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明細書 :電気化学キャパシタおよび電気化学キャパシタ用の作用電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5447917号 (P5447917)
公開番号 特開2009-260289 (P2009-260289A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成21年11月5日(2009.11.5)
発明の名称または考案の名称 電気化学キャパシタおよび電気化学キャパシタ用の作用電極の製造方法
国際特許分類 H01G  11/46        (2013.01)
H01G  11/64        (2013.01)
H01G  11/86        (2013.01)
FI H01G 11/46
H01G 11/64
H01G 11/86
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2009-057942 (P2009-057942)
出願日 平成21年3月11日(2009.3.11)
優先権出願番号 2008075237
優先日 平成20年3月24日(2008.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年3月2日(2012.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】駒場 慎一
【氏名】尾形 敦
【氏名】土川 智也
個別代理人の代理人 【識別番号】100078754、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 正彦
審査官 【審査官】田中 晃洋
参考文献・文献 特開昭57-009073(JP,A)
特開平09-050806(JP,A)
Shinichi Komaba,Electrochemical Stimulation of Mn2O3 and Mn3O4 for Electrochemical Capacitors,ITE Letters,米国,2007年 8月31日,Vol.8,No.4,400-403
調査した分野 H01G 11/46
H01G 11/64
H01G 11/86
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に二酸化マンガン(MnO2 )を有する四酸化三マンガン(Mn3 4 )よりなる作用電極と、対電極とが電解液中に浸漬されてなり、
前記電解液は、硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液にオキソ酸イオンが含有されてなり、当該オキソ酸イオンのマンガン塩が水に対して難溶性であり、
前記オキソ酸イオンが、リン酸イオン、炭酸イオンまたは四ホウ酸イオンであることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記オキソ酸イオンがリン酸イオンであり、当該リン酸イオンがリン酸水素ナトリウム(Na 2 HPO 4 )より供給されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項3】
前記オキソ酸イオンが炭酸イオンであり、当該炭酸イオンが炭酸水素ナトリウム(NaHCO 3 )より供給されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【請求項4】
前記オキソ酸イオンの濃度が、5~50mMであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の電気化学キャパシタにおける作用電極の製造方法であって、
四酸化三マンガン(Mn 3 4 )を含有する作用電極材料を電極として電解液中で電気分解処理することにより、当該四酸化三マンガン(Mn 3 4 )の表面に二酸化マンガン(MnO 2 )が析出された作用電極を得ることを特徴とする電気化学キャパシタ用の作用電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電源、携帯電子機器電源およびこれらの補助電源として有用な電気化学キャパシタおよびそれに用いられる作用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学キャパシタは、大容量・高出力の電気エネルギー貯蔵デバイスとして、近年、盛んに開発されている。この電気化学キャパシタのうち酸化還元反応を利用したいわゆるレドックスキャパシタに使用される電極の材料としては、主に金属酸化物が用いられており、代表的には例えば水和酸化ルテニウムが挙げられる。
然るに、ルテニウムは資源の埋蔵量が少なく、また製造コストが高いことや環境負荷が大きいことなど使用に多くの問題を伴う。
これらの問題を解決するために、新規の材料として、資源量が多く、安価で環境負荷も小さいマンガン酸化物が活発に研究されている(例えば、非特許文献1参照。)。
このマンガン酸化物は、上記の利点から他の分野の電極材料としても盛んに研究されている。例えば特許文献1にはリチウムイオン二次電池用の正極材料として用いることが開示されており、また例えば特許文献2には電池やセンサなどに用いられる電気化学電極の材料として用いることが開示されている。
【0003】
非特許文献2および非特許文献3には、電気化学キャパシタ用の電極として、四酸化三マンガン(Mn3 4 )を含有させた電極材料に電気分解処理を施したものを用いることが開示されている。四酸化三マンガン(Mn3 4 )は電気化学的に不活性であるが、電気分解処理を施すことによりマンガンの溶解、析出反応が生じ、電気化学的に活性な層状のバーネサイト型二酸化マンガン(MnO2 )に構造が変化する。
【0004】
しかしながら、2価のマンガンは水溶性であるため、このような電極による電気化学キャパシタを用いて繰り返し充放電を行うと、徐々にマンガンが溶出してしまい、これにより電極の重量が減少するため、当該電気化学キャパシタのキャパシタンス(充放電容量)が次第に小さくなってしまうという問題がある。
【0005】
リチウムイオン二次電池用の電極材料については、マンガン酸化物からのマンガンの溶出を抑制する方法として、例えば、特許文献3には、リチウム金属酸化物中にリン酸アルカリ金属塩を混合して形成させた正極材料とリチウム含有電解液を用いることにより、マンガンの溶出による容量維持率の低下を改善することが開示されており、また、特許文献4には、二酸化マンガン中にリンを残存させることにより、その具体的な効果は不明であるものの、リチウムイオン二次電池内でのマンガンの溶出量を低減させることができることが開示されている。
【0006】
しかしながら、電気化学キャパシタについては、マンガンの溶出が十分に抑制されたものは未だに実現されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2003-2654号公報
【特許文献2】特開2007-35298号公報
【特許文献3】特開2007-220335号公報
【特許文献4】特開2002-308626号公報
【0008】

