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明細書 :原子価が低いチタン原子を含む微粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5544080号 (P5544080)
公開番号 特開2010-126782 (P2010-126782A)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発行日 平成26年7月9日(2014.7.9)
公開日 平成22年6月10日(2010.6.10)
発明の名称または考案の名称 原子価が低いチタン原子を含む微粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
FI B22F 9/24 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2008-304098 (P2008-304098)
出願日 平成20年11月28日(2008.11.28)
審査請求日 平成23年6月6日(2011.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】金井塚 勝彦
【氏名】小林 浩和
【氏名】北川 宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100115152、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 茂
審査官 【審査官】川村 裕二
参考文献・文献 特開2006-001774(JP,A)
特開2005-129358(JP,A)
特表2005-536634(JP,A)
特開2000-212611(JP,A)
特開2002-294301(JP,A)
特表2008-521591(JP,A)
特開2001-192711(JP,A)
R,Franke et al,A Study of the Electronic and Geometric Structure of Colloidal Ti0・0.5THF,J.Am.Chem.Soc.,米国,American Chemical Society,1996年,Vol.118、No.46,P.12090-12097,本願引用文献
調査した分野 B22F 9/00- 9/30
B22F 1/00- 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
ゼロ価のチタン原子を含む微粒子の製造方法であって、
(i)ハロゲン化チタンの溶液を調製する工程と、
(ii)前記溶液中に、MBH4(ただし、MはLi、NaまたはKを表す)の式で表される少なくとも1種の化合物を添加して、66℃以上の温度で24時間以上反応させる工程とを含み、
前記溶液の溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドである、微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記化合物が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶液の溶媒がテトラヒドロフランである、請求項1に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、原子価が低いチタン原子を含む微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン微粒子は、触媒や薄膜状のIC基板の材料として注目されている。金属チタンを得る方法としては、塩化チタンをマグネシウムと反応させるクロール法が知られている。しかし、クロール法では微粒子を作製することはできない。
【0003】
チタンを含む微粒子の製造方法として、強い還元剤を用いる方法も提案されている(たとえば非特許文献1)。非特許文献1の方法では、K[B(C253H](以下、“K[BEt3H]”という場合がある)という強い還元剤が用いられている。非特許文献1には、出発材料を20℃で1.2時間反応させたのち、-78℃で2.16時間冷却することによって、[Ti・0.5THF]xという組成式を有するオルガノゾルが得られることが記載されている。
【0004】
しかし、非特許文献1に記載の方法で用いられているのは強い還元剤であり、反応の制御が難しい。また、上記方法では、-78℃で冷却する工程が必要である。
【0005】
少なくとも金属化合物と還元剤とキャッピング剤とを用いて金属微粒子を製造する方法が開示されている(たとえば特許文献1~3)。これらの先行文献には、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いることができることが記載されているが、水素化ホウ素ナトリウムを用いた実施例は記載されていない。また、これらの先行文献に記載された実施例の反応では、反応時間が40分以下である。
【0006】

【非特許文献1】R. Frankeら、"A Study of the Electronic and Geometric Structure of Colloidal Ti0・0.5THF"、J. Am. Chem. Soc., Vol.118, No.48, p12090-12097、1996年
【特許文献1】特開2007-84930号公報
【特許文献2】特表2007-533862号公報
【特許文献3】特開2008-13846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3には、チタンを還元した実施例が記載されていない。これは、一般的な条件では、溶液中で還元剤を用いてチタンを還元することが難しいためであると考えられる。
【0008】
このような状況において、本発明は、原子価が低いチタン原子を含む微粒子の新規な製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、検討した結果、本件発明者らは、一般的には行われないような特殊な条件で初めて、水素化ホウ素ナトリウムを用いてチタンを還元して微粒子を作製できることを見出した。本発明はこの新たな知見に基づくものである。
【0010】
