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明細書 :水から酸素ガスを製造するための触媒材料とその触媒材料を用いた酸素ガスの製造方法、二酸化炭素ガスから酢酸または有機物を合成するための触媒材料とその触媒材料を用いた酢酸または有機物の合成方法、電気エネルギー発生方法、水素ガスセンサー、廃液の再利用方法、R型二酸化マンガンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5317484号 (P5317484)
公開番号 特開2009-106924 (P2009-106924A)
登録日 平成25年7月19日(2013.7.19)
発行日 平成25年10月16日(2013.10.16)
公開日 平成21年5月21日(2009.5.21)
発明の名称または考案の名称 水から酸素ガスを製造するための触媒材料とその触媒材料を用いた酸素ガスの製造方法、二酸化炭素ガスから酢酸または有機物を合成するための触媒材料とその触媒材料を用いた酢酸または有機物の合成方法、電気エネルギー発生方法、水素ガスセンサー、廃液の再利用方法、R型二酸化マンガンの製造方法
国際特許分類 B01J  23/32        (2006.01)
C01G  45/02        (2006.01)
C01B  13/02        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
FI B01J 23/32 M
C01G 45/02
C01B 13/02 B
G01N 27/46 353Z
C01B 3/04 R
請求項の数または発明の数 8
全頁数 41
出願番号 特願2008-018340 (P2008-018340)
出願日 平成20年1月29日(2008.1.29)
優先権出願番号 2007031151
2007083098
2007104588
2007264018
優先日 平成19年2月9日(2007.2.9)
平成19年3月27日(2007.3.27)
平成19年4月12日(2007.4.12)
平成19年10月10日(2007.10.10)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成22年4月5日(2010.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】古屋仲 秀樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開2005-263615(JP,A)
特開2007-238424(JP,A)
特開2007-090342(JP,A)
特開2008-200609(JP,A)
古屋仲秀樹 他,R型二酸化マンガン・ナノパウダーの合成方法,2006年(平成18年)秋季 第67回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第1分冊,2006年 8月29日,page.213
古屋仲秀樹 他,水素化したナノ・スケールマンガン酸化物の物性,資源・素材学会春季大会講演予稿集,2004年 3月29日,No.2 page.97,98
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/04
C01B 13/02
C01G 45/02
G01N 27/416
特許請求の範囲 【請求項1】
水を酸化分解して酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料であって、R型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体であり、メソポーラス多孔体構造を有することを特徴とする触媒材料。
【請求項2】
メソポーラス多孔体構造の平均細孔直径が3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積が40~200m/g、全細孔容積が0.1~0.5cm/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
二酸化マンガンのナノニードルは、直径1nm~50nmの範囲、長さ3nm~500nmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒材料。
【請求項4】
二酸化マンガンの凝集体は、その直径が1~100μmの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の触媒材料。
【請求項5】
水を酸化分解して酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料の製造方法であって、2価のマンガン化合物を180~300℃の温度で焼成して0.01~1.0mol/lの濃度の酸で酸処理した後、次いで大気中、90~120℃、2時間~12時間、乾燥処理することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項6】
2価のマンガン化合物が、炭酸マンガンであることを特徴とする請求項5に記載の触媒材料の製造方法。
【請求項7】
請求項5の触媒材料の製造方法において、乾燥処理した後、さらに水洗または湯洗することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかの触媒材料と、この触媒材料を介して接続されてなる一対の電極と、電極間の電位差を検出する電圧検出手段と、を備えた水素ガスセンサーであって、前記触媒材料を水の存在下、この触媒材料に接続されている一方の電極側に導入された水素ガスが前記電極と接触し、これにより発生した水素イオンが水に溶解して酸性水溶液となり、この酸性溶液が前記触媒と接触して分解されて電気エネルギーが発生し、これに伴う両電極間の電位差を前記電圧検出手段で検出することによって、水素ガスを検知することを特徴とする水素ガスセンサー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、水から酸素ガスを製造するための、可視光で機能する触媒材料とその触媒材料を用いた酸素ガスの製造方法、二酸化炭素ガスから酢酸または有機物を合成するための触媒材料とその触媒材料を用いて二酸化炭素ガスを分解し酢酸または有機物を合成する方法、電気エネルギー発生方法、水素ガスセンサー、酢酸や糖の合成方法、廃液の再利用方法、R型二酸化マンガンの製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物は太陽光に含まれる波長400~500nmの可視光のエネルギーを利用して、水と二酸化炭素から酸素ガスや有機物などを生産している。植物の光合成反応は多段階の反応からなり、水の酸化分解反応はその出発点に位置する反応である。一方、二酸化炭素の分解と有機物への変換反応は光合成反応の最終段階の反応である。
【0003】
最新の報告によれば、植物が行う水の酸化分解反応は、葉緑体の膜中に存在するマンガン4つとカルシウム1つによって構成されるクラスターが、太陽光エネルギーを利用して水を酸化分解する触媒として作用していることが明らかにされている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、植物の葉緑体に含まれる前出のクラスターを含む細胞(Photo System II)には、水を酸化分解する触媒効果をもたらすマンガン原子は4つしか含まれていないため、植物が水を酸化分解する反応を利用して、工業的に水から酸化分解によって酸素ガスを大量に人工合成することは将来的にも極めて困難である。これまでに、人工の触媒物質が水を酸化分解した例としては、チタニア触媒や色素増感触媒の例が挙げられる。しかしながら、チタニア触媒が水を酸化分解するためには約3.0~3.2eVのエネルギーをもった紫外光を予め照射してやる必要がある。また、色素増感触媒が水を酸化分解するために必要なエネルギーは約3.0eVとチタニア触媒に比べて低エネルギーであるが、色素増感触媒は化学的に不安定な材料であるため実用化には至っていない。したがって、実際の植物の光合成のようにエネルギーが2.0~2.5eVである可視光を使って水を効率的に酸化分解できる触媒材料は見つかっていない。また、植物が大気中の二酸化炭素を分解して有機物を合成する反応を利用して工業的に大量の二酸化炭素を分解して有機物に変換することも極めて困難である。
【0005】
以上のように、これまで既存の人工触媒技術で植物が行っているような太陽光エネルギーだけで水を酸化分解し、酸素ガスを効率的に発生させ得た例はないし、二酸化炭素を分解して有機物に変換することができる優れた触媒性能を示す材料と方法はみつかっていないのが実情である。

【非特許文献1】B. Loll他、Nature, 438, 1040 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、以上の通りの背景から、可視光および室温下において水を酸化分解して酸素ガスを発生させることができる触媒材料、その触媒材料の製造方法、その触媒材料を用いた酸素ガスの製造方法と電気エネルギー発生方法並びに水素ガスセンサーと、室温下において二酸化炭素ガスから酢酸または有機物に還元することができる触媒材料、その触媒材料の製造方法、その触媒材料を用いて二酸化炭素ガスを分解し酢酸や有機物を合成する方法と、酢酸や糖の合成方法を提供することを課題としている。
【0007】
さらに、本発明は、前記触媒材料の製造過程で生じる廃液の再利用方法および2価のマンガン水溶液からR型二酸化マンガンを合成する新しい製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するものとして、以下の発明を提供する。
<1>水を酸化分解して酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料であって、R型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体であり、メソポーラス多孔体構造を有することを特徴とする触媒材料。
<2>メソポーラス多孔体構造の平均細孔直径が3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積が40~200m/g、全細孔容積が0.1~0.5cm/gの範囲であることを特徴とする上記<1>に記載の触媒材料。
<3>二酸化マンガンのナノニードルは、直径1nm~50nmの範囲、長さ3nm~500nmの範囲であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の触媒材料。
<4>二酸化マンガンの凝集体は、その直径が1~100μmの範囲であることを特徴とする上記<1>から<3>のいずれかに記載の触媒材料。
<5>二酸化炭素ガスから酢酸または有機物を合成するための触媒材料であって、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体からなることを特徴とする触媒材料。
<6>水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体は、水素化二酸化マンガンのナノニードルの凝集体であり、メソポーラス多孔体構造を有することを特徴とする上記<5>に記載の触媒材料。
<7>メソポーラス多孔体構造の平均細孔直径が3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積が40~200m/g、全細孔容積が0.1~0.5cm/gの範囲であることを特徴とする上記<6>に記載の触媒材料。
<8>水素化二酸化マンガンのナノニードルは、直径1nm~50nmの範囲、長さ3nm~500nmの範囲であることを特徴とする上記<6>または<7>に記載の触媒材料。
<9>水素化二酸化マンガンのナノニードルの凝集体は、その直径が1~100μmの範囲であることを特徴とする上記<6>から<8>のいずれかに記載の触媒材料。
<10>水を酸化分解して酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料の製造方法であって、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理した後、次いで乾燥処理することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<11>2価のマンガン化合物が、炭酸マンガンであることを特徴とする上記<10>に記載の触媒材料の製造方法。
<12>上記<10>の触媒材料の製造方法において、乾燥処理した後、さらに水洗または湯洗することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<13>二酸化炭素ガスから酢酸または有機物を合成するための触媒材料の製造方法であって、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<14>上記<13>の触媒材料の製造方法において、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理した後、さらに水洗することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<15>上記<13>の触媒材料の製造方法において、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理した後、さらに乾燥処理し、次いで酸処理することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<16>上記<15>の触媒材料の製造方法において、乾燥処理後、酸処理前に、水洗または湯洗することを特徴とする触媒材料の製造方法。
