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明細書 :DNAの自己組織化によるDNAナノケージ及びその製造方法、並びにそれを用いたDNAナノチューブ、分子キャリアー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4061401号 (P4061401)
公開番号 特開2003-259869 (P2003-259869A)
登録日 平成20年1月11日(2008.1.11)
発行日 平成20年3月19日(2008.3.19)
公開日 平成15年9月16日(2003.9.16)
発明の名称または考案の名称 DNAの自己組織化によるDNAナノケージ及びその製造方法、並びにそれを用いたDNAナノチューブ、分子キャリアー
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07H  21/04        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07H 21/04 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2002-061504 (P2002-061504)
出願日 平成14年3月7日(2002.3.7)
審査請求日 平成17年1月25日(2005.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】松浦 和則
【氏名】君塚 信夫
【氏名】山下 太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100076613、【弁理士】、【氏名又は名称】苗村 新一
審査官 【審査官】冨永 みどり
参考文献・文献 Lect.Notes Comput.Sci.,2001年,Vol.2223,p.429-440
Annu.Rev.Biophys.Biomol.Strust.,1998年,Vol.27,p.225-248
Am.Sci.,1994年,Vol.82,No.4,p.308-311
化学,1992年,Vol.47,No.10,p.718-719
Nature,1991年,Vol.350,No.6319,p.631-633
化学,2001年,Vol.56,No.2,p.62-63
調査した分野 C12N 15/00-15/90
BIOSIS/WPI(DIALOG)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/Geneseq
PubMed
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
三種のオリゴヌクレオチドからなり、各オリゴヌクレチドのそれぞれの5’末端に他の2種のオリゴヌクレチドとハイブリダイズして、二重鎖を形成するよう配列設計された領域と3’末端に自己相補一本鎖領域を有する10量体~100量体の長さの三種のオリゴヌクレチドを、ハイブリダイズすることにより形成される、各末端に自己相補一本鎖領域を有する三方向に枝分かれした二重鎖DNAを、自己組織化して形成されることを特徴とするDNAナノケージ。
【請求項2】
該ナノケージが球状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のDNAナノケージ。
【請求項3】
各オリゴヌクレチドのそれぞれの5’末端に他の2種のオリゴヌクレチドとハイブリダイズして、二重鎖を形成するよう配列設計された領域と、3’末端に自己相補一本鎖領域を有する三種のオリゴヌクレチドをハイブリダイゼーションにより2次元的に集合させ、各末端に自己相補一本鎖を有する三方向に枝分かれした二重鎖DNAを形成する工程と、得られた三方向に枝分かれした二重鎖DNAを3次元的に自己相補末端を全て消費するように自己組織化する工程と、を有することを特徴とするDNAナノケージの製造方法。
【請求項4】
三種のオリゴヌクレオチドを0~10℃で混合しハイブリダイズすることを特徴とする請求項3に記載のDNAナノケージの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のDNAナノケージを一次元方向に連結し融合したことを特徴とするDNAナノチューブ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のDNAナノケージに金属微粒子や蛋白質を包接したことを特徴とする分子キャリアー。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配列設計された三方向枝分かれ二重鎖DNAの自己組織化による新規な分子集合体であるDNAナノケージ及びその製造方法、並びにそれを用いたDNAナノチューブ、分子キャリアーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ナノテクノロジー分野において、DNAの自己組織性を利用したモレキュラーマシーン(molecular machine)の開発が活発に行われている。
