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明細書 :アンテナ、アンテナ設計装置、アンテナ設計方法及びアンテナを生産する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4811807号 (P4811807)
公開番号 特開2009-124285 (P2009-124285A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成21年6月4日(2009.6.4)
発明の名称または考案の名称 アンテナ、アンテナ設計装置、アンテナ設計方法及びアンテナを生産する方法
国際特許分類 H01Q  13/10        (2006.01)
H01Q   1/38        (2006.01)
FI H01Q 13/10
H01Q 1/38
請求項の数または発明の数 4
全頁数 22
出願番号 特願2007-293958 (P2007-293958)
出願日 平成19年11月13日(2007.11.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人電子情報通信学会、電子情報通信学会2007年ソサイエティ大会 講演論文集、通信講演論文集1 第95ページ、平成19年8月29日発行
審査請求日 平成22年11月10日(2010.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】吉田 啓二
【氏名】金谷 晴一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100116573、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 幸司
審査官 【審査官】佐藤 当秀
参考文献・文献 特開2000-068731(JP,A)
特開2007-142796(JP,A)
再公表特許第2006/126320(JP,A1)
調査した分野 H01Q 1/38
H01Q 7/00
H01Q 13/10
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に形成されたパターンによるアンテナの共振点を調整するアンテナ設計方法であって、
前記アンテナは、
スロット・アンテナを利用し、
外周上に給電部を有するものであり、
第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、
前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、
前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更により前記第1共振点の共振周波数を調整し、
前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数を調整し、
前記アンテナスロット幅の変更により前記第2共振点のインピーダンスを調整し、
前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更により前記第3共振点の共振周波数を調整し、
アンテナスロット長の変更により前記第3共振点のインピーダンスを調整するステップを含むアンテナ設計方法。
【請求項2】
基板上にパターンを形成してアンテナを生産する方法であって、
前記アンテナは、
スロット・アンテナを利用し、
外周上に給電部を有するものであり、
第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、
前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、
前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更により前記第1共振点の共振周波数を調整し、
前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数を調整し、
前記アンテナスロット幅の変更により前記第2共振点のインピーダンスを調整し、
前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更により前記第3共振点の共振周波数を調整し、
アンテナスロット長の変更により前記第3共振点のインピーダンスを調整して、前記アンテナの外周の形状を決定する形状決定ステップと、
前記形状決定ステップにおいて決定された前記アンテナの外周の形状に基づいてパターンを基板上に形成する形成ステップ、を含むアンテナを生産する方法。
【請求項3】
アンテナの共振点を調整するアンテナ設計装置であって、
前記アンテナは、
スロット・アンテナを利用し、
外周上に給電部を有するものであり、
第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、
前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、
