TOP > 国内特許検索 > テロメラーゼ阻害剤 > 明細書

明細書 :テロメラーゼ阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4182196号 (P4182196)
公開番号 特開2003-212894 (P2003-212894A)
登録日 平成20年9月12日(2008.9.12)
発行日 平成20年11月19日(2008.11.19)
公開日 平成15年7月30日(2003.7.30)
発明の名称または考案の名称 テロメラーゼ阻害剤
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07K 7/06
A61K 37/02
A61P 17/06
A61P 35/00
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2002-015209 (P2002-015209)
出願日 平成14年1月24日(2002.1.24)
審査請求日 平成17年1月24日(2005.1.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】上山 博幸
【氏名】竹中 繁織
【氏名】高木 誠
個別代理人の代理人 【識別番号】100066692、【弁理士】、【氏名又は名称】浅村 皓
【識別番号】100072040、【弁理士】、【氏名又は名称】浅村 肇
【識別番号】100088926、【弁理士】、【氏名又は名称】長沼 暉夫
【識別番号】100102897、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 幸弘
審査官 【審査官】新留 豊
参考文献・文献 国際公開第98/025884(WO,A1)
化学関連支部合同九州大会講演予稿集,1998年,Vol.35th,p.54, Abst. No.2-8
分析化学討論会講演予稿集,2001年,Vol.62,p.101, Abst. No.1G20
日本化学会講演予稿集,2001年,Vol.79,p.924, Abst. No.1F5 41
日本化学会講演予稿集,2001年,Vol.80,p.208, Abst. No.3BC-04
Biochem. J.,1981年,Vol.199, pp.479-484
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2001年 4月,Vol.98, No.9,pp.4844-4849
Chem. Pharm. Bull.,2001年 8月,Vol.49, No.8,pp.969-973
調査した分野 CA(STN)
REGISTRY(STN)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1から6のアルキル基、炭素原子数1から6のアルコキシ基、炭素原子数1から7のアシル基、炭素原子数2から7のアシルオキシ基および炭素原子数1から6のアルキル基が1つもしくは2つ置換されていてもよい炭素原子数1から6のアミノアルキル基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基であるインターカレータ基置換α-アミノ酸残基を含むペプチドであって下記式Iで表されるペプチド、そのN末端が炭素原子数1から7のアシル基もしくは炭素原子数2から7のアルコキシカルボニル基で置換された誘導体、そのC末端がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1から6のアルキル基、炭素原子数1から6のアミノアルキル基もしくはアミノ基で置換された誘導体、またはそれらの塩を有効成分として含有するテロメラーゼ阻害剤。
【化1】
JP0004182196B2_000014t.gif
(式中、Xはインターカレータ基を表し、Yはα-アミノ酸を構成する2価の基を表し、Zはα-アミノ酸を構成する1価の基を表し、nは0、1、2、3、4または5を表す)
【請求項2】
Yが-A-W-(Aは炭素原子数1から6の直鎖もしくは分岐アルキレン基を表し、Wは単結合、NH、CO、CONH、NHCO、O、SまたはHNC(NH)NHを表す)である請求項1のテロメラーゼ阻害剤。
【請求項3】
Zが-A-W-H(AおよびWは請求項2の定義と同じ)である請求項1または2に記載のテロメラーゼ阻害剤。
【請求項4】
有効成分が、下記式IIで表されるペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩である、請求項1から3のいずれかに記載のテロメラーゼ阻害剤。
【化2】
JP0004182196B2_000015t.gif
