TOP > 国内特許検索 > LiverX受容体β特異的RNAコアクチベーター > 明細書

明細書 :LiverX受容体β特異的RNAコアクチベーター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5572800号 (P5572800)
公開番号 特開2009-106275 (P2009-106275A)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
公開日 平成21年5月21日(2009.5.21)
発明の名称または考案の名称 LiverX受容体β特異的RNAコアクチベーター
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 G
C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C12Q 1/02
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2008-261830 (P2008-261830)
出願日 平成20年10月8日(2008.10.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年4月20日 社団法人 日本内分泌学会発行の「第80回 日本内分泌学会学術総会抄録集」第115頁に発表
特許法第30条第1項適用 平成19年4月25日 社団法人 日本糖尿病学会発行の「第50回 日本糖尿病学会年次学術集会」第S-257頁に発表
優先権出願番号 2007263664
優先日 平成19年10月9日(2007.10.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月22日(2011.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 貢士
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】鈴木 崇之
参考文献・文献 特開2006-315997(JP,A)
日本内分泌学会雑誌(第80回 日本内分泌学会学術総会抄録集),2007年 4月20日,Vol.83, No.1,P.115,O-2-6-11
糖尿病 第50巻臨時増刊号(第50回 日本糖尿病学会年次学術集会抄録集),2007年 4月25日,Vol.50, Supplement 1,P.S-257,III-3-15
Gene,2000年,Vol.243,P.93-103
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12N 1/15-1/21
C12N 5/10
C12Q 1/00-1/68
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号1の塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、Liver X 受容体β(LXRβ)のコアクチベーターとして機能するポリヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項3】
請求項2に記載のベクターが導入された細胞。
【請求項4】
化合物のLXRβリガンド活性を測定する方法であって、LXRβを発現し、請求項1に記載のポリヌクレオチドが導入された細胞において化合物によるLXRβアゴニスト活性またはLXRβアンタゴニスト活性を測定する方法。
【請求項5】
LXRβリガンドのスクリーニング方法であって、LXRβを発現し、請求項1に記載のポリヌクレオチドが導入された細胞に候補化合物を添加し、候補化合物によるLXRβアゴニスト活性またはLXRβアンタゴニスト活性を測定する工程を含む方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Liver X 受容体(LXR)β特異的コアクチベーター(co-activator:共役転写活性化因子)として機能するポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターが導入された細胞、ならびに該ポリヌクレオチドが導入された細胞を用いて化合物のLXRβリガンド活性を測定する方法およびLXRβリガンドをスクリーニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Liver X 受容体(LXR)はオキシステロールをリガンドとする核内受容体であり、肝臓におけるコレステロール(CH)の胆汁排泄を促進するなどCH代謝の重要な調節因子である(非特許文献1)。そして、LXRのアゴニストやアンタゴニストは動脈硬化症や高CH血症及び糖尿病などの治療薬として期待されている(特許文献1または2)。
LXRにはαとβのisoformがあり、前者は肝臓、小腸、脂肪組織、マクロファージに主に発現しCH代謝に重要な役割を果たしている(非特許文献2)。一方後者は全身に発現しているが特に脳や中枢神経系での発現が高く、その作用不全は変性神経疾患の原因となることが知られている(非特許文献3)。しかしながら、これまではLXRアゴニストやLXRアンタゴニストは両方を活性化するものしか得られておらず、LXRαまたはLXRβに選択的に働く化合物は同定されていない。
臨床応用のためにはより効果が高く、副作用の少ないと考えられるLXRαまたはLXRβに選択的に働く化合物が望ましく、そのような化合物を得るためにはLXRαまたはLXRβに選択的なコアクチベーターの発見が望まれる。しかし現在までにLXRαまたはLXRβに特異的なコアクチベーターは同定されていなかった。

【特許文献1】特表2007-523087号公報
【特許文献2】特開2006-315997号公報
【非特許文献1】Joseph SB, Castrillo A, Laffitte BA, Mangelsdorf DJ, Tontonoz P. 2003 Reciprocal regulation of inflammation and lipid metabolism by liver X receptors. Nat Med. 9:213-219
【非特許文献2】Apfel R, Benbrook D, Lernhardt E, Ortiz MA, Salbert G, PfahlM.1994. A novel orphan receptor specific for a subset of thyroid hormone-responsive elements and its interaction with the retinoid/thyroid hormone receptor subfamily. Mol Cell Biol. 14:7025-7035.