【非特許文献1】Journal of Solid State Chemistry Vol.144,No.1,Page.220-223(1999.04)
【非特許文献2】ITE Letters on Batteries,New Technologies & Medicine,Vol.8,No.4,Page.400-403(2007.08.31)
【非特許文献3】電気化学会第74回大会講演要旨集 Page.460(2007.3.29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、大きなキャパシタンス(充放電容量)を有し、かつ、長期間にわたって使用することのできる長寿命の電気化学キャパシタおよびこれを構成する電気化学キャパシタ用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電気化学キャパシタは、表面に二酸化マンガン(MnO2 )を有する四酸化三マンガン(Mn3 4 )よりなる作用電極と、対電極とが電解液中に浸漬されてなり、
前記電解液は、硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液にオキソ酸イオンが含有されてなり、当該オキソ酸イオンのマンガン塩が水に対して難溶性であり、
前記オキソ酸イオンが、リン酸イオン、炭酸イオンまたは四ホウ酸イオンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電気化学キャパシタにおいて、前記オキソ酸イオンがリン酸イオンである場合は、当該リン酸イオンがリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )より供給されることが好ましい。
また、本発明の電気化学キャパシタにおいて、前記オキソ酸イオンが炭酸イオンである場合は、当該炭酸イオンが炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )より供給されることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の電気化学キャパシタにおいては、前記オキソ酸イオンの濃度が、5~50mMであることが好ましい。
【0015】
本発明の電気化学キャパシタ用の作用電極の製造方法は、上記の電気化学キャパシタにおける作用電極の製造方法であって、
四酸化三マンガン(Mn3 4 )を含有する作用電極材料を電極として電解液中で電気分解処理することにより、当該四酸化三マンガン(Mn3 4 )の表面に二酸化マンガン(MnO2 )が析出された作用電極を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気化学キャパシタによれば、電解液中に2価のマンガンによる塩が水に対して難溶性であるオキソ酸イオンが含有されているので、多数回の充放電サイクルにわたって使用した場合にも、作用電極から電解液中へのマンガンの溶出が抑制されるため、長期間にわたって大きなキャパシタンス(充放電容量)が安定的に得られ、結局、高い性能および長寿命が得られる。
多数回の充放電サイクルにわたって使用した場合にも作用電極から電解液中へのマンガンの溶出が抑制される理由としては、作用電極が、経時的に溶出されるマンガン(Mn2+)と前記オキソ酸イオンとによる水に難溶性のマンガン塩がその表面に形成されたものとなるためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例および比較例に用いられる電極活物質のSEM写真である。
【図2】電気化学キャパシタの作製例P0に係る電極材料およびマンガン酸化物電極のXRDパターンである。
【図3】電気化学キャパシタの作製例P0に係る電極材料の充放電処理中におけるSEM写真である。
【図4】(I)はリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )に係る電極材料の充放電処理におけるサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフ、(II)はリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )に係る電気化学キャパシタについてのサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフである。
【図5】(I)は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )に係る電極材料の充放電処理におけるサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフ、(II)は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )に係る電気化学キャパシタについてのサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフである。
【図6】(I)は四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )に係る電極材料の充放電処理におけるサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフ、(II)は四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )に係る電気化学キャパシタについてのサイクル毎のキャパシタンスの変化を示すグラフである。
【図7】定電流充放電試験における電気化学キャパシタ〔P1〕についての充放電曲線を示すグラフである。
【図8】(a)は定電流充放電試験における電気化学キャパシタ〔B0〕についての充放電曲線を示すグラフ、(b)は定電流充放電試験における電気化学キャパシタ〔B1〕についての充放電曲線を示すグラフである。
【図9】オキソ酸イオンの濃度に対する溶出Mn量をプロットしたグラフである。
【図10】マンガン酸化物電極を形成する電極活物質の質量に対するキャパシタンスをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。

