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明細書 :超音波モータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5308808号 (P5308808)
公開番号 特開2010-158083 (P2010-158083A)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月9日(2013.10.9)
公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
発明の名称または考案の名称 超音波モータ
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
FI H02N 2/00 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2008-333312 (P2008-333312)
出願日 平成20年12月26日(2008.12.26)
審査請求日 平成23年12月22日(2011.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
発明者または考案者 【氏名】國井 康晴
【氏名】飯塚 浩二郎
【氏名】矢野 良平
個別代理人の代理人 【識別番号】100080296、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 純一
【識別番号】100141243、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 靖夫
審査官 【審査官】安池 一貴
参考文献・文献 特開2002-354851(JP,A)
特開平08-023687(JP,A)
国際公開第2006/115182(WO,A1)
特開2006-002928(JP,A)
特開2007-225029(JP,A)
特開2007-311536(JP,A)
特開2006-032326(JP,A)
特開平07-226638(JP,A)
特開2005-072797(JP,A)
特開平11-068501(JP,A)
多田興平、園井康晴、指田年生、久保田孝,超音波モータの宇宙利用と真空特性実験,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会講演論文集,日本,日本機械学会,2003年 5月23日,Vol.2003,PAGE.2P2.2F.C1(1)-2P2.2F.C1(2)
調査した分野 H02N 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
圧電体と弾性体とを有するステータと、
前記ステータと接触して回転するロータとを備えた超音波モータであって、
前記ステータ又は前記ロータが接触面に摩擦材層を備え、
前記摩擦材層がシリコン又は炭素の結晶質薄膜又は非晶質膜からなる下地層と、
前記下地層の表面に形成される摩擦層とを有し、
前記摩擦層が銀薄膜であることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記シリコンの非晶質薄膜の表面が水素終端化処理されることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記銀薄膜の厚さが20nm~200nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記下地層と前記摩擦層とが真空蒸着法により作製されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の超音波モータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関し、特に、高真空中で使用される超音波モータの摩擦熱による性能劣化の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の宇宙開発の進展に伴い、宇宙探査ロボットのように高真空中で、かつ、温度変化が大きな環境下で稼働する宇宙機器の開発が盛んに行われている。宇宙機器では主に、太陽電池を駆動用電源として、アームやアンテナ、あるいは、センサなどを駆動するが、これらを駆動するための小形でかつ軽量な駆動装置が望まれている。
