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明細書 :イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)とその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5545793号 (P5545793)
公開番号 特開2010-124701 (P2010-124701A)
登録日 平成26年5月23日(2014.5.23)
発行日 平成26年7月9日(2014.7.9)
公開日 平成22年6月10日(2010.6.10)
発明の名称または考案の名称 イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)とその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
C07K  16/16        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/00 103
A01H 1/00 A
A01H 5/00 A
C07K 14/415
C07K 16/16
C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 Z
請求項の数または発明の数 13
全頁数 22
出願番号 特願2008-299377 (P2008-299377)
出願日 平成20年11月25日(2008.11.25)
審査請求日 平成23年8月12日(2011.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】福岡 修一
【氏名】溝淵 律子
【氏名】山本 伸一
【氏名】小泉 信三
【氏名】藤田 佳克
【氏名】安田 伸子
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100119507、【弁理士】、【氏名又は名称】刑部 俊
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
【識別番号】100129506、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 智彦
【識別番号】100130845、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 伸一
【識別番号】100142929、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 隆一
【識別番号】100114340、【弁理士】、【氏名又は名称】大関 雅人
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 Genetics, (2007), Vol. 177, p. 1871-1880
Theor. Appl. Genet., (2006), Vol. 113, p. 697-704
日本植物病理学会報,2008年 8月,Vol. 74, No. 3,p. 191
調査した分野 C12N 15/00
A01H 1/00
A01H 5/00
C07K 14/415
C07K 16/16
C12N 5/00
C12Q 1/68
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
イネいもち病に対する圃場抵抗性を有するタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNAであって、配列番号:2の3157から3159位に相当する位置がアスパラギン酸をコードする、前記DNA
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1または2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1~8個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAと99%以上の配列同一性を有するDNA。
【請求項2】
請求項1に記載のDNAを含むベクター。
【請求項3】
請求項1に記載のDNAまたは請求項2に記載のベクターを保持する形質転換イネ植物細胞。
【請求項4】
請求項3に記載の形質転換イネ植物細胞を含む形質転換イネ植物体。
【請求項5】
請求項に記載の形質転換イネ植物体の子孫またはクローンである、形質転換イネ植物体。
【請求項6】
請求項4または5に記載の形質転換イネ植物体の繁殖材料。
【請求項7】
請求項4または5に記載の形質転換イネ植物体の製造方法であって、請求項1に記載のDNAまたは請求項2に記載のベクターをイネ植物細胞に導入し、植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載のDNAをイネ植物の細胞内で発現させる工程を含む、イネ植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法。
【請求項9】
請求項1に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
【請求項10】
配列番号:2に記載の塩基配列における3157から3159位の間または、3163から3165位の間に存在する多型部位を増幅するプライマーセット。
【請求項11】
以下の(a)~(c)の工程を含む方法であって、配列番号:2の3157から3159位に相当する位置がアスパラギン酸をコードする塩基配列であるときに、被検イネ植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法;
(a)被検イネ植物からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料から請求項1に記載のDNAにおける配列番号:2の3157から3159位に相当する位置を含む領域を増幅する工程、
(c)増幅したDNA断片の塩基配列を、請求項1に記載のDNAのそれと比較する工程。
【請求項12】
以下の(d)および(e)の工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
(d)被検イネ植物における配列番号:2に記載のDNA領域に相当する部位、またはその周辺配列に存在する多型部位の塩基種を決定する工程、
(e)(d)で決定された多型部位の塩基種において、配列番号:2またはその周辺配列と同じアレルが検出された場合に、いもち病圃場抵抗性を有するイネ植物であると判定する工程。
【請求項13】
配列番号:2に記載の塩基配列において、さらに3163から3165位がセリンをコードするコドンである場合に、被検イネ植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する請求項12に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)、および該遺伝子を利用した植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イネのいもち病菌に対する抵抗性は真性抵抗性と圃場抵抗性の2種類に分類される(非特許文献1:イネのいもち病と抵抗性育種 p175-186 高坂・山崎編 1980博友社)。
真性抵抗性は、過敏感反応に基づく抵抗性であり、効果が大きくレースに対する特異性が高い質的な抵抗性である。しかしながら、1個の抵抗性遺伝子を導入した品種はその遺伝子に親和性の菌が出現することによって数年で効果を失うことが経験的に知られる。一方、圃場抵抗性は真性抵抗性が機能しない条件下で観察される量的な抵抗性の品種間差と定義される。それぞれのレースへの抵抗性効果は真性抵抗性に比べると小さいものの、レースに対する特異性が低いため、効果の持続性の点で実用性が高い。
【0003】
真性抵抗性に関与する遺伝子は20種類以上が知られ(非特許文献2:McCouch et al. In Rice Blast Disease (edt by Zeigler RS, Leong SA, Teng PS) pp167-186、1994)、そのうち、Pib遺伝子(非特許文献3:Wang et al Plant J 19:55-64, 1999)、Pita遺伝子(非特許文献4:Bryan et al Plant Cell. 12:2033-46, 2000)が単離されている。また近年、新規の遺伝子Pi37(非特許文献5:Lin et al, Genetics, 177,:1871-1880)、Pi9(非特許文献6:Qu et al Genetics 172: 1901-1914)、Pi2、Pizt(非特許文献7:Zhou et al. Mol. Plant-Microbe Interact. 11: 1216-1228)、Pid-2 (非特許文献8:Chen et al Plant J. 46: 794-804)、Pi36(非特許文献9:Liu et al. Genetics 176: 2541-2549)が単離されている。これらの遺伝子の大半は、植物の病害抵抗性遺伝子と類似した構造を持ち、一般に、植物の抵抗性遺伝子の産物はそれに対応する病原体の非病原性遺伝子の産物を直接的あるいは間接的に認識する受容体としての機能を果たすと考えられている。実際、Pitaは非病原性遺伝子産物と物理的に直接結合することが明らかにされている。一方、いもち病病斑の進展を抑制するタイプの抵抗性である圃場抵抗性では、Pi21遺伝子、およびPb1遺伝子が単離されている(特許文献1:特開2007-006711)だけで、真性抵抗性に比べて遺伝学的な知見が乏いため効率的に育種に利用できる状況にはなかった。
【0004】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。