前記給電部に向かっての外周の幅が異なる部分の形成による前記第1共振点の共振周波数及びインピーダンスの少なくとも一つの調整、
前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更による前記第1共振点の共振周波数の調整、
前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数の調整、
前記アンテナスロット幅の変更による前記第2共振点のインピーダンスの調整、
前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更による前記第3共振点の共振周波数の調整、及び、
アンテナスロット長の変更による前記第3共振点のインピーダンスの調整、
を行う形状変更手段を備えるアンテナ設計装置。
【請求項4】
スロット・アンテナを利用するアンテナであって、
3つの共振点である第1共振点、第2共振点及び第3共振点があり、
外周上に給電部を有し、前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部からスロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、
前記給電部に向かっての外周の幅が異なる部分の形成による前記第1共振点の共振周波数及びインピーダンスの少なくとも一つの調整、
前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更による前記第1共振点の共振周波数の調整、
前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数の調整、
前記アンテナスロット幅の変更による前記第2共振点のインピーダンスの調整、
前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更による前記第3共振点の共振周波数の調整、及び、
アンテナスロット長の変更による前記第3共振点のインピーダンスの調整
行われたアンテナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、アンテナ、アンテナ設計装置、アンテナ設計方法及びアンテナを生産する方法に関し、特に外周上に給電部を有するアンテナ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な移動体通信の発展と通信情報量の増大により、高速で高性能な通信品質が求められ、マイクロ波デバイスのさらなる小型化、低消費電力化が求められる。
【0003】
最近、無線PANなどにおいて、超広帯域(Ultra Wide Band:UWB)が注目を集めている(非特許文献1参照)。UWBは、最大数GHzにわたる非常に広い帯域に、弱い電波で、ごく短い時間のパルス状の信号を送ることで、短距離内での高速な無線データ通信(例えば、ホームサーバー、無線LAN、無線PANなど)が可能となる。UWBは、FFC(Federal Communication Commission)では、比帯域幅が中心周波数の20%以上で、帯域幅が500MHz以上と定義されている。
【0004】
また、発明者らは、従来、微小アンテナの研究を行ってきた者である(非特許文献2など参照)。
【0005】

【非特許文献1】Z.N.Chen,外4名著,“Consideration for Source Pulses and Antennas in UWB Ratio System,”IEEE Trans.Antennas Propagat.,vol.52,no.7,pp.1739-1748,July 2004.
【非特許文献2】k.Yoshida、外4名著,“Superconducting slot antenna with broadband impedance matching circuit”,IEEE Trans.Appl.Supercond.,vol.11,pp.103-106,March 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
UWBは、1ナノ秒以下の極短パルス波を利用することにより、マルチパスに強く、超低消費電力、位置特定が可能という特徴がある。また、UWBは、短距離無線ながら100Mbps以上の高速通信が可能であり、UWBの送信電波の出力はPCから出るノイズ程度であり、電波干渉の問題が少ないという特徴がある。
【0007】
しかしながら、UWBでの通信を可能にするためには、パワーが低く、かつ、例えば7~10GHzのような広い周波数帯域内において、利得や指向性が一定である広帯域なアンテナが必要となる。このような広帯域なアンテナは、UWBに限らず、他の通信でも必要となるものである。
【0008】
