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明細書 :金属錯体で修飾された金微粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5129110号 (P5129110)
公開番号 特開2010-150629 (P2010-150629A)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
公開日 平成22年7月8日(2010.7.8)
発明の名称または考案の名称 金属錯体で修飾された金微粒子
国際特許分類 B22F   1/02        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
FI B22F 1/02 B
B22F 1/00 K
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2008-332092 (P2008-332092)
出願日 平成20年12月26日(2008.12.26)
審査請求日 平成23年6月22日(2011.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】北川 宏
【氏名】金井塚 勝彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100115152、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 茂
審査官 【審査官】田中 永一
参考文献・文献 国際公開第2006/059664(WO,A1)
特開2008-161754(JP,A)
調査した分野 B22F 1/02
B22F 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
金微粒子と、
前記金微粒子の表面に配置された複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸と、
前記複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸に配位結合している複数のポルフィリン金属錯体と備え、
前記ポルフィリン金属錯体は、ポルフィリンコバルト(II)錯体およびポルフィリン亜鉛(II)錯体から選ばれる少なくとも1種である、金属錯体で修飾された金微粒子。
【請求項2】
前記複数のポルフィリン金属錯体上に構築された、3次元構造を有する金属錯体をさらに備え、
前記金属錯体は、金属イオンと、前記金属イオンに配位結合する複数の部位を備える有機化合物とによって構成されている、請求項1に記載の、金属錯体で修飾された金微粒子。
【請求項3】
前記有機化合物が4,4’-アゾピリジンである、請求項2に記載の、金属錯体で修飾された金微粒子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体で修飾された金微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属微粒子は、触媒や微小電極としての利用価値が高いため、従来から様々な研究が進められてきた(たとえば特許文献1)。たとえば、金微粒子の製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0003】
一方、配位高分子や金属錯体は、光学的、磁気的、電気化学的に興味深い特性を示すため、従来から研究されている。たとえば、金属錯体や配位高分子からなる構造体が提案されている(特許文献3および4)。
【0004】

【特許文献1】特開2006-183092号公報
【特許文献2】特開2003-342622号公報
【特許文献3】特開2005-255651号公報
【特許文献4】特開2007-63448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属錯体と金属微粒子とを組み合わせることによって、様々な機能を発現させることが可能となることが期待される。特に、3次元構造を有する金属錯体と金属微粒子とを組み合わせることによって、高い機能を付与できる可能性がある。
【0006】
このような状況において、本発明は、金属錯体で修飾された新規な金微粒子を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために検討した結果、本願発明者らは、特定の方法によって、金属錯体で修飾された新規な金微粒子を製造できることを見出した。本発明は、この新たな知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明の微粒子(金属錯体で修飾された金微粒子)は、金微粒子と、前記金微粒子の表面に配置された複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸と、前記複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸に配位結合している複数のポルフィリン金属錯体と備え、前記ポルフィリン金属錯体は、ポルフィリンコバルト(II)錯体およびポルフィリン亜鉛(II)錯体から選ばれる少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属錯体で修飾された新規な金微粒子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
