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明細書 :変速機及び変速方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4918705号 (P4918705)
登録日 平成24年2月10日(2012.2.10)
発行日 平成24年4月18日(2012.4.18)
発明の名称または考案の名称 変速機及び変速方法
国際特許分類 F16H   3/089       (2006.01)
F16H   3/10        (2006.01)
F16H   3/12        (2006.01)
FI F16H 3/089
F16H 3/10
F16H 3/12
請求項の数または発明の数 12
全頁数 30
出願番号 特願2008-545377 (P2008-545377)
出願日 平成19年11月15日(2007.11.15)
国際出願番号 PCT/JP2007/072215
国際公開番号 WO2008/062718
国際公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
優先権出願番号 2006316164
優先日 平成18年11月22日(2006.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年5月20日(2009.5.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小森 雅晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100114502、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 俊則
審査官 【審査官】小林 忠志
参考文献・文献 実開昭58-093409(JP,U)
実開昭52-110276(JP,U)
特開平07-217709(JP,A)
特開昭62-270863(JP,A)
特開2006-046426(JP,A)
特開平03-134348(JP,A)
実開平03-046046(JP,U)
調査した分野 F16H 3/00- 3/78
特許請求の範囲 【請求項1】
回転可能に支持された入力部材と出力部材との間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対である第1の歯車要素対及び第2の歯車要素対と、
前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する、少なくとも2組のクラッチである第1のクラッチ及び第2のクラッチと、
を備える変速機において、
前記入力部材と前記出力部材との間に配置された、少なくとも1組の非円形歯車要素対と、
前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する、少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、
を備え、
前記非円形歯車要素対は、前記入力部材と前記出力部材との間の減速比が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第1の歯車要素対が連結されたときの前記第1の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における第1の減速比と等しくなる第1の噛み合い区間と、前記入力部材と前記出力部材との間の減速比が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第2の歯車要素対が連結されたときの前記第2の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における第2の減速比と等しくなる第2の噛み合い区間とを含むことを特徴とする、変速機。
【請求項2】
少なくとも3組の前記歯車要素対と、
少なくとも3組の前記クラッチと、
少なくとも2組の前記非円形歯車要素対と、
少なくとも2組の前記非円形歯車要素対用クラッチと、
を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記歯車要素対は、円形歯車要素同士が噛み合うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の変速機。
【請求項4】
前記歯車要素対の一方の歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか一方に相対回転可能な状態で支持され、
前記歯車要素対の他方の歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか他方に相対回転不可能な状態で固定され、
前記クラッチは、前記歯車要素対の前記一方の歯車要素を、前記入力部材又は前記出力部材の前記いずれか一方に、解除可能に結合し、
前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか一方に相対回転可能な状態で支持され、
前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素は、少なくとも前記入力部材と前記出力部材との間に連結される前記歯車要素対が切り替えられるときに前記入力部材又は前記出力部材のいずれか他方に相対回転不可能な状態で固定され、
前記非円形歯車要素対用クラッチは、少なくとも、前記非円形歯車要素対の前記一方の非円形歯車要素を、前記入力部材又は前記出力部材の前記いずれか一方に、解除可能に結合し、
前記クラッチ及び前記非円形歯車要素対用クラッチの少なくとも一つが、噛み合いクラッチであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の変速機。
【請求項5】
前記クラッチ及び前記非円形歯車要素対用クラッチをそれぞれ駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作を制御する制御装置と、
をさらに備えたことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項6】
前記非円形歯車要素対を構成する各非円形歯車要素に並列して摺接部材を設け、
前記摺接部材は、それぞれ、前記各非円形歯車要素と一体となって回転し、かつ、外周面同士が摩擦接触することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項7】
前記非円形歯車要素対用クラッチは、前記入力部材と前記非円形歯車要素対との間の結合と、前記非円形歯車要素対と前記出力部材との間の結合とを、両方同時に解除可能であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項8】
回転する入力部材と出力部材との間の減速比を変える変速方法であって、
前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも一部の噛み合い区間で第1(又は第2)の減速比で噛み合う第1(又は第2)の歯車要素対を連結している状態において、前記入力部材と前記出力部材との間に、前記第1(又は第2)の歯車要素対と同時に前記第1(又は第2)の減速比で噛み合う状態で非円形歯車要素対を連結する、第1の工程と、
前記非円形歯車要素対と前記第1(又は第2)の歯車要素対とが同時に前記第1(又は第2)の減速比の噛み合いを継続している間に、前記第1(又は第2)の歯車要素対について、前記入力部材と前記出力部材との間の連結を解除する、第2の工程と、
前記非円形歯車要素対が第2(又は第1)の減速比で噛み合う状態において、前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも一部の噛み合い区間で前記第2(又は第1)の減速比で噛み合う第2(又は第1)の歯車要素対を、前記非円形歯車要素対と同時に前記第2(又は第1)の減速比で噛み合う状態で連結する、第3の工程と、
前記非円形歯車要素対と前記第2(又は第1)の歯車要素対とが同時に前記第2(又は第1)の減速比の噛み合いを継続している間に、前記非円形歯車要素対について、前記入力部材と前記出力部材との間の連結を解除する、第4の工程と、
を備えたことを特徴とする、変速方法。
【請求項9】
前記歯車要素対の一方の歯車要素が配置される前記入力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素が配置される前記入力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する入力側増減速装置と、
前記歯車要素対の他方の歯車要素が配置される前記出力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素が配置される前記出力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する出力側増減速装置と、
を備えたことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項10】
前記クラッチは、ワンウェイクラッチを含むことを特徴とする、請求項1ないし7、9のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項11】
前記歯車要素対のうち最も減速比が大きい前記歯車要素対を前記入力部材と前記出力部材との間に解除可能に連結する前記クラッチが、ワンウェイクラッチであることを特徴とする、請求項10に記載の変速機。
【請求項12】
回転可能に支持された入力部材と出力部材との間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対である第1の歯車要素対及び第2の歯車要素対と、
前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する、少なくとも2組のクラッチである第1のクラッチ及び第2のクラッチと、
前記入力部材と前記出力部材との間に配置された、少なくとも1組の非円形歯車要素対と、
前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する、少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、
前記歯車要素対の一方の歯車要素が配置される前記入力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素が配置される前記入力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する入力側増減速装置と、
前記歯車要素対の他方の歯車要素が配置される前記出力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素が配置される前記出力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する出力側増減速装置と、