そこで、本願発明は、広帯域に適した新たな設計によるアンテナ、アンテナ設計装置、アンテナ設計方法及びアンテナを生産する方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、基板上に形成されたパターンによるアンテナの共振点を調整するアンテナ設計方法であって、前記アンテナは、スロット・アンテナを利用し、外周上に給電部を有するものであり、第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更により前記第1共振点の共振周波数を調整し、前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数を調整し、前記アンテナスロット幅の変更により前記第2共振点のインピーダンスを調整し、前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更により前記第3共振点の共振周波数を調整し、アンテナスロット長の変更により前記第3共振点のインピーダンスを調整するステップを含むものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、基板上にパターンを形成してアンテナを生産する方法であって、前記アンテナは、スロット・アンテナを利用し、外周上に給電部を有するものであり、第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更により前記第1共振点の共振周波数を調整し、前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数を調整し、前記アンテナスロット幅の変更により前記第2共振点のインピーダンスを調整し、前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更により前記第3共振点の共振周波数を調整し、アンテナスロット長の変更により前記第3共振点のインピーダンスを調整して、前記アンテナの外周の形状を決定する形状決定ステップと、前記形状決定ステップにおいて決定された前記アンテナの外周の形状に基づいてパターンを基板上に形成する形成ステップ、を含むものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、アンテナの共振点を調整するアンテナ設計装置であって、前記アンテナは、スロット・アンテナを利用し、外周上に給電部を有するものであり、第1共振点、第2共振点及び第3共振点という3つの共振点が存在して、前記各共振点の共振周波数及びインピーダンスが調整されるものであり、前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部から前記スロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、前記給電部に向かっての外周の幅が異なる部分の形成による前記第1共振点の共振周波数及びインピーダンスの少なくとも一つの調整、前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更による前記第1共振点の共振周波数の調整、前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数の調整、前記アンテナスロット幅の変更による前記第2共振点のインピーダンスの調整、前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更による前記第3共振点の共振周波数の調整、及び、アンテナスロット長の変更による前記第3共振点のインピーダンスの調整、を行う形状変更手段を備えるものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、スロット・アンテナを利用するアンテナであって、3つの共振点である第1共振点、第2共振点及び第3共振点があり、外周上に給電部を有し、前記給電部において前記外周に対して垂直な方向のサイズには、前記給電部からスロットまでの長さ、アンテナスロット幅及び前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さが含まれ、前記給電部に向かっての外周の幅が異なる部分の形成による前記第1共振点の共振周波数及びインピーダンスの少なくとも一つの調整、前記給電部に向かっての外周の最大幅の変更による前記第1共振点の共振周波数の調整、前記給電部から前記スロットまでの長さの変更による前記第2共振点の共振周波数の調整、前記アンテナスロット幅の変更による前記第2共振点のインピーダンスの調整、前記スロットから前記給電部とは異なる側の外周までの長さの変更による前記第3共振点の共振周波数の調整、及び、アンテナスロット長の変更による前記第3共振点のインピーダンスの調整、が行われたものである。
【0016】
なお、本願発明は、裏面にコンダクターを形成するものであってもよい。このようなコンダクターを形成してグランドをおいて設計することにより、片面指向性を得ることができる。UWBアンテナなどへの応用において、このような片面指向性は極めて有効である。
【0017】
また、本願発明を、アンテナ設計装置又はアンテナ設計方法により設計されたアンテナとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本願の各請求項に係る発明によれば、外周の形状の変化により共振点の調整が可能となる。このような共振点の調整により、広帯域に適したアンテナの設計が可能となる。
