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明細書 :リン酸カルシウム類からなるカプセルおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4506067号 (P4506067)
公開番号 特開2004-081754 (P2004-081754A)
登録日 平成22年5月14日(2010.5.14)
発行日 平成22年7月21日(2010.7.21)
公開日 平成16年3月18日(2004.3.18)
発明の名称または考案の名称 リン酸カルシウム類からなるカプセルおよびその製造方法
国際特許分類 A61J   3/07        (2006.01)
A61K   9/50        (2006.01)
A61K  47/02        (2006.01)
B01J  13/04        (2006.01)
FI A61J 3/07 F
A61J 3/07 M
A61K 9/50
A61K 47/02
B01J 13/02 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2002-277662 (P2002-277662)
出願日 平成14年9月24日(2002.9.24)
優先権出願番号 2002190860
優先日 平成14年6月28日(2002.6.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年9月26日(2005.9.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】安達 稔
【氏名】武内 勇
【氏名】小澤 尚志
【氏名】八尾 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100104673、【弁理士】、【氏名又は名称】南條 博道
審査官 【審査官】松田 長親
参考文献・文献 特開平10-202093(JP,A)
特開平04-224512(JP,A)
調査した分野 A61J 3/07
A61K 9/50
B01J 13/04
特許請求の範囲 【請求項1】
微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(1)カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させ、該カプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて微細孔を有する被覆層を形成させる工程であって、該被覆層の形成を30~40℃で行う工程;および(3)該被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層に内包されるカプセル原型体を除去し、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを回収する工程;を含む、方法。
【請求項2】
微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(i)一組の型のそれぞれの内表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させ、該内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程であって、該被覆層の形成を30~40℃で行う工程;(ii)該一組の型を組み合わせて(i)で得られた一組の被覆層を接合させる工程;および(iii)該一組の型から、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程;を含む、方法。
【請求項3】
所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(1)所望の物質を内包するカプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させ、該カプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;および(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程であって、該被覆層の形成を30~40℃で行う工程;を含む、方法。
【請求項4】
所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(1)所望の物質を内包するカプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させ、該カプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程であって、該被覆層の形成を30~40℃で行う工程;および(3)前記被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解する工程;を含む、方法。
【請求項5】
所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(i)一組の型の、それぞれの内表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させ、該内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程であって、該被覆層の形成を30~40℃で行う工程;(ii)該形成された被覆層上に所望の物質を配置する工程;(iii)該配置した所望の物質を内包するように、該一組の被覆層を接合させる工程;および(iv)該一組の型から、接合された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程;を含む、方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルおよびその製造方法に関する。さらに、本発明は、このカプセルに所望の物質が充填されたカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウム類は生体物質(例えば、DNA、蛋白質、骨など)、細胞、微生物などに高い親和性を有していることが知られている。リン酸カルシウム類の中でもアパタイト類は生体親和性を持ち、特にヒドロキシアパタイト類は高い親和性を持つ。さらに、ヒドロキシアパタイトはコラーゲンとともに生体の骨を構成する無機質成分として知られている。ヒドロキシアパタイトは生体成分であること、生体との高い親和性があることなどから、生体適合性を有する機能性材料(例えば、人工歯、人工骨などの材料)として注目を浴びている。