を備え、
前記非円形歯車要素対は、第1の減速比になる第1の噛み合い区間と、第2の減速比になる第2の噛み合い区間とを含み、
前記非円形歯車要素対の前記第1の減速比と前記入力側増減速装置の減速比と前記出力側増減速装置の減速比との積が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第1の歯車要素対が連結されたときの前記第1の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における減速比と等しく、
前記非円形歯車要素対の前記第2の減速比と前記入力側増減速装置の減速比と前記出力側増減速装置の減速比との積が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第2の歯車要素対が連結されたときの前記第2の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における減速比と等しいことを特徴とする、変速機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は変速機及び変速方法に関し、詳しくは、減速比を切り替える変速機及び変速方法に関する。なお、本明細書中において、「減速比」は、駆動側回転速度/被動側回転速度(あるいは、入力側回転速度/出力側回転速度)で表され、駆動側回転速度よりも被動側回転速度の方が小さくなる場合(いわゆる減速の場合)には1より大きい値となる。「減速比」は、駆動側回転速度よりも被動側回転速度の方が大きい場合(いわゆる増速の場合)についても同じ定義を用いて表し、この場合には、1より小さい値となる。
【背景技術】
【0002】
現在では、例えば、自動車のオートマチックトランスミッションなど、減速比を多段階に変えることが可能な変速機はすでに数多く開発され、確立された機械となりつつある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2001-146964号公報
【非特許文献1】社団法人日本機械学会編、「機械工学便覧 デザイン編 β4 機械要素・トライボロジー」、初版、社団法人日本機械学会、2005年10月25日、p.83
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、大多数のロボットは、減速比が一定の減速機を装備した電動モータによって駆動されている。この電動モータは、大トルク発生時には低速回転し、低トルク発生時には高速回転する特性を有しているが、その対応範囲は狭い。また、減速比が一定の場合、この減速比は、通常、最大負荷時においても作業可能なように大きいものが選択されるため、無負荷時においても速度が制限されてしまい、作業効率が落ちるという問題があった。そのため、広い速度範囲で効率よくモータを駆動させるためには、必要に応じて減速比を変える変速機が必要である。
【0004】
ロボットにおいては、負荷状態において減速比を変えることが求められ、減速比を変える過程においても負荷を支持し続けることが必要である。さらに、高精度に作業を行う必要があることから、減速比を変えるときにおいても正確な回転角度の伝達が求められている。また、回転を止めることなく減速比を変えることが要求されている。
【0005】
一方、自動車、自転車では、すでに変速機が使われているが、減速比を変える際に動力を効率よく伝達することが課題となっている。
【0006】
通常、減速比の異なる歯車対を同時に噛み合わせて回転させることはできないため、回転を止めることなく負荷を支持しつつ、減速比を変えることはできない。また、通常の自動車などの変速機では、減速比を変える前には、これから締結する歯車と軸の回転速度が異なるため、摩擦を利用してこれらを一致させていることから、歯車と軸の間には大きな滑りが生じ、正確な回転角度の伝達は困難であり、動力の伝達効率も悪い。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる、変速機及び変速方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下のように構成した変速機を提供する。
【0009】
変速機は、回転可能に支持された入力部材と出力部材との間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対である第1の歯車要素対及び第2の歯車要素対と、前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する、少なくとも2組のクラッチである第1のクラッチ及び第2のクラッチとを備える。この変速機は、前記入力部材と前記出力部材との間に配置された、少なくとも1組の非円形歯車要素対と、前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する、少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチとを備える。前記非円形歯車要素対は、(a)前記入力部材と前記出力部材との間の減速比が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第1の歯車要素対が連結されたときの前記第1の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における第1の減速比と等しくなる第1の噛み合い区間と、(b)前記入力部材と前記出力部材との間の減速比が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第2の歯車要素対が連結されたときの前記第2の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における第2の減速比と等しくなる第2の噛み合い区間とを含む。
【0010】
この変速機は、例えば、(1)前記第1(又は第2)のクラッチが前記入力部材と前記出力部材との間に前記第1(又は第2)の歯車要素対を連結し、前記第1(又は第2)の減速比で噛み合う状態において、前記非円形歯車要素対が前記第1(又は第2)の噛み合い区間で噛み合うときに、前記非円形歯車要素対用クラッチが前記入力部材と前記出力部材との間に前記非円形歯車要素対を連結し、(2)次いで、前記第1(又は第2)の歯車要素対が前記第1(又は第2)の減速比で噛み合いを継続している間に、かつ、前記非円形歯車要素対が前記第1(又は第2)の噛み合い区間で噛み合いを継続している間に、前記第1(又は第2)のクラッチが前記第1(又は第2)の歯車要素対の連結を解除し、(3)次いで、前記非円形歯車要素対が前記第2(又は第1)の噛み合い区間で噛み合う状態において、かつ、前記第2(又は第1)の歯車要素対が前記第2(又は第1)の減速比で噛み合う状態において、前記第2(又は第1)のクラッチが前記入力部材と前記出力部材との間に前記第2(又は第1)の歯車要素対を連結し、(4)次いで、前記非円形歯車要素対が前記第2(又は第1)の噛み合い区間で噛み合いを継続している間に、かつ、前記第2(又は第1)の歯車要素対が前記第2(又は第1)の減速比で噛み合いを継続している間に、前記非円形歯車要素対用クラッチが前記非円形歯車要素対の連結を解除することにより、前記入力部材と前記出力部材との間の減速比が変わる。
【0011】
上記構成において、歯車要素対と非円形歯車要素対とが入力部材と出力部材との間に同時に連結されているときにそれぞれの減速比が同じであれば、回転を止めることなく負荷を支持しつつ、入力部材と出力部材との間に連結される歯車要素対を切り替えることが可能であるので、歯車要素対と非円形歯車要素対とが同時に入力部材と出力部材との間に連結されているときのそれぞれの減速比は、同期しながら変化してもよい。すなわち、第1の減速比や第2の減速比は一定でなくてもよい。
【0012】
上記構成によれば、入力部材と出力部材との間に第1(又は第2)の歯車要素対が連結された第1(又は第2)の減速比の状態と、入力部材と出力部材との間に第2(又は第1)の歯車要素対が連結された第2(又は第1)の減速比の状態とを切り替える際に、過渡的に入力部材と出力部材との間に非円形歯車要素対が連結されるようにすることで、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0013】
なお、本発明において、「歯車要素」は広く歯を有する要素を意味し、歯車だけでなく、スプロケットやプーリ等も含まれる。「歯車要素対」は、歯車要素の歯が直接噛み合う場合に限らず、中間歯車、歯付きベルトやチェーン等を介して間接的に噛み合い、連動する場合も含まれる。「歯車要素対」は、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、スプロケット等に限らず、かさ歯車や内歯歯車、遊星歯車装置等によって構成することも可能である。遊星歯車装置で歯車要素対を構成する場合、太陽歯車、内歯歯車、キャリヤの内、いずれか一つを固定し、他の一つに入力部材の回転を伝達し、別の一つの回転を出力部材に伝達すればよい。
【0014】
好ましい一態様としては、少なくとも3組の前記歯車要素対と、少なくとも3組の前記クラッチと、少なくとも2組の前記非円形歯車要素対と、少なくとも2組の前記非円形歯車要素対用クラッチとを備える。
【0015】
この場合、3組以上の歯車要素対によって、例えば、入力部材と出力部材との間の減速比を3段以上(例えば、小減速比、中減速比、大減速比)とすることができ、少なくとも2組の非円形歯車要素対を用いて円滑に減速比を切り替えることができる。例えば、ある回転方向に入力部材が回転する場合に、第1の非円形歯車要素対は、小減速比、中減速比、大減速比の順に噛み合い区間を有し、この順に減速比の変化を繰り返し、第2の非円形歯車要素対は、大減速比、中減速比、小減速比の順に噛み合い区間を有し、この順に減速比の変化を繰り返すようにしておき、小減速比から中減速比、中減速比から大減速比に減速比を変えるときには第1の非円形歯車要素対を用い、大減速比から中減速比、中減速比から小減速比に減速比を変えるときには第2の非円形歯車要素対を用いる。あるいは、第1の非円形歯車要素対は、小減速比と中減速比となる噛み合い区間を有し、第2の非円形歯車要素対は、大減速比と中減速比となる噛み合い区間を有するようにしておき、小減速比から中減速比、中減速比から小減速比に減速比を変えるときには第1の非円形歯車要素対を用い、大減速比から中減速比、中減速比から大減速比に減速比を変えるときには第2の非円形歯車要素対を用いる。
【0016】
好ましくは、前記歯車要素対は、円形歯車要素同士が噛み合う。
【0017】
この場合、入力部材と出力部材との間に歯車要素対が連結されているときの減速比が変化する場合、すなわち歯車要素対が非円形歯車要素で構成される場合よりも、構成が簡単になり、入力部材と出力部材との間の減速比の切り替えも容易である。
【0018】
