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明細書 :造血器腫瘍のアッセイ方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4441680号 (P4441680)
公開番号 特開2004-337050 (P2004-337050A)
登録日 平成22年1月22日(2010.1.22)
発行日 平成22年3月31日(2010.3.31)
公開日 平成16年12月2日(2004.12.2)
発明の名称または考案の名称 造血器腫瘍のアッセイ方法
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 21
出願番号 特願2003-136409 (P2003-136409)
出願日 平成15年5月14日(2003.5.14)
審査請求日 平成18年3月31日(2006.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】石川 文彦
【氏名】原田 実根
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】吉森 晃
参考文献・文献 国際公開第02/043477(WO,A1)
Exp. Hematol.,2002年,Vol.30,pp.488-494
Nature,1994年,Vol.367,pp.645-648
Immunology,1996年,Vol.8,pp.197-206
Blood,1996年,Vol.88, No.7,pp.2655-2664
Nature Med.,2001年,Vol.7, No.4,pp.452-458
Blood,2002年,Vol.100, No.9,pp.3175-3182
Blood,2003年 4月,Vol.101, No.8,pp.3142-3149
Leukemia,2003年 5月,Vol.17,pp.960-964
Ann. N.Y. Acad. Sci.,2003年 5月,Vol.996,pp.174-185
調査した分野 A01K 67/027
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
造血器腫瘍患者から採取した腫瘍細胞が移植された、当該造血器腫瘍患者由来の病的特徴を有する新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)。
【請求項2】
請求項1記載の新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)を飼育してなる免疫不全哺乳動物。
【請求項3】
造血器腫瘍が白血病、リンパ腫、形質細胞性腫瘍、骨髄異形成症候群又は骨髄繊維症である請求項1又は2記載の動物。
【請求項4】
白血病が、成人T細胞性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である請求項3記載の動物。
【請求項5】
免疫不全哺乳動物が免疫不全マウスである請求項1~4のいずれか1項に記載の動物。
【請求項6】
造血器腫瘍患者由来の腫瘍細胞を新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)に移植することを特徴とする、当該造血器腫瘍患者由来の病的特徴を有する動物の作製方法。
【請求項7】
造血器腫瘍が白血病、リンパ腫、形質細胞性腫瘍、骨髄異形成症候群又は骨髄繊維症である請求項6記載の方法。
【請求項8】
白血病が、成人T細胞性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である請求項7記載の方法。
【請求項9】
免疫不全哺乳動物が免疫不全マウスである請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の動物に薬物を投与し、薬効を評価することを特徴とする薬物の評価方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の動物に腫瘍を治療するための候補薬物を投与し、薬効を評価することを特徴とする薬物のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者由来の造血器腫瘍病型を有するモデル動物、及び該動物を用いた薬物の評価方法又はスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
白血病に代表される造血器腫瘍は、末梢血や骨髄において芽球の増殖を特徴とする疾患である。この白血病の臨床的特徴は、芽球の増殖のタイプ(骨髄性又はリンパ性)及び臨床的進行度(急性又は慢性)に基づいて分類されている。そして、多くの場合はこの分類結果によって、寛解を誘導するための1次治療法が決定される。
【0003】
しかしながら、そのような造血器腫瘍を治療するために、今日まで多くの努力が払われ、めざましい進歩をたどってきたにもかかわらず、ある白血病は化学療法に対する抵抗性が維持されており、未だに効果的な化学療法剤を見出すことができない。しかも、そのような白血病は再発に対する高い危険性を有している。このような白血病に対し有効な医薬を開発するには、患者の臨床状態に類似する動物モデルを用いて、その医薬をin vivoにおいて評価することが必要である。
【0004】