【0019】
<第1の実施形態>
本発明の電気化学キャパシタは、その表面に二酸化マンガン(MnO2 )が被着(いわゆる電着)された四酸化三マンガン(Mn3 4 )よりなる作用電極(以下、これを「マンガン酸化物電極」ともいう。)と、例えば白金(Pt)線よりなる対電極とが電解液中に浸漬されてなるものである。
そして、本発明においては、前記電解液が、そのマンガン塩が水に対して難溶性であるオキソ酸イオンが含有されたものとされている。

【0020】
〔電解液〕
本発明の電気化学キャパシタを構成する電解液としては、好ましくはオキソ酸イオンとして例えばリン酸イオンまたは炭酸イオンが含有された硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液が用いられる。この電解液の硫酸ナトリウムの濃度は、例えば0.05~2.0Mであることが好ましい。
オキソ酸イオンとしては、リン酸イオンおよび炭酸イオンの一方のみが含有されていてもよく、その両方が含有されていてもよい。
また、この電解液中におけるリン酸イオンは、リン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )から供給されるものとすることができ、炭酸イオンは、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )から供給されるものとすることができる。

【0021】
また、本発明の電気化学キャパシタを構成する電解液としては、オキソ酸イオンとして例えば四ホウ酸イオンが含有された水溶液が用いられる。この電解液の媒体としては、例えば蒸留水、イオン交換水、濃度0.05~2.0Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液あるいはこれらと有機溶媒との混合溶媒などを用いることができる。
この電解液中における四ホウ酸イオンは、四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )から供給されるものとすることができる。

【0022】
この電解液におけるオキソ酸イオンの濃度は、5~50mMであることが好ましい。電解液におけるオキソ酸イオンの濃度が5mM未満である場合は、マンガンの溶出を十分に抑制することができず、その結果、長寿命が得られず、一方、電解液におけるオキソ酸イオンの濃度が50mMを超える場合は、詳細な理由は不明であるが、使用初期には大きなキャパシタンスが得られるものの、充放電サイクルを重ねるに従ってそのキャパシタンスが急激に低減され、その結果長寿命が得られない。

【0023】
〔マンガン酸化物電極の製造方法〕
本発明の電気化学キャパシタにおける作用電極であるマンガン酸化物電極は、具体的には、例えば、電極活物質として四酸化三マンガン(Mn3 4 )を含有する作用電極材料(以下、単に「電極材料」という。)を電極として電解液中で電気分解処理することにより、得ることができる。

【0024】
〔電極材料〕
マンガン酸化物電極を得るための電極材料は、電極活物質である四酸化三マンガン(Mn3 4 )と、導電剤と結着剤とを、例えば80:10:10~70:25:5の質量比で混合した混合物をN-メチルピロリドン(NMP)などの液体中に分散させてなるスラリー状のものを、例えばステンレスメッシュなどの集電体上に塗布して乾燥することにより、得ることができる。
四酸化三マンガン(Mn3 4 )の塗布量は、例えば1.5cm×1.5cmの大きさの集電体上に、1~30mgであることが好ましい。
導電剤としては、ケッチェンブラックなどの導電性粉体を挙げることができる。
また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などを挙げることができる。

