TOP > 国内特許検索 > 板厚測定方法および板厚測定装置 > 明細書

明細書 :板厚測定方法および板厚測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5391375号 (P5391375)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月15日(2014.1.15)
発明の名称または考案の名称 板厚測定方法および板厚測定装置
国際特許分類 G01B  17/02        (2006.01)
FI G01B 17/02 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2009-17088 (P2009-17088)
出願日 平成21年1月28日(2009.1.28)
審査請求日 平成23年11月22日(2011.11.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】林 高弘
【氏名】村瀬 守正
特許請求の範囲 【請求項1】
平板にレーザー光を照射して前記平板に超音波を発生させるステップと、前記平板に沿って伝搬するラム波のうちfc/4<f<fcの周波数帯のA0モードを受信するステップと、この受信したA0モードの振幅を測定するステップとを有することを特徴とする板厚測定方法。但し、fcは、A1モードのカットオフ周波数である。
【請求項2】
平板にレーザー光を照射して前記平板に超音波を発生させる手段と、前記平板に沿って伝搬するラム波のうちfc/4<f<fcの周波数帯のA0モードを受信する手段と、この受信したA0モードの振幅を測定する手段とを備えたことを特徴とする板厚測定装置。但し、fcは、A1モードのカットオフ周波数である。
【請求項3】
配管にレーザー光を照射して前記配管に超音波を発生させるステップと、前記配管に沿って伝搬する軸対称モードのうちfc/4<f<fcの周波数帯のL(0、1)モードを受信するステップと、この受信したL(0、1)モードの振幅を測定するステップとを有することを特徴とする板厚測定方法。但し、fcは、L(0、3)モードのカットオフ周波数である。
【請求項4】
配管にレーザー光を照射して前記配管に超音波を発生させる手段と、 前記配管に沿って伝搬する軸対称モードのうちfc/4<f<fcの周波数帯のL(0、1)モードを受信する手段と、この受信したL(0、1)モードの振幅を測定する手段とを備えたことを特徴とする板厚測定装置。但し、fcは、L(0、3)モードのカットオフ周波数である。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、平板や配管などの板厚測定方法および板厚測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、平板や配管の厚み測定は、非特許文献1に示されるように、超音波探触子を表面に垂直に当てて、超音波エコー波形を取得することで測定していた。そのため、大型の平板や配管などの構造物全領域の厚み測定を行うことを考えると非常に多くの時間とコストを必要とした。さらに、遠隔にある構造材料などの厚み測定では、その領域まで人力やロボットなどで近づく必要があり、高所などの危険環境での作業が余儀なくされてきた。
【0003】
また、遠隔から超音波を発生させ、受信する方法としてレーザー超音波法がある(非特許文献2)。この方法を適切に利用すれば、遠隔からの厚み測定が可能となると期待されている。しかしながら、レーザー利用による超音波の発生は実行可能であるものの、受信はレーザー干渉によるため、焦点位置を制御しなくてはならなかったり、材料表面から十分なレーザー光の反射がなくてはならず、制約が非常に多く実現できていなかった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】JIS Z 2355 超音波パルス反射法による厚さ測定方法
【非特許文献2】[非破壊検査技術シリーズ]超音波非破壊試験III、p.206-p.210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
探触子を用いる方法では、全領域を検査する際に非常に時間とコストがかかり、また検査領域が高所や遠隔にある場合、検査領域に探触子を当てるために足場を組み、通常人がその領域まで近づかなくてはならないため手間とコストがかかる。また、レーザー干渉を用いた超音波受信方法では、焦点の制御が必要であったり、表面状態がレーザー光が十分反射する程度の鏡面状態である必要があるなどで、多くの対象物に適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、平板にレーザー光を照射して前記平板に超音波を発生させるステップと、前記平板に沿って伝搬するラム波のうちA0モードを受信するステップと、この受信したA0モードの振幅を測定するステップとを有する板厚測定方法を第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明は、平板にレーザー光を照射して前記平板に超音波を発生させる手段と、前記平板に沿って伝搬するラム波のうちA0モードを受信する手段と、この受信したA0モードの振幅を測定する手段とを備えた板厚測定装置を第2の特徴とする。
【0008】
上記した第1、第2の特徴において、A0モードの振幅は、平板の板厚におおむね反比例するので、A0モードの振幅の振幅を測定することにより、平板の板厚情報を得ることができる。また、A0モードの振幅が板厚におおむね反比例するので、A0モードの振幅から平板の板厚を求め、それを板厚情報としてもよい。
【0009】
また、本発明は、配管にレーザー光を照射して前記配管に超音波を発生させるステップと、前記配管に沿って伝搬する軸対称モードのうちL(0,1)モードを受信するステップと、この受信したL(0,1)モードの振幅を測定するステップとを有する板厚測定方法を第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、配管にレーザー光を照射して前記配管に超音波を発生させる手段と、前記配管に沿って伝搬する軸対称モードのうちL(0,1)モードを受信する手段と、この受信したL(0,1)モードの振幅を測定する手段とを備えた板厚測定装置を第4の特徴とする。
【0011】
上記した第3、第4の特徴において、L(0,1)モードの振幅は、配管の板厚におおむね反比例するので、L(0,1)モードの振幅を測定することにより、配管の板厚情報を得ることができる。また、L(0,1)モードの振幅が配管の板厚におおむね反比例するので、L(0,1)モードの振幅から板厚を求め、それを板厚情報としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態における板厚測定装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す板厚測定装置で得られた、板厚に対応する振幅分布を示す図である。
【図3】図1に示す板厚測定装置による、板厚に対応する振幅分布を得るための処理を示す図である。
【図4】平板に対する位相速度分散曲線を示す図である。
【図5】図1中の斜角探触子の内部構造を示す図である。
【図6】斜角探触子を複数にした実施形態を示す図である。
【図7】超音波励振用のレーザービームの照射領域を線状にした実施形態を示す図である。
【図8】複数の超音波探触子を並べて構成した実施形態を示す図である。
【図9】配管に対する位相速度分散曲線を示す図である。
【図10】配管の板厚を測定する場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
平板や配管などに沿って伝搬する超音波モードをガイド波と呼ぶが、以下に説明する実施形態では、このガイド波の発振はレーザーによって行い、受信は斜角探触子を利用している。超音波発振用のレーザー光をミラーを用いて走査することによって材料表面上のあらゆる点でガイド波の励振を高速で可能にし、材料中を伝わった後に斜角探触子でこのガイド波が受信されるという構造となっている。