固形腫瘍に対しては、免疫能のないげっ歯動物に腫瘍細胞を皮下又は腹腔内移植することでin vivoアッセイを行うことが可能であったため、白血病に対しても、従来、白血病細胞をヌードマウスなどに植える試みがされていた。
【0005】
しかし、マウスの臨床症状が期待する症状と一致しないモデルが多く、さらに、白血病細胞が生着しないという問題、あるいは白血病細胞が白血病の文字通りの特徴である白血化(末梢血に出現する状態)を起こさず、非造血組織を中心に増殖してしまうという問題が生じていたため、in vivoでのアッセイを行うことが困難であった。
【0006】
【非特許文献1】
Lapidot T, Sirard C, Vormoor J, Murdoch B, Hoang T, Caceres-Cortes J, Minden M, Paterson B, Caligiuri MA, Dick JE. A cell initiating human acute myeloid leukaemia after transplantation into SCID mice. Nature. 1994;367:p.645-648
【0007】
【非特許文献2】
Lapidot T, Grunberger T, Vormoor J, Estrov Z, Kollet O, Bunin N, Zaizov R, Williams DE, Freedman MH. Identification of human juvenile chronic myelogenous leukemia stem cells capable of initiating the disease in primary and secondary SCID mice. Blood. 1996;88: p.2655-2664
【0008】
【非特許文献3】
Guan Y, Gerhard B, Hogge DE. Detection, isolation, and stimulation of quiescent primitive leukemic progenitor cells from patients with acute myeloid leukemia (AML). Blood. 2003 ;101: p.3142-3149
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、造血器腫瘍の治療に有用な薬物をin vivoにおいて適切に評価し得る、当該造血器腫瘍患者由来の病的特徴を有するモデル動物、該モデル動物を用いた薬物の評価方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、新生児免疫不全マウスに白血病患者由来の白血病細胞を移植することにより、当該マウス内に患者由来の細胞を生着させることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1) 造血器腫瘍患者から採取した腫瘍細胞が移植された、当該造血器腫瘍患者由来の病的特徴を有する新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)。
【0013】
(2) 上記(1)の新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)を飼育してなる免疫不全哺乳動物。
【0014】
(3) 造血器腫瘍患者由来の腫瘍細胞を新生児免疫不全哺乳動物(ヒトを除く)に移植することを特徴とする、当該造血器腫瘍患者の病的特徴を有する動物の作製方法。
【0015】
上記(1)及び(2)の免疫不全哺乳動物並びに上記(3)の方法において、造血器腫瘍としては、白血病(例えば、成人T細胞性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病)、リンパ腫、形質細胞性腫瘍(例えば多発性骨髄腫)、骨髄異形成症候群又は骨髄線維(繊維)症が挙げられる。
【0016】
本発明において使用される好ましい免疫不全哺乳動物は免疫不全マウスである。
【0017】
(4) 上記(1)又は(2)の動物に薬物を投与し、薬効を評価することを特徴とする薬物の評価方法。
【0018】
(5) 上記(1)又は(2)の動物に腫瘍を治療するための候補薬物を投与し、薬効を評価することを特徴とする薬物のスクリーニング方法。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、造血器腫瘍患者(特に白血病患者)から採取した腫瘍細胞を新生児免疫不全動物に移植することにより、当該動物を前記腫瘍患者の病型又は病態(病的特徴)を有するモデル動物を提供するものである。そして、当該モデル動物を用いて、造血器腫瘍の治療に必要な薬物のスクリーニングを行い、患者の病態に応じたテーラーメイド医療を達成しようとするものである。
【0021】
1.本発明の概要
ある病気に対する医薬を開発し、治療法を確立するためには、ヒトの細胞動態を生体内において測定することが望ましい。しかし、有効性・安全性が確認された後に行う臨床試験はともかく、ヒトの生体内で薬物のスクリーニング実験を行い、また、既存の医薬において最も適当と思われるものを選択する実験を行うことは倫理的又は技術的観点から困難である。そこで、現状としては過去に樹立された種々の腫瘍細胞の細胞株(cell line)を用いてその増殖抑制を見たり、患者の血液を採取し得られた細胞をin vitroで培養し、アッセイを行うことにより、薬物スクリーニング又は細胞の病態評価などが行われている。
