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明細書 :細線の被膜作成方法及びこれを使用する細線の被膜作成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5337994号 (P5337994)
公開番号 特開2010-167389 (P2010-167389A)
登録日 平成25年8月16日(2013.8.16)
発行日 平成25年11月6日(2013.11.6)
公開日 平成22年8月5日(2010.8.5)
発明の名称または考案の名称 細線の被膜作成方法及びこれを使用する細線の被膜作成装置
国際特許分類 B05D   7/20        (2006.01)
B05C   1/02        (2006.01)
FI B05D 7/20
B05C 1/02
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2009-014310 (P2009-014310)
出願日 平成21年1月26日(2009.1.26)
審査請求日 平成23年10月11日(2011.10.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】國武 孝人
【氏名】河南 洋
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】山本 昌広
参考文献・文献 特開平7-155660(JP,A)
特開昭59-139960(JP,A)
実開昭61-125371(JP,U)
調査した分野 B05D 1/00-7/26
B05C 1/00-21/00
特許請求の範囲 【請求項1】
線材の周囲を被覆する被膜作成方法であって、前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布手段によって塗布するステップとからなり、該塗布手段の塗布部を前記線材の周方向一端側に接触させて長手方向に移動させ、さらに該線材の他の方向から前記塗布手段の塗布部を接触させて長手方向に移動させることによって前記線材の周囲に被膜を形成することを特徴とする細線の被膜作成方法。
【請求項2】
前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布手段によって塗布するステップにおいて、該被膜材の粘度を計測する計測手段をさらに含み、該計測手段によって計測された粘度に基づき、制御手段によって塗布手段の塗布速度を決定することを特徴とする請求項1に記載の細線の被膜作成方法。
【請求項3】
前記線材は、金属、プラスチック、セラミックのいずれかであり、線径が6.5~200μmの細線であることを特徴とする請求項1又は2記載の細線の被膜作成方法。
【請求項4】
前記被膜材は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂のいずれかの熱硬化性樹脂であり、また前記塗布手段の塗布部は刷毛、ブラシもしくはローラーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の細線の被膜作成方法。
【請求項5】
前記塗布手段によって塗布された被膜材を熱硬化させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の細線の被膜作成方法。
【請求項6】
前記熱硬化した被膜材にさらに被膜材を塗布するステップと、該被膜材をさらに熱硬化させるステップを複数回繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の細線の被膜作成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の細線の被膜作成方法に使用する細線の被膜作成装置であって、線径が6.5~200μmの線材の周囲に、制御手段によって前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布する塗布手段と、該線材を熱硬化する熱硬化手段とを備え、該塗布手段の塗布部である刷毛、ブラシもしくはローラーを前記線材の周方向一端側に接触させて長手方向に移動させ、さらに該線材の他の周方向から前記刷毛、ブラシもしくはローラーを接触させて長手方向に移動させて被膜を形成し、熱硬化手段によって熱硬化させることによって、前記線材の周囲に被膜を形成することを特徴とする細線の被膜作成装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の周囲を被覆する方法及びこれを使用する細線の被膜作成装置であって、とくに線径が6.5~200μmの細線の被膜作成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、脳機能解明のために自由行動中の動物における単一神経活動の記録が行なわれている。その際に使用される金属微小電極としては数十~100μm程度の金属線を塗料で絶縁して、ハサミなどで切断した断面が用いられていた。
【0003】
このため金属線の断面は、変形したり、絶縁材料がハサミのせん断によって金属断面部に延出して付着し、微小電極として十分活用できないものであった。これに対して本発明者らは、細い金属線をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂溶液中に溝付けして引き上げ、加熱する方法を試みたが、金属線の周囲に形成された被膜には多数のピンホールが生じ、また金属線の長手方向で被膜量にムラが生じ数珠球状の樹脂塊が形成されるという問題が発生した。
【0004】
そこで、超極細線に絶縁ワニスを塗布する絶縁ワニス塗布方法及びその装置が提案されている(特許文献1参照。)。また、細線の被膜に関しては、金属線を樹脂塗布槽に送出し、塗布槽内のドラムと接触させることで被膜を作成する方法が提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平8-298035号公報
