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明細書 :頭頸部癌の腫瘍マーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4967112号 (P4967112)
公開番号 特開2007-000052 (P2007-000052A)
登録日 平成24年4月13日(2012.4.13)
発行日 平成24年7月4日(2012.7.4)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
発明の名称または考案の名称 頭頸部癌の腫瘍マーカー
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 15/00 F
C12M 1/00 A
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2005-182322 (P2005-182322)
出願日 平成17年6月22日(2005.6.22)
審査請求日 平成20年5月7日(2008.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】中城 公一
【氏名】浜川 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】名和 大輔
参考文献・文献 日本口腔科学会雑誌,2001,50(3),p.145-54
頭けい部癌,2005,31(2),p.257,2F-211
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE(STN)
PubMed

特許請求の範囲 【請求項1】
頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法であって、被検試料中に頭頸部癌の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含み、
前記被検試料が、頭頸部癌の原発腫瘍組織試料であり、
前記腫瘍マーカーが、配列表の配列番号18~20の塩基配列、GenBankアクセッション番号(2005年5月16日付)が、AK097363(配列表の配列番号49)、AK097950(配列表の配列番号50)、AK128568(配列表の配列番号51)、M13232(配列表の配列番号52)であるポリヌクレオチドの塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物並びにその翻訳産物の少なくとも一方を含む頭頸部癌の腫瘍マーカーであり、
前記判定工程は、前記被検試料の前記腫瘍マーカーの測定値が、健常者及び/又は転移陰性症例の原発腫瘍組織部の測定値の平均の3倍以上の値よりも大きい場合に陽性と判定することを含み、
頭頸部癌の原発腫瘍組織試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、前記頭頸部癌のリンパ節転移を示す、頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法。
【請求項2】
請求項1記載の頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法に用いるマイクロアレイであって、
請求項1記載の使用方法において使用される頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出にプローブとして使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号18~26の塩基配列、請求項1記載のGenBankアクセッション番号の塩基配列(配列表の配列番号49~52の塩基配列)、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイ。
【請求項3】
請求項1記載の頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法に用いるキットであって、請求項2に記載のマイクロアレイ又は前記マイクロアレイを製造するためのポリヌクレオチドを含むキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、頭頸部癌の腫瘍マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
頭頸部癌とは、耳、鼻、咽喉頭、口腔、頸部、顔面等にできる癌である。現在、頭頸部癌に対する治療法は、主に病理組織学的所見及び進行病期により決定されている。しかしながら、その治療効果及び予後は、必ずしも一様ではない。これは、がん細胞内の遺伝子の変異及び発現量の異常に起因していると考えられている。したがって、遺伝子レベルでの頭頸部癌の分類や解析が求められている。
【0003】
また、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の治療において、大きな問題の一つに頸部リンパ節転移の抑制が挙げられる。現時点での口腔悪性腫瘍の根治的治療法は、手術療法のみであるが、頸部リンパ節転移の有無はその術式、さらには患者の予後をも大きく左右する。したがって、頸部リンパ節転移の正確な診断は、治療上必要不可欠である。しかしながら、触診や画像診断(CT,MRI,Echo,PET)等の診断方法では、潜在的なリンパ節転移の検出には限界がある。そこで、より正確なリンパ節転移診断として、センチネルリンパ節生検が行われている(非特許文献1~3参照)。センチネルリンパ節生検は、1992年にMortonらが悪性黒色腫に対してその有用性を報告して以来(非特許文献4参照)、様々な悪性腫瘍に対しても臨床応用がなされており、頭頸部領域の悪性腫瘍に対してもその有用性が報告されている(非特許文献2及び3参照)。
【0004】
本発明者の研究グループは、これまでに、センチネルリンパ節微小転移診断に関する研究を重ね、例えば、直径が20μm以上の転移巣が存在すれば、ヘマトキシリンエオジン染色により検出可能であること、サイトケラチン免疫染色を併用することにより少数細胞でも確認できること、RT-PCR法等を用いたリアルタイム定量化による遺伝子診断では、1~数個の腫瘍細胞が検出可能であること、その検出標的遺伝子として、SquamousCellCarcinomaAntigen(SCCA)遺伝子が有用であること等を明らかにしている(非特許文献5~8参照)。

【非特許文献1】佐藤一彦、平山星夫 他:『腋窩郭清指標としての錫コロイドを用いた sentinel lymph node biopsy』:医学のあゆみ 192(2):147-150,2000.
【非特許文献2】松塚 崇、鹿野真人 他:『センチネルリンパ節生検による頸部リンパ節転移予測』:頭頸部腫瘍 27(1):192-197,2001.
【非特許文献3】木原圭一、甲能直幸 他:『口腔癌N0症例におけるセンチネルリンパ節の検討』:頭頸部腫瘍 28(1):108-113,2002.
【非特許文献4】Morton D. Wen DR. et al:『Technical details of intraoperative lymphatic mapping for early stage melanoma』:Arch Surg 127(4):392-399,1992.
【非特許文献5】Hamakawa H. Fukuzumi M. et al:『Genetic detection of micrometastases based on SCC antigen mRNA in cervical lymph nodes of head and neck cancer』:Clin Exp Metastasis 17:593-599,1999.
