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明細書 :スメクティックエアロゲル及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5213121号 (P5213121)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
発明の名称または考案の名称 スメクティックエアロゲル及びその作製方法
国際特許分類 C08J   9/00        (2006.01)
C08F   2/44        (2006.01)
FI C08J 9/00 CEYZ
C08F 2/44 B
請求項の数または発明の数 19
全頁数 11
出願番号 特願2008-549230 (P2008-549230)
出願日 平成19年11月16日(2007.11.16)
国際出願番号 PCT/JP2007/072266
国際公開番号 WO2008/072445
国際公開日 平成20年6月19日(2008.6.19)
優先権出願番号 2006336120
優先日 平成18年12月13日(2006.12.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年6月2日(2009.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】ベルツ カミラ オリビア
【氏名】前田 洋治
【氏名】多辺 由佳
【氏名】横山 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】久保田 英樹
参考文献・文献 特開2006-096987(JP,A)
特開2001-081274(JP,A)
特開平05-117324(JP,A)
調査した分野 C08J 9/00- 9/42
C08F 2/00- 2/60
C08F 20/00- 34/04
C08L 1/00-101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるスメクティック液晶材料とスメクティックエアロゲル構造を形成した後に永久に固定することができるUV硬化材料とからなるホスト材料を有することを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項2】
請求項1記載のスメクティックエアロゲルにおいて、スメクティック相で、エアロゲル構造を形成した後にUV照射で永久に固定することができるスメクティックUV硬化材料からなるホスト材料を有することを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項3】
請求項1記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記UV硬化材料はアクリレートまたはメチル・アクリレート・グループを持つモノマーであることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項4】
請求項1又は2記載のスメクティックエアロゲルにおいて、所望のサイズをもつ球形の気体含有物を前記ホスト材料に注入して気体セルが形成されていることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項5】
請求項4記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体含有物の気体が空気、希ガス、その他の気体又は混合気体であることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項6】
請求項4記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体セルの境界の壁の厚さが24μmの厚さであることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項7】
請求項4記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体含有物は規則的に配置されており、前記気体セルは六角形または五角形をしていることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項8】
請求項1記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料はUV照射によって永久に固定されることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項9】
請求項1又は2記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料は所望の任意の形を持つことができることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項10】
請求項1又は2記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料はバルクの形に作られ、該バルクから所望の形状に切り出すことができることを特徴とするスメクティックエアロゲル。
【請求項11】
(a)温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるホスト材料としてスメクティック液晶を用意する工程と、
(b)該スメクティック液晶に紫外線(UV) 硬化物質を混ぜる工程と、
(c)UV照射によりその材料を硬化させて構造を永久に固定することを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項12】
(a)温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるホスト材料としてUV硬化型のスメクティック材料を用意する工程と、