【特許文献1】特開2007-006711
【特許文献2】特開2007-054020
【特許文献3】特開平11-346783
【特許文献4】特開2000-279170
【特許文献5】特表2002-525033
【非特許文献1】イネのいもち病と抵抗性育種 p175-186 高坂・山崎編 1980博友社
【非特許文献2】McCouch et al. In Rice Blast Disease (edt by Zeigler RS, Leong SA, Teng PS) pp167-186、1994
【非特許文献3】Wang et al Plant J 19:55-64, 1999
【非特許文献4】Bryan et al Plant Cell. 12:2033-46, 2000
【非特許文献5】Lin et al, Genetics, 177,:871-1880
【非特許文献6】Qu et al Genetics 172: 1901-1914
【非特許文献7】Zhou et al. Mol. Plant-Microbe Interact. 11: 1216-1228
【非特許文献8】Chen et al Plant J. 46: 794-804
【非特許文献9】Liu et al. Genetics 176: 2541-2549
【非特許文献10】Nguyen et al Theoretical and Applied Genetics 113 697-704
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イネいもち病圃場抵抗性遺伝子は、真性抵抗性遺伝子に比べて遺伝学的な知見が乏いため効率的に育種に利用できる状況にはなかった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)、および該遺伝子を利用した植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、圃場抵抗性に関わる遺伝子のうち、第1染色体上に存在するPi35(t)(非特許文献10)を標的として、病斑進展を抑制する遺伝子をマップベースクローニング法により単離・同定した。
【0007】
さらに、このPi35(t)を形質転換した個体に4種の代表的ないもち病菌を噴霧接種したところ、全ての菌株でベクターのみを導入した個体に比べて、Pi35(t)遺伝子を導入した系統では抵抗性の向上が観察された。
【0008】
北海188号から単離されたこのPi35(t)遺伝子は、日本国に分布する主要ないもち病菌レースに対して病斑を抑制しない対立遺伝子を持つ罹病性品種Danghang-Shaliや日本晴の遺伝子と高い相同性を有するにもかかわらず、顕著な圃場抵抗性を有していた。日本晴の対立遺伝子はAP003368(143,663bp)としてDDBJに登録されている。また、Danghang-Shaliの対立遺伝子は配列番号:12に示す。
【0009】
したがって、本発明者らは、単離・同定した遺伝子およびこれにコードされるタンパク質が、幅広いいもち病レースに対して抵抗性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、より具体的には以下の〔1〕~〔14〕を提供するものである。
〔1〕 いもち病に対する圃場抵抗性を有するイネ由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA;
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1または2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、および
(d)配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
〔2〕 前記〔1〕に記載のDNAを含むベクター。
〔3〕 前記〔1〕に記載のDNAまたは〔2〕に記載のベクターを保持する形質転換植物細胞。
〔4〕 植物がイネ、コムギ、オオムギ、エンバク、トウモロコシ、ハトムギ、イタリアンライグラス、ペレニアルライグラス、チモシー、メドーフェスク、キビ、アワ、サトウキビである、前記〔3〕に記載の形質転換植物細胞。
〔5〕 前記〔3〕に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体。
〔6〕 前記〔5〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔7〕 前記〔5〕または〔6〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔8〕 前記〔5〕または〔6〕に記載の形質転換植物体の製造方法であって、前記〔1〕に記載のDNAまたは〔2〕に記載のベクターを植物細胞に導入し、概植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
〔9〕 前記〔1〕に記載のDNAを植物の細胞内で発現させる工程を含む、植物の細胞内で発現させる工程を含む、植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法。
〔10〕 植物がイネ、コムギ、オオムギ、エンバク、トウモロコシ、ハトムギ、イタリアンライグラス、ペレニアルライグラス、チモシー、メドーフェスク、キビ、アワ、サトウキビである、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕 前記〔1〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
〔12〕 前記〔11〕に記載のタンパク質を認識する抗体。
〔13〕 配列番号:1または2に記載の塩基配列の全部または一部を増幅するプライマーセット。
〔14〕 以下の(a)~(c)の工程を含む方法であって、分子量または塩基配列が一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法;
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料から前記〔1〕に記載のDNA領域を増幅する工程、
(c)増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を、前記〔1〕に記載のDNAのそれと比較する工程。
〔15〕 以下の(d)および(e)の工程をさらに含む、前記〔14〕に記載の方法。
(d)被検植物における配列番号:2に記載のDNA領域に相当する部位、またはその周辺配列に存在する多型部位の塩基種を決定する工程、
(e)(d)で決定された多型部位の塩基種において、配列番号:2またはその周辺配列と同じアレルが検出された場合に、いもち病圃場抵抗性を有する植物であると判定する工程。
〔16〕 多型部位が配列番号:2に記載の塩基配列における3157から3159位の間または、3163から3165位の間に存在する多型部位である、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕 配列番号:2に記載の塩基配列において、3157から3159位がアスパラギン酸をコードするコドンである場合、または3163から3165位がセリンをコードするコドンである場合に、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する前記〔15〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)、および該遺伝子を利用した植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法が提供された。
Pi35(t)遺伝子によって、日本国内の複数のいもち病菌株に対して抵抗性を高めた植物を作出することが可能となる。すなわち、日本国内のイネ品種の中で、Pi35(t)遺伝子を持たない品種に対して、単離したPi35(t)遺伝子を導入する、またはPi35(t)遺伝子を保持するイネを育種することによって、幅広いいもち病レースに対して抵抗性を付与することが可能になると考えられる。
【0012】
〔発明の実施の形態〕
本発明は、イネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)、および該遺伝子を利用した植物にいもち病に対する圃場抵抗性を付与する方法を提供する。
本発明者らによりいもち病に対する圃場抵抗性を有することが明らかにされた、イネ由来のPi35(t)遺伝子のゲノムDNAの塩基配列を配列番号:1に、cDNAの塩基配列を配列番号:2に、これら遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
【0013】
したがって、本発明はいもち病に対する圃場抵抗性を有するイネ由来のPi35(t)遺伝子に関する。具体的には、いもち病に対する圃場抵抗性を有するイネ由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNAが含まれる。
(a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1または2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、および
(d)配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【0014】
本発明で使用されるPi35(t)遺伝子は、Pi35(t)タンパク質をコードしうるものであれば、その形態に特に制限はなく、Pi35(t)遺伝子にはそれぞれ、cDNAの他、ゲノムDNA、化学合成DNAなども含まれる。また、Pi35(t)遺伝子はPi35(t)タンパク質をコードするものであれば、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