【0019】
また、本願発明によれば、複数の共振点をほぼ独立に調整可能となる。さらに、調整後の共振点における偏波面は揃っている。そのため、このような複数の共振点の調整により、1個の共振だけではQ値が大きいため不可能であったような広帯域化設計が、複数の共振を利用して帯域を広げることにより可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、スロット・ダイポール・アンテナに関して、本願発明の実施の形態の一例について説明する。
【0021】
まず、図1~図3を参照して、標準的なスロット・ダイポール・アンテナについて説明する。
【0022】
図1は、標準的なスロット・ダイポール・アンテナ101のレイアウトを示す図である。図1(a)において、スロット・ダイポール・アンテナ101は、一波長スロット・アンテナであり、コプレーナ(CPW)線路により信号が供給される、フィード線のあるCPW-fedスロット・アンテナである。このアンテナは、裏面グランド構造を備えるものである。スロット・ダイポール・アンテナ101は、基板上に銅でパターンが形成されているとする。内部にはスロット103が形成されており、給電部105からスロット103まではコプレーナ線路で接続されている。アンテナのサイズは、横Xが25mmで、縦Yが15mmである。アンテナスロット長Lは9.5mm、アンテナスロット幅Wは1.0mm、フィード線長Fは8.5mmである。
【0023】
図1(b)は、スロット・ダイポール・アンテナ101の断面図である。基板111は、厚さ1.6mm、誘電率4.25、誘電正接0.017のFR4基板である。厚さ18umの銅箔上にパターンを形成している。また、片面指向性にするため、裏面にコンダクターを形成し、浮いたグランドをおいて設計されている。
【0024】
図2は、図1のスロット・ダイポール・アンテナ101について、背面にコンダクターがある場合(a)とない場合(b)の放射パターンを示す図である。図2において、X軸はアンテナの表面の横を基準とし、Y軸はアンテナの表面の縦を基準とし、Z軸は、XY平面に垂直で背面から表面への向きとし、XY平面を原点とするものである。図2(a)によれば、主にZ軸の正の部分に放射パターンが存在する。それに対し、図2(b)によれば、Z軸の正にも負にも、いわば8の字となるように、放射パターンが存在する。よって、図2により、背面にコンダクターがある場合(a)には片面指向性があることが分かる。
【0025】
図3は、図1のスロット・ダイポール・アンテナ101の入力インピーダンス(Zin=Rin+jXin)(a)とリターンロス(b)を示す図である。図3(a)において、入力インピーダンスの実部は実線で、虚部は点線で示されている。図3(a)において、入力インピーダンスの実部について、共振点は、約7.5GHz、約8.6GHz及び約10.5GHzにあり、以下、それぞれ、共振点A、共振点B及び共振点Cとする。共振点Bの入力インピーダンスの実部は、一般的なアンプの入力インピーダンスである50Ωにマッチしている。しかしながら、共振点A及び共振点Cの入力インピーダンスの実部は50Ωにマッチしていない。また、図3(b)にあるように、8.6GHz、10.5GHzといった数点においてのみリターンロスが減少し、他の部分では、例えば10dBダウンといったリターンロスは得られていない。そのため、このアンテナは、例えばUWBのハイ・バンド(7.25~10.25GHz)における周波数帯域を満足するものではない。
【0026】
以下では、図4~図13を参照して、複数の共振点A、B及びCを調整して帯域を広げ、7.25~10.25GHzという広帯域の周波数帯の受信に必要な特性を満たすUWBアンテナの設計について説明する。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態に係るアンテナ生産システム1の概略ブロック図である。
【0028】
アンテナ生産システム1には、基板上に形成されるパターンを決定する設計装置3と、設計装置3において決定されたパターンに基づいて基板上にパターンを形成するパターン形成部5が含まれる。パターン形成部5により、基板上に形成されたパターンによるアンテナが生産される。
【0029】
設計装置3は、図3の共振点Aを調整する共振点A調整部7と、図3の共振点Cを調整する共振点C調整部9と、図3の共振点Bを調整する共振点B調整部11を備える。
【0030】
続いて、図4の共振点A調整部7、共振点C調整部9及び共振点B調整部11の動作について、それぞれ、図5、図6及び図7を参照して説明する。
【0031】
図5は、図3の共振点Aの調整とその場合のシミュレーションによる7.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【0032】
図4の共振点A調整部7は、アンテナの幅(給電部に向かっての左端から右端までの長さ)に基づいて共振点Aの共振周波数及びインピーダンスを制御する。図5(a)は、図4の共振点A調整部7による調整後のUWBアンテナを示す図である。図4の共振点A調整部7は、給電部に向かっての外周の最大幅Xを29.0mmと変更することにより共振点Aの共振周波数を7.5GHzから7.75GHzに調整する。