DNAは情報がヌクレオチドの一次配列にその塩基単位アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)及びチミン(T)によってコードされている。DNAの一本鎖はハイブリダイゼーションによってそれらの相補鎖を認識し結合して二本鎖核酸二重らせん構造を形成するというユニークな性質を持っている。これはAがTを認識し、GがCを認識するという核酸固有の塩基対形成性によって起こり得る。与えられた配列は正確且つ相補的な配列にのみハイブリダイズするので、原子・分子レベルで高い塩基配列特異性を有する。このように、DNAはその機能性だけでなく、構造形態も非常に興味深く、「ヒトゲノム計画」等の生命情報化学において研究が進められてきた。
N. C. Seemanらは、10種類のオリゴヌクレオチドを用いて、5段階からなる組織化・連結・精製・再構築・連結反応により、DNAからなる立方体(DNA cube)を合成した(J. Chen, N. C .Seeman, Nature, 350, 631-633(1991)、N. C. Seeman, Acc. Chem. Res., 30, 357-363(1997))。
しかしながら、SeemanらによるDNA cubeの合成方法は、複雑かつ煩雑な操作を必要とし、高コストを招来するという問題点がある。また、DNA cubeの一辺が約10nm程度の立方体であるため、内部に蛋白質等のナノ粒子を内包し難く、その輸送担体として利用することが困難であるという問題点がある。
【0003】
一方、このような輸送担体として用いられる分子キャリアー、特に標的性があり温度やDNA分子認識に応答して薬物を徐放するドラッグデリバリーシステム等のドラッグギャリアーとしては、主に脂質分子からなるリポソーム(liposome)が広く用いられてきた。
しかしながら、リポソームを調製する際には、超音波照射等のエネルギーの摂動が必要であるという問題点がある。
【0004】
本発明者は、オリゴヌクレオチドとガラクトースからなるコンジュゲートを半分ずらした相補鎖と二重鎖形成させることにより、自己組織的に一次元DNA集合体に沿った糖クラスターを構築する技術を確立した(特開2001-247596号公報、K. Matsuura, M. Hibino, Y. Yamada and K. Kobayashi, J. Am. Chem. Soc., 123, 357-358 (2001))。
このように、塩基対形成による分子認識性と、ハイブリダイゼーションによる自己組織性というDNA分子に固有の特性を利用し、自己組織的に一段階で、しかも殆どエネルギーを要さずに構築できるとともに、その内部空間にナノ粒子を内包できるDNAナノケージの開発が切望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、わずか三種類のオリゴヌクレオチドを混合するだけで殆どエネルギーを要さずに作成できるDNAからなるナノケージを提供すること、並びに一段階の操作で簡便に且つ経済的にDNAナノケージを構築できるDNAナノケージの製造方法を提供すること、及びDNAナノケージを一次元方向に連結したDNAナノチューブ、内部空間に可逆的に金属微粒子や蛋白質等のナノ粒子を複数包接することができる分子キャリアーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、1次元DNAを自己組織的に集合させるという発想を2次元および3次元に拡張することにより、球状のDNAナノケージが得られ、その内部空間に可逆的に金属微粒子や蛋白質等を包接できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]に記載した事項により特定される。
[1]三種のオリゴヌクレオチドからなり、各オリゴヌクレチドのそれぞれの5’末端に他の2種のオリゴヌクレチドとハイブリダイズして、二重鎖を形成するよう配列設計された領域と3’末端に自己相補一本鎖領域を有する10量体~100量体の長さの三種のオリゴヌクレチドを、ハイブリダイズすることにより形成される、各末端に自己相補一本鎖領域を有する三方向に枝分かれした二重鎖DNAを、自己組織化して形成されることを特徴とするDNAナノケージ。
【0008】
〔2〕該ナノケージが球状に形成されることを特徴とする〔1〕に記載のDNAナノケージ。
【0009】
[3]各オリゴヌクレチドのそれぞれの5’末端に他の2種のオリゴヌクレチドとハイブリダイズして、二重鎖を形成するよう配列設計された領域と、3’末端に自己相補一本鎖領域を有する三種のオリゴヌクレチドをハイブリダイゼーションにより2次元的に集合させ、各末端に自己相補一本鎖を有する三方向に枝分かれした二重鎖DNAを形成する工程と、得られた三方向に枝分かれした二重鎖DNAを3次元的に自己相補末端を全て消費するように自己組織化する工程と、を有することを特徴とするDNAナノケージの製造方法。