【0015】
ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、植物からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作成し、これを展開して、Pi35(t)遺伝子(例えば、配列番号:1または2に記載のDNA)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。またPi35(t)遺伝子に特異的なプライマーを作成し、これを利用したPCRをおこなうことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、植物から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。
【0016】
さらに、Pi35(t)遺伝子は広く植物界に存在すると考えられるため、Pi35(t)遺伝子には、種々の植物に存在する相同遺伝子も含まれる。ここで「相同遺伝子」とは、種々の植物において、イネにおけるPi35(t)遺伝子産物と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を指す。このようなタンパク質には、例えば、Pi35(t)タンパク質の変異体、アレル、バリアント、ホモログ、Pi35(t)タンパク質の部分ペプチド、または、他のタンパク質との融合タンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明におけるPi35(t)タンパク質の変異体としては、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる天然由来のタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を挙げることが出来る。また、配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする天然由来のDNAよりコードされるタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も、Pi35(t)タンパク質の変異体として挙げることができる。
【0018】
本発明において、変異するアミノ酸数は特に制限されないが、通常、8アミノ酸以内であり、好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい(これは、保存的アミノ酸置換として知られている)。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)および親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)の二種類に大別することができる。また、その側鎖の構造に基づいて、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)などのようにアミノ酸を分類することもできる。さらに、例えば、変異マトリクス(mutational matrix)によってアミノ酸を分類することも周知である(Taylor 1986, J, Theor. Biol. 119, 205-218; Sambrook, J. et al., Molecular Cloning 3rd ed. A7.6-A7.9, Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)。この分類を以下に要約すると、脂肪族アミノ酸(L、I、V)、芳香族アミノ酸(H、W、Y、F)、荷電アミノ酸(D、E、R、K、H)、正荷電アミノ酸(R、K、H)、負荷電アミノ酸(D、E)、疎水性アミノ酸(H、W、Y、F、M、L、I、V、C、A、G、T、K)、極性アミノ酸(T、S、N、D、E、Q、R、K、H、W、Y)、小型アミノ酸(P、V、C、A、G、T、S、N、D)、微小アミノ酸(A、G、S)および大型(非小型)アミノ酸(Q、E、R、K、H、W、Y、F、M、L、I)が挙げられる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0019】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。さらに、標的アミノ酸残基は、共通した性質をできるだけ多く有するアミノ酸残基に変異させることがより好ましい。
【0020】
本発明において「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、Pi35(t)タンパク質と同等の生物学的機能や生化学的機能を有することを指す。本発明において、Pi35(t)タンパク質の生物学的機能や生化学的機能としては、例えばいもち病に対する圃場抵抗性を挙げることができる。生物学的な性質には発現する部位の特異性や、発現量等も含まれる。
【0021】
相同遺伝子を単離するための当業者によく知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E. M., Journal of Molecular Biology, Vol. 98, 503, 1975)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R. K., et al. Science, vol. 230, 1350-1354, 1985, Saiki, R. K. et al. Science, vol.239, 487-491,1988)が挙げられる。即ち、当業者にとっては、Pi35(t)遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号:1または2のいずれかに記載のDNA)もしくはその一部をプローブとして、またPi35(t)遺伝子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、種々の植物からPi35(t)遺伝子の相同遺伝子を単離することは通常行いうることである。
【0022】
このような相同遺伝子をコードするDNAを単離するためには、通常ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行なう。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当業者であれば、適宜選択することができる。一例を示せば、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4xSSC、50mM Hepes pH7.0、10xデンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、「1xSSC、0.1% SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「0.5xSSC、0.1% SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2xSSC、0.1% SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの洗浄の条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0023】
単離されたDNAの相同性は、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。配列の相同性は、BLASTN(核酸レベル)やBLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215: 403-410, 1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993) に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 100、wordlength =12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore = 50、wordlength = 3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
【0024】
また本発明は、Pi35(t)遺伝子を含むベクターならびに形質転換植物細胞を提供する。
本発明のベクターとしては、形質転換体作製のために細胞内で本発明のDNAを発現させるベクター、例えば形質転換植物体作製のために植物細胞内で本発明のDNAを発現させるためのベクターが含まれる。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えばプラスミド、ファージ、またはコスミドなどを例示することができる。
【0025】
また上記「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス等が含まれる。
【0026】
本発明のベクターは、本発明のDNAを恒常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含有してもよい。
【0027】
当業者においては、所望のDNAを有するベクターを、一般的な遺伝子工学技術によって、適宜、作製することが可能である。通常、市販の種々のベクターを利用することができる。 本発明のベクターは、宿主細胞内において本発明のDNAを保持したり、発現させるためにも有用である。
【0028】