超音波モータは、電磁モータと比較して低速高トルク特性を有し、応答性と制御性とに優れ、かつ、無通電時の保持トルクが大きいので、宇宙探査ロボットの駆動装置として期待されている。一方、超音波モータは摩擦駆動型のモータであることから、駆動時に摩擦熱が発生し、このため、耐久性の点で問題があった。
そこで従来は、ロータのステータとの接触面にテフロン(登録商標:PTEF;ポリテトラフルオロエチレン)などから成る摩擦材層を設けて、ロータとステータとの間の摩擦を低減して、耐久性を向上させた超音波モータが提案されている。
例えば、特許文献1には、櫛歯体を備えたロータのステータとの接触面(櫛歯体の表面)に、厚さが1μm~100μmで、硬度が鉛筆硬度「F」以上である樹脂膜を形成した超音波モータが開示されている。上記樹脂膜は、フェノールエポキシ樹脂またはポリアミドイド樹脂に、四フッ化エチレンなどのフッ素、二硫化モリブデン、黒鉛などの固体潤滑材を配合した塗布膜である。
また、特許文献2には、フッ素樹脂塗料に、黒鉛,窒化ボロン,マイカ,二硫化モリブデンなどの固体潤滑材と繊維状摩擦調合剤とを配合したものをステータのロータとの接触面に塗布した後これを硬化させて、ステータと一体に設けられた摩擦材層を形成することにより、必要な摩擦力を確保するとともに、耐久性を向上させるようにしている。なお、上記摩擦材層の厚さは5μm~300μmで、上記摩擦材層の摩擦係数は、0.09~0.112程度である。

【特許文献1】特開2008-92748号公報
【特許文献2】特開平8-23687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、超音波モータを宇宙探査ロボットなどの宇宙機器の駆動装置へ適用する場合、以下の(1)~(3)の条件を満たすことが求められる。
(1)高真空環境下でも十分な耐久性能が得られること
(2)打上げ時や機器運搬時及び大きな凹凸路面での作業時に入力する振動に強いこと
(3)放射線(宇宙線)の対被曝性能に優れていること
超音波モータを高真空中で駆動した場合、ステータのロータとの接触による摩擦熱を伝搬する空気がないので、接触面の温度は空気中に比べて上昇する。この温度上昇に伴って圧電素子が熱膨張を起こすため、ステータとロータとの摩擦が更に促進する。
その結果、高真空中での動作後には、通常の大気中での動作後と比べてステータの表面とロータの表面とに明らかな凹凸が現れる。この凹凸は、ステータとロータとが凝着摩擦を起こしたためと考えられる。そして、この状態で超音波モータを駆動すると、上記凹凸のためにステータとロータとに作用する摩擦力は更に大きくなり、ロータの回転数が急激に低下してしまうといった問題点があった。
【0004】
また、摩擦材層として樹脂塗布膜を用いた場合であっても、固体潤滑剤を含む樹脂塗布膜を用いた場合であっても、いずれも、摩擦係数が大きいため、ステータとロータとの凝着摩擦を防止することができず、高真空中において十分な耐久性能を確保することが困難であった。
また、テフロンなどの樹脂膜は、放射線を長時間被曝すると高分子間の結合が切断されるなどして膜組織が変質し、その結果摩擦係数が増加してしまうといった問題点があった。また、摩擦材としてもやわらかく、ある程度の厚さを有する場合には、変形等の問題がある。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、高真空中においても優れた耐久性能を有する超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための構成として、圧電体と弾性体とを有するステータと、ステータと接触して回転するロータとを備えた超音波モータであって、ステータ又はロータが接触面に摩擦材層を備え、摩擦材層がシリコン又は炭素の結晶質薄膜又は非晶質膜からなる下地層と、下地層の表面に形成される摩擦層とを有し、摩擦層が銀薄膜である構成とした。
また、第二の構成として、シリコンの非晶質薄膜の表面が水素終端化処理される構成とした。
また、第三の構成として、銀薄膜の厚さが20nm~200nmである構成とした。
また、第四の構成として、下地層と摩擦層とが真空蒸着法により作製される構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧電体と弾性体とを有するステータと、ステータと接触して回転するロータとを備えた超音波モータであって、ステータ又はロータが接触面に摩擦材層を備え、摩擦材層がシリコン又は炭素の結晶質薄膜又は非晶質膜からなる下地層と、下地層の表面に形成される摩擦層とを有し、この摩擦層が銀薄膜であることにより、適度な摩擦係数を有し、かつ、潤滑性にも優れた摩擦材層を形成することができ、宇宙等の高真空環境下においても、ステータ及びロータの接触面の劣化を低減することができるため、超音波モータの長寿命化を図ることができる。さらに、銀薄膜は、放射線の長時間被曝によっても変質することがないので、宇宙等の放射線が直接飛来する箇所でも、超音波モータを安定して動作させることができる。
