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明細書 :金属粒子と炭素粉末の複合化方法、および金属・炭素複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360547号 (P5360547)
公開番号 特開2010-159445 (P2010-159445A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成22年7月22日(2010.7.22)
発明の名称または考案の名称 金属粒子と炭素粉末の複合化方法、および金属・炭素複合材料の製造方法
国際特許分類 B22F   1/00        (2006.01)
C22C   1/10        (2006.01)
B22F   9/04        (2006.01)
B22F   9/02        (2006.01)
B22F   3/20        (2006.01)
B22F   3/14        (2006.01)
C01B  31/04        (2006.01)
FI B22F 1/00 E
C22C 1/10 E
C22C 1/10 J
B22F 9/04 C
B22F 9/02 A
B22F 1/00 J
B22F 3/20 C
B22F 3/14 D
C01B 31/04 101B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2009-001294 (P2009-001294)
出願日 平成21年1月7日(2009.1.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年7月13日~18日 日本学術会議および炭素材料学会主催の「2008年国際炭素材料学会議」において文書をもって発表 平成20年8月26日 独立行政法人科学技術振興機構および独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構主催の「イノベーション・ジャパン2008-大学見本市」公式ウェブサイト(https://exponet.nikkeibp.co.jp/ij2008/exhibitor/view/4941)を通じて発表
特許法第30条第3項適用 平成20年9月16日~18日 独立行政法人科学技術振興機構および独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構主催の「イノベーション・ジャパン2008-大学見本市」に出品
審査請求日 平成23年11月17日(2011.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】清水 保雄
【氏名】遠藤 守信
【氏名】石原 徹
【氏名】高木 鉄平
【氏名】塚本 慧
【氏名】松岡 秀司
【氏名】細野 高史
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 特開平10-168502(JP,A)
特表2008-545882(JP,A)
特開2007-016262(JP,A)
特開昭60-131944(JP,A)
特開平09-209001(JP,A)
特開2002-129208(JP,A)
特開2005-082832(JP,A)
調査した分野 B22F 1/00-8/00
B22F 9/00-9/30
C22C 1/04、05、10
C22C 33/02