本発明におけるDNAは、通常、適当なベクターへ担持(挿入)され、宿主細胞へ導入される。即ち本発明は、本発明のDNAまたはベクターを保持する宿主細胞を提供する。該ベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましいが、市販の種々のベクターを利用することができる。本発明のDNAを内在性遺伝子を有する細胞内に導入および発現させる目的としてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でDNAを発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))、植物個体であればpBINPLUSベクター(van Engelen, F.A. et al., (1995). pBINPLUS: an improved plant transformation vector based on pBIN19. Transgenic Res. 4, 288-290.)などを例示することができる。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法(Molecular Cloning, 5.61-5.63)により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる。
【0029】
上記宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。本発明のDNAを発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowes メラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。
【0030】
また、生体内で本発明のDNAを発現させる方法としては、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、例えば、ポリエチレングリコール法、アグロバクテリウム法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(エレクトロポーレーション)(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクション法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法などの当業者に公知の方法により生体内に導入する方法などが挙げられる。
植物体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。
【0031】
また、植物体内へ本発明のDNAを導入する場合、DNAは、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法等を用いて、植物細胞に直接導入することもできるが、植物への遺伝子導入用プラスミドに組込み、これをベクターとして、植物感染能のあるウイルスあるいは細菌を介して、間接的に植物細胞に導入することもできる。かかるウイルスとしては、例えば代表的なウイルスとして、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、ジェミニウイルス等が挙げられ、細菌としては、アグロバクテリウム等が挙げられる。アグロバクテリウム法により、植物への遺伝子導入を行う場合には、市販のプラスミドを用いることができる。このようなベクターを用いて、植物体内へ本発明のDNAを導入する場合の方法としては、好ましくは、アグロバクテリウムを介して遺伝子を導入するリーフディスク法(Jorgensen, R.A. et al., (1996). Chalcone synthase cosuppression phenotypes in petunia flowers: comparison of sense vs. antisense constructs and single-copy vs. complex T-DNA sequences. Plant Mol. Biol. 31, 957-973.)が挙げられる。
【0032】
なおこれら上述の形質転換方法は、宿主となる植物などの種類(例えば単子葉植物、双子葉植物)に応じて適宜選択することが好ましい。
【0033】
本発明において「植物」とは、特に制限されないが、例えばイネ、コムギ、オオムギ、エンバク、トウモロコシ、ハトムギ、イタリアンライグラス、ペレニアルライグラス、チモシー、メドーフェスク、キビ、アワ、サトウキビ等を挙げることができる。
【0034】
また、本発明は、本発明のDNAまたは本発明のベクターを保持する植物細胞を提供する。さらに本発明は、本発明の植物細胞を含む形質転換植物体を提供する。本発明のDNAまたは本発明のベクターが導入される細胞には、形質転換植物体作製のための植物細胞が含まれる。植物細胞としては特に制限はない。
本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。
【0035】
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し植物体を再生させる方法、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し植物体を再生させる方法、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法、およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法などを挙げることができるが、特に制限されるものではない。いくつかの技術については既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
【0036】
本発明のDNAを含むベクターの導入により形質転換した植物細胞を効率的に選択するために、上記組み換えベクターは、適当な選抜マーカー遺伝子を含む、もしくは選抜マーカー遺伝子を含むプラスミドベクターと共に植物細胞へ導入することが好ましい。この目的に使用される選抜マーカー遺伝子は、例えば抗生物質カナマイシンまたはゲンタマイシンに耐性であるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ハイグロマイシンに耐性であるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、および除草剤ホスフィノスリシンに耐性であるアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等が挙げられる。
【0037】
組み換えベクターを導入した植物細胞は、導入された選抜マーカー遺伝子の種類に従って適当な選抜用薬剤を含む公知の選抜用培地に置床し培養する。これにより形質転換された植物培養細胞を得ることができる。
【0038】
形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。再分化の方法は植物細胞の種類により異なるが、例えばイネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (1995))の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581 (1989))の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603(1990))の方法が挙げられる。
【0039】
なお、このように再生され、かつ栽培した形質転換植物体中の導入された外来DNAの存在は、公知のPCR法やサザンハイブリダイゼーション法によって、または植物体中のDNAの塩基配列を解析することによって確認することができる。
この場合、形質転換植物体からのDNAの抽出は、公知のJ.Sambrookらの方法(Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に準じて実施することができる。
【0040】
再生させた植物体中に存在する本発明のDNAよりなる外来遺伝子を、PCR法を用いて解析する場合には、上記のように再生植物体から抽出したDNAを鋳型として増幅反応を行う。また、本発明のDNA、あるいは本発明により改変されたDNAの塩基配列に従って適当に選択された塩基配列をもつ合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、これらを混合させた反応液中において増幅反応を行うこともできる。増幅反応においては、DNAの変性、アニーリング、伸張反応を数十回繰り返すと、本発明のDNA配列を含むDNA断片の増幅生成物を得ることができる。増幅生成物を含む反応液を例えばアガロース電気泳動にかけると、増幅された各種のDNA断片が分画されて、そのDNA断片が本発明のDNAに対応することを確認することが可能である。
【0041】
一旦、ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAまたはベクターが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。
【0042】
このようにして作出された植物体は通常の穀物に比べて、幅広いいもち病レースに対して圃場抵抗性を有することが期待される。
上述のように、本発明のDNAもしくはベクターを植物細胞へ導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法もまた本発明に含まれる。
【0043】
本発明の圃場抵抗性を有する植物体もしくはその種子は、育種法によっても作出することが可能である。
上記育種法としては、例えば、本発明のDNAを有する品種と交雑させることを特徴とする一般的な育種法(交雑育種法等)を挙げることができる。該方法によって、圃場抵抗性を有する植物体もしくはその種子を作出することができる。
【0044】
育種法によって本発明の植物体もしくは種子を作製する際には、公知の種々の文献を参照して適宜実施することができる(細胞工学別冊・植物細胞工学シリーズ15「モデル植物の実験プロトコール」秀潤社、2001年、加藤鎌司著「2.1 イネ・コムギの交配」p.6-9; 高牟礼逸朗、佐野芳雄著「2. 交配法」p.46-48)。