【0011】
[金属錯体で修飾された金微粒子]
本発明の微粒子(以下、「微粒子(F)」という場合がある)は、金微粒子と、金微粒子の表面に配置された複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸と、複数のイミダゾール-4-ジチオカルボン酸に配位結合している複数のポルフィリン金属錯体とを備える。
【0012】
金微粒子の粒径に特に限定はなく、たとえば2nm~500nmの範囲にあってもよい。金微粒子の表面には、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸が配置されている。イミダゾール-4-ジチオカルボン酸は、以下の式で表される化合物である。
【0013】
【化1】
JP0005129110B2_000002t.gif

【0014】
イミダゾール-4-ジチオカルボン酸は、C(=S)SHの硫黄部分によって金微粒子の表面に吸着する。
【0015】
イミダゾール-4-ジチオカルボン酸には、ポルフィリン金属錯体が配位結合している。ポルフィリン金属錯体は、ポルフィリンコバルト(II)錯体およびポルフィリン亜鉛(II)錯体から選ばれる少なくとも1種である。なお、ポルフィリン金属錯体のポルフィリン環には、置換基が結合していてもよい。たとえば、ポルフィリン金属錯体は、テトラフェニルポルフィリンの金属錯体や、テトラピリジルポルフィリンの金属錯体であってもよい。
【0016】
微粒子(F)は、ポルフィリン金属錯体上に構築された、3次元構造を有する金属錯体をさらに備えてもよい。以下、ポルフィリン金属錯体上に構築された3次元構造を有する金属錯体を、金属錯体(B)という場合がある。その金属錯体(B)は、金属イオン(以下、金属イオン(M)という場合がある)と、金属イオン(M)に配位結合する複数の部位を備える有機化合物(以下、「有機化合物(A)」という場合がある)とによって構成されている。金属錯体(B)を構成する金属イオン(M)には、たとえば、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、マンガン、ルテニウム、イリジウム、レニウム、オスミウムのイオンを用いることができる。
【0017】
有機化合物(A)の一例は、金属イオン(M)に配位結合する部位を2つ含む。その部位は、含窒素芳香環中の窒素原子であってもよい。典型的な有機化合物(A)は、両端に上記部位が配置されている有機化合物である。有機化合物(A)の例には、4,4’-アゾピリジン、4,4’-ビピリジン、1,4-ビス(4’-ピリジルエチニル)ベンゼンが含まれる。
【0018】
4,4’-アゾピリジンは、公知の方法で合成できる。たとえば、以下の反応によって合成することが可能である。
【0019】
【化2】
JP0005129110B2_000003t.gif

【0020】
[微粒子(F)の製造方法]
以下、微粒子(F)の製造方法について説明する。この製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む。また、金属錯体(B)を含む微粒子(F)を製造する場合、この製造方法は、工程(iii)をさらに含む。工程(i)~(iii)を、図1(a)~(d)に模式的に示す。なお、図1(a)~(d)では、金微粒子の表面の一部を平面として表している。
【0021】
まず、工程(i)では、金微粒子の表面11に、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸12を吸着させる(図1(b))。工程(i)は、たとえば、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸が溶解されている溶液と、金微粒子が分散されている液体とを混合することによって行うことができる。金微粒子は、公知の方法で作製でき、たとえば、金イオンを溶液中で還元する方法によって作製できる。
【0022】
次に、工程(ii)では、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸12に、ポルフィリン金属錯体13を配位結合させる(図1(c))。工程(ii)は、たとえば、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸12が吸着している金微粒子を含む液体に、ポルフィリン金属錯体を添加することによって行うことができる。
【0023】
