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明細書 :熱不可逆性逆フォトクロミック分子材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5273640号 (P5273640)
公開番号 特開2009-062344 (P2009-062344A)
登録日 平成25年5月24日(2013.5.24)
発行日 平成25年8月28日(2013.8.28)
公開日 平成21年3月26日(2009.3.26)
発明の名称または考案の名称 熱不可逆性逆フォトクロミック分子材料
国際特許分類 C07D 333/48        (2006.01)
C09K   9/02        (2006.01)
G03C   1/73        (2006.01)
C07D 495/04        (2006.01)
FI C07D 333/48 CSP
C09K 9/02 B
G03C 1/73 503
C07D 495/04 101
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2007-233672 (P2007-233672)
出願日 平成19年9月10日(2007.9.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本化学会第87春季大会(2007)講演予稿集
審査請求日 平成22年9月9日(2010.9.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】入江 正浩
【氏名】深港 豪
【氏名】田中 雅晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】磯部 洋一郎
参考文献・文献 特開平07-048366(JP,A)
特開2003-064353(JP,A)
特表平08-245579(JP,A)
特開平06-220048(JP,A)
Kingo Uchida et al.,Tetrahedron,2001年,Vol.57,p.4559-4565
Masahiro Irie et al.,The Chemical Society of Japan,1998年,Vol.71,p.985-996
K. Uchida et al.,J. Inf. Recording,1998年,Vol.24,p.101-104
Yong-Chul Jeong et al.,Chem. Commun.,2005年,p.2503-2505
Yong-Chul Jeong et al.,Tetrahedron,2007年,Vol.63(15),p.3173-3182
調査した分野 C07D 333/48
C07D 495/04
C09K 9/02
G03C 1/73
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(I)で表されるジアリールエテン化合物からなることを特徴とする逆フォトクロミック材料。
【化1】
JP0005273640B2_000004t.gif
〔式(I)中、Xは、メチル基、フェニル基またはメトキシフェニル基を表す。〕
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はフォトクロミック材料に関し、特に新規なジアリールエテン化合物からなる逆フォトクロミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会を迎え、莫大な量の情報を小型のメディアに蓄積することは重要な技術的課題となっている。光ディスクはレーザーの短波長化およびピックアップレンズの高NA化(NA:開口数)により高密度・大容量化を図ってきたが、近年のBlu-ray Disc(BD)における青紫レーザー(405nm)とNA0.85のピックレンズの出現により、面内方向での高密度化は事実上限界を迎えたと言われている。10年後にはインターネットを介したコンテンツの配信が大きく増加し、ホームユースで数百ギガバイト、ビジネスユースではテラバイト級の記録容量が必要となると考えられており、如上の限界を超えた高密度光メモリの開発が急務となっている。
【0003】
現状のBDにおける記録方式は、ヒートモード記録であり、記録層に記録レーザー光を照射し、発生した熱により記録層を変形させ読み出し光の反射率を変化させ、その差を記録情報として読み出している。このヒートモード記録では、熱拡散や物質移動を回避することができないため、これ以上の記録密度は望めないと考えられている。これに変わる方式として、光エネルギーを直接記録に用いるフォトンモード記録が検討されており、この記録方式に用いられる材料として、光に応答してその物性を可逆的に変化させるフォトクロミック材料が有望視されている。
【0004】
フォトクロミック材料とは、光の作用により色の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子または分子集合体を含む材料をいう。フォトクロミック材料は、自然界にも多く存在しているが、各種の光機能性材料をめざして人工的にも数多くのフォトクロミック材料(フォトクロミック分子材料)が開発されてきている。
【0005】
フォトクロミック材料は大きく分けて、正のフォトクロミズムと呼ばれる、無色から光の作用による構造変化に伴い着色する現象を示すものと、逆に、光作用により着色体から無色体へと変化する負のフォトクロミズムを示すもの(逆フォトクロミック材料)とがあるが、後者の例は稀有である。
【0006】