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インターカレータ基置換α-アミノ酸残基を含むテロメラーゼ阻害活性を有するペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩、およびそれらを有効成分として含有するテロメラーゼ阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
テロメア(telomere)は真核細胞の染色体の両端に存在し、DNAと蛋白質からなる特殊な構造を持ち、ヒトテロメアはTTAGGGの塩基配列が2千から3千回反復された特異な構造を有しており、染色体末端の安定化に必要とされているものである。実際、テロメアを欠く染色体は融合や転座を受けることが知られている。体細胞においては、DNAポリメラーゼ複合体はラギング鎖の5'末端を複製できないため、in vitroもしくはin vivoにおいて、テロメア長が細胞分裂毎に短くなり、末端複製問題(end-replication problem)と言われている。このように細胞分裂を繰り返しDNAが複製されるたびに、テロメアDNAは短くなるため、テロメアは「命を刻む時計」とも言われている。
【0003】
通常、体細胞などは細胞分裂を繰り返すたびにテロメアDNAの短縮化が起きるが、生殖細胞や不死化細胞はテロメアDNAの長さを保持している。これは、テロメアDNAを伸長させる酵素であるテロメラーゼ(telomerase)によってテロメアDNAが合成されているためである。この酵素の存在は、1984年にGreiderらによってテトラヒメナ(Tetrahymena)で初めて報告された。このテロメラーゼはテロメアの反復配列に相補的な配列を持つ鋳型RNAと2種類の蛋白質からなるRNA-蛋白質複合体で、一種の逆転写酵素である。ヒトのテロメラーゼRNAは単離され、その鋳型領域は11ヌクレオチド(5'-CUAACCCUAAC)であり、ヒトのテロメア配列(TTAGGG)nに相補的であることが分かっている。通常テロメアは3'末端が1本鎖として突出して存在しており、テロメラーゼはそのテロメアDNAの末端構造を認識して結合し、内在的鋳型RNAを用いて、テロメア1本鎖DNAの3'末端にテロメア反復配列を付加していく。
近年、正常のヒト体細胞では検出されないこのテロメラーゼ活性が、不死化した培養細胞やがん組織由来の細胞では高度(85~95%)に活性化されていることが判明し、細胞の不死化、がん化あるいは老化といったことにテロメラーゼが重要な役割を担っていることが明らかになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような事実から、テロメラーゼの活性を阻害・抑制する物質が、テロメラーゼ活性が亢進した過剰増殖細胞で見出される過剰増殖性疾患、例えば、がん、乾癬、マルファン症候群などの有効な治療剤になり得ると考えられるため、これまでに種々のテロメラーゼ阻害剤が提案されている。例えば、アンチセンスDNAやペプチド核酸をもとにしたもの(Norton et al., Nature Biotechnology 14:615-619)、ピリジン系化合物(特開平11-49676号公報、特開平11-49678号公報、特開平11-49679号公報、特開平11-49777号公報等)、緑茶由来のカテキン(Naasani et al., 249:391-396,1998)などの多くのテロメラーゼ阻害剤が提案されている。
【0005】
他方、テロメアDNAは、グアニン(G)の多い繰り返し配列を持っているため、その3'末端側の張り出し領域はG配列が4つ集まって(G-tetrad)、4本鎖構造(Quadruplex)を形成することが明らかになっている(Stu Borman, October 5, 1998, C&EN, 42-46)。この4本鎖構造には、テロメラーゼは結合できずその活性を示さない。従って、この4本鎖構造を安定化させることができれば、テロメラーゼの活性を阻害することができ、がん細胞に有効に働くものと考えられる。このようにテロメアDNAの4本鎖構造を安定化させるものとして、カリウムイオン(Balagurumoorthy, P. et. al., 1994, J. Biol. Chem., 269, 21858)、アントラセン誘導体(Sun,D.,et al.,1997. J.Med.Chem., 40, 2113; Perry,P.J.,et al., J.Med.Chem., 41,3253)、ペリレン誘導体(Fedoroff,O.Y.,et al., 1998. Biochemistry 37, 12367)などが提案されている。しかしながら、これらのテロメラーゼ阻害剤も、十分にテロメラーゼの活性を阻害できるとは言えず、未だテロメラーゼを標的とした医薬が開発されていないのが現状である。