【非特許文献3】Wang L, Schuster GU, Hultenby K, Zhang Q, Andersson S, Gustafsson JA. Liver X receptors in the central nervous system: from lipid homeostasis to neuronal degeneration. 2002. Proc Natl Acad Sci U S A. 99:13878-13883.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はLXRβ選択的リガンドの同定に有用なLXRβ選択的コアクチベーターを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、LXRβ遺伝子の転写産物の中に、エクソン2と3の間に261bpのintronic sequenceが挿入された配列を有するもの(以下、LXRBSVとも呼ぶ)が存在することを発見した。さらに、この転写産物がLXRβの標的遺伝子転写活性化能を向上させる新規なLXRβ特異的コアクチベーターであることを発見し、これがLXRβ特異的リガンドの同定に使用できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号1の塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、Liver X 受容体β(LXRβ)の
コアクチベーターとして機能するポリヌクレオチド。
(2)(1)のポリヌクレオチドを含むベクター。
(3)(2)のベクターが導入された細胞。
(4)化合物のLXRβリガンド活性を測定する方法であって、LXRβを発現し、請求項1に記載のポリヌクレオチドが導入された細胞において化合物によるLXRβアゴニスト活性またはLXRβアンタゴニスト活性を測定する方法。
(5)LXRβリガンドのスクリーニング方法であって、LXRβを発現し、請求項1に記載のポリヌクレオチドが導入された細胞に候補化合物を添加し、候補化合物によるLXRβアゴニスト活性またはLXRβアンタゴニスト活性を測定する工程を含む方法。

【発明の効果】
【0006】
LXRBSVは本発明において初めて同定されたLXR特異的転写因子であり、LXRαなどの他の核内受容体とは作用しない。LXRβは脳を始めとする中枢神経系に多く発現し、その作用
不全は変性神経疾患の原因となることが知られている。したがって、LXRBSVを用いることでLXRβ特異的なアゴニストやアンタゴニストを同定することができ、これによってLXRβにより調節されている特定の遺伝子群の発現を制御することができ、このような化合物は変性神経疾患などの治療薬として期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明のポリヌクレオチド(LXRBSV)は配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチドであって、Liver X 受容体β(LXRβ)のコアクチベーターとして機能するポリヌクレオチドである。
配列番号1の塩基配列は、図2に示されるように、野生型のマウスLXRβ遺伝子の配列において、エクソン2と3の間(塩基番号184の後)に261bpのintronic sequence(図2の下線部:配列番号1の185-445番目の塩基)が挿入された配列である。このポリヌクレオチドはRNAとして転写されており、LXRβのコアクチベーターとして機能する。本発明のポリヌクレオチドには配列番号1の塩基配列とその相補配列からなるDNAや配列番号1の塩基配列を有するRNAなどが含まれる。
【0008】
また、本発明のポリヌクレオチドはLXRβコアクチベーターとしての機能を有するものである限り、配列番号1の塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするホモログであってもよい。このようなホモログのDNAやRNAも本発明のポリヌクレオチドに含まれる。
なお、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、相同性が高いDNA同士、90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、具体的には、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である68℃、0.1×SSC, 0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
【0009】