これまでに開発されてきたフォトクロミック材料の中で、ジアリールエテンと呼ばれる分子群がある。このジアリールエテンは、中央にエテンの環があり、その両側にアリール基が結合した構造をもち、数フォトンで応答する高感度性、ピコ秒の高速応答性、半永久的な保存耐久性を有し、光メモリや光加工に適用可能な分子材料として注目されている。これまでに知られているジアリールエテンは無色体から着色する正のフォトクロミズムを示す〔例えば、M. Irie et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 71 (1998) 985(非特許文献1)〕。
【0007】
逆フォトクロミズムを示す分子(逆フォトクロミック材料)については、日本のShimizuらによって報告されたスピロベンゾピラン誘導体〔I. Shimizu et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 42, 1730 (1969)(非特許文献2)〕や、カナダのMitchellらにより研究されているジメチルジヒドロピレン誘導体〔R. H. Mitchell et
al., J. Am. Chem. Soc., 125, 2974 (2003)(非特許文献3)〕など数例の報告に限られており、関連特許もそれらの分子で小数しか出願されていない〔例えば、特開平6-263767号公報(特許文献1);特開平7-25862号公報(特許文献2)〕。しかも、それらは全て熱戻りを起こす(光照射により着色体から生成した無色体が熱的に不安定的であり、暗所においても自然に元の状態に戻ってしまう)分子であるため光デバイス材料としては使用できず、また、繰り返し耐久性が低いなどの課題も残されている。
【0008】
ジアリールエテンは優れたフォトクロミック材料であるが、これまでに知られた一般的なジアリールエテンは正のフォトクロミズムを示し、初期状態で無色体であるため、BDの光源である青紫色レーザーに対して感受性を持たない。このジアリールエテンを記録材料として使用するには、記録に紫外光源が必要となるが、紫外光は光学素子に吸収されてしまうため、記録光として使用できないという問題がある。複雑な化学修飾を行い青紫色レーザーに感受性を持たせたり、ジアリールエテンの熱安定性を利用して着色体を単離し、暗所下でデバイスを作製することも可能であるが、煩雑なプロセスを必要とするため実用化の上で理想的でない。
【0009】
また仮に記録が行えたとしても、記録状態が500~800nmの波長域に新たな吸収をもつ着色体の状態となるため、記録に用いた波長よりも長波長の光を読み出しに用いなくてはならず、記録の分解能よりも読み出しの分解能が落ちる問題点や高いSN比が得られないといった問題点もあり、現状のシステムでは実用レベルでの有効な利用法が見出されていない。

【特許文献1】特開平6-263767号公報
【特許文献2】特開平7-25862号公報
【非特許文献1】M. Irie et al., Bull. Chem. Soc.Jpn., 71 (1998) 985
【非特許文献2】I. Shimizu etal., Bull. Chem. Soc. Jpn., 42, 1730 (1969)
【非特許文献3】R. H.Mitchell et al., J. Am. Chem. Soc., 125, 2974 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、初期状態として着色しており、青紫色レーザーのような光源に対しても感受性があり、光の作用による可逆的な構造変化(色変化)を呈し、熱安定性等においても優れた新しいタイプのフォトクロミック材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ジアリールエテンを基本骨格とし負のフォトクロミズムを示す新しい化合物(分子)の合成に成功し、本発明を導き出した。
かくして、本発明に従えば、下記の式(I)で表されるジアリールエテン化合物、および該ジアリールエテン化合物からなる逆フォトクロミック材料が提供される。
【0012】
【化1】
JP0005273640B2_000002t.gif
〔式(I)中、Xは、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシル基、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシル基で置換されていてもよい縮合型炭化水素基を表す。〕

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に従い負のフォトクロミズムを示す式(I)で表されるジアリールエテン化合物において、Xは炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシル基、または縮合型炭化水素基を表し、縮合型炭化水素基は炭素数1~6のアルキル基またはアルコキシル基で置換されていてもよい。好ましい縮合型炭化水素基の例として、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などが挙げられる。かくして、式(I)のXとして特に好ましい例として、メチル基、フェニル基、メトキシフェニル基があるが、これらに限られるものではない。
【0014】
正のフォトクロミズムを示すこれまでに知られたジアリールエテン化合物に比べ、負のフォトクロミズムを示す分子(逆フォトクロミック分子材料)となる本発明のジアリールエテン化合物の構造上の特徴は、式(I)から理解されるように、エテン部位とアリール部位の結合位置が3位ではなく2位であり、且つスルホン化していることである。
【0015】
なお、スルホン型ジアリールエテン化合物としては、下記の式(II)のものが知られているが〔E.
