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明細書 :抗トリパノソーマ薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360748号 (P5360748)
公開番号 特開2010-120911 (P2010-120911A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成22年6月3日(2010.6.3)
発明の名称または考案の名称 抗トリパノソーマ薬
国際特許分類 A61K  31/525       (2006.01)
A61P  33/02        (2006.01)
C07D 475/14        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
A23L   1/302       (2006.01)
FI A61K 31/525
A61P 33/02
A61P 33/02 171
C07D 475/14
A23K 1/16 302N
A23L 1/302
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2008-298492 (P2008-298492)
出願日 平成20年11月21日(2008.11.21)
審査請求日 平成23年7月1日(2011.7.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】小野 裕嗣
【氏名】石橋 純
【氏名】山川 稔
【氏名】芳山 三喜雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100119507、【弁理士】、【氏名又は名称】刑部 俊
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
【識別番号】100129506、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 智彦
【識別番号】100130845、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 伸一
【識別番号】100142929、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 隆一
【識別番号】100114340、【弁理士】、【氏名又は名称】大関 雅人
審査官 【審査官】関 景輔
参考文献・文献 CARDO,L.J. et al,Pathogen inactivation of Trypanosoma cruzi in plasma and platelet concentrates using riboflavin and ultraviolet light,Transfusion and apheresis science,2007年,Vol.37, No.2,p.131-7
調査した分野 A61K 31/525
A61P 33/02
A23K 1/16
A23L 1/302
C07D 475/14
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分とする、抗トリパノソーマ薬であって、ここで、該トリパノソーマ薬が、
経口薬であり、かつ、
通常の室内光条件下にあるだけで抗トリパノソーマ効果が発揮できる、
抗トリパノソーマ薬であって、
さらにここで、リボフラビン該誘導体が、
フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、酪酸リボフラビン、またはリボフラビンの薬理学的に許容される塩である、
抗トリパノソーマ薬。
【請求項2】
リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分として含む、トリパノソーマ症治療薬であって、ここで、該トリパノソーマ症治療薬が、
経口薬であり、かつ、
通常の室内光条件下にあるだけで抗トリパノソーマ効果が発揮できる、
抗トリパノソーマ症治療薬であって、
さらにここで、リボフラビン該誘導体が、
フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、酪酸リボフラビン、またはリボフラビンの薬理学的に許容される塩である、抗トリパノソーマ症治療薬
【請求項3】
請求項1に記載の抗トリパノソーマ薬または請求項2に記載の治療薬を、トリパノソーマ原虫感染非ヒト動物に経口投与する工程を含む、トリパノソーマ原虫の、増殖抑制方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗トリパノソーマ薬、トリパノソーマ症の治療薬、およびトリパノソーマ原虫の増殖抑制方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