好ましくは、前記歯車要素対の一方の歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか一方に相対回転可能な状態で支持される。前記歯車要素対の他方の歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか他方に相対回転不可能な状態で固定される。前記クラッチは、前記歯車要素対の前記一方の歯車要素を、前記入力部材又は前記出力部材の前記いずれか一方に、解除可能に結合する。前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素は、前記入力部材又は前記出力部材のいずれか一方に相対回転可能な状態で支持される。前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素は、少なくとも前記入力部材と前記出力部材との間に連結される前記歯車要素対が切り替えられるときに前記入力部材又は前記出力部材のいずれか他方に相対回転不可能な状態で固定される。前記非円形歯車要素対用クラッチは、少なくとも、前記非円形歯車要素対の前記一方の非円形歯車要素を、前記入力部材又は前記出力部材の前記いずれか一方に、解除可能に結合する。前記クラッチ及び前記非円形歯車要素対用クラッチの少なくとも一つが、噛み合いクラッチである。
【0019】
入力部材と出力部材との間に第1(又は第2)の歯車要素対が連結され、第1(又は第2)の減速比で噛み合うとき、非円形歯車要素対は、入力部材と出力部材との間に連結されていなくても、第1(又は第2)の噛み合い区間において第1(又は第2)の減速比となり、非円形歯車要素対用クラッチの駆動側と被動側との回転速度が等しくなる。非円形歯車要素対が入力部材と出力部材との間に連結され、第1(又は第2)の噛み合い区間において噛み合っているとき、入力部材と出力部材との間に第1(又は第2)の歯車要素対が連結されていなくても、第1(又は第2)の歯車要素対は少なくとも一部の噛み合い区間において第1(又は第2)の減速比で回転し、第1(又は第2)のクラッチの駆動側と被動側との回転速度が等しくなる。したがって、クラッチ及び非円形歯車要素対用クラッチに、例えば駆動側と被動側とが軸方向に接離して駆動側と被動側とが機械的に噛み合うドグクラッチのような噛み合いクラッチを用いることが可能であり、クラッチの滑りが発生しないようにすることができる。
【0020】
好ましくは、前記クラッチ及び前記非円形歯車要素対用クラッチをそれぞれ駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの動作を制御する制御装置とを備える。
【0021】
この場合、制御装置により、入力部材と出力部材との間の減速比の切り替えを自動化することができる。
【0022】
好ましくは、前記非円形歯車要素対の各非円形歯車要素に並列して摺接部材を設ける。前記摺接部材は、それぞれ、前記各非円形歯車要素と一体となって回転し、かつ、外周面同士が摩擦接触する。
【0023】
この場合、非円形歯車要素のバックラッシ分の自由な動きを、摺接部材の外周面同士の摩擦接触によって、ある程度制限する。これにより、非円形歯車要素の振動を低減することができる。
【0024】
好ましくは、前記非円形歯車要素対用クラッチは、前記入力部材と前記非円形歯車要素対との間の結合と、前記非円形歯車要素対と前記出力部材との間の結合とを、両方同時に解除可能である。
【0025】
この場合、非円形歯車要素対への入力部材と出力部材の両方からの回転の伝達を遮断することにより、非円形歯車要素対を使用しない場合には、非円形歯車要素対の回転を停止させ、非円形歯車要素対の回転に起因する振動が発生しないようにすることができる。
【0026】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した変速方法を提供する。
【0027】
変速方法は、回転する入力部材と出力部材との間の減速比を変える変速方法である。変速方法は、(1)前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも一部の噛み合い区間で第1(又は第2)の減速比で噛み合う第1(又は第2)の歯車要素対を連結している状態において、前記入力部材と前記出力部材との間に、前記第1(又は第2)の歯車要素対と同時に前記第1(又は第2)の減速比で噛み合う状態で非円形歯車要素対を連結する、第1の工程と、(2)前記非円形歯車要素対と前記第1(又は第2)の歯車要素対とが同時に前記第1(又は第2)の減速比の噛み合いを継続している間に、前記第1(又は第2)の歯車要素対について、前記入力部材と前記出力部材との間の連結を解除する、第2の工程と、(3)前記非円形歯車要素対が第2(又は第1)の減速比で噛み合う状態において、前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも一部の噛み合い区間で前記第2(又は第1)の減速比で噛み合う第2(又は第1)の歯車要素対を、前記非円形歯車要素対と同時に前記第2(又は第1)の減速比で噛み合う状態で連結する、第3の工程と、(4)前記非円形歯車要素対と前記第2(又は第1)の歯車要素対が同時に前記第2(又は第1)の減速比の噛み合いを継続している間に、前記非円形歯車要素対について、前記入力部材と前記出力部材との間の連結を解除する、第4の工程と、を備える。
【0028】
上記方法によれば、入力部材と出力部材との間に第1(又は第2)の歯車要素対が連結された第1(又は第2)の減速比の状態と、入力部材と出力部材との間に第2(又は第1)の歯車要素対が連結された第2(又は第1)の減速比の状態とを切り替える際に、過渡的に入力部材と出力部材との間に非円形歯車要素対が連結されるようにすることで、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0029】
なお、歯車要素対と非円形歯車要素対とが入力部材と出力部材との間に同時に連結されているときにそれぞれの減速比が同じであれば、回転を止めることなく負荷を支持しつつ、入力部材と出力部材との間に連結される歯車要素対を切り替えることが可能であるので、歯車要素対と非円形歯車要素対とが同時に入力部材と出力部材との間に連結されるときに、それぞれの減速比は同期しながら変化してもよい。すなわち、第1の減速比や第2の減速比は一定でなくてもよい。
【0030】
好ましくは、前記歯車要素対の一方の歯車要素が配置される前記入力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素が配置される前記入力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する入力側増減速装置と、前記歯車要素対の他方の歯車要素が配置される前記出力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素が配置される前記出力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する出力側増減速装置とを備える。
【0031】
上記構成において、入力部材の第1部分の回転は、入力部材の第1部分と入力部材の第2部分との間に配置された入力側増減速装置により減速(又は、増速)され、非円形歯車要素対側の入力部材の第2部分に伝達される。入力部材の第2部分の回転は、非円形歯車要素対を介して、出力部材の第2部分に伝達される。出力部材の第2部分の回転は、出力部材の第2部分と出力部材の第1部分との間に配置された出力側増減速装置により増速(又は、減速)され、歯車要素対側の出力部材の第1部分に伝達される。
【0032】
上記構成において、増減速装置により、入力部材と出力部材との間に連結する歯車要素対を切り換える際に、非円形歯車要素対が入力部材と出力部材との間に連結されている時間を長く(又は、短く)することができ、それに伴って、クラッチを作動させる時間を長く(又は、短く)することができる。
【0033】
上記構成によれば、入力が高速回転であっても、適宜な減速比の増減速装置により非円形歯車要素対の回転を遅くすることで、クラッチの切り換え動作をすべき時間を長くすることができるので、容易に減速比を変えることができる。入力が低速回転である場合には、適宜な減速比の増減速装置により非円形歯車要素対の回転を速くすることで、減速比の切り換えに要する時間を短縮することができる。
【0034】
好ましくは、前記クラッチは、ワンウェイクラッチを含む。
【0035】
ワンウェイクラッチは、ある方向の回転を正方向回転とする場合に、入力側が出力側よりも正方向に速く回転しようとするときに、入力側の回転を出力側に伝達する。すなわち、ワンウェイクラッチはONになる。一方、入力側が出力側よりも正方向に遅く回転するときには、入力側と出力側とはそれぞれ独立に回転する。すなわち、ワンウェイクラッチはOFFになる。
【0036】
ワンウェイクラッチを用いると、クラッチのON/OFF切り換えが自動的に行われるようにすることができるので、クラッチ制御を簡単にすることができる。
【0037】
好ましくは、前記歯車要素対のうち最も減速比が大きい前記歯車要素対を前記入力部材と前記出力部材との間に解除可能に連結する前記クラッチが、ワンウェイクラッチである。
【0038】
上記構成において、最も減速比が大きい歯車要素対のワンウェイクラッチがONになった状態、すなわち、変速機の減速比が最も大きい状態で変速機の減速比を切り換えると、減速比が小さくなるため、ワンウェイクラッチの出力側の回転が入力側よりも速くなり、ワンウェイクラッチは自動的にOFFとなる。逆に、変速機の減速比を最も大きくする場合、減速比の切り換えに用いた非円形歯車要素対のクラッチをOFFにした段階で、ワンウェイクラッチは自動的にONになる。
【0039】
上記構成によれば、最も減速比が大きい歯車要素対についてクラッチのON/OFFが自動的に行われるので、クラッチ制御を簡単にすることができる。
【0040】
また、本発明は、以下のように構成した変速機を提供する。
【0041】
変速機は、(a)回転可能に支持された入力部材と出力部材との間にそれぞれ配置された、少なくとも2組の歯車要素対である第1の歯車要素対及び第2の歯車要素対と、(b)前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも2組の前記歯車要素対をそれぞれ解除可能に連結する、少なくとも2組のクラッチである第1のクラッチ及び第2のクラッチと、(c)前記入力部材と前記出力部材との間に配置された、少なくとも1組の非円形歯車要素対と、(d)前記入力部材と前記出力部材との間に、少なくとも1組の前記非円形歯車要素対を解除可能に連結する、少なくとも1組の非円形歯車要素対用クラッチと、(e)前記歯車要素対の一方の歯車要素が配置される前記入力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の一方の非円形歯車要素が配置される前記入力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する入力側増減速装置と、(f)前記歯車要素対の他方の歯車要素が配置される前記出力部材の第1部分と前記非円形歯車要素対の他方の非円形歯車要素が配置される前記出力部材の第2部分との間を回転伝達可能に結合する出力側増減速装置とを備える。前記非円形歯車要素対は、第1の減速比になる第1の噛み合い区間と、第2の減速比になる第2の噛み合い区間とを含む。前記非円形歯車要素対の前記第1の減速比と前記入力側増減速装置の減速比と前記出力側増減速装置の減速比との積が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第1の歯車要素対が連結されたときの前記第1の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における減速比と等しい。前記非円形歯車要素対の前記第2の減速比と前記入力側増減速装置の減速比と前記出力側増減速装置の減速比との積が、前記入力部材と前記出力部材との間に前記第2の歯車要素対が連結されたときの前記第2の歯車要素対の少なくとも一部の噛み合い区間における減速比と等しい。