すなわち、本発明の製造方は、原子価が低いチタン原子を含む微粒子の製造方法であって、(i)ハロゲン化チタンの溶液を調製する工程と、(ii)前記溶液中に、MBH4(ただし、MはLi、NaまたはKを表す)の式で表される少なくとも1種の化合物を添加して、66℃以上の温度で24時間以上反応させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子価が低いチタン原子を含む微粒子を簡単な方法で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0013】
[微粒子の製造方法]
本発明の製造方法は、原子価が低いチタン原子を含む微粒子の製造方法である。この製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。
【0014】
工程(i)では、ハロゲン化チタンの溶液を調製する。以下、ハロゲン化チタンの溶液を、「溶液(A)」という場合がある。ハロゲン化チタンは、たとえば、四塩化チタン、四フッ化チタン、四臭化チタン、または四ヨウ化チタンである。溶液(A)の溶媒には、ハロゲン化チタンを溶解させることができる溶媒が用いられる。溶媒の沸点は、66℃以上であることが好ましい。溶媒の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(CH2Cl2)、クロロホルム(CHCl3)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C25OH)、アセトニトリル(CH3CN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれる。
【0015】
溶液(A)におけるハロゲン化チタンの濃度は、たとえば0.1μmol/L~100mol/Lの範囲にあってもよい。
【0016】
工程(ii)では、溶液(A)中にMBH4(ただし、MはLi、NaまたはKを表す)の式で表される少なくとも1種の化合物を添加して、66℃以上の温度(反応温度)で24時間以上反応させる。反応中は、溶液(A)を撹拌することが好ましい。好ましい一例では、溶液(A)に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を添加する。
【0017】
工程(ii)では、加熱しながら24時間以上反応させることが重要である。本発明の効果が得られる限り、反応温度は、40℃以上や50℃以上や60℃以上や70℃以上であってもよい。反応温度は、溶液(A)の溶媒の沸点以上の温度であってもよい。一例では、溶液(A)の溶媒がテトラヒドロフランであり、反応温度が66℃以上である。たとえば、66℃~70℃の温度で24時間以上反応させてもよい。反応温度は350℃以下であってもよい。反応時間は、48時間以上であってもよく、72時間以上であってもよい。反応時間の上限に特に限定はないが、たとえば500時間以下としてもよい。
【0018】
MBH4(たとえばNaBH4)は、溶液(A)におけるハロゲン化チタン:MBH4のモル比が1:0.01~1:10000の範囲となるように添加してもよく、たとえば1:0.1~1:100の範囲となるように添加してもよい。
【0019】
本発明の製造方法では、溶液(A)に保護剤やキャッピング剤を加える必要はない。ただし、必要に応じて溶液(A)に保護剤やキャッピング剤を加えてもよい。
【0020】
工程(ii)によって、ハロゲン化チタンが還元され、原子価が低いチタン原子を含む微粒子が形成される。工程(ii)によって形成される微粒子は、チタンのみで形成されてもよいし、チタンと他の物質(たとえばTHF)とを含んでもよい。チタン原子の原子価は、たとえば3価以下や2価以下や1価以下であり、典型的にはゼロ価である。工程(ii)によって形成される微粒子の粒径は、5nm以下であってもよく、1nm以下であってもよい。粒径は、たとえば、電子顕微鏡で得られる像から測定される最大粒径である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
まず、滴下ロートおよびジムロート冷却管が接続された三ツ口フラスコを用意した。この三ツ口フラスコに、四塩化チタン(TiCl4)3.46g(18.2mmol)およびTHF60mLを投入し、四塩化チタン溶液を調製した。次に、三ツ口フラスコを恒温水槽内に配置し、恒温水槽を70℃に保って四塩化チタン溶液を加熱した。
【0023】
次に、10mLのTHFに水素化ホウ素ナトリウム91.0mmolを分散させた分散液を滴下ロートに配置し、滴下ロートから分散液を滴下した。そして、反応液を撹拌しながら恒温水槽の温度を70℃に保った状態で72時間保持した。テトラヒドロフランの沸点は66℃であるため、反応液の温度は約66℃に保たれたと考えられる。反応液の色は、最初は淡黄色であり、反応時間1時間では変化せず、反応時間24時間では暗黄色となり、反応時間72時間では黒色となった。この色の変化は、チタン原子が還元され、ゼロ価のチタンが存在していることを意味している。このように、反応時間が1時間程度ではチタンの還元がほとんど起こらず、従来行われていなかった24時間以上という長時間の反応によって初めてチタンの還元が明確に生じることが分かった。
【0024】
得られた反応生成物について、高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)による観察と、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)による観察とを行った。HRTEM像を図1に示す。また、図1の領域A、BおよびCにおけるEDSスペクトルを、図2に示す。
【0025】
HRTEM像には、直径が数nm以上の粒子が見られなかった。一方、EDSスペクトルにはチタン元素が観測された。そのため、チタンを含む極めて微小な粒子(直径1nm以下)が形成されていることが示唆される。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、原子価が低いチタン原子を含む微粒子が得られる。そのような微粒子は、様々な分野に利用でき、たとえば触媒、利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の製造方法で製造された反応生成物のHRTEM像である。
【図2】図1のHRTEM像の領域A、BおよびCにおけるEDSスペクトルである。
図面
【図1】
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【図2】
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