【非特許文献6】Hamakawa H. Takemura K. et al:『Histological study on pN upgrading of oral cancer』:Virchows Arch 437: 116-121, 2000.
【非特許文献7】大西詔子:リアルタイム定量化PCR法を用いた口腔癌頸部リンパ節微小転移の遺伝子診断:愛媛医学 21(2):183-191,2002.
【非特許文献8】中城公一、新谷 悟、大西詔子、寺門永顕、浜川裕之:口腔悪性腫瘍におけるセンチネルリンパ節微小転移の術中迅速診断:頭頸部腫瘍 29(2):64-69,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、頭頸部癌において、遺伝子発現に基づく診断のための適切な腫瘍マーカーが、さらに必要とされている。そこで、本発明は、頭頸部癌の腫瘍マーカーであって、以下の4つの腫瘍マーカーの提供を目的とする。すなわち、第1の目的は、一次治療の後、癌が本当に消失したのか、又は、追加治療が必要なのかについて、患者に過度の負担を与えることなく検査できる腫瘍マーカーを提供することであり、第2の目的は、頭頸部癌の原発腫瘍組織から、この頭頸部癌が、リンパ節に転移し得るものであるのかどうかを検査できる腫瘍マーカーを提供することであり、第3の目的は、センチネルリンパ節において、頭頸部癌のセンチネルリンパ節微小転移があるのかどうかを高精度に検査できる腫瘍マーカーを提供することであり、第4の目的は、頭頸部癌の腫瘍組織において、前記癌が、放射線療法や化学療法に対して耐性を示すかどうかを検査できる腫瘍マーカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の目的を達成するために、本発明の第1の頭頸部癌の腫瘍マーカー(以下、本発明の第1の腫瘍マーカーともいう)は、配列表の配列番号1~17の塩基配列、GenBankアクセッション番号(2005年5月16日付)が、AB018342、AF186081、AF263466、AF405705、AF443278、AF458084、AJ237673、AK023577、AK055588、AL832465、BC002591、BC002710、BC003563、BC003635、BC007858、BC011029、BC013142、BC014668、BC018136、BC023504、BC026326、BC035419、BC041846、BC053555、BX641156、M19481、M36809、X75015、Z34974であるポリヌクレオチドの塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物並びにその翻訳産物の少なくとも一方を含む頭頸部癌の腫瘍マーカーであって、被検者の体液試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、前記被検者における頭頸部癌の存在を示す頭頸部癌の腫瘍マーカーである。
【0007】
前記第2の目的を達成するために、本発明の第2の頭頸部癌の腫瘍マーカー(以下、本発明の第2の腫瘍マーカーともいう)は、配列表の配列番号18~20の塩基配列、GenBankアクセッション番号(2005年5月16日付)が、AB019438、AB027440、AB063955、AF017464、AF296314、AF410637、AJ004956、AJ408268、AJ415142、AJ426415、AJ578339、AK097363、AK097950、AK128568、AK128649、AX810705、AY172961、AY320616、L15467、M13232、U03870、X51755、X57809、X63081、X70208、X72818、Z00008、Z27501であるポリヌクレオチドの塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物並びにその翻訳産物の少なくとも一方を含む頭頸部癌の腫瘍マーカーであって、頭頸部癌の原発腫瘍組織試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、前記頭頸部癌のリンパ節転移を示す頭頸部癌の腫瘍マーカーである。
【0008】
前記第3の目的を達成するために、本発明の第3の頭頸部癌の腫瘍マーカー(以下、本発明の第3の腫瘍マーカーともいう)は、配列表の配列番号11、15、21、22の塩基配列、GenBankアクセッション番号(2005年5月16日付)が、AF186081、AF405705、BC001226、BC002591、BC002710、BC013142、BC023504、M19481、Z34974であるポリヌクレオチドの塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物並びにその翻訳産物の少なくとも一方を含む頭頸部癌の腫瘍マーカーであって、リンパ節試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、前記頭頸部癌のセンチネルリンパ節微小転移を示す頭頸部癌の腫瘍マーカーである。
【0009】
前記第4の目的を達成するために、本発明の第4の頭頸部癌の腫瘍マーカー(以下、本発明の第4の腫瘍マーカーともいう)は、配列表の配列番号22~26の塩基配列、GenBankアクセッション番号(2005年5月16日付)が、AF017987、AF078749、AK024359、AK027694、AK075427、AL137517、BC001501、BC008042、BC009799、BC052269、BC061905、BC067764であるポリヌクレオチドの塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物並びにその翻訳産物の少なくとも一方を含む頭頸部癌の腫瘍マーカーであって、頭頸部癌の腫瘍組織試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、前記頭頸部癌の放射線化学療法への耐性を示す頭頸部癌の腫瘍マーカーである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の腫瘍マーカーのため、本発明者は、まず、正常組織又は他の組織型の悪性腫瘍組織と比較して、頭頸部癌である扁平上皮癌組織においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める遺伝子転写産物を310種類同定した。そして、次に、これらのうち、健常者及び良性腫瘍患者の血液中には発現が認められず、頭頸部癌患者の血液中にのみ発現が認められる遺伝子を同定して本発明の第1の腫瘍マーカーに到達した。
【0011】
本発明の第1の腫瘍マーカーは、例えば、血液や唾液等の体液試料を検査試料として使用できるから、患者に過度の負担を与えることなく前記腫瘍マーカーを用いた検査をすることができる。また、本発明の第1の腫瘍マーカーは、全身のいずれかの部位における頭頸部癌の存在を示すから、例えば、一次治療後の追加治療の妥当性の検討や、手術後の癌の取り残しの検査、癌の発見等を目的とした検査に使用できる。