トリパノソーマ症とは、トリパノソーマ属原虫(本明細書では単にトリパノソーマ原虫と記載する場合がある)の感染による人獣共通感染症で、アフリカ・トリパノソーマ症およびアメリカ・トリパノソーマ症の2種類からなる。
アフリカ・トリパノソーマ症は、家畜だけでなく、ヒトにも感染し、ヒトに感染した場合には意識障害を伴う熱病を起こすことから、睡眠病(Sleeping sickness)とも呼ばれている。ワクチンは開発されておらず、現在存在する薬剤はいずれも副作用が強く、また近年薬剤耐性原虫の発生も見られており、多大な健康被害、経済的被害を与えている。このことから新たな副作用の無い薬剤あるいは方法の開発が望まれていた(非特許文献4)。
アフリカ・トリパノソーマ症のうち、Trypanosoma brucei bruceiは家畜にナガナ病を引き起こし、Trypanosoma brucei rhodensiense、Trypanosoma brucei gambienseはヒトに睡眠病を引き起こす。アメリカ・トリパノソーマ症は、Trypanosoma cruziによって引き起こされる。
【0003】
リボフラビンはビタミンB2として知られるように、栄養素として必須であり、食品、医薬品としても安全であることが知られている。また、一方でリボフラビンは光による分解を受けると、毒性を示すルミクロムを生成することが明らかになっている。この原理を利用し、in vitroで、リボフラビン添加後、紫外線を照射することにより、種々の病原体が不活性化する方法が示されており(非特許文献1)、この方法はある種のトリパノソーマに対しても効果があることが示されている(非特許文献2)。
しかしながら、in vivoで特に紫外線照射を行わずに、トリパノソーマ原虫に対する増殖抑制効果を示すかどうかは、これまで明らかとなっていなかった。
【0004】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【0005】

【特許文献1】再表02/074313
【特許文献2】特開2006-206465
【特許文献3】特開2004-345988
【特許文献4】再表03/084545
【特許文献5】特開H11-199486
【特許文献6】特開H11-116495
【特許文献7】特表H08-500091
【特許文献8】特開H05-201864
【特許文献9】特表H06-506212
【特許文献10】特開S48-004619
【特許文献11】特公S45-026694
【特許文献12】特開H11-503714
【特許文献13】特開H10-029941
【特許文献14】特開2006-273868
【特許文献15】特開2006-124405
【特許文献16】特表2005-519920
【特許文献17】特表2004-500316
【特許文献18】特開S61-275228
【特許文献19】再表03/075935
【特許文献20】特開H11-199513
【特許文献21】特表2004-520448
【特許文献22】特表2004-514680
【特許文献23】特表2003-512340
【特許文献24】特表2006-501978
【特許文献25】特表2005-524714
【特許文献26】特表2005-523337
【特許文献27】特表2005-516978
【特許文献28】特表H09-505804
【非特許文献1】Corbin, F., 3rd, Pathogen inactivation of blood components: current status and introduction of an approach using riboflavin as a photosensitizer. Int J Hematol, 2002. 76 Suppl 2: p.253-7.
【非特許文献2】Cardo, L.J., et al., Pathogen inactivation of Trypanosoma cruzi in plasma and platelet concentrates using riboflavin and ultraviolet light. Transfus Apher Sci, 2007. 37(2): p.131-7.
【非特許文献3】Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Vol.44, No.1, p.88-96, 2000
【非特許文献4】山内一也、北潔 著、「眠り病は眠らない」、岩波書店
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗トリパノソーマ薬、トリパノソーマ症の治療薬、およびトリパノソーマ原虫の増殖抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。