【特許文献2】特公平7-50721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の特許文献1の技術は、コーターロールとワニス絞りフェルトを使用して毛管現象を利用して極細線に絶縁ワニスを塗布するものであり、極細線とコーターロールとを接触させずに絶縁ワニスを塗布するため、摩擦抵抗がなくなり線振れによる事故を防ぐものであるが、被膜を厚くするために極細線上に複数回絶縁ワニスを塗布するには、ロール状に巻かれた極細線を複数回取付け、取り外す作業が必要となり、多大の手間が掛かるものであった。また、特許文献2は10μmから50μmの細線を被覆する技術であるが、この技術では長さ数十cmの金属線の端部以外で意図的に被覆させない部分を作成することは困難である。またこの技術で形成された被膜の機械強度は十分でなく、例えば単一神経活動記録電極として使用するために先端から金属を電解により溶かし出し被膜による円筒状空洞を作成した場合は、その被膜による壁が崩壊してしまい、脳実質刺入時の強度を確保することができない。
【0007】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、鋭意研究の結果、金属等の細線(例えば40μm未満)に対し、線材の周に対し異なる方向から樹脂を複数回塗布することで、細線の周囲に被膜を形成する技術を確立し、この被膜作成を可能とする細線の被膜作成方法とこれ使用する細線の被膜作成装置を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の細線の被膜作成方法は、前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布手段によって被膜材を塗布するステップからなり、該塗布手段の塗布部を前記線材の周方向一端側に接触させて長手方向に移動させ、さらに該線材の他の周方向から前記塗布手段の塗布部を接触させて長手方向に移動させることによって前記線材の周囲に被膜を形成することを第1の特徴とする。
【0009】
また、前記被膜材を、線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布手段によって塗布するステップにおいて、該被膜材の粘度を計測する計測手段をさらに含み、該計測手段によって計測された粘度に基づき、制御手段によって塗布手段の塗布速度を決定することを第2の特徴とする。
【0010】
そして、前記線材は、金属、プラスチック、セラミックのいずれかであり、線径が6.5~200μmの細線であることを第3の特徴とする。尚、本発明の被膜作成法においては線径6.5~100μmの線材の塗布に有効に使用でき、また線径6.5~40μmにおいてさらに有効に使用できる。線径6.5~100μmの線材は単一神経活動記録電極に用いることができ、特に線径6.5~40μmの線材は神経活動の詳細な記録に好適である。
【0011】
そして、前記被膜材は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂のいずれかの熱硬化性樹脂であり、また前記塗布手段の塗布部は刷毛、ブラシもしくはローラーであることを第4の特徴とする。
【0012】
さらに、前記塗布手段によって被膜材を塗布した細線を搬送するステップと、該搬送された細線の被膜材を熱硬化させるステップをさらに含むことを第5の特徴とする。
【0013】
しかも、前記熱硬化した被膜材にさらに被膜材を塗布するステップと、該被膜材をさらに熱硬化させるステップを複数回繰り返すことを第6の特徴とする。この際熱硬化した被膜材に対して塗布部を接触させる位置を先に接触させた位置に対して所定の角度をつけることが望ましく、またこの繰り返し塗布するステップにおいて、被膜材は同一の被膜材に限定されない。
【0014】
また、本発明の細線の被膜作成装置は、線径が6.5~200μmの線材の周囲に、制御手段によって前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布する塗布手段と、該線材を熱硬化する熱硬化手段とを備え、該塗布手段の塗布部である刷毛、ブラシもしくはローラーを前記線材の周方向一端側に接触させて長手方向に移動させ、さらに該線材の他の周方向から前記刷毛、ブラシもしくはローラーを接触させて長手方向に移動させて被膜を形成し、熱硬化手段によって熱硬化させることによって、前記線材の周囲に被膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る細線の被膜作成方法及び装置によれば、線材の周囲に被膜を形成する熱硬化性樹脂の粘度を測定し、それに基づいた制御によって、刷毛、ブラシもしくはローラーを使用し線材の周方向一端側に接触させて長手方向に移動させながら熱硬化性樹脂を塗布し、さらに線材の周方向の他端側に接触させて長手方向に移動させながら塗布するため、線径が6.5~200μmの細径の線材であっても被膜を形成させることができる。
【0016】
この被膜作成方法にあっては、対象となる線材の被膜形成位置を任意に設定することができるという優れた効果を有する。この効果により、線材の長手方向における端部のみならず中央部でも被膜の無い部分を作成することができ、例えばこの部分で電気的接点を構成することが可能となる。
【0017】
また、線材の塗布箇所において、塗布及び熱硬化の工程の繰り返し回数を部分的に変えることにより、線材の長手方向、周方向ともに被膜の膜厚を制御することも可能となる。なお、線材の周方向の膜厚を均一の厚さに塗布することによって、被膜の機械強度が確保され、例えば単一神経活動記録電極において先端から金属を電解により溶かし出し被膜による円筒状空洞を作成した場合でも、脳実質刺入時その形状を維持することが可能となる。
【0018】
また、被膜する樹脂は熱硬化性樹脂であり、熱硬化手段によって熱硬化されるため、被膜の機械強度が高い線材の作成ができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の被膜作成手段を示す工程図である。
【図2】本発明の被膜作成装置の一実施例を示す概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の細線の被膜作成方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明の被膜作成手段を示す工程図である。