【0042】
上記構成において、増減速装置により、入力部材と出力部材との間に連結する歯車要素対を切り換える際に、非円形歯車要素対が入力部材と出力部材との間に連結されている時間を長く(又は、短く)することができ、それに伴って、クラッチを作動させる時間を長く(又は、短く)することができる。
【0043】
上記構成によれば、入力が高速回転であっても、適宜な減速比の増減速装置により非円形歯車要素対の回転を遅くすることで、クラッチの切り換え動作をすべき時間を長くすることができるので、容易に減速比を変えることができる。入力が低速回転である場合には、適宜な減速比の増減速装置により非円形歯車要素対の回転を速くすることで、減速比の切り換えに要する時間を短縮することができる。
【0044】
また、非円形歯車要素対や増減速装置の設計や選択の自由度を高くできる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、非円形歯車要素を用いることにより、入力部材と出力部材との間に常に歯車要素対が連結されている状態にすることができるので、入力部材と出力部材との間の減速比を変える際に、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。また、変速機の構造が簡易で小型軽量、低コストを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】変速機の構成を模式的に示す機構図である。(実施例1)
【図2】変速機の歯車のピッチ円あるいはピッチ曲線を模式的に示す図である。(実施例1)
【図3】(a)非円形歯車対の減速比の変化を模式的に示すグラフ、(b)クラッチのONとOFFを示す表である。(実施例1)
【図4】(a)非円形歯車対の減速比の変化を模式的に示すグラフ、(b)クラッチのONとOFFを示す表である。(実施例1)
【図5】変速機の構成を示す断面図である。(実施例1)
【図6】変速機の動作を示す断面図である。(実施例1)
【図7】変速機の動作を示す断面図である。(実施例1)
【図8】変速機の構成を模式的に示す機構図である。(実施例2)
【図9】変速機の歯車のピッチ円あるいはピッチ曲線を模式的に示す図である。(実施例2)
【図10】変速機の構成を模式的に示す機構図である。(変形例2)
【図11】変速機の構成を模式的に示す機構図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0047】
10 変速機
12 入力軸(入力部材)
14 出力軸(出力部材)
16 第1の歯車対(第1の歯車要素対)
17 第2の歯車対(第2の歯車要素対)
18 非円形歯車対(非円形歯車要素対)
20,22,24 入力側歯車
25 第1の区間(第1の噛み合い区間)
26 第2の区間
27 第3の区間(第2の噛み合い区間)
28 第4の区間
30,32,34 出力側歯車
35 第1の区間(第1の噛み合い区間)
36 第2の区間
37 第3の区間(第2の噛み合い区間)
38 第4の区間
40 クラッチ(第1のクラッチ)
41 シフター
42 クラッチ(第2のクラッチ)
44 クラッチ(非円形歯車要素対用クラッチ)
45 シフター
50,50a 変速機
52,52a 入力軸(入力部材)
52s 入力軸(入力部材)の第1部分
52t 入力軸(入力部材)の第2部分
54,54a 出力軸(出力部材)
54s 出力軸(出力部材)の第1部分
54t 出力軸(出力部材)の第2部分
55 第1の歯車対(3組の歯車要素対)
56 第2の歯車対(3組の歯車要素対)
57 第3の歯車対(3組の歯車要素対)
58 第1の非円形歯車対(2組の非円形歯車要素対)
59 第2の非円形歯車対(2組の非円形歯車要素対)
69,79 増減速装置
80,82,84,86,88 クラッチ
110 変速機
144 クラッチ(非円形歯車要素対用クラッチ)
500 円形歯車用クラッチ(第1のクラッチ、第2のクラッチ)
502 非円形歯車用クラッチ(非円形歯車要素対用クラッチ)
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図1~図11を参照しながら説明する。
【0049】
<実施例1> 実施例1について、図1~図7を参照しながら説明する。
【0050】
まず、実施例1の変速機の基本的な構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0051】
図1の機構図に模式的に示すように、変速機10は、回転可能に支持されている入力軸12及び出力軸14と、第1の歯車対16と、第2の歯車対17と、非円形歯車対18と、クラッチ40,42,44とを備えている。
【0052】
各歯車対16,17,18は、それぞれ、一対の歯車20,30;22,32;24,34が噛み合い、回転角度の遅れがない。すなわち、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達する。
【0053】
入力軸12には、各歯車対16,17,18の一方の歯車(入力側歯車)20,22,24が固定され、これらの歯車20,22,24は入力軸12と一体となって回転する。
【0054】
出力軸14には、各歯車対16,17,18の他方の歯車(出力側歯車)30,32,34が、相対回転可能な状態に支持されている。出力側歯車30,32,34は、クラッチ40,42,44により、選択的に出力軸14に結合される。すなわち、クラッチ40,42,44がつながっているONのときには、対応する出力側歯車30,32,34は出力軸14に対して結合され、結合された出力側歯車30,32,34と出力軸14とは一体となって回転する。クラッチ40,42,44が切れているOFFのときには、出力側歯車30,32,34は、出力軸14の軸方向の移動が拘束されながら、出力軸14に対して相対回転可能となる。
【0055】
クラッチ40,42,44がONのとき、クラッチ40,42,44での滑り等がなければ、クラッチ40,42,44がONとなっている出力側歯車30,32,34から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0056】
クラッチ40,42,44には、ドグクラッチ、ジョークラッチ、歯形クラッチ等の噛み合いクラッチを用いることが好ましい。円板クラッチ、ドラムクラッチなどの摩擦クラッチでは滑りが発生する可能性があるのに対して、噛み合いクラッチでは、駆動側と被動側とに形成された突起や穴等の機械的構造が噛み合い、摩擦クラッチのような滑りが発生しないので、噛み合いクラッチを用いると、回転角度を極めて正確に伝達し、かつ動力を極めて効率的に伝達することができるからである。なお、クラッチ40,42,44は、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチに限定されるものではなく、噛み合いクラッチ以外の摩擦クラッチなどを用いてもよい。
【0057】
図示していないが、クラッチ40,42,44はアクチュエータによって駆動され、アクチュエータの動作は、制御装置によって制御される。また、非円形歯車対18の位相は不図示のセンサにより検出され、検出信号は制御装置に入力される。制御装置は、回転を止めることなく減速比を切り替え、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができるように、クラッチ40,42,44のON/OFFを制御する。
【0058】
各歯車対16,17,18は、クラッチ40,42,44のONによって、入力軸12と出力軸14との間に選択的に連結される。クラッチ40のONにより第1の歯車対16が入力軸12と出力軸14との間に連結されたとき、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、相対的に大きい一定の減速比Rとなる。クラッチ42のONにより第2の歯車対17が入力軸12と出力軸14との間に連結されたとき、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、相対的に小さい一定の減速比Rとなる。クラッチ44のONにより非円形歯車対18が入力軸12と出力軸14との間に連結されたとき、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、少なくとも減速比RとRとを含む範囲内で変化する。
【0059】
例えば図2に示すように各歯車対16,17,18の歯車をかみ合いピッチ円(以下、単に「ピッチ円」という。)あるいはかみ合いピッチ曲線(以下、単に「ピッチ曲線」という。)で表し、歯面の図示を省略すると、第1及び第2の歯車対16,17は、対をなす歯車20,30;22,32のピッチ円20p,30p;22p,32pが互いに接する円形歯車である。
【0060】
非円形歯車対18の対をなす歯車24,34は非円形歯車であり、非円形歯車対18の対をなす歯車24,34のピッチ曲線は、減速比Rの第1の歯車対16のピッチ円20p,30pの円弧と等しい第1の区間25,35と、減速比Rの第2の歯車対のピッチ円22p,32pの円弧と等しい第3の区間27,37と、減速比がRとRとの間で変化する第2及び第4の区間26,36;28,38とを有する。非円形歯車対18の対をなす歯車24,34は、図2において矢印で示す方向に回転するとき、歯車24,34のピッチ曲線の各区間25,35;26,36;27,37;28,38同士が噛み合う。
【0061】
非円形歯車対18が入力軸12と出力軸14との間に連結されている状況において、非円形歯車対18が、図2(a)に示すように、第3の区間27,37で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はRとなり、図2(b)で示すように、第1の区間25,35で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はRとなる。第2の区間26,36、第4の区間28,38で噛み合う場合は、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RとRの間で変化する。
【0062】