また、上記シリコンの非晶質薄膜の表面を水素終端化処理したので、摩擦材層の摩擦係数を更に小さくすることができ、接触面の劣化を更に低減することができる。
また、銀薄膜の厚さを20nm~200nmの範囲とすれば、必要な摩擦力を確保しつつ、潤滑効果を高めることができるので、超音波モータを更に高性能化できる。
また、下地層と摩擦層とを真空蒸着法により作製するようにしたので、簡単な設備で摩擦材層を効率よくかつ容易に作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、最良の形態に係る超音波モータの概要を示す図で、同図において11はステータ、12はロータ、13はフレキシブル基板、14は摩擦材層である。
【0009】
ステータ11は、リン青銅などの金属あるいは合金から成る弾性体15と圧電セラミックスなどから成る圧電体16とを備える。
弾性体15は、ロータ12に接触する側の面(以下、ステータの接触面という)15aに、当該ステータ11の円周に沿って設けられた多数の櫛歯15kを備えた短円筒状の櫛歯体で、上記ステータの接触面15aとは反対側の面(裏面)15bに、円環状の圧電体16が固着される。
【0010】
圧電体16は、円周方向に複数の領域に分割されている。この領域の長さは、超音波モータの駆動周波数により設定される。また、隣接する領域同士の分極方向が互いに異なっている。
圧電体16の弾性体15との固着面の反対側には、圧電体16に電圧を印加するための図示しない電極が形成されたフレキシブル基板13が取付けられる。
なお、同図の(+)、(-)は圧電体の分極方向で、(+)は表面電荷がプラスに分極されている状態を示し、(-)は表面電荷がマイナスに分極されている状態を示す。
ロータ12は、アルミニウムから成る短円筒状の部材で、櫛歯15kの表面と接触する側の面(以下、ロータの接触面という)12aには、本発明に係る摩擦材層14が形成されている。
摩擦材層14は、ロータ12の表面に形成されたシリコンの非晶質薄膜から成る下地層14aと、下地層14aの表面に形成された銀薄膜から成る摩擦層14bとを備える。
【0011】
本例では、下地層14aの厚さが100nm未満である場合には、ロータ12の表面を十分に平滑にすることが困難であることを考慮して下限を100nmとして設定し、下地層14aの厚さが400nmを超えてもロータ12の表面の平滑度が変わらないことを考慮して上限を400nmとして設定した。
つまり、下地層14aの厚さは100nm~400nmの範囲の何れかの厚さとして設定するのが好ましい。
【0012】
また、摩擦層14bの厚さとしては、厚さが20nm未満である場合には、摩擦係数が小さくなるだけでなく摩擦層14bの体積が小さくなるため、ロータ12を回転させるための十分な摩擦力が得られなくなる可能性を考慮して下限を20nmとして設定し、摩擦層14bの厚さが200nmを超えても摩擦係数はそれほど増加せず、膜厚が厚いことによる銀薄膜の剥離が懸念されることを考慮して上限を200nmとして設定した。
つまり、摩擦層14bの厚さは20nm~200nmの範囲の何れかの厚さとして設定するのが好ましい。
【0013】
摩擦材層14の下地層14aと摩擦層14bとは、真空蒸着法により作製される。はじめに、ロータ12の表面にシリコンの蒸着膜を形成する。
シリコンは蒸着してからの冷却時間により結晶状態が異なり、急激に冷却されると非晶質状態(アモルファス)になり、徐々に冷却されると結晶化して多結晶もしくは単結晶になる。
冷却時間は蒸着膜が形成される基板(ここでは、ロータ12)の温度により、本例では、ロータ12を構成する材料として、軽量でかつ安価なアルミニウムを用いているため、基板温度を低くして、非晶質薄膜を形成した。
なお、基板材料を変更すれば、単結晶膜或いは多結晶膜の作製も可能であり、何れの膜とするかは基板材料によって適宜選択すればよい。
本例においては下地層14aを固体潤滑材として使用するのではなく、ロータ12表面を平滑にするだけであることを考慮して、銀の単原子層を積層するといった構造とする必要がない非晶質薄膜としたが表面上に蒸着される摩擦層14bとしての銀薄膜の特性に対する影響は少ない。