【0010】
〔4〕三種のオリゴヌクレオチドを0~10℃で混合しハイブリダイズすることを特徴とする[3]に記載のDNAナノケージの製造方法。
【0011】
[5][1]又は[2]に記載のDNAナノケージを一次元方向に連結し融合したことを特徴とするDNAナノチューブ。
【0012】
[6][1]又は[2]に記載のDNAナノケージに金属微粒子や蛋白質を包接したことを特徴とする分子キャリアー。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、図1に示すように、三種のオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションにより2次元的に集合させ、末端に自己相補鎖を有する三方向枝分かれ二重鎖DNAを形成し、この三方向枝分かれ二重鎖DNAを3次元的に自己相補末端を全て消費するように自己組織化することによりDNAナノケージを製造することができる。
すなわち、本発明の製造方法により得られるDNAナノケージは、ハイブリダイゼーションにより集合化させることで、末端に自己相補鎖を有する三方向枝分かれ二重鎖DNAを得て、それらがさらに末端を全て消費するように集合化してナノケージを構築するように設計されている。
【0014】
したがって、このような配列設計条件を満たすものであれば、DNA配列は任意である。一例として、図2にDNAナノケージを作製するオリゴヌクレオチドの配列を示す。各3’末端に自己相補一本鎖DNAを有する三方向に枝分かれした二重鎖DNAを形成するように設計した三種のオリゴヌクレオチド鎖を合成する。すなわち、例えば、グアニンとシトシンの相補対から、主に三方向枝分かれ二重鎖DNAであるトリゴナルスポーク型複合体を形成させ、さらにアデニンとチミンによるpaste部位でDNAの高次元構造の形成を可能とするような塩基配列を設計する。
【0015】
本発明において自己相補末端とは、5’末端側から読んだ場合の配列と3’末端側から読んだ場合の配列が相補的な(Aに対してT、Gに対してCを相補的という)DNA配列を持つ一本鎖DNA末端を言う。このような配列は、自分自身で二重鎖DNAを形成することができる。例えば、5’-GCTTCGATCGAAGC-3’ は自己相補性配列である。
【0016】
本明細書中、オリゴヌクレオチドとは、デオキシリボースと核酸塩基からなるヌクレオシドが、リン酸ジエステル結合で繋がった数量体から数十量体の化合物をいい、二重鎖DNAとは、オリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーションして二重らせんを形成した複合体をいう。
本発明における三種のオリゴヌクレオチド鎖の合成方法は問わないが、一般にホスホロアミダイト法を用いた自動合成機等で合成される。
【0017】
本発明におけるDNAナノケージの製造方法においては、二重鎖DNAが解離する温度(融離温度)より低い温度で行うのが好ましい。融解温度は、オリゴヌクレオチドの配列に依存する。例えば、図2に示す長さ・配列のヌクレオチドの場合は、約35℃で二重鎖が解離し一本鎖となる。
本発明における三種のオリゴヌクレオチドを温度0~10℃で混合しハイブリダイズするのが好ましい。ここで、温度がこの範囲外になるにつれ、三方向枝分かれ二重鎖DNAは形成されるが、自己相補末端が組織化してケージとならない傾向が見られる。
【0018】
本発明における三種のオリゴヌクレオチドの長さは、10量体~100量体程度が好ましい。ここで、長さが10量体より短くなるにつれ、融解温度が低下するために、DNA鎖のハイブリダイゼーションが起こりにくく、ケージが形成されないという傾向がみられ、長さが100量体より長くなるにつれ、明確な構造体が観察されにくくなるという傾向がみられる。尚、三種のオリゴヌクレオチドの長さは、同一であっても、それぞれ異なっていても構わない。同一であると対称性の高い集合体が得られるので、球状のケージを得るには好ましい。長さを変えて、例えば卵型等の非対称な構造体を構築することも可能である。
【0019】
本発明における三種のオリゴヌクレオチドの全濃度は、1μM以上が好ましい。ここで、1μMより低くなるにつれ、DNA同士の水素結合が十分に起こる機会が無いために、ハイブリダイズせず集合体形成が見られず、DNAナノケージが観察されないという傾向がみられる。
【0020】
本発明に係るDNAナノケージの製造方法において、三種のオリゴヌクレオチド水溶液の塩強度は、0.25M~1.0Mが好ましい。ここで、0.25Mより低くなるにつれ、静電反発のため二重鎖形成が起こりにくくなり、DNAナノケージが観察されにくいという傾向がみられ、1.0Mより高くなるにつれ、DNAナノケージ同士が接着するという傾向がみられる。従って、独立のナノケージを観察するには、約0.5M程度の塩強度が好適である。
本発明に係るDNAナノケージの製造方法において、用いられる塩は特に限定されるものではない。一価の金属塩であれば、特に塩の種類には関係なく製造可能であり、中でも、NaClが好適に用いられる。