特許請求の範囲 【請求項1】
金属薄片あるいは金属粗粉末と、黒鉛粉末およびカーボンナノファイバーからなる炭素粉末と、ボールとを振動ボールミルの容器に収容し、該振動ボールミルを駆動して、金属薄片あるいは金属粗粉末が粉砕されて生じる金属粒子間に前記炭素粉末を介在させて金属粒子同士の再付着を防止しつつ金属薄片あるいは金属粗粉末を所要大きさの粒状にまで粉砕するとともに該金属粒子と炭素粉末とを一体化させ複合化する金属粒子と炭素粉末の複合化方法であって、
先ず、金属薄片あるいは金属粗粉末と黒鉛粉末とを振動ボールミルに収容し、該振動ボールミルを駆動して金属薄片あるいは金属粗粉末の微細化を行って後、さらにカーボンナノファイバーを添加して振動ボールミル処理を行って前記金属粒子と炭素粉末とを一体化させ複合化することを特徴とする金属粒子と炭素粉末の複合化方法。
【請求項2】
金属薄片に、金属を機械切削して作製した切屑を細片化したものを用いることを特徴とする請求項1記載の金属粒子と炭素粉末の複合化方法。
【請求項3】
金属薄片あるいは金属粗粉末に対して前記炭素粉末を1~5mass%混合することを特徴とする請求項1または2記載の金属粒子と炭素粉末の複合化方法。
【請求項4】
金属薄片あるいは金属粗粉末がマグネシウムもしくはアルミニウムおよびそれらの合金であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の金属粒子と炭素粉末の複合化方法。
【請求項5】
前記振動ボールミルに3軸方向加振型ボールミルを用いることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の金属粒子と炭素粉末の複合化方法。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項記載の金属粒子と炭素粉末と複合化方法により得られた複合粉末を真空加圧焼結を行って予成形体を形成し、この予成形体を真空熱間押出成形して押出成形品を得ることを特徴とする金属・炭素複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金法を基本に複合材を作製するための金属粒子とカーボンナノファイバー(以下、CNFと略記)等の炭素粉末の複合化方法、および金属・炭素複合材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム(Al)合金やマグネシウム(Mg)合金中に、炭素繊維、金属繊維、セラミックス等の強化材を混入させた複合材が各種用途に用いられている。特に強化材としてカーボンナノファイバー(CNF)を用いたものは、高い強度を有し、しかも軽量であるという優れた特性を有している。
【0003】
これら複合材の製法としては溶湯攪拌法、スクイズキャスト法、粉末冶金法などが知られている。
溶湯攪拌法は、溶融金属中に攪拌しながら強化材を混合し、しかる後固化する製法である。
また、スクイズキャスト法は、強化材をバインダで固定成形して多孔質性のプリフォームを形成し、溶融させた金属をプリフォームに加圧して含浸させ、その後固化する製法である(例えば特開2007-16286)。
また、粉末冶金法は、金属合金粉末と強化材との混合粉を圧縮成形し、この成形物にホットプレスなどを施し、次いで圧延や押出成形などを行う製法である(例えば特開2004-15261)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-16286
【特許文献2】特開2004-15261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記溶湯攪拌法は、簡便で大量生産向きであるが、強化材がカーボンナノファイバー(CNF)の場合、溶融金属と濡れ難く、微細なCNFが凝集しやすい性質から溶湯中に均一に混入しにくいという課題がある。
また、スクイズキャスト法の場合も、強化材が多孔質性のプリフォームの本体骨格部に存在し、孔の部分には存在しないので、均一分散は得られないという課題がある。
一方、粉末冶金法の場合、一般に製造コストが最も高くなる欠点はあるが、固体粉末状態で原料を扱う点で強化材の均一分散に適し、また、多様な素材の組み合わせが可能となる利点がある。
上記の3種類の製造方法に限られるものではないが、得られる複合材料の強度は用いる母相金属の粒子の大きさにも依存し、粒子径が小さいほど強度が高くなるが、金属粒子の小径化(微細化)には限界があるという課題がある。強度の観点からは母相金属粒子の微細化が望ましいが、反面、本発明対象のAl粉末やMgは、消防法で規定された第2類危険物(可燃性固体)であり、それが活性であるために、微粉化すればするほど取扱いに注意を要する物質となるため、粉末冶金法は産業安全面での課題も存在する。
【0006】
また、上記いずれの方法も、理論的には得られる製品は高い強度を有し、また軽量であるという優れた特性を有するものの、CNFの分散性の問題があり、この分散性が十分でないと強度が改善されないという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、より安全で、金属粒子の小径化が可能な金属粒子と炭素粉末の複合化方法、および優れた強度を有する金属・炭素複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属粒子と炭素粉末の複合化方法は、金属薄片あるいは金属粗粉末と、黒鉛粉末およびカーボンナノファイバーからなる炭素粉末と、ボールとを振動ボールミルの容器に収容し、該振動ボールミルを駆動して、金属薄片あるいは金属粗粉末が粉砕されて生じる金属粒子間に前記炭素粉末を介在させて金属粒子同士の再付着を防止しつつ金属薄片あるいは金属粗粉末を所要大きさの粒状にまで粉砕するとともに該金属粒子と炭素粉末とを一体化させ複合化する金属粒子と炭素粉末の複合化方法であって、先ず、金属薄片あるいは金属粗粉末と黒鉛粉末とを振動ボールミルに収容し、該振動ボールミルを駆動して金属薄片あるいは金属粗粉末の微細化を行って後、さらにカーボンナノファイバーを添加して振動ボールミル処理を行って前記金属粒子と炭素粉末とを一体化させ複合化することを特徴とする。
【0009】
金属薄片は、金属を機械切削して作製した切屑を細片化したもので、概略の寸法は厚さが0.5mm、長さが数mmのものを用いると好適である。また、金属粗粉末は、機械粉砕やガスアトマイズ法などの公知の技術により作製されたもので、製造技術を問わずいずれでも良いが、その概略の粒径が1mm以下であるものを用いると好適である。なお、当該金属薄片あるいは金属粗粉末は、産業安全上の問題が回避されるなら、原初状態から可能な範囲でより小さい薄片あるいは粉末であればある程、振動ボールミル工程の所要時間が短くなり好適である。
金属薄片あるいは金属粗粉末に対して前記炭素粉末を1mass%~5mass%混合することを特徴とする。
金属薄片あるいは金属粗粉末がマグネシウムもしくはアルミニウムおよびそれらの合金の薄片あるいは粗粉末であることを特徴とする。
前記振動ボールミルに3軸方向加振型ボールミルを用いると好適である。
【0010】
また、本発明に係る金属・炭素複合材料の製造方法は、上記いずれかの金属粒子と炭素粉末との混合方法により得られた混合粉末を真空加圧焼結を行って予成形体を形成し、この予成形体を真空熱間押出成形して押出成形品を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属結晶粒の微細化ができ、優れた強度を有する金属・炭素複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ボールミル工程で使用した市販品の微細黒鉛粉(図1(a)):日本黒鉛工業(株)製CPB(商品名)と、カーボンナノファイバー(図1(b)):昭和電工製のVGCF(商品名)のSEM写真である。
【図2】マグネシウム合金において最も汎用性の高い鋳造用合金であるAZ91Dを用い、その機械切削屑からボールミル加工し作製した粉末を真空加熱成形および熱間押出加工して得られた母材合金AZ91D(図2(a))、およびAZ91D合金の機械切削屑に3mass%のCNFを添加し、ボールミル加工し作製した粉末を真空加熱成形および熱間押出加工して得られた金属・炭素複合材(図2(b))において、いずれも人工時効熱処理(JISに規定するT6熱処理)を施したもののレーザー顕微鏡組織写真である。
【図3】マグネシウム合金AZ91D母材、AZ91D-CNF複合材料およびAZ91D-CPB複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出し試験片の引張り試験特性を示す。
【図4】アルミニウム合金A7075母材、およびA7075-3mass%CPB複合材料、 A7075-3mass%VGCF複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出材の引張試験特性を示す。
【図5】マグネシウム合金AZ91D母材、AZ91D-3mass%VGCF複合材料、およびAZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出材の引張試験特性を示す。
【図6】AZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF複合材料の引張り試験後の破断面SEM組織を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の好適な実施の形態を実施例を含めつつ添付図面に基づいて詳細に説明する。
<金属粒子と炭素粉末の複合化方法>
母材となる金属・合金を機械切削して作製した厚さ0.5mm程度で長さと幅が数mm程度(1mm~10mm程度)の母材切屑を所定量の微細黒鉛粉末あるいはCNFと一緒に3軸方向加振型ボールミル((株)トポロジックシステムズ社製TKMAC-1200L)に掛け混合した。
同ボールミルによる混合では、対象原材料を、金属、例えば一般的に使用されるステンレス鋼、あるいはジルコニアセラミックス容器内に同材質の直径10mm程度のボールとともに装填した後、容器内部を不活性ガスである、例えばArガスで満たして密閉し、上記ボールを強制的に揺動・衝突させる機構を利用して、同容器内に素材原料として充填した金属切屑と微細黒鉛粉末あるいはCNFを攪拌・混合・粉砕して複合化させる。その際のボールミルの振動数は800rpm、処理時間は5時間程度とした。