本例では、摩擦層14bを構成する銀薄膜についても真空蒸着法で作製した。これは、薄膜を形成する方法として、真空蒸着法が容易であるだけでなく、下地層14aも蒸着で作製されるので、同一チャンバー中で、下地層14aと摩擦層14bとを連続して形成できるという利点がある。
【0014】
次に、本発明の超音波モータの動作について説明する。
超音波モータは、円環状の弾性体15に固着された、隣接する領域同士の分極方向が互いに異なるように分極が施された圧電体16に、超音波帯域(例えば、30kHz)の周波数の交流電圧を印加することで、圧電体16を領域ごとに伸縮運動させ、弾性体15に進行波(弾性屈曲波)を発生させ、弾性体15の櫛歯15kの表面に所定の圧力で接触されているロータを、両者の間に発生する摩擦力により回転させるもので、図2(a)~(c)に示すように、進行波の方向を同図の右方向とすると、ステータ11の櫛歯15k上の点Pは反時計回りに楕円運動する。このとき、点Pはロータ12との接触により右方向に摩擦力を受け、その反力でロータ12は左側に移動する。なお、上記点Pの振幅は1μm~3μmである。
【0015】
このようにロータ12はステータ11の櫛歯15kとの摩擦接触により回転するが、従来の超音波モータは高真空中においては、摩擦力が大きいと接触面の温度が上昇して、圧電体16が熱膨張を起こし、ステータ11とロータ12との摩擦が更に促進する。その結果、ステータ11とロータ12との間の摩擦係数が高くなってロータ12の回転数が急激に低下してしまっていた。
本例では、上記ロータ12の接触面12aに、シリコンの非晶質薄膜から成る下地層14aと銀薄膜から成る摩擦層14bとを備えた摩擦材層14を設けることで、ロータ12とステータ11との摩擦を低減するようにしている。
【0016】
銀のような軟質金属の薄膜は、通常のバルク状の結晶体に比較してはるかに低い融点を示すことが知られている。
摩擦層14bを構成する銀薄膜は、ステータ11の櫛歯15kと接触して摩擦力を受けると、その接触部分とその周辺が部分的に溶解して流動状態になるが、溶解した部分がステータ11の櫛歯15kから離れると、上記溶解した部分は再結晶化する。すなわち、銀薄膜は、周期的にステータ11の櫛歯15kと接触したり櫛歯15kから離れたりすることで、溶解と再結晶化とを繰り返す。
これにより、高真空中で超音波モータを動作させても、ロータ12の接触面12aの表面には摩擦による凹凸は出現せず、平滑な状態を保つことができる。換言すれば、銀薄膜は、優れた潤滑性を有しているので、高真空中であっても、ロータ12の接触面12aの表面にも、ステータ11の接触面である弾性体15の櫛歯15kの表面にも、凹凸が出現することがない。
したがって、宇宙等の高真空環境下においても、ロータ12とステータ11との接触面の劣化を低減することができ、超音波モータの長寿命化を図ることができる。
【0017】
このように最良の形態によれば、超音波モータのロータ12の接触面12aに、シリコンの非晶質薄膜から成る下地層14aとこの下地層14aの表面に形成される銀薄膜から成る摩擦層14bとを有する、適度な摩擦係数を有し、かつ、潤滑性にも優れた摩擦材層14を形成したので、ステータ11の弾性体15に設けられた櫛歯15kとロータ12との接触によって発生するロータ12表面及びステータ11表面の凹凸を大幅に低減することができる。また、銀薄膜は、放射線の長時間被曝によっても変質することがないので、宇宙等の高真空でかつ放射線の多い環境下における耐久性能を著しく向上させることができる。
また、摩擦層14bを構成する銀薄膜の厚さを20nm~200nmの範囲とし、必要な摩擦力を確保しつつ、潤滑効果を高めることができるようにしたので、超音波モータを更に高性能化できる。
また、上記下地層14aと摩擦層14bとを真空蒸着法により作製するようにしたので、簡単な設備で摩擦材層14を効率よくかつ容易に作製できる。
【0018】
なお、上記最良の形態では、ロータ12のステータ11との接触面に銀薄膜から成る摩擦層14bを備えた摩擦材層14を形成したが、ステータ11のロータ12との接触面である弾性体15の櫛歯15kの表面に摩擦材層14を設けても、同様の効果を得ることができる。
また、上記例では、下地層14aの材料をシリコンとしたが、シリコンに代えて、ダイヤモンドあるいはダイヤモンドライクカーボンなどの炭素から成る単結晶薄膜あるいは多結晶薄膜を用いてもよい。
また、摩擦層14bである銀薄膜は、下地層14aであるシリコンの非晶質薄膜の上に直接形成してもよいが、シリコンの非晶質薄膜を形成してからその表面を水素終端化処理し、その後、銀を蒸着してもよい。これにより、摩擦層14bの潤滑性を更に向上させることができるので、超音波モータの耐久性を更に向上させることができる。なお、上記シリコンの非晶質薄膜表面の水素終端化処理は、フッ酸(HF)と純水による洗浄で容易に行うことができる。