【0022】
しかしながら、ヒトの各組織はそれぞれ組織特有の特徴(薬物感受性など)を有しており、肝臓、腎臓などの薬物代謝、排泄により決定される薬物動態は取り出した細胞を培養ディッシュ上で評価するのではなく、一個体(生体)内における相互作用とホメオスターシスを鑑みて評価する必要がある。
【0023】
この場合、画一的にin vitroで試験を行ってもその結果が必ずしもin vivoにおいて対応する成績が得られるとは限らない。例えば、抗癌剤を開発するにあたり、in vitroにおいて癌細胞の増殖が抑制されたという知見が得られても、臨床試験において癌の縮小効果が得られるとは限らない。さらに抗腫瘍薬剤には、多くの場合、量依存的な作用(dose dependency) が認められる。この時、ED/LD(effective dose/lethal dose)に代表される通り、投与量の増大に伴って生体は正常細胞と組織が障害され、時として死の転帰を辿る。従って、生体内で薬効を測定することによって、どの程度腫瘍細胞(白血病細胞)に特異的に働くか、どの程度副作用が生じるか、その効果と副作用とのバランスを常に見ていかなければならない。そこで、ヒトの組織内環境にできるだけ近似した環境を動物に付与し、そのような環境のもとで腫瘍の性質を解析し、薬物スクリーニングを行うことが好ましい。つまり、動物(実験動物)の生体内にヒトの細胞がきれいに生着しているというモデルを作製することが切望されていたのである。in vitroでは薬物の効果があってもin vivoにおいて効果がなければ意味がなく、またin vivoで効果があっても副作用が強ければ、これも意味がないからである。
【0024】
本発明は、造血器腫瘍、特に白血病細胞を新生児動物(例えば免疫不全マウス)に移植することで、ヒト由来の細胞環境を当該動物内に再現させて当該造血器腫瘍の病的特徴を有するモデル動物を作製し、当該モデル動物生体内でアッセイすることを可能とするものである。そして、仮にヒトの生体内においてアッセイしたとすれば得られるであろう結果と同様の結果が上記モデルマウスから得られるようにするための基本的アッセイ技術(特に白血病に対する医薬を開発するための基本的技術)を提供するものである。
【0025】
本発明においては、まず、患者から採取された造血器腫瘍細胞(例えば白血病細胞)を用いる(図1)。造血器腫瘍患者由来の細胞を、単核球全体又は白血病幹細胞や前駆細胞(多数の腫瘍を供給する純化した細胞集団)に分画した後、新生児動物に移植する。移植後、組織解析、フローサイトメトリー解析等により、骨髄、末梢血、脾臓において当該患者由来の細胞の生着率を求める。そして、上記の通り得られた白血病細胞レシピエントマウスを用いて、in vivoにおける新規抗癌剤のスクリーニングを行い、あるいは、当該患者が治療抵抗性である場合に抗癌剤を選択するためのアッセイを行う(図1)。
【0026】
本発明においては、患者由来の白血病細胞を高率に保有する動物を作製することができた。特に、末梢血に患者由来の細胞が生着するため、アッセイ用サンプルはマウスを殺すことなく採取することができ、抗腫瘍薬剤投与前後の比較など当該マウスを繰り返し使える点で有用である。
2.造血器腫瘍
本発明において、免疫不全動物に移植する造血器腫瘍、及びアッセイの対象となる造血器腫瘍としては、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、その他の造血器腫瘍などが挙げられ、これらの腫瘍細胞を使用することができる。
【0027】
白血病は、急性と慢性、骨髄性とリンパ性によりAML(急性骨髄性白血病)、 ALL(急性リンパ性白血病)、CML(慢性骨髄性白血病)及びCLL(慢性リンパ性白血病)の4種類に大別され、これらの白血病をモデル動物作製及びアッセイの対象とすることができる。但し、リンパ性及び骨髄性のいずれか一方の表現型を有する白血病のほかに、両方の表現型を有する白血病(Biphenotypic Leukemia)も本発明のモデル動物作製及びアッセイの対象となる。さらに、上記白血病以外のCMMoL(慢性骨髄単球性白血病)、CNL(慢性好中球性白血病)、ATL(成人T細胞白血病)、Sezary 症候群、HCL(hairy cell leukemia)なども、モデル動物作製及びアッセイの対象となる。
【0028】
リンパ腫としては、ホジキン病(Hodgkin's disease, HD)、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin's lymphoma, NHL)、バーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma, BL)、皮膚T細胞性リンパ腫(Cutaneous T cell lymphoma, CTCL)などの悪性リンパ腫が挙げられ、これらの細胞を使用することができる。
【0029】
また、形質細胞性腫瘍としては、MM(多発性骨髄腫)、PCL(形質細胞性白血病)などが挙げられ、これらの細胞を使用することができる。
【0030】
本発明においては、上記白血病やリンパ腫に限定されるものではなく、骨髄線維症などの慢性骨髄増殖疾患も含まれる。
【0031】