【0014】
平板中を伝搬するガイド波(ラム波とも呼ばれる)のうち、A0モードのある特定の周波数領域では、欠陥からの反射波やモード変換が起こりにくく、その領域を用いると、超音波を励振した箇所の板厚におおむね反比例する振幅が得られるという性質を発見し、それを利用している。

【0015】
A0モードの受信は斜角探触子の受信角を調整することによって効果的に受信でき、周波数は探触子の持つ特性やフィルターによって調整することができる。

【0016】
この技術によって、従来の垂直探触子を用いる厚み測定に比べ、格段に高速で厚みを測定することができ、ある地点に斜角探触子を設置すれば、レーザーを遠方から構造に照射するだけで計測できるので、厚みを測定したい地点に近づく必要はない。レーザー干渉計による超音波の受信と異なり、安定した計測が可能である。

【0017】
なお、板厚の測定は、平板のみならず配管への適用も可能である。

【0018】
以下、本発明に係る板厚測定装置の実施形態について具体的に説明する。

【0019】
(第1実施形態)
レーザー発振装置1からレーザー光が発振され、アッテネーター2によってレーザーのエネルギーが調整される。その後、ピンホール3によってレーザーのスポットサイズを調整し、2軸のガルバノミラー4aを有するガルバノスキャナー4でレーザー光が試験体表面でx,y方向に走査される。

【0020】
ある1点に入射したレーザー光の作用により試験体には超音波が発生され(レーザー光を当てると表面に熱応力が発生し、超音波が発生する:上記した非特許文献2参照)、平板5に沿って伝搬するラム波となる。ラム波A0モードを受信するように角度を調整された斜角探触子6によってラム波A0モードが受信され、アンプ7を通って信号が増幅されたのち、パソコン9内に接続されたAD変換ボード8によってアナログ信号がデジタル化される。

【0021】
パソコン9内に収録した波形は、A0モードで損傷からの反射やモード変換が小さくなるような周波数領域のみを利用するため、適宜フィルターなどパソコン9内のソフトウェアを使って信号を加工する。信号収録のために、レーザー発振装置1などからトリガー信号が必要となる。ある地点で収録されたラム波A0モードの振幅をパソコン9内のメモリや記録媒体に収録したのち、ガルバノスキャナー4を動かし、レーザー照射地点を次の計測位置に移動させる。以下、同様の計測をあらかじめ決めておいた点において繰り返し振幅の分布を表示させることで板厚に対応する振幅分布(図2)が取得できる。

