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明細書 :組換え酵素を用いた遺伝子増幅方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4883532号 (P4883532)
公開番号 特開2009-189318 (P2009-189318A)
登録日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
公開日 平成21年8月27日(2009.8.27)
発明の名称または考案の名称 組換え酵素を用いた遺伝子増幅方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/16        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/16 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 30
出願番号 特願2008-034640 (P2008-034640)
出願日 平成20年2月15日(2008.2.15)
審査請求日 平成23年2月15日(2011.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】上平 正道
【氏名】河邉 佳典
【氏名】竹之内 雄太
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100113309、【弁理士】、【氏名又は名称】野▲崎▼ 久子
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 The Plant Journal,1995年,Vol. 7(4),pp. 649-659
Nucleic Acids Research,1997年,Vol. 25, No. 4,pp. 868-872
BMC genomics,2006年 4月,7:73,1-13
Nucleic Acids Research,2002年,Vol. 30, No. 19,pp. e103(1-8)
化学工学会 第73年会研究発表口演要旨集,2008年 2月17日,p. 375
調査した分野 C12N 15/09
C12N 9/16
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
組換え酵素Creと、
スペーサー領域、並びにその左右にそれぞれ配置された左アーム領域及び右アーム領域からなる、Creのターゲットサイトと
を用いる遺伝子組換え方法であって:
(A) スペーサー領域1、変異のある一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるターゲットサイト1であって、宿主染色体に導入されたもの;
(B) 遺伝子1、及び遺伝子1の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト2及びターゲットサイト3を含む組込カセットであって、
このときターゲットサイト2は、スペーサー領域1、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなり、そして
ターゲットサイト3は、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの;及び
(C) 遺伝子2、遺伝子2の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト4及びターゲットサイト5を含む置換カセットであって、
このときターゲットサイト4は、スペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
このときターゲットサイト5は、スペーサー領域3(但し、スペーサー領域3は、スペーサー領域1と同じか、又はスペーサー領域1及び2各々とは独立して機能可能なものである。)、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
を準備し;
(1) ターゲットサイト1と組込カセットとを、Creによって反応させ、反応生成物を得る工程;そして
(2) 該反応生成物と置換カセットとを、Creよって反応させる
工程を含む、染色体上で2以上の組換えを行うための、遺伝子組換え方法であって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなるものであり;
変異のある右アーム領域が、
列番号:12からなるものであり;
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、方法。
【請求項2】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項1に記載の、遺伝子組換え方法。
【請求項3】
組換え酵素Creを用いる遺伝子組換えにおいて、
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4
を組み合わせて使用する方法であって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなり;
異のある右アーム領域が
列番号:12からなり
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、方法。
【請求項4】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項3に記載の、使用方法。
【請求項5】
下記から選択される1以上を含む、組換え酵素Creを用い、2以上の組換えを行うためのキット:
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1からなるポリヌクレオチド;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2からなるポリヌクレオチド;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3からなるポリヌクレオチド;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4からなるポリヌクレオチドであって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなり
変異のある右アーム領域が
列番号:12からなり
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、キット。
【請求項6】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項5に記載の、キット。