【0025】
〔四酸化三マンガン〕
マンガン酸化物電極を得るための電極材料を形成すべき四酸化三マンガン(Mn3 4 )は、例えば、EMD(電解二酸化マンガン)を出発物質として、これを空気雰囲気下において高温で焼成することにより得られる。電極材料を形成する際には、これを例えば遊星型ボールミル装置「P-7」(フリッチュ・ジャパン社製)などを用いて粉砕処理し、微粒子状、例えば粒径10~100nmとしたものを用いることが好ましい。

【0026】
マンガン酸化物電極を得るための電極材料は、以上の方法の他にも、電極活物質を、結着剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と混合した混合物を、集電体上に圧着することにより、得ることもできる。
また、電極活物質を、ナフィオン(登録商標)溶液と混合した後、集電体上にキャスト、乾燥して得られるナフィオン(登録商標)膜で被覆されたものを電極材料として用いることもできる。
さらに、電極活物質をペレット状にしてこれにより電極材料を形成する方法を採用することもできる。

【0027】
〔電気分解処理〕
マンガン酸化物電極を得るための電気分解処理は、具体的には定電流充放電処理(以下、単に「充放電処理」ともいう。)であり、より具体的には、例えば「8CH-C/D-UNIT 10V-10mA HJ-1010mSM8A型」(北斗電工(株)製)を用いて、電流密度1.0A/g、電位範囲-0.1V~+0.9V、測定温度25±2℃の条件下での充放電を、そのキャパシタンスがほぼ一定で最大となるまで、例えば300サイクル行う処理である。
この電気分解処理により、四酸化三マンガン(Mn3 4 )の表面近傍のマンガンが、酸化還元反応によって電解液に溶解し、バーネサイト型二酸化マンガン(MnO2 )として析出し、これが四酸化三マンガン(Mn3 4 )の表面に被着されてマンガン酸化物電極が得られる。この析出される二酸化マンガン(MnO2 )は、電気化学的に活性なものである。

【0028】
電気分解処理により二酸化マンガン(MnO2 )が析出していることは、例えばX線回折装置(XRD)「Multi Flex」(株式会社リガク製)により確認することができる。

【0029】
以上のような電気化学キャパシタによれば、電解液中に2価のマンガンによる塩が水に対して難溶性であるオキソ酸イオンが含有されているので、多数回の充放電サイクルにわたって使用した場合にも、作用電極から電解液中へのマンガンの溶出が抑制されるため、長期間にわたって大きなキャパシタンス(充放電容量)が安定的に得られ、結局、高い性能および長寿命が得られる。
多数回の充放電サイクルにわたって使用した場合にも作用電極から電解液中へのマンガンの溶出が抑制される理由としては、作用電極が、経時的に溶出されるマンガン(Mn2+)と前記オキソ酸イオンとによる水に難溶性のマンガン塩がその表面に形成されたものとなるためであると考えられる。