次に、工程(iii)では、ポルフィリン金属錯体13上に、3次元構造を有する金属錯体20を構築する(図1(d))。金属錯体20(金属錯体(B))は、有機化合物14(有機化合物(A))および金属イオン15(金属イオン(M))によって構成されている。
【0024】
金属錯体20は、たとえば以下の方法で構築できる。まず、有機化合物14の溶液に、ポルフィリン金属錯体13を有する金微粒子を投入し、一定時間(たとえば1分から1週間程度の範囲)放置した後、未反応の有機化合物14と金微粒子とを遠心分離によって分離する。次に、有機化合物14が配位した金微粒子を金属イオン15の溶液に浸し、一定時間(たとえば1分から1週間程度の範囲)放置した後、未反応の金属イオン15と金微粒子とを遠心分離によって分離する。有機化合物14の溶液へ浸漬する操作と金属イオン15の溶液へ浸漬する操作とを1セットとしてそれを1セット以上行うことによって、錯体フレームワークを金微粒子上に構築できる。上記セットを行う回数は1セットでもよいし、2セット以上を繰り返してもよい。たとえば、上記セットは、2セットでもよいし、30セットでもよい(最大で100セット程度まで可能である)。有機化合物14は、ポルフィリン金属錯体13の中心金属イオンに配位結合する。ポルフィリン金属錯体13に配位結合した有機化合物14が、3次元構造の土台となる。有機化合物14と金属イオン15とは格子状の3次元構造体を構成し、金属イオン15は格子点の位置に配置される。このようにして、本発明の微粒子(F)が得られる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について、実施例によって詳細に説明する。以下の例では、金微粒子の代わりに金の薄膜を用いて、金の表面に構造体を構築できることを実証した。
【0026】
まず、ガラス上に、厚さ300nmのITO層(酸化インジウムスズ層)、厚さ5nm~10nmのクロム層、および厚さ10nmの金層を順に形成した。このようにして、ガラス/ITO/Cr/Auという積層構造を有する基板を得た。
【0027】
次に、基板を、クロロホルムとエタノールの混合溶媒(混合体積比は1:1)に2時間浸漬した。浸漬後、基板を混合溶媒から取り出して新たな上記混合溶媒で洗浄し、アルゴンガスを吹き付けて基板を乾燥させた。その後、基板の吸収スペクトル(以下、「吸収スペクトル(1)」という場合がある)を測定した。
【0028】
次に、基板を、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸の溶液に1時間浸漬した。イミダゾール-4-ジチオカルボン酸の溶液の溶媒は上記混合溶媒とし、濃度は0.1mmol/lとした。浸漬後、基板を取り出して上記混合溶媒で洗浄したのち、アルゴンガスを吹き付けて基板を乾燥させた。このようにして、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸が吸着している基板(以下、「基材」という場合がある)を得た。その後、基材の吸収スペクトル(以下、「吸収スペクトル(2)」という場合がある)を測定した。
【0029】
次に、基材を、ポルフィリン溶液に浸漬した。浸漬後、基材をポルフィリン溶液から取り出して上記混合溶媒で洗浄したのち、アルゴンガスを吹き付けて基材を乾燥させた。ポルフィリン溶液に浸漬後の所定の段階において、基材の吸収スペクトル(以下、「吸収スペクトル(3)」という場合がある)を測定した。以下の実施例等に示すように、ポルフィリンの種類および浸漬時間を変化させて実験を行った。
【0030】
ポルフィリン溶液の溶媒には上記混合溶媒を用いた。ポルフィリンの濃度は、0.1mmol/lとした。用いたポルフィリンを図2(a)~(d)に示す。図2(a)は、テトラフェニルポルフィリン(以下、「TPP」と記載する場合がある)を示す。図2(b)は、テトラ(4-ピリジル)ポルフィリン亜鉛(II)錯体(以下、「Zn2+-TPyP」と記載する場合がある)を示す。図2(c)は、テトラフェニルポルフィリンコバルト(II)錯体(以下、「Co2+-TPP」と記載する場合がある)を示す。図2(d)は、テトラフェニルポルフィリン鉄(III)錯体(以下、「Fe3+-TPP」と記載する場合がある)を示す。
【0031】
なお、以下で図示する吸収スペクトルは、基板の吸収による吸収スペクトル(1)を引いたあとの吸収スペクトルである。具体的には、ポルフィリン溶液に浸漬する前の吸収スペクトルは、吸収スペクトル(2)から吸収スペクトル(1)を引いたスペクトルである。また、ポルフィリン溶液浸漬後の吸収スペクトルは、吸収スペクトル(3)から吸収スペクトル(1)を引いたスペクトルである。
【0032】
[比較例1]
比較例1では、ポルフィリンとしてTPPを用いた。比較例1では、基材をTPP溶液に1、2または4時間浸漬した。TPP溶液に浸漬する前の基材の吸収スペクトルと、TPP溶液に4時間浸漬したあとの基材を吸収スペクトルとを、図3に示す。基材をTPP溶液に4時間浸漬しても、吸収スペクトルに実質的な変化は見られなかった。基材をTPP溶液に1時間または2時間浸漬したときも、同様に吸収スペクトルに実質的な変化は見られなかった。これらのことから、TPPは基材に吸着されないことが示唆された。