【0045】
本発明の上記植物体の作成方法を育種法によって実施する場合には、さらに具体的には、以下のような工程を含む方法を挙げることができる。
(a)植物Aと、本発明のDNAを有する他の植物Bを交雑させ、F1を作出する工程
(b)前記F1と前記植物Aを交雑させる工程
(c)前記DNAを有する植物を選抜する工程
(d)工程(c)によって選抜された植物と、前記植物Aを交雑させる工程
【0046】
上記方法においては、本発明のDNAを有する植物Bと、圃場抵抗性を付与したい植物(これら植物を「植物A」と記載する。)を交雑し、Bのもつ本発明のDNAが受け継がれ、かつ植物Aに近い個体を選抜し、これに植物Aによる交雑を重ねていく「戻し交雑」を行って、Bが有する本発明のDNAの形質を意図的に導入する。その際、一般的にゲノム育種に利用されるDNAマーカーを利用して本発明のDNAを有する植物を選抜することにより、上記「戻し交雑」による置換を効率的に行うことが可能である。その結果、育種期間の短縮に繋がり、また、余分なゲノム領域の混入を正確に除くことができる。通常、「戻し交雑」では、本発明のDNAと非常に強く連鎖する他のDNAに依存する形質がどうしても排除できないという現象が問題となることがあるが、本発明のDNAの近傍に存在するDNAマーカーを利用することにより、所望の植物の正確な選抜が可能となる。
【0047】
上記方法においては、必要に応じて、本発明のDNA以外のゲノム全域が目的の遺伝形質でホモ固定するまで、繰り返して行うことができる。即ち、本発明の好ましい態様のおいては、上記工程(d)によって交雑された個体について、一般的なDNAマーカーを利用して、本発明のDNAを有し、かつ、ゲノム構造が植物Aに近い植物個体を選抜することができる。さらに、この選抜された植物個体は、必要に応じて、「戻し交雑」(イネ品種Aと交雑)させることができる。
【0048】
特にDNAマーカーを利用したゲノム育種方法では、置換率の高い個体を選抜して次の交雑に進むことができるため、世代を進めるほどに選抜効率が良くなる。また、本方法では、少ない個体数を扱えば済むので、省スペースでの育種が可能になる。さらに、温室や人工気象室を利用して1年に複数回もの交雑が可能になる。
【0049】
上記工程(c)において、DNAマーカーを用いて選抜するとは、当該DNAマーカーを特徴付ける塩基配列(例えば、多型等)についての塩基種の情報を基に、選抜を行うことを言う。例えば、本発明のDNAの近傍に多型変異が存在する場合、当該多型変異と同一の多型変異を有する個体を選抜すること等を言う。
【0050】
本発明の育種方法は、好ましくは、DNAマーカーを利用した「ゲノム育種」方法である。該「ゲノム育種」は「マーカー育種」とも呼ばれる。
【0051】
本発明の育種方法において利用可能なDNAマーカーは、特に制限されず、一般的に知られている種々のDNAマーカーを好適に用いることができる。例えば、RFLP(制限酵素断片長多型)マーカー、SSR(単純反復配列)マーカー、SNP(一塩基多型)マーカー等を例示することができる。
【0052】
本発明はまた、Pi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子からなるDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを提供する。
ここで「相補鎖」とは、A:T(ただしRNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖核酸の一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。相同性を決定するためのアルゴリズムは当業者に周知のものを使用すればよい。
【0053】
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAの検出や増幅に用いるプローブやプライマーとして使用することができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、DNAアレイの基板の形態で使用することができる。
【0054】
該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15bpから100bpであり、好ましくは17bpから30bpである。プライマーは、本発明のDNAまたはその相補鎖の少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。また、プライマーとして用いる場合、3'側の領域は相補的とし、5'側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。
【0055】
本発明に使用できるプライマーの具体的な例としては、配列番号:4~9に記載のプライマーを挙げることができる。
【0056】
また、上記オリゴヌクレオチドをプローブとして使用する場合、該プローブは、配列番号:1または2に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするものであれば、特に制限されない。該プローブは、合成オリゴヌクレオチドであってもよく、通常少なくとも15bp以上の鎖長を有する。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドをプローブとして用いる場合は、適宜標識して用いることが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5'端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)を例示することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。プローブは、制限酵素処理等によって取得される二本鎖DNA断片として作製することもできる。
【0058】
本発明はさらに、以下の(a)~(c)の工程を含む方法であって、分子量または塩基配列が一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法を提供する。
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料からPi35(t)遺伝子に相当するDNA領域を増幅する工程、
(c)増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を、Pi35(t)遺伝子のそれと比較する工程。
【0059】
本発明の上記DNA試料の調製(抽出)方法としては、当業者においては、公知の方法によって行うことができる。好ましい調製方法として、例えば、CTAB法を用いてDNAを抽出する方法を挙げることができる。
【0060】
また、本発明の識別方法に供される、DNA試料は、特に制限されるものではないが、通常、被検植物であるイネから抽出するゲノムDNAを用いる。また、ゲノムDNAの採取源としては特に限定されるものではなく、イネのいずれの組織からも抽出できる。例えば、穂、葉、根、茎、種子、胚乳部、フスマ、胚等から抽出することができる。
【0061】
本発明の植物のいもち病圃場抵抗性を識別する方法では、次に、調製したDNAを鋳型として、プライマーDNAを用いて核酸増幅反応(例えば、PCR法)を行う。増幅したDNA断片を制限酵素で切断し、切断されたDNA断片の大きさを、電気泳動等により被検植物といもち病圃場抵抗性の植物との間で比較し、分子量または塩基配列が一致する場合に、該被検植物は、いもち病圃場抵抗性の形質を有すると判定される。
【0062】
本発明における、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法において、「一致する」とは、対立遺伝子の一方または両方の遺伝子の分子量または塩基配列がいもち病圃場抵抗性植物のそれと一致するときあるいはアミノ酸配列において一致することを意味する。したがって、対立遺伝子の一方の遺伝子の分子量、塩基配列またはアミノ酸配列がいもち病圃場抵抗性植物のそれと異なるが、もう一方がいもち病圃場抵抗性植物のそれと同じである場合であっても、「一致する」に含まれる。
上記電気泳動分析は、常法にしたがって行えばよい。例えば、アガロースまたはポリアクリルアミドのゲル中で電圧をかけて電気泳動し、分離したDNAパターンを分析する。
【0063】
また本発明は、以下の(a)から(d)の工程を含む方法であって、ゲル上での移動度が一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法を提供する。
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程
(b)該DNA試料からPi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の領域を増幅する工程
(c)増幅した二本鎖のDNAを非変性ゲル上で分離する工程
(d)分離した二本鎖DNAのゲル上での移動度を、Pi35(t)遺伝子のそれと比較する工程
【0064】
さらに本発明は、以下の(a)から(e)の工程を含む方法であって、ゲル上での移動度が一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法を提供する。
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程
(b)該DNA試料からPi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程
(d)解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する工程