ところで、同じ白血病でも病的特徴によって効果のある薬物とそうでない薬物が存在することもあれば、異なる病的特徴であっても同じ薬物が有効であることもある。また、白血病一般に有効な薬物をスクリーニングすれば済む場合もあれば、ある特定の病型に特異的に効く薬物を求めたい場合もある。そこで、本発明においては、白血病の病型又は病態(病的特徴)を診断し、それぞれの病的特徴に対応したモデル動物を作製し、アッセイを行うことも可能である。白血病のみならず、リンパ腫その他の造血器腫瘍についても同様である。
【0032】
ここで、「病的特徴」とは、病理学的又は臨床的にその白血病やリンパ腫がもつ特有の病型、病期又は病態を意味し、臨床診断のための基礎をなす情報をいう。例えば白血病に関し、一般に、白血球としての機能を持たない細胞の自律的な増殖が認められる状態、すなわち造血系細胞が骨髄の中で腫瘍化増殖し、末梢血中に白血病細胞が出現した状態は、白血病としての病的特徴を有しているといえる。また、一般に、分化のある一定の段階で分化能を失い、機能的成熟白血球を有することなくそれより未分化な細胞(芽球)のみで腫瘍を構成している場合は、急性白血病の病的特徴を有するといえる。これに対し、自律性増殖を示す点で腫瘍であると認められても、分化・成熟能を保持している場合は、慢性骨髄性白血病の病的特徴を有しているといえる。
【0033】
本発明においては、上記病的特徴をFAB分類により分類して、モデル動物の作製又はアッセイを行ってもよい。「FAB分類」とは、FAB (French-American-British) グループから1976年に提唱した急性白血病の分類方法である。
【0034】
FAB分類では、芽球(blast)が全有核細胞(ANC)又は非赤芽球系細胞(NEC)の30%以上の場合を急性白血病とする。そして芽球のミエロペルオキシダーゼ(MPO)の陽性率が3%未満のときをリンパ芽球性白血病、3%以上のときを骨髄性白血病とする。リンパ芽球性白血病はL1~L3に、骨髄性白血病はM1~M6に細分類される。この基準でL2に分類された芽球は、細胞表面マーカー検査を施行し、リンパ球性マーカーを持たず骨髄性マーカーを持つペルオキシダーゼ(POX)陰性の芽球をM0に、血小板マーカーを細胞表面又は細胞質に有するか、あるいは電子顕微鏡にて血小板POX陽性の芽球と診断された場合をM7とする。芽球の比率の低いものは骨髄異形成症候群(MDS)として鑑別する。AML、ALL及びMDSのFAB分類をまとめると以下の通りとなる。なお、AML、ALL及びMDSの病的特徴は、FAB分類に限定して決定されるものではない。
【0035】
AMLは、POX陽性芽球が3%以上であり、以下の特徴を有する(表1)。
【0036】
【表1】
JP0004441680B2_000002t.gif【0037】
また、ALLは陽性芽球が3%未満であり、芽球の大きさにより以下の通り分類される(表2)。
【0038】
【表2】
JP0004441680B2_000003t.gif【0039】
さらに、MDSは以下の通り分類される(表3)。
【0040】
【表3】
JP0004441680B2_000004t.gif【0041】
リンパ腫の病的特徴は以下の通りである。
【0042】
リンパ腫とは、リンパ組織における腫瘤形成を主体としたリンパ球の悪性腫瘍であり、悪性リンパ腫はリンパ球の成熟過程で発生する。主に病理学的特徴からホジキン病と非ホジキン病に大別される。
【0043】
ホジキン病は、表面マーカーCD30陽性、無痛性の頸部リンパ節腫脹、好酸球増多症などの検査所見を有し、以下の特徴がある(表4)。
【0044】
【表4】
JP0004441680B2_000005t.gif【0045】
非ホジキン病は、ホジキン病以外の悪性リンパ腫の総称である。 リンパ球に由来する点はホジキン病と同じであるが、リンパ節からも節外からも発症し、病変が非連続性に進展する点が特徴である。非ホジキン病は以下のように分類される(表5)。
【0046】
【表5】
JP0004441680B2_000006t.gif【0047】
成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)は、リンパ系の悪性腫瘍である非ホジキンリンパ腫の特殊なタイプであり、以下の病型に分類される(表6)。
【0048】
【表6】
JP0004441680B2_000007t.gif【0049】
形質細胞性腫瘍とは、形質細胞が腫瘍化する疾患をいう。代表的な疾患は多発性骨髄腫であり、その特徴は以下の通りである(表7)。
【0050】
【表7】
JP0004441680B2_000008t.gif【0051】
本発明において、免疫不全動物の作製及びアッセイの対象となるその他のリンパ腫として、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、MALTリンパ腫などが挙げられる。
3.モデル動物の作製
(1) 新生児免疫不全哺乳動物
本発明において、患者由来の腫瘍細胞を移植するためのレシピエントとして使用される動物は、ヒトを除く免疫不全哺乳動物であって生後4日以内、好ましくは生後2日以内の新生児をいう。
【0052】
