2. シーケンス解析
スクリーニングにより得られたライブラリーを未修飾のプライマーを用いて上記と同様にPCR増幅し、MERmaid kit (QBio gene)を用いて精製した後、p-GEM-Tベクターを用いてクローニングを行った。得られたプラスミドをDH5αに形質転換し、プレート(0.5 mM IPTG、80μg/ml X-Gal)上で本培養した後に、得られたコロニーからプラスミドを抽出し、シーケンス解析を行った。
【0031】
3. VEGFに対するスクリーニングにより得られたアプタマーの結合能の評価
(1) アプタマーブロッティングによる評価
スクリーニング時と同様な方法により評価を行った。すなわち、ニトロセルロース膜の片面に、VEGF 0.2μg/2μl、PQQGDH 0.5μg/0.5μlを添加し(いずれも5pmol)した後に、10%の血清と室温で1時間インキュベートすることによりブロッキングを行った。スクリーニングにより得られたssDNAをフォールディング後、終濃度80nMになるように調整し、蛋白質を固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。その後、化学発光により各ssDNAのターゲット蛋白質への結合を確認した。いずれのssDNAも、5'末端にbiotinが修飾されており、検出にはHRP修飾されたNeutrAvidin(商品名)を用いた。Bufferはスクリーニングの際と同様のものを用いた。
【0032】
(2) SPRによる評価
測定には、CM4(商品名)チップ、固定化Buffer、Running Bufferとしてスクリーニングで用いたBinding Buffer、再生Bufferとして250 mM NaCl、10 mM NaOH、0.5%SDSを用いた。50 μg/mlに溶かしたVEGFを、アミンカップリングによりチップに固定化し、100 nM、250 nM、500 nM、750 nM、1 μM、2.5 μMに調製しフォールディングした各アプタマーおよびランダムライブラリーを流速5μl/minでインジェクトし、シグナルを観察した。
【0033】
結果
上記スクリーニングにより、アプタマーブロッティングにおいて結合が確認されたアプタマーが13種類得られ、これらのうち、特に濃いスポットを与えた2種のアプタマーが得られた。これらの2種のアプタマーが、配列番号1に示す塩基配列を有するアプタマーA(Clone 2)と、配列番号2に示す塩基配列を有するアプタマーB(Clone 1)である。なお、アプタマーAのスポットの方がアプタマーBのスポットよりもさらに濃く、従って、アプタマーAが最も高い結合能を示した。m-fold(商品名)により決定したアプタマーA及びアプタマーBの二次構造を図1及び図2にそれぞれ示す。これらの二次構造については上記したとおりである。
【0034】
得られたアプタマーA及びアプタマーBとVEGFとの相互作用を上記の通りSPRにより解析した。結果を図3に示す。図3中、(a)がアプタマーA、(b)がアプタマーB、(c)がランダムなDNAライブラリーをインジェクトした結果を示す。アプタマーA、アプタマーBともランダムライブラリーよりもVEGFに対する親和性が高いことが示された。
【0035】
実施例2 相互作用部位の解析
実施例1で得られたアプタマーA及びアプタマーBが、VEGFと結合するのに必要な領域がどの部分であるのかを解析した。アプタマーの標的物質との結合には、ステム-ループ構造が重要な役割を果たすことが知られているので、ステム-ループ構造を含む領域から成る各種欠失変異体をDNA合成機により化学合成した。作製したアプタマーAの欠失変異体は、del2-1(配列番号1の1nt~50nt)、del2-2(配列番号1の4nt~50nt)、del2-3(配列番号1の4nt~38nt)及びshortdel(配列番号1の4nt~20nt)の4種類であり、これらの二次構造は図1に示されている。作製したアプタマーBの欠失変異体は、del1-1(配列番号2の1nt~55nt)及びdel1-2(配列番号2の4nt~55nt)の2種類であり、これらの二次構造は図2に示されている。
【0036】
これらの各欠失変異体のVEGFに対する結合性を、実施例1の「3(1)アプタマーブロッティングによる評価」の項に記載した方法により評価した。
【0037】
その結果、アプタマーAの欠失変異体であるShortdel以外の欠失変異体は、全てVEGFとの結合性を有することが確認された。del2-1及びdel2-2のスポットは、del2-3よりも明らかに濃かった。また、del1-2のスポットはdel1-1のスポットよりも濃かった。これらの結果から、アプタマーAでは4nt~38nt、好ましくは4nt~50nt、アプタマーBでは4nt~55ntの領域があればVEGFとの結合性を有することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のアプタマーであるアプタマーA及びその各種欠失変異体の二次構造を示す図である。
【図2】本発明のアプタマーであるアプタマーB及びその各種欠失変異体の二次構造を示す図である。
【図3】本発明のアプタマーであるアプタマーA及びアプタマーBとVEGFとの結合反応をSPRで測定した結果を、ランダムライブラリーと比較して示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2