【請求項7】
下記のいずれかである、Creのターゲットサイトからなるポリヌクレオチド:
配列番号:2からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:3からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:4からなる、ポリヌクレオチド;及び
配列番号:5からなる、ポリヌクレオチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え技術に関する。より詳細には、組換え酵素Creと変異型loxP配列とを用いた、宿主細胞における遺伝子の組換え方法に関する。本発明を用いれば、動物細胞の染色体上で、目的遺伝子の増幅を行うことができる。本発明は、動物細胞又はトランスジェニック動物を利用した、組換えタンパク質の大量生産のために有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝子組換え動物細胞を用いて、治療用抗体をはじめとするバイオ医薬品などの物質生産を行う際、目的遺伝子を細胞のゲノム染色体に挿入して安定形質転換体を樹立する必要がある。一般に動物細胞への遺伝子導入では、ウイルスベクターを用いる場合を除いて、導入遺伝子がゲノムに組み込まれる効率は低く、薬剤耐性遺伝子や核酸生合成酵素遺伝子を選択マーカーとして用いることによって、偶然に目的遺伝子が組み込まれた細胞を、導入遺伝子の働きによる選抜培地中での生存によってスクリーニングを行うため、染色体への導入部位もランダムである。物質生産を目的とした遺伝子組換え動物細胞では、さらに生産性を上げるために目的遺伝子のコピー数を染色体上で増幅させるために、遺伝子増幅処理が行われる(非特許文献1、2)。これは、選択マーカーとして用いた薬剤耐性遺伝子や核酸生合成酵素遺伝子に対応したスクリーニング用薬剤を培養期間中に段階的に濃度をあげることによって、結果的に導入遺伝子のコピー数が増幅された細胞を選抜するものである。この方法は、生産性の高い細胞株の樹立に必須であるが、ランダムにおこる現象に期待するため、確実性に欠けるとともに選抜に長期間を要することが問題となっている。
【0003】
一方で、細胞レベルでの遺伝子導入に限らず、遺伝子治療やトランスジェニック動物作製など様々な局面においてゲノム染色体の特定の位置に目的遺伝子を導入する方法の開発が望まれている(非特許文献3)。こういった目的においては従来、相同組換えによる遺伝子置換による目的遺伝子の導入が行われてきた。これは、目的遺伝子断片の両側を導入したい染色体部位の遺伝子配列ではさんだものを用意し細胞に導入することで、宿主細胞の遺伝子修復メカニズムの作用によって、ある頻度で導入遺伝子が目的染色体部位に挿入されることを利用した方法である(非特許文献4)。この方法も細胞側の複雑なメカニズムに依存しているため、導入する細胞に大きく依存するとともに、組込効率の低さが問題となっている。
【0004】
宿主細胞の遺伝子修復メカニズムに依存した受動的な相同組換えによる遺伝子導入とは対照的に、配列特異的な組換え酵素(リコンビナーゼ)を用いた、より積極的な配列特異的遺伝子導入システムが、動物細胞の染色体工学において種々検討されるようになっている(非特許文献5、6)。そういった組換え酵素の代表的なものに、バクテリオファージP1由来Cre(非特許文献7)、酵母由来Flp(非特許文献8)、バクテリオファージΦC31由来インテグラーゼ(非特許文献9)がある。これらの組換え酵素は、組換えターゲットサイトと呼ばれる明確な配列モチーフ(それぞれ、loxP, FRT及びattB/attPと呼ばれる)を認識し、これに作用して効率的な遺伝子断片の再配列を触媒するものである。
【0005】
第1世代の組換え酵素の利用による遺伝子導入制御は、Cre-loxPやflp-FRTシステムを用いた導入遺伝子の削除であった。これらの組換え酵素は、それぞれ対応するターゲットサイトへの組込み反応を触媒しうるが、逆反応である削除反応も触媒し、反応平衡は、むしろ削除反応に大きくかたよっていることによる。この方法は、現在でもコンディショナルノックアウト法として繁用されている。
【0006】
第2世代の組換え酵素による遺伝子導入制御は、遺伝子カセット交換法としての利用である。これは、2種類のお互い同士組換え反応をしないターゲットサイト用いることで、それらのターゲットサイトではさまれた領域の組換え置換反応をおこさせるものである。ΦC31インテグラーゼのシステムでは、もともとの組換えシステムとして不可逆的な置換反応を触媒することができるが、Cre-loxPやflp-FRTシステムでも、いくつかの変異ターゲットサイトが開発されたことにより利用できるようになった(非特許文献10~14)。特に、lox66/lox71(非特許文献15~17)では不可逆的な組込み反応も可能となっており、Cre-loxPでは多くの変異loxPが報告されるにいたっている(非特許文献18)。
【0007】

【非特許文献1】Crouse GF, McEwan RN, Pearson ML., Expression and amplification of engineered mouse dihydrofolate reductase minigenes. Mol Cell Biol. 1983, 3(2):257-266.
【非特許文献2】Powell JS, Berkner KL, Lebo RV, Adamson JW., Human erythropoietin gene: high level expression in stably transfected mammalian cells and chromosome localization. Proc Natl Acad Sci U S A. 1986, 83(17):6465-6469.
【非特許文献3】Coates CJ, Kaminski JM, Summers JB, Segal DJ, Miller AD, Kolb AF., Site-directed genome modification: derivatives of DNA-modifying enzymes as targeting tools. Trends Biotechnol. 2005, 23(8):407-419.
【非特許文献4】Glaser S, Anastassiadis K, Stewart AF., Current issues in mouse genome engineering. Nat Genet. 2005, 37(11):1187-1193.
【非特許文献5】Kolb AF., Genome engineering using site-specific recombinases. Cloning Stem Cells. 2002, 4(1):65-80.
