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明細書 :光学活性なスルホキシド化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3962813号 (P3962813)
公開番号 特開2004-323445 (P2004-323445A)
登録日 平成19年6月1日(2007.6.1)
発行日 平成19年8月22日(2007.8.22)
公開日 平成16年11月18日(2004.11.18)
発明の名称または考案の名称 光学活性なスルホキシド化合物の製造方法
国際特許分類 C07C 315/02        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07C 317/14        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 315/02
C07B 53/00 B
C07C 317/14
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
全頁数 20
出願番号 特願2003-122404 (P2003-122404)
出願日 平成15年4月25日(2003.4.25)
審査請求日 平成15年4月25日(2003.4.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】香月 勗
【氏名】宮崎 高則
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特開2002-308845(JP,A)
特開平10-072430(JP,A)
特表平09-508405(JP,A)
調査した分野 C07C 315/00
C07B 53/00
C07C 317/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Nbを中心金属とし、下記式(I)及び式(II)の何れかで表される化合物を配位子とするNb(サレン)錯体を触媒として使用し、スルフィド化合物を尿素-過酸化水素付加物(UHP)で不斉酸化する光学活性なスルホキシド化合物の製造方法であって、
前記式(I)で表される化合物が下記式(III)及び式(IV)の何れかで表され、
前記式(II)で表される化合物が下記式(V)及び式(VI)の何れかで表されることを特徴とする光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【化1】
JP0003962813B2_000029t.gif
【化2】
JP0003962813B2_000030t.gif
【化3】
JP0003962813B2_000031t.gif
【化4】
JP0003962813B2_000032t.gif
【化5】
JP0003962813B2_000033t.gif
【化6】
JP0003962813B2_000034t.gif
(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)において、R1はそれぞれ独立して水素、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。]
【請求項2】
前記R1がフェニル基及び3,5-ジメチルフェニル基からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記スルフィド化合物が下記式(VII)で表されることを特徴とする請求項1に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【化7】
JP0003962813B2_000035t.gif
(式中、R2は炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~17のアラルキル基で;R3は炭素数1~15のアルキル基を示す。)
【請求項4】
前記スルホキシド化合物が下記式(VIII)で表されることを特徴とする請求項1に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【化8】
JP0003962813B2_000036t.gif
(式中、R2及びR3は上記と同義である。)
【請求項5】
前記R2が、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基、フェニル基及びベンジル基からなる群から選択され、前記R3が、メチル基及びエチル基からなる群から選択されることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【請求項6】
溶媒に、Nb化合物と上記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物とを加え混合した後、スルフィド化合物と尿素-過酸化水素付加物(UHP)とを加えることを特徴とする請求項1に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物の使用量が、前記Nb化合物中のNb元素1molに対し1~2molであることを特徴とする請求項6に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
【請求項8】
-20℃~40℃で不斉酸化することを特徴とする請求項1に記載の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性なスルホキシド化合物の製造方法に関し、特にNb(サレン)錯体を触媒として使用する光学活性なスルホキシド化合物の製造方法に関するものである。なお、本発明の方法は、特に医農薬品の合成において有用である。