【0012】
本発明の第2の腫瘍マーカーのため、本発明者は、頭頸部扁平上皮癌の原発腫瘍組織部において、リンパ節への転移陽性症例と転移陰性症例とで遺伝子発現量を比較し、転移陽性症例においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める遺伝子転写産物を31種類同定して本発明の第2の腫瘍マーカーに到達した。
【0013】
本発明の第2の腫瘍マーカーによれば、頭頸部癌の原発腫瘍組織部から、リンパ節転移の可能性を知ることができるから、例えば、頭頸部癌の治療や診断における重要な判断基準を提供できる。また、本発明の第2の腫瘍マーカーによれば、例えば、生検試料のみを用いてリンパ節転移の可能性を知ることができるから、頸部への外科的侵襲を避けることが可能となる。さらに、本発明の第2の腫瘍マーカーは、悪性黒色腫症例においても、同様に、リンパ節転移のマーカーとなりうる。
【0014】
本発明の第3の腫瘍マーカーのため、本発明者は、まず、正常組織又は他の組織型の悪性腫瘍組織と比較して、頭頸部癌である扁平上皮癌組織においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める遺伝子転写産物を310種類同定した。そして、次に、これらのうち、病理組織学的に微小転移陰性リンパ節にその発現が認められず、転移陽性リンパ節においてのみ発現が認められる遺伝子転写産物を同定して本発明の第3の腫瘍マーカーに到達した。
【0015】
本発明の第3の腫瘍マーカーによれば、頭頸部癌のセンチネルリンパ節への転移をより高い精度で判定でき、複数種類の本発明の第3の腫瘍マーカーを用いれば、さらに精度が向上し、偽陰性症例の排除を確実とすることができる。
【0016】
本発明の第4の腫瘍マーカーのため、本発明者は、放射線化学療法施行後、局所再発あるいは肺転移を認めた症例と、放射線化学療法により完全寛緩が得られた症例とを比較して、再発腫瘍組織にのみ共通して3倍以上の発現亢進を認めた遺伝子転写産物を同定して本発明の第4の腫瘍マーカーに到達した。
【0017】
本発明の第4の腫瘍マーカーによれば、例えば、頭頸部癌に対する放射線化学療法の治療効果を予見でき、より適切な治療法が選択、無駄な治療の回避が可能となる。
【0018】
以上のように、本発明の第1~第4の頭頸部癌の腫瘍マーカーを用いれば、頭頸部癌の遺伝子診断が可能であり、本発明のそれぞれの頭頸部癌の腫瘍マーカー及び従来の診断法を併用することで、診断精度が向上し、無駄のない適切な治療が促進され、治療成績及び患者の治療後のQOLの飛躍的な向上が期待できる。さらに、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの遺伝子は、頭頸部癌の新規治療ターゲットとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法は、被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む方法である。
【0020】
本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチドは、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出にプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1~26の塩基配列、前記GenBankアクセッション番号の塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
【0021】
本発明のマイクロアレイは、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出に使用できるマイクロアレイであって、本発明のプローブ用ポリヌクレオチドのスポットが配置されたマイクロアレイである。
【0022】
本発明のキットは、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出に使用できるキットであって、本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチド並びに本発明のマイクロアレイの少なくとも一方を含むキットである。
【0023】
本発明のポリヌクレオチドは、下記(1)~(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドである。
(1)配列表の配列番号1~26の塩基配列及びその部分配列からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(2)前記(1)ポリヌクレオチドの塩基配列の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、前記(1)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
(3)前記(1)ポリヌクレオチドの塩基配列の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、前記(1)のポリヌクレオチドとの相同性が90%以上であるポリヌクレオチド。
(4)前記(1)から(3)のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0024】
本発明のポリペプチドは、下記(1)又は(2)に記載のポリペプチドである。
(1)配列表の配列番号27~48のアミノ酸配列及びその部分配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)前記(1)ポリペプチドのアミノ酸配列の1個から数個のアミノ酸残基が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ配列からなるポリペプチドであって、前記(1)のポリペプチドとの相同性が90%以上であるポリペプチド。
【0025】
本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーについて説明する。
【0026】
本発明において、前記「腫瘍マーカー」とは、癌細胞の目印(マーカー)になる物質であって、癌の診断や治療の判断基準として役立つ物質の総称をいう。本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる物質は、遺伝子の転写産物であるRNA鎖、及び前記転写産物の翻訳産物であるポリペプチドの少なくとも一方である。
【0027】