【0014】
<金属・炭素複合材料とその製造方法>
上記のようにして得られた金属・黒鉛あるいはCNF複合粉末を、例えば、180μm以下の粒子のみに篩分けし、それを用いて常法により真空加圧焼結を行い550℃で5時間程度保持する条件で予成型体を得た。この予成形体を350℃程度で真空熱間押出成形し丸棒や形棒材からなる押出成形品(金属・炭素複合材料)を得た。
あるいは、同予成形体を半溶融もしくは溶融点直上の温度まで加熱溶融し、溶湯鍛造や射出成形などの方法で鋳造し、金属・炭素複合材料としてもよい。
さらに必要に応じて、時効熱処理などを適用してもよい。

【0015】
<本実施の形態における特徴>
本実施の形態では、粉末冶金法を原理とした金属-CNF複合材料の製造工程において、金属切削屑と微細黒鉛粉末あるいはCNFを機械的に攪拌・混合させ金属-CNF複合素材を製造するボールミルプロセスにおいて、ボールの運動(衝突)エネルギーを金属素材切屑のみならず微細黒鉛粉末あるいはCNFに加え、微細黒鉛粉末あるいはCNFの変形や損傷・破壊を敢えて厭わずに与えることにより、粉砕されつつある金属素材切屑表面から微細黒鉛粉末やCNFを付着させつつ一体化させ複合化を図る点に特徴がある。

【0016】
ボールミル加工は金属素材切屑を微細な粉末に加工する目的で一般によく適用される技術である。製造される粉末のサイズはある大きさで限界に達し、それ以上には微細化できない。また、当然ながら、得られる粉末の大きさに依存して、その粉末を構成する結晶粒のサイズもある大きさ以下にはできない。その原因は、粉砕と同時に再合体が生じ、それが繰り返されるからである。ところで、金属素材に添加された黒鉛粉末やCNFは一般に金属と接合し難い。