【0002】
【従来の技術】
現在、不斉触媒反応は、有機合成化学の分野における主要なトピックの一つであり、様々な金属のキラル錯体の触媒作用が広く研究されている。その結果、種々の高エナンチオ選択的な反応プロセスが開発されてきた。しかしながら、金属の中にはその錯体を用いた不斉触媒反応が充分に開発されていなものが存在し、かかる金属の中の一つにニオブがある。
【0003】
ニオブは、窒素、サレン、ポリフィリンと錯体を形成することが報告されており(非特許文献1及び2参照)、ニオブ錯体の中には、ルイス酸や酸化触媒等としての触媒作用を示すものが存在することが知られている。しかしながら、ニオブ触媒を用いた不斉反応は、ディールス・アルダー反応やエポキシ化反応等に限られており、しかも、これらの反応におけるエナンチオ選択性はあまり高くない。
【0004】
一方、スルフィド化合物の不斉酸化反応(スルホキシド化反応)により、光学活性なスルホキシド化合物が得られることが知られており、該反応は医農薬品の合成において重要であるが、該反応に上述のニオブ錯体を触媒として使用した例は、これまで知られていない。
【0005】
【非特許文献1】
ホワース(Howarth)及びギレスピー(Gillespie),モレキュルズ(Molecules)[オンライン・コンピュータ・ファイル],2000年,第5号,p.993~997
【非特許文献2】
松田,坂本,コシマ及び村上,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am, Chem. Soc.),1985年,107巻,p.6415~6416
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、ニオブ錯体を触媒として用い、スルフィド化合物を不斉酸化して光学活性なスルホキシド化合物を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するサレンを配位子としたニオブ錯体を触媒として用いることにより、スルフィドの不斉酸化反応が高いエナンチオ選択性で進行し、その結果、光学活性なスルホキシド化合物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法は、Nbを中心金属とし、下記式(I)及び式(II)の何れかで表される化合物を配位子とするNb(サレン)錯体を触媒として使用し、スルフィド化合物を尿素-過酸化水素付加物(UHP)で不斉酸化する光学活性なスルホキシド化合物の製造方法であって、
前記式(I)で表される化合物が下記式(III)及び式(IV)の何れかで表され、
前記式(II)で表される化合物が下記式(V)及び式(VI)の何れかで表されることを特徴とする。
【化9】
JP0003962813B2_000002t.gif【化10】
JP0003962813B2_000003t.gif【化11】
JP0003962813B2_000004t.gif【化12】
JP0003962813B2_000005t.gif【化13】
JP0003962813B2_000006t.gif【化14】
JP0003962813B2_000007t.gif(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)において、R1はそれぞれ独立して水素、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。]
【0011】
ここで、前記式(I)~式(VI)中のR1がフェニル基及び3,5-ジメチルフェニル基からなる群から選択されるのが好ましい。
【0012】
本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法の他の好適例においては、前記スルフィド化合物が下記式(VII)で表される。
【化15】
JP0003962813B2_000008t.gif(式中、R2は炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~17のアラルキル基で;R3は炭素数1~15のアルキル基を示す。)
【0013】
本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法の他の好適例においては、前記スルホキシド化合物が下記式(VIII)で表される。
【化16】
JP0003962813B2_000009t.gif(式中、R2及びR3は上記と同義である。)
【0014】
ここで、前記式(VII)及び式(VIII)中のR2が、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基、フェニル基及びベンジル基からなる群から選択され、R3が、メチル基及びエチル基からなる群から選択されるのが更に好ましい。
【0015】
本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法の他の好適例においては、溶媒に、Nb化合物と上記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物とを加え混合した後、スルフィド化合物と尿素-過酸化水素付加物(UHP)とを加えることにより、光学活性なスルホキシド化合物を製造する。
【0016】
ここで、前記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物の使用量が、前記Nb化合物中のNb元素1molに対し1~2molであるのが好ましい。
【0017】