【0003】
ヒドロキシアパタイト類から、電子素子あるいは生体適合材料を得る方法として、(1)基材上にヒドロキシアパタイト層を形成させる領域とヒドロキシアパタイト層を形成させない領域とを区分し、ヒドロキシアパタイト層を形成させない領域を被覆材で被覆し、(2) ヒドロキシアパタイト層を形成させ、ついで(3)被覆材を除去する方法が記載されている(特許文献1)。この方法は、任意の形状のパターンを基材上に形成するための優れた方法である。しかし、この方法で得られる構造体は、ヒドロキシアパタイトと基材との組合せからなる構造体であり、ヒドロキシアパタイトのみからなる、所望の構造体ではない。このように、未だ、リン酸カルシウム類からなる構造体、特に微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られていない。
【0004】
【特許文献1】
特開2001-294411号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
リン酸カルシウム類からなる所望の構造体、特に微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを形成することができれば、得られるカプセルは、生体適合材料として、例えば、所望の部位への薬剤送達システムなどの医療への適用に留まらず、建築などの分野への適用の可能性が期待される。そこで、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを提供する。
【0007】
好ましい実施態様においては、カプセル内に所望の物質が内包されている。
【0008】
また、本発明は、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(1)カプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および(3)該被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層に内包されるカプセル原型体を除去し、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを回収する工程;を含む、方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(a)リン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体を作成する工程;(b)該カプセル原型体の内表面にリン酸カルシウム類を析出させて微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、(c)該被覆層が内表面に形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層が接するカプセル原型体を除去して、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを回収する工程;を含む、方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(i)一組の型のそれぞれの内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程;(ii)該一組の型を組み合わせて(i)で得られた一組の被覆層を接合させる工程;および(iii)該一組の型から、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程;を含む、方法を提供する。
【0011】
好ましい実施態様においては、前記方法において、リン酸カルシウム類形成溶液がリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を含む。
【0012】
本発明は、また、所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(1)所望の物質を内包するカプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、必要に応じて、(3)該被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解する工程;を含む、方法を提供する。
【0013】
本発明は、さらに、所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(a)所望の物質を含有するリン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体を作成する工程;(b)該カプセル原型体の内表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、必要に応じて、(c)該被覆層が内表面に形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層が接するカプセル原型体を除去する工程;を含む、方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルの製造方法であって、(i)一組の型の、それぞれの内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程;(ii)該形成された被覆層上に所望の物質を配置する工程;(iii)該配置した所望の物質を内包するように、該一組の被覆層を接合させる工程;および(iv)該一組の型から、接合された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程;を含む、方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