LXRβは標的遺伝子のプロモーター領域に結合し、リガンドに応答して標的遺伝子の転写を活性化する核内受容体の一種であり、LXRβとしては、マウスやヒトのLXRβが挙げられる。マウスのLXRβの配列は(NM_009473)として登録されている。ヒトののLXRβの配列は(NM_007121)として登録されている。
LXRβのコアクチベーターとは、LXRβと共存させたときにLXRβによるLXRβ標的遺伝子
の転写活性化の程度を増強させることのできる因子を意味する。
LXRβ標的遺伝子としては、Sterol Response Element Binding Protein(SREBP)-1c遺伝子(Repa JJ, Liang G, Ou J, Bashmakov Y, Lobaccaro JM, Shimomura I, Shan B, Brown MS, Goldstein JL, Mangelsdorf DJ 2000 Regulation of mouse sterol regulatory element-binding protein-1c gene (SREBP-1c) by oxysterol receptors, LXRalpha and LXRbeta. Genes Dev 14:2819-2830)などが挙げられ、SREBP-1c遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子を連結したものでもよい。また、LXRβ結合配列(DR-4(direct repeat-4):配列AGGTCACAGGAGGTCA:配列番号10)を有する遺伝子であればよく、DR-4にルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子を連結したものでもよい。
LXRBSV のLXRβコアクチベーターとしての機能は、LXRβ発現細胞において、LXRβアゴニストを添加したときの標的遺伝子の活性化の程度がLXRBSVの導入によってさらに向上することによって確かめることができる。標的遺伝子の活性化の程度は、標的遺伝子のmRNA量を定量することやレポーター遺伝子の活性化の程度を測定することによって評価することができる。LXRβアゴニストとしては、T0901317(Cayman Chemical Ann Arbor, MI, USA)などが挙げられる。
【0010】
本発明のポリヌクレオチド(LXRBSV)はLXRβのリガンドを同定するために使用することができる。LXRβのリガンドにはLXRβのアゴニストとアンタゴニストの両方が含まれる。
LXRβリガンドのスクリーニングは、LXRβを発現し、LXRBSVが導入された細胞において候補化合物を添加してLXRβによる標的遺伝子転写活性化能を測定し、化合物非添加時の転写活性化能と比較することによって行うことができる。
細胞は哺乳動物由来の細胞が好ましく、株化された培養細胞が好ましく、具体的にはHepG2細胞、CV-1細胞、CHO細胞などが挙げられる。LXRβを発現する細胞はもともとLXRβを発現する細胞であってもよいし、LXRβ遺伝子が導入されたことによりLXRβを発現する細胞であってもよい。LXRBSVは直接導入してもよいが、LXRBSVを含むベクターを用いて導入することが好ましい。ベクターの種類としてはレトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターやプラスミドベクターなどが挙げられ、公知のウイルスベクターやプラスミドベクターが使用できる。
LXRβによる標的遺伝子転写活性化能はSREBP-1c遺伝子などの標的遺伝子の発現量をRT-PCR、定量PCR、ノーザンブロット、ELISA、Western blottingなどの方法により測定することができる。また、LXRβによる標的遺伝子転写活性化能は、標的遺伝子のプロモーターに結合されたレポーター遺伝子を使用して、レポーター遺伝子産物の発現量に基づく指標、例えば、レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子の場合、蛍光強度によって評価することができる。また、LXRβの転写活性化領域にGAL4のDNA結合領域を連結した融合タンパク質を作製し、GAL4結合DNA配列にレポーター遺伝子を連結させた標的遺伝子を用いてLXRβによる標的遺伝子転写活性化能を評価してもよい。
【0011】
候補物質としては特に制限はなく、例えば、低分子合成化合物であってもよいし、天然物に含まれる化合物であってもよい。また、ペプチドであってもよい。スクリーニングには個々の被検物質を用いてもよいが、これらの物質を含む化合物ライブラリーを用いてもよい。
【0012】