次に、変速機10の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3(a)及び図4(a)は、非円形歯車対18の減速比のグラフである。横軸は入力軸12の回転角度、縦軸は入力側歯車24と出力側歯車34との間の減速比である。図3(b)及び図4(b)の表では、クラッチ40,42,44のONの状態を○印で示し、クラッチ40,42,44のOFFの状態は空欄としている。図3(b)及び図4(b)において、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40を「クラッチ(R)」、減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42を「クラッチ(R)」、減速比が変化する非円形歯車対18のクラッチ44を「クラッチ(変速)」と表している。
【0063】
減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40がON、クラッチ42,44がOFFのときには、入力軸12と出力軸14との間は、一定の減速比Rとなる。減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42がON、クラッチ40,44がOFFのときには、入力軸12と出力軸14との間は、一定の減速比Rとなる。非円形歯車対18の減速比は、図3(a)及び図4(a)に示すように、入力軸12の回転に伴って減速比RとRとを含む所定範囲内で変化する。なお、図3(a)及び図4(a)において、非円形歯車対18の減速比が変化するときの曲線は模式的に図示されている。
【0064】
入力軸12と出力軸14との間の減速比をRからRに変える場合には、以下のようにクラッチ40,42,44を動作させる。
【0065】
図3(a)に示すように、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40がONの状態で、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間301を通過し、一定の減速比Rとなる区間302に入ったら、図3(b)に示すように、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40に加え、減速比が変化する非円形歯車対18のクラッチ44をONにする。そして、区間302において非円形歯車対18のクラッチ44がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間303に入る前に、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40をOFFにする。
【0066】
そして、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間303では、非円形歯車対18のクラッチ44のみがONである。区間303では、入力軸12と出力軸14との間に非円形歯車対18が連結されているので、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RからRに変化する。この間、クラッチ44の滑りがなければ、非円形歯車対18の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0067】
非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間303を通過して、一定の減速比Rとなる区間304に入ったら、図3(b)に示すように、減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42をONにする。そして、区間304において第2の歯車対17のクラッチ42がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間305に入る前に、非円形歯車対18のクラッチ44をOFFにする。このようにして、入力軸12と出力軸14との間に第2の歯車対17のみが連結された後は、入力軸12と出力軸14との間の減速比はR一定となり、第2の歯車対17の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0068】
クラッチ40,42,44は、駆動側と被動側とが同じ速度のときにON/OFFの切り替えを行うので、クラッチ40,42,44に、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチを問題なく用いることができる。
【0069】
入力軸12と出力軸14との間の減速比をRからRに変える場合も、上記と同様である。
【0070】
すなわち、図4(a)に示すように、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間401を通過し、一定の減速比Rとなる区間402に入ったら、図4(b)に示すように、第2の歯車対17のクラッチ42に加え、非円形歯車対18のクラッチ44をONにする。そして、区間402において非円形歯車対18のクラッチ44がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間403に入る前に、減速比Rの第2の歯車対17のクラッチ42をOFFにする。
【0071】
そして、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間403では、非円形歯車対18のクラッチ44のみがONである。区間403では、入力軸12と出力軸14との間に非円形歯車対18のみが連結されているので、入力軸12と出力軸14との間の減速比は、RからRに変化する。この間、クラッチ44の滑りがなければ、非円形歯車対18の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0072】
非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間403を通過して、一定の減速比Rとなる区間404に入ったら、図4(b)に示すように、減速比Rの第1の歯車対16のクラッチ40をONにする。そして、この区間404において第1の歯車対16のクラッチ40がONになった後、かつ、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する区間405に入る前に、非円形歯車対18のクラッチ44をOFFにする。このようにして、入力軸12と出力軸14との間に第1の歯車対16のみが連結された後は、入力軸12と出力軸14との間は一定の減速比Rとなり、第1の歯車対16の噛み合いによって、入力軸12から出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0073】
次に、変速機10の具体的な構成例について、図5~図7を参照しながら説明する。
【0074】
図5の断面図に示すように、入力軸12に、各歯車対16,17,18の入力側歯車20,22,24が順に固定されている。出力軸14には、各歯車対16,17,18の出力側歯車30,32,34が相対回転可能かつ、軸方向移動不可能な状態で順に支持されている。第1の歯車対16の出力側歯車30と第2の歯車対17の出力側歯車32との間には、円形歯車用クラッチ500のシフター41が配置されている。円形歯車用クラッチ500は、シフター41を兼用することで、第1の歯車対16用の第1のクラッチと第2の歯車対17用の第2のクラッチとの両方の機能を実現している。第2の歯車対17の出力側歯車32と非円形歯車対18の出力側歯車34との間には、非円形歯車用クラッチ502のシフター45が配置されている。円形歯車用及び非円形歯車用クラッチ500,502のシフター41,45は、出力軸14に形成されたスプライン溝に摺動自在に支持されており、出力軸14に沿って軸方向には移動自在であるが、出力軸14に対する相対回転はできない状態であり、出力軸14と一体となって回転するようになっている。
【0075】
円形歯車用及び非円形歯車用クラッチ500,502のシフター41,45の外周面には、不図示のアクチュエータが嵌合する溝41x、45xが形成されている。円形歯車用クラッチ500のシフター41は、溝41xに嵌合する不図示のアクチュエータの駆動によって、図5に示した中間位置から、矢印41s,41tに示すように両側に移動する。非円形歯車用クラッチ502のシフター45は、溝45xに嵌合する不図示のアクチュエータの駆動によって、図5に示した待機位置から、矢印45tで示す片側だけに移動する。
【0076】
円形歯車用クラッチ500のシフター41は、第1の歯車対16の出力側歯車30に対向する側面と、第2の歯車対17の出力側歯車32に対向する側面に、所定のピッチで突起(ドグ)41a,41bが形成されている。第1の歯車対16の出力側歯車30と第2の歯車対17の出力側歯車32には、円形歯車用クラッチ500の構成要素として、円形歯車用クラッチ500のシフター41に対向する側面に、円形歯車用クラッチ500のシフター41の突起41a,41bに対応して、所定のピッチで凹部(ドグ穴)31,33が形成されている。矢印41s,41tで示す方向に円形歯車用クラッチ500のシフター41が移動したとき、円形歯車用クラッチ500のシフター41の突起41a,41bが、出力側歯車30,32の凹部31,33に嵌合し、円形歯車用クラッチ500のシフター41を介して出力軸14と出力側歯車30,32とが一体となって回転する。すなわち、入力軸12と出力軸14との間に第1又は第2の歯車対16,17が連結され、入力軸12から、第1又は第2の歯車対16,17を介して出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0077】
非円形歯車用クラッチ502のシフター45は、非円形歯車対18の出力側歯車34に対向する側面に、所定のピッチで突起(ドグ)45bが形成されている。非円形歯車対18の出力側歯車34には、非円形歯車用クラッチ502の構成要素として、非円形歯車用クラッチ502のシフター45に対向する側面に、非円形歯車用クラッチ502のシフター45の突起45bに対応して、所定のピッチで凹部(ドグ穴)35が形成されており、矢印45tで示す方向に非円形歯車用クラッチ502のシフター45が移動したとき、非円形歯車用クラッチ502のシフター45の突起45bが、非円形歯車対18の出力側歯車34の凹部35に嵌合し、非円形歯車用クラッチ502のシフター45を介して出力軸14と出力側歯車34とが一体となって回転する。すなわち、入力軸12と出力軸14との間に非円形歯車対18が連結され、入力軸12から、非円形歯車対18を介して出力軸14に、回転角度を正確に伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。
【0078】
次に、この変速機10の動作について、図6~図7を参照しながら説明する。
【0079】
図6(a)に示すように、円形歯車用クラッチ500のシフター41が矢印41sで示す方向に移動して第1の歯車対16の出力側歯車30に嵌合し、非円形歯車用クラッチ502のシフター45が待機位置にあるとき、入力軸12と出力軸14との間には、第1の歯車対16のみが連結される。このとき、回転角度及び動力は、図において破線で示すように、入力軸12から第1の歯車対16の入力側歯車20、出力側歯車30、円形歯車用クラッチ500のシフター41を介して、出力軸14に伝達され、減速比はRとなる。