即ち本発明者らは、トリパノソーマ原虫を媒介する昆虫以外の昆虫にはトリパノソーマ原虫の感染を阻止する防御物質があると考え、昆虫を材料に抗トリパノソーマ活性物質の探索を行った。その際に、同種の昆虫でも生育段階により差がある可能性を考慮して探索した結果、カイコ幼虫体液は抗トリパノソーマ活性を示さず、一方、カイコ蛹体液は活性を示すことを見いだしたことから、カイコ蛹より活性物質の単離を行った。この活性物質の単離、構造決定を行ったところ、ビタミンB2として知られ、通常栄養素として摂取されるリボフラビンと同定された。リボフラビンはビタミンB2として知られその光分解物とともにトリパノソーマ原虫(Trypanosoma brucei brucei)に対して濃度依存的な増殖抑制効果を示した。また、本原虫を感染させたマウスに対して経口投与することにより、死亡を遅延させる効果が見られた。
【0008】
以上のように本発明者らは、トリパノソーマ原虫に感染しているマウスに注射および経口でリボフラビンを投与することにより、血中原虫数を減少させ、死亡時期を大幅に遅延できることを明らかにした。特に経口投与において、高い効果が得られることを見出した。in vivoで抗トリパノソーマ活性を発揮し、しかも特に紫外線を照射すること無く通常の室内の光条件で、経口投与で効果を持つことを示した。即ち、あらかじめルミクロムへと変換せずとも、驚くべきことにリボフラビンそのものを投与し室内光条件下にあるだけで抗トリパノソーマ効果が発揮できることを見出した。このような抗トリパノソーマ薬は本発明が完成するまで存在しなかった。
【0009】
また、リボフラビンのように一般的な物質が、現在のところ有効な治療手段のための製剤が無いとされるトリパノソーマ原虫に対して、経口投与で効果を示すとは、例え当業者であっても容易には発想されないものである。
【0010】
即ち本発明は、
〔1〕 リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分とする、抗トリパノソーマ薬、
〔2〕 リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分として含む、トリパノソーマ症治療薬、
〔3〕 経口薬である、〔2〕に記載の治療薬、
〔4〕 〔1〕に記載の抗トリパノソーマ薬または〔2〕もしくは〔3〕に記載の治療薬を、トリパノソーマ原虫感染動物に経口投与する工程を含む、トリパノソーマ原虫の増殖抑制方法、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によってリボフラビンおよび/またはその誘導体を用いた抗トリパノソーマ薬、トリパノソーマ症治療薬、およびトリパノソーマ原虫の増殖抑制方法が提供された。本発明の方法は、通常栄養素として摂取されるリボフラビンを経口投与すれば特別な光照射等を行わなくてよく、非常に安全性が高いだけでなく、実際の利用に際しても簡便である。
【0012】
本発明は、人間および家畜を対象としたトリパノソーマ症の治療に使用するための薬剤の製造などに利用できる。本発明の抗トリパノソーマ薬またはトリパノソーマ症治療薬は、抗トリパノソーマ原虫活性をもつ製剤として医薬品、食品、飼料等の用途が期待される。
【0013】
〔発明を実施するための形態〕
本願発明は、抗トリパノソーマ薬を提供する。即ち、リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分とする、抗トリパノソーマ薬を提供する。
【0014】
本発明において「抗トリパノソーマ薬」とは、トリパノソーマ症に対して効果を有する薬剤を指す。例えばそのような抗トリパノソーマ薬としては、トリパノソーマ症によって引き起こされる症状を改善する薬剤、トリパノソーマ原虫数を減少させる薬剤、トリパノソーマ原虫数の増加(増殖)を抑制する薬剤、トリパノソーマ原虫を不活性化させる薬剤等が含まれる。本発明においてトリパノソーマ原虫を不活性化させるとは、トリパノソーマ原虫が再生する能力を減少、抑制させることを含み、不活性化させる手段としては例えば殺すことが挙げられる。
【0015】
本発明のトリパノソーマ症は、トリパノソーマ属原虫による感染症であればよく、例えばアフリカ・トリパノソーマ症およびアメリカ・トリパノソーマ症が挙げられる。トリパノソーマ症の原因となるトリパノソーマ属原虫としては、例えばTrypanosoma brucei brucei、Trypanosoma brucei rhodensiense、Trypanosoma brucei gambiense、Trypanosoma evavsi、Trypanosoma hippicum等が挙げられる。
【0016】
トリパノソーマ属原虫の寄生部位としては、血液、髄液等が挙げられる。本発明においてはトリパノソーマ原虫の寄生部位は、好ましくは血液である。
【0017】
