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明細書 :Zn2SiO4セラミックス及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5234920号 (P5234920)
公開番号 特開2009-221068 (P2009-221068A)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成21年10月1日(2009.10.1)
発明の名称または考案の名称 Zn2SiO4セラミックス及びその製造方法
国際特許分類 C04B  35/16        (2006.01)
C04B  35/453       (2006.01)
H01B   3/12        (2006.01)
FI C04B 35/16 Z
C04B 35/00 P
H01B 3/12 325
H01B 3/12 336
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2008-069149 (P2008-069149)
出願日 平成20年3月18日(2008.3.18)
審査請求日 平成23年3月3日(2011.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】澤 佐幸
【氏名】高田 雅之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】武石 卓
参考文献・文献 国際公開第2006/041093(WO,A1)
特表平04-503939(JP,A)
調査した分野 C04B 35/00-35/22
C04B 35/453
H01B 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)酸化亜鉛(ZnO)粒子と二酸化珪素(SiO2)粒子を2:1のモル比で配合したものに10mol%未満の一定量の酸化ビスマス(Bi23)粒子及び10mol%未満の一定量の塩化コバルト(CoCl2)粒子を添加し、湿式混合するステップと、
(b)前記ステップ(a)で得た混合物を空気中で500℃~1100℃の温度で仮焼成するステップと、
(c)前記ステップ(b)で得た仮焼成物を粉砕するステップと、
(d)前記ステップ(c)で得た粉砕物を加圧成形するステップと、
(e)前記ステップ(d)で得た成形物を空気中で1100℃~1250℃の温度で本焼成することによりZn2SiO4セラミックスを形成するステップと、を有していることを特徴とするZn2SiO4セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)において、平均粒径が100nm以下の前記二酸化珪素(SiO2)粒子を用いることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、前記湿式混合を、水又はエタノールを使用して行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(e)において、前記本焼成を、空気中で1100℃~1200℃の温度で1時間~20時間焼成した後、さらに1200℃以上の温度で1時間~80時間焼成することによって行うことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法によって製造され、90%以上の相対密度を有するとともに、5.0GPa以上の硬度を有し、さらに、1.0kHz以上の周波数において、1.0以上のQ値を有することを特徴とするZn2SiO4セラミックス。
【請求項6】
1.0kHz以上の周波数において、5.0以上の比誘電率を有することを特徴とする請求項5に記載のZn2SiO4セラミックス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Zn2SiO4セラミックス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信や衛星通信等に見られるように高度情報化社会の進展は目覚ましく、この高度情報化社会を支えるキーマテリアルであるマイクロ波材料の開発が進められている。
マイクロ波材料として、例えばウィレマイト鉱と同じ組成で高い品質係数(Q値)を持つZn2SiO4が注目され、その製造方法が既に提案されている。(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
この製造方法は、酸化亜鉛(ZnO)粒子と二酸化珪素(SiO2)粒子を配合したものに、5~15重量%の酸化チタン(TiO)を添加し混合して、1280℃~1340℃の温度で焼成するものである。
【0004】
しかしながら、この従来の製造方法おいては、1280℃以上の高温で焼成する必要がある上、再現性が低く、結果として製造コストが高くなるという問題点があった。
また、この製造方法によるZn2SiO4セラミックスは、1300℃という高温で焼成しても相対密度がせいぜい97%であり、この製造方法によってこれ以上の高密度(あるいは高硬度)を有するZn2SiO4セラミックスを製造することは難しかった。

【非特許文献1】Yiping Guo, Hitoshi Ohsato, Ken-ichi Kakimoto,「Characterization and dielectric behavior of willemite and TiO2-doped willemite ceramics at millimeter-wave frequency」, Journal of the European Ceramic Society, 2006, 第26巻, p.1827-1830
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温焼成で製造することができ、高い相対密度や硬度、並びに高い品質係数(高いQ値又は低いtanδ値)を有するZn2SiO4セラミックス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、(a)酸化亜鉛(ZnO)粒子と二酸化珪素(SiO2)粒子を2:1のモル比で配合したものに10mol%未満の一定量の酸化ビスマス(Bi23)粒子及び10mol%未満の一定量の塩化コバルト(CoCl2)粒子を添加し、湿式混合するステップと、(b)前記ステップ(a)で得た混合物を空気中で500℃~1100℃の温度で仮焼成するステップと、(c)前記ステップ(b)で得た仮焼成物を粉砕するステップと、(d)前記ステップ(c)で得た粉砕物を加圧成形するステップと、(e)前記ステップ(d)で得た成形物を空気中で1100℃~1250℃の温度で本焼成することによりZn2SiO4セラミックスを形成するステップと、を有していることを特徴とするZn2SiO4セラミックスの製造方法を提供する。