Kim et al., Chem. Commun, 2005, 2503(非特許文献4)〕、この化合物のようにエテン部位とアリール部位の結合位置が3位のものは本発明の化合物のような負のフォトクロミズムを示さない。
<nplcit num="4"><text>E. Kim etal., Chem. Commun, 2005, 2503</text></nplcit>
【0016】
【化2】
JP0005273640B2_000003t.gif

【0017】
上述の式(I)で表される本発明のジアリールエテン化合物は、一般的なジアリールエテン化合物とは異なり、通常の環境下(初期状態)で安定な開環構造(open-ring)が着色しており、可視領域の光を吸収すると中央のヘキサトリエン部が閉じて無色な閉環構造(closed-ring)へと変化し、紫外光を照射すると元の着色体に戻る逆フォトクロミズムを示す(図1参照)。式(I)の本発明のジアリールエテン化合物は初期状態で一般に黄色を呈する。本発明に従う逆フォトクロミック材料は、ジアリールエテン構造を基本骨格としているため、高い熱安定性を有し熱戻りを起こすこともなく、優れた繰り返し耐久性を有する。
【0018】
式(I)の本発明のジアリールエテン化合物は既知の反応を工夫することによって比較的簡単に合成することができる。図2には、本発明のジアリールエテン化合物の合成スキームを例示している。
以下、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明はそれらの実施例によって制限されるものではない。
【実施例1】
【0019】
ジアリールエテン化合物の合成
<4-Methyl-2-phenylthiophene(化合物4a)>
N2雰囲気下、3-メチルチオフェン3.0g(30.6mmol)を無水エーテル40mLに溶解させ、0℃で1.6Nのn-ブチルリチウムヘキサン溶液19mL(30.6mmol)を徐々に加えた。溶液を1時間還流させ、再び0℃に冷却した後、ホウ酸トリメチル4.76g(45.9mmol)を徐々に加えた。溶液を室温で1時間攪拌させ、20w/w% Na2CO3水溶液32mL、ヨードベンゼン6.20g(30.6mmol)、THF 50mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.44g(0.38mmol)を加え、さらに5時間還流した。溶液を室温まで下げ、NH4Cl水溶液で中和後エーテルで抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン)により精製し、目的物を5.04g(収率:89 %)得た。
【0020】
<4-Methyl-2-(p-methoxyphenyl)thiophene(化合物4b)>
化合物4aと同様の操作で、3-メチルチオフェン3.0g(30.6mmol)と4-ヨードアニソール7.16g(30.6mmol)を使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/クロロホルム=7/3)により精製し、目的物を1.55g(収率:25%)得た。
【0021】
<1,2-Bis(3-methyl-5-phenylthiophen-2-yl)perfluorocyclopentene(化合物(5a)>
N2雰囲気下、化合物4a 5.04g(27.1mmol)を無水エーテル70mLに溶解させ、0℃で1.6Nのn-ブチルリチウムヘキサン溶液16.9mL(27.1mmol)を徐々に加えた。溶液を1時間還流させ、再び0℃に冷却した後、ペルフルオロシクロペンテン2.87g(13.55mmol)を徐々に加え、この温度で1時間攪拌した。室温まで戻して反応溶液に水を加え反応を停止し、NH4Cl水溶液で中和後エーテルで抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン)により精製し、目的物を4.93g(収率:30%)得た。
【0022】
<1,2-Bis[3-methyl-5-(p-methoxyphenyl)thiophen-2-yl]perfluorocyclopentene(化合物5b)>
化合物2と同様の操作で、化合物4b 1.55g(7.59mmol)を使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/クロロホルム=7/3)により精製し、目的物を520mg(収率:25%)得た。
【0023】
<2,4-Dimethylthiophene(化合物6)>
N2雰囲気下、3-メチルチオフェン39g(0.40mol)を無水エーテル550mLに溶解させ、テトラメチルエチレンジアミン67mL(0.41mol)を添加後、0℃で1.6Nのn-ブチルリチウムヘキサン溶液250mL(0.41mol)を徐々に加えた。溶液を1時間攪拌し、ヨードメタン27mL(0.41mol)を徐々に加え、室温に戻し終夜攪拌した。反応溶液に水を加え反応を停止し、HCl水溶液で中和後エーテルで抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、減圧蒸留(67℃/70mmHg)により2,4-ジメチルチオフェン(6)と2,3-ジメチルチオフェンの混合物(4:1)を25.9g(収率:58%)で得た。
【0024】
<1,2-Bis(3,5-dimethylthiophen-2-yl)perfluorocyclopentene(化合物7)>
N2雰囲気下、化合物6 7.7g(69mmol)を無水エーテル100mLに溶解させ、0℃で1.6Nのn-ブチルリチウムヘキサン溶液45mL(72mmol)を徐々に加えた。溶液を1時間還流させ、再び0℃に冷却した後、ペルフルオロシクロペンテン7.21g(34mmol)を徐々に加え、この温度で1時間攪拌した。室温まで戻して反応溶液に水を加え反応を停止し、NH4Cl水溶液で中和後エーテルで抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン)により精製し、目的物を6.74g(収率:50%)得た。
【0025】
<1,2-Bis(3-methyl-5-phenylthiophen-1,1-dioxide-2-yl)perfluorocyclopentene(化合物1)>
化合物5a 100mg(0.19mmol)をCH2Cl2 5mLに溶解し、MCPBA 300mg(1.15mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。反応溶液にNaHCO3水溶液を加え、CH2Cl2で抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し、目的物を93mg(収率:84%)得た。
融点:200-202℃;
1H NMR(400MHz, CDCl3):δ=2.26(s,
6H)、6.78(s, 2H)、7.42-7.44(m,
6H)、7.68-7.70(m, 4H);
MS(FAB+):m/z=585 [M+H]+
Anal. Calcd. for C27H18F6O4S2:C, 55.42;H, 3.07;Found:C, 55.48;H, 3.10.