<17>2価のマンガン化合物が、炭酸マンガンであることを特徴とする上記<13>から<16>のいずれかに記載の触媒材料の製造方法。
<18>上記<10>から<17>に記載の触媒材料の製造方法において焼成した2価のマンガン化合物を酸処理した後の酸処理液(廃液)の再利用方法であって、酸処理後の酸処理液に酸化剤およびアルカリ化合物を添加して酸化マンガンを沈殿させた後、前記酸化マンガンの沈殿物を酸処理し、これを乾燥処理してR型二酸化マンガンを得ることを特徴とする廃液の再利用方法。
<19>上記<10>から<17>に記載の触媒材料の製造方法において焼成した2価のマンガン化合物を酸処理した後の酸処理液(廃液)の再利用方法であって、酸処理後の酸処理液に過マンガン酸カリウムを添加して二酸化マンガンを得ることを特徴とする廃液の再利用方法。
<20>上記<10>から<17>に記載の触媒材料の製造方法において焼成した2価のマンガン化合物を酸処理した後の酸処理液(廃液)の再利用方法であって、酸処理後の酸処理液にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加して炭酸マンガンを得ることを特徴とする廃液の再利用方法。
<21>上記<1>から<4>のいずれかの触媒材料を用いて水から酸素ガスを製造する方法であって、可視光下、酸性水溶液に前記触媒材料を接触させて酸素ガスを製造することを製造することを特徴とする酸素ガスの製造方法。
<22>上記<5>から<9>のいずれかの触媒材料を用いて二酸化炭素ガスを分解し、酢酸または有機物を合成する方法であって、酸性水溶液の存在下、前記触媒材料に二酸化炭素ガスを接触させることを特徴とする酢酸または有機物の合成方法。
<23>上記<1>から<4>のいずれかの触媒材料を用いて電気エネルギーを発生させる方法であって、可視光下、酸性水溶液に前記触媒材料を接触させることを特徴とする電気エネルギー発生方法。
<24>上記<1>から<4>のいずれかの触媒材料と、この触媒材料を介して接続されてなる一対の電極と、電極間の電位差を検出する電圧検出手段と、を備えた水素ガスセンサーであって、前記触媒材料を水の存在下、この触媒材料に接続されている一方の電極側に導入された水素ガスが前記電極と接触し、これにより発生した水素イオンが水に溶解して酸性水溶液となり、この酸性溶液が前記触媒と接触して分解されて電気エネルギーが発生し、これに伴う両電極間の電位差を前記電圧検出手段で検出することによって、水素ガスを検知することを特徴とする水素ガスセンサー。
<25>2価のマンガン化合物を焼成して酸処理する工程を含むことを特徴とする酢酸の合成方法。
<26>2価のマンガン化合物が、炭酸マンガンであることを特徴とする上記<25>に記載の酢酸の合成方法。
<27>2価のマンガン化合物を焼成し、これを酸処理して水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体とする工程と、この凝集体を大気中で乾燥処理する工程と、を含むことを特徴とする糖の合成方法。
<28>2価のマンガン化合物が、炭酸マンガンであることを特徴とする上記<27>に記載の糖の合成方法。
<29>2価のマンガンイオンを含む水溶液に酸化剤およびアルカリ化合物を添加し、これにより得られた酸化マンガンの沈殿物を酸処理して乾燥処理することを特徴とするR型二酸化マンガンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
上記発明によれば、マンガンの触媒反応によって太陽光に含まれる波長400~500nmの可視光のエネルギーで、希塩酸などの酸性の水溶液を酸化分解し、酸素ガス、プロトンおよび電子を製造することができるため、安価で高効率に酸素ガスおよび電気を製造することができる。これは本発明の触媒材料によって、植物の光合成による酸素製造反応を人工的に高効率に生じさせたことに起因する。本発明材料が示す高い酸素製造効率は、植物の葉緑体が8500nmに達する結晶格子の巨大タンパク質分子から構成されて、その1つのタンパク質分子の中に4つしか触媒効果をもつマンガンが含まれていないことに対して、本発明のマンガン酸化物ナノ粒子(例えば直径2nm、長さ5nm)の1つには1000個以上の触媒活性をもつマンガンが含まれており、このナノ粒子がさらに集まってメソポーラス多孔体を形成しているために広い接触面積をもってして、水を酸化分解することで酸素製造の触媒効率が植物の場合に比べて飛躍的に高まったためであると考えられる。さらに、本発明では、二酸化炭素ガスを、酸処理したマンガン酸化物から構成される多孔体粉末を懸濁させた水溶液にバブリングするなどして接触させることで、直接的に二酸化炭素ガスを主な生成物として酢酸に変換し、微量の副生成物としてブチロラクトン、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラハイドロフラン、または、ホルムアルデヒト、ホルマリン等の有機物と、水とに二酸化炭素ガスを分解・変換することを可能とした。
【0010】
さらに本発明は、水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体を二酸化炭素ガスと接触させた後、乾燥処理することで、人間をはじめ動物や植物の活動のエネルギーになる物質の一つであり、脳の唯一のエネルギー源としても知られている糖を合成することを可能とした。
【0011】
また、本発明は前記触媒材料の製造の際に発生する廃液を再利用することができる。この廃液はマンガンイオンが高濃度で含まれるため、公共用水域にそのまま放流することができない。このため廃液からマンガンイオンを除去するなど浄化処理して放流する必要があったが、本発明では、この廃液からR型二酸化マンガン、二酸化マンガン、炭酸マンガンを製造できるなど有効に廃液を利用できるとともに、廃液処理方法としても安価に実現できる。
【0012】
さらに本発明によれば、触媒材料として有用なR型二酸化マンガンを安価に製造できることを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、水から酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料(以下、酸素ガス製造触媒材料ともいう)と、二酸化炭素ガスを分解し、酢酸やホルムアルデヒド、または糖を合成するための触媒材料(以下、二酸化炭素分解触媒材料ともいう)を提供するものである。これら触媒材料は、水の分解反応あるいは二酸化炭素ガスの分解反応に用いられ、反応助剤といってもよい。
【0014】
まず、水から酸素ガス、プロトンおよび電子を製造するための触媒材料について説明する。
【0015】
上記の触媒材料は、R型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルが凝集体であり、メソポーラス多孔体構造を有する二酸化マンガンの凝集体であることを特徴としている。ここで、R型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルとは、一般的に重量比で50%以上好ましくは80%以上、さらには95%以上のR型二酸化マンガンが成分として構成されており、大きさ、すなわち、太さ(平均直径)および長さ(両端距離)がナノメートルスケールであり、太さが略均一で針状(ロッドともいう)の形状を有するものをいう。具体的には、太さ(平均直径)および長さ(両端距離)は、太さ1~50nm、長さ3~500nmの範囲である。
【0016】
この触媒材料における二酸化マンガンの凝集体はメソポーラス多孔体構造を形成しているが、その細孔直径は3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積40~120m/gの範囲であるものが考慮される。特には、平均細孔直径が3nm~15nmでBET比表面積が50~200m/gの範囲のもの、なかでも平均細孔直径が7nm~14nmでBET比表面積が50~130m/gの範囲のもの、あるいは平均細孔直径が15nm~30nmでBET比表面積が40~50m/gの範囲のものなどを挙げることができる。なお、上記メソポーラス多孔体構造の全細孔容積は、0.1~0.5cm/g程度である。凝集体の大きさとしては、例えば、メソポーラス多孔体構造を考慮すると、その直径が1~100μmの範囲である。
【0017】
上記の触媒材料は、多孔体構造の表面および細孔の内面で水と接触するため、従来の触媒材料では実現できなかった高効率な触媒反応を生じさせることができる。このため、例えば、密閉容器中で水に浸した10グラムの触媒材料から1時間で330ppmの酸素ガスの発生が可能になるなど、高い反応効率で水から酸素ガスを製造することができる。
【0018】
次に上記の水から酸素ガスと電気エネルギーであるプロトンおよび電子を製造するための触媒材料の製造方法について説明する。この触媒材料は、2価のマンガン化合物を焼成してマンガン酸化物の粉末とし、これを酸処理した後、乾燥処理することで得ることができる。
【0019】
2価のマンガン化合物としては、炭酸マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、シュウ酸マンガン等が挙げられるが、入手のし易さ、触媒材料の製造効率等を考慮すると炭酸マンガンMnCOであることが好ましい。また、マンガン化合物の大きさとしては、平均粒径0.02~100μmの範囲の粉末であることが考慮される。
【0020】
焼成温度としては、180~300℃の範囲、より好ましくは190~250℃であり、特には200℃が好適である。焼成時間については、焼成温度と焼成量を考慮して適宜に設定されるが、例えば1~20時間程度であり、25グラムの炭酸マンガンを焼成する際には200℃で6時間焼成する。
【0021】
酸処理は1回または2回以上繰り返し行うことができる。酸処理を繰り返し行うことによって、2価のマンガン化合物を効果的に除去して、R型の結晶構造とイプシロン型の結晶構造の二酸化マンガンが混ざった水素化二酸化マンガンを効率的に合成することができる。この水素化酸化マンガンは、酸処理によってペースト状になっており、二酸化マンガンMnOの結晶構造にプロトンHおよび電子eが含侵したマンガン価数+4価のナノ微粒子である。よって、水素化酸化マンガンは(H,eMnOとも記載できる。ここでXは二酸化マンガンMnO中に含まれているプロトンと電子(H,e)の数を表し、0から1の範囲である。なお、後述するが、この水素化酸化マンガンを乾燥するとプロトンが抜けてR型二酸化マンガンを得る。
【0022】
酸処理の回数はマンガン化合物(焼成炭酸マンガン)の量、使用する酸の種類、濃度によって適宜に設定される。酸処理に用いる酸としては、無機酸であれば特に制限されず、好ましくは塩酸、硫酸、または硝酸である。酸の濃度が高いとマンガン化合物の溶解が多くなる場合があるので、濃度範囲が0.01~1.0mol/lの範囲、より好適には0.1~0.5mol/lの範囲であることが好ましい。酸処理の時間については10分から3時間、好ましくは1時間程度が良好である。
【0023】
本発明は、上記の触媒材料の製造方法において、乾燥条件を変えることによって、得られる二酸化マンガンナノニードルの大きさを制御するとともに、二酸化マンガンナノニードル凝集体のメソポーラス多孔体構造の平均細孔直径およびBET比表面積の大きさを調節することができる。例えば、上記酸処理後に得られるペースト状態の水素化した酸化マンガンの乾燥条件として、大気中、乾燥機などで90~120℃、2時間~12時間乾燥する際に、ペーストを半密閉容器に入れて水分がペーストから蒸散しにくい状態で、すなわちペースト中の水分の脱水速度を減じることで、乾燥後に得られるR型二酸化マンガンのナノニードルの大きさをより大きく成長させることができる。具体的には、そのような半密閉容器を使用しないで脱水速度が速い場合に得られるR型二酸化マンガンのナノニードルは、太さ2~10nm、長さ5~30nm程度であることに対して、ペーストの乾燥に半密閉容器を使用した場合には、太さ10~30nm、長さ30~300nmのR型二酸化マンガンのナノニードルとすることが可能となる。
【0024】
このように酸処理後の乾燥条件と酸処理に使用する酸濃度を調整することで、R型二酸化マンガンのナノニードルの大きさを制御することができるのである。このため、上記の例に限定されることなく、例えば、後述する実施例1の乾燥処理2のように、太さ3~10nm、長さ10~200nmのナノニードルを得ることも可能である。
【0025】
このようにして得られたR型二酸化マンガンナノニードルが凝集して形成する凝集体の平均細孔直径と比表面積は、凝集体を構成するR型二酸化マンガンのナノニードルの太さと長さに依存する。本発明は、平均細孔直径が3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積が40~200m/g、全細孔容積が0.1~0.5cm/gの範囲のナノニードル凝集体を得ることができるが、例えば、太さ2~10nm、長さ5~30nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が7nm~14nmの範囲、BET比表面積が50~130m/g、全細孔容積が0.2~0.5cm/gの範囲となる。太さ10~30nm、長さ30~300nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が15nm~70nmの範囲、BET比表面積が40~50m/g、全細孔容積が0.1~0.3cm/gの範囲となる。そして、太さ3~10nm、長さ10~200nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が10nm~20nmの範囲、BET比表面積が45~70m/g、全細孔容積が0.15~0.40cm/gの範囲となる。なお、上記の例は一例であって、ナノニードルの大きさとその凝集体の平均細孔直径と比表面積との関係は上記の例に限定されるものではない。また、以上の方法によって得られたR型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体をメノウ乳鉢等で粉砕した後、水または水溶液中において室温から30℃程度の温度で水洗したり、または30℃から90℃程度の温度で湯洗することでR型二酸化マンガンのナノニードル表面に付着している塩化マンガンなどの不純物を除去できる。水洗または湯洗した後は、R型二酸化マンガンのナノニードル凝集体をろ過回収し、例えば大気圧下、110℃で1~12時間乾燥してもよい。