【0021】
図に示すように、本発明の細線の被膜作成方法は、線材の一端側に錘を取付けて垂下させ、他端を保持するステップS1と、粘度を計測された被膜材を制御手段によって前記線材の周囲の塗布位置と塗布速度を決定して塗布手段の塗布部によって塗布するステップS2と、ステップS2によって塗布された線材を搬送手段によって搬送して加熱装置によって加熱するステップS3からなり、このステップS2及びステップS3は作成する被膜の厚みによって複数回繰り返される。以下、各ステップについて説明する。

【0022】
(ステップS1)
線材は、金属、プラスチック、セラミックのいずれかであり、線径が6.5~200μmの細線を用いる。この線材の一端側に錘を取付けて、他端を保持して吊り下げる。この際線径が20μm未満の線材は吊り下げる際に捩れが生じる虞があり、使用する錘の重量と保持具の形状は最適なものが選択される。

【0023】
そして、この線材は吊り下げた状態で最終のステップまで保持され、必要に応じて搬送手段によって移動される。

【0024】
吊り下げられた線材の周囲を被覆する被膜材として、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂のいずれかの熱硬化性樹脂が使用される。必要により、この熱硬化性樹脂は適した溶剤で希釈して使用する。

【0025】
尚、上記の熱硬化性樹脂溶液の溶剤の揮発を防止するために容器は密閉された状態が望ましい。

【0026】
上記の熱硬化性樹脂溶液中に、塗布手段の塗布部を投入する。この塗布部としては刷毛、ブラシもしくはローラーが選択され、上記の線材の材質及び線径によって最適なものが使用される。次に熱硬化性樹脂溶液を付着させた塗布部を、上記の吊り下げた線材の周方向一端側に接触させる。そしてこの塗布部を線材の表面に接触させたまま鉛直下方向に一定速度で移動させる。この際塗布部を接触させる線材表面の位置、鉛直下方向への移動速度、さらに移動終点位置は予め制御手段によって決定されており、塗布部の移動速度に応じた被膜の厚みが形成される。

【0027】
そして、上記線材の周方向一端側に接触して被膜を形成した塗布部を、一旦線材の表面から離して、この線材の周方向の他端側に移動させ、先に塗布部を接触させた線材の周方向一端側に対向する他端側に接触させる。さらにこの塗布部を線材の表面に接触させたまま鉛直下方向に一定速度で移動させ、上記した移動終点位置で塗布部の接触を解除する。

【0028】
この構成によって、線材の周囲の任意の位置から任意の長さの被膜を形成することができる。しかも、被膜材を塗布する速度が制御手段によって制御されており、使用される熱硬化性樹脂溶液の粘度に対応した塗布部の移動速度で塗布するため、常に一定の厚みの被膜を形成することができる。