【0026】
<1,2-Bis[3-methyl-5-(p-methoxyphenyl)thiophen-1,1-dioxide-2-yl]perfluorocyclopentene(化合物2)>
化合物5b 200mg(0.34mmol)をCH2Cl2 8mLに溶解し、MCPBA 540mg(2.04mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。反応溶液にNaHCO3水溶液を加え、CH2Cl2で抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、目的物を37mg(収率:17%)得た。
1H NMR(400MHz, CDCl3):δ=2.24(s,
6H)、3.83(s, 6H)、6.63(s, 2H)、6.93-6.96(m, 4H)、7.63-7.66(m, 4H);
MS(FAB+):m/z=645 [M+H]+
Anal. Calcd. for C29H22F6O6S2:C, 54.03;H, 3.44;Found:C, 54.08;H, 3.53.
【0027】
<1,2-Bis)3,5-dimethylthiophen-1,1-dioxide-2-yl)perfluorocyclopentene(化合物3)>
化合物7 100mg(0.25mmol)をCH2Cl2 6mLに溶解し、MCPBA 400mg(1.51mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。反応溶液にNaHCO3水溶液を加え、CH2Cl2で抽出し、集めた有機相をMgSO4で乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、目的物を91mg(収率:79%)得た。
融点:197-199℃;
1H NMR(400MHz, CDCl3):δ=2.13(s,
6H)、2.14(d, 6H, J = 1.6 Hz)、6.29(q, 2H, J = 1.6 Hz);
MS(FAB+):m/z=461 [M+H]+
Anal. Calcd. for C17H14F6O4S2:C, 44.35;H, 3.06;Found:C, 44.35;H, 2.95.
【実施例2】
【0028】
フォトクロミック特性確認試験
実施例1で合成したジアリールエテン化合物1(黄色結晶)を1,4-ジオキサンに溶解した。得られた1,4-ジオキサン溶液にフィルターをかけた水銀ランプにより可視光(>400nm)を照射したところ、黄色の着色体が消え無色体となった。これらの着色体および無色体の紫外-可視吸収スペクトルを図3に示す。着色体は356nm、無色体は260nmにおいて吸収ピークが認められた。1,4-ジオキサン溶液を攪拌しながら超高圧水銀ランプを用いて紫外光(313nm)を照射すると、再び黄色の着色体が現れた。この可視光/紫外光の交互照射を100回繰り返しても再現性よく無色体/着色体が出現し、紫外-可視吸収スペクトルに変化は認められなかった。また、着色体に可視光を照射して得られた無色体を暗色に1ヶ月放置しても着色体に変化することは認められなかった。
【0029】
着色体および無色体を単離して13C NMR測定した結果を図4に示す。開環体(着色体)ではsp2である炭素が閉環体(無色体)ではsp3となるため、開環体では低磁場に現れるシグナルが、閉環体では高磁場に現れている。また、X線解析によっても着色体が開環構造を有することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のジアリールエテン化合物は、初期状態で黄色を呈しており、BDの記録光源である青紫色レーザー光に感受性を持ち、その光を吸収して無色の状態になることができる。この特性を利用し本発明のジアリールエテン化合物を記録材料として用いれば、青紫色レーザー光を記録光と読み出し光の両方に使用でき、記録の分解能のまま読み出しが行えるだけでなく、高いSN比での読み出しも期待できる。このように、本発明のジアリールエテン化合物は、現状のシステムにそのまま適用できるフォトクロミック材料として、光メモリや光加工等の分野において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に従うジアリールエテン化合物が逆フォトクロミック材料として機能する態様を模式的に示す。
【図2】本発明に従うジアリールエテン化合物の合成スキームを例示する。
【図3】本発明に従うジアリールエテン化合物の1例の紫外-可視吸収スペクトルを示す。
【図4】本発明に従うジアリールエテン化合物の1例の13C NMRスペクトルを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3