【0026】
以上の処理によって、R型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体であって、メソポーラス多孔体構造を有する触媒材料を得ることができる。
【0027】
本発明は、上記の触媒材料を用いて水から酸素ガス、プロトンおよび電子を製造する方法を提供する。具体的には、可視光下で酸性水溶液に酸素ガス製造触媒材料を接触させることで酸素ガスを製造することができる。さらに具体的に説明すると、例えば、太陽光や蛍光灯下に置かれた密閉したガラス製の反応容器内に上記の酸素ガス製造触媒材料をpHが酸性の水、例えば希塩酸や希硫酸などに懸濁させてマグネチック・スターラーで攪拌する。この際、水が酸素ガス製造触媒材料と接触することでガスが発生する。ここで、例えば、密閉したガラス製の反応容器につながったガス採取用のガラス管のコックを開いてサンプルガス採取用のシリンダーに密閉したガラス製の反応容器内のガスをサンプリングする。ガス・クロマトグラフ法によって実験室大気中の酸素濃度とサンプリングされたガスの酸素濃度を比較することで、反応容器内に発生したガスが酸素ガスであることを確認できる。なお、酸素ガスの発生は以下の反応式で表される。
【0028】
2HO→O + 4H + 4e
ここで、HOは水、Oは酸素ガス、Hは水素イオン(プロトン)、eは電子を表す。
上記の反応は水の酸化分解反応であり、本発明はこの水の酸化分解反応からさらに電気エネルギーであるプロトンHと電子eを得ることができる。すなわち、可視光下で酸性水溶液に前記酸素ガス製造触媒材料を接触させることで電気エネルギーを発生させることができる。
【0029】
さらに本発明は、上記の触媒材料を用いた水素ガスセンサーを提供する。この水素ガスセンサーは、上記の触媒材料と、この触媒材料を介して接続されてなる一対の電極と、電極間の電位差を検出する電圧検出手段とを備えており、以下のようにして水素ガスが検知される。まず、水の存在下、前記触媒材料に接続されている一方の電極側に水素ガスが導入されると、水素ガスと前記電極との接触により水素イオンが発生し、これが水に溶解して酸性水溶液となる。次いで、この酸性溶液が前記触媒と接触して分解されて電気エネルギーが発生する。これに伴う両電極間の電位差を電圧計等の前記電圧検出手段で検出することによって、水素ガスを検知する。電極の材料としては、水素ガスを水素イオンとする触媒効果を有するものであればよく、好適には白金が挙げられる。
【0030】
上記水素ガスセンサーは、安価に製造できるとともに、簡便にかつ感度よく水素ガスの存在を検知することができるため、産業上好適に使用することができる。
【0031】
また、R型二酸化マンガンのナノニードルを主成分とする凝集体を、水または水溶液中において室温から30℃程度の温度で水洗したり、または30℃から90℃程度の温度で湯洗することでR型二酸化マンガンのナノニードル表面から塩化マンガンなどの不純物を除去してやると、R型二酸化マンガンのナノニードル表面でプロトンH導伝性が顕著に発現する。これは室温から300℃程度の温度範囲で働く新規な固体酸化物型燃料電池用の電解質を提供する。ちなみに既存の固体酸化物型燃料電池では電解質としてバリウム、イットリウム、セリウム、酸素の化合物であるBYCOが500℃で働くことが知られているが、室温から300℃の様な低い温度でプロトンH導伝性が発現した例は極めて少ない。なお、水洗または湯洗した後は、R型二酸化マンガンのナノニードル凝集体をろ過回収し、例えば大気圧下、110℃で1~12時間乾燥してもよい。
【0032】
次に、二酸化炭素ガスから酢酸やホルムアルデヒドなどの有機物を合成するための触媒材料について説明する。
【0033】
この触媒材料は、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体からなるものである。ここで、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子とは、一般的に重量比で50%以上好ましくは80%以上、さらには95%以上の水素化二酸化マンガンが成分として構成されており、大きさ、すなわち、太さ(平均直径)および長さ(両端距離)がナノメートルスケールであり、不定形のものや太さが略均一で針状(ニードルあるいはロッドともいう)の形状を有するものをいう。より好ましくは、水素化二酸化マンガンのナノニードルであり、この場合のナノニードルは、上記の水から酸素ガスを製造するための触媒材料と同様、太さ(平均直径)および長さ(両端距離)が、太さ1~50nm、長さ3~500nmの範囲であることが考慮される。そして、本発明はナノニードルが凝集されてメソポーラス多孔体構造が形成される。このメソポーラス多孔体構造の細孔直径は3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積40~115m/gの範囲であるものが考慮される。特には、平均細孔直径が3nm~15nmでBET比表面積が50~200m/gの範囲のもの、なかでも平均細孔直径が7nm~14nmでBET比表面積が50~130m/gの範囲のもの、あるいは平均細孔直径が15nm~30nmでBET比表面積が40~50m/gの範囲のものなどを挙げることができる。なお、上記メソポーラス多孔体構造の全細孔容積は、0.1~0.5cm/g程度である。凝集体の大きさとしては、例えば、メソポーラス多孔体構造を考慮すると、その直径が1~100μmの範囲である。
【0034】
上記の触媒材料は、多孔体構造の表面および細孔の内面で水や二酸化炭素ガスと接触するため、従来の触媒材料では実現できなかった高効率な触媒反応を生じさせることができる。このため、例えば、密閉容器のなかで水に浸した10グラムの触媒材料に濃度99.9%の二酸化炭素ガスを接触させるだけで、24時間経過後の密閉容器の中には二酸化炭素の分解により生じたホルムアルデヒト等が検出されるなど、高い反応効率で二酸化炭素ガスを分解することができる。太陽光以下の投入エネルギーでこのような結果を得た触媒材料はこれまで存在しない。
【0035】
次に上記の二酸化炭素ガスから酢酸やホルムアルデヒドなどの有機物を合成するための触媒材料の製造方法について説明する。
【0036】
この触媒材料は、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理することで、R型の結晶構造とイプシロン型の結晶構造の二酸化マンガンが混ざった水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料を得ることができる。
【0037】
2価のマンガン化合物としては、炭酸マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、シュウ酸マンガン等が挙げられるが、入手のし易さ、触媒材料の製造効率等を考慮すると炭酸マンガンMnCOであることが好ましい。また、マンガン化合物の大きさとしては、平均粒径0.02~100μmの範囲の粉末であることが考慮される。
【0038】
焼成温度としては、180~300℃の範囲、より好ましくは190~250℃であり、特には200℃が好適である。焼成時間については、焼成温度と焼成量を考慮して適宜に設定されるが、例えば1~20時間程度であり、25グラムの炭酸マンガンを焼成する際には200℃で6時間焼成する。
【0039】
酸処理は1回または2回以上繰り返し行うことができる。酸処理を繰り返し行うことによって、2価のマンガン化合物を効果的に除去して、R型の結晶構造とイプシロン型の結晶構造の二酸化マンガンが混ざった水素化二酸化マンガンを効率的に合成することができる。この水素化酸化マンガンは、酸処理によってペースト状になっており、二酸化マンガンMnOの結晶構造にプロトンHおよび電子eが含侵したマンガン価数+4価のナノ微粒子である。よって、水素化酸化マンガンは(H,ex MnOと記載できる。ここでXは二酸化マンガンMnO中に含まれているプロトンと電子(H,e)の数を表し、0から1の範囲である。この水素化酸化マンガンを乾燥するとプロトンが抜けてR型二酸化マンガンを得る。
【0040】
酸処理の回数はマンガン化合物(焼成炭酸マンガン)の量、使用する酸の種類、濃度によって適宜に設定される。酸処理に用いる酸としては、無機酸であれば特に制限されず、好ましくは塩酸、硫酸、または硝酸である。酸の濃度が高いとマンガン化合物の溶解が多くなる場合があるので、濃度範囲が0.01~1.0mol/lの範囲、より好適には0.1~0.5mol/lの範囲であることが好ましい。酸処理の時間については10分から3時間、好ましくは1時間程度が良好である。
【0041】
本発明は、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理した後に、水または水溶液中において室温から30℃程度の温度で水洗してもよい。これによって、水素化酸化マンガン表面に付着している塩化マンガンなどの不純物を除去できる。
【0042】
本発明は、2価のマンガン化合物を焼成して酸処理した後に、場合によっては、水洗処理した後に、さらに乾燥処理して酸処理してもよい。この乾燥処理後の酸処理は、焼成処理後の酸処理と同様である。この乾燥処理後の酸処理に用いる酸は前記の様な無機酸、好ましくは前記の濃度0.1~0.5mol/Lの範囲である希塩酸が好ましい。酸処理の時間は10分から3時間程度が好ましいが、酸処理にpHが天然の酸性雨と同じレベルの酸性水、例えばpH5.6のイオン交換純水を用いた場合には2日間と酸処理時間を長くすることで、濃度0.1~0.5mol/Lの範囲である希塩酸を用いて1時間酸処理した場合に相当する効果が得られる。また、乾燥処理後の酸処理に用いる酸は、無機酸に限らずトリフルオロ酢酸CFCOOHの様な有機酸であっても構わない。乾燥処理については、その乾燥条件を変えることによって、得られる二酸化マンガンナノニードルの大きさを制御するとともに、二酸化マンガンナノニードル凝集体のメソポーラス多孔体構造の平均細孔直径およびBET比表面積の大きさを調節することができる。例えば、上記酸処理後に得られる水素化酸化マンガンナノ微粒子のペースト状体の乾燥条件として、大気中、乾燥機などで90~120℃、2時間~12時間乾燥する際にペーストを入れる容器をガラスシャーレなどの開放容器に入れて乾燥処理すること、すなわちペースト中の水分の脱水速度を速めることで、得られるR型二酸化マンガンのナノニードルの大きさをより小さくすることができる。具体的には、太さ2~10nm、長さ5~30nmのR型二酸化マンガンのナノニードルとすることが可能となる。
【0043】
一方で、より大きく成長したR型二酸化マンガンのナノニードルを得るためには、ペーストを入れる容器を半密閉容器とすることでペースト中の水分の脱水速度を上記条件より遅くしたり、上記ペーストに希塩酸などの希酸を添加したりしてペーストが含む水分中の水素イオンの量を増加させた後、乾燥処理することで、より大きく成長したR型二酸化マンガンのナノニードルを得ることができる。具体的には、太さ10~30nm、長さ30~300nmのR型二酸化マンガンのナノニードルとすることが可能となる。
【0044】
このように乾燥条件およびペースト中の水素イオンの量を調整することで、乾燥処理後に得られるR型二酸化マンガンのナノニードルの大きさを制御することができるのである。このため、上記の例に限定されることなく、例えば、適宜に乾燥条件およびペースト中の水素イオンの量を調整することで太さ3~10nm、長さ10~200nmのナノニードルを得ることも可能である。
【0045】
このR型二酸化マンガンナノニードルの凝集体の平均細孔直径と比表面積は、R型二酸化マンガンのナノニードルの太さと長さに依存する。本発明は、平均細孔直径が3nm~30nmの範囲であって、BET比表面積が40~200m/g、全細孔容積が0.1~0.5cm/gの範囲のナノニードル凝集体を得ることができるが、例えば、太さ2~10nm、長さ5~30nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が7nm~14nmの範囲、BET比表面積が50~130m/g、全細孔容積が0.2~0.5cm/gの範囲となる。太さ10~30nm、長さ30~300nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が15nm~30nmの範囲、BET比表面積が40~50m/g、全細孔容積が0.1~0.3cm/gの範囲となる。そして、太さ3~10nm、長さ10~200nmのR型二酸化マンガンのナノニードルで構成される凝集体では、平均細孔直径が10nm~20nmの範囲、BET比表面積が45~70m/g、全細孔容積が0.15~0.40cm/gの範囲となる。なお、上記の例は一例であって、ナノニードルの大きさとその凝集体の平均細孔直径と比表面積との関係は上記の例に限定されるものではない。また、以上の方法によって得られたR型二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体をメノウ乳鉢等で粉砕した後、水または水溶液中において室温から30℃程度の温度で水洗したり、または30℃から90℃程度の温度で湯洗することで、R型二酸化マンガンのナノニードル表面に付着している塩化マンガンなどの不純物を除去できる。水洗または湯洗した後は、R型二酸化マンガンのナノニードル凝集体をろ過回収後、例えば大気圧下、110℃で1~12時間乾燥してもよい。