(e)分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を、Pi35(t)遺伝子のそれと比較する工程
【0065】
このような方法として、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)が挙げられる。この方法は操作が比較的簡便であり、また試料の量も少なくてすむなどの利点を有するため、特に多数のDNAサンプルをスクリーニングするのに好適である。その原理は以下の如くである。二本鎖DNA断片を一本鎖に解離すると、各鎖はその塩基配列に依存した独自の高次構造を形成する。この解離したDNA鎖を変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル中で電気泳動すると、それぞれの高次構造の差に応じて、相補的な同じ鎖長の一本鎖DNAが異なる位置に移動する。一塩基の置換によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動度を示す。従って、この移動度の変化を検出することによりDNA断片に点突然変異や欠失、あるいは挿入などによる変異が存在することを検出することができる。
【0066】
具体的には、まず、Pi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の標的部位を含む領域をPCR法などによって増幅する。増幅される範囲としては、100から600bp程度の長さが好ましい。PCRによる遺伝子断片増幅の際、32Pなどのアイソトープ、あるいは蛍光色素やビオチンなどによって標識したプライマーを用いるか、あるいはPCR反応液に32Pなどのアイソトープ、あるいは蛍光色素やビオチンなどによって標識した基質塩基を加えてPCRを行うことによって合成されるDNA断片を標識する。あるいはPCR反応後にクレノウ酵素などを用いて32Pなどのアイソトープ、あるいは蛍光色素やビオチンなどによって標識した基質塩基を合成されたDNA断片に付加することによっても標識を行うことができる。このようにして得られたDNA断片を2本鎖のまま、尿素などの変性剤を含まないポリアクリルアミドゲルによって電気泳動を行う。もしくは、このようなDNA断片に熱を加えることなどにより変性させてから、尿素などの変性剤を含まないポリアクリルアミドゲルによって電気泳動を行ってもよい。この際、ポリアクリルアミドゲルに適量(5から10%程度)のグリセロールを添加することにより、DNA断片の分離の条件を改善することができる。また、泳動条件は各DNA断片の性質により変動するが、通常、室温(20から25℃)で行い、好ましい分離が得られないときには4から30℃までの温度で最適の移動度を与える温度の検討を行う。電気泳動後、DNA断片の移動度を、X線フィルムを用いたオートラジオグラフィーや、蛍光を検出するスキャナー等で検出し、解析する。移動度に差があるバンドが検出された場合、このバンドを直接ゲルから切り出し、PCRによって再度増幅し、それを直接シークエンシングすることにより、変異の存在を確認することができる。また、標識したDNAを使わない場合においても、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドや銀染色法などによって染色することによって、バンドを検出することができる。
【0067】
さらに本発明は、以下の(a)から(e)の工程を含む方法であって、検出されたDNA断片の大きさが一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法を提供する。
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程
(b)該DNA試料かPi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の領域を増幅する工程
(c)調製したDNA試料を制限酵素により切断する工程
(d)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(e)検出されたDNA断片の大きさを、Pi35(t)遺伝子のそれと比較する工程
【0068】
このような方法としては、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用したRFLP法やPCR-RFLP法などが挙げられる。DNAを切断する酵素としては、通常、制限酵素を用いる。具体的には、制限酵素の認識部位に塩基の付加、欠失が存在する場合、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内に塩基挿入、または欠失がある場合、制限酵素処理後に生じる断片の大きさが、いもち病罹病性の植物といもち病圃場抵抗性の植物との間で変化する。この変異部位を含む部分をPCR法によって増幅し、それぞれの制限酵素で処理することによって、これらの多型部位を電気泳動後のバンドの移動度の差として検出することができる。あるいは、染色体DNAをこれらの制限酵素によって処理し、電気泳動した後、プローブDNAを用いてサザンブロッティングを行うことにより、多型部位を検出することができる。用いられる制限酵素は、それぞれの変異部位に応じて適宜選択することができる。この方法では、ゲノムDNA以外にも被験者から調製したRNAを逆転写酵素でcDNAにし、これをそのまま制限酵素で切断した後サザンブロッティングを行うこともできる。また、このcDNAを鋳型としてPCRでPi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の一部、あるいは全部を増幅し、それを制限酵素で切断した後、移動度の差を調べることもできる。
【0069】
さらに本発明は、以下の(a)から(d)の工程を含む方法であって、ゲル上での移動度が一致するときに、被検植物がいもち病圃場抵抗性であると判定する方法を提供する。
(a)被検植物からDNA試料を調製する工程
(b)該DNA試料からPi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する工程
(d)分離したDNAのゲル上での移動度と、Pi35(t)遺伝子のそれと比較する工程
【0070】
このような方法としては、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE)が挙げられる。Pi35(t)遺伝子またはPi35(t)遺伝子の標的部位を含む領域を本発明のプライマーなどを用いたPCR法などによって増幅し、これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、健常者と比較する。変異が存在するDNA断片の場合、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなるため、この移動度の差を検出することにより多型の存在を検出することができる。
【0071】
これら方法以外にも、アレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。多型が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを作製し、これと試料DNAでハイブリダイゼーションを行わせると、該オリゴヌクレオチドと異なる多型塩基が、ハイブリダイズする試料DNAに存在する場合、ハイブリッド形成の効率が低下する。それをサザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法などにより検出できる。
【0072】
また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法による検出も可能である。具体的には、Pi35(t)遺伝子の標的部位を含む領域をPCR法などによって増幅し、これに対し、プラスミドベクター等に組み込んだPi35(t)を有する植物のcDNA等から調製した標識RNAとハイブリダイゼーションを行わしめる。Pi35(t)を有する植物と異なる塩基が存在する部分においてはハイブリッドが一本鎖構造となるので、この部分をリボヌクレアーゼAによって切断し、これをオートラジオグラフィーなどで検出することによって多型の存在を検出することができる。
【0073】
本発明において「被検植物」とは、特に限定されるものではなく、いもち病菌に感染しうる全ての植物が含まれる。好ましい一例としては、イネが挙げられる。イネであれば特に制限されず、インディカ種であっても、ジャポニカ種であってもよく、または、インディカ種とジャポニカ種との交配品種・系統や野生イネ、あるいは栽培品種と野生イネの交配・交雑品種であってもよい。
また、本発明の判定方法を利用すれば、いもち病圃場抵抗性であると識別される植物(例えばイネ)を早期に選抜することが可能となる。
【0074】
すなわち本発明は、以下の(a)および(b)に記載の工程を含む、いもち病圃場抵抗性である植物を選抜する方法を提供する。
(a)いもち病圃場抵抗性である植物(例えばイネ)と任意の機能を有する植物(例えばイネ)とが交配された品種を作製する工程
(b)本明細書に記載の、被検植物がいもち病圃場抵抗性であるか否かを判定する方法により、工程(a)で得られた植物がいもち病圃場抵抗性であるか否かを判定する工程
【0075】
本発明において植物とは、特に限定されるものではないが、好ましくはイネである。イネの具体的な態様は上述の通りである。
【0076】
本発明者らは、Pi35(t)遺伝子をもつイネがいもち病圃場抵抗性を有することを見出した。従って、Pi35(t)遺伝子の存在を判別することで被検植物がいもち病圃場抵抗性であるか否かを検出することができる。言い換えれば、Pi35(t)遺伝子を有さない品種と有する品種を比較し、変異部位をDNAマーカーとすることで、上記育種方法に使用することができる。
【0077】