本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法の他の好適例においては、-20℃~40℃で不斉酸化する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法は、Nbを中心金属とし且つ上記式(I)及び式(II)の何れかで表される化合物を配位子とするNb(サレン)錯体を触媒として使用して、スルフィド化合物を尿素-過酸化水素付加物(UHP)で不斉酸化する光学活性なスルホキシド化合物の製造方法であって、前記式(I)で表される化合物が上記式(III)及び式(IV)の何れかで表され、前記式(II)で表される化合物が上記式(V)及び式(VI)の何れかで表されることを特徴とする。なお、本発明の好適実施態様の一例においては、溶媒に、Nb化合物と上記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物とを加え混合した後、Nb(サレン)錯体を単離することなく、混合液中にスルフィド化合物と尿素-過酸化水素付加物(UHP)とを加えることにより、光学活性なスルホキシド化合物を製造する。ここで、Nb化合物としては、NbCl3(dme)、NbCl4(THF)2等が挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法においては、Nb化合物と上記式(I)又は式(II)の化合物とから生成したNb(サレン)錯体のジアミンユニットのキラリティーとビナルチルユニットにおけるキラリティーとが不斉誘起に大きな影響を及ぼす。ここで、式(I)及び式(II)において、ジアミンユニットの立体配置が(R)の場合、ビナルチルユニットの立体配置は(aS)であり、ジアミンユニットの立体配置が(S)の場合、ビナルチルユニットの立体配置は(aR)である。従って、上記式(I)の化合物としては、上記式(III)及び上記式(IV)の何れかで表される化合物を用い、一方、上記式(II)の化合物としては、上記式(V)及び上記式(VI)の何れかで表される化合物を用いる。Ti(サレン)錯体やMn(サレン)錯体においては、(aR,R)型や(aS,S)型の錯体の方が(aR,S)型や(aS,R)型の錯体よりも反応のエナンチオ選択性を向上させる効果が大きいのに対し[Katsuki, T., Synlett, 2003, 281-297.]、Nb(サレン)錯体は、Ti(サレン)錯体やMn(サレン)錯体と逆の傾向を有する。
【0020】
(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)において、R1はそれぞれ独立して水素、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。ここで、上記アリール基としては、フェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-(t-ブチルジフェニルシリル)フェニル、4-ビフェニリル基等が挙げられる。また、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、t-ブチル基等が、上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、R1としては、フェニル基、及び3,5-ジメチルフェニル基が好ましい。
【0021】
上記Nb(サレン)錯体の使用量は、後述するスルフィド化合物のモル量に対し、2~10mol%であり、好ましくは4~10mol%の範囲である。Nb(サレン)錯体の使用量が、スルフィド化合物に対して2mol%未満では、Nb(サレン)錯体が解離して、光学活性な配位子を有さないニオブ錯体が生成するものと考えられ、生成物の鏡像体過剰率が低下する。一方、Nb(サレン)錯体の使用量が10mol%を超えると、生成物の鏡像体過剰率を向上させる効果が飽和するため、経済的でない。
【0022】
本発明の製造方法で使用するスルフィド化合物としては、前記式(VII)で表される化合物が好ましい。式(VII)中のR2は炭素数6~14のアリール基又は炭素数7~17のアラルキル基を示し、該アリール基としては、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。一方、式(VII)中のR3は炭素数1~15のアルキル基を示し、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法で得られるスルホキシド化合物は、光学活性なスルホキシド化合物であり、具体的には前記式(VII)に対応する前記式(VIII)で表される化合物が挙げられる。ここで、式(VIII)中のR2及びR3は、式(VII)中のR2及びR3と同義である。
【0024】
本発明の光学活性なスルホキシド化合物の製造方法では、上述のNb(サレン)錯体の存在下、上記スルフィド化合物を酸化剤で不斉酸化する。ここで、酸化剤としては、尿素-過酸化水素付加物(UHP)が挙げられる。なお、酸化剤の使用量は、基質のスルフィド化合物に対し1~2当量(eq)、好ましくは1.1~1.2当量(eq)の範囲である。
【0025】
上述のように、溶媒に、Nb化合物と上記(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物とを加え混合した後、Nb(サレン)錯体を単離することなく、スルフィド化合物と尿素-過酸化水素付加物(UHP)とを加えて、光学活性なスルホキシド化合物を製造する場合、(III)、式(IV)、式(V)及び式(VI)の何れかで表される化合物を、Nb化合物中のNb元素1molに対し、1~2mol、より好ましくは1.2~1.6mol使用する。Nb元素に対して、過剰の(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)のサレン配位子を反応系に存在させることにより、光学活性な配位子を有さないニオブ錯体の割合を減ずることができ、その結果、反応のエナンチオ選択性を向上させて、より高い光学純度を有するスルホキシド化合物を得ることができる。