本発明において、「遺伝子転写産物」とは、遺伝子のDNAを鋳型として転写されるRNA鎖、すなわち、RNAポリメラーゼにより合成されるRNA鎖、及び、転写後細胞内で修飾されたRNA鎖をいう。前記転写産物に含まれるRNA鎖は、特に制限されず、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、運搬RNA(tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、及びその他のタンパク質を指令しないRNA等が挙げられる。これらのRNA鎖は、転写後、細胞内でプロセッシングされたものも含む。本発明において、「遺伝子転写産物の翻訳産物」とは、前記転写産物がmRNAである場合に、前記mRNAから翻訳されるポリペプチドをいう。前記ポリペプチドには、オリゴペプチド及びタンパク質も含まれ、翻訳後、細胞内又は体内で種々のプロセッシングをされたものを含む。また、本発明において、「遺伝子」とは、生体機能と関連するDNAの任意の断片をいう。なお、配列表のポリヌクレオチドが転写産物であるmRNA等のRNAを表す場合、t(チミン)塩基は、u(ウラシル)塩基に読み替えるものとする。
【0028】
次に、本発明の第1の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の第1の腫瘍マーカーは、被検者の体液試料で使用するマーカーであって、前記被検者の身体のいずれかに頭頸部癌が存在すること示すマーカーである。この第1の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる分子は、配列表の配列番号1~17の塩基配列、下記表1に記載のGenBankアクセション番号の塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物及び/又はその翻訳産物である。前記遺伝子転写産物及び前記翻訳産物を、以下、本発明の第1の腫瘍マーカーのマーカー転写産物及びマーカー翻訳産物ともいい、また、前記マーカー転写産物及びマーカー翻訳産物をコードする遺伝子を、本発明の第1の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子という。前記「体液試料」とは、特に制限されず、例えば、血液、唾液等が含まれる。
【0029】
本発明の第1の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子の中で、配列表の配列番号1~17のマーカー転写産物をコードするマーカー遺伝子は、本発明者が見出した新規遺伝子である。これらの中で、配列表の配列番号5~7、及び、配列表の配列番号16と17のマーカー転写産物は、それぞれ、スプライシングバリアントであって、同一遺伝子由来のmRNAの配列である。また、下記表1に、本発明の第1腫瘍マーカーのマーカー転写産物の中で、公知の配列のものについて、GenBankアクセション番号及び一般的な遺伝子名を示す。
【0030】
【表1】
JP0004967112B2_000002t.gif

【0031】
本発明の第1の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが陽性であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や良性の腫瘍患者における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や良性の腫瘍患者等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の第2の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の第2の腫瘍マーカーは、頭頸部癌の原発腫瘍組織試料で使用するマーカーであって、前記頭頸部癌がリンパ節転移をしたこと、又はするおそれがあることを示すマーカーである。この第2の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる分子は、配列表の配列番号18~20の塩基配列、下記表2に記載のGenBankのアクセション番号の塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物及び/又はその翻訳産物である。前記遺伝子転写産物及び前記翻訳産物を、以下、本発明の第2の腫瘍マーカーのマーカー転写産物及びマーカー翻訳産物ともいい、また、前記マーカー転写産物及びマーカー翻訳産物をコードする遺伝子を、本発明の第2の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子という。
【0033】
本発明の第2の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子の中で、配列表の配列番号18~20のマーカー転写産物をコードするマーカー遺伝子は、本発明者が見出した新規遺伝子である。また、下記表2に、本発明の第2腫瘍マーカーのマーカー転写産物の中で、公知の配列のものについて、GenBankアクセション番号及び一般的な遺伝子名を示す。
【0034】
【表2】
JP0004967112B2_000003t.gif

【0035】
本発明の第2の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが陽性であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や転移陰性症例の原発腫瘍組織部等における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や転移陰性症例の原発腫瘍組織部等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値が挙げられる。
【0036】
次に、本発明の第3の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の第3の腫瘍マーカーは、リンパ節試料で使用するマーカーであって、前記頭頸部癌のセンチネルリンパ節微小転移を示すマーカーである。この第3の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる分子は、配列表の配列番号11、15、21、22の塩基配列、下記表3に記載のGenBankアクセション番号の塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物及び/又はその翻訳産物である。前記遺伝子転写産物及び前記翻訳産物を、以下、本発明の第3の腫瘍マーカーのマーカー転写産物及びマーカー翻訳産物ともいい、また、前記マーカー転写産物及びマーカー翻訳産物をコードする遺伝子を、本発明の第3の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子という。
【0037】
本発明の第3の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子の中で、配列表の配列番号11、15、21、22のマーカー転写産物をコードする遺伝子は、本発明者が見出した新規遺伝子である。また、下記表3に、本発明の第3腫瘍マーカーのマーカー転写産物の中で、公知の配列のものについて、GenBankアクセション番号及び一般的な遺伝子名を示す。