従って、本発明の目的は、テロメラーゼの活性を十分に阻害できる新たな物質を提供することにある。
本発明の他の目的は、この新たな物質を有効成分として含有するテロメラーゼ阻害剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、テロメアDNAの3'末端側の張り出し領域に存在するG配列が4つ集まって形成する4本鎖構造を十分に安定化させる物質を得ることを目的として鋭意研究した結果、アクリジン骨格を有する基、アントラキノン骨格を有する基、アントラセン骨格を有する基などのインターカレータ基、即ちテロメアDNAの4本鎖構造中でグアニジン塩基が4つ集まって形成される平面構造に平行して挿入し得るインターカレータ基が置換されたα-アミノ酸残基を含むペプチドが、テロメアDNAの4本鎖構造に強力に結合し4本鎖構造を安定化させることができ、従って強力なテロメラーゼ阻害剤となり得ることを見出し本発明を完成させた。
従って、本発明は、インターカレータ基置換α-アミノ酸残基を含むペプチドであって下記式Iで表されるペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩である。
【化3】
JP0004182196B2_000002t.gif(式中、Xはインターカレータ基を表し、Yはα-アミノ酸を構成する2価の基を表し、Zはα-アミノ酸を構成する1価の基を表し、nは0、1、2、3、4または5を表す)
更に本発明は、上記ペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩を有効成分として含有するテロメアーゼ阻害剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】
式Iにおいて、Xはインターカレータ基を表わす。インターカレータ基としては、テロメアDNAの3'末端側の張り出し領域に存在するグアニン配列が4つ集まって形成する4本鎖構造中でグアニジン塩基が4つ集まって形成される平面構造に平行して挿入し得るものであればいずれの基であってもよい。かかるインターカレータ基としては、例えば、置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基、置換基を有していてもよいアントラキノン骨格を有する基、置換基を有していてもよいアントラセン骨格を有する基、置換基を有していてもよいナフタレンイミド骨格を有する基、置換基を有していてもよいナフタレンジイミド骨格を有する基、置換基を有していてもよいピレン骨格を有する基などが挙げられる。ここで言う置換基としては、例えば、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチルなどのハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1から6のアルキル基; メトキシ、エトキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどの炭素原子数1から6のアルコキシ基;ホルミル、アセチル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイルなどの炭素原子数1から7のアシル基;アセチルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシなどの炭素原子数2から7のアシルオキシ基;アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチルなどの炭素原子数1から6のアルキル基が1つもしくは2つ置換されていてもよい炭素原子数1から6のアミノアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、アクリジン骨格、アントラキノン骨格、アントラセン骨格等のいずれの位置に置換されていてもよく、また2つ以上の複数の置換基がこれらの骨格に置換されていてもよい。また、アクリジン骨格、アントラキノン骨格、アントラセン骨格等には、式IのペプチドにおけるYと結合するための官能基を有していてもよく、このような官能基としては、例えば、メチレン、エチレンなどの炭素原子数1から6のアルキレン基、カルボニル基、炭素原子数1から6のアルキレンカルボニル基、スルホニル基、アミド基などが挙げられる。
【0008】