哺乳動物としては、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットなどが挙げられる。モデル動物が豊富であり、系統が確立されている点で免疫不全マウスであることが好ましい。免疫不全マウスとは、T細胞及びB細胞の生産能を欠く重症複合免疫不全マウス(SCIDマウス)を意味し、特に、NK細胞の活性を持たないSCID/NODβ2ミクログロブリンノックアウトマウス(NOD/SCID/BMG)が好ましい。このSCIDマウスの新生児を使うと、マウス生体内に腫瘍細胞を高率に生着させることができる。上記SCIDマウスは市販されており(Jackson Laboratory)、当業者が容易に入手することが可能である。
【0053】
(2) 移植
レシピエント動物を放射線全身照射した後、所定の量に調製した白血病細胞をレシピエント動物(NOD/SCID/BMGマウス等)に移植する。移植する細胞数は、動物や腫瘍の種類に応じて適宜定めることができる。例えば、SCIDマウスをレシピエントとした場合において、白血病細胞(AML, ALL, etc.)を移植するときは1匹あたり1×105個~5×107個であり、ATL細胞を移植するときは、CD4陽性細胞については1匹あたり1×105個~5×107個(好ましくは5×106個)、単核球については1匹あたり5×105個~5×107個(好ましくは5×106個)である。
【0054】
移植は、静脈経由がこのましいが、腹腔、心腔内、肝臓内であってもよい。静脈経由で移植する場合は、顔面静脈、尾静脈などから細胞を注入する。この場合、26~30ゲージ(G)の注射針(例えば29G)を用いればよい。
【0055】
細胞の移植後、無菌管理を十分に行いながら飼育する。「無菌管理」とは、感染症などの病原微生物や抗原物質を含まないように管理することを意味し、いわゆるSPF(Specific pathogen free) レベルの無菌室での飼育、放射線照射した餌(又は低分子化した餌)を給餌すること、あるいは滅菌水を与えることをいう。マウスの場合は、2週~16週、好ましくは3~4週の間、上記無菌管理下で飼育すれば、薬物のアッセイ及び評価に用いることができる。本発明においては、このような飼育された動物も提供される。
4.薬物のアッセイ及び評価
上記動物を用いて、薬物を投与する前後において以下のアッセイ及び評価を行うことができる。
(1) 造血組織の観察・解析
造血組織の観察・解析は、動物の骨髄、末梢血、脾臓などの組織において当該ヒト患者由来の細胞が存在することを確認することによって行う。例えば、患者由来の腫瘍細胞が組織にどの程度浸潤したのかを評価する。これは、患者由来の腫瘍細胞がレシピエント動物内においてどの程度生着したのかを示す指標となるものである。この評価には、例えば免疫組織染色やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを採用することができる。
(2) ヒト由来の細胞数、細胞表面抗原型などを正確に定量するため、フローサイトメトリーを行い、どの程度の割合でヒト由来の細胞が動物の生体内に生着したかを評価する。
【0056】
白血病細胞の生着率は、全マウス骨髄細胞に対して少なくとも1%であり、好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%である。生着率として少なくとも10%を有していれば、表面抗原解析のみならず、抗癌剤をスクリーニングすることが可能である。
(3) 新たに開発した医薬(抗癌剤)が、▲1▼従来の医薬(抗癌剤)と比較してどの程度効果を有するか、▲2▼どの程度副作用を有するか、▲3▼どのような副作用の違いを有するかを評価し、抗癌剤の開発につなげることができる。
【0057】
新生児の解析期間は、生後2~32週、好ましくは3~16週である。細胞を移植した後4週までには細胞が生着、分化、増殖するため、移植後3~4週飼育して抗癌剤のアッセイをすることができる。例えば、従来の抗癌剤を用いたときの癌細胞の減少率(マウスの生存曲線を含む)及び副作用と、患者への投与を検討している抗癌剤を用いたときの癌細胞の減少率及び副作用を評価し、どちらの抗癌剤を使用すればよいかを判断する。前記FAB分類におけるAML M3タイプは、レチノイン酸で分化誘導を起こすことが知られているので、白血病細胞を抗癌剤で処理した後、レチノイン酸を添加し、白血病細胞が分化誘導されるかどうかを評価して、当該抗癌剤の有効性を評価することも可能である。
【0058】
これらの評価結果は、患者のテーラーメード医療につながるものである。すなわち、患者由来の細胞を有する動物を用いて薬物投与を行い、どの薬物が有効なのか、どの薬物とどの薬物との組合せが効果的なのか、副作用が少なく有効な薬物はどれなのかを知ることができ、当該患者に最もふさわしい薬物を選択することが可能となる。特に、治療抵抗性を示す場合は、複数の化学療法剤の感受性をin vivoにて評価し、その有効性/感受性の判定を行った上で、実際の患者に投与すべき薬物を決定することができる。また、新規抗癌剤と従来の抗癌剤との比較を行い、治療法を検討することが可能になる。
【0059】
例えば、図2Aに示すように、患者から採取した白血病細胞を各レシピエントマウスに移植する。それぞれのマウスに、種類の異なる既存の薬物A、B、C及びDをそれぞれ投与したとする。そして、どの薬物を投与したときに白血病細胞が縮小したのか(薬物に対する感受性を有するのか)、例えばフローサイトメトリー等によって評価する。図2Aにおいて例えば薬物Bを用いたときに白血病細胞に対する感受性が高い(有効)と判断された場合は、患者を治療するために薬物Bを選択することができる。
【0060】