【0030】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
<比較例1:電気化学キャパシタ〔P0〕>
〔電気化学キャパシタの作製例P0〕
(1)四酸化三マンガン(Mn3 4 )の合成
EMD(電解二酸化マンガン)を空気雰囲気下において1050℃(1℃/min)で72時間焼成することにより、四酸化三マンガン(Mn3 4 )を得た。得られた四酸化三マンガン(Mn3 4 )を、遊星型ボールミル装置「P-7」(フリッチュ・ジャパン社製)を用いて1000rpm、12時間アセトン中で湿式粉砕処理し、80℃で乾燥して、微粒子状の四酸化三マンガン(Mn3 4 )よりなる電極活物質を得た。
粉砕処理前の四酸化三マンガン(Mn3 4 )の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1(i)に示し、粉砕処理後の微粒子状の四酸化三マンガン(Mn3 4 )のSEM写真を図1(ii)に示す。
図1より、粉砕処理によって、粉砕処理前にその粒子サイズが2~5μmであった四酸化三マンガン(Mn3 4 )が、粒子サイズが数十nmに微粒子化されることが確認され、また、電極活物質を構成する微粒子状の四酸化三マンガン(Mn3 4 )が、粒子サイズのバラツキの程度が小さく、ほぼ同程度の粒子サイズを有することが確認された。
【実施例】
【0033】
(2)電極材料の作製
上記の電極活物質(微粒子状の四酸化三マンガン(Mn3 4 )):ケッチェンブラック:ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を8:1:1の質量比で混合した混合物約0.1gをN-メチルピロリドン(NMP)0.3mLに分散させたスラリー状のもの(以下、これを「電極活物質スラリー」という。)を、ステンレスメッシュ(100メッシュ、1.5cm×1.5cm)よりなる集電体に、四酸化三マンガン(Mn3 4 )の質量が約3mgとなるよう塗布することにより、電極材料〔A〕を得た。
【実施例】
【0034】
(3)3極式セルの作製
作用電極として電極材料〔A〕、対電極として白金(Pt)線、参照電極として銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極、電解液として1Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液を用いて、3極式セル〔A〕を作製した。
【実施例】
【0035】
(4)電気分解処理
この3極式セル〔A〕に対して、電気分解処理として定電流充放電処理(以下、単に「充放電処理」という。)を行った。具体的には、「8CH-C/D-UNIT 10V-10mA HJ-1010mSM8A型」(北斗電工(株)製)を用いて、電流密度1.0A/g、電位範囲-0.1V~+0.9V、測定温度25±2℃の条件下で300サイクル行うことにより、電極材料〔A〕の電気分解処理を行ってマンガン酸化物電極〔A〕に変化させ、これにより電気化学キャパシタ〔P0〕を得た。
【実施例】
【0036】
電気分解処理前の電極材料〔A〕と、電気分解処理後に得られたマンガン酸化物電極〔A〕のXRDパターンを図2に示す。図2中、(i)は電極材料〔A〕に係るX線回折パターンを示し、(ii)はマンガン酸化物電極〔A〕に係るX線回折パターンを示す。
図2より、電気分解処理前に四酸化三マンガン(Mn3 4 )に特有のピーク(▽)のみが確認されていたものが、電気分解処理によって、バーネサイト型二酸化マンガン(MnO2 )に特有のピーク(▼)が現れ、その構造に変化することが確認された。これは、マンガンの酸化還元反応によって溶解、析出が生じたためにその構造が変化したものと考えられる。
【実施例】
【0037】
また、電極材料〔A〕の電気分解処理中のSEM写真を図3に示す。(i)は電気分解処理前における結果、(ii)は10サイクル後における結果、(iii )は50サイクル後における結果、(v)はその拡大したもの、(iv)は200サイクル後における結果、(vi)はその拡大したものである。
図3より、電気分解処理前の電極材料〔A〕は、その表面が滑らかであるが、充放電サイクルを重ねるに従ってその表面は徐々に粗くなり、200サイクル後には滑らかな状態は維持されておらず、薄片状の形態を呈するものとなることが確認された。
【実施例】
【0038】
さらに、電気分解処理における充放電サイクル毎のキャパシタンスを図4(I)のグラフに示す。
図4(I)のグラフより、充放電サイクルを重ねるに従ってキャパシタンスが増大することが確認された。これは、図3のSEM写真からも観察されるように、サイクルを重ねるに従って電極材料の表面積が大きくなり、かつ、図2のXRDパターンからも理解されるように、電極活物質を構成する四酸化三マンガン(Mn3 4 )が次第にバーネサイト型二酸化マンガン(MnO2 )へと電気化学的に活性なものに変化していくことによると考えられる。
【実施例】
【0039】
<実施例1~3:電気化学キャパシタ〔P1〕~〔P3〕>
〔電気化学キャパシタの作製例P1~P3〕