(リン酸カルシウム類)
リン酸カルシウム類としては、第一リン酸カルシウム(Ca(HPO)、第二リン酸カルシウム(CaHPO)、第三リン酸カルシウム(Ca(PO)、リン酸四カルシウム(Ca(POO)、リン酸八カルシウム(Ca(PO)、ヒドロキシアパタイト類を含むアパタイト類、アモルファスリン酸カルシウムなどがあり、いずれも結晶水をもつものも含む。
【0016】
本発明で、ヒドロキシアパタイトは、化学式Ca10 (PO)(OH)で表される化合物をいう。ヒドロキシアパタイト類とは、ヒドロキシアパタイトまたはその構成元素が置換および/または欠損しているものをいう。ヒドロキシアパタイト類は、例えば、ヒドロキシアパタイトを構成する元素あるいは基の一部が、Na、Kなどの周期律表第I族の元素、Mg、Znなどの周期律表第II族の元素、F、Clなどの周期律表第VII族の元素;CO2-、HPO2-、SO2-などの基で置換されている。更に、希土類により置換されていてもよい。このようなヒドロキシアパタイト類は、リン酸カルシウム類を形成するための溶液(リン酸カルシウム類形成溶液)中に含まれる種々の元素あるいは基に由来する。
【0017】
(カプセル)
本発明で、微細孔を有するカプセルというときは、壁に微細孔を有する構造で囲まれた空間(中空部)を有する構造体をいう。この空間(中空部)は、外側を構成する微細孔よりも大きい空隙を意味する。カプセルには、球状、楕円球状などの球状カプセル、立方体、直方体、正八面体などの多角カプセル、管状のカプセル、ねじれを有するカプセル、あるいはこれらの組合せなど、複雑な三次元構造を有するカプセルも含まれる。微細孔を有するカプセルには、多孔質リン酸カルシウムで形成されたカプセルあるいは網目構造で囲まれた空間を有する構造体も含まれる。リン酸カルシウム類形成溶液から析出したリン酸カルシウム類は針状あるいは鱗片状の微結晶が互いに絡み合った構造をもつ。そのため本発明により得られるカプセルの壁には必ず微細孔が存在する。
【0018】
カプセルの大きさには、特に制限がなく、用途によって決定すればよい。好ましくは、一番長い(太い)部分が10mm~1nmであり、好ましくは1mm~10nm、特に好ましくは100μm~10nmである。薬剤送達システムとして使用する場合は、1mm~1μmであることが多い。
【0019】
本発明のリン酸カルシウム類からなるカプセルは、壁に微細孔を有する。壁に微細孔を有するため、カプセルの内部と外部の間で、物質の移動が自由にできる。例えば、カプセルに内包された物質が外部に環境条件に応じて移動する、周囲の物質が、微細孔を有するカプセル内部に入り、カプセルに内包された物質と反応するなど、目的に応じたカプセルの構成が可能となる。このような壁に微細孔を有する構造は、後述のように、リン酸カルシウム類の析出によって形成され、その形成条件(リン酸カルシウム類形成溶液の濃度、組成、種結晶の大きさ、反応温度、反応時間など)をコントロールすることにより、孔の大きさ、厚みなどが調節できる。孔の大きさを調節することにより、例えば、薬剤送達システムにおいては、薬物の放出時間の調整が可能となる。
【0020】
(リン酸カルシウム類形成溶液)
本発明の微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを製造するために、リン酸カルシウム類形成溶液が使用される。リン酸カルシウム類形成溶液は、カルシウムイオン(Ca2+)を0.02~25mM、リン酸水素イオン(HPO2-)を0.01~10mM含有し、pHが6~8であることが好ましい。より好ましくはカルシウムイオンを0.2~20mM、リン酸水素イオンを0.1~8mM含み、pHは6.8~7.6である。さらに好ましくは、カルシウムイオンを1.2~5mM、リン酸水素イオンを0.5~2mM含み、pHは7.2~7.5である。
【0021】
リン酸カルシウム類形成溶液の調製には、リン酸水素二カリウム・三水和物及び塩化カルシウムを用いることが好ましい。リン酸カルシウム類形成溶液のpHは、適切な緩衝液、例えばNHC(CHOH)を用い、更に塩酸のような酸を加えて調整することが好ましい。
【0022】
生体適合性に優れたリン酸カルシウム類を形成させるためには、カルシウムイオンとリン酸水素イオンに加えて、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム・六水和物、硫酸ナトリウムなどをさらに含む、いわゆる擬似体液とすることが好ましい。擬似体液を調製する場合、ナトリウムイオン(Na)を1.4~1420mM、カリウムイオン(K)を0.05~50mM、マグネシウムイオン(Mg2+)を0.01~15mM、塩素イオン(Cl)を1.4~1500mM、炭酸水素イオン(HCO)を0.04~45mM、硫酸イオン(SO2-)を5.0×10-3~5mM含有していてもよい。好ましくは、ナトリウムイオンを14~1140mM、カリウムイオンを0.5~40mM、マグネシウムイオンを0.1~12mM、塩素イオンを14.5~1200mM、炭酸水素イオンを0.4~36mM、硫酸イオンを0.05~4mM含む。より好ましくは、ナトリウムイオンを70~290mM、カリウムイオンを2.5~10mM、マグネシウムイオンを0.7~3.0mM、塩素イオン70~300mM、炭酸水素イオンを2.0~9.0mM、硫酸イオンを0.2~1.0mM含有していてもよい。
【0023】