【0080】
減速比をRからRに切り替える場合には、まず、図6(b)に示すように、非円形歯車対18の減速比がRになる状態で、非円形歯車用クラッチ502のシフター45が矢印45tで示す方向に移動して非円形歯車対18の出力側歯車34に嵌合し、入力軸12と出力軸14との間に、第1の歯車対16と非円形歯車対18とが連結される。このとき、回転角度及び動力は、図において破線で示すように、入力軸12から、(a)第1の歯車対16の入力側歯車20、出力側歯車30、円形歯車用クラッチ500のシフター41を介して、及び(b)非円形歯車対18の入力側歯車24、出力側歯車34、非円形歯車用クラッチ502のシフター45を介して、出力軸14に伝達される。
【0081】
次いで、非円形歯車対18の減速比がRから変化する前に、図6(c)に示すように、円形歯車用クラッチ500のシフター41が中間位置に移動し、第1の歯車対16の出力側歯車30との嵌合が解除され、入力軸12と出力軸14との間に、非円形歯車対18のみが連結される。このとき、回転角度及び動力は、図において破線で示すように、入力軸12から、非円形歯車対18の入力側歯車24、出力側歯車34、非円形歯車用クラッチ502のシフター45を介して、出力軸14に伝達される。そして、非円形歯車対18のみが連結された状態で、非円形歯車対18の減速比がRからRに変化する。
【0082】
次いで、非円形歯車対18の減速比がRになると、図7(d)に示すように、円形歯車用クラッチ500のシフター41が矢印41tで示す方向に移動して第2の歯車対17の出力側歯車32に嵌合し、入力軸12と出力軸14との間に、第2の歯車対17と非円形歯車対18とが連結される。このとき、回転角度及び動力は、図において破線で示すように、入力軸12から、(a)第2の歯車対17の入力側歯車22、出力側歯車32、円形歯車用クラッチ500のシフター41を介して、及び(b)非円形歯車対18の入力側歯車24、出力側歯車34、非円形歯車用クラッチ502のシフター45を介して、出力軸14に伝達される。
【0083】
次いで、非円形歯車対18の減速比がRから変化する前に、図7(e)に示すように、非円形歯車用クラッチ502のシフター45が待機位置に移動し、非円形歯車対18の出力側歯車34との嵌合が解除され、入力軸12と出力軸14との間に、第2の歯車対17のみが連結される。このとき、回転角度及び動力は、図において破線で示すように、入力軸12から、第2の歯車対17の入力側歯車22、出力側歯車32、円形歯車用クラッチ500のシフター41を介して、出力軸14に伝達され、一定の減速比Rとなり、減速比の切り替えが完了する。
【0084】
次に、具体的な設計例について説明する。
【0085】
ここでは、簡単のため、非円形歯車対18の減速比は最大値Rと最小値Rとの間で変化し、非円形歯車対18の減速比の平均が1(入力側歯車24が1回転すると、出力側歯車34も1回転する)であるとする。また、非円形歯車対18は、減速比がR(又はR)となる噛み合い区間の中心位置で噛み合う状態から、入力軸12がπ(ラジアン)回転すると、減速比がR(又はR)となる噛み合い区間の中心位置で噛み合う状態となるとする。
【0086】
(1)減速比がRからRに変わる過程、(2)減速比がRからRに変わる過程、(3)減速比がRで一定、(4)減速比がRで一定の各状態において、入力軸12がπ(ラジアン)回転すると、入力軸12、出力軸14、第1及び第2の歯車対16,17の出力側歯車30,32、非円形歯車対18の出力側歯車34の回転角は次の表1のようになる。
【表1】
JP0004918705B2_000002t.gif

【0087】
出力軸14と各出力側歯車30,32,34との位相差は、出力軸14を基準とすると、表1の各出力側歯車30,32,34の回転角から出力軸14の回転角を差し引いた値であり、次の表2のようになる。
【表2】
JP0004918705B2_000003t.gif

【0088】
ここで、次の状態を想定する。mLH、mHL、m、mは全て整数である。
(a)減速比をRからRに変えることをmLH回行う。すなわち、「R→R変化過程」の状態で入力軸12が回転した角度の合計は、π・mLHである。
(b)減速比をRからRに変えることをmHL回行う。すなわち、「R→R変化過程」の状態で入力軸12が回転した角度の合計は、π・mHLである。
(c)減速比がR一定の状態で、入力軸12が回転した角度の合計は、π・mである。
(d)減速比がR一定の状態で、入力軸12が回転した角度の合計は、π・mである。
この場合、制約条件は、mLH=mHL、mHL-1、mHL+1のいずれかである。
【0089】
表2の各項目に、上記(a)~(d)を考慮して、mLH、mHL、m、mを掛け合わせて加算すると、次の値が求まる。
(i)出力軸14と第1の歯車対16の出力側歯車30との位相差の合計Kは、
=π(1/R-1)mLH+π(1/R-1)mHL+π(1/R-1/R)m
(ii)出力軸14と第2の歯車対17の出力側歯車32との位相差の合計Kは、
=π(1/R-1)mLH+π(1/R-1)mHL+π(1/R-1/R)m
(iii)出力軸14と非円形歯車対18の出力側歯車34との位相差の合計KLHは、
LH=π(1-1/R)m+π(1-1/R)m
【0090】
ここで、第2の歯車対をON/OFFするためのクラッチ500の突起41b(ドグ穴33)の個数をnとする。突起(ドグ穴)は、一つの円周上に等間隔に位置しているとする。例えば、K/(2π)が、どんなmLH、mHL、m、mに対しても、(整数)/nとなれば、クラッチ500の突起41bとドク穴33を嵌合させることが可能となるので、第2の歯車対17の出力側歯車32について、ドグクラッチが使える。この場合、次の式を満たせばよい。
(整数)/n=K/(2π)
=(1/2){(1/R-1)mLH+(1/R-1)mHL
+(1/R-1/R)m} ・・・(1)
【0091】
ここで、具体的な一例を取り上げる。すなわち、初期状態として、非円形歯車対18が、非円形歯車対18の減速比がRとなる噛み合い区間の中心位置で噛み合う状態にあるとする。また、この時、どのクラッチも、突起とドグ穴を嵌合させることが可能であるとする。さらに、入力軸12と出力軸14との間に第1の歯車対16のみが連結され、減速比がRで一定の状態での回転から開始する場合を取り上げる。
【0092】
ここで、次の状態を想定する。mLH、mHL、m、mは全て整数であり、さらにm、mは偶数、すなわち、m=2m'、m=2m'(m',m'は整数)である。
(a)減速比をRからRに変えることをmLH回行う。すなわち、「R→R変化過程」の状態で入力軸12が回転した角度の合計は、π・mLHである。
(b)減速比をRからRに変えることをmHL回行う。すなわち、「R→R変化過程」の状態で入力軸12が回転した角度の合計は、π・mHLである。
(c)減速比がR一定の状態で、入力軸12が回転した角度の合計は、π・2m'である。
(d)減速比がR一定の状態で、入力軸12が回転した角度の合計は、π・2m'である。
この場合、制約条件は、mLH=mHL、mHL-1のいずれかである。
【0093】
表2の各項目に、上記(a)~(d)を考慮して、mLH、mHL、2m'、2m'を掛け合わせて加算すると、次の値が求まる。
(i)出力軸14と第1の歯車対16の出力側歯車30との位相差の合計Kは、
=π(1/R-1)mLH+π(1/R-1)mHL+2π(1/R-1/R)m'
(ii)出力軸14と第2の歯車対17の出力側歯車32との位相差の合計Kは、
=π(1/R-1)mLH+π(1/R-1)mHL+2π(1/R-1/R)m'
(iii)出力軸14と非円形歯車対18の出力側歯車34との位相差の合計KLHは、
LH=2π(1-1/R)m'+2π(1-1/R)m'
【0094】
ここで、第2の歯車対をON/OFFするためのクラッチ500の突起41b(ドグ穴33)の個数をnとする。突起(ドグ穴)は、一つの円周上に等間隔に位置しているとする。例えば、K/(2π)が、どんなmLH、mHL、m'、m'に対しても、(整数)/nとなれば、クラッチ500の突起41bとドク穴33を嵌合させることが可能となるので、第2の歯車対17の出力側歯車32について、ドグクラッチが使える。この場合、次の式を満たせばよい。
(整数)/n=K/(2π)
=(1/2){(1/R-1)mLH+(1/R-1)mHL
+2(1/R-1/R)m'} ・・・(1')
【0095】
上述の式(1)あるいは式(1')について可能な解の一例として、
(a)n=2n'(n'は整数。すなわち、nは偶数)であり、かつ、
(b)1/R、1/Rともに(整数)/n'で表現できる
場合が考えられる。
【0096】
例えば、
(1)n'=10、n=20、1/R=8/10、1/R=12/10
(2)n'=10、n=20、1/R=8/10、1/R=14/10
であれば、式を満たす。
【0097】
(1)の解は、(1/R+1/R)/2=1の例である。(2)の解は、(1/R+1/R)/2≠1の例である。(2)については、非円形歯車対18の減速比の平均が1となるように、例えば、非円形歯車対18の減速比Rの区間は短く、減速比Rの区間は長くする。
【0098】
したがって、ドグクラッチを用いて変速機10を構成することが可能である。
【0099】
非円形歯車対18の減速比の平均が2(入力側歯車24が2回転すると、出力側歯車34が1回転する)、3(入力側歯車24が3回転すると、出力側歯車34が1回転する)、4、5、・・・の場合も同様に、ドグクラッチを用いて変速機10を構成することが可能である。例えば、減速比Rの区間と減速比Rの区間とを1組有する入力側歯車24と、減速比Rの区間と減速比Rの区間とを2組有する出力側歯車34とを用いて、非円形歯車対18の減速比の平均を2とすることができる。また、減速比Rの区間と減速比Rの区間とを1組有する入力側歯車24と、減速比Rの区間と減速比Rの区間とを3組有する出力側歯車34とを用いて、非円形歯車対18の減速比の平均を3とすることができる。
【0100】
<作製例> 実施例1の作製例について、説明する。
【0101】
第1及び第2の歯車対に用いた歯車の諸元を、次の表3に示す。第1の歯車対では、歯車(1)を入力側、歯車(2)を出力側とし、第2の歯車対では、歯車(1)を出力側、歯車(2)を入力側とした。第1及び第2の歯車対の減速比は、1.25、0.8である。
【表3】
JP0004918705B2_000004t.gif

【0102】
非円形歯車対は、同一形状の2つの非円形歯車を噛み合わせた。非円形歯車は、モジュール2、圧力角20°の工具を用いて、歯数36、0°±約38°の噛み合い区間の基準円半径が32mm、180°±約30°の噛み合い区間の基準円半径が40mmとなるように作製し、中心距離72mmで噛み合わせた。作製した非円形歯車対は、一方の非円形歯車の回転角度が0°±約38°の区間では減速比が1.25、180°±約30°の区間では減速比が0.8となる。
【0103】