電気化学キャパシタの作製例P0と同様にして作製した3つの電気化学キャパシタにおいて、各々の電解液を、1Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液にリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )を、それぞれ濃度が10mM、20mM、30mMとなるよう添加したとしたものに交換することにより、それぞれ電気化学キャパシタ〔P1〕~〔P3〕を作製した。
【実施例】
【0040】
<比較例2:電気化学キャパシタ〔C0〕>
〔電気化学キャパシタの作製例C0〕
電気化学キャパシタの作製例P0と同様にして電気化学キャパシタ〔C0〕を得た。電気分解処理における充放電サイクル毎のキャパシタンスを図5(I)のグラフに示す。
なお、電気化学キャパシタ〔P0〕に係る電気分解処理の300サイクル後におけるキャパシタンスの値と、電気化学キャパシタ〔C0〕に係る電気分解処理の300サイクル後におけるキャパシタンスの値との相違は、実験誤差の範囲内である。
【実施例】
【0041】
<実施例4~5:電気化学キャパシタ〔C1〕,〔C2〕>
〔電気化学キャパシタの作製例C1,C2〕
電気化学キャパシタの作製例C0と同様にして、同じ仕様のものを2つ得、これらの電解液を、1Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )を、それぞれ濃度が10mM、30mMとなるよう添加したとしたものに交換することにより、それぞれ電気化学キャパシタ〔C1〕,〔C2〕を作製した。
【実施例】
【0042】
<比較例3:電気化学キャパシタ〔B0〕>
〔電気化学キャパシタの作製例B0〕
電気化学キャパシタの作製例P0と同様にして電気化学キャパシタ〔B0〕を得た。電気分解処理における充放電サイクル毎のキャパシタンスを図6(I)のグラフに示す。
なお、電気化学キャパシタ〔P0〕,〔C0〕に係る電気分解処理の300サイクル後におけるキャパシタンスの値と、電気化学キャパシタ〔B0〕に係る電気分解処理の300サイクル後におけるキャパシタンスの値との相違は、実験誤差の範囲内である。
【実施例】
【0043】
<実施例6:電気化学キャパシタ〔B1〕>
〔電気化学キャパシタの作製例B1〕
電気化学キャパシタの作製例B0と同様にして、同じ仕様のものを得、この電解液を、イオン交換水に四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )を、濃度が5mMとなるよう添加したとしたものに交換することにより、電気化学キャパシタ〔B1〕を作製した。
【実施例】
【0044】
〔電気化学キャパシタの特性評価〕
(1)電気化学キャパシタの寿命特性:オキソ酸イオンの添加
上記の電気化学キャパシタ〔P0〕~〔P3〕,〔C0〕~〔C2〕,〔B0〕,〔B1〕の寿命特性を、定電流充放電試験によって評価した。具体的には、「8CH-C/D-UNIT 10V-10mA HJ-1010mSM8A型」(北斗電工(株)製)を用いて、電流密度1.0A/g、電位範囲-0.1V~+0.9V、測定温度25±2℃の条件下で1000サイクル以上(電気化学キャパシタ〔P2〕については800サイクル)行い、各サイクルにおけるキャパシタンスを測定した。リン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )に係る電気化学キャパシタについての結果を図4(II)のグラフに示すと共に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )に係る電気化学キャパシタについての結果を図5(II)のグラフに示す。また、四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )に係る電気化学キャパシタについての結果を図6(II)のグラフに示す。
図4中、(P0)~(P3)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔P0〕~〔P3〕による結果を示し、図5中、(C0)~(C2)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔C0〕~〔C2〕による結果を示し、図6中、(B0),(B1)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔B0〕,〔B1〕による結果を示す。
また、図7は、この定電流充放電試験における電気化学キャパシタ〔P1〕についての充放電曲線を示すグラフ、図8(a),(b)は、それぞれ、この定電流充放電試験における電気化学キャパシタ〔B0〕,〔B1〕についての充放電曲線を示すグラフである。
【実施例】
【0045】
