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明細書 :光音響セルおよびそれを用いた装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5288306号 (P5288306)
公開番号 特開2009-204424 (P2009-204424A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成21年9月10日(2009.9.10)
発明の名称または考案の名称 光音響セルおよびそれを用いた装置
国際特許分類 G01N  29/00        (2006.01)
G01N  21/00        (2006.01)
FI G01N 29/00 501
G01N 21/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2008-046494 (P2008-046494)
出願日 平成20年2月27日(2008.2.27)
審査請求日 平成23年2月21日(2011.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】矢木 正和
【氏名】森宗 太一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100102314、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【識別番号】100123984、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 晃伸
審査官 【審査官】波多江 進
参考文献・文献 特開平01-191040(JP,A)
特開平08-271336(JP,A)
実開平04-015053(JP,U)
調査した分野 G01N 29/00 - 29/52
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
音波検出器と連通する孔を備える板状の光透過性部材と、前記光透過性部材と衝合する板状のシール部材と、を備えた光音響セルであって、
前記光透過性部材は、前記シール部材を挟持する上板と下板とからなり、
前記シール部材には試料室を形成し、前記光透過性部材あるいは前記シール部材のいずれかには前記試料室と前記音波検出器を連通するための導波通路を形成したことを特徴とする光音響セル。
【請求項2】
前記シール部材は複数組からなり、それぞれのシール部材に異なる形状の試料室および/または導波通路を形成したことを特徴とする請求項に記載の光音響セル。
【請求項3】
前記シール部材が、ゴム部材により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光音響セル。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光音響セルと、光源と、音波検出器と、音波検出器からの信号の特定成分のみを抽出する同期信号検出器と、を備える光音響分光装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の光音響セルと、光源と、光音響信号測定機構と、発光測定機構と、透過光測定機構とを備える測定装置であって、
前記光音響信号測定機構は、音波検出器および音波検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第1の同期信号検出器を備え、
前記発光測定機構は、試料からの発光を集光する集光系、集光系からの光を電気信号として出力する光検出器、および光検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第2の同期信号検出器を備え、
前記透過光測定機構は、試料からの透過光を集光する集光系、集光系からの光を電気信号として出力する光検出器、および光検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第3の同期信号検出器を備えることを特徴とする測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料室から得られる光音響信号をS/N比よく計測することができる光音響セルおよびそれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響分光法(Photoacoustic Spectroscopy)とは、試料に励起光を照射すると、試料が励起光を吸収し、吸収された光が無幅射過程によって熱に換わり、その熱が圧力波(音波)を発生させるという現象を利用する分析方法である。より具体的には、所定波長の光をパルス状に照射し、これを試料に照射し、試料が発生する音をマイクロフォン等の音響検出手段で検出して光音響信号(以下、「PA信号」という。)を取得し、PA信号を解析することにより試料表層の分析を行う方法である。
【0003】
この光音響分光法は、試料の透明、不透明、散乱性の大小にかかわらず行うことができるので、従来の吸光度分析では分析できない試料も測定対象とすることができるという利点を有している。また、光音響分光法においては、励起光の周波数を変えることにより、試料表面からの測定深さを変えることができる。