また、上記例では、一枚の圧電体16で弾性体15を駆動したが、分極方向が異なる円弧状の圧電体を複数枚、隣接する圧電体同士の分極方向が互いに異なるように、弾性体15の裏面15bに固着してもよい。
【0019】
<実施例>
本発明による超音波モータを、大気中と真空環境(10-4Pa)下とにおいて、それぞれ30分間連続運転試験を行ったときの1分間あたりの回転数(rpm)の時間変化を図3(a)に示す。
また、比較のため従来の超音波モータについても同様の試験を行った。その結果を図3(b)に示す。
本発明の超音波モータは、ロータの接触面に、厚さが200nmのシリコン非晶質薄膜から成る下地層とこのシリコン非晶質薄膜上に形成した厚さが100nmの銀薄膜から成る摩擦層とを有する摩擦材層を備えている。なお、上記シリコン非晶質薄膜と銀薄膜とは、いずれも真空蒸着法により形成した。また、上記銀薄膜の摩擦係数は0.05である。
従来の超音波モータは、厚さが20μmのテフロン塗布膜からなる摩擦材層を備えている。上記テフロン塗布膜の摩擦係数は0.25である。
連続運転試験では、初期の回転数が100rpmになるように圧電体への印加電圧を調整している。なお、超音波モータの動作時の押圧は7kgf/cm2である。
図3(a),(b)から明らかなように、本発明による超音波モータは、真空環境下における30分間連続運転試験後も回転数の低下が少ないのに対し、従来の超音波モータでは、始動してから約15分後からモータの回転数が急激に低下し、30分後には10rpm以下に下がってしまうことがわかった。
また、図4(a)は、本発明に係る超音波モータの大気中における1分間あたりの回転数の経時変化と従来の超音波モータの1分間あたりの回転数の経時変化とを比較したグラフで、図4(b)は、本発明に係る超音波モータの高真空中における回転数の経時変化と大気中における従来の超音波モータの回転数の経時変化を比較したグラフである。
これらのグラフから、大気中においては、本発明に係る超音波モータの耐久性能は従来の超音波モータの耐久性能とほとんど変わらないだけでなく、高真空中における本発明の超音波モータの耐久性能も、大気中における従来の超音波モータの耐久性能とほとんど変わらないことがわかる。
図5(a),(b)は、それぞれ、始動前と30分耐久試験後の従来の超音波モータの接触面の状態を示す図で、各図の左側がロータ表面、右側がステータ表面である。図5(b)から明らかなように、従来の超音波モータの接触面には接触痕などの多数の凹凸ができていることがわかる。この結果と図3(a)の結果とを併せて考えると、上記凹凸がロータとステータの摩擦を更に促進して回転数の低下をもたらしたと推察される。
これに対して、本発明による超音波モータでは、30分耐久試験後も始動前とほとんど変わらず平滑な面を保持していた。
これにより、本発明の超音波モータは、ロータに銀薄膜から成る摩擦層を設けることにより、ロータとステータの接触によって発生する接触面表面の凹凸を大幅に減少させることができること、及び、本発明の超音波モータは高真空環境下においても優れた耐久性能を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、超音波モータの高真空中における耐久性能を著しく向上させることができるので、宇宙探査ロボットのような宇宙機器に用いられる駆動用の超音波モータを提供することができる。また、真空環境での加工プロセスを必要とする半導体製造においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の最良の形態に係る超音波モータを示す図である。
【図2】超音波モータの動作を説明するための図である。
【図3】高真空中での超音波モータの性能試験の結果を示す図である。
【図4】超音波モータの性能を比較した図である。
【図5】高真空中での動作後のロータとステータの表面状態を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
11 ステータ、12 ロータ、12a ロータの接触面、13 フレキシブル基板、14 摩擦材層、14a 下地層、14b 摩擦層、15 弾性体、
15a ステータの接触面、15b ステータの裏面、15k 櫛歯、16 圧電体。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4