以上より、電解液がリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )および四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )を含有する電気化学キャパシタ〔P1〕~〔P3〕,〔C1〕,〔C2〕,〔B1〕においては、電解液がリン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )または四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )を含有しない電気化学キャパシタ〔P0〕,〔C0〕または〔B0〕に比して、キャパシタンスが大きく、かつ、充放電サイクルを重ねてもそのキャパシタンスの減少の程度が小さく寿命が長いことが確認された。
【実施例】
【0046】
(2)電気化学キャパシタの寿命特性:マンガンの溶出量
また、リン酸水素ナトリウム(Na2 HPO4 )に係る電気化学キャパシタ〔P0〕~〔P3〕,炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )に係る電気化学キャパシタ〔C0〕~〔C3〕および四ホウ酸ナトリウム(Na2 4 7 )に係る電気化学キャパシタ〔B0〕,〔B1〕について、上記の定電流充放電試験後における電解液中に沈殿物として溶出されたマンガンの質量(溶出Mn量)を測定して、マンガン酸化物電極を構成する電極活物質の質量に対する溶出Mn量の割合〔(溶出Mn量(mg)/電極活物質の質量(mg))×100〕を算出し、オキソ酸イオンの濃度に対する溶出Mn量の割合を評価した。結果を図9のグラフに示す。なお、溶出Mn量の割合を求める式における「電極活物質の質量」とは、3極式セルの組み立ての時の使用四酸化三マンガン(Mn3 4 )の質量(mg)である。
ただし、電気化学キャパシタ〔C3〕は、以下の実施例7のように作製したものである。
また、溶出Mn量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)「P-4010」(日立製作所社製)を用いて測定した。
図9中、(P0)~(P3)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔P0〕~〔P3〕による結果を示し、図9中、(C0)~(C3)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔C0〕~〔C3〕による結果を示し、(B0),(B1)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔B0〕,〔B1〕による結果を示す。
【実施例】
【0047】
<実施例7:電気化学キャパシタ〔C3〕>
〔電気化学キャパシタの作製例C3〕
電気化学キャパシタの作製例C0と同様にして、同じ仕様のものを得、これの電解液を、1Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )を、濃度が20mMとなるよう添加したとしたものに交換することにより、電気化学キャパシタ〔C3〕を作製した。
【実施例】
【0048】
図9のグラフより明らかなように、オキソ酸イオンを含有することによって、またその濃度が高くなるに従って溶出マンガンの量が極めて少量となることが判明した。これにより、本発明の電気化学キャパシタによれば、マンガンの溶出を抑制させる効果を有することが明確に確認された。
【実施例】
【0049】
(3)電極活物質の質量によるキャパシタンス特性
マンガン酸化物電極を形成する電極活物質の質量と、キャパシタンスとの関係を評価した。具体的には、以下のように作製した電気化学キャパシタ〔X0-1〕~〔X0-4〕を用いて1000サイクルの定電流充放電試験を行い、各サイクルのキャパシタンスを測定し、電極活物質の質量に対するキャパシタンスの最大値(最大キャパシタンス)を評価した。結果を図10に示す。
図10中、プロット(X0-1)~(X0-4)は、それぞれ電気化学キャパシタ〔X0-1〕~〔X0-4〕による結果を示す。
【実施例】
【0050】
<実験例1~4:電気化学キャパシタ〔X0-1〕~〔X0-4〕>
〔電気化学キャパシタの作製例X0-1~X0-4〕
電気化学キャパシタの作製例P0において、
電極材料の作製工程において、電極活物質スラリーを、それぞれ四酸化三マンガン(Mn3 4 )の質量が2.5mg、4.6mg、9.0mg、20.7mgとなるよう塗布回数を調整して作製したこと、および、
3極式セルの作製工程において、電解液として0.1Mの硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )水溶液を用いたこと
の他は同様にして、電気化学キャパシタ〔X0-1〕~〔X0-4〕を得た。
【実施例】
【0051】
図10のグラフより明らかなように、電極活物質の質量が増加するに従って最大キャパシタンスが減少していった。電極活物質による層が厚いと、層内部の四酸化三マンガン(Mn3 4 )が電気化学的に活性なバーネサイト型二酸化マンガン(MnO2 )へと相変化し難く、その結果、質量当たりの最大キャパシタンスが減少すると推察される。
図面
【図4】
0
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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