【0004】
光音響セルから得られる光音響信号を高強度化することを目的とした光音響分光装置としては、例えば、物体に断続光が照射された際に生じる物体及びその周囲の圧力変動を音として検出するマイクロフォンを用いた光音響セルであって、試料室またはマイクロフォン室の壁面の一部または全部を可動にし、試料室またはマイクロフォン室の容積を可変とする装置がある(特許文献1参照)。
【0005】
また、試料に照射した光を試料中の計測物質が吸収し該試料から発生する光音響を音響検出手段で検出し、検出したPA信号に基づいて該計測物質の分光測定を行う光音響分光測定装置であって、該光音響が発生する試料表面の気体を気密に封入する試料室が、遮光性材料よりなる外壁部と、該外壁部の内側に沿って設けられた低熱伝導率を有する光透過性材料からなる内壁部とを備えた装置がある(特許文献2参照)。
【0006】

【特許文献1】実公平7-42129号公報
【特許文献2】特開平8-271336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に光音響セルにおいては、得られるPA信号の強度が光音響セルの容積中に占める気体層の厚さに左右されるため、少しでも大きなPA信号を検出するためには気体層の厚さを小さく(光音響セルの容積中に占める試料の体積を大きく)する必要がある。しかし、従来の光音響セルにおいては、試料室の容積は不変であるため、光音響セルの容積中に占める試料の体積の比率は一義的に決定されてしまい、一つの光音響セルでは様々な試料に対応できないという課題があった。また、従来の光音響セルにおいては、試料室の容積よりも体積が小さい試料を載置した際に、試料の表面で生じた反射光や散乱光が試料室の内壁に到達してノイズを生じさせ、PA信号のS/N比が低下するという課題があった(図1参照)。そこで、上記特許文献1に記載の光音響セルでは、可動試料ホルダーを上下方向に移動し、試料室の容積を変化させて試料室内の気体層の厚さを小さくすることで、PA信号の高強度化を図り、S/N比を向上させている。
しかしながら、上記特許文献1の構成では、可動試料ホルダーの移動方向が上下方向のみであるため、試料室内に存する水平方向の空間(間隙)を変化させることができなかった。そのため、試料の形状や体積によっては、水平方向の間隙が気体層の厚さを大きくさせ、またその間隙がノイズを生じさせ、PA信号のS/N比が改善されないという問題や、試料が試料室内に納まらないという問題があった。
また、上記特許文献1の構成では、可動部を設けると試料室内の密閉性が損なわれるため、密閉性を確保するための新たな構造を設ける必要があった。
【0008】
上記特許文献2には、試料室の容積を変化させずにPA信号のS/N比を向上させる手法が開示される。すなわち、試料表面での反射光に起因するノイズを除去すべく、試料室の内壁を光透過性の断熱部材で覆うことにより、試料室の外壁に生じた熱によるノイズを低減させている。
しかしながら、試料室の容積を変化させることはできないので、試料室内の気体層の厚さを小さくすることができず、試料の形状や体積によっては、PA信号のS/N比が改善されないという問題や、試料が試料室内に納まらないという問題があった。また、内壁による光透過率が悪い波長領域の光を照射した場合には、内壁に生じた熱によるノイズが生じるという課題もあった。また、光音響セルの内壁部と外壁部を入れ子状にするという複雑な構造であることから、製造は容易ではないという課題もあった。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、PA信号をS/N比よく計測することができ、且つ、コスト性に優れた光音響分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、音波検出器と連通する孔を備える板状の光透過性部材と、前記光透過性部材と衝合する板状のシール部材と、を備えた光音響セルであって、前記光透過性部材は、前記シール部材を挟持する上板と下板とからなり、前記シール部材には試料室を形成し、前記光透過性部材あるいは前記シール部材のいずれかには前記試料室と前記音波検出器を連通するための導波通路を形成したことを特徴とする光音響セルである。
の発明は、第の発明において、前記シール部材は複数組からなり、それぞれのシール部材に異なる形状の試料室および/または導波通路を形成したことを特徴とする。
の発明は、第1または2の発明において、前記シール部材が、ゴム部材により構成されることを特徴とする。
の発明は、第1ないしのいずれかの発明に係る光音響セルと、光源と、音波検出器と、音波検出器からの信号の特定成分のみを抽出する同期信号検出器と、を備える光音響分光装置である。