【0046】
以上のようにして得られたR型二酸化マンガンナノニードルの凝集体を酸処理することで、プロトンHおよび電子eが含侵した水素化酸化マンガン(H,eMnOのナノニードルの凝集体をペースト状体として得る。したがって、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノニードルの凝集体であって、メソポーラス多孔体構造を有する触媒材料を得ることができる。この触媒材料は多孔質性が高く比表面積が広いため、二酸化炭素ガスの分解のための触媒材料として好適である。
【0047】
次に、酢酸の合成方法について説明する。酢酸の合成方法には2つの方法がある。第一の方法は、上記の2価のマンガン化合物を焼成し、これを酸処理して水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体ペーストを製造する過程で酢酸が合成される。具体的には、希塩酸を用いた酸処理の際に希塩酸中で生成する水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子と、上記の2価のマンガン化合物から噴出する二酸化炭素ガスが接触することで不安定なアルデヒト類などの低級な有機物が生成されて、その低級有機物が希塩酸中に含まれるマンガンイオンMn2+や次亜塩素酸HClOの効果を受けて酸化が進み、結果として安定な酢酸を形成するものと考えられる。酸処理が進むにつれて酢酸臭が発生し、かつ酸処理後に固液分離された希塩酸中に酢酸CHCOOHが存在することを、ガス・クロマトグラフが直結された質量分析法(GCMS法)装置によって確認できる。その際、主な生成物である酢酸の他にも、微量の副生成物であるブチロラクトン、アセトン、エチルエーテル、酢酸エチル、テトラハイドロフランの存在を確認した。これらは、希塩酸中で最終的に酢酸が形成される過程における中間生成物が僅かに残留したものと考えられる。
【0048】
第二の方法は、酸性水溶液の存在下、上記の水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ粒子の凝集体に二酸化炭素ガスを接触させることで酢酸を合成する。具体的には、上記の水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ粒子の凝集体を希塩酸水溶液に懸濁し、その希塩酸水溶液中に二酸化炭素ガスの細泡を噴出させることで、効率よく水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ粒子凝集体と二酸化炭素ガスとを接触・反応させる。これを2日間程度続けた後、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ粒子凝集体と希塩酸水溶液とを固液分離する。分離された希塩酸水溶液を、ガス・クロマトグラフが直結された質量分析法(GCMS法)装置によって分析すると、酢酸CHCOOHの存在が確認できる。その際、主な生成物である酢酸の他にも、微量の副生成物であるブチロラクトン、アセトン、エチルエーテル、酢酸エチル、テトラハイドロフランの存在を確認した。これらは、希塩酸中で最終的に酢酸が形成される過程における中間生成物が僅かに残留したものと考えられる。
【0049】
上記酢酸の合成方法につき、いずれの方法においても、可視光下で、水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子に二酸化炭素ガスを接触させることが好ましい。可視光下では、水素化二酸化マンガンの表面にチャージされていたプロトンと水素が放出された後、再度、その表面で水の酸化分解が生じてプロトンと水素が表面にチャージされるため、連続的に二酸化炭素の還元反応を続けることができるからである。
【0050】
次に、二酸化炭素ガスからホルムアルデヒドを合成する方法について説明する。この方法は、上記二酸化炭素分解触媒材料を水溶液中に懸濁させ、この懸濁液に二酸化炭素ガスを接触させることで二酸化炭素ガスを分解し、ホルムアルデヒドを合成する。さらに具体的に説明すると、例えば、ガラス製の反応容器内に本発明の二酸化炭素分解触媒材料を水に懸濁させてマグネチック・スターラーで攪拌する。同時に、同反応容器には濃度99.9%の二酸化炭素ガスを満たしおく。同反応容器の上部に反応容器内で発生するガスを導出するためのテフロン(登録商標)製のチューブを設置して、そのテフロン(登録商標)製のチューブを、同じ二酸化炭素ガスを満たし、容器の底に数mlの水を配置した別の密閉容器につなげておく。この状態を24時間保つことで、密閉容器の中で二酸化炭素ガスが二酸化炭素分解触媒材料と反応した結果生じるホルムアルデヒトガスを密閉容器の数mLの水に溶解させてトラップする。24時間経過後に、各密閉容器を開封することで、まず、(1)ホルムアルデヒトに特有の臭気を感じることができる。(2)衛生試験法・注解(日本薬学会編集)によるアセチルアセトン法によって、密閉容器の数mlの水にホルムアルデヒトが溶解していることを示す発色反応を明確に確認できる。(3)分光光度計にて測定波長413nmで(2)で発色した水を分析することで、ホルムアルデヒトの溶存を確認できる。
【0051】
以上の手法によってホルムアルデヒトが全く存在しない反応系にホルムアルデヒトを検出できる。このことは、本発明の二酸化炭素分解触媒材料が二酸化炭素ガスを分解していることを証明するものである。なお、この方法においても、可視光下で、二酸化炭素分解触媒材料に二酸化炭素ガスを接触させることが好ましい。可視光下では、水素化二酸化マンガンの表面にチャージされていたプロトンと水素が放出された後、再度、その表面で水の酸化分解が生じてプロトンと水素が表面にチャージされるため、連続的に二酸化炭素の還元反応を続けることができるからである。
【0052】
以上の例では、マグネチック・スターラーを用いて水に懸濁させた各触媒材料を攪拌し、水および二酸化炭素ガスとの接触効率を高めているが、実際の工業的なプラントにおいては、例えば、工場から排出される排気ガスを本発明の二酸化炭素分解触媒材料を水に添加した容器に導入し、排気ガス自体のバブリングする力によって二酸化炭素分解触媒材料との充分な接触効率が得られるものと考えられるため、マグネチック・スターラーなどを利用した攪拌エネルギーをあえて使う必要が無いと言える。
【0053】
また、本発明では、糖の合成方法を提供する。この方法は、まず、上記の2価のマンガン化合物を焼成し、これを酸処理して水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子の凝集体ペーストを製造する。次いで、この凝集体ペーストを大気中で乾燥処理することで、糖を合成することができる。あるいは別の方法として、2価のマンガンイオンを含む水溶液を調製し、この水溶液に酸化剤およびアルカリ化合物を添加して酸化マンガンを沈殿させる。そして、この酸化マンガンの沈殿物を減圧ろ過器などで濾紙上に濾過回収した後、酸化マンガンの沈殿物が濾液でウェットになっている状態のまま、直ちに希酸に懸濁させて1時間程度酸処理を行う。この酸処理が終わった後、酸化マンガンの沈殿を再び減圧濾過器を使って濾紙上に回収し、さらに回収した水素化二酸化マンガンの沈殿をガラスシャーレに移して大気中で乾燥処理することで、糖を合成することができる。いずれの方法も、乾燥処理の際に、凝集体ペーストまたは水素化二酸化マンガンの沈殿から透明な液体がしみ出て、乾燥処理終了時には白色の粉末として凝固する。得られた白色粉末の主成分は塩化マンガンであるが、目的とするグルコースもこれに含まれており、糖の合成を確認することができる。
【0054】
次に、本発明の廃液の再利用方法について説明する。
【0055】
廃液とは、上述した水から酸素ガスを製造するための触媒材料の製造方法、あるいは二酸化炭素ガスから酢酸やホルムアルデヒド、糖を合成するための触媒材料の製造方法において、焼成した2価のマンガン化合物を酸処理液で酸処理した際に生じた、酸処理後の酸処理液である。以下に、より詳細に説明する。
【0056】
上述した触媒材料の製造方法において炭酸マンガンMnCO(2価のマンガン化合物)を低温で焼成する(たとえば180~300℃の温度で焼成する)と、図1(a)に示すように、炭酸マンガンの表面が酸化され、酸化マンガンMnを外殻とする焼成炭酸マンガンを得る。次に、たとえば希塩酸などの酸処理液に焼成炭酸マンガンを入れて懸濁させて、酸処理する。この酸処理によって、外殻の酸化マンガンMnが希塩酸と接触して塩素ガスが発生する。塩素ガスの影響を受けて外殻の酸化マンガンMnが二酸化マンガンMnOに変化し、外殻内部の炭酸マンガンMnCOは塩化マンガンMnClと二酸化炭素COと水HOに変化する(図1(b))。塩化マンガンMnClは、2価のマンガンイオンMn2+となり、炭酸成分は二酸化炭素COのガスとなり外殻内部での内圧を高め、結果としてマンガンイオンMn2+を含んだ二酸化炭素の気泡が水HOと共に、二酸化マンガン化した外殻の表面を通じて噴出する。この噴出の際に、マンガンイオンMn2+が外殻の二酸化マンガンMnOと効率良く接触するため、マンガンイオンMn2+の酸化反応が生じて、水素化した酸化マンガンを得る(図1(c))。また、発生した二酸化炭素ガスの一部は水素化した酸化マンガンと水中で接触することで、アルデヒト類の様な低級な有機物と変換され、これが水中のマンガンイオンMn2+や希塩酸と二酸化マンガンが発する次亜塩素酸などの酸化剤成分によって酸化され、酢酸が形成されるものと考えられる。一方で、一部のマンガンイオンMn2+は酸化反応せずに残存している。残存しているマンガンイオンMn2+は酸処理液に溶解しており、このマンガンイオンMn2+を含んだ酸処理液が廃液となる。
【0057】
酸処理するための酸処理液の濃度は、上述したように、酸の濃度が高いとマンガン化合物の溶解が多くなる場合があるので、濃度範囲0.01~1.0mol/lの範囲、より好適には0.1~0.5mol/lの範囲であることが好ましい。そして、廃液を再利用することを考慮すると、酸処理に供する焼成炭酸マンガンの量としては、濃度0.5mol/lの希酸2リットルに対して、焼成炭酸マンガン50g~70gが好ましく、より好ましくは55g~65g、とくには60g程度である。この理由は、濃度0.5mol/lの希酸2リットルに対して懸濁させる焼成炭酸マンガンの量が50g未満であると、得られる水溶液中での+2価のマンガンイオンMn2+濃度が低くなり、後述するが、本発明の廃液の再利用方法において酸化剤である過酸化水素とアルカリ化合物である水酸化ナトリウムを添加した際に反応するマンガンイオンが不足して、最終的に水溶液1リットル当たりから得られるR型二酸化マンガンの量が減少するため、好ましくない。また、懸濁させる焼成炭酸マンガンの量が50g未満の場合には、炭酸マンガンの溶解反応に伴う水の発生が少なくなって希酸のpHがあまり上昇しない。これは、次工程で、高価な水酸化ナトリウムの添加量を増加させてしまうことになり、コストの見地から好ましくない。なお、炭酸マンガンの溶解反応は以下の式で表すことができ、焼成炭酸マンガンを希塩酸で酸処理したときのものである。
MnCO+2HCl→MnCl+HO+CO
濃度0.5mol/lの希酸2リットルに対して懸濁させる焼成炭酸マンガンの量が70gを超える場合には、希酸のpHが炭酸マンガンの溶解反応に伴う水の発生で中性に達し、この結果、未溶解の炭酸マンガンが生じる。このため酸処理の回数を増やす必要が生じてしまい、結果として酸処理工程のコストが高くなる。したがって、酸処理に濃度0.5mol/lの希酸2リットルを用いた場合には、焼成炭酸マンガン60g程度を懸濁させることで、水溶液のpHを弱酸性にとどめ、かつ酸処理の回数を1度に止めることができる。
【0058】
本発明の廃液の再利用方法は、上記廃液に酸化剤とアルカリ化合物を添加して、酸化マンガンを沈殿させる。そして、この酸化マンガンの沈殿物を減圧ろ過器などで濾紙上に濾過回収した後、酸化マンガンの沈殿物が濾液でウェットな状態のまま、直ちに希酸に懸濁させて1時間程度酸処理を行う。この酸処理が終わった後、酸化マンガンの沈殿を再び減圧濾過器を使って濾紙上に回収し、さらに回収された酸化マンガンの沈殿をガラスシャーレに移して乾燥器内で120℃の下、12時間程度乾燥する。これら一連の操作によってR型二酸化マンガンのナノ粒子が凝集した状態で得られる。この得られたR型二酸化マンガンの凝集体は、触媒材料として利用できる。
【0059】
本発明で用いる酸化剤は、廃液中の2価のマンガンイオンから電子を奪うものであり、たとえば過酸化水素、オゾン、硝酸などを挙げることができるが、コスト、安全性の見地から過酸化水素を用いることが好ましい。アルカリ化合物は、酸化マンガンを沈殿させるために、水酸化ナトリウムを好適なものとして挙げることができるが、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ化合物であってもよい。
【0060】
酸化マンガンの沈殿物の酸処理およびその後の乾燥処理は、上述した触媒材料の製造時の酸処理と乾燥処理と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