【0026】
本発明の製造方法は、一般に溶媒中、好ましくは有機溶媒中で行う。該有機溶媒としては、ジクロロメタン(CH2Cl2)等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;トルエン等の炭化水素;アセトン等のケトン類が例示できる。これらの中でも、生成物の鏡像体過剰率を向上させる観点からは、ジクロロメタンが好ましい。上記溶媒の使用量は、基質のスルフィド化合物1mmolに対し5~50mL、好ましくは10~30mLの範囲である。
【0027】
本発明の製造方法は、-20℃~40℃で実施するのが好ましく、-15~-5℃で実施するのが更に好ましく、-10℃で実施するのが特に好ましい。反応温度が高過ぎても低過ぎても、生成物の鏡像体過剰率が低下してしまう。
【0028】
本発明の方法では、ゼオライトの存在下で不斉酸化するのが好ましい。ゼオライトの存在下で不斉酸化を行うことにより、収率を向上させることができる。本発明で使用するゼオライトとしては、MS-3A、MS-4A、MS-5A等が例示でき、この中でも、MS-4Aが好ましい。ゼオライトの使用量としては、基質のスルフィド化合物1mmolに対し、50~500mg、好ましくは100~300mgの範囲である。
【0029】
本発明では、溶媒にNb化合物及び上述のサレン配位子を加え混合し、更にスルフィド化合物及び酸化剤、並びに任意にゼオライトを加え撹拌することにより、光学活性なスルホキシド化合物を製造することができる。撹拌方法は、混合溶液の均一性を確保できさえすれば特に限定されず、公知の方法が適用できる。また、反応時間は特に限定されず、上記反応温度に合わせて適宜選択される。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(配位子合成例1)
(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジアミン[環境科学センター](66.0mg, 0.58mmol)をエタノール(10mL)に溶解させ、この溶液に(aS)-3-フォルミル-2-ヒドロキシ-2'-フェニル-1,1'-ビナフチル[H. Sasaki, R. Irie, T. Hamada, K. Suzuki, T. Katsuki, Tetrahedron, 1997, 50(41), 11827に記載の方法にて合成](435mg, 1.16mmol)を加えて60℃で10時間加熱する。反応溶液を室温まで冷却した後、生じた黄色沈澱をグラスフィルターでろ取し、エタノール(10mL)で洗浄する。ろ取した沈澱を60℃で5時間真空乾燥することにより、下記式(IX)で表される化合物(445mg, 収率93%)を得る。得られた化合物のIR測定(KBr法)の結果は、3053, 2928, 2856, 1630, 1506, 1466, 1443, 1383, 1346, 1290, 1259, 943, 860, 820, 748, 702cm-1である。
【化17】
JP0003962813B2_000010t.gif【0032】
(錯体合成例1)
ブローブボックス中で、上記式(IX)の化合物(8.3mg, 0.01mmol)とNbCl3(dme)(2.9mg, 0.01mmol)とをジクロロメタン(1mL)に溶解させ、該溶液を室温で2時間撹拌して、Nb(サレン)錯体を生成させた。この溶液中に、マトリックスとしてm-ニトロベンジルアルコールを加え、FABMS分析を行った。その結果、下記式(X)の化合物に対応するピーク(実測値:m/z=933.42、[C604423Nb]+の計算値:m/z=933.24)と、下記式(XI)の化合物に対応するピーク(実測値:m/z=1221.49、[C745648Nb]+の計算値:m/z=1221.32)とを観測した。この結果は、ニオブイオンと式(IX)の配位子とが1:1で錯体を形成し、Nb(III)イオンがNb(V)イオンに酸化されたことを示している。
【化18】
JP0003962813B2_000011t.gif【化19】
JP0003962813B2_000012t.gif【0033】
(配位子合成例2)
(1S,2S)-1,2-シクロヘキサンジアミン[環境科学センター](10.8mg, 0.095mmol)をエタノール(4mL)に溶解させ、(aR)-3-フォルミル-2-ヒドロキシ-2'-(3,5-ジメチルフェニル)-1,1'-ビナフチル[H. Sasaki, R. Irie, T. Hamada, K. Suzuki, T. Katsuki, Tetrahedron, 1997, 50(41), 11827に記載の方法を基に合成](76.0mg, 0.19mmol)を加えて60℃で10時間加熱する。反応溶液を室温まで冷却した後、生じた黄色沈澱をグラスフィルターでろ取し、エタノール(4mL)で洗浄する。ろ取した沈澱を60℃で5時間真空乾燥することにより、下記式(XII)で表される化合物(79.7mg, 収率95%)を得る。得られた化合物のIR測定(KBr法)の結果は、3051, 2928, 2858, 1628, 1506, 1443, 1381, 1344, 1319, 1288, 1258, 853, 820, 787, 746, 706cm-1である。
【化20】
JP0003962813B2_000013t.gif【0034】
(配位子合成例3)