アゴニスト活性を測定する場合は、化合物を加えたときに、加えないときに比べてLXRβによる標的遺伝子の転写を増大させる化合物をLXRβアゴニストとして選択することができる。この場合、T0901317などの既知のLXRβアゴニストを陽性コントロールとして使用することもできる。
一方、アンタゴニスト活性を測定する場合は、T0901317などの既知のLXRβアゴニストによるLXRβアゴニスト活性を阻害する化合物を選択する、すなわち、化合物を既知のLXRβアゴニストとともにLXRβ転写活性化能測定系に加えたときに、既知のLXRβアゴニスト
のみを加えたときと比べてLXRβによる標的遺伝子の転写活性化の程度が低下する化合物をLXRβアンタゴニストとして選択することができる。
【0013】
LXRBSVはLXRβ特異的コアクチベーターであるため、上記のようにしてLXRBSV存在下で取得されたLXRβアゴニストまたはLXRβアンタゴニストはLXRβ特異的であると考えられる。
なお、LXRβ特異的なアゴニストまたはアンタゴニストをより効率よく得るためには、LXRBSVの存在下と非存在下の両方で化合物を評価することが好ましい。
LXRβ特異的なアゴニストまたはアンタゴニストであることを確認するために、得られた化合物がLXRαなどのその他の核内受容体にはアゴニストまたはアンタゴニストとして作用しないことを調べてもよい。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0015】
LXRBSVのクローニング マウスの各組織(肝臓、下垂体、視床下部、大脳、小脳)よりトータルRNAをISOGEN試薬 (ニッポンジーン社)を用いて抽出した。1μgのトータルRNAからTaqman Reverse Transcription Reagent kit (Applied Biosystems)を用い、ランダムヘキサマーをプライマーとして逆転写反応させ、一本鎖DNAを作製した。この一本鎖DNAを鋳型とし下記のプライマーを用いてPCRを行った。 PCRの条件は、まず反応液20μlを94℃で5分加熱変性した後、94℃45秒、60℃45秒、72℃1分のサイクルを40サイクル施行した。最後に72℃で7分反応させ、4℃で保存した。
Sense primer :GTGTGGATCCTGGAAGCAGGCTG(配列番号2)
Anti-sense primer:GTGTGGATCCTACTCGTGCACATC(配列番号3)
TaqポリメラーゼはPerkin-Elmer社より購入(Ampli-Taq)した。
1%アガロースゲル電気泳動で確認したところ、図1に示されるように、LXRβのバンドとともに、それよりも長いバンドが検出された。
【0016】
次に、PCR産物をフェノール、クロロホルム、イソアミルアルコールで除蛋白し、制限酵素(東洋紡社より購入)BamH1で両端を切断した。再度電気泳動行い、マウスLXRβと考えられるPCR産物とそれより分子量の多いバンド(LXRBSV)を切り取ってNaIの中で55℃で溶解した。グラスミルクを用いてDNA断片(インサート:挿入DNA)を回収した (Genecleanキット、BIO101(Q-BIO)社)した。
【0017】
同時に発現ベクター pSG5 (pKCR2)を制限酵素BamH1で切断、両端をアルカリフォスファターゼ(Roche社)で脱リン酸化し、上記と同様の方法でDNA断片(ベクター)を回収した。LXRBSVとpSG5をT4DNAリガーゼ(Invitrogen社)で結合させてLXRBSVの発現コンストラクト(pSG5-LXRBSV)を完成させた。この配列を確認したところ、図2に示されるように、LXRβのエクソン2と3の間のイントロンに261塩基の配列が挿入された遺伝子(配列番号1)であることがわかった。
【0018】
これらのコンストラクトは制限酵素EcoR1で切ることでインサートの挿入方向が順方向か逆方向か判定でき、逆方向に結合したものをflippedと呼称した。
pSG5-LXRβもpSG5-LXRBSVと同様にして作製した。
【0019】
ウエスタンブロット
TNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System (Promega社)を用いて各種pSG5コンストラクト(unprogrammed, flipped, pSG5-LXRBSV, pSG5-LXRβ)から蛋白を作製、50μlの反応液中の10μlを10%ポリアクリルアミドーSDSゲルで電気泳動(160Vで
約90分)させ、ウエスタンブロットを行った。メンブレンにはアマシャム社のHYBOND-Pを用いた。ゲルからメンブレンへのトランスファーにはセミドライ法(100mAで60分)を用いた。LXRβ抗体はSanta Cruz社のrabbit-anti- LXRβ抗体(N-20:sc1001)を用いた。一次抗体の希釈は1:1000、rabbitの二次抗体(ECL, anti-rabbit Horseradish peroxidase whole antibody、アマシャム社)の希釈も1:1000とした。