さらに、本発明の廃液の再利用方法は、廃液に過マンガン酸カリウムを添加し、これを攪拌保持することで沈殿物を得る。この沈殿物を濾過回収し、これを乾燥することで二酸化マンガンを得ることができる。また、本発明では、廃液に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩、または、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩を添加して、これを攪拌保持することで炭酸反応が生じ、炭酸マンガンMnCOが得られる。この炭酸マンガンは、本発明の触媒材料の製造のための出発原料として使用することができる。
【0062】
以上のように本発明は、廃液を有効に再利用することができる。また、以上の方法によれば、高コストな浄化処理をほどこすことなく、安価でかつ容易に廃液中のマンガンイオンを除去することができるので、廃液の処理方法としても有用である。
【0063】
さらに、本発明は、R型二酸化マンガンの新規な製造方法を提供する。この製造方法によれば、まず、2価のマンガンイオンを含む水溶液を調製し、この水溶液に酸化剤およびアルカリ化合物を添加して酸化マンガンを沈殿させる。次いで、この酸化マンガンの沈殿物を減圧ろ過器などで濾紙上に濾過回収した後、酸化マンガンの沈殿物が濾液でウェットな状態のまま、直ちに希酸に懸濁させて1時間程度酸処理を行う。この酸処理が終わった後、酸化マンガンの沈殿を再び減圧濾過器を使って濾紙上に回収し、さらに回収された酸化マンガンの沈殿をガラスシャーレに移して乾燥器内で120℃、12時間程度乾燥する。これら一連の操作によってR型二酸化マンガンのナノ粒子が凝集した状態で得られる。この製造方法は、上記廃液の再利用方法においてR型二酸化マンガンの製造した方法と同様の方法であり、酸化剤およびアルカリ化合物も同様のものを用いることができる。たとえば、本発明で用いる酸化剤は、廃液中の2価のマンガンイオンから電子を奪うものであり、たとえば過酸化水素、オゾン、硝酸などを挙げることができるが、コスト、安全性の見地から過酸化水素を用いることが好ましい。アルカリ化合物は、酸化マンガンを沈殿させるために、水酸化ナトリウムを好適なものとして挙げることができるが、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ化合物であってもよい。
【0064】
2価のマンガンイオンを含む水溶液については、塩化マンガン、硫酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガンなどの+2価のマンガン塩を希酸などの水溶液に溶解したものを用いることができる。もちろん、上記廃液についても2価のマンガンイオンを含んでいるため、本発明の水溶液として用いることができる。
【0065】
酸化マンガンの沈殿物の酸処理およびその後の乾燥処理については、上述した触媒材料の製造時の酸処理と乾燥処理、あるいは廃液の再利用方法における酸処理と乾燥処理と同様であり、説明を省略する。
【0066】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本発明の実施態様が限定されることはない。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
<水から酸素ガスを製造するための触媒材料(酸素ガス製造触媒材料)の製造方法>
(焼成)
磁性ルツボに入れた純度99.9%の炭酸マンガンの粉末(和光純薬社製、特級試薬)25gを電気炉中で、200℃で6時間焼成して焼成炭酸マンガンの粉末を得た。
(酸処理)
50gの焼成炭酸マンガン粉末を0.5mol/lの希塩酸2Lに懸濁させ、1時間撹拝し、0.2マイクロメッシュのガラス繊維ろ紙(アドバンテック製GS25)を用いて吸引ろ過を行い固液分離した。ガラス繊維ろ紙上に分離された固形物を再び0.5mol/lの希塩酸1Lに懸濁させ、1時間攪拌し、再度吸引ろ過を行い固液分離した。この操作によって、焼成炭酸マンガンはR型の結晶構造をもった二酸化マンガンとイプシロン型の結晶構造をもった二酸化マンガンが混合した組成が水素化した状態の物質となる。結晶構造の同定には、SPring-8の放射光X線回折法を利用した。また、酸処理にあたって使用する酸を希塩酸の代わりに希硫酸、希硝酸を用いても同様な結果が得られた。
(乾燥処理1:直径:2~10nm、長さ:5~30nmのR型二酸化マンガンのニードルを合成する場合)
酸処理後に得られた水素化した状態の物質のペーストをガラスシャーレに移し、電気炉内で、大気圧下100℃で12時間乾燥してR型の結晶構造を主成分とする二酸化マンガンを得た。乾燥後に得られる形状は、酸処理後にガラスろ紙上に吸引ろ過された直後の円形平板状が乾燥によって収縮したセンチメートル・オーダーの大きさのフレーク状や塊状であるため、必要に応じてメノウ乳鉢で粉砕してマイクロメートル・オーダーの粉末とすることもできる。
【0068】
得られた物質について、粉末X線回折法によりR型の二酸化マンガンの回折ピークが得られること、およびX線吸収分析法によってマンガンの価数が4価であることが確認された。このことから、得られた物質がR型二酸化マンガンであることを同定した。また、本物質を透過型電子顕微鏡で観察することで直径が3nm、長さが5nm程度のナノニードルが多数の凝集体粉末を形成していることを確認した。さらに、窒素ガス吸着法による表面分析よって、得られた凝集体粉末の平均細孔直径が10nm程度のメソポーラス多孔体であることも確認された。図2は得られた同触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。また、図3は凝集体粉末がメソポーラス多孔体であることを示す窒素ガスの吸脱着等温線を示し、図4は凝集体粉末が細孔直径10nmに細孔分布のピークを有することを示す窒素ガス吸着法による細孔分布の分析結果である。BET比表面積は109.3m/g、また、細孔容積は0.32cm/gであった。
図5は得られた凝集体粉末がR型の二酸化マンガンであることを示す実験室粉末X線回折パターンである。図中、R型の二酸化マンガンの理論的な回折ピークが発生する回折角の位置を文献(Fong, C.; Kennedy, B. J. ; Elcombe, M. M. Zeitschrift Fuer Kristallographie, 1994, 209, 941.)のデータから示した。
(乾燥処理2:直径:3~10nm、長さ:10~200nmのR型二酸化マンガンのニードルを合成する場合)
酸処理後に得られた水素化した状態の物質のペーストをガラスシャーレに移し、ガラスシャーレに0.5Mの濃度の希塩酸を染み込ませたガラスろ紙(アドバンテックGS-25)2枚を重ねて蓋をした状態にして、電気炉内で、大気圧下100℃で12時間乾燥してR型の結晶構造を主成分とする二酸化マンガンを得た。乾燥後に得られる形状は、酸処理後にガラスろ紙上に吸引ろ過された直後の円形平板状が乾燥によって収縮したセンチメートル・オーダーの大きさのフレーク状や塊状であるため、必要に応じてメノウ乳鉢で粉砕してマイクロメートル・オーダーの粉末とすることもできる。
また、本物質を透過型電子顕微鏡で観察することで直径が3~10nm、長さが10~200nm程度のナノニードルが多数の凝集体粉末を形成していることを確認した。さらに、窒素ガス吸着法による表面分析よって、得られた凝集体粉末の平均細孔直径が10nm程度のメソポーラス多孔体であることも確認された。図6は得られた同触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。また、図7は凝集体粉末がメソポーラス多孔体であることを示す窒素ガスの吸脱着等温線を示し、図8は凝集体粉末が細孔直径25nm程度に細孔分布のピークを有することを示す窒素ガス吸着法による細孔分布の分析分析結果である。BET比表面積は53.7m/g、平均細孔直径は14.9nm、細孔容積は0.20cm/gであった。
(乾燥処理3:直径:10~30nm、長さ:30~300nmのR型二酸化マンガンのニードルを合成する場合)
酸処理後に得られた水素化した状態の物質のペーストに0.5Mの濃度の希塩酸を1ml滴下した状態でガラスシャーレに移し、その上に0.5Mの濃度の希塩酸を染み込ませたガラスろ紙(アドバンテックGS-25)2枚を重ねて蓋をした状態にした。さらに、ペーストと希塩酸を染み込ませたガラスろ紙を入れたガラスシャーレに対してより外径が大きいガラスシャーレをかぶせて蓋とした。これを電気炉内に移して、大気圧下100℃で12時間乾燥してR型の結晶構造を主成分とする二酸化マンガンを得た。乾燥後に得られる形状は、酸処理後にガラスろ紙上に吸引ろ過された直後の円形平板状が乾燥によって収縮したセンチメートル・オーダーの大きさのフレーク状や塊状であるため、必要に応じてメノウ乳鉢で粉砕してマイクロメートル・オーダーの粉末とすることもできる。
また、本物質を透過型電子顕微鏡で観察することで直径が10~30nm、長さ:30~300nm程度のナノニードルが多数凝集体粉末を形成していることを確認した。さらに、窒素ガス吸着法による表面分析よって、得られた凝集体粉末の平均細孔直径が18.7nm程度のメソポーラス多孔体であることも確認された。図9は得られた同触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。また、図10は凝集体粉末がメソポーラス多孔体であることを示す窒素ガスの吸脱着等温線を示し、図11は凝集体粉末が細孔直径20nm付近に細孔分布のピークを有することを示す窒素ガス吸着法による細孔分布の分析分析結果である。BET比表面積は46.5m/g、平均細孔直径は18.7nm、細孔容積は0.23cm/gであった。
【0069】
以上の製造方法によって、メソポーラス多孔質性を制御した本発明の酸素ガス製造触媒材料が得られた。
<実施例2>
<二酸化炭素ガスを分解し、酢酸やホルムアルデヒド、または糖を合成するための触媒材料(二酸化炭素分解触媒材料)の製造方法>
<水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料Aの製造>
(焼成)
磁性ルツボに入れた純度99.9%の炭酸マンガンの粉末(和光純薬社製、特級試薬)25gを電気炉中で、200℃で6時間焼成して焼成炭酸マンガンの粉末を得た。
(酸処理)
50gの焼成炭酸マンガン粉末を0.5mol/lの希塩酸2リットルに懸濁させ、1時間撹拝し、0.2マイクロメッシュのガラス繊維ろ紙(アドバンテック製GS25)を用いて吸引ろ過を行い固液分離した。つづいて、ガラス繊維ろ紙上に分離された固形物を再び0.5mol/lの希塩酸1Lに懸濁させ、1時間攪拌し、再度吸引ろ過を行い固液分離した。この操作によって、焼成炭酸マンガンはR型の結晶構造をもった二酸化マンガンとイプシロン型の結晶構造をもった二酸化マンガンが混合された状態で、水素化した二酸化マンガンとなる。この時点で得られた水素化した二酸化マンガンが、二酸化炭素ガスを分解する触媒として機能する二酸化炭素ガス分解触媒材料Aである。この酸処理にあったって使用する酸として希塩酸の代わりに希硫酸、希硝酸を用いても同様な結果が得られた。
<水素化R型二酸化マンガンのナノニードルの凝集体である触媒材料Bの製造>
(乾燥処理)
上記の触媒材料Aを上述の実施例1における乾燥処理1に従って、大気圧下100℃で12時間乾燥してR型の結晶構造を主成分とする二酸化マンガンを得た。乾燥後に得られる形状は、酸処理後にガラス繊維ろ紙上に吸引ろ過された直後の円形平板状が乾燥によって収縮したセンチメートル・オーダーの大きさのフレーク状や塊状であるため、必要に応じてメノウ乳鉢で粉砕してマイクロメートル・オーダーの粉末とすることもできる。
【0070】
得られた物質について、粉末X線回折法によりR型の二酸化マンガンの回折ピークが得られること、およびX線吸収分析法によってマンガンの価数が4価であることが確認された。このことから、得られた物質がR型二酸化マンガンであることを同定した。また、本物質を透過型電子顕微鏡で観察することで直径が2~10nm、長さが5~30nm程度のナノニードルが多数の凝集体粉末を形成していることを確認した。さらに、窒素ガス吸着法による表面分析よって、得られた凝集体粉末の平均細孔直径が11.7nm程度、BET比表面積が109.3m/gのメソポーラス多孔体であることも確認された。また、細孔容積は0.32cm/gであった
(再度の酸処理)
さらに、上述の乾燥処理によって得られたフレーク状、塊状、または、それらをメノウ乳鉢で粉砕した凝集体粉末を、0.5mol/lの希塩酸1リットルに懸濁させ、1時間撹拝し、0.2マイクロメッシュのガラス繊維ろ紙(アドバンテック製GS25)を用いて吸引ろ過を行い固液分離した。ガラス繊維ろ紙上に吸引ろ過された固形物が、二酸化炭素ガスを分解する触媒として機能する二酸化炭素ガス分解触媒材料Bである。この酸処理にあったっては使用する酸を希塩酸の代わりに希硫酸、希硝酸や、有機酸である0.5mol/Lまたは1mol/Lのトリフルオロ酢酸を用いても同様な結果が得られた。
【0071】