【0033】
[実施例1]
実施例1では、ポルフィリンとして、Zn2+-TPyPを用いた。実施例1では、基材をZn2+-TPyP溶液に1、48または96時間浸漬した。その後、基材を上記混合溶媒中で超音波洗浄した。その後、アルゴンガスで基材を乾燥させたのち、吸収スペクトルを測定した。それぞれの段階における吸収スペクトルを、図4に示す。図4に示すように、浸漬時間が長くなるにつれて、基材に吸着しているZn2+-TPyPが多くなった。また、超音波洗浄によって、Zn2+-TPyPの吸収ピークが大きく低下した。
【0034】
基材をZn2+-TPyP溶液に所定の時間(1時間、2時間、12時間、24時間または48時間)浸漬したのち混合溶媒中で超音波洗浄した。その後、アルゴンガスで基材を乾燥させたのち、吸収スペクトルを測定した。浸漬時間を変えても、超音波洗浄後のスペクトルはほとんど変わらず、図4の超音波洗浄後のスペクトルとほぼ同じであった。超音波洗浄を行った場合と行わなかった場合について、Zn2+-TPyP溶液への浸漬時間と最大吸光度との関係を図5に示す。図5には、Zn2+-TPyPが1層のみ形成されたと仮定した場合の吸光度の計算値(図5の「理想的1層」)も示す。図5に示すように、物理吸着によって基材に吸着している過剰なZn2+-TPyPが、超音波洗浄によって除去され、基材に吸着されているほぼ1層のみが残留することが分かった。
【0035】
[実施例2]
実施例2では、ポルフィリンとして、Co2+-TPPを用いた。実施例2では、基材をCo2+-TPP溶液に1~48時間浸漬した。その後、基材を上記混合溶媒中で超音波洗浄した。その後、アルゴンガスで基材を乾燥させたのち、吸収スペクトル(3)を測定した。得られた吸収スペクトルを、図6に示す。図6に示すように、Co2+-TPPが基材に吸着することが分かった。浸漬時間が、2時間、12時間または24時間の場合も、浸漬時間が1時間または48時間と同様の吸収スペクトルが得られた。
【0036】
[比較例2]
比較例2では、ポルフィリンとして、Fe3+-TPPを用いた。比較例2では、Fe3+-TPP溶液に、基材を1~48時間浸漬したのち、混合溶媒中で超音波洗浄した。その後、アルゴンガスで基材を乾燥させたのち、吸収スペクトル(3)を測定した。浸漬時間に拘わらず、ポルフィリンの吸収は見られなかった。このことから、Fe3+-TPPは、基材に吸着しないことが分かった。
【0037】
以上のように、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸および所定のポルフィリン金属錯体による構造体を、金層の上に形成できることが分かった。この方法を用いることによって、金微粒子上に、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸および所定のポルフィリン金属錯体による構造体を形成できる。また、さらにその構造体上に、3次元構造を有する金属錯体(B)を形成することが可能である。
【0038】
なお、適切な化合物を選択することによって、イミダゾール-4-ジチオカルボン酸および所定のポルフィリン金属錯体による構造体(およびその上に形成された金属錯体(B))を、金微粒子以外の金属微粒子(たとえば白金微粒子)上に構築することも可能である。そのような粒子は、たとえば燃料電池の電極として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、金属錯体で修飾された金微粒子が得られる。金属錯体を構成する有機化合物および金属イオンの種類を変えることによって、骨格および空間の精密な設計を行うことができ、反応に対して最適な構造(フレームワーク)を構築することができる。その結果、様々な機能(たとえば触媒機能)を有する微粒子を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の微粒子を製造するための方法を模式的に示す図である。
【図2】実施例で用いたポルフィリンの構造を示す図である。
【図3】ポルフィリンとしてTPPを用いた場合の、基材の吸光度の変化を示すグラフである。
【図4】ポルフィリンとしてZn2+-TPyPを用いた場合の、基材の吸光度の変化を示すグラフである。
【図5】ポルフィリンとしてZn2+-TPyPを用いた場合について、超音波洗浄および浸漬時間が最大吸光度に与える影響を示すグラフである。
【図6】ポルフィリンとしてCo2+-TPPを用いた場合の、基材の吸光度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
11 金微粒子の表面
12 イミダゾール-4-ジチオカルボン酸
13 ポルフィリン金属錯体
14 有機化合物
15 金属イオン
20 金属錯体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5