これに対し、図2Bに示すように、各種白血病患者から採取した白血病細胞をレシピエントに移植し、それぞれのマウスに同一の薬物を投与したとする。そして、どの病型の白血病に対してその薬物が有効であるかを評価することもできる。
【0061】
なお、アッセイは末梢血を用いて行うことができるため、末梢血を解析する場合は同じ動物を殺さずに繰り返し使用することができる。白血病の化学療法については、特にinduction(寛解導入)、consolidation(地固め)という大きく二つの治療目的がある。前者は、患者骨髄、末梢血中に高率に増殖した白血病細胞を強力に殺す(total cell kill) ことを目標とし、後者は、全身症状ならびに骨髄所見が改善したあとも僅かに残存する病変(微少残存病変;Minimal Residual Disease)を確実に0にしてしまうことである。一旦高率にレシピエントマウス体内で増殖した白血病細胞をinduction, consolidationと一連の治療を行ない、その効果を判定することが可能である。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕 ATL患者由来の白血病細胞を用いたアッセイ
(1) マウス
移植の対象となるマウスとして、NOD-PrkdcSCID/PrkdcSCID B2mnull(以下、「NOD/SCID/BMG」という)をJackson Laboratoryから購入した。マウスは、放射線照射餌及び滅菌水を用いて厳密に飼育及び管理した。
(2) 白血病細胞の調製
ヒト白血病細胞は、白血病患者(ATL患者)から十分なインフォームドコンセントの同意を得た上で採取した。単核細胞(MNC)は、骨髄(BM)又は末梢血(PB)から密度勾配遠心分離(それぞれ350gで30分、550gで30分)によって得た。MNCをマウス抗ヒトCD3、CD4及びCD8抗体(BD Immunocytometry)とともに4℃で30分反応させることで結合させた。次に、細胞をリン酸バッファー液(PBS)で洗浄した後、ヒツジ抗マウス免疫磁気ビーズ(Dynal 社)とともに4℃で30分インキュベートし、非結合細胞を回収した。CD4+細胞を単離する場合は、マイクロビーズ結合抗ヒトCD4(Miltenyi Biotec)とともに、キットに添付の説明書にしたがってインキュベートした。
【0064】
細胞を磁気カラムに2回通し、精製CD4+細胞を得た。すべての実験は、九州大学治験審査委員会(Institutional Review Board)によって設立されたガイドラインに従って行った。
(3) 移植
新生児マウス(生後1~2日)について合計100Gyの放射線全身照射を行い、これを造血細胞移植のレシピエントとして使用した。照射後6時間以内に、上記の通り調製した白血病細胞(1×105個のCD34+又は5×106個のMNC)を顔面静脈から各マウスに移植した。
(4) ヒト白血病細胞移植片についての骨髄の解析
骨髄細胞は、25Gニードル(Beckton Dickinson and Company)を用いて大腿骨及び頚骨から灌流し、25Gニードルを繰り返し通すことで単一細胞にした。サンプルを、白血病細胞の表現型に従ってフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-結合抗ヒトCD45抗体及びフィコエリスリン(PE)-結合抗ヒト系統マーカーで標識した。染色した細胞は、FACSCalibur (Becton Dickinson)又はFACSVantage (Becton Dickinson)を用いて解析した。
(5) PCR解析
末梢血、脾臓から採取した血液細胞よりDNAの抽出を行った。HTLV-1(ヒトT細胞性白血病ウイルス)特異的部位を用いてupper/lower primerを作製した。このレシピエント血液細胞由来DNAを用いて、HTLV-1のウイルスゲノムが細胞に感染して組み込まれているのかについてPCR(polymerase chain reaction)を用いて解析を行った。
【0065】
PCRは、以下の組成の反応液を用いて行った。
【0066】
10XTaq バッファー: 10μl
dNTP ミックス : 8μl
フォワードプライマー; 2μl
リバースプライマー; 2μl
DNA: >1μg
Taq ポリメラーゼ; 0.5μl
蒸留水; rest
なお、プライマーは以下の配列のものを使用した。
【0067】
フォワードプライマー: 5'-CCC ACT TCC CAG GGT TTG GAC AGA G-3'(配列番号1)
リバースプライマー: 5'-CTG TAG AGC TGA GCC GAT AAC GCG -3'(配列番号2)
反応は、94℃で1分の変性、63℃で1分のアニーリング、72℃で1分の伸長反応を1サイクルとしてこれを30サイクル行った。
【0068】
(6) 移植した白血病細胞の造血系組織における組織学的解析
サイトスピン(cytospin:単離した細胞をスライドガラスに張り付ける手法)標本又は固定組織についてヘマトキシリン/エオシン(H/E)染色を行った。
(7) 蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)