の発明は、第1ないしのいずれかの発明に係る光音響セルと、光源と、光音響信号測定機構と、発光測定機構と、透過光測定機構とを備える測定装置であって、前記光音響信号測定機構は、音波検出器および音波検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第1の同期信号検出器を備え、前記発光測定機構は、試料からの発光を集光する集光系、集光系からの光を電気信号として出力する光検出器、および光検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第2の同期信号検出器を備え、前記透過光測定機構は、試料からの透過光を集光する集光系、集光系からの光を電気信号として出力する光検出器、および光検出器からの信号の特定成分のみを抽出する第3の同期信号検出器を備えることを特徴とする測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な形状や体積の試料に応じて試料室の容積を可変とすることができるため、PA信号の高強度化が可能となる。また、試料表面で生じる反射光や散乱光は透過部材から外部に排出されるため、反射光や散乱光に起因するノイズを最小限に抑えることができる。その結果、PA信号のS/N比を向上させることができる。
さらに、試料室を板状のシール部材に形成するため、特別な構造を設けることなく試料室の密閉性を実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最良の形態の本発明は、波検出器と連通する孔を備える板状の光透過性部材と、前記光透過性部材と衝合する板状のシール部材と、を備えた光音響セルであって、前記シール部材には試料室を形成し、前記光透過性部材あるいは前記シール部材のいずれかには前記試料室と前記音波検出器を連通するための導波通路を形成したことを特徴とする光音響セルであって、前記シール部材に試料室を形成したことを特徴とする光音響セルである。
ここで、上記の光透過性部材は、石英ガラスやアクリル等の光透過性材料で構成する。照射光の波長に応じて、最適なものを選択すればよく、例えば、赤外吸収を測定する場合には、赤外光を透過する部材を用いればよく、必ずしも可視光を透過する部材を用いなくともよい
【0013】
また、好ましくは、前記光透過性部材に前記導波通路を形成する。かかる構成においては、シール部材に導波通路を形成する加工の手間が省けるという効果がある。
【0014】
より好ましくは、上記のシール部材は複数組からなり、それぞれのシール部材に異なる形状の試料室および/または導波通路を形成する。形状や容積の異なる試料室および/または導波通路を有するシール部材を複数組備えることにより、様々な形状や体積の試料に対応することが可能となるからである。
なお、本発明では、試料室および導波通路の容積や形状を可変とする構造を有することから、共鳴周波数の解析にも好適である。
【0015】
シール部材は、天然または合成のゴム部材(例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の有機材料)により構成される。ゴム部材は一定以上の硬度(例えば、ショアA硬度40~80程度)を有するものであれば、特定の材料に限定されない。
光源は、キセノンランプ、ハロゲンランプ、重水素ランプ、可視LED、赤外LED、可視レーザー、赤外レーザー等の公知の光源を用いることができる。
【0016】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例2は参考例である。
【実施例1】
【0017】
[光音響分光測定装置1]
図2は、本実施例の光音響分光測定装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施例の光音響分光測定装置1は、単色断続光を照射する光学系と、光音響セル4と、光音響セル4からの圧力変動信号を検出するマイクロフォン9と、マイクロフォン9からの音波信号をPA信号として計測するためのロックインアンプ10Aと、計測結果を記憶し、演算し、出力するパソコン11とを備えたものである。
【0018】
光学系は、光源2と、光源2からの光を断続光とする光チョッパ3と、光源2からの光を所望の波長に分光する分光器6と、分光器6を制御する波長駆動装置12とから構成される。
本実施例の光源2は、キセノンショートアークランプKXL-500F・電力500W(渡邊商行製)により構成した。
また、光チョッパ3は、エヌエフ回路設計ブロック・ライトチョッパ5584Aにより構成し、分光器6は、回折格子分光器MC-20L・焦点距離200mm(リツー応用光学製)により構成した。
【0019】
また、マイクロフォン9は、3端子エレクトレットコンデンサマイクロフォンP102(科学教材社製)により構成し、ロックインアンプ10Aは、エヌエフ回路設計ブロック・2位相ロックインアンプ5610Bにより構成した。
【0020】
[光音響セル4]
光音響セル4は、図3および図4に示すような構成を有するものであり、一組の透過板13と、試料室5および導波通路15が形成された二枚のシール部材14と、を主たる構成要素とする。
【0021】
一組の透過板13は、マイクロフォン9に連通する孔16を備える透過上板13Aと、シール部材14の下方に配置される透過下板13Bとから構成される。マイクロフォン9の取り付けは、孔16をふさがないように、また、試料室5および導波通路15の密閉が損なわれないように、エポキシ系の接着剤で接合した。
透過上板13Aは、試料室5を密閉し、光学系からの照射光を透過すると共に、試料Sからの散乱光や反射光を外部に排出する。
透過下板13Bは、試料室5を密閉するのと共に試料Sを透過した光を外部に排出する。
本実施例では、透過上板13Aおよび透過下板13Bを、それぞれ縦40mm×横60mm、厚さ1mmの石英ガラスで構成した。
【0022】