【0029】
(サブステップSS1)
ステップS1での塗布速度の決定に当たっては、被膜材の攪拌回転数(または周波数)及び攪拌溶液中の磁気スターラーバーの攪拌モータに対する追従性に基づいて被膜材の粘度が計測され、この粘度値に基づき最適な塗布速度が決定される。

【0030】
この際、攪拌中の磁気スターラーバーの回転を回転センサーによりモニタし、攪拌周波数に磁気スターラーバーが追従できなくなる時の攪拌回転数を粘度の指標として用いることもできる。

【0031】
(ステップS2)
ステップS1で被膜を形成した線材を、吊り下げた状態のまま搬送手段によって熱硬化手段であるヒーターに投入して、線材に形成した被膜の熱硬化性樹脂を熱硬化させる。この際ヒーターによる熱硬化条件は、線材の材質と被膜の材質によって最適な時間と温度が選択される。

【0032】
ステップS2によって、線材の周囲には一定の厚みの被膜が形成されるが、さらに厚みを必要とする被膜を形成する場合には、上記のステップS1及びステップS2を複数回繰り返すことによって、希望する厚みの被膜を形成することができる。尚、線材の周囲に被膜を形成する際に、塗布部を接触させる位置を先に接触させた位置に対して任意の角度変更することによって、さらに被膜の厚みを均一にすることができる。

【0033】
以下に、本発明の細線の被膜作成方法に使用する被膜作成装置について説明する。図2は本発明の被膜作成装置の一実施例を示す概要説明図である。

【0034】
図2に示すように、本発明の細線の被膜作成装置1は、線材2を取付けて垂下する保持装置4と、この線材2の周囲に被膜を形成する塗布装置5と、塗膜材を攪拌する攪拌装置10と、線材2を搬送する搬送装置(図示せず)と、被膜材を熱硬化する熱硬化装置11とから構成され、制御手段であるコントローラ12によってそれぞれ制御されている。

【0035】
保持装置4は、線材2の一端側に錘3を取付けて吊り下げて保持できる構造であればよく、とくに径の細い線材の場合には捩れなどを生じないように、筒状の保持部を有する保持装置が望ましい。また、保持装置4は後述するコントローラ12の制御によって塗布装置5と熱硬化装置11に搬送される。

【0036】
塗布装置5は、塗布部であるブラシ6を線材2に対して垂直方向となるように取付けられており、このブラシ6は上下方向に移動可能とされる。またこのブラシ6の移動位置及び移動速度はコントローラ12によって制御される。

【0037】
攪拌装置10は、塗膜材である熱硬化性樹脂と専用の溶剤を混合させた熱硬化性樹脂溶液8を投入したガラス製の容器7と、熱硬化性樹脂溶液8内に入れた磁気スターラーバー9と、この磁気スターラーバー9を回転させて熱硬化性樹脂溶液8を攪拌させる専用モーター(図示せず)から構成されており、コントローラ12によって予め設定された回転数で専用モータを回転させて、磁気スターラーバー9を回転させると、熱硬化性樹脂溶液8の粘度変化によって磁気スターラーバー9の回転数に誤差が生じる。この誤差を回転センサー(図示せず)によって熱硬化性樹脂溶液8の粘度が計測される。

【0038】
熱硬化装置11は、塗布装置によって被膜材を塗布された線材2を、上部の孔部13から挿通して、コントローラ12により温度と時間が制御され、被膜材である熱硬化性樹脂を硬化させる。尚、熱硬化装置11の上部には孔部13の開閉を行なうシャッター部(図示せず)が設けられ、線材2を保持する。

【0039】
コントローラ12は、上記した線材2の搬送制御、塗布装置5のブラシ6の移動制御、攪拌装置10の攪拌により計測した粘度値からブラシ6の移動速度制御、熱硬化装置11による加熱制御を夫々行い、被膜作成装置1による被膜厚みを一定に制御すると共に、要望される被膜厚みを確保する。