(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジアミン[環境科学センター](171mg, 1.5mmol)をエタノール(15mL)に溶解させ、この溶液に(aR)-3-フォルミル-2-ヒドロキシ-2'-フェニル-1,1'-ビナフチル[H. Sasaki, R. Irie, T. Hamada, K. Suzuki, T. Katsuki, Tetrahedron, 1997, 50(41), 11827に記載の方法にて合成](1.10g, 3.0mmol)を加えて60℃で10時間加熱する。反応溶液を室温まで冷却した後、生じた黄色沈澱をグラスフィルターでろ取し、エタノール(10mL)で洗浄する。ろ取した沈澱を60℃で5時間真空乾燥することにより、下記式(XIII)で表される化合物(1.18g, 収率95%)を得る。得られた化合物のIR測定(KBr法)の結果は、3053, 2930, 2858, 1630, 1506, 1443, 1383, 1344, 1290, 1259, 1119, 943, 822, 750, 700, 619cm-1である。
【化21】
JP0003962813B2_000014t.gif【0035】
(配位子合成例4)
(1S,2S)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン[環境科学センター](318mg, 1.5mmol)をエタノール(15mL)に溶解させ、この溶液に(aR)-3-フォルミル-2-ヒドロキシ-2'-フェニル-1,1'-ビナフチル[H. Sasaki, R. Irie, T. Hamada, K. Suzuki, T. Katsuki, Tetrahedron, 1997, 50(41), 11827に記載の方法にて合成](1.10g, 3.0mmol)を加えて60℃で10時間加熱する。反応溶液を室温まで冷却した後、生じた黄色沈澱をグラスフィルターでろ取し、エタノール(10mL)で洗浄する。ろ取した沈澱を60℃で5時間真空乾燥することにより、下記式(XIV)で表される化合物(1.31g, 収率94%)を得る。得られた化合物のIR測定(KBr法)の結果は、3055, 3032, 1628, 1495, 1445, 1385, 1344, 1319, 1290, 1259, 1184, 1150, 1119, 1028, 943, 819, 756, 700, 544cm-1である。
【化22】
JP0003962813B2_000015t.gif【0036】
(配位子合成例5)
(1R,2R)-1,2-ジフェニルエチレンジアミン[環境科学センター](318mg, 1.5mmol)をエタノール(15mL)に溶解させ、この溶液に(aR)-3-フォルミル-2-ヒドロキシ-2'-フェニル-1,1'-ビナフチル[H. Sasaki, R. Irie, T. Hamada, K. Suzuki, T. Katsuki, Tetrahedron, 1997, 50(41), 11827に記載の方法にて合成](1.10g, 3.0mmol)を加えて60℃で10時間加熱する。反応溶液を室温まで冷却した後、生じた黄色沈澱をグラスフィルターでろ取し、エタノール(10mL)で洗浄する。ろ取した沈澱を60℃で5時間真空乾燥することにより、下記式(XV)で表される化合物(1.22g, 収率88%)を得る。得られた化合物のIR測定(KBr法)の結果は、3055, 3030, 1630, 1497, 1445, 1385, 1342, 1288, 1182, 1150, 1119, 1051, 1028, 943, 822, 756, 700cm-1である。
【化23】
JP0003962813B2_000016t.gif【0037】
(配位子合成例6)
J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 5326のSupplementary Materialに記載の方法で下記式(XVI)で表される化合物を合成した。
【化24】
JP0003962813B2_000017t.gif【0038】
(配位子合成例7)
Jay F. Larrow and Eric N. Jacobsen, J. Org. Chem. 1997, 59, 1939に記載の方法で下記式(XVII)で表される化合物を合成した。
【化25】
JP0003962813B2_000018t.gif【0039】
(配位子合成例8)
Jay F. Larrow and Eric N. Jacobsen, J. Org. Chem. 1997, 59, 1939に記載の方法で下記式(XVIII)で表される化合物を合成した。
【化26】
JP0003962813B2_000019t.gif【0040】
(実施例1)
ブローブボックス中で、上記式(IX)の化合物(4.1mg, 5.0μmol)とNbCl3(dme)(1.4mg, 5.0μmol)とをジクロロメタン(2mL)に溶解させ、該溶液を室温で2時間撹拌した。次に、該溶液にMS4A(約20mg)を加え、更に30分撹拌した。次に、得られた混合液をグローブボックスから取り出し、窒素雰囲気下で、メチルフェニルスルフィド(12.0μL, 0.10mmol)と尿素-過酸化水素付加物(UHP)(10.5mg, 0.11mmol)とを連続的に加え、室温(25℃)で24時間撹拌して反応させた。
【0041】
その後、該混合液をヘキサン:酢酸エチル(=1:1-1:19)混合液を用い直接シリカゲルでクロマトグラフ分離して、メチルフェニルスルホキシド(8.3mg, 収率59%)を得た。得られたスルホキシド化合物の鏡像体過剰率を、キラル固定相カラム(ダイセル・キラルセルOD-H)及びヘキサン:イソプロパノール(9:1)混合液を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、68%eeであった。なお、生成物の立体配置は、標準物質の溶出オーダーとの比較により決定した。これらの結果を表1に示す。