【0017】
本実施の形態における最も根幹となる特徴は、従来のボールミル法では限界となる金属素材の微細化を更に促進できることである。即ち、金属素材切屑と一緒に微細黒鉛粉末あるいはCNFを同時に混ぜた状態でボールミル工程に掛ける。この工程で用いた微細黒鉛粉末およびCNFのSEM写真を図1に示す。
図1は、結晶粒微細化のためにボールミル工程で使用した市販品の微細黒鉛粉(図1(a)):日本黒鉛工業(株)製CPB(商品名)と、カーボンナノファイバー(図1(b)):昭和電工製のVGCF(商品名)のSEM写真である。前者は燐片状を呈しており、後者は前者に比べはるかに小さく繊維状を呈している。

【0018】
この微細黒鉛粉末あるいはCNFの介在が奏功して、金属素材切屑の粉砕が進む一方で生じる再合体を抑制できる。その理由は、黒鉛粉末やCNFは一般に金属と接合し難く、金属粉末同士の間に黒鉛粉末やCNFが挟まると金属粒子同士の合体を阻害するためと考えられる。
図2に、マグネシウム合金において最も汎用性の高い鋳造用合金であるAZ91Dを用い、その機械切削屑からボールミル加工し作製した粉末を真空加熱成形および熱間押出加工して得られた母材合金AZ91D(図2(a))、およびAZ91D合金の機械切削屑に3mass%のCNFを添加し、ボールミル加工し作製した粉末を真空加熱成形および熱間押出加工して得られた金属・炭素複合材(図2(b))のレーザー顕微鏡組織の比較を示す。なお、これら試料はいずれも人工時効熱処理(JISに規定するT6熱処理)を施してある。

【0019】
図2に示されるように、本実施の形態により作製された金属・炭素粉末複合材料の組織が母材のそれに比べて、結晶粒径は、局所的なばらつきはあるが1/2~1/数10以下に微細化されることが分る。図2において、白い部分が結晶粒である。
計測したところ、結晶粒径は、図2(a)のものにおいて、2μm~10μmの範囲のものがほとんどであるが、図2(b)のものにおいては、0.05μm~5μmの範囲のもの、特には0.5μm~1.0μmの範囲のものが多く分布している。なお、計測は拡大写真を用いて切断法(既知長さの線分により切断される結晶粒の数を計測し、その切断長さの平均値を求める方法)により測定した。

【0020】
金属組織学が明らかにしているように、結晶粒の微細化は材料の強靭化(降伏強度や引張強さの向上)を図る有効な手段である。いわゆるホールペッチ効果(Hall-Petch effect)である。
Hall-Petch効果は次式で書くことができる。即ち、材料の強度をσ、結晶粒径をdとするとき、

【0021】
(数1)
σ=σ0+k/√d
ここでσ0は結晶粒径に依存しない材料固有の値、kは比例定数である。従って、結晶粒径が小さくなるとその平方根の逆数に比例して、強度は増すこととなる。

【0022】
本実施の形態で製造した微細結晶粒からなる複合合金粉末を用いて、真空加圧焼結予成型体を経て真空熱間押出成形して製造した複合合金の保有する高い強度は、結晶粒の微細化によるホールペッチ効果が明らかに貢献しており、また加えて、添加された微細黒鉛粉末やCNFがボールミル工程において、破断や損傷を受けるものの、一部は原形状に近い繊維状あるいは薄片状の形態を保持しているものもあることからその補強材としての効果も発揮されていると考えられる。

【0023】
図3に、上記と同様にして作製した、マグネシウム合金AZ91D母材、AZ91D-CNF複合材料およびAZ91D-CPB複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出し試験片の引張り試験特性を示す。
試験片:素径φ6mm(長さ60mm,標点間距離15mm,試験部直径φ4mm)
図3より、母材AZ91Dは、カーボンナノファイバー(VGCF:商品名)および微細黒鉛粉末CPBを添加したことにより明らかに強化されており、CPBの方が若干破断伸びが大きい。ただし、VGCFおよびCPBのいずれも5mass%まで添加量を増やすと強度および破断伸び共に減少に転じた。このことの原因は、VGCFおよびCPBの過剰添加によりそれらの局部的凝集が発生し、均一分散が損なわれ、結合力の弱い欠陥部として作用するためと考えられる。したがって、VGCF、CPBの添加量は1mass%以上で5mass%程度までが良好である。