組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンで包埋した。このブロックを6μmの切片にスライスした。組織切片をキシレン及び濃度勾配をつけたアルコール(100, 85, 70%)で処理してパラフィンを除去した後、切片を0.2N HClにより20分室温で処理して分解した。サンプルを2×SSCにより3分洗浄した後、80℃で30分前処理溶液(Vysis)で処理した。次に、組織をプロテアーゼとともに37℃で10分インキュベートした。プロテアーゼ処理後の組織を10%中性緩衝化ホルマリンで固定した。この切片及びヒトX染色体プローブを70%ホルムアミド処理(72℃、5分)により変性させた。サンプルをグレード別のアルコールで脱水した後、サンプルを、ヒトX染色体用プローブとともに、湿潤チャンバー中、37℃で一晩インキュベートした。サンプルを0.3% NP-40を含む2×SSCにより洗浄し、核染色のためにDAPIを用いて対比染色した。
(8) 結果
(8-1)レシピエントの造血細胞のフローサイトメトリー解析
白血病細胞(ATL)の移植後、移植されたレシピエントマウス(NOD/SCID/BMG)は4-6週以上生存した。
【0069】
各レシピエントマウスについて、末梢血(PB)、骨髄(BM)及び脾臓を用いて白血病細胞のキメリズムを調べた。ヒト由来細胞のキメリズムは、全体のマウス細胞からヒトCD45+の割合(%)として計算した。次に、系統について表面マーカーを用いて特徴付けを行った。系統マーカーの発現は、患者に直接由来する白血病細胞のもとの特徴と比較した。
【0070】
脾臓においても末梢血においても1割から5割程度の細胞が白血病であった(図3)。図3は、NOD/SCID/BMGマウスにおけるヒト由来ATL細胞の増殖を示すフローサイトメトリーの図である。図3において、左パネルは脾臓、右パネルはPBにおける白血病細胞のフローサイトメトリーである。X軸がCD45(ヒトの細胞)、Y軸がCD3(T細胞マーカー)である。脾臓及びPBのいずれの場合もヒト由来T細胞が生着しており、その割合は、脾臓では約50%、PBでは約23%であった。
【0071】
抗癌剤の評価を行うには、ヒト由来細胞が10%を占めれば可能であることから、本発明においては、脾臓及びPBのいずれにおいても、評価を行うに十分な量の患者由来細胞をマウスに生着させることができた。
【0072】
次に、T細胞の中でもCD4及びCD8のどちらが発現しているかを検討した。その結果、主にCD4が発現していた(図4、中央のパネル)。なお、図4において、上の3つのパネルは白血病患者から採取した細胞のフローサイトメトリーであり、下の3つのパネルは患者の細胞を移植したマウスの脾臓から採取した細胞のフローサイトメトリーである。CD4を発現している細胞はCD25も発現していた(図4、右側のパネル)。これはATLに特徴的な所見であり、マウス体内にて増殖したT細胞がATL細胞であることを強く示唆した結果である。
【0073】
以上より、マウス生体内において、ヒト白血病患者由来の細胞が生着し、当該患者由来のマーカーを発現していることが分かった。
【0074】
(8-2) 移植された白血病細胞のH/E染色
移植された細胞が白血病の表現型を有することを組織学的に明らかにするため、サイトスピン及びパラホルムアルデヒド固定後に、フローサイトメトリーにてもATL細胞の生着を確認した脾臓においてH/E染色を行った。
【0075】
その結果、各レシピエントにおいて、巨大核/細胞質 (N/C)比 を有し、凝縮クロマチンを伴う白血病芽球を同定した(図5)。図5は、レシピエントマウスの脾臓のH/E組織染色図であり、白血病細胞(図の中央~右上の領域)に特徴的なフラワーセル(核内のクロマチンが凝集し、花びらのように分葉する特徴を有する)が認められた。なお、このフラワーセルの形態は、末梢血にも認められた。
【0076】
(8-3) 臨床的特徴に基づく非造血組織への浸潤
非造血組織(肝臓及び肺)についても、白血病細胞による浸潤の有無を検討した。
【0077】
その結果、ATL細胞を新生児レシピエントに移植すると、ATL細胞の増殖は肝臓及び肺に認められた(図6~9)。図6及び7はレシピエントマウスにおける肝臓のH/E組織染色図であり、図7は図6の強拡大図である。また、図8及び9はレシピエントマウスにおける肺のH/E組織染色図であり、図9は図8の強拡大図である。図6及び7に示す通り、マウス肝動脈の周囲に患者由来のATL細胞が浸潤していることが分かった。また、図8及び9に示す通り、肺の血管の周囲にも患者由来のATL細胞が浸潤していた。
【0078】
この患者の入院時の所見として、肝臓及び肺にATL細胞の浸潤が認められ、さらに、肺においてATL細胞を含む顕著な胸水貯留が認められた。このときの患者の総ビリルビンは3.2mg/dl、AST(GOT)は156、ALT(GPT)は96、γGTPは104と肝酵素の異常高値が認められた。すなわち、患者由来ATL細胞は、肝臓、肺に浸潤する性質を元来有しており、その臨床的白血病性質に合致して、本発明のアッセイ系において移植したレシピエントでも肝臓、肺に腫瘍細胞の浸潤、増殖を認めた。この移植系は、ATLなど白血病、腫瘍細胞をin vivoにて評価する際に、他臓器浸潤と言う意味でも、臨床症状を反映したものと考えられ、転移巣への治療の検討や臨床的転移部位を予想することに役立つものと期待される。
【0079】
(8-4) PCRの結果
結果を図10に示す。レーンは、左から順にサイズマーカー(M)、脾臓(S)、骨髄(BM)、リンパ節(LN)、末梢血(PB)、陽性コントロール(PC)である。レシピエントマウスの脾臓と末梢血において陽性所見が認められたことから、確かにHTLV-1ウイルスゲノムが脾臓及び末梢血細胞に組み込まれていることが確認できた。