(b)UV照射によりその材料を硬化させて構造を永久に固定することを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項13】
請求項11又は12記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、所望のサイズをもつ球形の気体含有物を前記ホスト材料に注入することを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項14】
請求項11又は12記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料と気体含有物からなる懸濁液を気体注入時の圧力よりも低い静水圧下に置くことにより、前記気体含有物の直径を増加させて前記気体セル間の壁の厚さを減少させ、所望の気体セルのサイズと境界の壁の厚さを得ることを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項15】
請求項14記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記境界の壁の厚さを24μmの厚さに形成することを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項16】
請求項13記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記気体含有物は規則的に配置され、前記気体セルは六角形または五角形に形成されることを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項17】
請求項11又は12記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料をUV照射によって永久に固定することを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項18】
請求項11又は12記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料を所望の任意の形に形成することができることを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
【請求項19】
請求項11又は12記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料はバルクの形に作られ、該バルクから所望の形状に切り出すことができることを特徴とするスメクティックエアロゲルの作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スメクティックエアロゲル及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは体積で50%以上の空隙率を持つ、開放セルを持つメゾ多孔質の固体材料である。典型的には、エアロゲルは90-99.8%が空気からなり、密度は1.1から約150mg/cm3 である。ナノスケールで見ると、エアロゲル構造はスポンジに似ており、相互に接続したナノ粒子の網目構造からなる。
エアロゲルはシリカ(SiO2 )、アルミナ( Al2 3 )、遷移金属及びランタナイド金属の酸化物、(CdSおよびCdSeのような)金属カルコゲン化物、有機及び無機高分子及びカーボンを含む色々な材料から作ることができる。
【0003】
一般的に、エアロゲルは耐荷重能力が高く、自重の2000倍以上の重さを支えることができる。また、エアロゲルは熱伝達の3要素(対流、伝導、及び放射) を殆ど零化するので、優れた断熱材となる。更に、エアロゲルは、空気が格子間を循環できないので良い対流防止剤となる。吸湿性があるためにエアロゲルは乾燥剤としても働く。
なお、液晶に関する技術として、下記の非特許文献1,2を挙げることができる。

【非特許文献1】S.Urban,J.Przedmojski,and J.Czub,液晶(Liquid Crystals), 32号、5巻、619-624(2005年)
【非特許文献2】液晶便覧 編者液晶便覧委員会、発行所丸善、平成12年10月30日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のエアロゲルは作製が容易であり、空気セルは規則正しい配列を示し、境界の壁の幅は数スメクティック層(ナノメートル) 程度に小さくすることができる。また、気体は単一の気体セルごとに分離されている。
一方、現行のエアロゲルでは、ホスト材料はフラクタル様の構造を形成し、気体がこの網目間に捕捉されている。また、現行のエアロゲルは非常に脆弱である。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、スメクティック液晶とUV硬化材料の混合物からなるホスト材料又はスメクティックUV硬化材料からなるホスト材料を用い、そのホスト材料を選択し、脆弱ではない高品質のスメクティックエアロゲル及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕スメクティックエアロゲルにおいて、温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるスメクティック液晶材料とスメクティックエアロゲル構造を形成した後に永久に固定することができるUV硬化材料とからなるホスト材料を有することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、スメクティック相で、エアロゲル構造を形成した後にUV照射で永久に固定することができるスメクティックUV硬化材料からなるホスト材料を有することを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記UV硬化材料はアクリレートまたはメチル・アクリレート・グループを持つモノマーであることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、所望のサイズをもつ球形の気体含有物を前記ホスト材料に注入して気体セルが形成されていることを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体含有物の気体が空気、希ガス、その他の気体又は混合気体であることを特徴とする。