発光反応にはアマシャム社のECL-PLUSキットを用いた。
結果を図3に示す。その結果、LXRBSVの発現産物はLXRβ特異的抗体では認識されないことがわかった。
【0020】
ルシフェラーゼアッセイ:
ヒトSREBP-1cプロモーターpGL4はE.J. Tarling女史 とA Bennett博士 (英国Nottingham大学医学部)から供与を受けた。ルシフェラーゼベクター(pGL4)はPROMEGA社より購入した。
【0021】
ルシフェラーゼアッセイの手順としては、まずヒト肝細胞由来の株細胞であるHepG2細胞(群馬大学大学院医学系研究科 高木均准教授から供与を受けた)を12ウェルの培養プレートに1ウェルあたり20-30%confluentになるよう播種した。培養メディウムはDMEM(Dulbecco's Modified Essential Medium、Sigma社)に仔牛血清を10%に調整し抗生物質(ペニシリンーストレプトマイシン、GIBCO-BRL社)、抗菌剤(ファンギゾン、GIBCO-BRL社)を混和させたものを用いた。約16時間5%CO2インキュベーターで培養後、1ウェルあたり、レポーターコンストラクトを0.5μg、pSG5またはLXRBSVを0.25μg、リン酸カルシウム法で導入(トランスフェクション)した。翌日仔牛血清を活性炭とレジンで脱ホルモン化した血清をDMEMに混和(最終濃度10%)したメディウムに液体培地を交換し、リガンド(T0901317)1μMを添加した。さらに翌日ルシフェラーゼアッセイを行った。アッセイにはベルトールド社のルミノメーター(Lumat)を用いた。ルシフェリンはPromega社より購入した。
結果を図4に示す。
LXRBSVはヒトSREBP-1cプロモーターの転写活性を促進し、LXRβリガンドを添加すると転写活性は非添加時の2倍以上増加することがわかった。
【0022】
次に用量依存性を調べた。まずHepG2細胞を12ウェルの培養プレートに1ウェルあたり20-30%confluentになるよう播種した。培養メディウムは上記と同じものを用いた。約16時間5%CO2インキュベーターで培養後、1ウェルあたり、レポーターコンストラクト(SREBP-1c-LUC)を0.5μg、LXRBSVもしくはその逆挿入体(flipped)を段階的に0.05、0.1、0.25、0.5μg、リン酸カルシウム法で導入した。翌日仔牛血清を活性炭とレジンで脱ホルモン化した血清をDMEMに混和(最終濃度10%)したメディウムに液体培地を交換し、リガンド(T0901317)1μMを添加した。さらに翌日ルシフェラーゼアッセイを行った。
結果を図5に示す。LXRBSVはヒトSREBP-1cプロモーターの転写活性を用量依存的に促進することがわかった。一方、逆挿入体はヒトSREBP-1cプロモーターの転写活性に影響を与えなかった。
【0023】
次に、LXR結合配列であるDR-4(direct repeat-4:配列AGGTCACAGGAGGTCA:配列番号10)にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトを作成し、DR-4を介したLXRαおよびLXRβの転写活性化能へのLXRBSVの効果を調べた。
まずCV-1細胞を12ウェルの培養プレートに1ウェルあたり20-30%confluentになるよう播種した。培養メディウムは上記と同じものを用いた。約16時間5%CO2インキュベーターで培養後、1ウェルあたり、レポーターコンストラクト(DR-4-LUC)を0.5μg、各種核内受容体コンストラクト(LXRαまたはLXRβ)を0.25μg、LXRBSVを0.25μg、リン酸カルシウム法で導入した。翌日仔牛血清を活性炭とレジンで脱ホルモン化した血清
をDMEMに混和(最終濃度10%)したメディウムに液体培地を交換し、リガンド(T0901317)1μMを添加した。さらに翌日ルシフェラーゼアッセイを行った。
結果を図6に示す。LXRBSVはDR-4を介したLXRβの転写活性化能を向上させたが、LXRαの転写活性化能は向上させなかった。
【0024】
なお、DR-1及びDR-4 TK(Thymidine Kinase )-Lucコンストラクトは米国ジョンス・ホプキンス大学医学部 Fredric E. Wondisford教授から供与を受けた。
マウスLXRαはLXRβと同様の方法(RT-PCR法)を用いてサブクローニングした。使用したPCRプライマーは以下のとおりである。
sense primer:AGGAAGAGATGTCCTTGTGGCTGGAG(配列番号8)、