【0080】
〔実施例2〕 他の白血病患者由来の白血病細胞を用いたアッセイ
本実施例は、AML、二表現型白血病、CML、T-ALLを白血病細胞として用いて、実施例1と同様にアッセイを行ったものである。本実施例では、マウス胸腺においてヒト由来細胞の生着割合も測定した。結果を以下に示す。
【0081】
(1) AMLの結果
AML(M4)細胞を新生児レシピエントマウスに移植したときのマウス末梢血に存在する細胞のフローサイトメトリーの結果を図11に示す。図11において、左パネルはマウスから採取した白血病細胞の結果を、右パネルは患者由来のT細胞を示す。図11に示す通り、レシピエントマウスから得た白血病細胞の特徴は、患者の白血病細胞の特徴と一致していた。
【0082】
(2) 二表現型(骨髄性及びリンパ性)を有する白血病細胞の解析
Biphenotypic 白血病細胞は、CD34+、CD13+及びCD19+のマーカーを有していた(図12)。すなわち、骨髄性の特徴(CD13+)とともに、リンパ性の特徴(CD19+)も有していた。なお、CD34+は、白血病細胞を産生する前駆細胞や幹細胞性質を有する可能性が強いことを示す。レシピエントマウスにおいて、Biphenotypic白血病細胞はマウス血液細胞全体の83%を占めており、極めて高率に患者由来細胞をマウスに生着させることができた。
【0083】
(3) CMLの結果
レシピエントマウスの骨髄細胞において、患者由来CML細胞の増殖及び生着が認められた(図13、丸囲み部分)。
【0084】
(4) ALLの解析
T-ALL細胞の移植を行った結果を図14に示す。左パネルはマウスから採取した白血病細胞の形質を、右パネルは患者由来のT細胞を示す。患者から分離された白血病細胞の形質、すなわちCD3+CD4-CD8-TCRgd+という特異的表現型を、確かに、レシピエントマウス骨髄にも高率に認めることができた(図14の枠囲み部分)。また、H/E染色により、脾臓組織中にT-ALL細胞が生着していることが確認された(図15)。図15において、中心の大型の細胞がT-ALL細胞である。
【0085】
先に述べたATLもT細胞系の白血病細胞であるが、ATLはウイルス性の白血病である。従って、原因の異なる二つのT細胞系白血病において、高率な生着が実現することが分かった。
【0086】
【発明の効果】
本発明により、造血器腫瘍患者由来の病的特徴を有するモデル動物を提供することができる。このモデル動物を用いて薬物を評価することにより▲1▼新規薬剤の開発と薬剤効果/副作用の比較、さらには▲2▼当該患者にもっとも治療効果を有し副作用を軽減した最適な治療薬を選択することができるため、テーラーメード医療に有用である。
【0087】
【配列表】
JP0004441680B2_000009t.gifJP0004441680B2_000010t.gif【0088】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】新生児免疫不全マウスを用いた、白血病細胞モデル作製の概要を示す図である。
【図2】Aは、新生児免疫不全マウスを用いた、白血病患者に対するテーラーメード医療の概要を示す図である。Bは、新生児免疫不全マウスを用いた、白血病患者に対するテーラーメード医療の概要を示す図である。
【図3】 NOD/SCID/BMGマウスにおけるヒト由来ATL細胞の増殖の有無について測定したフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図4】患者及びマウスにおいてCD4及びCD8の細胞表面マーカーの発現について測定したフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図5】レシピエントマウスにおける脾臓組織のH/E染色結果を示す図である。
【図6】レシピエントマウスにおける肝臓組織のH/E染色結果を示す図である。
【図7】レシピエントマウスにおける肝臓組織のH/E染色結果を示す図である(図6の強拡大図)。
【図8】レシピエントマウスにおける肺組織のH/E染色結果を示す図である。
【図9】レシピエントマウスにおける肺組織のH/E染色結果を示す図である(図8の強拡大図)。
【図10】 PCRの結果を示す図である。
【図11】レシピエントマウス末梢血に存在するAML(M4)細胞のフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図12】二表現型(骨髄性及びリンパ性)を有する白血病細胞のフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図13】レシピエントマウスの骨髄に存在するCML細胞のフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図14】 T-ALLの移植を行ったときのレシピエントマウスの骨髄に存在するT-ALL細胞のフローサイトメトリーの結果を示す図である。
【図15】 T-ALLの移植を行ったときのレシピエントマウスの脾臓に存在するT-ALL細胞のH/E染色結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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