【0038】
【表3】
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【0039】
本発明の第3の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが陽性であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や微小転移陰性リンパ節等における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や転移陰性リンパ節等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値が挙げられる。
【0040】
次に、本発明の第4の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の第4の腫瘍マーカーは、頭頸部癌の腫瘍組織試料で使用するマーカーであって、前記頭頸部癌が放射線化学療法に対して耐性を有することを示すマーカーである。この第4の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる分子は、配列表の配列番号23~26の塩基配列、下記表4に記載のGenBankアクセション番号の塩基配列、その部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列を含む遺伝子転写産物及び/又はその翻訳産物である。前記遺伝子、転写産物及び翻訳産物を、以下、本発明の第4の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子、マーカー転写産物及びマーカー翻訳産物という。なお、放射線化学療法とは、特に制限されず、例えば、既存の放射線療法及び化学療法の少なくとも一方を含む治療方法である。前記化学療法としては、例えば、抗癌剤治療を含む。
【0041】
本発明の第4の腫瘍マーカーのマーカー遺伝子の中で、配列表の配列番号23~26のマーカー転写産物をコードする遺伝子は、本発明者が見出した新規遺伝子である。また、下記表4に、本発明の第4腫瘍マーカーのマーカー転写産物の中で、公知の配列のものについて、GenBankアクセション番号及び一般的な遺伝子名を示す。
【0042】
【表4】
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【0043】
本発明の第4の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが陽性であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や放射線化学療法感受性症例等における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や放射線化学療法感受性症例等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値が挙げられる。
【0044】
次に、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法について説明する。本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの使用方法としては、特に制限されず、従来公知の腫瘍マーカーと同様の使用方法にて使用できるが、例えば、被検者の被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む使用方法が挙げられる。まず、前記準備工程において、被検者由来の本発明の各腫瘍マーカーに適した試料を準備する。本発明の第1の腫瘍マーカーであれば、例えば、血液や唾液等の体液試料を準備し、本発明の第2の腫瘍マーカーであれば、例えば、手術又は生検等による原発腫瘍組織試料を準備し、本発明の第3の腫瘍マーカーであれば、例えば、手術又は生検等によるリンパ節試料又はセンチネルリンパ節生検試料を準備し、本発明の第4の腫瘍マーカーであれば、例えば、手術又は生検等による腫瘍組織を準備する。次に、前記検出工程において、本発明の各腫瘍マーカーのマーカー転写産物及び/又はマーカー翻訳産物を、後述するように、それぞれ、例えば、従来公知の方法等を用いて検出し、最後に、前記判定工程において、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する。
【0045】
前記判定工程における本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーが陽性か陰性かの判定は、前述のとおり、例えば、健常者等の値を基準として設定するしきい値と比較して判定することができる。また、前記判定は、本発明の各腫瘍マーカーにおいて、いずれか1種類のマーカー転写産物やマーカー翻訳産物に基づいて行ってもよいが、より多くの種類に基づくことが好ましい。偽陰性や偽陽性を排除できるからである。
【0046】
本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーにおける前記マーカー転写産物を検出する方法としては、特に制限されないが、前記RNA鎖を定量できる従来公知の方法が挙げられ、その方法にも特に制限はないが、例えば、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットプロット、RNaseプロテクションアッセイ等のほか、マイクロアレイを用いる方法、リアルタイムPCR法等のPCRを利用する方法、前記RNA鎖を直接測定する方法等の迅速な測定が可能な方法があげられる。前記定量は、前記判定工程において前記しきい値との比較ができる相対的な定量であってもよく、例えば、適当な内部標準や外部標準を利用することができる。
【0047】
前記マイクロアレイを用いる方法としては、前記マーカー転写産物に対応するプローブが配置されたマイクロアレイを準備し、このマイクロアレイに、前記体液試料中の前記RNA鎖を鋳型として調製した標識化ターゲットをハイブリダイズさせ、前記プローブに結合した前記ターゲットの標識シグナルを測定して前記RNA鎖を定量する方法が挙げられる。測定値の標準化のため、例えば、頭頸部癌の患者と健常者等との間で転写産物量が変化しない遺伝子の転写産物に対応するプローブを内部標準プローブとして利用してもよい。また、例えば、被検者由来のターゲットと健常者等の対照試料由来のターゲットとを用いた競合ハイブリダイゼーションをしてもよい。前記マイクロアレイ及び前記マイクロアレイに配置するプローブは、後述する本発明のマイクロアレイ及び本発明のポリヌクレオチドをそれぞれ使用できる。前記標識化ターゲットの調製方法としては、例えば、トータルRNAを鋳型としたランダムプライミング法、PCR法、その他の遺伝子増幅法等が挙げられる。前記標識化ターゲットは、DNAであってもRNAであってもよい。前記ターゲットの標識化方法としては、特に制限されず、例えば、プライマーを予め標識化しておく方法や、標識化ヌクレオチドを用いる方法等が挙げられるが、標識化ヌクレオチドの場合、取り込み時に偏りがあることから、標識化プライマーを用いる方法が好ましい。標識とする化合物は、特に制限されず、例えば、蛍光物質やDIG(ジゴキシゲニン)等が挙げられる。ハイブリダイゼーションの方法及び条件は、特に制限されず、従来公知の方法で行うことができ、当業者であれば、プローブ、ターゲット、ポリヌクレオチドの種類などによって、適宜調節できる。一般的なハイブリダイゼーション方法及び条件としては、例えば、5×SSC+0.3%SDS中でターゲット及びリファレンスを熱変性した後、マイクロアレイに添加し、65℃で4~16時間のハイブリダイゼーションし、常温の2×SSC+0.1%SDS、及び、2×SSCでそれぞれ5分間洗浄し、0.05×SSCでリンスすること等が挙げられる。前記プローブとハイブリダイゼーションした前記ターゲットの標識シグナルをそれぞれ検出し測定する方法は、特に制限されず、標識の種類に応じて、従来公知の方法又は装置により測定できる。