【0021】
本発明における三方向枝分かれ二重鎖DNA(図3参照)がさらに3次元的に自己相補末端を全て消費するように自己組織化することにより、DNAナノケージを得ることができる。DNAナノケージモデルを図4に示す。その大きさや形状は、DNA配列、長さ、濃度、塩強度等により適宜調整可能である。
本発明においてDNA分子集合体の自己組織化は、水溶液中で行うことが好ましいが、気液界面で行うことも可能である。
【0022】
本発明に係るDNAナノケージは、DNAのみから構成され、内部が中空の籠状集合体である。その形状は、多面体構造、例えば、球状、卵型等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、条件を変えることによって様々な形態へと変化する。特に、ケージ内部にナノ粒子を内包しやすくするため、球状が好適である。また、オリゴヌクレオチドの濃度を変化させることにより、チューブ状のDNAナノチューブを形成することも可能である。例えば、オリゴヌクレオチド濃度を2μMで塩強度1Mとすると50nm程度の球状集合体がさらに組織化してネットワーク構造を形成し、オリゴヌクレオチド濃度5μMで塩強度0.5Mとすると、50~200nm程の大きな球状集合体が形成される。さらに、オリゴヌクレオチド濃度50μM以上で塩強度0.5Mとすると、直径20nm程度で長さ1μmにも及ぶDNAナノチューブが形成される。
【0023】
本発明において球状に形成されたDNAナノケージは、直径20~200nmが好ましい。直径は、DNAナノケージを利用する目的によって適宜変更することができる。例えば、タンパク質を2、3個包接する場合には、径小のケージが好ましく、ウイルスのような大きなものを包接する場合には、径大のケージが好ましい。
【0024】
本発明に係るDNAナノチューブは、DNAナノケージが一次元方向に連結・融合された構造を有する。すなわち、DNAナノチューブが融けてより大きな分子集合体であるDNAナノチューブに成長すると考えられる。なお、連結されたDNAナノケージの数は特に限定されない。
DNAナノチューブモデルを図5に示す。
本発明に係るDNAナノチューブの大きさは、特に限定されないが、直径1~50nm程度で、長さ100nm~10μmが好ましい。この範囲から外れるとナノオーダー領域から逸脱し、かつチューブ形状であるとは言い難くなる。
【0025】
本発明に係るDNAナノケージあるいはDNAナノチューブは、ナノケージの内部空間に金、銀、白金、パラジウム等の金属微粒子、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、硫化亜鉛等の半導体微粒子、酸化チタン等の光触媒微粒子、酸化鉄等の磁性微粒子、シリカ粒子、ヘテロポリ酸、プラスチック微粒子、ウイルス、タンパク質、ペプチド、多糖、他のDNA等のナノ粒子を複数内包し、分子キャリアーとして利用でき、温度などの環境変化に応答して、内包物を放出することができる。
【0026】
具体的には、カチオン性およびアニオン性の金微粒子や、蛋白質フェリチンがこのDNAナノケージ、すなわちDNAからなる籠に複数内包され得る。このDNA集合体は温度やイオン強度によって解離・再構築が制御できることから、蛋白質医薬を内包したDNA集合体を用いて熱に応答した薬物放出システムを構築できると考えられる。また、DNA集合体を構成している一つのDNA鎖の完全相補鎖の存在によっても、DNA集合体を解離させることができるため、ある特定遺伝子配列に応答した薬物放出システムを構築することも可能である。更に、オリゴヌクレオチドに糖鎖等を付加させ細胞特異性を付与することにより、新規なドラッグデリバリーシステムとしても有用である。
【0027】
一方、金属微粒子は、量子サイズ効果によりバルク金属とは違った光学的・電気的・磁気的性質を示すことが知られている。
本発明に係るDNAナノケージあるいはDNAナノチューブは、金属微粒子の集合状態を制御して複数内包できる。微粒子が集合することによって単独の微粒子とは違う物性が発現される。例えば、金微粒子のプラズモン吸収は、集合体となることで長波長側にシフトすることが明らかである。蛋白質内包DNA集合体の場合と同様に、この金微粒子内包DNA集合体は、温度や特異的分子認識によって解離・再構築が制御できることから、温度や特異的分子認識によって光学的特性を変化させるデバイスを構築できる。また、このDNA集合体存在下で微粒子作成を行えば、特異なサイズおよび形状の微粒子を作成できる。これらの手法は、半導体および磁性微粒子にも適用可能である。
【0028】
本発明においてDNAナノケージ内あるいはDNAナノチューブ内に内包できるナノ粒子の大きさは、2nm~200nmが好ましい。ここで、2nmより小さくなるにつれ、DNAナノケージの隙間からナノ粒子が漏洩する恐れがあり、200nmより大きくなるにつれ、大きすぎてナノ粒子がDNAナノケージに内包しにくくなるという恐れがある。