得られた触媒材料Bについて、粉末X線回折法によりR型の二酸化マンガンの回折ピークが得られること、およびX線吸収分析法によってマンガンの価数が4価であることが確認された。このことから、触媒材料Bの主成分がR型結晶構造をもつ二酸化マンガンであることを同定した。さらに、この再度酸処理を施されたR型結晶構造をもつ二酸化マンガンは、再度の酸処理を施す前のR型結晶構造をもつ二酸化マンガン(つまり、炭酸マンガンを酸処理後100℃で12時間、乾燥処理した二酸化マンガン)とは異なり、水中でパラジウムイオンや金イオンらを金属のパラジウムや金としてその二酸化マンガンの表面に析出させるといった水素化した二酸化マンガンに特有の性質を示すことから、上述のメソポーラス多孔体構造をもったR型二酸化マンガンが水素化して組成が(H,eMnOで表される、プロトンHと電子eを表面に保持した二酸化マンガンであることが確認された。また、図12は、上述の酸処理によって得られた水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料Aの実験室X線回折パターン、および、上述の再度の酸処理によって得られた水素化R型二酸化マンガンのナノニードルの凝集体である触媒材料Bの実験室X線回折パターンを表し、最下段には図5で示したR型二酸化マンガンの理論値を示す。この内、水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料Aの実験室X線回折パターンは極めてブロードであるため、SPring-8の放射光X線回折法を利用して詳細に分析した。その結果、同触媒材料AのペーストはR型と共にイプシロン型の二酸化マンガンを含んでいることが図12の最上段に示した二酸化炭素分解触媒Aに関する回折パターンからわかった。これに対して同触媒材料BではR型の二酸化マンガンの結晶構造を有し、かつ上述のようにプロトンと電子を含んでいることを示す。また、図13は、X線吸収端分析結果を示すものであり、標準物質A(マンガンの価数がプラス3価である酸化マンガン)、および標準物質B(マンガンの価数がプラス4価である酸化マンガン)と比べることで、同触媒材料Aのペーストに含まれるマンガンの価数がプラス4価であることがわかる。
<実施例3>
<水から酸素ガスを製造する方法1>
実施例1で得られた酸素ガスを製造するための触媒材料をメノウ乳鉢で粉砕した後、10gを容量線が200mLのガラス製の三角フラスコ内にテフロン(登録商標)製の攪拌子1個と共に移し、0.5mol/Lの希塩酸150mLを加えた後、シリコン栓で三角フラスコを密閉した。図14にこの様子を示す。この三角フラスコをマグネチック・スターラーに置いて24時間、内部の希塩酸と触媒材料を攪拌した。実験で使用したシリコン栓には、予め三角フラスコ内部の空気を採取するためのコック付きガラスチューブが設置されており、24時間経過時にフラスコ内部の空気を、そのガラスチューブを通じてガス採取用シリンジに採取し、さらにガス保管用のテドラーバックに移して発生した酸素濃度分析用サンプルとした。酸素濃度の分析にあたっては、実験装置近傍の空気、および、三角フラスコ内の空気の酸素濃度をガス・クロマトグラフィ法(島津GC-14AT)で、それぞれ6回、4回測定し、それらの平均値を計算した。その結果、24時間経過後の三角フラスコ内部から採取したサンプルの方が、330ppm酸素濃度が高い結果が得られた。本実験の反応系では酸素ガスを発生し得る物質は水しか含まれていないため、本発明の触媒材料が水を分解して酸素を発生させたことが証明された。
<実施例4>
<水から酸素ガスを製造する方法2>
前記の実施例3において、実施例1で得られた酸素ガスを製造するための触媒材料が、水を分解して酸素ガスを発生する触媒として機能することを示した。この反応系においては、水以外にも二酸化マンガンに酸素が含まれている。一般に、二酸化マンガンなどの酸化物は、金属に比べても非常に安定であるため、実施例3において検出された酸素ガスが、水を分解することによって得られたことを証明する必要がある。まず、酸素の同位体18Oから構成される水H18O(純度95wt%)1gに特級試薬の塩酸、または硫酸、またはトリフルオロ酢酸を適量添加することで、濃度0.5mol/Lの希酸を作成した。これに実施例1で得られた酸素ガス製造触媒材料を0.1g添加して、容量10mLの密閉バイアル容器内でテフロン(登録商標)製のマグネチック・スターラーで撹拌保持した。添加から1時間、3時間、15時間経過後の同密閉バイアル中のヘッド・スペースのガスをマイクロ・シリンジで採取し、ガス・クロマトグラフを直結した質量分析法(GCMS法)装置(島津ガス・クロマトグラフ質量分析計GCMS・QP5050A)によって、ヘッド・スペースのガス成分を分析した結果、希塩酸水溶液を使用した場合には1時間後に12.1ppmV濃度の同位体酸素34、および3.65ppmV濃度の同位体酸素36の発生を確認し、15時間後には87.45ppmV濃度の同位体酸素34、および94.2ppmV濃度の同位体酸素36の発生を確認した。つぎに、希硫酸水溶液を使用した場合には、3時間後に12.4ppmV濃度の同位体酸素34、および3.85ppmV濃度の同位体酸素36の発生を確認し、15時間後には41.1ppmV濃度の同位体酸素34、および47.75ppmV濃度の同位体酸素36の発生を確認した。トリフルオロ酢酸を使用した場合にも、時間の経過とともに同位体酸素の濃度が同様に上昇した。本発明の触媒材料を構成する二酸化マンガンに含まれる酸素は、天然の酸素同位体存在比に従って殆どが酸素16Oで構成されているため、18Oを含まない。このため、前記ヘッド・スペースに確認された酸素ガスOの質量が34や36であることから、実験に用いた同位体水が分解されて16Oと18Oが結合した34が検出され、18Oと18Oが結合した36が検出されたことがわかった。したがって、酸素ガスを製造するための触媒材料が水を酸化分解して酸素ガスが発生していることを証明できた。
<実施例5>
前記の実施例3および4において実施された水の酸化分解実験は、いずれも可視光下に置かれた反応容器内で酸素ガスの発生が確認された。本実施例では、可視光の照射の有無で反応容器内の酸素ガス発生の有無を確かめることによって、実施例3および4において使用された触媒材料が可視光によって機能する光触媒であることを確認した。
【0072】
実験では、実施例1に記載の方法によって得られた触媒材料20gをメノウ乳鉢で粉砕し、容量500mLのビーカーに満たした温度35℃の蒸留水に懸濁させて、マグネチック・スターラーで2時間攪拌後、ろ過回収し、大気中110℃で12時間乾燥処理したR型二酸化マンガンのナノニードルの凝集体を触媒材料として用いた。本実験では、大気中で乾燥された触媒材料表面の酸素ガスを可能な限り取り除くために大気中での乾燥処理が終わった後、-600cmHgの減圧デシケーター内で12時間置いた後、同デシケーター内にアルゴンガスを導入して大気圧まで戻した状態で、ガラス容器に触媒材料をアルゴンガス雰囲気中で密封した。これをアルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で、容量100mLのガラス容器内にとった予めアルゴンガスのバブリングによって溶存酸素濃度を0.1mg/L以下に調整した蒸留水50mL中に懸濁させて、セプタムによって直ちに密封した。同蒸留水には予め濃度0.1Mの希硫酸を0.1mL滴下してpHを酸性に調整した。以上の操作によって、密閉ガラス容器内で発生した酸素ガスが、大気中で乾燥された触媒材料表面の酸素ガスや予め蒸留水中に溶けていた溶存酸素起源である可能性を消すための実験条件を整えた。同実験条件下で、マグネチック・スターラーで密閉ガラス容器中の触媒材料を懸濁させた酸性蒸留水を蛍光灯下に置き、48時間攪拌した。その際、触媒材料と酸性蒸留水とを密封した密閉ガラス容器内の酸素ガス濃度は時間の経過とともに上昇した。一方、密閉ガラス容器の全表面に黒色の布テープを巻き付けて蛍光灯の光を遮断し、さらにステンレス製の筒を同密閉ガラス容器にかぶせて可能な限り遮光した場合には、密閉ガラス容器内の酸素ガス濃度にはほとんど濃度上昇がみられなかった。照射する光を蛍光灯ではなく、ハロゲンランプや太陽光にした場合も同じ傾向の結果が得られた。したがって、実施例1の触媒材料が植物の様に可視光を使って効率的に水を酸化分解して酸素ガスを発生させていることがわかった。
<実施例6>
<二酸化炭素ガスを分解し、ホルムアルデヒドを合成する方法>
実施例2で得られた二酸化炭素ガス分解触媒材料Bを10g、容量線が300mlのガラス製の三角フラスコA内にテフロン(登録商標)製の攪拌子1個と共に移し、pH5.6の蒸留水150mlを加えた後、純度99.9%の二酸化炭素ガスをフラスコA内部に充分導入して満たし、シリコン栓で三角フラスコAを密閉した。実験で使用したシリコン栓には、予め三角フラスコA内部の空気を採取するためのコック付きガラスチューブを設置し、さらに、そのガラスチューブにつながれたテフロン(登録商標)製のチューブを通じて、別の密閉された三角フラスコB内部にコックを開いた際に三角フラスコA内部で発生したガスを導入することができるようにした。図15にこの様子を示す。予め、三角フラスコBの内部には同様の二酸化炭素ガスとともに0.4mlの蒸留水を滴下してあるため、三角フラスコA内部で二酸化炭素ガスが分解されたことを示すホルムアルデヒトのガスが生じた場合には三角フラスコB内部の0.4mlの蒸留水に水溶性が高いホルムアルデヒトのガスが溶け込むことが予想された。マグネチック・スターラーでフラスコA内部の触媒材料を懸濁させた蒸留水を攪拌して二酸化炭素ガスとの接触を促進しながら24時間経過させた。時間の経過とともにフラスコAの内面には水滴が多数観察された。24時間経過時に、フラスコB内部の蒸留水にホルムアルデヒトだけに反応して発色する試薬を添加して所定温度に加温した。本分析手法は、ホルムアルデヒトの分析方法として最も信頼性の高い分析手法であるアセチルアセトン法(衛生試験法・注解、日本薬学会編集)である。その結果、ホルムアルデヒトが溶解した液に特有の発色反応が見られた。シリコン栓を抜いた各フラスコ内部には、ホルムアルデヒトに特有の刺激臭が充満していることも併せて確認した。さらに、アセチルアセトン法で発色したサンプル液に対して分光光度計(島津UV-3100PC)を用いて、同発色が、ホルムアルデヒトが水に溶解した際に特徴的な吸収波長である413nmを分析した結果、フラスコB内部の0.4mLの蒸留水がホルムアルデヒトを含むことを確認した。以上の様に、全く今回の実験系の初期状態には存在しないホルムアルデヒトが反応系の中で生じていることが明らかになった。ホルムアルデヒトはCHOの化学式をもつ物質であるが、本発明の実施例2の触媒材料が、以下に示す化学式によってホルムアルデヒトと水を発生したものと考えられる。
4(H,e)MnO + CO → 4MnO+ CHO + H
この内、(H,e)MnOは、水素化されたR型二酸化マンガンの組成を表す。また、COは二酸化炭素ガス、CHO はホルムアルデヒト、HOは水を表す。
【0073】
また、実施例2で得られた二酸化炭素ガスの分解触媒材料Aを20g使用した同様な実験においても、同様な実験条件と手法によって最終的にホルムアルデヒトの発生が確認された。
<実施例7>
<水の酸化分解によって電気を取り出す方法1>
実施例1によって得られたR型二酸化マンガンを主成分とする触媒材料のフレーク(厚み3mm、幅10mm、長さ12mm)の上面および下面に、それぞれ7mm角の白金メッシュ(300メッシュ)を密着させて配置した。フレーク上面の白金メッシュをマイナス極、フレーク下面の白金メッシュをプラス極とし、フレーク上面をパラフィルム(PECHINEY PLASTIC PACKAGING, MENASHA, WI 54952製)を使って大気と隔離したスペースを作り、そのスペースに、バブラーを使って蒸留水を通過して水分を含んだ水素ガス(純度99.9%ジーエルサイエンス社製0.8MPa)を噴入した。一方、フレーク下面の白金メッシュは大気に解放してあり、水素ガスとは接触しない系を作成した。フレーク上面のスペースへの水分を含んだ水素ガスの噴入を数回繰り返すと、上述のマイナス極とプラス極の間にプラスの電位の発生が確認された。両極間の電位は、フレーク上面のマイナス極に水分を含んだ水素ガスを噴入した瞬間に、噴入前の初期値マイナス0.01mV~プラス0.01mVから、プラス1~12mVに一気に上昇し、その後すぐにプラス0.1mV程度まで下がった。電位の発生は、明らかに水分を含んだ水素ガスの噴入のタイミングに同期しており、フレーク上面のマイナス極で水が分解されて電気エネルギーが発生していることが証明された。ちなみに、数回、水分を含んだ水素ガスを噴入すると、その後は大気中の空気を同様のバブラーを通して噴入することで、両極に電位が生じるようになることから、本反応系における水素ガスの役割は、白金メッシュとの接触で水素ガスが白金の触媒効果で水素イオンとなってマイナス極側の本発明の二酸化マンガンの表面の水分に溶け込むことで水分を酸性にし、実施例3に記載した様な酸性の水の中におかれて酸素ガスを発生しながら水を酸化分解する状態が生じているものと考えられる。つまり、水素ガスや水から供給された水素イオン(プロトン)はマイナス極側の水分に溶け込み、電子は白金メッシュに捕捉されて電圧計につながった外部回路に取り出されていることになる。したがって、本実施例によって、本発明の実施例1の酸素ガス製造触媒を用いた水の酸化分解反応からは、酸素ガスだけでなく電気エネルギーも得られることが証明された。
【0074】
なお、本実施例で使用したR型二酸化マンガンのフレークの代わりに、結晶構造の異なるベータ型の二酸化マンガンのフレークを使った実験では、同様の実験を行っても全く電圧は発生しなかった。したがって、水の酸化分解にはR型の結晶構造を有する二酸化マンガンが有効であることが分かった。
<実施例8>
<水の酸化分解によって電気を取り出す方法2>
実施例7の実験精度を高めた実験を試みた。実験にあたっては、実施例1で得られたR型二酸化マンガンをメノウ乳鉢でよく粉砕したのち、ペレット製造機で10トンの力を印加して直径20mm、厚み1mmのコイン型ペレット(図16)を作成した。このペレットに0.5Mの希塩酸を2滴、滴下した後150℃で12時間加熱してペレットの強度を高めた。このペレットを図17に示したシステムに設置し、空気とバブラーで加湿した水素ガスとを図17の様に供給し、ペレット上下面にそれぞれ配置した白金メッシュ(100メッシュ)間に生じる電位差を調べた。その結果、ガスの供給開始直後から+10mVの電位差が安定して計測され、ガスの供給を止めると電位差は直ちに0mVとなった。前述の実施例7では使用したR型二酸化マンガンのフレークが本実施例8の場合よりも小さいためにガスとの接触面積が少ないために得られた電位差が本実施例の場合よりも不安定で小さくなったことが考えられる。したがって、本実施例の結果から、水を含んだガスとの接触面積が大きくなれば安定して高い電位差を水の酸化分解によって作り出せることがわかった。