【0048】
前記リアルタイムPCR法としては、例えば、被検試料のトータルRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型に前記マーカー転写産物領域をPCRで増幅し、リアルタイムモニタリング用試薬を用いて増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法があげられる。前記リアルタイムモニタリング試薬としては、例えば、SYBR(登録商標:Molecular Probes社)GreenIや、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社)プローブ等が挙げられる。さらに、定量性に優れるLATE-PCR法(Linear-After-The-Exponential-PCR; Sanchez et al. (2004) PNAS, 101(7); 1933-1938)を利用してもよい。また、前記mRNAを直接測定する方法としては、例えば、Invader(登録商標:Third Wave Technologies社)RNAアッセイ等があげられる。ただし、マーカー転写産物を検出する方法としては、これらの方法に限られず、種々の定量方法を適用できる。
【0049】
本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーにおけるマーカー翻訳産物を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記マーカー翻訳産物に特異的な抗体を用いた免疫学的測定方法が挙げられる。前記免疫学的測定方法としては、ウエスタンブロット、ELISA、サンドウィッチELISA等が挙げられる。前記抗体は、前記マーカー翻訳産物を用いた従来公知の方法で作製でき、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。前記マーカー翻訳産物の調製方法は、特に制限されないが、例えば、前記マーカー翻訳産物をコードするポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込み、大腸菌等の原核生物、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核生物細胞、又は、インビトロで前記ポリペプチドを発現させ、単離する方法が挙げられる。これらの方法は、当業者であれば、適宜選択して実施できる。
【0050】
次に、本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチドについて説明する。本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチドは、頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出にプローブ及びプライマーの少なくとも一方として使用するポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号1~26の塩基配列、前記GenBankアクセッション番号で規定されるポリヌクレオチドの塩基配列、それらの部分配列、及びそれらの相補配列からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド、並びに、前記ポリヌクレオチドにおいて1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドであって前記ポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドである(以下、本発明のプローブ又は本発明のプライマーともいう)。前記ポリヌクレオチドとしては、特に限定されず、DNA、RNA、又は、従来公知のこれらの誘導体や類縁体等を使用できる。また、欠失、置換もしくは付加が可能な塩基数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上であって、好ましくは、1~3個、より好ましくは、1又は2個である。前記ストリンジェントな条件は、例えば、5×SSC+0.3%SDS中で熱変性した後、65℃で4~16時間のハイブリダイゼーションし、常温の2×SSC+0.1%SDS、及び、2×SSCでそれぞれ5分間洗浄し、0.05×SSCでリンスすること等が挙げられる。本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチドの製造方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により化学合成により製造してもよく、酵素的にインビボ又はインビトロで製造してもよい。
【0051】
本発明のプローブの使用方法は、例えば、上述したとおり、マイクロアレイのプローブに使用したり、リアルタイムPCR法のプローブに使用すること等が挙げられる。マイクロアレイのプローブとして使用する場合、その長さとしては、特に制限されないが、例えば、10~200ヌクレオチドであって、20~100ヌクレオチドが好ましく、より好ましくは40~80ヌクレオチドである。通常、プローブは、その長さが短くなるほど配列特異性が増し、信頼度が向上する。マイクロアレイのプローブとして使用する場合、本発明のプローブには、マイクロアレイの基板に固定するための修飾がされていてもよい。前記修飾は、使用するマイクロアレイ基板の種類に応じて従来公知のものを選択できるが、例えば、プローブのポリヌクレオチドの5’又は3’側のC(3~7)アミノ化等が挙げられる。また、リアルタイムPCR法のプローブとして使用する場合、本発明のプローブには、例えば、蛍光物質及びクエンチャーが結合されていてもよい。
【0052】
本発明のプライマーの使用方法は、例えば、前記リアルタイムPCR法におけるプライマーとして使用したり、マイクロアレイ法おけるターゲットの調製のためのPCR法のプライマーとして使用できる。プライマーの設計は、特に制限されず、従来公知の方法、例えば、プライマー設計用アルゴリズムやソフトウエアを利用して行うことができる。本発明のプライマーは、例えば、蛍光物質やDIG等が修飾されたプライマーを含む。