第1及び第2の歯車対と非円形歯車対の出力側に、それぞれ、歯(突起)の数が200の噛み合いクラッチを設けた。
【0104】
作製例の変速機は、噛み合いクラッチをON/OFFすることにより、回転と動力を伝達しながら、減速比を円滑に切り換えることができた。
【0105】
<変形例1> 実施例1(図1参照)において、非円形歯車対18は、クラッチ44がOFFの状態のときには、無負荷状態で、減速比が増減しながら回転するため、非円形歯車24,34がバックラッシの範囲で相対運動をし、これによる振動が問題となる可能性がある。そのような場合には、外周面の軸直角断面がそれぞれの非円形歯車24,34のピッチ曲線と略一致する摺接部材を非円形歯車24,34に並列して設け(例えば、摺接部材を非円形歯車24,34に固定し)、摺接部材の外周面同士が常に摩擦接触しながら、摺接部材が非円形歯車24,34と一体となって回転するようにすればよい。これによって、非円形歯車24,34のバックラッシ分の自由な動きを、摺接部材の外周面同士の摩擦接触によってある程度制限して、振動・騒音を低減することができる。
【0106】
<変形例2> 実施例1(図1参照)において、非円形歯車対18は、質量のアンバランス等に起因する振動が発生する可能性がある。このような振動は、減速比を変化させる過程においてクラッチ44がONの状態のときには避けられないが、一定の減速比で回転するとき、すなわち、クラッチ44がOFFの状態のときには、非円形歯車対18が回転しないようにすることで回避することができる。
【0107】
例えば図10に示す変速機110のように、図1の実施例1の構成に加え、非円形歯車対18の一方の歯車(入力側歯車)24と入力軸12との間にもクラッチ144を設ける。そして、一定の減速比で回転するときには、クラッチ44,144をOFFにして、非円形歯車対18への入力軸12と出力軸14の両方からの回転の伝達を遮断するとともに、不図示のブレーキを作動させて非円形歯車対18の回転を停止させる。これによって、非円形歯車対18の回転に起因する振動が発生しないようにすることができる。
【0108】
一方、減速比を変化させる場合には、クラッチ144をONにした後、実施例1と同様にクラッチ40,42,44を動作させる。クラッチ144のONにより、停止していた非円形歯車対18が回転するようにしてもよいが、クラッチ144がOFFの状態で、不図示のモータ等によって非円形歯車対18を回転駆動し、非円形歯車対18の一方の歯車(入力側歯車)24の回転速度が入力軸12の回転速度と略一致した後、クラッチ144をONにするようにしてもよい。前者の場合には、クラッチ144の駆動側と被動側の回転速度に差があるため、クラッチ144には摩擦クラッチを用いることが必要となる可能性があるが、後者の場合には、クラッチ144に三角形の歯を有する歯形クラッチ等を用いて、正確に回転角度を伝達することが可能である。
【0109】
また、非円形歯車対18の位相を検出するための不図示のセンサを設け、不図示の制御装置に検出信号を入力するようにする。これによって、制御装置は、クラッチ144をONにした後の非円形歯車対18の位相に応じてクラッチ40,42,44のアクチュエータを作動させ、減速比の切り替え制御を行うことができる。
【0110】
<実施例2> 実施例2について、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0111】
図8の機構図に模式的に示すように、実施例2の変速機50は、入力軸52と、出力軸54と、第1の歯車対55と、第2の歯車対56と、第3の歯車対57と、第1の非円形歯車対58と、第2の非円形歯車対59と、クラッチ80,82,84,86,88とを備えている。第1~第3の歯車対55,56,57の減速比は、それぞれ、R,R,Rであり、R>R>Rである。
【0112】
各歯車対55~59は、それぞれ、一対の歯車60,70;62,72;64,74;66,76;68,78が噛み合う。
【0113】
入力軸52には、各歯車対55~59の一方の歯車(入力側歯車)60,62,64,66,68が固定され、入力側歯車60,62,64,66,68は入力軸52と一体となって回転する。
【0114】
出力軸54には、各歯車対55~59の他方の歯車(出力側歯車)70,72,74,76,78が、相対回転可能な状態で支持されている。出力側歯車70,72,74,76,78は、クラッチ80,82,84,86,88により、解除可能に出力軸54に結合される。すなわち、クラッチ80,82,84,86,88がつながっているONのときには、対応する出力側歯車70,72,74,76,78は出力軸54に対して結合され、結合された出力側歯車70,72,74,76,78と出力軸54とは一体となって回転する。クラッチ80,82,84,86,88が切れているOFFのときには、出力側歯車70,72,74,76,78は、出力軸54の軸方向の移動が拘束されながら、出力軸54に対して相対回転可能となる。
【0115】
図9に模式的に示すように各歯車対55,56,57,58,59の歯車60,70;62,72;64,74;66,76;68,78をピッチ円あるいはピッチ曲線で表し、歯面の図示を省略すると、第1~第3の歯車対55,56,57は、対をなす歯車60,70;62,72;64,74のピッチ円60p,70p;62p,72p;64p,74pが互いに接する円形歯車である。
【0116】
第1の非円形歯車対58の対をなす歯車66,76は非円形歯車であり、ピッチ曲線は、図9(a)に示すように、減速比Rの第3の歯車対57のピッチ円64p,74pの円弧と等しい第1の区間101,111と、減速比Rの第2の歯車対56のピッチ円62p,72pの円弧と等しい第3の区間103,113と、減速比Rの第1の歯車対55のピッチ円60p,70pの円弧と等しい第5の区間105,115と、減速比がRとRとの間で変化する第2の区間102,112と、減速比がRとRとの間で変化する第4の区間104,114と、減速比がRとRとの間で変化する第6の区間106,116とを有する。第1の非円形歯車対58は、図9(a)において矢印で示す方向に回転するとき、各区間101,111;102,112;103,113;104,114;105,115;106,116の順に噛み合う。すなわち、第1の非円形歯車対58の減速比は、R→R→Rと変化する状態が繰り返される。
【0117】
第2の非円形歯車対59の対をなす歯車68,78は非円形歯車であり、ピッチ曲線は、図9(b)に示すように、減速比Rの第3の歯車対57のピッチ円64p,74pの円弧と等しい第1の区間201,211と、減速比Rの第1の歯車対55のピッチ円60p,70pの円弧と等しい第3の区間203,213と、減速比Rの第2の歯車対56のピッチ円62p,72pの円弧と等しい第5の区間205,215と、減速比がRとRとの間で変化する第2の区間202,212と、減速比がRとRとの間で変化する第4の区間204,214と、減速比がRとRとの間で変化する第6の区間206,216とを有する。第2の非円形歯車対59は、図9(b)において矢印で示す方向に回転するとき、各区間201,211;202,212;203,213;204,214;205,215;206,216の順に噛み合う。すなわち、第2の非円形歯車対59の減速比は、R→R→Rと変化する状態が繰り返される。
【0118】
第1の非円形歯車対58は、減速比をRからRに切り替える場合と、減速比をRからRに切り替える場合とに用いる。減速比をRからRに切り替える場合には、例えば、まず減速比をRからRに切り替え、次いで減速比をRからRに切り替えるようにする。
【0119】
例えば、減速比をRからRに切り替える場合には、減速比Rの第3の歯車対57のクラッチ84がONの状態で、第1の非円形歯車対58の減速比がRからRに変化する第6の区間106,116を通過し、一定の減速比Rとなる第1の区間101,111に入ったら、減速比Rの第3の歯車対57のクラッチ84に加え、第1の非円形歯車対58のクラッチ86をONにする。そして、第1の区間101,111において第1の非円形歯車対58のクラッチ86がONになった後、かつ、第1の非円形歯車対58の減速比がRからRに変わる第2の区間102,112に入る前に、減速比Rの第3の歯車対57のクラッチ84をOFFにする。その後、第1の非円形歯車対58の減速比がRからRに変わる第2の区間102,112では、第1の非円形歯車対58のクラッチ86のみがONである。
【0120】
第1の非円形歯車対58の噛み合いが、第2の区間102,112を通過して、一定の減速比Rとなる第3の区間103,113に入ったら、減速比Rの第2の歯車対56のクラッチ82をONにする。そして、第2の歯車対56のクラッチ82がONになった後、かつ、第1の非円形歯車対58の減速比がRからRに変化する第4の区間104,114に入る前に、第1の非円形歯車対58のクラッチ86をOFFにする。
【0121】
一方、第2の非円形歯車対59は、減速比をRからRに切り替える場合と、減速比をRからRに切り替える場合とに用いる。減速比をRからRに切り替える場合には、例えば、まず減速比をRからRに切り替え、次いで減速比をRからRに切り替えるようにする。
【0122】
一定の減速比となる区間を3つ以上有し、それらの減速比が異なる非円形歯車対が1つだけの場合、例えば図8において非円形歯車対59がなく、非円形歯車対58のみがある場合は、減速比をRからRに変化させる際に、R→R→Rと減速比が変化する過程が必要となる。このため、回転しながら減速比を変えると、回転速度の増加と減少が発生するため、問題となる場合もある。これに対し、図8、図9のように減速比を大きくする場合と小さくする場合とで異なる非円形歯車対58,59を用いることにより、いずれの場合においても、円滑に減速比を切り替えることができる。
【0123】
クラッチの一部には、ワンウェイクラッチを用いることができる。ワンウェイクラッチは、ある方向の回転を正方向回転とする場合に、入力側が出力側よりも正方向に速く回転しようとするときにONになり、入力側の回転を出力側に伝達し、入力側と出力側とは同じ回転速度で回転する。一方、入力側が出力側よりも正方向に遅く回転する場合は、ワンウェイクラッチはOFFになり、入力側と出力側はそれぞれの回転速度で回転する。
【0124】
例えば、減速比が最も大きい歯車要素対について、出力側歯車と出力部材(出力軸)の間にワンウェイクラッチを用いる。この場合、ワンウェイクラッチがONになった状態、すなわち、変速機の減速比が最も大きい状態で変速機の減速比を切り換えると、減速比が小さくなるため出力部材の回転速度が増し、ワンウェイクラッチの出力側の回転が入力側よりも速くなり、ワンウェイクラッチは自動的にOFFとなる。逆に、変速機の減速比を最も大きくする場合、減速比の切り換えに用いた非円形歯車要素対のクラッチをOFFにした段階で、ワンウェイクラッチは自動的にONになる。最も減速比が大きい歯車要素対についてクラッチのON/OFFが自動的に行われるので、クラッチ制御を簡単にすることができる。
【0125】
非円形歯車要素対については、ON/OFFの切り換えを制御できる主クラッチと直列にワンウェイクラッチを結合すれば、先に主クラッチをONにしておき、ワンウェイクラッチが適宜なタイミングで自動的にONになるようにしたり、ワンウェイクラッチが適宜なタイミングでOFFになった後に主クラッチをOFFにすることができ、クラッチのON/OFFの切り換えタイミングの制御が容易になる。