【0009】
〔6〕上記〔4〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体セルの境界の壁の厚さが24μmの厚さであることを特徴とする。
〔7〕上記〔4〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記気体含有物は規則的に配置されており、前記気体セルは六角形または五角形をしていることを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料はUV照射によって永久に固定されることを特徴とする。
【0010】
〔9〕上記〔1〕又は〔2〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料は所望の任意の形を持つことができることを特徴とする。
〔10〕上記〔1〕又は〔2〕記載のスメクティックエアロゲルにおいて、前記ホスト材料はバルクの形に作られ、このバルクから所望の形状に切り出すことができることを特徴とする。
【0011】
〔11〕スメクティックエアロゲルの作製方法において、温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃に範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるホスト材料としてスメクティック液晶を用意する工程と、このスメクティック液晶に紫外線(UV) 硬化物質を混ぜる工程と、UV照射によりその材料を硬化させて構造を永久に固定することを特徴とする。
【0012】
〔12〕スメクティックエアロゲルの作製方法において、温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチール-4′-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニル-4′-シアノビフェニル(9CB)から選ばれるホスト材料としてUV硬化型のスメクティック材料を用意する工程と、UV照射によりその材料を硬化させて構造を永久に固定することを特徴とする。
【0013】
〔13〕上記〔11〕又は〔12〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、所望のサイズをもつ球形の気体含有物を前記ホスト材料に注入することを特徴とする。
〔14〕上記〔11〕又は〔12〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料と気体含有物からなる懸濁液を気体注入時の圧力よりも低い静水圧下に置くことにより、前記気体含有物の直径を増加させて前記気体セル間の壁の厚さを減少させ、所望の気体セルのサイズと境界の壁の厚さを得ることを特徴とする。
【0014】
〔15〕上記〔14〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記境界の壁の厚さを24μmの厚さに形成することを特徴とする。
〔16〕上記〔15〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記気体含有物は規則的に配置され、前記気体セルは六角形または五角形に形成されることを特徴とする。
【0015】
〔17〕上記〔11〕又は〔12〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料をUV照射によって永久に固定することを特徴とする。
〔18〕上記〔11〕又は〔12〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料を所望の任意の形に形成することができることを特徴とする。
〔19〕上記〔11〕又は〔12〕記載のスメクティックエアロゲルの作製方法において、前記ホスト材料はバルクの形に作られ、該バルクから所望の形状に切り出すことができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、図1に示すように、4-ノニル-4’-シアノビフェニル(9CB)と空気泡(空気セル)からなるスメクティックエアロゲルを得ることができる。五角形と六角形の空気セルがスメクティック液晶のスメクティック層で隔てられている。スメクティック層の境界の壁の幅は約24μmであり、これは約数千のスメクティック層に対応している。もちろん、スメクティック層の境界の壁の厚さは変えることができ、特に厚さを低減でき、数スメクティック層からなる程度に薄くすることができる。
【0017】
密度、屈折率などのエアロゲルの物理的特性は気泡のサイズを変えたり、気体を調節すること、すなわち、希ガスや別の異なる気体や混合気体を用いることで容易に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によると、4-ノニル-4’-シアノビフェニル(9CB)と空気泡(空気セル)からなるスメクティックエアロゲルを得ることができ、六角形または五角形の空気セルがスメクティック液晶のスメクティック層で隔てられている。スメクティック層の境界の壁の幅は約24μmであり、これは約数千のスメクティック層に対応している。もちろん、スメクティック層の境界の壁の厚さは変えることができ、特に厚さを低減でき、数スメクティック層からなる程度に薄くすることができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明のスメクティックエアロゲル試料の上面図である。
この図に示すように、スメクティック層の境界の壁で隔てられた五角形及び六角形の空気セル1から成る4-ノニル-4’-シアノビフェニル(9CB)スメクティックエアロゲル試料が示されている。このエアロゲル試料のスメクティック層の境界の壁2の幅は24μmであり、約数千のスメクティック層に対応している。像の幅は1.75mmである。