【0033】
また、図4の共振点A調整部7は、図1(a)に示される標準的なスロット・ダイポール・アンテナの給電部105側の両端に一辺がX1の正方形のスロットを形成して給電部に向かっての外周の幅が異なる部分を形成する。図4の共振点A調整部7は、このサイズX1を5.0mmとすることにより、共振点Aの共振周波数と入力インピーダンスの実部を変動させ、入力インピーダンスの実部を50Ωへ調整する。
【0034】
このように、図4の共振点A調整部7は、共振点Aについて、アンテナの横のサイズXを調節することで共振周波数を制御し、正方形のスロットのサイズX1を調節することでインピーダンスを制御する。図4の共振点A調整部7は、アンテナの外周(物に沿った外側の一周り)の形状を変更して共振点Aの共振周波数及びインピーダンスを調整するのである。
【0035】
また、図5(b)は電場の分布を示す。この場合の偏波面は、スロットの向きである。
【0036】
図6は、図3の共振点Cの調整とその場合のシミュレーションによる9.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【0037】
図4の共振点C調整部9は、共振点Cについて、スロットから給電部とは異なる側の外周までの長さY1を調節することで共振周波数を制御し、アンテナスロット長Lを調節することでインピーダンスを制御する。図6(a)は、図4の共振点C調整部9による調整後のUWBアンテナを示す図である。
【0038】
図4の共振点C調整部9は、スロットから給電部とは異なる側の外周までの長さY1を7.0mmと変更することにより共振点Cの共振周波数を10.5GHzから9.75GHzへ調整する。
【0039】
また、図4の共振点B調整部9は、アンテナスロット長Lを11.5mmへ変更することにより共振点Cの入力インピーダンスの実部を50Ωへ調整する。
【0040】
Y1とLの調整によっては、共振点Aの共振周波数も入力インピーダンスもほとんど移動しない。
【0041】
また、図6(b)は電場の分布を示す。この場合の偏波面も、図5(b)と同様にスロットの向きである。
【0042】
図7は、図3の共振点Bの調整とその場合のシミュレーションによる8.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【0043】
図4の共振点B調整部11は、共振点Bについて、フィード線長Fを調節することで共振周波数を制御し、アンテナスロット幅Wを調節することでインピーダンスを制御する。図7(a)は、図4の共振点B調整部11による調整後のUWBアンテナを示す図である。
【0044】
図4の共振点C調整部11は、フィード線長Fを8.0mmと変更することにより共振点Bの共振周波数を8.75GHzへ調整する。
【0045】
また、図4の共振点C調整部11は、アンテナスロット幅Wを1.0mmへ変更することにより共振点Bの入力インピーダンスの実部を50Ωへ調整する。
【0046】
FとWの調整によっては、共振点Aと共振点Cの共振周波数も入力インピーダンスもほとんど移動しない。
【0047】
図7(b)は電場の分布を示す。この場合の偏波面も、図5(b)及び図6(b)と同様にスロットの向きである。
【0048】
図8は、図5~図7に示される調整がなされた後のスロット・ダイポール・アンテナの(a)入力インピーダンスと(b)リターンロスを示す図である。図8(a)において、入力インピーダンスの実部は実線で示されており、虚部は点線で示されている。7.5~10.5GHzで、入力インピーダンスの実部は50Ω前後の値となり、虚部は0Ω前後の値となっている。これは、アンプの入力インピーダンスとほぼ同じである。また、図8(b)に示されるように、十分な範囲で10dB帯域を拡大することができている。
【0049】
図9は、電場Eφのφ=0°とφ=90°成分のシミュレーションによる周波数依存性を示す図である。図9(a)は、X軸、Y軸、Z軸、角度φ、角度θ、Eφ=0°、Eφ=90°の向きを示す。図9(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、7.25GHz、8.25GHz及び9.25GHzにおける電場Eφのφ=0°とφ=90°成分のシミュレーション結果を示す。図9(b)、(c)及び(d)において、外側に付された角度は角度θであり、線21、23及び25は電場Eφ=0°の場合であり、線27、29及び31は電場Eφ=90°の場合である。各周波数において、Eφ=0°の値はEφ=90°よりも大きい。そのため、偏波面が変化していない。
【0050】
図10は、各周波数におけるUWBアンテナの放射パターンを示す図である。図10(a)は、X軸、Y軸、Z軸、角度φ、角度θの向きを示す。図10(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、7.25GHz、8.25GHz及び9.25GHzにおける放射パターンを示す。
【0051】