本発明においてDNAナノケージ内あるいはDNAナノチューブ内に内包できるナノ粒子の数は、ナノ粒子の大きさにより適宜変更することができる。
本発明におけるナノ粒子のDNAナノケージへの結合を容易にするために、カチオン性やアニオン性の保護剤分子を用いてナノ粒子を作成することが可能である。
【0029】
本発明におけるナノ粒子は、その表面電荷によりDNAナノケージあるいはDNAナノチューブの付着場所が異なる。例えば、正電荷の場合はDNAナノケージの表面(内部・外部)に付着していると考えられるが、中性および負電荷の場合はDNAナノケージの内水相に存在しており、DNAとは直接相互作用していないものと考えられる。
DNAナノケージあるいはDNAナノチューブへのナノ粒子の包接方法は、特に限定されるものではないが、ナノ粒子存在下、DNAナノケージの水溶液を一旦約70℃に加熱し、ナノケージを解離させた後、10℃にまで温度を下げることによりナノケージが再構築されるに伴いナノ粒子が包接される。
【0030】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、これらの例は単なる実例であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更させてもよい。
【0031】
実施例1
図2に示すような配列の3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が1μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果を図6に示す。
図6より、直径20~70nm程度の球状集合体が観察された。
また、動的光散乱(DLS)測定によっても、図7に示すように、直径20~70nmの集合体が構築されていることが確認された。図中、20~70nm以外にも700nm付近にピークがあるが、これはケージ同士が会合して見かけ上現れているものと思われる。
これらの実験結果から、図6で観察されたDNAの球状集合体は、三種のオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーションし、末端に自己相補鎖を持つ三方向枝分かれ二重鎖DNAを形成した後、自己相補末端を全て消費するように集合化することで構築されていると考えられる。
次に、DNA末端から切断するヌクレアーゼによる切断活性を調べ、DNA球状集合体の構造を確認した。
すなわち、上記で得られたDNA球状集合体をリガーゼで連結、マンビーンヌクレアーゼ(Mung Bean Nuclease)で余分な一本鎖DNAを除いた後、3’末端から2本鎖を特異的に切断するエキソヌクレアーゼ(Exonuclease) IIIにより切断活性を調べた。その結果を図8に示す。
図8より、末端の存在する2本鎖DNAが切断される条件(660mM Tris-HCl buffer、6.6mM MgCl、 pH8、エンザイム70ユニット(enzyme 70 unit)、37℃)において、ライゲーションしたDNA集合体は全く切断されなかった。従って、本実施例で得られたDNA球状集合体は、ナノケージ状であることが証明された。
【0032】
実施例2
実施例1と同様の配列の3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が2μMとなるように1M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果を図9に示す。
図9より、直径30~50nm程度の球状集合体がさらに組織化してネットワーク構造を形成していることがわかる。
【0033】
実施例3
実施例1と同様の配列の3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が5μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果を図10に示す。
図10より、直径50~200nm程度の球状集合体が観察された。
【0034】
実施例4
実施例1と同様の配列の3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が50μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果を図11に示す。
図11より、直径20nm程度で長さ1μmにも及ぶDNAナノチューブが形成されることがわかる。
【0035】
比較例1
実施例1と同様の配列の3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が1μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に30℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を30℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。