上記した置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基、置換基を有していてもよいアントラキノン骨格を有する基、置換基を有していてもよいアントラセン骨格を有する基、置換基を有していてもよいナフタレンイミド骨格を有する基、置換基を有していてもよいナフタレンジイミド骨格を有する基、置換基を有していてもよいピレン骨格を有する基の具体的な例として以下のものが挙げられる。
置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基
【化4】
JP0004182196B2_000003t.gif置換基を有していてもよいアントラキノン骨格を有する基
【化5】
JP0004182196B2_000004t.gif置換基を有していてもよいアントラセン骨格を有する基
【化6】
JP0004182196B2_000005t.gif置換基を有していてもよいナフタレンイミド骨格を有する基
【化7】
JP0004182196B2_000006t.gif置換基を有していてもよいナフタレンジイミド骨格を有する基
【化8】
JP0004182196B2_000007t.gif置換基を有していてもよいピレン骨格を有する基
【化9】
JP0004182196B2_000008t.gif【0009】
式Iのペプチドにおいて、Yはα-アミノ酸を構成する2価の基を表し、Zはα-アミノ酸を構成する1価の基を表す。即ち、Yはα-アミノ酸から-CH(NH2)COOHを除いた残りの該α-アミノ酸を構成する2価の基を表し、Zは1価の基を表す。具体的には、Yは-A-W-で表される基であり、ここで、Aはメチレン、エチレン、プロピレン、メチルメチレンンなどの炭素原子数1から6の直鎖もしくは分岐アルキレン基を表し、Wは単結合、NH、CO、CONH、NHCO、O、SまたはHNC(NH)NHを表す。Zは-A-W-Hで表される基である。これらのYおよびZは、α-アミノ酸である、例えばアラニン、リシン、ノルリシン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、システインなどから-CH(NH2)COOHを除いた残りの該α-アミノ酸を構成するそれぞれ2価の基あるいは1価の基を表す。式Iのペプチドにおいて、nは0、1、2、3、4または5を表す。
【0010】
式Iのペプチドは、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩であってもよい。N末端が置換された誘導体としては、例えば、ホルミル、アセチル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイルなどの炭素原子数1から7のアシル基;メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルなどの炭素原子数2から7のアルコキシカルボニル基等がN末端のアミノ基に置換された誘導体などが挙げられる。C末端が置換された誘導体としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチルなどのハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1から6のアルキル基; アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチルなどの炭素原子数1から6のアミノアルキル基;アミノ基等がC末端のカルボニル基に置換された誘導体などが挙げられる。式Iのペプチドの塩あるいは該ペプチドのN末端もしくはC末端が置換された誘導体の塩としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸等との酸付加塩が挙げられる。また、式Iのペプチドのカルボキシル基とのナトリウム塩、カリウム塩なども挙げられる。
【0011】
本発明の式Iのペプチドの特に好ましい例としては、以下の式IIで表されるペプチドが挙げられる。
【化10】
JP0004182196B2_000009t.gif【0012】
本発明の式Iのペプチドは、下記式IIIのインターカレータ基置換α-アミノ酸のアミノ基もしくはカルボニル基保護誘導体と下記式IVのα-アミノ酸のアミノ基もしくはカルボニル基保護誘導体とを用いて、周知のペプチド合成反応を行うことによって合成することができる。
【化11】
JP0004182196B2_000010t.gifペプチド合成は、両者の保護誘導体を順次ペプチド結合により連結して行うこともでき、また周知の固相法もしくは液相法により合成することもでき、ペプチド合成機により合成することもできる。上記式IIIのインターカレータ基置換α-アミノ酸および上記式IVのα-アミノ酸のアミノ基もしくはカルボニル基保護誘導体としては、上記した保護基で保護されたものが挙げられる。上記式IIIのインターカレータ基置換α-アミノ酸は、下記式Vで表されるα-アミノ酸と下記式VIで表されるインターカレーター誘導体(式VIにおいてDは、ハロゲン原子などの反応性基を表す)とを反応させることにより得ることができる。