最も好ましいリン酸カルシウム類形成溶液(擬似体液)は、無機成分の組成が、人体の血漿中の無機成分に類似し、ナトリウムイオンを142.0mM、カリウムイオンを5.0mM、マグネシウムイオンを1.5mM、カルシウムイオンを2.5mM、塩素イオンを148.8mM、炭酸水素イオンを4.2mM、リン酸水素イオンを1.0mM、硫酸イオンを0.5mM含む。
【0024】
本発明のリン酸カルシウム類形成溶液は、カプセル原型体または型へのヒドロキシアパタイトの析出、並びに結晶化の促進という観点から、リン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を含むことが好ましい。
【0025】
本発明ではカプセル原型体へのヒドロキシアパタイトの析出、並びに結晶化の促進という観点から、カプセル原型体または型表面にリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を付着させることが好ましい。
【0026】
リン酸カルシウム類の析出を誘起する物質としては、形成させるリン酸カルシウム類の種結晶を用いることができる。種結晶は、同一又は類似の結晶形もしくは原子間隔が類似した結晶形を有するものであれば、化学組成が目的とする相と異なっていてもよい。種結晶は、通常0.001~0.5μmの微細なものがよく、0.001~0.1μmが好ましく、その添加量は任意である。このような種結晶として、ミクロフィルタでろ過して通過したろ液中の微細結晶をそのまま用いてもよい。
【0027】
種結晶は、例えば、以下のようにして得ることができる。リン酸カルシウム類形成溶液中でCaO-SiO系ガラス粉末と樹脂フィルムを接触させ、例えば、数日間放置すると、フィルム表面にリン酸カルシウム類の微結晶が析出する、リン酸カルシウム類微結晶が析出した樹脂フィルムを、アセトンなどの溶媒で溶解する。溶媒中に残ったリン酸カルシウム類微結晶を回収し、種結晶とする。
【0028】
リン酸カルシウム類微結晶との接着性が悪い樹脂フィルム(例えばフッ素樹脂)を用いる場合には、蒸留水などの溶媒中で超音波振動を与えて樹脂フィルムからリン酸カルシウム類微結晶を剥落させてもよい。
【0029】
このように、リン酸カルシウム類形成溶液の外部に一旦取り出す、あるいはアセトンなどによる溶媒処理を行うなどの操作を行って得られるリン酸カルシウム類微結晶は、再びリン酸カルシウム類形成溶液に浸漬することによって、種結晶として働く。
【0030】
他のリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質としては、例えば、リン酸系ガラス、NaO-CaO-SiO-P系ガラス、NaO-KO-MgO-CaO-SiO-P-CaF系ガラス、MgO-CaO-SiO-P-CaF系結晶化ガラスなどの特定組成のガラス及び/又は結晶化ガラス、ウォラストナイトが好ましく用いられる。Si-OH基、Ti-OH基、Ta-OH基、PO基、COOH基などをその表面に有する物質も用いることができる。これらのリン酸カルシウム類の析出を誘起する物質は、微粒子化して用いる。
【0031】
リン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子のサイズは、一般には1nm~1mm、好ましくは1nm~100μm、より好ましくは10nm~10μmである。
【0032】
(カプセルの製造)
本発明のカプセルは、例えば、以下の第1~第3の方法によって作成されるが、この方法に制限されず、他の方法で作成されてもよい。
【0033】
第1方法は、(1)カプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および(3)該被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層に内包されるカプセル原型体を除去し、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを回収する工程;を含む方法である。
【0034】
この第1方法は、まず、カプセル原型体を、リン酸カルシウム類形成溶液中に、好ましくは、リン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を含むリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる。リン酸カルシウム類の析出を誘起する物質の微粒子を前もってカプセル原型体に付着させておいてもよい。カプセル原型体は、目的とするカプセルの形状に成形されている。例えば、微細球状のカプセルを作成する場合、微細球状の樹脂粒子を作成する。このような樹脂粒子は、懸濁重合などの方法で製造することができる。微細な管状のカプセルを作成する場合は、樹脂の微細フィラメントを作成し、これを切断して、樹脂成形体として用いる。また、微細な複雑な構造のカプセルの場合、このカプセルに対応する鋳型を形成し、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂(レジスト樹脂)を鋳型に流し、熱あるいは光で硬化させ、鋳型から取り出して、目的の樹脂成形体とすることができる。微細構造を有する複雑な形状の鋳型は、例えば、シリコン、アモルファスカーボンなどの基板上に集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、作成することができる。
【0035】
第1方法に用いられるカプセル原型体の材料としては、有機溶媒、酵素、アルカリあるいは弱酸に可溶性の、ポリマー、ポリマー前駆体、生体高分子、ゾル状あるいはゲル状の物質、金属、半導体、セラミックスなどが挙げられる。
【0036】
有機溶媒あるいはアルカリに可溶なポリマーとしては、熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂が用いられる。例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン類)、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、メタクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0037】