【非特許文献6】Akopian A, Marshall Stark W., Site-specific DNA recombinases as instruments for genomic surgery. Adv Genet. 2005, 55:1-23.
【非特許文献7】Hoess RH, Ziese M, Sternberg N., P1 site-specific recombination: nucleotide sequence of the recombining sites. Proc Natl Acad Sci U S A. 1982, 79(11):3398-3402.
【非特許文献8】Golic KG, Lindquist S., The FLP recombinase of yeast catalyzes site-specific recombination in the Drosophila genome. Cell. 1989, 59(3):499-509.
【非特許文献9】Thorpe HM, Smith MC., In vitro site-specific integration of bacteriophage DNA catalyzed by a recombinase of the resolvase/invertase family. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998, 95(10):5505-5510.
【非特許文献10】Hoess RH, Wierzbicki A, Abremski K., The role of the loxP spacer region in P1 site-specific recombination. Nucleic Acids Res. 1986, 14(5):2287-2300.
【非特許文献11】Lee G, Saito I., Role of nucleotide sequences of loxP spacer region in Cre-mediated recombination. Gene. 1998, 216(1):55-65.
【非特許文献12】Langer SJ, Ghafoori AP, Byrd M, Leinwand L., A genetic screen identifies novel non-compatible loxP sites. Nucleic Acids Res. 2002, 30(14):3067-3077.
【非特許文献13】Seibler J, Bode J., Double-reciprocal crossover mediated by FLP-recombinase: a concept and an assay. Biochemistry. 1997, 36(7):1740-1747.
【非特許文献14】Schlake T, Bode J., Use of mutated FLP recognition target (FRT) sites for the exchange of expression cassettes at defined chromosomal loci. Biochemistry. 1994, 33(43):12746-12751.
【非特許文献15】Albert H, Dale EC, Lee E, Ow DW., Site-specific integration of DNA into wild-type and mutant lox sites placed in the plant genome. Plant J. 1995, 7(4):649-659.
【非特許文献16】Araki K, Araki M, Yamamura K., Targeted integration of DNA using mutant lox sites in embryonic stem cells. Nucleic Acids Res. 1997, 25(4):868-872.
【非特許文献17】Araki K, Araki M, Yamamura K., Site-directed integration of the cre gene mediated by Cre recombinase using a combination of mutant lox sites. Nucleic Acids Res. 2002, 30(19):e103.
【非特許文献18】Missirlis PI, Smailus DE, Holt RA., A high-throughput screen identifying sequence and promiscuity characteristics of the loxP spacer region in Cre-mediated recombination. BMC Genomics. 2006, 7:73.
【発明の開示】
【0008】
これまで、スペーサーの変異を有するターゲットサイト(例えば、lox511, lox2272)(前掲非特許文献10~12)では、独立した組換え反応が行えることが知られ、アームの変異を有するターゲットサイト(例えば、lox66, lox71)(前掲非特許文献15~17)では、反応後に両方のアームに変異が入ったものが生成することで不可逆的な挿入反応が促進されることが知られているが、双方を組み合わせて用いることは検討されていない。
【0009】
他方、染色体上に組み込まれた目的遺伝子が増幅できれば、組換えタンパク質等の生産においてさらに有用であることはいうまでもないが、現在の薬剤耐性を利用した遺伝子増幅技術、すなわち目的遺伝子とともに薬剤耐性遺伝子を染色体に導入し、環境における薬剤濃度を上げることによって遺伝子の増幅が起こった組換え体を選抜する方法では、長い時間と多大な労力が必要であり、また効率が悪いという問題があった。
【0010】
本発明は、組換え酵素Creと変異loxP配列とを用い、染色体への目的遺伝子の導入を繰り返し行うことができる、換言すれば、染色体上での目的遺伝子の増幅を行うことができるシステムを提供する。本発明においては、アーム変異とスペーサー変異が組み合わせて使用される。
【0011】
本発明は、具体的には以下のものを提供する:
(1)組換え酵素Creと、
スペーサー領域、並びにその左右にそれぞれ配置された左アーム領域及び右アーム領域からなる、Creのターゲットサイトと
を用いる遺伝子組換え方法であって:
(A) スペーサー領域1、変異のある一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるターゲットサイト1であって、宿主染色体に導入されたもの;
(B) 遺伝子1、及び遺伝子1の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト2及びターゲットサイト3を含む組込カセットであって、
このときターゲットサイト2は、スペーサー領域1、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなり、そして