【0024】
図3に示すAZ91D複合材に関する成果は、中川らが、スクイズキャストにより11mass.%のアルミナ短繊維を複合したAZ91D合金において引張り強さ270Mpaおよび破断伸び1%を得ている結果(軽金属, 45, 21-26, 1995)と比較し、より優れた機械的性能が実現されていることを示している。さらに、黒鉛粉末の添加により強化の効果が現れることは、VGCFに比べ安価で経済性に優れる複合材料を製造するために、CNFの一部を代替できることを意味しており、実用的に意義が大きい。
図3に示すように、例えば、マグネシウム合金AZ91D-3%VGCF複合材料の引張強さは、σB=430MPaに達した。これらは他に類例のない高強度複合材料である。

【0025】
図4に、上記と同様にして作製した、アルミニウム合金A7075母材、およびA7075-3mass%CPB複合材料、 A7075-3mass%VGCF複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出材の引張試験特性を示す。
試験片:素径φ6mm(長さ60mm,標点間距離15mm,試験部直径φ4mm)
図4から明らかなように、アルミニウム合金A7075に関しても、図3と同様の効果が認められ、A7075-3mass%VGCF複合合金の引張強さはσB=530MPaに達した。A7075-3mass%CPB複合合金の引張強さはCNF複合材料より若干低いσB=510MPaであったが両者に大差はないといえる。

【0026】
複合材料の強化は黒鉛粉末CPBを添加してもVGCF添加材と比較して遜色なく達成できるので、CNFの一部は市販価格が1/数10以下の安価な黒鉛粉末に代替可能である。そこで、先ず、黒鉛粉末の添加により金属素材切屑の微細化を行い、更に追加工程で、CNFを補助的に導入すれば、CNFの補強効果が相乗され、強度や延性の増進を達成できると共に、コストの低減化が図れる。
図5に、上記と同様にして作成したマグネシウム合金AZ91D母材、AZ91D-3mass%VGCF複合材料、およびAZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF複合材料に関する真空加熱成形および熱間押出材の引張試験特性を示す。
試験片:素径φ6mm(長さ60mm,標点間距離15mm,試験部直径φ4mm)
ここでAZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF試料は、予め2mass%PCBの添加でAZ91D切屑とボールミル処理して得られた粉末にさらに1mass%のVGCFを添加し、再度ボールミル混合処理を経て作製した複合材料である。
図5に示すように、AZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF複合材料ではその強度は470MPaに達し、しかも破断伸びも4%に維持された。この値は3mass% VGCF添加複合材料に比べ、強度と同時に破断伸びでも優れる好ましい結果である。この結果は、現状ではCNFが高価であることが、CNF複合材料の実用化を阻む欠点となっている問題を克服することにも繋がり、その意義は明らかである。

【0027】
図6には、上記図5に掲載したAZ91D-2mass%CPB+1mass%VGCF複合材料の引張り試験後の破断面SEM組織を示した。複雑な凹凸を生じた破断面の一部には繊維状のVGCFの突き出しが観察されるが、VGCFの局所的な凝集状態は認められなかった。図5で説明したVGCFの追添加による複合材料の強度および破断伸びの改善効果は、図6の中央部に挿入した円内に観察されるような母材から突出したVGCFの存在から判断して、VGCFが母材同士の結合強度の増大に寄与していることを示唆していると考えられる。

【0028】
また、本実施の形態における複合粉末製造プロセスは、Mgのような活性で取扱いに注意を要する微粉末を原料とする必要は無く、通常の機械切削切屑あるいは粗粉末を出発原料として、これに黒鉛粉末あるいはCNFを混ぜた状態から粉砕の工程が始まるので、複合材料の安全な製造にも寄与し好ましい。

【0029】
従来、本実施の形態で採用した方法と類似なボールミル法など用いた金属-CNF複合粉末の製造方法は多数あるが、いずれも、CNF自体の性質を失わぬよう可能な限り損傷をさけるような混合方法を採用することに腐心している。本発明者も当初はそのような観点から、複合粉末の作製に注力していた。またこれとは別に、単にボールミル法により金属切屑を微細化する特許発明も存在するが、本実施の形態のように、黒鉛やCNFを介在させるものではない単純な技術である。

【0030】
上記のごとく、本実施の形態では、黒鉛あるいはCNFの有する金属との難接合性を利用してボールミル工程で現れる母材金属粉末の結晶粒微細化作用を活かし、結果的にホールペッチ効果と、CNFの補強効果の相乗効果を利用した点に特徴がある。このような概念は既報の研究論文や特許文献にも見当たらない。

【0031】
本実施の形態における、CNFの優れた諸性質を活かした金属・CNF複合材料は、今後、軽量化や省エネルギーが求められる産業分野、例えば、航空機・自動車・電気・電子・日用品などの各種工業製品に適用できる新しい合金素材として有用な材料となると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5