【0053】
次に、本発明のマイクロアレイについて説明する。本発明のマイクロアレイは、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出に使用するマイクロアレイであって、基板上に本発明のプローブのスポットが配置されたマイクロアレイである。前記マイクロアレイの製造方法は、特に制限されず、例えば、基板表面で直接プローブのポリヌクレオチドを合成する方法(オンチップ法)や、予め調製した本発明のプローブを基板表面に固定する方法等の従来公知の方法が挙げられる。前記オンチップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術とを組合せて、微小なマトリックスの所定の領域で選択的合成を行う方法が挙げられる。また、前記予め調製したプローブを用いる方法としては、プローブ溶解液をインクジェット法により基材に微小滴下して、化学的又は物理的に固定する方法が挙げられる。前記基材としては、特に制限されず、例えば、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。
【0054】
次に、本発明のキットについて説明する。本発明のキットは、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーの検出に使用するキットである。本発明のキットは、第1の態様として、本発明のマイクロアレイを含むキットが挙げられる。前記キットには、さらに、被検試料からトータルRNAを調製するプライマーや試薬、ターゲットを調製するための標識化された本発明のプライマーや試薬等を含んでもよい。前記試薬としては、従来公知の試薬が利用でき、例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、標識化合物、バッファー等があげられる。また、本発明のキットは、第2の態様として、本発明のプローブを含むキットが挙げられる。前記キットは、例えば、前記キットに含まれるプローブの中から選択的に使用してマイクロアレイを製造する場合や、リアルタイムPCR法により検出する場合に使用できる。さらに、本発明のキットは、第3の態様として、前記マーカー翻訳産物に対する抗体を含むキットが挙げられ、例えば、ウエスタンブロット、ELISA等の前記ポリペプチドの免疫学的測定に使用できる。
【0055】
次に、本発明のポリヌクレオチドについて説明する。本発明のポリヌクレオチドは、下記(1)~(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチドであって、例えば、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーとして使用でき、また、本発明のプローブ又は本発明のプライマーとして使用できる。また、本発明のポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、新規なポリペプチドであって、例えば、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーのマーカー物質として使用でき、また、前記抗体の製造に使用できる。
(1)配列表の配列番号1~26の塩基配列及びその部分配列からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(2)前記(1)ポリヌクレオチドの塩基配列の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、前記(1)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
(3)前記(1)ポリヌクレオチドの塩基配列の1個から数個の塩基が、欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、前記(1)のポリヌクレオチドとの相同性が90%以上であるポリヌクレオチド。
(4)前記(1)から(3)のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドとしては、特に限定されず、DNA、RNA、又は、従来公知のこれらの誘導体や類縁体等を使用できる。また、欠失、置換もしくは付加が可能な塩基数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上であって、好ましくは、1~3個、より好ましくは、1又は2個である。前記ストリンジェントな条件は、例えば、5×SSC+0.3%SDS中で熱変性した後、65℃で4~16時間のハイブリダイゼーションし、常温の2×SSC+0.1%SDS、及び、2×SSCでそれぞれ5分間洗浄し、0.05×SSCでリンスすること等が挙げられる。前記相同性としては、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上であり、より好ましくは、97.5%以上である。本発明のプローブ及びプライマー用ポリヌクレオチドの製造方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により化学合成により製造してもよく、酵素的にインビボ又はインビトロで製造してもよい。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドのなかでも、配列表の配列番号1~17に対応する本発明のポリヌクレオチドは、健常者及び良性腫瘍の患者では発現がないか又は発現が抑制され、頭頸部癌が全身のいずれかの部位に残存する患者の体液中に発現される配列表の配列番号1~17に記載の新規配列の転写産物に由来するという共通の性質を有し、かつ、頭頸部癌患者の体液にのみ存在する転写産物RNAを検出できるという前記共通の性質に不可欠な重要な構造要素を有する。また、配列表の配列番号18~20に対応する本発明のポリヌクレオチドは、リンパ節転移陰性の原発腫瘍組織では発現が抑制され、リンパ節転移陽性の頭頸部癌の原発腫瘍組織に発現される配列表の配列番号18~20の新規配列の転写産物に由来するという共通の性質を有し、かつ、リンパ節転移陽性の原発腫瘍組織にのみ存在する転写産物RNAを検出できるという前記共通の性質に不可欠な重要な構造要素を有する。また、配列表の配列番号11、15、21、22に対応する本発明のポリヌクレオチドは、健常者及び頭頸部癌のリンパ節微小転移陰性症例の患者では発現されず、センチネルリンパ節微小転移があった患者のセンチネルリンパ節にのみ発現される配列表の配列番号11、15、21、22に記載の新規配列の転写産物に由来するという共通の性質を有し、かつ、センチネルリンパ節微小転移が認められるリンパ節にのみ発現される転写産物RNAを検出できるという前記共通の性質に不可欠な重要な構造要素を有する。また、配列表の配列番号23~26に対応する本発明のポリヌクレオチドは、放射線化学療法感受性症例では発現が抑制され、放射線化学療法に耐性を有する頸部癌の腫瘍組織において発現が亢進する配列表の配列番号23~26の新規配列の転写産物に由来するという共通の性質を有し、かつ、放射線化学療法に耐性を有する頸部癌の腫瘍組織においてのみ発現が亢進する転写産物RNAを検出できるという前記共通の性質に不可欠な重要な構造要素を有する。