【0040】
以下に、本発明の細線の被膜作成方法を実施例に従ってさらに詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(線材の準備)
まず、直径40μmのタングステンワイヤーを準備し、15cmにカットした。次にこのタングステンワイヤーの一端側に、鉛板を適宜のサイズに切断して巻きつけ、注射針の先端側から挿通して他端側をルアーロックプラグによって固定した。
【実施例1】
【0042】
(被膜材の準備)
ガラス製のビーカーに、エポキシ樹脂溶液を投入し、所定の希釈条件で希釈した後、磁気スターラーバーを回転させて攪拌した。磁気スターラーバーの回転を回転センサにてモニタし、必要に応じて粘度の調整を行った。
【実施例1】
【0043】
(被膜の作成)
準備したタングステンワイヤーのキャップ側をロボットアームによって保持させて、錘を下方にして吊り下げた。次に攪拌を行なったエポキシ樹脂溶液の入ったガラス製のビーカー内に、上下移動自在なブラシを浸して適量のエポキシ樹脂を含ませ、駆動装置によって上方向に移動させる。そして、ロボットアームの回動によってタングステンワイヤーをブラシ表面位置まで移動させてタングステンワイヤーの周方向一側面側に接触させる。この状態からブラシを錘のある下方向へ一定速度で移動させた。尚、ブラシをタングステンワイヤーに接触させる位置、ブラシの移動速度及びブラシをタングステンワイヤーから離脱させる位置はコントローラによって予め決定されている。とくに移動速度は熱硬化性樹脂溶液の粘度測定値によって決定されており、これらの制御情報に基づいてロボットアームとブラシの駆動が行なわれる。
【実施例1】
【0044】
タングステンワイヤーの周方向一側面側にエポキシ樹脂の被膜を形成した後、ロボットアームを再度回動させてタングステンワイヤーを搬送して、タングステンワイヤーの他の周方向にブラシを接触させた。そして、上記と同様にブラシを下方向に移動させてエポキシ樹脂の被膜を形成した。
【実施例1】
【0045】
(被膜の熱硬化)
被膜を形成したタングステンワイヤーをロボットアームの回動によって、さらに熱硬化装置の上部に移動し、タングステンワイヤーを熱硬化装置の上部孔部から投入して、シャッターによってタングステンワイヤーを保持した状態で予め設定された100℃、30分間の加熱、さらに180℃、30分間の加熱によって熱硬化を行なった。
【実施例1】
【0046】
被膜を作成したタングステンワイヤーは、直径40μmの金属線の周囲にエポキシ樹脂が均一に被膜を形成していることが確認できた。尚、上記した被膜作成の際に10回繰り返して塗布を行なった結果、樹脂膜厚は12μmとなった。
【実施例1】
【0047】
(被膜の評価)
上記線材に対して、中心ワイヤーであるタングステンワイヤーに最大で100Vが印可できる定電流装置を使用し、表面に被覆した熱硬化製樹脂部分からの漏れ電流を計測可能なテスターを使用して被膜の評価を行なった。
【実施例1】
【0048】
上記の装置を使用して、上記被覆したタングステンワイヤー上で動作させると、エポキシ樹脂の被膜を形成した箇所において漏れ電流は検出されず、ピンホールの無い絶縁被膜が形成されていることが確認された。
【実施例1】
【0049】
以上、本発明による細線の被膜作成方法及びこれを使用する細線の被膜作成装置によれば、線材を垂下させ下方向に所定の力で牽引して保持し、この線材の周囲に被膜を形成する熱硬化性樹脂の粘度に調節して、刷毛、ブラシもしくはローラーによって熱硬化性樹脂を線材の周方向一端側に接触させて上方から下方へ移動させながら塗布し、さらに線材の周方向の他端側に接触させて上方から下方へ移動させながら塗布するため、線径が6.5~100μmの細径の線材であっても常に一定の厚みの被膜をピンホールなどの欠陥を生じることなく形成できる。
【符号の説明】
【0050】
1 被膜作成装置
2 線材
3 錘
4 保持装置
5 塗布装置
6 ブラシ
7 容器
8 熱硬化性樹脂溶液
9 磁気スターラーバー
10 攪拌装置
11 熱硬化装置
12 コントローラ
13 孔部
図面
【図1】
0
【図2】
1