【0007】
上記製造方法に関して、好ましくは、前記ステップ(a)において、平均粒径が100nm以下の前記二酸化珪素(SiO2)粒子を用いる。また、好ましくは、前記ステップ(a)において、前記湿式混合を、水又はエタノールを使用して行う。また、さらに好ましくは、前記ステップ(e)において、前記本焼成を、空気中で1100℃~1200℃の温度で1時間~20時間焼成した後、さらに1200℃以上の温度で1時間~80時間焼成することによって行う。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明は、上記製造方法によって製造され、90%以上の相対密度を有するとともに、5.0GPa以上の硬度を有し、さらに、1.0kHz以上の周波数において、1.0以上のQ値を有することを特徴とするZn2SiO4セラミックスを提供する。
【0009】
上記構成において、Zn2SiO4セラミックスは、1.0kHz以上の周波数において、5.0以上の比誘電率を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温焼成で製造することができ、高い相対密度や硬度、並びに高い品質係数(高いQ値又は低いtanδ値)を有するZn2SiO4セラミックス及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の1実施例によるZn2SiO4セラミックスの製造方法のフロー図である。
【0013】
図1に示すように、本発明によれば、まず、酸化亜鉛(以下、ZnOと称する)粒子と二酸化珪素(以下、SiO2と称する)粒子を2:1のモル比で配合したものに10mol%未満の一定量の酸化ビスマス(以下、Bi23と称する)粒子を添加し、湿式混合する(図1のステップS1)。
ここで、10mol%未満の一定量のBi23粒子を添加する代わりに、10mol%未満の一定量の塩化コバルト(以下、CoCl2と称する)粒子を添加してもよい。あるいは、10mol%未満の一定量のBi23粒子及び10mol%未満の一定量のCoCl2粒子の両方を添加してもよい。また、ZnO粒子とSiO2粒子としては、一般に市販されている高純度のものを用いることができる。さらに、SiO2粒子は、平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
湿式混合は、例えば、水又はエタノールを使用してボールミルを用いて所定時間行う。得られた混合物は、例えば、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形する。
【0014】
次に、ステップS1で得た混合物を仮焼成する(図1のステップS2)。
仮焼成は、具体的には、空気中で500~1100℃の温度で所定時間行う。
【0015】
その後、ステップS2で得た仮焼成物を粉砕する(図1のステップS3)。
粉砕は、例えば、超硬乳鉢を用いて行う。
【0016】
そして、ステップS3で得た粉砕物を加圧成形する(図1のステップS4)。
この場合、例えば、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形する。
【0017】
さらに、上記の成形物を本焼成することによりZn2SiO4セラミックスを形成する(図1のステップS5)。
本焼成は、具体的には、空気中で1100℃以上の温度で所定時間行うか、あるいは、空気中で1100℃~1200℃の温度で1時間~20時間焼成した後、さらに1200℃以上の温度で1時間~80時間焼成することによって行う。
【0018】
次に、本発明の方法によってZn2SiO4セラミックスを実際に製造し、所期の効果が得られるかどうかを調べた。
参考例1]
純度99.99%のZnO粒子と純度99.9%のSiO2粒子とを2:1のモル比で配合したものに、0.5mol%のBi23粒子を添加し、これにエタノールを用いた湿式混合を行い、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形し、空気中で800℃の温度で10時間仮焼成を行い、その後粉砕し、再び真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに加圧成形して、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で10時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
参考例2]
本焼成以外は参考例1と同様にして、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で20時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
[実施例
純度99.99%のZnO粒子と純度99.9%のSiO2粒子とを2:1のモル比で配合したものに、0.5mol%のBi23粒子及び1.0mol%のCoCl2粒子を添加し、これにエタノールを用いた湿式混合を行い、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形し、空気中で800℃の温度で10時間仮焼成を行い、その後粉砕し、再び真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに加圧成形して、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で10時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
[実施例
本焼成以外は実施例と同様にして、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で20時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
[実施例
本焼成以外は実施例と同様にして、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で40時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
【0019】
[比較例]
純度99.99%のZnO粒子と純度99.9%のSiO2粒子とを2:1のモル比で配合し、これにエタノールを用いた湿式混合を行い、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形し、空気中で800℃の温度で10時間仮焼成を行い、その後粉砕し、再び真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに加圧成形して、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1250℃の温度で10時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