【0058】
次に、本発明のポリペプチドについて説明する。本発明のポリペプチドは、下記(1)又は(2)に記載の新規なポリペプチドであって、例えば、本発明の頭頸部癌の腫瘍マーカーのマーカー翻訳産物として使用でき、また、前記マーカー翻訳産物の抗体の製造に使用できる。
(1)配列表の配列番号27~48のアミノ酸配列及びその部分配列からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)前記(1)ポリペプチドのアミノ酸配列の1個から数個のアミノ酸残基が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、前記(1)のポリペプチドとの相同性が90%以上であるポリペプチド。
【0059】
欠失、置換もしくは付加が可能なアミノ酸残基数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上であって、好ましくは、1~3個、より好ましくは、1又は2個である。前記相同性としては、例えば、90%以上であり、好ましくは95%以上であり、より好ましくは、97.5%以上である。
【0060】
本発明のポリペプチドにおいて、配列表の配列番号27及び28のポリペプチドは、それぞれ、配列表の配列番号1及び2のポリヌクレオチドにコードされるものであり、配列表の配列番号29~31のポリペプチドは、それぞれ、配列表の配列番号5~7のポリヌクレオチドにコードされるものであり、配列表の配列番号32~35のポリペプチドは、それぞれ、配列表の配列番号9~12のポリヌクレオチドにコードされるものであり、配列表の配列番号36~48のポリペプチドは、配列表の配列番号14~26のポリヌクレオチドにコードされるものである。本発明のポリペプチドの調製方法は、特に制限されないが、例えば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、適当な発現ベクターに組み込み、大腸菌等の原核生物、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核生物細胞、又は、インビトロで前記ポリペプチドを発現させ、単離する方法が挙げられる。これらの方法は、当業者であれば、適宜選択して実施できる。
【0061】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0062】
試料の準備
再発症例2例を含む頭頸部悪性腫瘍13症例を対象とした。対象症例の内訳は病理組織学的診断では8例が扁平上皮癌、2例が悪性黒色腫で、骨肉腫、唾液腺癌、基底細胞癌が各1例であった。頸部リンパ節あるいは遠隔転移については、陽性症例が6例、陰性症例が7例であった。また、比較対象として正常粘膜組織(3例)及び健常者(3例)、良性腫瘍症例(1例)血液を用いた。なお、検体の本研究への使用については、患者本人および家族へ十分な説明を行ったうえで、文書による同意を得た。
【0063】
ハイブリダイゼーション
各症例の腫瘍及び正常部組織からは、機械的にホモジナイズした後Isogen(Nippon Gene社製)を用い、血液からは、Tempus Blood RNA kit(Applied Biosystems社製)を用いてトータルRNAを抽出し、精製した。前記トータルRNA2μgを、ケミルネッセントRT-IVTラベリングキット(Applied Biosystems社製)を用いて増幅し、ジゴキシゲニン(Roche Molecular Biochemicals社製)で標識されたcRNAを合成した。前記合成cRNAを、ヒトゲノムサーベイマイクロアレイ(Applied Biosystems社製)にハイブリダイゼーションさせた後、ケミルミネッセントディテクションキット(Applied Biosystems社製)を用いて、洗浄、発色後、Applied Biosystems1700マイクロアレイアナライザー(Applied Biosystems社製)を用いて29098個のヒト全遺伝子の発現を定量した。各症例の遺伝子発現量の比較は、ソフトウエアGeneSpring(Silicon Genetics社製)を用いて解析した。
【0064】
癌細胞存在腫瘍マーカーの同定
まず、正常組織若しくは他の組織型の悪性腫瘍組織と比較し、扁平上皮癌組織においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める遺伝子転写産物を310種類同定した。次に、これらの中から、健常者及び良性腫瘍症例血液中にはその発現が認められない遺伝子転写産物を43種類同定した。その43種類の遺伝子転写産物の配列が、配列表の配列番号1~17及び上記表1のGenBankアクセッション番号の塩基配列である。
【0065】
リンパ節転移腫瘍マーカーの同定
リンパ節への転移陽性症例と転移陰性症例とで遺伝子発現量を比較し、転移陽性症例においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める遺伝子転写産物を31種類同定した。その31種類の遺伝子転写産物の配列が、配列表の配列番号18~20及び上記表2のGenBankアクセッション番号の塩基配列である。なお、これら31種類の遺伝子転写産物のうち、30種類は、イムノグロブリンに関連する遺伝子の転写産物であった。
【0066】
センチネルリンパ節微小転移腫瘍マーカーの同定
上述の扁平上皮癌組織においてのみ共通して3倍以上の発現亢進を認める310の遺伝子転写産物の中で、病理組織学的に微小転移陰性リンパ節にその発現が認められず、転移陽性リンパ節においてのみ発現が認められた遺伝子転写産物を13種類同定した。その13種類の遺伝子転写産物の配列が、配列表の配列番号11、15、21、22及び上記表3のGenBankアクセッション番号の塩基配列である。
【0067】
放射線化学療法耐性腫瘍マーカーの同定
放射線および化学療法施行後、局所再発あるいは肺転移を認めた2症例と放射線化学療法により完全寛緩を得られた4症例とを比較して、再発腫瘍組織にのみ共通して3倍以上の発現亢進を認めた遺伝子を15種類同定した。その15種類の遺伝子転写産物の配列が、配列表の配列番号23~26及び上記表4のGenBankアクセッション番号の塩基配列である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上、説明したとおり、本発明の頭頸部癌の第1~第4の腫瘍マーカーは、全身のいずれかの部位における頭頸部癌の存在を示す腫瘍マーカー、頭頸部癌のリンパ節転移を示す腫瘍マーカー、頭頸部癌のセンチネルリンパ節への転移を示す腫瘍マーカー、及び頭頸部癌の放射線化学療法の耐性を示す腫瘍マーカーを提供できるから、例えば、頭頸部癌の遺伝子診断を含む頭頸部癌の治療・診断の分野で有用である。