上記の知見に基づき、本発明は、被検植物について、配列番号:2に記載のDNA領域に相当する部位、またはその周辺配列に存在する変異を含むDNAマーカーを検出することを特徴とする、被検植物のいもち病圃場抵抗性を検出する方法を提供する。
【0078】
本発明において、配列番号:2に記載のDNA領域に「相当する部位」とは、種々の植物において、当該植物に存在する上記遺伝子の相同遺伝子における対応する部位をいう。
【0079】
本発明の方法においては、上記配列番号:2に記載のDNA領域に相当する部位、またはその周辺配列、具体的には配列番号:1に記載のの遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域において、配列番号:1または2と同型の遺伝子型が検出された場合には、いもち病圃場抵抗性であると判定できる。
【0080】
本発明の方法により、被検植物における変異を検出することで、実際に植物体のいもち病に対する反応を観察しなくても、被検植物がいもち病圃場抵抗性か否かを判定することができる。
【0081】
本発明における「周辺配列」とは、通常、該遺伝子の近傍の染色体上の領域を指す。近傍とは、特に制限されるものではないが、通常、本発明の多型部位を含むDNA領域である。
【0082】
上記本発明の検出方法における「変異」の位置は、予め規定することは困難であるが、通常、上記遺伝子のORF中、あるいは上記遺伝子の発現を制御する領域(例えば、プロモーター領域、エンハンサー領域等)中に存在するが、これらに限定されるものではない。また、この「変異」とは、上記遺伝子の発現量を変化させる、mRNAの安定性等の性質を変化させる、あるいは上記遺伝子によってコードされるタンパク質の有する活性を変化させるような変異であることが多いが、特に制限されない。本発明の変異としては、例えば、塩基の付加、欠失、置換、挿入変異等を挙げることができる。
【0083】
本発明者らは、被検植物における、いもち病圃場抵抗性植物由来のタンパク質をコードする配列番号:1または2のDNA領域において、いもち病圃場抵抗性に対して有意に関連する多型変異を見出すことに成功した。
【0084】
本発明のいもち病圃場抵抗性を検出する方法における「多型部位」は、上記DNAのいずれかに記載の塩基配列もしくは該塩基配列の近傍DNA領域に存在する多型であれば、特に制限されない。具体的には、本発明のいもち病圃場抵抗性を検出する方法に利用可能な多型部位として、配列番号:2に記載の塩基配列における3157から3159位の間または、3163から3165位の間に存在する多型部位に相当する部位を挙げることができる(なお、本明細書においては、これらの多型部位を単に『本発明の多型部位』と記載する場合がある)。
【0085】
上記表中に示した多型部位の塩基種は配列表に示した配列に対して相補鎖側にある塩基種を示している場合があるが、本明細書において記載された前後配列を用いれば異同を確認することは当業者にとって容易であり、検出を行うにあたってはプラス鎖とマイナス鎖のどちらを調べても必然的にもう一方の結果を決定することができる。
【0086】
本発明の好ましい態様においては、上述した多型部位において配列番号:2に記載の塩基配列において、3157から3159位がアスパラギン酸をコードするコドンである場合、または3163から3165位がセリンをコードするコドンである場合である場合に、いもち病圃場抵抗性であると判定される。
【0087】
本発明の多型部位における塩基種の決定は、上述のとおり、当業者においては種々の方法によって行うことができる。一例を示せば、RFLPを用いて3157から3159位がアスパラギン酸をコードするコドンを検出する際には、配列番号:11および12で増幅される269bpのDNA断片を制限酵素MmeIで切断し、電気泳動を行うことで、40bpと229bpの増幅断片が切断されるDを持つ検体と、切断されない他とを識別できる。
【0088】
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アリル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アリル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべき多型部位が存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によって多型部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。
【0089】
また、上述のアリル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法に用いるオリゴヌクレオチドには、配列番号:2に記載の塩基配列におけるの塩基配列における3157から3159位の間または、3163から3165位の間に存在する多型部位に相当する部位を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドは、いもち病圃場抵抗性を検出するための試薬(検査薬)として利用できる。これは遺伝子発現を指標とする検査、または遺伝子多型を指標とする検査に使用される。
【0090】
該オリゴヌクレオチドは、本発明の上記多型部位のいずれかの多型部位を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものである。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(例えば、サムブルックら,Molecular Cloning,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New York,USA,第2版1989に記載の条件)において、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、該オリゴヌクレオチドは、検出する遺伝子もしくは該遺伝子の近傍DNA領域における、上記植物のいもち病圃場抵抗性植物由来のタンパク質をコードするDNA塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。
【0091】
該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の検査方法におけるプローブやプライマーとして用いることができる。該オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常15bp~100bpであり、好ましくは17bp~30bpである。プライマーは、本発明の上記配列番号:2に記載の塩基配列におけるの塩基配列における3157から3159位の間または、3163から3165位の間に存在する多型部位に相当する部位を含むDNAの少なくとも一部を増幅しうるものであれば、特に制限されない。
【0092】
本発明はまた、本発明のPi35(t)遺伝子によりコードされるタンパク質、該タンパク質の製造方法、該タンパク質に結合する抗体を提供する。
【0093】
組み換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組み換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組み換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. Journal of Molecular Biology, Vol.53, 158-162,(1970)、Hanahan, D. Journal of Molecular Biology, Vol.166, 557-580,(1983))を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組み換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組み換えタンパク質を上述したマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。
【0094】
得られた組換えタンパク質を用いれば、これに結合する抗体を調製することができる。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして取得することができる。Pi35(t)タンパク質、あるいはGSTとの融合タンパク質として大腸菌等の微生物において発現させたリコンビナントタンパク質、またはその部分ペプチドをウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、Pi35(t)タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、Pi35(t)タンパク質またはその部分ペプチドをマウス等の小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、該細胞とマウスミエローマ細胞とをポリエチレングリコール等の試薬を用いて融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、Pi35(t)タンパク質に結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、Pi35(t)タンパク質や合成ペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。これにより得られた抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出、さらに上述の判定方法などに利用することが可能である。本発明には、本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。
【0095】