酵素に可溶なポリマーとしてはポリ乳酸などが挙げられる。
【0038】
ポリマー前駆体としては、不飽和ポリエステル樹脂重合前駆体が挙げられる。熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂の前駆体が好ましく用いられる。例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂などの重合前駆体が用いられる。
【0039】
生体高分子としては、タンパク質(例えば、コラーゲン)、多糖類が好ましく、さらに、藻類なども含む。
【0040】
ゾル状あるいはゲル状の物質としては、寒天、ゼリー、ところてん、粘膜など、さらには、金属酸化物、金属アルコキシドなどを用いて作成される物質が挙げられる。ゾル状あるいはゲル状の物質を調製するための金属としては、Si、Zn、Ti、Ge、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、In、Cd、Ta、Y、Baなどが挙げられる。ゾル状あるいはゲル状の物質としては、生体物質よりなるゾルあるいはゲル、有機高分子よりなるゾルあるいはゲルも含まれる。
【0041】
金属としては、アルミニウム、ガリウム、スズ、亜鉛などが用いられる。
【0042】
酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼなどが挙げられる。
【0043】
半導体、あるいはセラミックスは、有機溶媒、酵素、アルカリ、あるいは弱酸に可溶であれば、特に制限はない。
【0044】
有機溶媒としては、リン酸カルシウム類を溶解しない溶媒であれば、いずれの溶媒も用いられる。例えば、アセトン、トルエン、酢酸エチル、ヘキサンなどが挙げられる。
【0045】
得られたカプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる被覆層を形成させる。例えば、カプセル原型体を、リン酸カルシウム類形成溶液に浸漬して、10~80℃、好ましくは20~60℃、さらに好ましくは30~40℃で放置するか、緩やかに振盪あるいは攪拌することにより、リン酸カルシウム類がカプセル原型体の外表面に析出する。反応時間は、積層させるリン酸カルシウム類の厚み、細孔の大きさによって決定すればよい。透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、所望の大きさの微細孔が形成されたときに、リン酸カルシウム類形成溶液から抜き出すことにより、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる被覆層が外表面に形成されたカプセル原型体を得ることができる。
【0046】
なお、微細孔の大きさおよび形態は、リン酸カルシウム類形成溶液の組成、温度、反応時間などにより、調整できる。
【0047】
次に、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる被覆層が外表面に形成されたカプセル原型体を、その被覆層に内包されたカプセル原型体を溶解することができる有機溶媒、酵素、アルカリあるいは弱酸で処理する。この方法により、被覆層に内包されたカプセル原型体が溶解、除去され、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られる。
【0048】
第2方法は、(a)リン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体を作成する工程;(b)該カプセル原型体の内表面にリン酸カルシウム類を析出させて微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、(c)該被覆層が内表面に形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層が接するカプセル原型体を除去して、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを回収する工程;を含む、方法である。
【0049】
この第2方法は、比較的単純な構造のカプセルの製造に適している。カプセル原型体を用いる場合、第2方法も、有機溶媒、酵素、アルカリあるいは弱酸に溶解可能なカプセル原型体を用いる。この方法では、まず、リン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体を作成する。例えば、内側にリン酸カルシウム類形成溶液を、外側に溶媒に溶解した光重合性樹脂を射出する2重管ノズルを準備し、これらを2重管ノズルから共押出して水中に滴下させた後、光重合させて樹脂を硬化させることにより、リン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体が作成される。次に、これを、10~80℃、好ましくは20~60℃、さらに好ましくは30~40℃で、水性媒体中で適切な時間、放置、攪拌あるいは振盪することにより、カプセル原型体の内表面にリン酸カルシウム類を析出させる。サンプリングして、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、所望の大きさの孔をもつが形成されたときに、反応系から取り出し、微細孔を有する被覆層が内表面に形成されたカプセル原型体を得ることができる。
【0050】
リン酸カルシウム被覆層が形成されたカプセル原型体は、第1の方法の場合と同様、被覆層が接するカプセル原型体を溶解することができる有機溶媒、酵素、アルカリあるいは弱酸で処理する。この方法により、被覆層が接するカプセル原型体が溶解、除去され、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られる。
【0051】