【0020】
[比較検討1]
参考例1、2と実施例1~と比較例におけるZn2SiO4セラミックスの諸特性を調べた。まず、それぞれの試料に関して、硬度計を用いて測定した硬度と、アルキメデス法により算出した相対密度の測定結果を以下の表1にまとめた。
【表1】
JP0005234920B2_000002t.gif
表1から判るように、比較例に比べて参考例1、2および実施例1~では、本焼成温度が1250℃という低い温度においても相対密度が90%以上と高く、高硬度なZn2SiO4セラミックスを得ることができる。特に、CoCl2粒子を添加した試料は、10GPa以上の高い硬度が得られていることが判る。
【0021】
次に、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスをX線回折装置により、その結晶構造を調べた。
図2は、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスのX線回折パターンを示したグラフである。
図2から判るとおり、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスは、グラフ下部に示すZn2SiO4のそれぞれの回折ピーク角度においてX線強度を有していることから、Zn2SiO4へ転移しているのが確認できる。
【0022】
さらに、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスの比誘電率とQ値を示したグラフを、それぞれ図3と図4に示す。
ここで、比誘電率及びQ値は、本焼成後の試料を鏡面研磨した後、真空蒸着法によりアルミニウム電極を作製し、LCRメータを使用して20Hz~1MHzの周波数範囲でキャパシタンスとコンダクタンスの周波数特性を測定し、複素比誘電率の実数部εr’及び虚数部εr”を算出して、以下の式で導出した。
【数1】
JP0005234920B2_000003t.gif
なお、εrはZn2SiO4の比誘電率、dはZn2SiO4セラミックスの電極面間隔、Cはキャパシタンス、ε0は真空の誘電率、SはZn2SiO4セラミックスの電極面積、QはQ値、fは周波数、Gはコンダクタンスである。
【0023】
図3から判るように、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスの比誘電率は、1.0kHz以上の周波数において、5.0以上である。
【0024】
図4から判るように、参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスのQ値は、1.0kHz以上の周波数において、1.0以上である。
【0025】
さらに、本発明の方法によって製造したZn2SiO4セラミックスのマイクロ波領域におけるQ値を調べた。
【0026】
参考
純度99.99%のZnO粒子と純度99.9%のSiO2粒子とを2:1のモル比で配合したものに、0.5mol%のBi23粒子を添加し、これにエタノールを用いた湿式混合を行い、真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに成形し、空気中で600℃の温度で10時間仮焼成を行い、その後粉砕し、再び真空引きと一軸加圧320MPaで直径20mmのペレットに加圧成形して、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1200℃の温度で10時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
参考
本焼成以外は参考と同様にして、本焼成を、空気中で1100℃の温度で10時間焼成した後、さらに1200℃の温度で30時間行い、Zn2SiO4セラミックスを製造した。
【0027】
[比較検討2]
参考及び参考におけるZn2SiO4セラミックスのマイクロ波領域におけるQ値を、NRDガイド励振誘電体円柱共振器法を用いて、共振周波数f0、半値幅Δfを測定し、その測定結果に以下の式を用いて算出した。
JP0005234920B2_000004t.gif
【0028】
なお、NRDガイド励振誘電体円柱共振器法とは、放射損失を抑制し、共振器への励振を確実に行いながら、Q値を測定するものである。NRDガイドとは、Non Radiative Dielectric Waveguideの略で、導体の曲がり部分や不連続部分において完全に放射損失を抑制する導波路である。Q値の測定は、放射損失の存在しないTM021モードで、測定試料とNRDガイドとの距離を変化させることによって行う。
【0029】
参考及び参考のZn2SiO4セラミックスのマイクロ波領域におけるQ値の測定結果を以下の表2及び表3に示す。なお、本測定は、測定周波数として約35GHzの条件下で行った。
【表2】
JP0005234920B2_000005t.gif
【表3】
JP0005234920B2_000006t.gif
表2及び表3から判るように、参考及び参考のZn2SiO4セラミックスのQ値は、マイクロ波領域において、200以上の値が得られている。また、参考よりも参考のZn2SiO4セラミックスの方が、より大きなQ値を有していることが判る。
さらに、表3において、Q値と共振周波数f0の積であるQf値は、共振周波数が約35GHzにおいて、最大約60000GHz(距離5mmの測定時)であることが判る。
【0030】
よって、本発明の方法によれば、Bi23粒子及びCoCl2粒子を添加することにより、低温焼成で製造することができ、高い相対密度や硬度、並びに高い品質係数(高いQ値又は低いtanδ値)を有するZn2SiO4セラミックスを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1実施例によるZn2SiO4セラミックスの製造方法のフロー図である。
【図2】参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスのX線回折パターンを示したグラフである。
【図3】参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスの比誘電率を示したグラフである。
【図4】参考例1、2および実施例1~のZn2SiO4セラミックスのQ値を示したグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3