本発明の抗トリパノソーマ薬の有効成分であるリボフラビン(riboflavin)は、ラクトフラビン(lactoflavin)、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジン(7,8-dimethyl-10-ribitylisoalloxazine)、あるいはビタミンB2として知られている黄色ないし橙黄色の多形結晶であり、紫外線の照射によって強い緑色の蛍光を発する。アルカリ溶液中、特に明所では不安定でルミフラビンとなり、一方酸性溶液中、暗所では安定であるが光照射によりルミクロムを生じることが知られている。ルミクロム(7,8-ジメチルアロキサジン、7,8-dimethylalloxazine)とは、淡黄色結晶のリボフラビンの光分解産物であり、その溶液は青い蛍光を発する。
【0018】
本発明のリボフラビン誘導体としては、例えばフラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、酪酸リボフラビン、またはリボフラビンの薬理学的に許容される塩(例えばリン酸リボフラビンナトリウム、リン酸リボフラビンのモノジエタノールアミン塩等)等が含まれるがこれらに制限されない。
【0019】
また本願発明は、リボフラビンおよび/またはその誘導体を有効成分として含む、トリパノソーマ症治療薬を提供する。本発明のトリパノソーマ治療薬は、トリパノソーマ病の予防にも有用である。
【0020】
本発明のトリパノソーマ治療薬の投与方法は、投与目的や症状等の条件に応じて異なるが、一般的には、例えば、経口投与および非経口投与が挙げられる。本発明では経口投与が好ましく用いられる。なお本発明のトリパノソーマ症治療薬の剤形の種類としては、例えば経口薬(剤)として錠剤、粉末剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、軟・硬カプセル剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、舌下剤、ペースト剤等が挙げられるが、これらに制限されず、当業者においては投与経路や投与対象等に応じた最適の剤型を選ぶことができる。勿論、上記経口剤としての剤形に捉われず、例えばリボフラビンおよび/またはその誘導体を、飲食品、動物用飼料(例えば家畜用飼料やペットフード等)、加工品等に混合して用いることもできる。
【0021】
本発明の治療薬(薬剤)の製剤化にあたっては、常法に従い、必要に応じて薬学的に許容される担体を添加することができる。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
【0022】
また本発明の治療薬(薬剤)には、有効成分以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
【0023】
なお本発明の治療薬(薬剤)は、有効成分であるリボフラビンおよび/またはその誘導体が光分解を受け光分解産物を生じないように対策してあることが好ましい。当該対策としては、例えば、製剤中および/または製剤後の段階で適切に遮光されていることが含まれる。
【0024】
本発明の治療薬(薬剤)の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。
【0025】
また本発明の抗トリパノソーマ薬または治療薬を投与する対象は、トリパノソーマ原虫に感染した動物あるいはトリパノソーマ症を発症している動物である。そのような動物には、例えば、家畜、家禽、実験動物、ペット(愛玩動物)等の非ヒト動物だけでなく、ヒトも含まれる。例えば本発明の非ヒト動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、ウズラ等の家禽、マウス、ラット、モルモット、イヌ、サル、魚類等の実験動物、イヌ、ネコ、トリ等のペットを挙げることができる。投与対象は、上述のようにトリパノソーマ原虫に感染した、あるいはトリパノソーマ症を発症した動物以外にも、トリパノソーマ原虫に感染する可能性のある動物に対して予防的に投与することもできる。
【0026】
また本発明は、トリパノソーマ原虫の増殖抑制方法を提供する。即ち、本発明の上記抗トリパノソーマ薬または上記治療薬をトリパノソーマ原虫感染動物に対して経口投与する工程を含む方法である。
【0027】
本方法においては、経口投与の際に特別な光照射を行う必要はない。本発明において、特別な光照射とは、例えば波長範囲が400 nmより下の紫外線や、400~700 mmの可視光をそれぞれあるいは同時に、意図的に照射することを意味する。このような特別な光照射の強度は、リボフラビンおよび/またはその誘導体が分解産物を生じるために十分な光の強度であり、例えば約1~200 J/cm2の範囲である。
【0028】
本発明では、経口投与の際に上述のように規定される特別な光照射を行わずとも、投与後の動物を通常の室内の光条件下におくのみでよい。本発明において、通常の室内の光条件下とは、太陽光が直接当たらない環境であればよい。例えば太陽の反射光、窓ガラスなどを透過した太陽光などは本発明の通常の室内の光条件下に含まれる。また本発明の通常の光条件下には、上述の条件に加えて、さらに室内の照明が含まれていてよい。例えば蛍光灯、白熱灯、LED、ランプ、ロウソク等の照明を用いることができる。