第3方法は、(i)一組の型のそれぞれの内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程;(ii)該一組の型を組み合わせて(i)で得られた一組の被覆層を接合させる工程;および(iii)該一組の型から、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程;を含む、方法である。
【0052】
この第3方法は、例えば、紡錘状のカプセルを形成する場合に用いられる。まず、一組の型となる基材(例えば、樹脂フィルム)上に複数の円錐形のホールを同じ間隔で形成する。この円錐形のホールの内表面に、リン酸カルシウム類形成溶液を接触させ、円錐形状の、微細孔を有する被覆層を形成させる。必要に応じて、リン酸カルシウム類形成溶液を追加する。あるいは、特開2001-299411号公報記載の方法を応用して、型の基材上のリン酸カルシウム層を形成させない部分を被覆剤で覆い、型全体を形成溶液に浸漬してもよい。
【0053】
微細孔を有する被覆層が形成された一組の型を組み合わせ、微細孔を有する被覆層同士を接合させる。必要に応じてリン酸カルシウム類形成溶液に浸漬し、リン酸カルシウム類を成長させて互いに接合してもよい。このようにして、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる紡錘型のカプセルが形成される。
【0054】
一組の型の基材が、例えば、溶媒溶解性である場合は、第1方法と同様に、この一組の型を有機溶媒で溶解して、カプセルを回収する。あるいは、型の基材として、リン酸カルシウム類と親和性の低い樹脂(例えばフッ素樹脂)を用いた場合、あるいは金属などを用いた場合、例えば、超音波処理などによりカプセルを一組の型から剥離させる。このような操作で、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる紡錘型のカプセルが得られる。
【0055】
(カプセル内への所望の物質の内包)
上記用途に用いるために、本発明のカプセルに薬剤などの所望の物質を内包させる必要がある。所望の物質の内包は、カプセル形成後に行ってもよく、カプセル形成と同時に行っても良い。
【0056】
カプセル形成後に、所望の物質を内包する場合、例えば、真空法が好ましく用いられる。この方法は、例えば、所望の物質、または所望の物質を含む粉末あるいは液体などに、本発明のカプセルを投入して、いったん減圧し、次いで、常圧に戻すことにより、本発明のカプセルの内部に所望の物質が充填され、所望の物質を内包するカプセルが得られる。
【0057】
所望の物質を含む液体にカプセルを浸漬し、拡散により所望の物質をカプセル内に内包させることもできる。
【0058】
また、銀などの金属を内包させる場合には、硝酸塩などの可溶性の金属塩を上記の真空法、拡散などを用いてカプセル内に含浸させ、次いで光や還元剤により還元することにより、カプセル内部に内包することができる。
【0059】
所望の物質の内包を、カプセル形成と同時に行う場合、例えば、リン酸カルシウム類形成溶液に不溶性のカプセル原型体内に、所望の物質を予め内包し、これを用いてカプセルを形成させることにより、所望の物質を内包させた、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られる。すなわち、(1)所望の物質を内包するカプセル原型体をリン酸カルシウム類形成溶液中に分散させる工程;(2)該カプセル原型体の外表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、必要に応じて、(3)該被覆層が形成されたカプセル原型体を溶解する工程;を含む方法によって、所望の物質が内包されたカプセルを製造できる。例えば、所望の薬剤を内包した腸溶性カプセルをカプセル原型体として用い、この腸溶性カプセルの表面上にリン酸カルシウム類からなる構造体を形成させることにより、所望の物質を内包し、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られる。このカプセルは、腸内で優れた徐放性を発揮する。あるいは、生体適合性に優れることを利用して、所望の生体部位に埋設することもできる。
【0060】
あるいは、カプセル原型体を溶解する有機溶媒、酵素、アルカリ、あるいは弱酸に不溶な物質を内包させる場合には、所望の物質を内包したカプセル原型体上に微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなる構造を形成した後、カプセル原型体を溶解する。この方法により、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセル内に所望の物質を内包することができる。
【0061】
また、別の方法として、例えば、まず粗い孔(例えば、網目構造)を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを調製して、目的物質を内包させ、ついで、さらに孔を小さく(例えば、微細孔に)する方法が挙げられる。
【0062】
また、リン酸カルシウム類形成溶液に所望の物質を添加しておくことにより、カプセル内に所望の物質を内包することができる。すなわち、(a)所望の物質を含有するリン酸カルシウム類形成溶液が内包されたカプセル原型体を作成する工程;(b)該カプセル原型体の内表面にリン酸カルシウム類を析出させて該微細孔を有する被覆層を形成させる工程;および、必要に応じて、(c)該被覆層が内表面に形成されたカプセル原型体を溶解して該被覆層が接するカプセル原型体を除去する工程;を含む方法により、所望の物質が内包された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを製造できる。この場合も、必要に応じて、外表面にあるカプセル原型体を溶解すればよい。
【0063】