本発明の選抜方法を利用すれば、いもち病圃場抵抗性と識別される植物(例えばイネ)を早期に選抜することが可能となる。本発明はこのようないもち病圃場抵抗性と識別される植物を早期に選抜する方法も提供する。ここでいう「早期」とは、例えばイネの出穂より前の状態を指し、好ましくは発芽直後の状態を指す。本発明の選抜方法を利用すれば、いもち病圃場抵抗性の形質を有する品種の育成を従来よりも短期間で成し遂げることが可能となる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕遺伝地図作成
Pi35(t)は、これまでの研究から、PCRマーカーRM1216 と RM1003との間にあることがわかっていた(Nguyen et al Theoretical and Applied Genetics 113 697-704)。そこで、その領域内に、PCRマーカーを作成し、上記文献の遺伝解析集団を用いて解析を進めたところ、PCRマーカーP31065(プライマー配列aaggctcacaggctcacagt(配列番号:4)、 cgacggcgagattagacatt(配列番号:5))とRM1003間の領域(日本晴の塩基配列で892kbの範囲)にあることがわかった。次に、マップベースクローニングに不可欠な大規模分離集団によるPi35(t)領域の詳細な連鎖解析を行った。連鎖解析用の集団は、上記文献の遺伝解析集団の後代系統を用いた。すなわち、病斑進展を抑制する対立遺伝子Pi35(t)を持つ品種北海188号に、病斑を抑制しない対立遺伝子pi35(t)を持つ罹病性品種Danghang-Shaliを戻し交雑して得たF5集団3112個体を用いた。P31035とRM1003間の領域におけるPi35(t)近傍の染色体領域で組み換えのある個体(124個体)のうち、56個体について、後代固定系統について、いもち病圃場抵抗性をガラス室検定によって評価し、連鎖解析を行った結果、Pi35(t)はP33688 (プライマー配列acgtccacttctgtcgatcc(配列番号:6)、ttgattgtgccaagaacagg(配列番号:7))とRM111744間の領域に存在することがわかった(図1A)。さらに、以下の取り組みにおいてPi35(t)領域詳細な連鎖地図作成を行った。
【0097】
〔実施例2〕バクテリア人工染色体(BAC)クローンライブラリーの作成と候補DNA変異の特定
Pi35(t)を持つ品種北海188号のBACクローンライブラリー(19082クローン、平均インサート長115Kb)を作成し、Pi35(t)遺伝子領域を含むゲノムクローンHO188-07L09をPCRマーカーP33688、RM1003を用いて選抜した。さらに特定したBACクローンの塩基配列をショットガン法によって決定した。その結果、合計195120bpの4個のコンティグからなる塩基配列を得た。そのうち、Pi35(t)が存在するP33688とRM111744間の領域について、Pi35(t)遺伝子を持たない品種日本晴と比較したところ、北海188号において20637bpの欠失変異を含むほかに、17カ所(上流6、候補遺伝子内8、下流3)の変異があった。これらの変異の中でアミノ酸置換が予想されるのは、日本晴において予測される6個の遺伝子のうち、Os01g782100のみであった(図1B)。この遺伝子はNBS-LRRという病害抵抗性遺伝子(以下単にNBS-LRR遺伝子と記載することがある)に共通する構造を持っていた。特に、アミノ酸置換変異の大半は病原体の遺伝子産物の認識特異性に関わることが知られるLRRドメインに集中していた(図2)。以上の結果から、日本晴のOs01g0782100の対立遺伝子がPi35(t)遺伝子である可能性が示唆された。
【0098】
〔実施例3〕形質転換による候補遺伝子の機能の同定
Pi35(t)遺伝子の候補として特定された5’上流予測プロモーター領域を含む北海188号のゲノム領域SpeI-XhoI 13.1kb断片(日本晴ゲノム上での位置、chr1:34869531…34903270)を、アグロバクテリウムを介して形質転換可能なベクターpPZP2H-lacに組み込んだ。この断片を導入したベクターならびにベクターのみを用い、土岐の方法(文献 Plant Mol. Biol. Rep. 15:16-21、 1997)により形質転換を行なった。形質転換する系統には罹病性品種愛知旭を用いた。SpeI-XhoI 13.1kb断片の形質転換実験から131個体、ベクターのみからは60個体のハイグロマイシン耐性個体を得た。候補遺伝子に特異的なプライマー(センス鎖5'- ATTGGTGAGCTGAAGCACCT-3'(配列番号:8))および (アンチセンス鎖5'- TGATATGGGAAGCGAATTCC-3'(配列番号:9))を用いて増幅したDNA断片を制限酵素BamHIで切断し、これによって切断される導入した領域が組み込まれたか否かをPCR法により調査した。その結果、調査した117個体のうち、112個体の形質転換体について、候補遺伝子が組み込まれていることが判明した。これらの個体に対し、移植後1~2週間後に、4種類のいもち病菌株[007.0(北1)、037.3(愛79-142)、303.1(P-2b),337.3(Mu183)]のいずれかを噴霧接種によって接種し病斑の形成を調査した。これらの菌株は我が国において優先して存在するいもち病菌レースを包含するものであり、我が国で利用されている真性抵抗性遺伝子のいずれかを侵すものである。これら全ての菌株に対して抵抗性を示せば、我が国のいもち病菌に対して幅広く抵抗性を示すことが期待できる。解析の結果、ベクターのみを導入した個体に比べて、候補遺伝子を導入した系統では全ての菌株に対して病斑の面積は低く、抵抗性が向上した(図3)。以上の結果から、候補遺伝子領域(SpeI-XhoI 13.1kb)には、愛知旭の抵抗性のレベルを複数の菌株に対して向上させる機能を有することが明らかとなり、候補遺伝子がPi35(t)遺伝子であると判断した。
【0099】
以上の結果から、マップベースクローニング法により候補として絞り込まれたNBS-LRR遺伝子がイネいもち病圃場抵抗性遺伝子Pi35(t)であることが判明した。本成果は典型的なNBS-LRR遺伝子が量的で、複数の菌株に対して抵抗性を示す圃場抵抗性に関与する遺伝子であることを証明している。これまでに知られているいもち病抵抗性を付与するNBS-LRR遺伝子には、レース特異性があることが知られている。今回見出したPi35(t)遺伝子は、その機能を持たない品種日本晴の遺伝子とは少数のアミノ酸配列が異なるだけであるが抵抗性のスペクトラムが広くなっていた。このことから、品種北海188号のもつPi35(t)遺伝子によって、日本国内の複数の菌株に対して抵抗性を高めた植物を作出することが可能となると考えられる。すなわち、日本国内のイネ品種の中で、Pi35(t)遺伝子を持たない品種に対して、単離したPi35(t)遺伝子を導入することによって、幅広いいもち病レースに対して抵抗性を付与することが可能になると考えられる。
【0100】
〔実施例4〕イネにおけるPi35(t)の変異
Pi35(t)の特性に重要と予想されるLRR領域(日本晴での配列位置2989-3408、図2) について、世界のイネの遺伝的多様性を包含するコアコレクション69品種のDNA変異を検索し、アミノ酸配列変異を推定した。次に、Pi35(t)を持たない日本晴とPi35(t)をもつ北海188号との間でこの領域に見られる4個のアミノ酸変異E/D(3160-62)、R/S(3166-68)、P/Q(3217-19)、N/W(3247-49)(いずれも、日本晴/北海118号)のイネ品種における分布を調べた。その結果、P/Q(3217-19)については、66品種がアミノ酸Pを持ち、その中にはいもち病に対して罹病性を示す多くの品種が含まれたことから、このアミノ酸変異とPi35(t)の特性との間に関連は認められなかった。また、R/S(3166-68)およびN/W(3247-49)を保有しているのは1品種のみだった。その品種は、いもち病菌レース077.1および337.3に対して罹病性を示し、Pi35(t)の特性は認められなかった。一方、3160-62については、Dを持つ品種は供試材料にはなく、北海188号に特異的であった。以上のことから、D(3160-62)はPi35(t)の特性に関連性が高いアミノ酸変異である可能性が高い。あるいは、D(3160-62)、S(3166-68)は同一のLRRドメインに存在する(図2)ことから、D(3160-62)とS(3166-68)の両方を持つことがPi35(t)に関連する可能性がある。
【0101】
D(3160-62)すなわち、塩基配列GAC(他の品種ではGAA)を検出するためには、SNPを検出する一般的な方法が適用できる。例えば、プライマー(センス鎖5'- ATCTGCTACCTCTCTTTCCGA-3'(配列番号:10)、アンチセンス鎖5'- AWCCTTCCAGCACGSATAAAT -3'(配列番号:11)で増幅される269bpのDNA断片を制限酵素MmeIで切断し、電気泳動を行うことで、40bpと229bpの増幅断片が切断されるDを持つ検体と、切断されない他とを識別できる。S(3166-68)についても同様のSNP検出方法が適用できる。
【0102】
なお、いずれも括弧()内は、日本晴の対立遺伝子の塩基配列上の位置を示す。北海188号のPi35(t)には、3bpの欠失が1528-1530にあるため、配列番号:2では、3bp前に変異部位がずれる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】Pi35(t)の連鎖地図(A)および物理地図(B)を示す図である。
【図2】日本晴と北海188号でのPi35(t)遺伝子の構造を比較した結果を示す図である。数字は変異の位置を、( )内はアミノ酸配列の違いを示す。
【図3】Pi35(t)候補遺伝子導入による病斑面積率の低下を示す図である。黒三角はPi35(t)導入個体、白三角はベクターのみの導入個体の平均値を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2