<実施例9>
<水の酸化分解によって電気を取り出す方法3>
実施例8の実験精度をさらに高めた実験を試みた。実施例8では、R型二酸化マンガン・ペレットの片面に空気を供給し、もう一方の片面には蒸留水を満たしたバブラーを通すことで加湿した水素ガスを供給した。その際、R型二酸化マンガンを水素化するための水素イオンは、供給した水素ガスが白金メッシュと接触することで分解して発生する水素イオンであった。しかしながら、その水素ガスの分解反応では白金メッシュとの接触によって水素イオンと共に電子もまた発生している。このため、水素ガス起源の電子と、水の酸化分解による水分子起源の電子とが混じってしまい、この結果、ペレットの表裏間に発生している電位差には、水の酸化分解による電子がもたらす電位差だけではなく、水素ガスの分解による電子がもたらす電位差が足し算されて計測されている。このため、本実施例の実験では、水素ガスの代わりにバブラーに満たした0.5M濃度の希塩酸で加湿した空気をペレットの片面に供給し、別の片面には実施例8と同様に乾き空気を供給して電気を取り出す実験を試みた。ちなみに、希塩酸中の塩酸分子HClは、分解してもHとClとに別れるだけで電子は発生しないため、水の酸化分解によって得られる電位差だけを検出できる。
【0075】
実験にあたっては、実施例1で得られたR型二酸化マンガンをメノウ乳鉢でよく粉砕したのち、ペレット製造機で15トンの力を10分間印加して直径20mm、厚み1mmのコイン型ペレットを作成した。このペレットを、0.5Mの希塩酸で適度に濡らしたスライドガラス2枚で上下から挟み込み、空気中、150℃で12時間加熱してペレットの形を歪ませることなくペレットの強度を高めた。このペレットを図18に示したシステムに設置し、空気と、0.5M濃度の希塩酸を満たしたバブラーを通すことで加湿した乾き空気とを図18の様に供給し、ペレット上下面にそれぞれ配置した白金メッシュ(100メッシュ)間に生じる電位差を調べた。その結果、希塩酸で加湿された空気の供給開始から徐々に電位差が上昇し、80分後には+0.632mVの電位差が安定して計測された。また、希塩酸で加湿された空気の供給を止めた後、希塩酸で加湿しない乾き空気を送り込み希塩酸で湿ったペレットの表面を乾燥すると、電位差は+0.632mVから徐々に低下して20分後に0mVになった。本実施例で得られた電位差の最大値が前述の実施例8の場合に比べて少ない理由は、先に述べたように、実施例8で得られた電位差が水素ガス起源の電子による電位差を含んでいたことによるものと考えられる。したがって、本実施例9の結果から、R型二酸化マンガンが希塩酸中の水素イオンによって水素化されることで水を酸化分解していることが、いっそう正確に確かめられた。
【0076】
また、前述の実施例7や8の場合の様にR型二酸化マンガン・ペレットに水素ガスを供給した場合と、本実施例9の場合の様にR型二酸化マンガン・ペレットに水素ガスを含まない空気や水を供給した場合において、供給後の電位差発生の応答性を比較すると、実施例7や8ではR型二酸化マンガン・ペレットに水素ガスを供給した際、直ちに電位差が観測され、供給を止めると直ちに電位差が0mVに低下したことに比べて、水素ガスを供給していない実施例9の場合には、供給後、徐々に電位差が上昇し、供給を止めた際にも電位差は直ちに0mVには低下せず徐々に低下して、応答性や得られる電位差の値は水素ガスを導入した実施例7や8の場合に比べて明らかに低い。これは、図17に示した実施例8のシステムが、水素ガスセンサーとして機能していることを示すものである。したがって、図17および図18の様にR型二酸化マンガンのペレットを白金メッシュの電極で挟み込み、ペレットの片面から水素ガスを含む空気を導入し、別の片面には空気を導入して、白金メッシュ間に発生する電位差を測定することで、空気中の水素ガスの存在を確認できることが証明された。
<実施例10>
<固体酸化物型燃料電池の電解質としての応用>
実験では、実施例1に記載の方法によって得られた触媒材料20gをメノウ乳鉢で粉砕し、容量500mLのビーカーに満たした温度40℃の蒸留水に懸濁させて、マグネチック・スターラーで2時間攪拌後、ろ過回収し、大気中110℃で12時間乾燥処理して、R型二酸化マンガンナノニードル凝集体の表面から不純物である塩化マンガンを除去した。同処理を施した触媒材料の粉末0.6gに対してペレット製造機で10分間640kgf/cmの圧力を印加して直径20mm、厚み0.7mmのコイン型ペレットを作成した。このペレットを図17と同様のシステムに設置し、ペレットの各面に35℃の乾き空気と、35℃濃度0.5Mの希塩酸を満たしたバブラーを通して希塩酸で加湿した水素ガスとを図17同様の条件で供給した。そして、室温下のペレット上下面にそれぞれ配置した白金メッシュ(100メッシュ)間に生じる起電力を調べた。その結果、図19の上図および下図に示したように、水素ガスの供給・停止を繰り返すうちに起電力が上昇し、最終的に+0.6Vを超える起電力が計測された。水素ガスを燃料とした場合の理論起電力が約+1.1Vであることを考慮すると、本実験で得られた最大起電力+0.6Vは理論値の50%程度に達していることがわかる。この様な高い起電力が得られることは同ペレットがプロトン導伝性を有する電解質として機能していることを示しており、R型二酸化マンガンを主成分とする電解質を用いることで、室温下で働く燃料電池を実現できることが証明された。
<実施例11>
<水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料を用いて糖を合成する方法>
実施例2に示した水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料Aを希塩酸で湿った状態のままガラスシャーレに移し、そのガラスシャーレに細孔を多数空けたアルミホイルのカバーをかけて、強制対流式の乾燥機(東京理科器械/送風低温乾燥器 WFO-451SD)内で、120℃で12時間乾燥した。乾燥処理中、触媒材料Aの乾燥処理が進行するに従って、触媒材料Aから塩化マンガンを主成分とする透明な液体が触媒材料Aの周りにしみ出てくるのが観察された。この透明な液体は、乾燥処理の終了時には白色の粉末として凝固した。この白色粉末の主成分は、塩化マンガンであるが、グルコースなどの糖類を含むかどうかを、ガス・クロマトグラフを直結した質量分析法(GCMS法)で調べた。分析結果を以下に述べる。図20は、グルコース標準品の10%水溶液5μlをよく脱水した後、グルコースの5つの水酸基をトリメチルシリル化して揮発性をあげてGCMS法(島津ガス・クロマトグラフ質量分析計GCMS-QP5050A)で分析した結果である。ピーク番号の1,2,3は、図21のマス・スペクトルに示した構造を持つグルコースである。構造式にTと表記したものは、元の-OH基のHがトリメチルシリル(CHSiと置換されたものである。図22は、白色粉末試料4mgをピリジン0.4mlに溶かしてトリメチルシリル化して分析した結果であり、グルコースが痕跡程度ではあるが白色粉末の試料中に含まれていることが検出された。さらに、図23は、白色粉末試料5mgを蒸留水0.5mlに溶かした後、10%硫酸を滴下し、その溶液50μlを脱水後トリメチルシリル化したもので、ピーク2、3が大きく検出されたが、ピーク1は検出されなかった。これは、水中ではピーク1のフラノース体グルコースの存在が1%にも満たないという従来のグルコースに関する一般的な知見と合致する。ちなみに、ピーク2はα-ピラノース体グルコース、ピーク3はβ-ピラノース体グルコースである。一般に水中で平衡状態に達した際の、α-ピラノース体グルコースの存在比38%、β-ピラノース体グルコースは62%とされている。ところが、本実験の白色粉末試料から得られた水溶液に含まれていたα-ピラノース体グルコースとβ-ピラノース体グルコースの存在比は、図23から明らかなようにα-ピラノース体グルコースの存在量を示すピーク2の方が、β-ピラノース体グルコースの存在量を示すピーク3よりも強度が高く検出されており、先に記述した一般的な水溶液中での両グルコースの存在比に比べてα-ピラノース体グルコースの存在がリッチになっている。これは、水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料から人工的に合成されたグルコースに特有の存在比であるものと予想される。また、今回の実験では、硫酸で試料を加水分解しており、その結果、グルコースが強く検出されたということは、グルコースがより分子量の大きな物質と結合した状態で、白色粉末中に含まれていた可能性が強いと考えられる。そのより大きな物質がショ糖などの二糖類であれば、それらはそのまま同じ手法で検出されるので、今回の試料中ではグルコースが二糖類よりも高分子の物質と結合しているものと考えられる。そこで、硫酸で試料を加水分解する前に試料に対してヨウ素液を添加した。ヨウ素液は、ヨウ化カリウム0.1gを水20mlに溶かした液に、ヨウ素0.1gを溶かし、水を加えて全体を300mlにして作成した。このヨウ素液を添加した試料の溶液はヨウ素液の色から極薄い紫色に変色した。これはヨウ素でんぷん反応に特徴的な色の変化である。したがって、同試料にはでんぷんが含まれていたものと予想された。ちなみに、でんぷんを硫酸で加水分解するとグルコースが発生することは一般的によく知られた反応である。つまり、水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料を乾燥処理した際に、空気中の二酸化炭素などの大気成分と接触することで、ホルムアルデヒトCHOだけではなく、より高分子なでんぷんが生じていることを確認できた。ちなみに、ホルムアルデヒトCHOは全ての多糖類を構成する鎖の端に存在する有機物であり、これに鎖状に炭素や酸素などで形成される化合物が連なることで、グルコースC12やでんぷんを形成することが一般的に知られている。でんぷんは、分子式(C10の炭水化物(多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子である。また、グルコースは代表的な単糖のひとつでありブドウ糖とも呼ばれる。人間をはじめ動物や植物の活動のエネルギーになる物質の一つであり、脳の唯一のエネルギー源としても知られている。
<実施例12>
<廃液の再利用方法1、R型二酸化マンガンの合成方法>
実施例1の酸処理の際に、固液分離した液相部分を廃液として用いた。この廃液はマンガンイオンを高濃度で含むpHが弱酸性の水溶液である。この水溶液中のマンガンイオン濃度をICP発光分析法で測定した結果、水溶液中のマンガンイオン濃度がほぼ10000ppmであることを確認した。
【0077】
上記廃液500mlに対して、濃度30%の過酸化水素H水溶液(和光純薬工業製)10mlを添加し、5分間マグネチック・スターラーで攪拌後、濃度1mol/lの水酸化ナトリウムNaOH水溶液3.5mlを加えて10分間攪拌保持した。水酸化ナトリウム水溶液を加えた際、直ちに黒色の酸化マンガンの沈殿が生じる様子が観察された。この沈殿を生じた水溶液を20分攪拌保持後、ガラスろ紙(アドバンテック製GS-25)を使って減圧濾過することで、ろ紙上に黒色の酸化マンガンの沈殿物を回収し、これを回収後のウェットな状態のまま濃度0.5mol/lの500mlの希塩酸(または希硫酸)に懸濁させて1時間マグネチック・スターラーで攪拌保持した。この攪拌保持後、ガラスろ紙(アドバンテック製GS-25)を使って再び減圧濾過する操作で、ろ紙上に酸処理された黒色の酸化マンガンの沈殿物を回収した。この酸処理された黒色の酸化マンガンの沈殿物をガラスシャーレに移し、以下に記載の乾燥処理に供した。
【0078】
乾燥処理:直径:2~10nm、長さ:5~30nmのR型二酸化マンガンのニードルを合成
酸処理後に得られたウェットなペースト状態の酸化マンガンをガラスシャーレに移し、強制対流式の乾燥器内で、大気圧下120℃で12時間乾燥した。乾燥後に得られる酸化マンガン形状は、酸処理後にガラスろ紙上に吸引ろ過された直後の円形平板状が乾燥によって収縮したセンチメートル・オーダーの大きさのフレーク状や塊状であるため、必要に応じてメノウ乳鉢で粉砕してマイクロメートル・オーダーの粉末とすることもできる。
【0079】
得られた酸化マンガンについて、粉末X線回折法によってR型の二酸化マンガンの回折ピークが得られること、およびX線吸収分析法によってマンガンの価数が4価であることが確認された。このことから、得られた物質がR型二酸化マンガンであることを同定した。また、本物質を透過型電子顕微鏡で観察することで直径が3nm、長さが5nm程度のナノニードルが多数の凝集体粉末を形成していることを確認した(図24参照)。また、図25(a)の上段のグラフは、得られた凝集体粉末がR型の二酸化マンガンであることを示す実験室粉末X線回折パターンを示している。図25(a)の下段のグラフは、R型の二酸化マンガンの理論的な回折ピークが発生する回折角の位置を文献(Fong, C.; Kennedy, B. J. ; Elcombe, M. M. Zeitschrift Fuer Kristallographie, 1994, 209, 941.)のデータからtheoryとして示した。図25(b-1)~図25(b-3)には、+3価の酸化マンガンであるalpha-Mn,beta-Mn,alpha-MnOOHらのX線回折パターンを載せた。図25(a)の得られた凝集体粉末のX線回折パターンは、図25(b-1)~図25(b-3)の+3価の酸化マンガンとは異なるX線回折パターンであることから、本実施例で合成した酸化マンガンにはこれらの+3価の酸化マンガンが含まれていないことを確認した。
以上の製造方法によって、+2価のマンガンイオンを含む水溶液を出発原料として、ナノスケールのR型二酸化マンガンが得られた.