【0042】
実施例2、4及び比較例1~5
式(IX)の化合物に代えて、上記式(XII)、式(XIII)、式(XIV)、式(XV)、式(XVI)、式(XVII)、又は式(XVIII)の化合物を配位子として用い、実施例1と同様にスルフィドを酸化した。但し、比較例5では、反応温度を0℃とした。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
JP0003962813B2_000020t.gif【0044】
表1の実施例1、2、4及び比較例1~5に対応する反応式を下記に示す。
【0045】
表1から、式(I)又は式(II)で表される化合物を配位子とするNb錯体は、スルフィド化合物の不斉酸化反応の触媒として機能することが分かる。なお、反応のエナンチオ選択性を向上させる観点からは、式(IX)のような(aS,R)型、並びに式(XII)及び式(XIV)のような(aR,S)型の錯体が更に好ましいことが分かる。
【0046】
(実施例6~8)
反応温度及び反応時間を表2に示す温度及び時間にする以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
JP0003962813B2_000021t.gif【0048】
表2の実施例6~8に対応する反応式を下記に示す。
【化28】
JP0003962813B2_000022t.gif【0049】
表2から、生成物の鏡像体過剰率を向上させる観点から、反応温度は-10℃程度が好ましいことがわかる。
【0050】
(実施例9~11)
式(IX)の化合物とNbCl3(dme)との使用量を表3に示す量にする以外は、実施例6と同様に行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
JP0003962813B2_000023t.gif【0052】
表3の実施例9~11に対応する反応式を下記に示す。
【化29】
JP0003962813B2_000024t.gif【0053】
表3の結果から、Nb(サレン)錯体の使用量は、スルフィド化合物の8mol%程度が好ましく、触媒量が少ないと生成物の鏡像体過剰率が低下し、触媒量が多いと、生成物の鏡像体過剰率を向上させる効果が飽和するため、経済的でないことが分かる。
【0054】
(実施例12~15)
NbCl3(dme)の使用量をスルフィドのモル量に対して8mol%とし、該NbCl3(dme)と式(IX)の化合物とのモル比を表4に示す比にし、-10℃で2日間反応させる以外は、実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
JP0003962813B2_000025t.gif【0056】
表4の実施例12~15に対応する反応式を下記に示す。
【化30】
JP0003962813B2_000026t.gif【0057】
表4の結果から、Nb化合物中のNb元素に対して、サレン配位子のモル数を過剰にすることにより、生成物の鏡像体過剰率を向上させることができるのが分かる。
【0058】
(実施例16)
鏡像体過剰率の異なる式(IX)の化合物を用いて、反応を行った。なお、反応条件は、NbCl3(dme)及び式(IX)の化合物:それぞれ8mol%(スルフィドのモル量基準)、反応温度:室温、反応時間:24時間である。結果を図1に示す。
【0059】
図1から、配位子の鏡像体過剰率と生成物の鏡像体過剰率とが、非線形関係にあることが分かる。このことから、NbCl3-式(IX)錯体は、モノマーとオリゴマーとが平衡化して存在することが分かる。
【0060】
(実施例17~23)
メチルフェニルスルフィドに代えて、R2及びR3が表5に示す置換基であるスルフィド化合物を用いる以外は実施例14と同様に行った。なお、実施例17では、ダイセル・キラルセルOB-H及びヘキサン:イソプロパノール(2:1)混合液を用い、実施例18では、ダイセル・キラルセルOJ-H及びヘキサン:イソプロパノール(7:3)混合液を用い、実施例19、20、21及び23では、ダイセル・キラルセルOB-H及びヘキサン:イソプロパノール(4:1)混合液を用い、実施例22では、ダイセル・キラルセルOD-H及びヘキサン:イソプロパノール(9:1)混合液を用いた。これらの結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
JP0003962813B2_000027t.gif【0062】
表5の実施例17~23に対応する反応式を下記に示す。
【化31】
JP0003962813B2_000028t.gif【0063】
表5の結果から、本発明の方法が、種々のスルフィド化合物に適応でき、該スルフィド化合物に対応する、光学活性な種々のスルホキシド化合物を製造できることが分かる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、特定構造のサレン配位子を有するNb錯体を触媒として、スルフィド化合物を酸化剤で不斉酸化することにより、光学活性なスルホキシド化合物を製造することができる。そのため、本発明の方法は、特に医農薬品の合成において有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 配位子の鏡像体過剰率と生成物の鏡像体過剰率の関係を示すグラフである。
図面
【図1】
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