【0022】
図3に、板厚に対応する振幅分布を得るための処理を示す。まず、材料表面上のx,y方向のレーザー照射点数nx,nyとレーザー照射位置xi,yj(i=1,2...nx,j=1,2...ny)を決める(ステップ101)。そして、レーザー照射を開始する(ステップ102)。次に、ガルバノスキャナー4をパソコン9で制御してレーザー光を平板初期位置x1,y1に移動させる(ステップ103)。この後、パソコン9は、レーザー発振装置1からトリガーを取得し,波形を収録する(ステップ104)。次に、適切な周波数帯になるようフィルター処理を行い、ラム波A0モードの振幅を測定する。具体的には、ラム波A0モードの振幅最大値を取得する(ステップ106)。そして。メモリなどにレーザー照射位置とその点での振幅最大値を保存する(ステップ107)。この後、レーザー光位置が最後の点でないとき(ステップ108の判定がNO)、レーザー光位置を次の点に移動させ(ステップ109)、上記したステップ103以降の処理を行う。レーザー光位置が最後の点になると(ステップ108の判定がYES)、計測を終了し、結果を表示する(ステップ110)。

【0023】
次に、受信する斜角探触子6について説明する。

【0024】
まず、図4に示すように、平板5に対する位相速度分散曲線を計算などによって取得する。このときA1モードの伝搬限界周波数であるカットオフ周波数をfcとすると、本実施形態において効果的に利用できる周波数帯fは、fc/4<f<fcの周波数帯である。そのため、斜角探触子6の周波数特性はこの範囲で設計する。この範囲内で設定した斜角探触子6の中心周波数をf0とした場合、図4のような分散曲線によりf0に対するA0モードの位相速度cA0が得られる。

【0025】
図5に、斜角探触子6の内部構造を横から断面を取って示す。6aは振動子で、厚み方向に振動する。6bは縦波音速cwのウェッジ、6cは探触子内の残響を防ぐための吸音材、6dはインピーダンスマッチングのための回路、6eはケース、6fはコネクタである。平板5中のラム波A0モードの位相速度がcA0である場合、スネルの法則から求められる下記の式によってそのA0モードを効果的に受信できるように、ウェッジ6bの角度が設定されている。

【0026】
θ=sin-1(cw/cA0)
上記した実施形態によれば、高速で厚み測定が可能であり、厚み分布の画像が得られる。また、離れた位置からの厚み測定が可能である。
(他の実施形態)
図6に示すように、斜角探触子6を複数にし、画像を重ね合わせることで、より精度のよい厚み測定ができる。具体的には、2つの斜角探触子6で受信されたラム波A0モードの振幅分布を平均化する。

【0027】
また、超音波励振用のレーザービームは照射領域が小さな円形でなく、図7に示すように線状にしてもよい。その際、ライン上のビームの方向は、受信探触子の方向に法線が向くようにすると効果的に受信ができる。

【0028】
また、受信探触子を斜角探触子でなく、図8に示すように複数の超音波探触子10a~10dを並べ適切な遅延を与えて足し合わせる形態にすることも可能である。

【0029】
さらに、本発明は、中空円筒の配管への適用も可能である。配管の場合、平板中のラム波とは異なる分散曲線を示すので、まず対象配管に対する分散曲線を計算等で導出する。軸対称モードのうち、L(0,1)モードと呼ばれるモードは、図9に示すように、ラム波A0モードに似た伝搬挙動と分散曲線を示し、L(0,3)モードがA1モードに似た分散曲線を示す。同様にL(0,3)のカットオフ周波数をfcとして上述の周波数範囲のL(0,1)モードを収録することで、厚み測定が可能である。この実施形態の場合、探触子6は図10のように円周方向全体に並べ、すべての信号を足し合わせることで、軸対称モードを効果的に受信する。
【符号の説明】
【0030】
1 レーザー発振装置
2 アッテネーター
3 ピンホール
4 ガルバノスキャナー
5 平板
6 斜角探触子
7 アンプ
8 AD変換ボード
9 パソコン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9