【0029】
また本発明には、本発明のトリパノソーマ原虫の増殖抑制方法を実施するために用いられるキットを提供する。該キットには、上記リボフラビンおよび/またはその誘導体の他に、例えば、本発明の方法に用いるための各種薬剤、各種試薬類、反応容器、操作器具、使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともきる。
【0030】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0031】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0032】
〔実施例1〕昆虫由来の抗トリパノソーマ活性物質の単離
昆虫由来の抗トリパノソーマ活性物質の探索を行ったところ、カイコ蛹抽出物にトリパノソーマ原虫(Trypanosoma.brucei brucei)増殖抑制活性が見られた。カイコの蛹体液を回収しSep-Pak固相抽出カートリッジカラムで水-アセトニトリル混合溶媒で段階溶出し、in vitroで抗原虫活性を測定したところ、アセトニトリル0-20%で溶出される画分が増殖抑制効果を示した。この溶出画分に含まれる成分を検証するため、熱処理、ProtenaseK処理をおこなったが、抗原虫活性は失われなかった。さらに、このフラクションを280 nmのUV検出逆相HPLCで精製し、活性成分を単一ピークの黄色物質として得た(図1)。
【0033】
〔実施例2〕抗トリパノソーマ活性物質の同定
カイコ蛹由来の抗トリパノソーマ活性成分を核磁気共鳴(NMR)スペクトル、質量分析スペクトルにより構造解析し、標品とのスペクトルの比較ならびに標品が同じ活性確認をもつことの確認から、活性物質がリボフラビンであると同定した(図2)。リボフラビンはビタミンB2として知られるように、栄養素として必須であり、食品、医薬品としても安全性が高いことが知られている。また、一方でリボフラビンは光による分解を受けると、細胞毒性を示すルミクロムを生成することが明らかになっている。リボフラビンはin vitro において全暗条件下では抗原虫活性は見られなかったが、通常の室内の光の照射によって抗トリパノソーマ活性があらわれることが確認された(図3)。この活性の本体は、光照射により生じるルミクロムであると考えられた。
【0034】
〔実施例3〕リボフラビンの抗トリパノソーマ活性
マウスへトリパノソーマ原虫を感染させ、リボフラビンおよびルミクロムによる治療効果を測定した。その結果、in vivoにおいてもマウス血中のトリパノソーマ原虫数の減少、生存期間の延長が認められた。特にリボフラビンを紫外線等の特別な光照射を行わずに経口投与することにより、トリパノソーマ感染マウスの死亡時期を大幅に遅延できることを明らかにした(図4)。即ち投与中に浴びた室内の光または体内に入ってから身体に当たる室内の光で十分なルミクロムへの変換を受けていると考えられた。
【0035】
これまでのところ、生体に対し、経口投与で効果を持つ実用されている抗トリパノソーマ薬は存在しなかった。本発明は紫外線等の特別な光照射をせずとも通常の室内の光条件下において、経口投与で効果を持つ抗トリパノソーマ薬およびトリパノソーマ原虫の増殖抑制方法を提供するものと言える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】カイコ由来抗トリパノソーマ活性物質の単離を示すグラフである。Aは最終精製HPLCの結果を示すグラフである。Bは各フラクションの抗トリパノソーマ活性を示すグラフである。
【図2】カイコ由来抗トリパノソーマ物質の構造決定を示す図である。Aは核磁気共鳴(NMR)スペクトル(1H-NMR)による構造解析の結果を示す。Bは質量分析スペクトルによる構造解析の結果を示す。Cはリボフラビンの構造を示す図である。Dはカイコ由来活性物質とリボフラビン標品の1H-NMRによる比較を示す図である。(I)がリボフラビン標品、(II)がサンプル(カイコ由来活性物質)である。
【図3】全暗・全明条件下でのリボフラビンの抗トリパノソーマ原虫活性を示すグラフである。黒菱が全暗、白四角が全明を表す。
【図4】リボフラビンのin vivoでの抗トリパノソーマ原虫効果を示すグラフである。Aは投与法による生存率の比較を示すグラフである。黒菱が対照、白四角が経口、白三角が腹膜、バツが無処理を表す。Bは投与法によるトリパノソーマ原虫数の比較を示すグラフである。黒菱が無処理、白三角が腹膜、白四角が経口を表す。Cはリボフラビンとルミクロムの比較を示すグラフである。黒菱が対照、白四角がルミクロム、白三角がリボフラビン、バツが無処理を表す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3