anti-sense primer:TCACTCGTGGACATCCCAGATCTCAG(配列番号9)。
いったんPCR産物をpGEM-Teasyベクター(Promega社)に挿入し、DNA大量調製(マキシプレップ)後、制限酵素EcoR1で切断し、pSG5に再挿入した。
【0025】
次に、DR-4(TR(甲状腺ホルモン受容体)βの標的配列)、またはDR-1(direct repeat-1:PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)α、β、γの標的配列:配列AGGTCAAAGGTCA:配列番号10)にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトを作成し、DR-4またはDR-1を介したTRα、PPARα、PPARδおよびPPARγの転写活性化能へのLXRBSVの効果を調べた。
まずHepG2細胞を12ウェルの培養プレートに1ウェルあたり20-30%confluentになるよう播種した。培養メディウムは上記と同じものを用いた。約16時間5%CO2インキュベーターで培養後、1ウェルあたり、レポーターコンストラクト(DR-4-LUCまたはDR-1-LUC)を0.5μg、各種核内受容体コンストラクト(TRα、PPARα、PPARδまたはPPARγ)を0.25μg、LXRBSVを0.25μg、リン酸カルシウム法で導入した。翌日仔牛血清を活性炭とレジンで脱ホルモン化した血清をDMEMに混和(最終濃度10%)したメディウムに液体培地を交換し、リガンド(T3、LIP、CarboPCまたはPIO)を添加した。さらに翌日ルシフェラーゼアッセイを行った。
結果を図7に示す。LXRBSV は、TRα、PPARα、PPARδおよびPPARγのいずれに対しても転写活性化能を増加させることはなかった。これらの結果から、LXRBSVはLXRβ特異的なコアクチベーターであることがわかった。
【0026】
ヒト甲状腺ホルモン受容体(TR)β1-pSG5は米国ジョンス・ホプキンス大学医学部 Fredric E. Wondisford教授から供与を受けた。PPARα、δ、γ-pSG5コンストラクトは群馬大学大学院医学系研究科、山田正信講師から供与を受けた。
トリヨードサイロニン(T3)、フェノフィブラート(LIP)、カルボプロスタサイクリン(CarboPC)、ピオグリタゾン(PIO)はSigma-Aldrich社から購入した。TO901317はCayman Chemical社より購入した。
【0027】
次に、LXRBSVの作用にはどの領域が重要化を調べるために、LXRBSVの欠失変異体を作成した。
LXRBSVの欠失変異体であるTr1(配列番号1の塩基番号1-180)、Tr2(配列番号1の塩基番号1-348)はLXRBSV-pSG5を鋳型とし、Sense primer :GTGTGAATTCTGGAAGCAGGCTG(配列番号4)を共通のsense primerとしてTr1にはanti-sense primer:GTGTGGATCCCACGATGTAGGCAGA(配列番号5)、Tr2にはanti-sense primer:GTGTGGATCCTCACAAAGCCCCACA(配列番号6)を用いてPCRを行い、PCR産物とpSG5を制限酵素EcoR1とBamH1で切断し、前述の方法を用いてpSG5に結合させた。
【0028】
FLAG-Tr1とFLAG-Tr2はLXRBSV-pSG5を鋳型とし、Sense primer : GTGTGTCGACATGTCTTCCCCCACA(配列番号7)を共通のsense primerとしてTr1にはanti-sense primer:GTGTGGATCCCACGATGTAGGCAGA(配列番号5)、Tr2にはanti-sense primer:GTGTGGATCCTCACAAAGCCCCAC
A(配列番号6)を用いてPCRを行い、そのPCR産物を制限酵素Sal1とBamH1で切断、前述の方法で断片DNAを回収した。ベクターにはSigma社のp3XFLAG-CMV-7.1 EXPRESSION VECTORを採用した。このベクターも制限酵素Sal1とBamH1で切断、前述の方法で断片DNAを回収し、T4DNAリガーゼを用いて結合させた。なお本研究に用いた全てのコンストラクトはDNAシークエンシングを行い(株式会社バイオマトリクス研究所に受託)塩基配列を全確認している。
【0029】
まずHepG2細胞を12ウェルの培養プレートに1ウェルあたり20-30%confluentになるよう播種した。上記と同様の培養メディウムを用い、約16時間5%CO2インキュベーターで培養後、1ウェルあたり、レポーターコンストラクト(SREBP-1c-LUC)を0.5μg、LXRBSVもしくはその欠失変異体、FLAG融合蛋白発現コンストラクトを0.25μg、リン酸カルシウム法で導入した。翌日仔牛血清を活性炭とレジンで脱ホルモン化した血清をDMEMに混和(最終濃度10%)したメディウムに液体培地を交換し、リガンド(T0901317)1μMを添加した。さらに翌日ルシフェラーゼアッセイを行った。