【0020】
ここでは、ホスト材料としてはスメクティック液晶を用いる。その構造を永久に固定するために、スメクティック液晶に紫外線(UV) 硬化物質を混ぜて、その構造をUV照射のもとで硬化させる。
他のスメクティックエアロゲルの作製方法としては、UV硬化型のスメクティック材料をホスト材料として用いる。
【0021】
スメクティック材料においては2つの空気セル1を分離するスメクティック層の境界の壁2の厚さを僅か数スメクティック層となるまで小さくすることが可能なので、スメクティックホスト材料を用いることが必要である。それぞれのスメクティック層の厚さが約4nmであると、空気セル1間のスメクティック層の境界の壁2は数ナノメータの薄さにすることができる。
【0022】
なお、ネマティック液晶を用いるとエアロゲルの製造はより困難になる。なぜならば、スメクティック液晶に代わってネマティック液晶を用いると、組織が層状ではないので、気泡を分離するスメクティック層の境界の壁2の厚さを数分子のオーダーで安定化させることは困難であるからである。それゆえに、スメクティック液晶を用いることが好適である。
【0023】
図2は本発明のエアロゲルの密度が空気の体積比率の関数として変わる様子を示す図であり、図3は本発明のエアロゲルの屈折率が空気の体積比率の関数として変わる様子を示す図である。
密度、屈折率などの物理的性質は、気泡のサイズと体積比を変えることによって容易に変えることができる。また、空気を用いる代わりに、希ガス、その他の気体、または混合気体を用いることもできる。よって、エアロゲルの特性を変えることができ、ユーザの決める仕様に合うように設計することもできる。
【0024】
図2に示すように、空気の体積比率に依存して、エアロゲルの密度は、空気の体積比率が0%の時の約1000kg/m3 から空気の体積比率が100%の時の1.29kg/m3 の間で可変であり、典型的な値は、1.3kg/m3 から400kg/m3 の間である。
同様に、空気の体積比率に依存したエアロゲルの屈折率は、図3に示すように、空気の体積比率が0%の時の約1.5から空気の体積比率が100%の時の1.0の間で可変であり、典型的な値は1.2以下である。
【0025】
空気の体積比率を変える代わりに、空気セルのサイズ及びスメクティック層の境界の壁の厚さを変えることもでき、それによって材料の物理的性質を広い範囲にわたって変えることができる。
1層の空気セルのみを含んだ薄いシート状にも、あるいはエアロゲルの3次元立体状にも、どちらの形にも材料を製造することができる。製造に用いられホスト材料を支持する金型は希望するいかなる形にもすることができるので、立体的に色々な形を持たせることができる。それに代わって、3次元的なエアロゲルブロックから任意の望みの形を切り出すこともできる。
【0026】
図4は本発明の3次元エアロゲル試料の模式図、図5は本発明の空気セル間のスメクティック層の境界の壁を更に詳しく示すものである。
この模式図では2つのスメクティック層のみが描かれているが、原理的にはスメクティック層の数は2から数千、またはそれ以上に亘るようにすることさえできる。これらの図ではまた、スメクティックA物質の層が描かれているが、他のスメクティック層、例えばスメクティックCを用いてもよい。
【0027】
過去の技術による材料と比べて本発明の材料の優位性は、この材料が製造容易であること、空気セルが規則的配列を示すこと、及び境界の壁の幅を数スメクティック層(ナノメータ) 程度に小さくできることである。また、気体が単一セルごとに分離されていることであり、これに対して、現在のエアロゲルでは、ホスト材料はフラクタル様の構造をしていて、気体がこのネットワークの中に捕捉されている。また、現在のエアロゲルが大変脆弱であるのに対して、本発明のエアロゲルは脆弱ではない。むしろ、本発明のエアロゲルは、図1等に示すように、「蜂の巣様の構造」を有しており、強固である。
〔応用/実施例〕
本発明のスメクティックエアロゲルは、現行の応用分野において、他の種類のエアロゲル、例えばシリカエアロゲルと置き換えることができる。それゆえに応用の可能性のある分野としては次のようなものが含まれるが、これに限定されるものではない。
(1) 透明な断熱材のような特別用途の断熱材
(2) 遮音材
(3) 振動減衰材
(4) 乾燥剤
(5) 化学吸着剤
(6) 触媒または触媒担体
(7) エアロゲル毛布(エアロゲル毛布はシリカエアロゲルと、脆弱なエアロゲルを耐久性と柔軟性のある材料に変えるための繊維状補強材との複合体)
なお、本発明のエアロゲルは、従来のエアロゲルほどには脆弱ではないので、柔軟材料としての応用は現状のエアロゲルに比べて広範であり有利となる。
(8) NASAは「スターダスト」宇宙船において宇宙空間の塵粒子を捕捉するためにエアロゲルを用いた。粒子は固体と衝突して蒸発し、気体の中を通ってエアロゲルに捕捉される。
(9) エアロゲルはチェレンコフ放射の検出器として素粒子物理学においても用いられる。エアロゲルが適しているのは屈折率が小さいこと、気体と液体の間の間隙を埋めて透明であること、及び固体であるので冷却液体や圧縮気体よりも使いやすいことにより決まるものである。質量が小さいということは宇宙の任務に有利でもある。
【0028】
ドーパントを添加したり、補強構造や複合物とすることによって、エアロゲルの特性は特定用途に対して更に増強されるであろう。このようなアプローチによって、本発明のエアロゲル材料群の応用の幅は更に増大し得る。
〔工程/製造〕
本発明のエアロゲルは2つの方法から作られる。すなわち2つの異なるホスト材料から作られる。
【0029】
第1の場合においては、ホスト材料は次の2つの化合物からなる。
(a)例えば、温度が21.5℃から33.5℃の範囲にある4-オクチル-4’-シアノビフェニル(8CB)または温度が42℃から48℃に範囲にある4-ノニル-4’-シアノビフェニル(9CB)のスメクティック液晶、あるいは別のスメクティックA材料またはスメクティックC材料を用いることができる。