あるいは、(i)一組の型の、それぞれの内表面にリン酸カルシウム類形成溶液を接触させて、該内表面に微細孔を有する被覆層を形成させる工程;(ii)該形成された被覆層上に所望の物質を配置する工程;(iii)該配置した所望の物質を内包するように、該一組の被覆層を接合させる工程;および(iv)該一組の型から、接合された、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルを分離する工程によっても、カプセル内に所望の物質を内包することができる。
【0064】
(用途)
得られた微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセル(以下、単に本発明のカプセルという)は、種々の用途に用いられる。特に、リン酸カルシウム類は生体成分であるため、生体適合性に優れており、無害な薬剤送達システム(DDS)として、好ましく用いられる。リン酸カルシウム類は細胞膜を通過することができ、そして細胞内で溶解され得るので、細胞内に所望の物質を導入する目的にも使用することが可能である。また、食品用途、あるいは、コンクリートの崩壊防止などの建築用途にも用いられる。さらに、微細孔の大きさあるいはカプセルの大きさに応じて、細胞自体を導入することもできる。
【0065】
所望の物質としては、薬剤(例えば、制癌剤、抗癌剤など)、放射性物質、抗体、抗酸化剤、治療目的のための磁性体、骨形成促進剤などの他、ウィルス、ワクチン、細胞(遺伝子治療のための組換え細胞)、タンパク質、核酸(DNA、RNA)、酵素、栄養素、磁性体、金属、半導体、ガラス、セラミックス、カーボン材料(例えば、アモルファスカーボン)、ダイヤモンド、セッコウなどの塩、有機高分子、天然物、毒物、劇物などが挙げられる。これらの物質を内包する本発明のカプセルは、所望の場所(例えば、治療を必要とする場所)に配置されて、その物質の機能を発揮することができる。
【0066】
食品用途としては、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンE、ごま油など)、抗菌剤(銀、タンニン、ショウガエキスなど)、防腐剤などをがあげられる。これらの物質を内包する本発明のカプセルは、長期にわたって食品中で内包物質を徐々に放出し、食品の劣化を長期間にわたって抑える効果がある。
【0067】
あるいは、本発明のカプセルにアルカリ剤、防カビ剤、殺菌剤などを充填し、コンクリート材料に練りこんで徐放することにより、中性化や鉄筋の錆び、硫黄酸化細菌、カビなどに起因する劣化を防止でき、コンクリート構造物の寿命を延長することもできる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を、実施例によって更に詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
(リン酸カルシウム類形成溶液の調製)
蒸留水700mLに、NaClを7.996g、NaHCOを0.350g、KClを0.224g、KHPO・3HOを0.228g、MgCl・6HOを0.305g、1M塩酸を40ml、CaClを0.278g、Na2SO4を0.071g、トリスヒドロキシメチルアミノメタンを6.057g溶解させ、36.5℃でpHが7.25となるように、1M塩酸で調整し、溶液全体を1Lとして、リン酸カルシウム類形成溶液を調製した。
【0070】
(種結晶の調製)
CaF:MgO:P:SiO:CaOを、それぞれ0.5:4.6:16.2:34.0:44.7質量%となるように秤量、混合した後、1450℃で2時間溶融した。溶融液を急冷し、ガラスを得た。得られたガラスをボールミルにより粉砕し、ふるいにより分級して、粒径150~300μmのガラス微粒子を得た。
【0071】
プラスチック容器にリン酸カルシウム類形成溶液30mlをはかりとり、上記ガラス微粒子を1g加えて分散させた。1cm×1cmのポリスチレン基板を浸漬して、2日間静置して、ポリスチレン基板表面に、リン酸カルシウム類の微結晶を析出させた。このポリスチレン基板を回収し、アセトンを用いてポリスチレン基板を溶解し、遠心分離して、沈殿物を種結晶として回収した。
【0072】
(実施例1)
(ポリマーからなるカプセル原型体を用いるカプセルの作成)
ポリスチレンを乳化重合法で調製し、平均粒径1μmの球状ポリスチレン粒子を得た。上記の配合割合で調製したリン酸カルシウム類形成溶液30mlに得られた種結晶0.2gを分散させ、上記ポリスチレン粒子0.5gをさらに分散させた。37℃で、極めて緩やかに振盪しながら、反応させた。このポリスチレン粒子の一部をサンプリングし、TEMで観察しながら、細孔を有する被覆層が所望の厚さ(1μm)になるまで反応を継続した(2日間)。反応終了後、微細孔を有する被覆層が外表面に形成されたポリスチレン粒子を回収し、アセトンで処理して、ポリスチレンを溶解し、非溶解物を遠心分離で回収することにより、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られた。
【0073】
(実施例2)
種結晶の代わりにMgO-CaO-SiO-P-CaF系ガラスの微粒子(平均粒径50nm)をリン酸カルシウム類形成溶液に分散させた以外は、実施例1と同様の操作を行った。MgO-CaO-SiO-P-CaF系ガラスとしては、種結晶を作製する際に用いたガラスを用いた。反応終了後、微細孔を有する被覆層が外表面に形成されたポリスチレン粒子を回収し、アセトンで処理して、ポリスチレンを溶解し、非溶解物を遠心分離で回収することにより、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが得られた。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、微細孔を有し、かつ、リン酸カルシウム類からなるカプセルが提供される。このカプセルには所望の物質を内包することができる。このカプセルは生体適合性があり、生体に対して悪影響を与えることがないので、例えば、薬剤送達用のカプセルとして有用である。また、内包する物質が生体関連物質の場合、安定に保たれる。