【化12】
JP0004182196B2_000011t.gif式IVまたはVのα-アミノ酸としては、上記したアラニン、リシン、ノルリシン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、システインなどが挙げられる。
かくして式Iのペプチドを得ることができる。式IのペプチドのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩は、式Iのペプチドの合成の段階で得ることもでき、また式Iのペプチドからそれ自体周知の方法で得ることもできる。
【0013】
本発明の式Iのペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩は、テロメアDNAの3'末端側の張り出し領域に存在するグアニン配列が4つ集まって形成する4本鎖構造に結合し十分に安定化させるため強力なテロメラーゼ阻害剤となり得る。従って、テロメラーゼ活性が亢進した過剰増殖細胞で見出される過剰増殖性疾患、例えば、がん、乾癬、マルファン症候群などの有効な治療剤として用いることができる。本発明のテロメラーゼ阻害剤はヒトを含む哺乳動物に適用することができる。かかるテロメラーゼ阻害剤は、通常の製剤化に用いられるラクトース、でんぷんなどの賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、その他の添加剤などと混合して錠剤とすることができる。また錠剤以外にも、丸剤、散剤、液剤などのすることもでき、また注射剤、外用剤などにすることもできる。これらの製剤はそれ自体周知の方法によって調製することができる。本発明の式Iのペプチド、そのN末端もしくはC末端が置換されたその誘導体またはそれらの塩の用量は、投与する対象の性別、年齢、症状、体重などにより変動し得るが、通常一日当たり、0.001~100mg/kgの範囲で、単回あるいは数回に分けて投与することができる。
本発明のテロメラーゼ阻害剤は、ヒトを含む哺乳動物以外に、線状染色体を持ち、その維持にテロメラーゼを必要とする線虫、酵母、真菌、原生動物などの増殖抑制剤として適用することができる。また、本発明のテロメラーゼ阻害剤は、研究用の試薬として使用することもできる。
【0014】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
テトラキス-アクリジニルペプチドの合成
図1に示す、メトキシ基と塩素原子が置換されたアクリジン骨格がインターカレータ基として置換されたリシン残基を含むペプチド(TAP)を固相合成法により合成した。
1. Fmoc-Lys(Acr)-OHの合成
【化13】
JP0004182196B2_000012t.gifa)方法
50mlのビーカーにフェノール30gを入れ80℃まで加熱溶解させた。これに6-クロロ-2-メトキシ-9-フェノキシアクリジン4.54g(13.5mmol)を加え完全に溶解させた。その後、55~65℃で、Fmoc-Lys-OH 4.42g(12.0mmol)を加えて2時間攪拌した。それからしばらく放冷し、300mlのエーテルを攪拌しながら注いだ。得られた沈殿物を吸引濾過し、減圧乾燥させた。
b)結果
性状:黄色固体
収量:7.57g(収率:92%)
1H-NMR、MALDI TOF MASS(質量分析)により同定した結果、目的化合物の分子量610.11に相当するピークが610.80に検出された。
【0016】
2.Ac-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2-Lys (Acr)-Resinの合成(TAPの伸長反応)
a)方法
リアクションベッセルにFmoc-NH SAL 樹脂 200mgを入れ、カートリッジ1, 4,7,10にFmoc-Lys(Acr)-OH 0.33gを入れ、カートリッジ2, 3, 5, 6, 8, 9にFmoc-Lys(Boc)-OHを入れた。後は、PE Applied Biosystems社の431Aペプチドシンセサイザーにて合成を行った。Fmoc法でN末端はアセチル化した。
b)結果
性状:黄色固体
収量:0.5003g
【0017】
3.Ac-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2-Lys(Acr)-(Lys(Boc))2- Lys(Acr)-樹脂のレジンからの切り出し及び側鎖の脱保護
a)方法