結果を図8に示した。LXRBSV がLXRβの転写活性化能を増大させたのに対し、FLAG-Tr1とFLAG-Tr2はいずれもLXRβの転写活性化能をほとんど増大させなかった。このことから、LXRβのコアクチベーターとして働くためには、LXRBSVのうちのN末端側のコード領域だけでは不十分であることがわかった。
【0030】
LXRBSVの効果がタンパク質の翻訳を介するものかを調べるため、HepG2細胞にLXRBSVまたはコントロールベクターを導入し、50μMのシクロヘキシミドの存在下または非存在下でリガンド(T0901317)1μM添加によるSREBP-1cのmRNAの量の変化をRT-PCRによって測定した。
結果を図9に示す。50μMのシクロヘキシミドの存在下においてもLXRBSVはLXRβの転写活性化能を増大させた。この結果から、LXRBSVはタンパク質型コアクチベーターではなく、RNA型コアクチベーターであることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】マウス各組織におけるLXRBSVとLXRβの発現をRT-PCRで調べた結果を示す図(写真)。レーン1は肝臓、レーン2は下垂体、レーン3は視床下部、レーン4は大脳、レーン5は小脳である。
【図2】マウスLXRβ遺伝子の構造を示す図。四角で囲まれた数字はエクソンを示す。下線が付された配列が挿入配列である。
【図3】LXRβ特異的ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す図(写真)。なお、unprogrammedはランダム配列を発現させた細胞の抽出物で、flippedはLXRBSVが逆向きに組み込まれたベクターを発現させた細胞の抽出物である。
【図4】ヒトSREBP-1cプロモーター活性化に対するLXRBSVの効果を、HepG2細胞において、LXRβリガンド(T0901317)の存在下または非存在下で調べた結果を示す図。pSG5はコントロールのベクターを導入した場合の結果を示す。縦軸はルシフェラーゼの蛍光強度を示す。
【図5】ヒトSREBP-1cプロモーター活性化に対するLXRBSVの効果を、HepG2細胞において、LXRβリガンド(T0901317)の存在下または非存在下で調べた結果を示す図。LXRBSVまたはLXRBSV flippedの量を増加させたときのヒトSREBP-1cプロモーター活性化の程度をルシフェラーゼの蛍光強度によって示す。
【図6】LXRαまたはLXRβによるDR-4エレメントを含むプロモーター活性化に対するLXRBSVの効果を、LXRαまたはLXRβを発現させたCV-1細胞において、LXRβリガンド(T0901317)の存在下または非存在下で調べた結果を示す図。縦軸はルシフェラーゼの蛍光強度を示す。
【図7】TRβ1、PPARα、PPARδ、またはPPARγによるDR-4エレメントまたはDR-1エレメントを含むプロモーター活性化に対するLXRBSVの効果を、TRβ1、PPARα、PPARδ、またはPPARγを発現させたHepG2細胞において、各受容体に対するリガンドの存在下または非存在下で調べた結果を示す図。縦軸はルシフェラーゼの蛍光強度を示す。
【図8】ヒトSREBP-1cプロモーター活性化に対するLXRBSV各コンストラクトの効果を、HepG2細胞において、LXRβリガンド(T0901317)の存在下または非存在下で調べた結果を示す図。pSG5はコントロールのベクターを導入した場合の結果を示し、LXRBSV pSG5はLXRBSVを含むpSG5ベクターを導入した場合の結果を示し、Tr1 pSG5、Tr2 pSG5はそれぞれLXRBSV(1-180)、LXRBSV(1-348)を含むpSG5を導入した場合の結果を示し、FLAG Tr1、FLAG Tr2はそれぞれFLAGを付加したLXRBSV(1-180)またはLXRBSV(1-348)を導入した場合の結果を示す。縦軸はルシフェラーゼの蛍光強度を示す。
【図9】ヒトSREBP-1c遺伝子の発現に対するLXRBSVの効果を、HepG2細胞において、LXRβリガンド(T0901317)の存在下または非存在下、かつ、シクロヘキシミドの存在下、非存在下で調べた結果を示す図。pSG5はコントロールのベクターを導入した場合の結果を示す。縦軸はRT-PCRによって測定されたヒトSREBP-1cプロモーターの発現量を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8