シール部材14は、透過上板13Aの下方に密接して配置される第1のシール部材14Aと、第1のシール部材14Aの下方、且つ、透過下板13Bの上方に配置される第2のシール部材14Bとから構成される。
シール部材14Aは、円柱状の試料室5Aと、その側方に形成された導波通路15とを備える。導波通路15は、孔16と試料室5とを連通するものであり、試料Sへの入射光とほぼ直交する方向に沿って延設されており、これにより導波通路15内に反射光や散乱光が進入することを最小限としている。なお、本実施例では、導波通路15を第1のシール部材14Aに設けているが、透過板13にも設けてもよい。
シール部材14Bには、円柱状の試料室5Bが形成されている。シール部材14Bは、試料Sの厚さ(高さ)が小さい場合には、取り外してもよい。逆に、試料Sの厚さ(高さ)が大きい場合には、第3、第4のシール部材を配置してもよいし、シール部材以外の板材(アクリルやプラスチックなど)をシール部材で挟むように配置してもよい。
なお、試料室5の形状は円柱状に限定されず、多角柱状等であってもよい。
【0023】
二枚のシール部材14は、透過板13と衝合することにより、透過板13の各面とシール部材14の各面が密着し、試料室5の気密性を確保する。なお、透過板13の面積または重量が一定以上の場合には充分な気密性が保たれるが、別途に設けた挟着部材によりこれらを圧着固定してもよい。
本実施例では、第1のシール部材14Aを厚さ0.5mmのシリコーンゴムシート(十川ゴム製K-125)で構成し、第2のシール部材14Bを厚さ0.5mm~3mmのシリコーンゴムシート(十川ゴム製K-125)で構成した。
【0024】
[測定手順]
試料Sの分光物性測定は、光源2からの光を光チョッパ3と分光器6とで単色断続光とし、その単色断続光を密閉された光音響セル4内の試料室5の試料Sに照射することで行う。非発光遷移による熱の放出に対応したPA信号を、試料室5と導波通路15を介して連通するマイクロフォン9で検出する。検出したPA信号は、光学系の照射と同期した参照信号を基準にして、ロックインアンプ10Aで特定周波数の成分のみが増幅される。ロックインアンプ10Aから出力された信号は、パソコン11で記録され、その演算結果として試料Sのスペクトルがパソコン11の有するディスプレイに出力される。
【0025】
[測定結果]
以上に述べた本実施例の光音響分光測定装置による光デバイス材料(CaGa)の測定結果を図5に示す。従来の光音響分光測定装置による図5(a)の出力と比べ、本実施例の光音響セルによる図5(b)の出力のS/N比が向上していることが確認できる。
【0026】
[実施例1の効果]
以上に述べた本実施例の光音響セルによれば、試料Sの様々な形状や体積に合わせて、カッターナイフ等で試料室の形状および容積を加工することができることから、試料室中の空間(気体層)の容積を最小限に抑えることができる。すなわち、本実施例の光音響セルは、理論上、最大限の感度を得られることができる構造を有する。
また、シール部材のシール面を大きく取ることにより、レリーズバルブなどを設けなくとも密閉圧によるマイクロフォンの損傷を防ぐことができ、かかる構造により必要な部品数を少なくすることを可能としている。
また、試料Sの分光測定を行う場合、光源から送られてきた光は、試料Sに吸収されるほか、試料Sから生じる反射光や散乱光のほとんどが上下の透過板から外部に排出されるため、試料Sでの反射光や散乱光に起因するノイズを最小限に抑えることができる。
【実施例2】
【0027】
本実施例の光音響分光測定装置1は、透過板13が一枚の透過上板13Aのみから構成される点で、実施例1の装置と相違する。すなわち、本実施例の装置は、試料の上面や試料が載置された面にシール部材14を直接密着して使用する開放型の光音響セルを有する光音響分光測定装置である。
【0028】
[実施例2の効果]
本実施例の装置では、試料室5の下面が開放されており、試料Sの上面または試料Sが載置された面が試料室5の下面を構成する。このため、プリント基板上の素子や薄膜デバイスの物性評価を、電圧を印加しながら行うことができる。
また、本実施例の光音響セル4は開放型であることから、生体の皮膚の水分測定、生体の皮膚における薬剤の浸透性や残留性等の測定、薄膜材料の物性評価、シート状製品検査などにも使用することができる。
【実施例3】
【0029】
本実施例の装置は、PA信号に加え、「発光」と「透過光」を同時に測定することができる測定装置21である。本実施例の測定装置21は、実施例に係る光音響セルを利用するものである。ここで、実施例に係る光音響セル以外の公知の光音響セルを適用することも可能であるが、照射光入射面、透過光出射面共に、その周辺に発光や透過光を遮る構造を有していないという点で、実施例に係る光音響セルを用いることが好適である。
図6に示すように、本実施例の測定装置21は、光学系と、光音響セル4と、マイクロフォン9と、ロックインアンプ10Aと、パソコン11とを備える点では実施例1の装置と同じであるが、発光測定機構30、および、透過光測定機構40を備える点で、実施例1の装置と相違する。以下、相違点のみを説明する。
【0030】
発光測定機構30は、光学フィルタ31と、集光レンズ32と、光検出器33と、ロックインアンプ10Bとから構成される。
光学フィルタ31は、試料Sからの散乱光や反射光を遮るためのものであり、測定条件に応じて特定波長のみを透過するエッジフィルタやバンドパスフィルタにより構成する。なお、光学フィルタ31の代わりに分光器を挿入することにより、特定の検出波長の発光励起スペクトルを測定してもよい。また、この分光器を波長走査することによって、発光スペクトルの測定も可能となる。