50mlのナス型フラスコに上記の2の実験操作で合成したレジン0.50gを入れ、これにm-クレゾール0.10ml、チオアニソール0.60ml、トリフルオロ酢酸4.3mlを加えて室温で1時間攪拌した。その後、TFAを減圧留去し、氷浴下でエーテル20mlを加えた。超音波照射後、しばらく放置し上澄み液を取り除いた。それから酢酸エチル20mlを加えて超音波照射後、しばらく放置した。吸引ろ過しエーテルで洗浄した。その後、減圧乾燥させた。
b)結果
性状:黄色固体
収量:0.3181g
【0018】
4.HPLCによる純度チェック及び精製
TAPの純度チェックを以下の条件下で行った。
検出波長:210nmカラム:Inertsil ODS
試料注入溶媒:超純水 流速:1ml/min
溶離液A:0.1%TFA水溶液
溶離液B:70%アセトニトリル/0.1%TFA溶液
グラジエント条件
【表1】
JP0004182196B2_000013t.gif同定はTOF MASSにより行った。TOF MASSの結果、目的化合物の分子量2307.51に相当するピークが2309.03に検出された。
【0019】
実施例2
CDによるTAPTm測定
CD(Circular dichroism:円偏光二色性)スペクトルは、その化合物の溶液中における構造、たとえばDNAであればA型、B型、Z型など、また蛋白質についてはα-へリックス、β-シートなどの構造における情報を得ることができる。従って、そのDNAの溶液中の構造が1本鎖構造や2本鎖構造あるいは4本鎖構造でスペクトルが大きく異なるので、CDスペクトルを測定することによって、DNAの溶液中の構造が分かる。
a)方法
CDによるTm測定は以下の測定条件で行った。
測定溶液:10mM MES, 1mM EDTA(pH6.25), 50mM KCl
[テロメア DNA]=2.2μM, DNA:dye=1:1
テロメア DNAとして、以下のヒトのテロメアDNA配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。
5'-CATGGTGGTTTGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTACCAC-3'
CD測定は、本発明のTAPとともに、対象化合物として図2に示した公知化合物を用いた。
上記の測定溶液に、テロメア DNAを2.2μMになるように添加し、さらにTAPあるいは各化合物も2.2μMずつ入れ、Tm曲線(4本鎖構造の安定性)がどのように変化するかを比較した。
【0020】
b)結果
得られたTm曲線を図3に示した。図3は、TAPあるいは各公知化合物の存在下で、上記テロメアDNA配列が形成する4本鎖構造が1本鎖構造へ解離される状況を示している。図3ではCDスペクトルの[θ]値で4本鎖構造の安定性が示されている。図3においてNormalized[θ]がちょうど0.5となる温度がTm(融解温度)となる。このTm値が高温になればなるほど、その4本鎖構造は安定化されていることになる。
図3から明らかなように、本発明のTAPを用いた時が最も高いTm(融解温度)を示しており、本発明のTAPによりテロメアDNA配列が形成する4本鎖構造が高度に安定化されたことが判る。
図1に示したように、本発明のTAP分子中のインターカレータ基がテロメアDNA配列が形成する4本鎖構造の平面構造中に挿入されて4本鎖構造が高度に安定化されるものと考えられる。
【0021】
【発明の効果】
本発明により提供される、アクリジン骨格を有する基、アントラキノン骨格を有する基、アントラセン骨格を有する基などのインターカレータ基が置換されたα-アミノ酸残基を含むペプチドは、テロメアDNAのグアニジン配列が形成する4本鎖構造に強力に結合し4本鎖構造を安定化させることができ、強力なテロメラーゼ阻害剤となり得る。従って、テロメラーゼ活性が亢進した過剰増殖細胞で見出される過剰増殖性疾患、例えば、がん、乾癬、マルファン症候群などの有効な治療剤として用いることができる。また研究用の試薬として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で得られる代表的なペプチドであるTAP(テトラキス-アクリジニルペプチド)の化学構造式、並びにTAPがテロメアDNAのグアニジン配列が形成する4本鎖構造に強力に結合し4本鎖構造を安定化させるメカニズムを示す。
【図2】図2は、本発明のペプチドの対象化合物として用いた公知のテロメラーゼ阻害作用を有する化合物を示す。
【図3】図3は、本発明で得られる代表的なペプチドであるTAPおよび公知のテロメラーゼ阻害作用を有する化合物の存在下でテロメアDNAの4本鎖構造が1本鎖構造へ変化する状況を示すTm曲線である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2