その結果、3種のオリゴヌクレオチドを混合する温度が30℃であるため、自己相補末端部分のDNA二重鎖が解離し、球状集合体は観察されなかった。
【0036】
比較例2
実施例1と同様の配列のオリゴヌクレオチドのうち2種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が1μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。
その結果、実施例1にような球状集合体は観察されなかった。
【0037】
比較例3
自己相補末端を持たない3種の30merオリゴヌクレオチドを、全オリゴヌクレオチド濃度が1μMとなるように0.5M NaCl水溶液中に10℃で混合し、12時間エージングした。
この溶液を10℃でTEMグリッドに滴下し、酢酸ウラニル染色を施して透過型電子顕微鏡観察を行った。
その結果、実施例1のような球状集合体は観察されなかった。
【0038】
実施例5
四級アンモニウム塩で保護されたカチオン性金微粒子(平均粒径2.2nm)1.4mM存在下、実施例1と同様の配列の3種の30merオリゴヌクレオチド 1μMを0.5mM NaCl水溶液中で10℃で組織化し、分子キャリアーを作成した。
その後、染色せずにTEM観察を行った。その結果を図12に示す。
図12より、金微粒子が20~70nm程度の集合体を形成していることがわかった。これを酢酸ウラニルでDNAを染色すると、金微粒子が集合している部分と一致することがわかった。
また、金微粒子のプラズモン吸収は、組織化することで26nm程レッドシフトした。これは、金微粒子がDNAナノケージに内包されているために起こったものと考えられる。
【0039】
実施例6
DNAナノケージの内部空間に包接するゲスト分子をアニオン性の金微粒子とした他は、実施例5と同様にして、分子キャリアーを作成した。
実施例5と同様にして、TEM観察を行った。その結果を図13に示す。
図13より、金微粒子が2.5~30nm程度の集合体を形成していることがわかった。これを酢酸ウラニルでDNAを染色すると、金微粒子が集合している部分と一致することがわかった。
【0040】
実施例7
DNAナノケージの内部空間に包接するゲスト分子を金属蛋白質であるフェリチンとした他は、実施例5と同様にして、分子キャリアーを作成した。
実施例5と同様にして、TEM観察を行った。その結果を図14に示す。
図14より、フェリチンが8~25nm程度の集合体を形成していることがわかった。これを酢酸ウラニルでDNAを染色すると、フェリチンが集合している部分と一致することがわかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば以下の有利な効果を奏することができる。
本発明に係るDNAナノケージは、DNAから一段階の過程で簡便に作成でき、内部空間にナノ粒子を内包できるため、DNAを利用した機能性材料の開発への効果は絶大である。更に、ナノ領域からメソスコピック領域へと幅広いテクノロジー分野へと展開できる可能性を有しており、次世代の多機能性マテリアルとして利用できる。また、DNAナノケージ内部に蛋白質医薬を内包させ、ケージ表面に細胞標的性分子を結合させることにより、標的性があり且つ温度やDNA分子認識に応答して薬物を徐放するドラッグデリバリーシステムの新規キャリヤーとしても利用できる。
また、本発明に係るDNAナノケージは、混合するだけで殆どエネルギーを要さずに作成できるため、分子キャリヤーとしての利用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるDNAナノケージの製造工程図
【図2】本発明における三種のオリゴヌクレオチドの配列の一例
【図3】本発明における三方向枝分かれ二重鎖DNAの一例
【図4】本発明におけるDNAナノケージモデル
【図5】本発明におけるDNAナノチューブモデル
【図6】本発明の実施例1におけるDNAナノケージの透過型電子顕微鏡像
【図7】本発明の実施例1におけるDNAナノケージの動的光散乱による粒径分布を示すグラフ
【図8】エキソヌクレアーゼ(Exonuclease) IIIによるDNAナノケージの切断反応の経時変化を示すグラフ
【図9】本発明の実施例2におけるDNAナノケージネットワークの透過型電子顕微鏡像
【図10】本発明の実施例3におけるDNAナノケージの透過型電子顕微鏡像
【図11】本発明の実施例4におけるDNAナノチューブの透過型電子顕微鏡像
【図12】本発明の実施例5におけるDNAナノケージに内包されたカチオン性金微粒子の透過型電子顕微鏡像
【図13】本発明の実施例6におけるDNAナノケージに内包されたアニオン性金微粒子の透過型電子顕微鏡像
【図14】本発明の実施例7におけるDNAナノケージに内包された金属蛋白質フェリチンの透過型電子顕微鏡像
図面
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