光検出器33は、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)などの公知の素子を用いて構成する。光電子倍増管などの高感度で壊れやすい光検出器を用いる場合、分光器6が光学フィルタ(または分光器)の光透過波長領域を走査する際に、光検出器33を遮光するシャッター等の機構を追加する必要がある。
ロックインアンプ10Bは、ロックインアンプ10Aと同じものである。
【0031】
透過光測定機構40は、集光レンズ41と、光検出器42と、ロックインアンプ10Cとから構成される。
ここで、発光をS/N比よく得るためには照射光強度は強い方がよいが、その場合試料の透過領域において透過光はかなり強くなるため、光検出器のリニアリティが保障された範囲で測定できなかったり、光検出器を壊してしまうおそれがある。したがって、光源からの照射光強度や使用する光検出器によっては集光の必要はなく、逆にNDフィルタやピンホールなどを用いて光量を減らすことが好ましい場合もある。
ロックインアンプ10Cは、ロックインアンプ10Aと同じものである。
【0032】
ロックインアンプ10A~10Cで同期して得られた3つのスペクトルを正確に比較するためには、すべての計測を同じ計測方法で行うことが好ましい。すなわち、本実施例ではすべての信号をロックインアンプによるロックイン法で計測している。
なお、光検出器での受光量は微小となるためロックインアンプを用いたが、ロックインアンプの代わりに平均化処理方法を用いて受光量を検出してもよい。
【0033】
[測定手順]
本実施例の測定装置における測定手順は次のとおりである。
まず、光源2からの光を光チョッパ3と分光器6とで単色断続光とし、それを密閉された光音響セル4の試料室5内の試料Sに照射する。試料Sからの発光を発光測定機構30で検出し、試料Sを透過した透過光を透過光測定機構40で検出する。同時に、非発光遷移による熱の放出に対応したPA信号をマイクロフォン9で検出する。マイクロフォン9、光検出器33、および光検出器42からの信号を、それぞれロックインアンプ10A~10Cで計測し、それらを同期させてパソコン11で記録する。
【0034】
[実施例3の効果]
以上に述べた本実施例の装置によれば、同時に同じ分解能で測定した3つのスペクトルにおいて、理論上、「光吸収スペクトル=発光励起スペクトル+光音響スペクトル」の関係が成り立つことから、定性的な比較を行うことが可能であり、また、適当なフィッティング処理を施すことで定量的な評価も可能となる。
また、一つの測定装置で物質の光励起過程に関わる3種のスペクトルを同時に測定できるため、測定作業における時間的・経済的な負担を大幅に軽減することができる。
以上の効果を奏する本実施例の装置は、発光材料、特にレーザー素子材料の量子効率の研究などに極めて有効であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、光音響分光測定装置や実施例3で述べた光励起過程評価システム(光吸収・発光励起・光音響スペクトル同時測定システム)やフーリエ変換赤外分光光度計に適用することができ、酸化亜鉛薄膜(ZnO薄膜、MgZn1-xO薄膜)、硫化化合物(CaGaバルク結晶、EuGa薄膜)、有機光検出器(BPPC/CuPc)の物性分析を行うことが例示される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の光音響分光測定装置の構成を説明するための側面断面図である。
【図2】実施例1に係る光音響分光測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る光音響セルの構成を説明するための斜視図である。
【図4】実施例1に係る光音響セルの構成を説明するための上面図および側面図である。
【図5】(a)従来の光音響セルによるCe添加CaGa単結晶の測定結果を示すグラフ(A.Kato et al/J.Phys.Chem.Sol.64(2003)より引用)であり、(b)実施例1に係る光音響セルによるCe添加CaGa単結晶の測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例3に係る測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 光音響分光測定装置
2 光源
3 光チョッパ
4 光音響セル
5 試料室
5A 試料室上部
5B 試料室下部
6 分光器
7 モータ
8 凹面鏡
9 マイクロフォン(音波検出器)
10A、10B、10C ロックインアンプ(同期信号検出器)
11 パソコン(Personal Computer)
12 波長駆動装置
13 透過板
13A 透過上板
13B 透過下板
14 シール部材
14A 第1のシール部材
14B 第2のシール部材
15 導波通路(圧力伝播通路)
16 孔
21 測定装置
30 発光測定機構
31 光学フィルタ
32 集光レンズ
33 光検出器
40 透過光測定機構
41 集光レンズ
42 光検出器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5