図10(b)、(c)及び(d)において、外側に付された角度は角度θであり、線33、35及び37はφ=0°の場合であり、線39、41及び43はφ=90°の場合である。上方(θが-90°から90°までの範囲にある場合)の指向性は、下方(θが-180°から-90°まで、又は、90°から180°までの範囲にある場合)の指向性よりも大きい。
【0052】
図11は、θ=0°(上方)での最大アンテナ利得と実効最大利得の周波数依存性を示す図である。コンダクターと誘電損により、UWBハイ・バンドにおいて放射効率は70%、もしくはそれ以上となる。また、このUWBアンテナは、UWBハイ・バンドにおいて、実効利得を5dB以上とすることがわかる。
【0053】
以上より、3つの共振点を利用して帯域を拡大させ、共にマッチングをさせることができる。さらに、これらの共振は偏波面が揃っている。そのため、3個の共振を制御することにより帯域を拡大して、例えば7.5~10.5GHzといった広帯域の周波数帯でインピーダンス・マッチングが可能となる。また、10dB帯域を確保することが可能となる。さらに、帯域内でアンテナの実効利得は5dB以上と安定した特性を得ることができる。
【0054】
続いて、実際に基板加工機を利用して作製したアンテナの実験結果について説明する。アンテナ全体のサイズは、縦16mm、横29mmである。このアンテナには、特性インピーダンスが50ΩのMMCXコネクタを取り付け、ネットワークアナライザでSパラメータを測定して比較している。ただし、コネクタを取り付けるために、テーパー状に広げている。指向性は裏面グランドをおくことにより、下方向への放射を抑制し、上方向だけに放射させることができた。
【0055】
図12は、実際に作製したUWBアンテナの入力インピーダンスの実験結果を示す図である。共振点B及びCの周波数はほとんど変わらないが、共振点Aは周波数の高い方にずれている。
【0056】
図13は、UWBアンテナのリターンロスについて、実験結果とシミュレーション結果の比較を示す図である。実験結果は実線で、シミュレーション結果は点線で示されている。実験結果では、シミュレーション結果に比べて10dB帯域が縮小しているが、3個の共振を確認することができ、これらはほとんど50Ωにマッチしている。同様に、低周波数領域において、実験結果の入力インピーダンスの実部は、シミュレーション結果のものよりも大きい。
【0057】
図14は、実際に作製したUWBアンテナの実効最大利得とSパラメータを示す図である。線45はSパラメータを示し、線47は実効利得を示す。実効利得は、帯域外で低下している。
【0058】
実験結果は、共振点Aのずれや、作製過程におけるスロット・アンテナのエッジ部の製造誤差、FR4基板の誘電率誤差、MMCXコネクタとアンテナの接続の残留抵抗などの影響があるものと考えられる。しかしながら、設計結果と実験結果は、ほぼ同様な特性となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】標準的なスロット・ダイポール・アンテナ101のレイアウトを示す図である。
【図2】図1のスロット・ダイポール・アンテナ101について、背面にコンダクターがある場合(a)とない場合(b)の放射パターンを示す図である。
【図3】図1のスロット・ダイポール・アンテナ101の入力インピーダンス(a)とリターンロス(b)を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るアンテナ生産システム1の概略ブロック図である。
【図5】図3の共振点Aの調整とその場合のシミュレーションによる7.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【図6】図3の共振点Cの調整とその場合のシミュレーションによる9.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【図7】図3の共振点Bの調整とその場合のシミュレーションによる8.75GHzでの電場の分布を示す図である。
【図8】図5~図7に示される調整がなされた後のスロット・ダイポール・アンテナの(a)入力インピーダンスと(b)リターンロスを示す図である。
【図9】電場Eφのφ=0°とφ=90°成分のシミュレーションによる周波数依存性を示す図である。
【図10】各周波数におけるUWBアンテナの放射パターンを示す図である。
【図11】θ=0°(上方)での最大アンテナ利得と実効最大利得の周波数依存性を示す図である。
【図12】実際に作製したUWBアンテナの入力インピーダンスの実験結果を示す図である。
【図13】UWBアンテナのリターンロスについて、実験結果とシミュレーション結果の比較を示す図である。
【図14】実際に作製したUWBアンテナの実効利得とSパラメータを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 アンテナ生成システム、3 設計装置、5 パターン形成部、7 共振点A調整部、9 共振点C調整部、11 共振点B調整部
図面
【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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