【0126】
例えば、減速比がR,R(R>R)の間で変化する非円形歯車要素対について、出力側歯車と出力部材(出力軸)との間に、主クラッチと直列にワンウェイクラッチを結合したものを用いる。
【0127】
この場合、変速機の減速比をRからRに切り換えた後、すなわち、非円形歯車要素対の主クラッチがONになり、変速機の減速比がRからRに変化し、減速比がRの歯車要素対用のクラッチがONになった後、非円形歯車要素対用の主クラッチをOFFにするタイミングが遅れても、非円形歯車要素対の減速比がRよりも大きくなると非円形歯車要素対用のワンウェイクラッチが自動的にOFFとなる。したがって減速比をRからRに切り換える際に、非円形歯車要素対用の主クラッチをOFFにする制御が容易になる。
【0128】
変速機の減速比をRからRに切り換える際に、非円形歯車要素対用の主クラッチをONにするタイミングが早すぎ、非円形歯車要素対の減速比がRでないときにONになっても、ワンウェイクラッチは自動的にOFFになる。その後、非円形歯車要素対の減速比がRとなり、減速比がRの歯車要素対用のクラッチをOFFにすると、ワンウェイクラッチは自動的にONになる。したがって、減速比をRからRに切り換える際に、非円形歯車要素対用の主クラッチをONにする制御が容易になる。
【0129】
上述したワンウェイクラッチを設ける構成を組み合わせてもよい。例えば、減速比が最も大きい歯車要素対については出力側歯車と出力部材(出力軸)の間にワンウェイクラッチを用い、非円形歯車要素対については出力側歯車と出力部材(出力軸)の間にON/OFFの切り換えを制御できる主クラッチと直列にワンウェイクラッチを結合したものを用いる構成としてもよい。
【0130】
なお、変速機の回転方向が正逆の2方向である場合には、ワンウェイクラッチの一種である両方向型ワンウェイクラッチ(例えば、ツーウェイクラッチと呼ばれるもの等)を用いてもよい。ある種の両方向型ワンウェイクラッチは、例えば、入力側と出力側がともに正方向に回転する場合も、逆にともに逆方向に回転する場合も、入力側の回転速度の絶対値が出力側の回転速度の絶対値よりも大きくなろうとするとONになり、入力側と出力側が同じ速度で回転する。一方、入力側の回転速度の絶対値が出力側の回転速度の絶対値よりも小さい場合はOFFになり、入力側と出力側はそれぞれの速度で回転する。
【0131】
<実施例3> 実施例3の変速機50aについて、図11を参照しながら説明する。
【0132】
実施例3の変速機50aは、実施例2の変速機50と略同様に構成されている。以下では、実施例2との相違点を中心に説明し、同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0133】
実施例3の変速機50aは、第1~第3の歯車対55,56,57と第1及び第2の非円形歯車対58,59との間に、増減速装置69,79が設けられている。
【0134】
すなわち、入力軸52a及び出力軸54aは、第1~第3の歯車対55,56,57が配置されている第1部分52s,54sと、第1及び第2の非円形歯車対58,59が配置されている第2部分52t,54tとに分割され、第1部分52s,54sと第2部分52t,54tとの間が増減速装置69,79を介して回転伝達可能に結合されている。
【0135】
ここで、入力側増減速装置69の減速比を、入力軸52aの第1部分52sの回転速度Ni1と入力軸52aの第2部分52tの回転速度Ni2とを用いて、Ni1/Ni2と定義する。出力側増減速装置79の減速比を、出力軸54aの第2部分54tの回転速度No2と出力軸54aの第1部分54sの回転速度No1を用いて、No2/No1と定義する。出力側増減速装置79の減速比の定義は、No1/No2ではないことに留意する必要がある。
【0136】
例えば、増減速装置69,79により、非円形歯車対58,59側の回転速度を遅くすることができる。すなわち、入力軸52aの第1部分52sと第2部分52tの間に設けられた入力側増減速装置69の減速比をRとし、入力軸52aの第1部分52sの回転速度に対して、入力軸52aの第2部分52tの回転速度を遅くするとともに、出力軸54aの第2部分54tと第1部分54sとの間に設けられた出力側増減速装置79の減速比を1/Rとし、出力軸54aの第1部分54sの回転速度に対して、出力軸54aの第2部分54tの回転速度を遅くすることで、非円形歯車対58,59側の回転速度を遅くする。これによって、入力軸52aの第1部分52sの回転が高速であっても、実施例2と同様に、非円形歯車対58,59側の噛み合いによって減速比を変化させながら回転を伝達することができる。なお、増減速装置69,79に同じ構成の増減速装置を用い、一方で減速し、他方で増速してもよい。
【0137】
増減速装置69,79により、非円形歯車対58,59側の回転速度を速くすることも可能である。
【0138】
変速機50aの減速比は、増減速装置69,79と第1及び第2の非円形歯車対58,59とによって全体として切り換えればよいので、入力軸52a側に設ける増減速装置69の減速比Rinと、出力軸54a側に設ける増減速装置79の減速比Routとが、Rin×Rout=1とならなくても構わない。
【0139】
例えば、第1の歯車対55の減速比がR、第2の歯車対56の減速比がR、第1の非円形歯車対58のある区間の減速比がR'、第1の非円形歯車対58の他の区間の減速比がR'とすると、変速機50aの減速比を、RからR、又はRからRに切り換えることができるためには、次の2つの式を満たせばよい。
=Rin×R'×Rout
=Rin×R'×Rout
【0140】
実施例1、2の変速機では、入力が高速回転であると、クラッチの切り換え動作をすべき時間が短くなり、減速比の切り換えが困難になる場合がある。また、減速比が急激に変化し、衝撃が大きくなる場合がある。
【0141】
これに対し、実施例3の変速機50aは、入力が高速回転であっても、適宜な減速比の増減速装置69,79により非円形歯車対58,59の回転を遅くすることで、クラッチの切り換え動作をすべき時間を長くすることができるので、容易に減速比を変えることができる。また、減速比の急激な変化を緩和して、衝撃を低減することができる。
【0142】
逆に、入力が低速回転である場合には、適宜な減速比の増減速装置69,79により非円形歯車対58,59の回転を速くすることで、減速比の切り換えに要する時間を短縮することができる。
【0143】
また、非円形歯車対58,59や増減速装置69,79の設計や選択の自由度を高くすることも可能である。
【0144】
<まとめ> 以上に説明したように、本発明の変速機及び変速方法を用いると、回転を止めることなく負荷を支持しつつ減速比を変えることができ、正確に回転角度を伝達し、かつ動力を効率的に伝達することができる。本発明の変速機及び変速方法を用いると、減速比を変える際に、動力を効率的に伝達することができ、また、負荷を支持し続けることができるので、例えば、自転車、自動車、オートバイ等の駆動系に好適である。また、正確に回転角度を伝達できるので、例えば、ロボット、工作機械など、回転角度の制御を精度よく行う必要がある駆動系に好適である。
【0145】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0146】
例えば、クラッチは、入力軸側に設けてもよい。減速する場合に入力軸側にクラッチを設けると、出力軸側にクラッチを設ける場合よりもトルク容量の小さいクラッチを用いることができる点では、好ましい。あるいは、歯車対ごとに、出力軸側又は入力軸側にクラッチを設けてもよい。また、出力軸側と入力軸側の両方にクラッチを設けてもよい。
【0147】
クラッチは、ドグクラッチ以外のタイプのクラッチを用いてもよい。電磁クラッチのように、クラッチとアクチュエータが一体化したものを用いてもよい。電気粘性流体を用いたクラッチや、磁気粘性流体を用いたクラッチを用いてもよい。
【0148】
非円形歯車要素対は、回転に対し減速比が緩やかに変化するものだけではなく、急激な減速比の変化があるものでもよい。
【0149】
非円形歯車要素の質量のアンバランスによる振動を低減するために、バランスウェイトを付けてもよい。
【0150】
また、変速機の減速比は1以外でもよいが、非円形歯車要素対が噛み合う必要があるので、減速比は整数、例えば2、3、4、5、6、7・・とすることが可能である。この場合でも、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチを用いることができる。本発明の変速機は、減速する場合だけでなく、増速する場合、すなわち、入力軸よりも出力軸の回転速度が高い場合にも用いることができる。この場合でも、ドグクラッチ等の噛み合いクラッチを用いることができる。
【0151】
また、3組の歯車要素対と2組の非円形歯車要素対とを用いる場合、実施例2と異なり、例えば、第1の非円形歯車要素対は、小減速比と中減速比となる噛み合い区間があり、第2の非円形歯車要素対は、大減速比と中減速比となる噛み合い区間があるようにしておき、小減速比から中減速比、中減速比から小減速比に変えるときには第1の非円形歯車要素対を用い、大減速比から中減速比、中減速比から大減速比に変えるときには第2の非円形歯車要素対を用いるようにしてもよい。
【0152】
また、1速、2速、3速、4速、5速の5つの減速比(1速、2速、3速、4速、5速の順に減速比は小さくなるとする。すなわち、1速は大減速比で、5速は小減速比である。)を切り替える変速機の場合には、例えば、ある方向に回転するときに減速比が1速、2速、3速の順に変化する第1の非円形歯車要素対と、3速、2速、1速の順に変化する第2の非円形歯車要素対と、3速、4速、5速の順に変化する第3の非円形歯車要素対と、5速、4速、3速の順に変化する第4の非円形歯車要素対とを用いることができる。あるいは、減速比が1速と2速との間で変化する第1の非円形歯車要素対と、2速と3速との間で変化する第2の非円形歯車要素対と、3速と4速との間で変化する第3の非円形歯車要素対と、4速と5速との間で変化する第4の非円形歯車要素対とを用いることもできる。さらには、ある方向に回転するときに減速比が1速、2速、3速、4速、5速の順に変化する第1の非円形歯車要素対と、5速、4速、3速、2速、1速の順に変化する第2の非円形歯車要素対とを用いることも可能である。
【0153】
入力部材及び出力部材の第1部分と第2部分との間に入力側及び出力側増減速装置を設ける場合、非円形歯車要素対が1組のみであれば、非円形歯車要素対用クラッチは、入力部材又は出力部材の第2部分と非円形歯車要素対との間以外に、入力側又は出力側増減速装置と入力部材又は出力部材の第2部分との間、入力側又は出力側増減速装置内、入力側又は出力側増減速装置と入力部材又は出力部材の第1部分との間などに設けることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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