【0030】
(b)スメクティックエアロゲルの構造を固定するための固化できる材料、例えば、アクリレートまたはメチル・アクリレートグループを持つモノマー、例えば大日本インキ化学工業株式会社製のUCL-001-K1,UCL-011-K1のようなUV硬化材料、またはスメクティックメソゲンと混合できる別のUV硬化材料。なお、2つの物質の割合は1:1でも、または異なっていても良い。
【0031】
第2の場合においては、ホスト材料は大日本インキ化学工業株式会社製のUCL-019-K2のようなスメクティックUV硬化材料、またはその他のスメクティックAまたはスメクティックCのUV硬化材料からなる。
ほぼ一様なサイズの気泡がホスト材料に注入されて、密な気泡の格子を形成する。ネマティック相の粘性は通常スメクティック相の粘性よりも低いので、気泡の注入はネマティック相にて行う。もちろん一般的には、空気の注入はスメクティック相においても行うことができる。注入時の気泡は、マイクロメータまたはミリメータサイズの気泡が好適ではあるが、一般には色々なサイズであってよい。気泡の注入は1つ以上の毛細管を用いて行われる。一般には、気体注入のために希望するだけ多くの数の毛細管を同時に用いることができる。液晶ホスト材料と気泡の懸濁液を含むセルは側面が気圧調整のために開いていて上面は閉まっていなければならない。さもないと気泡は浮力があるので上昇し、低圧が加えられると懸濁液の表面で壊れてしまうからである。このように材料を容れるために通常はサンドイッチ型のセルが用いられる。
【0032】
ネマティックホスト材料が気泡注入に用いられた場合は、材料は冷却されてネマティックからスメクティック相へと変わり、サンドイッチセルはそこで圧力容器に入れられる。試料には低い静水圧が印加される。低い静水圧に誘導されて気泡のサイズは増大し、それによって気泡と気泡の間の材料の量は低減する。別の手法としては、スメクティック相への冷却と気泡の膨張を同時にすることができる。顕微鏡法を用いて境界の壁の厚さを測定することで層の厚さは実時間でモニタすることができる。
【0033】
隣接する気体セル間の境界の壁の厚さが希望の値に達して材料がスメクティック泡の粘稠度(consistency)をもつようになったときに、この材料に紫外(UV) 光を照射する。近UV光(380-200nm)または遠UV光(200-10nm) または極外UV光(1-31nm)のいずれかを用いることができる。これによってスメクティックエアロゲル構造は永久に固定される。UV照射はエアロゲルの固化が完了するまで行われる。UV硬化の時間はUV照射源の数を増やすことやUV照射源の出力エネルギーを増大させることで短縮できる。UV照射は試料の片側から行ってもよいし、または試料の2つ以上の側面から同時に行っても良い。作製工程の全体は図6に模式的に示されている。
【0034】
まず、図6(a)に示すように、ネマティック・ホスト11を用意する。次に、図6(b)に示すように、そのネマティック・ホスト11に空気の泡(air bubbles)12を注入する。次に、図6(c)に示すように、スメクティック相へ冷却し、その後に膨張工程を施す。または、冷却工程と膨張工程とを同時に施す。すると、図6(d)に示すように、スメクティック泡(smectic foam)13が形成される。最後に、図6(e)に示すように、UV硬化して、スメクティックエアロゲルを作製する。
〔作製実験〕
ホスト材料としてスメクティックA相をもつ、温度が42℃から48℃の範囲にある4-ノニルー4’-シアノビフェニル(9CB)のスメクティック液晶とネマティックUV硬化性材料UCL-011-K1を用いて作製実験を行った。両材料は約1:1の比で混合される。UV硬化性材料は照射前はネマティック液晶相を持つモノマーである。UV光で照射後は高分子になる。
【0035】
ほぼ一様なサイズで、ミクロンサイズの空気(泡)がミクロンサイズのガラス毛細管を通してホスト材料に注入され、気泡の高密度格子を形成する。材料はスペーサで分離した2つのガラス板で挟まれている。図7に示すように、スメクティック液晶を含むサンドイッチセル21は、空気(泡)22を毛細管23で注入する過程では回転している。サンドイッチセル21はその後、アスピレータに接続している圧力容器(図示なし)に入れられる。0.02から0.08MPaの低い静水圧が試料に加えられる。低静水圧に誘導されて空気(泡)22のサイズが増大し、それに伴って空気(泡)22間の材料の量が低減し、気体セルは僅か数スメクティック層厚の境界の壁で分離された状態になる。材料がスメクティック泡の粘稠度を持つと、材料はUV光で照射され、それによってスメクティックエアロゲル構造が固定される。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明によれば、スメクティック液晶とUV硬化材料の混合物からなるホスト材料又はスメクティックUV硬化材料からなるホスト材料を用い、そのホスト材料を選択し、脆弱ではない高品質のスメクティックエアロゲル及びその作製方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のスメクティックエアロゲル及びその作製方法は、ホスト材料を選択し、脆弱ではない高品質のスメクティックエアロゲルとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のスメクティックエアロゲル試料の上面図である。
【図2】本発明のエアロゲルの密度が空気の体積比率の関数として変わる様子を示す図である。
【図3】本発明のエアロゲルの屈折率が空気の体積比率の関数として変わる様子を示す図である。
【図4】本発明の3次元エアロゲル試料の模式図である。
【図5】本発明の空気セル間のスメクティック層の境界の壁の詳細図である。
【図6】本発明のスメクティックエアロゲルの作製工程の全体模式図である。
【図7】本発明のスメクティックエアロゲルの作製工程の一部の模式図である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図1】
6