なお、この例では、直径:2~10nm、長さ:5~30nmのR型二酸化マンガンのニードルを合成したが、乾燥処理を実施例1に示すように制御することで、所定の大きさのR型二酸化マンガンのニードルを得ることができる。さらに、R型二酸化マンガンを水から酸素ガスを製造するための触媒材料として用いることもできる。
【0080】
この実施例において、酸処理された酸化マンガンの沈殿物をろ過回収後、大気中で乾燥処理した際に、ホルムアルデヒド特有の刺激臭が発生したことを確認した。酸化マンガンを酸処理することで、水素化酸化マンガン(H,eMnOが得られるが、大気中には二酸化炭素が含まれているため、この二酸化炭素が水素化酸化マンガンと接触してホルムアルデヒドが発生したものと推察できる。よって、二酸化炭素からホルムアルデヒドを合成するための触媒材料としても利用できることが確認できた。
【0081】
また、実施例2の酸処理で生じた廃液を用いても、R型二酸化マンガンを得ることができることを確認した。
【0082】
この実施例では、実施例1の酸処理した際の廃液を用いたが、これに限らず、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガンなどの+2価のマンガン塩を希酸などの水溶液に溶解した、2価のマンガンイオンを含む水溶液を用いても、R型二酸化マンガンを得ることができることを確認した。
<実施例13>
<廃液の再利用方法2>
実施例1の酸処理で生じた廃液500mlに+7価のマンガン塩である過マンガン酸カリウム粉末(和光純薬工業製)を同水溶液中の+2価のマンガンイオン量に対してほぼ等モルの+7価のマンガン量となるように添加した。この過マンガン酸カリウムを添加した水溶液を1時間攪拌・保持した後、同水溶液中に沈殿発生した酸化マンガンを、減圧濾過器を使ってガラスろ紙(アドバンテック製GS-25)上に回収した。回収した酸化マンガンを強制対流式の乾燥器内で120℃の下12時間乾燥した。この乾燥処理後に得られた酸化マンガンの凝集体粉末に関するX線回折パターンを図26に示した。図26のX線回折パターンは、R型の二酸化マンガンのX線回折パターンとは明らかに異なっており、またアルファ型やベータ型などの他の二酸化マンガンのパターンとも完全には一致しない。このため幾つかの結晶構造の酸化マンガンが混相しているものと考えられる。このことから、本実施例によって、+2価のマンガンイオンを含む水溶液からR型二酸化マンガンとは結晶構造の異なる酸化マンガンが得られることがわかった。
<実施例14>
<廃液の再利用方法3>
実施例1の酸処理で生じた廃液1リットルに、炭酸ソーダNaCO(和光純薬工業製)を水溶液中に存在する+2価のマンガンイオン個数の約2倍の個数に相当する炭酸量COを含む炭酸ソーダNaCOを添加し、マグネチック・スターラーで1時間攪拌保持することで、炭酸マンガンMnCOの沈殿が得られた。この反応は炭酸反応と呼ばれ、炭酸マンガンや炭酸ニッケルなどをはじめとする一般的な炭酸塩を製造する際によく使われている反応である。本実施例では、焼成炭酸マンガンを濃度0.5mol/Lの希塩酸や希硫酸などの希酸で酸処理した際に発生する水溶液においても、炭酸マンガンを合成するために一般的な炭酸塩を得るための方法が有効であることを確認した。
<実施例15>
<水素化二酸化マンガンのナノ微粒子の凝集体からなる触媒材料を用いて酢酸を合成する方法>
炭酸マンガン試薬特級(和光純薬工業製)25gをセラミックのルツボにとり、これを6時間200℃で電気炉を使って焼成した。この様にして焼成された炭酸マンガン(焼成炭酸マンガン)60gを濃度0.5mol/Lの希塩酸2Lに懸濁させて1時間酸処理した。この酸処理の際に希塩酸水溶液中で生じる水素化二酸化マンガンを主成分とするナノ微粒子と焼成炭酸マンガンから噴出する二酸化炭素ガスが効率的に接触することで酢酸CHCOOHが合成された。その際、酸処理が進むにつれて酢酸臭が発生し、かつ酸処理後に固液分離された希塩酸中に酢酸が存在することを、ガス・クロマトグラフを直結した質量分析法(GCMS法)装置によって確認した。同分析にあたっては、酸処理後の希塩酸25mLをサンプリングし、密閉バイアル容器に入れて室温で放置した後、マイクロ捕集管(StableFlexCarboxen/ポリジメチルシロキサン;CAR/PDMS)をサンプルに浸して有機成分をトラップした。トラップした捕集管を250℃に加熱されたガス・クロマトグラフに直結した質量分析装置(島津ガス・クロマトグラフ質量分析計GCMS-QP5050A)の注入口に挿入して3分間放置してトラップされたガス成分を追い出してトラップされたガス成分を分析した。図26に、固液分離された希塩酸中に酢酸CHCOOHおよびブチロラクトンCHが検出された結果を示す。また、酸処理後に希塩酸と分離された水素化二酸化マンガンの凝集体からなるペーストからは、図28に示したように、主生成物である酢酸の他にも微量の副生成物としてアセトンCHCOCH、ジエチルエーテルCOCH、酢酸エチルCHCOOC、ジメチルブタンn-C14、テトラハイドロフランCO、硫化炭素CSなどの成分が発生していることを検出した。これら副生成物の起源は、酸処理の際に希塩酸中で最終的に酢酸が形成される過程における中間生成物として発生したものと考えられる。ただし、硫化炭素CSに関しては硫黄Sの起源が不明である。
<実施例16>
<水素化R型二酸化マンガンのナノニードルの凝集体(実施例2における触媒材料B)を用いて酢酸およびアセトアルデヒドを合成する方法>
図29aに示したマグネチック・スターラー上に設置したガラス製フラスコの中に、木下式ガラスボール・フィルター503GNo.4を挿入し、二酸化炭素ガス(濃度97%)をボンベから同ガラスボール・フィルターを通じてフラスコ内に導入する反応容器を準備した。この反応容器に、実施例2で得た触媒材料Bを0.5moL/Lの希塩酸水溶液100mLに懸濁させた状態で密閉し、その懸濁液を反応容器内に入れたテフロン(登録商標)製のマグネチック撹拌子で撹拌した。この状態で、同反応容器内の希塩酸中にガラスボール・フィルターを通じて二酸化炭素ガスを細泡化しながら、ボンベに付属した調圧器の目盛りの読みで6.4MPaの圧力で噴出させた(図29b参照)。同反応容器からオーバーフローする二酸化炭素ガスは、図29aおよびbの写真中の左端に示したイオン交換純水を50mL入れたバブラーを通じて排気した。二酸化炭素ガスの導入開始から20時間経過後に、二酸化炭素ガスの導入を止めた後、静置して触媒材料Bの沈殿を待ってフラスコ内の上澄みから希塩酸をサンプリングした。サンプリングされた希塩酸25mLを密閉バイアル容器に入れて室温で放置した後、マイクロ捕集管(StableFlexCarboxen/ポリジメチルシロキサン;CAR/PDMS)をサンプルに浸して有機成分をトラップした。トラップした捕集管を250℃に加熱されたガス・クロマトグラフに直結した質量分析装置(島津ガス・クロマトグラフ質量分析計GCMS・QP5050A)の注入口に挿入して3分間放置してトラップされたガス成分を追い出してトラップされたガス成分を分析した。
【0083】
分析の結果を図30に示す。図30では、酢酸CHCOOH特有のピークおよびアセトアルデヒドCHCHOのピークが見られることから、サンプル中に酢酸および少量のアセトアルデヒドの存在を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】水素化した酸化マンガンの合成とその際に生じる廃液を説明するための概略図ある。
【図2】実施例1の触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1における凝集体粉末の窒素ガスの吸脱着等温線である。
【図4】実施例1における凝集体粉末の窒素ガス吸着法による細孔分布である。
【図5】実施例1における凝集体粉末のX線回折パターンである。
【図6】実施例1の触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1における凝集体粉末の窒素ガスの吸脱着等温線である。
【図8】実施例1における凝集体粉末の窒素ガス吸着法による細孔分布である。
【図9】実施例1の触媒材料の透過型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例1における凝集体粉末の窒素ガスの吸脱着等温線である。
【図11】実施例1における凝集体粉末の窒素ガス吸着法による細孔分布である。
【図12】実施例2における凝集体粉末のX線回折パターンである。
【図13】実施例2における凝集体粉末のX線吸収端パターンである。
【図14】実施例3における酸素発生実験を示す写真である。
【図15】実施例6における二酸化炭素分解実験を示す写真である。
【図16】実施例8で使用したR型二酸化マンガンの凝集体からなるペレットを示す写真である。
【図17】実施例8において、水の酸化分解によって発生する電圧を測定するシステムを示す図である。
【図18】実施例9において、水の酸化分解によって発生する電圧を測定するシステムを示す図である。
【図19】実施例10における起電力の測定結果である。
【図20】実施例11において、グルコース検出のために、グルコースの標準液をガスクロマトグラフ質量分析法で分析した結果である。
【図21】グルコース-トリメチルシリル体のマス・スペクトルである。
【図22】実施例11における白色粉末をピリジンに溶かしてトリメチルシリル化して分析した結果である。
【図23】実施例11における白色粉末を蒸留水に溶かした後、硫酸を滴下し、その溶液を脱水後トリメチルシリル化して分析した結果である。
【図24】実施例12で得た凝集体粉末の透過型電子顕微鏡写真である。
【図25】実施例12における凝集体粉末のX線回折パターンである。
【図26】実施例12における凝集体粉末のX線回折パターンである。
【図27】実施例15において、実験後の希塩酸水溶液に含まれる酢酸のマス・スペクトルである。
【図28】実施例15において、実験後の水素化二酸化マンガンの凝集体からなるペーストから発生したガスのマス・スペクトルである。
【図29】実施例16における反応容器を示す写真である。
【図30】実施例16において、実験後の希塩酸水溶液に含まれる酢酸およびアセトアルデヒドのマス・スペクトルである。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図12】
8
【図13】
9
【図19】
10
【図20】
11
【図21】
12
【図22】
13
【図23】
14
【図25】
15
【図26】
16
【図27】
17
【図28】
18
【図30】
19
【図2】
20
【図6】
21
【図9】
22
【図14】
23
【図15】
24
【図16】
25
【図17】
26
【図18】
27
【図24】
28
【図29】
29