ターゲットサイト3は、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの;及び
(C) 遺伝子2、遺伝子2の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト4及びターゲットサイト5を含む置換カセットであって、
このときターゲットサイト4は、スペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
このときターゲットサイト5は、スペーサー領域3(但し、スペーサー領域3は、スペーサー領域1と同じか、又はスペーサー領域1及び2各々とは独立して機能可能なものである。)、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
を準備し;
(1) ターゲットサイト1と組込カセットとを、Creによって反応させ、反応生成物を得る工程;そして
(2) 該反応生成物と置換カセットとを、Creよって反応させる
工程を含む、染色体上で2以上の組換えを行うための、遺伝子組換え方法。
【0012】
(2)ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、(1)に記載の、遺伝子組換え方法。
【0013】
(3)組換え酵素Creを用いる遺伝子組換えにおいて、
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4
を組み合わせて使用する方法。
【0014】
(4)ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、(3)に記載の、使用方法。
【0015】
(5)下記から選択される1以上を含む、組換え酵素Creを用い、2以上の組換えを行うためのキット:
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4。
【0016】
(6)ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、(5)に記載の、キット。
【0017】
(7)下記のいずれかである、Creのターゲットサイト:
配列番号:2からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:3からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:4からなる、ポリヌクレオチド;及び
配列番号:5からなる、ポリヌクレオチド。
【0018】
(8)2以上の遺伝子組換えを行うための、Creターゲットサイトにおけるアーム変異と、2以上の各々独立して機能するスペーサー変異との組み合わせ使用。
本発明においては、組換え酵素Cre、及びCreによって認識可能なターゲットサイトを用いる。Creは38kDaの分子量をもつタンパク質で、loxPと呼ばれる34 bpのターゲットサイトを認識して組換え反応を行う(図1)。ターゲットサイトは、Cre単量体の結合部位として機能する、13 bpの回文配列からなる2つのアーム領域(左アーム領域、及び右アーム領域)とそれらにはさまれた8 bpの配列からなるスペーサー領域からなる。本明細書で「ターゲットサイト」というときは、特別な場合を除き、Creによって認識可能なものを指す。ターゲットサイトは、2本鎖DNAであり得る。
【0019】
本発明においてはまた、変異のある左アーム領域を有するターゲットサイトと変異のある右アーム領域を有するターゲットサイトとを組み合わせて用いる。各々の変異は、ターゲットサイトの片側のアームにのみにある場合にはCreによる挿入反応を起こすことができるが、挿入反応の結果、両方のアームに変異のあるサイトが生じたときは、削除反応が起こらないという、不可逆的な挿入反応を促進するようなものであればよい。変異のある左アーム領域の配列の例は、lox 66(配列番号:9)であり、変異のある右アーム領域の配列の例は、lox 71(配列番号:12)である。
【0020】
また、下記のものも、変異のある左アーム領域又は変異のある右アーム領域として、本発明に用いることができる:
(a) 配列番号:9又は配列番号:12のヌクレオチド配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:9又は12からなるアーム領域と同じ機能(すなわち、ターゲットサイトの片側のアームにのみ変異がある場合、Creによる挿入反応を起こすことができるが、挿入反応の結果、両方のアームに変異あるサイトが生じたときは、削除反応が起こらないという、不可逆的な挿入反応を促進することができる機能)を有するポリヌクレオチド;
(b) 配列番号:9又は配列番号:12のヌクレオチド配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:9又は12からなるアーム領域と同じ機能を有するするポリヌクレオチド。
(c) 配列番号:9又は配列番号:12のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号:9又は12からなるアーム領域と同じ機能を有するポリヌクレオチド;
なお、本明細書でいうポリヌクレオチドには、特別な場合を除き、DNA、RNAが含まれ、一本鎖、二本鎖のものが含まれる。
【0021】
また、本明細書において`「1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列」というときの置換等されるヌクレオチドの個数は、その塩基配列からなるポリヌクレオチドが所望の機能を有する限り特に限定されないが、1~9個又は1~4個程度でありうる。このようなヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを調製するための手段は、当業者にはよく知られている。
【0022】
また、本明細書においてヌクレオチド配列に関し、高い同一性とは、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。ポリヌクレオチド配列の同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
【0023】
また、本明細書において「ストリンジェントな条件」というときは、特別な場合を除き、6M尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を指し、さらに必要に応じ、本発明には、よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4% SDS、0.1×SSC又はこれと同等のハイブリダイゼーション条件を適用してもよい。それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすることができ、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、例えば約50℃、さらに約65℃としてもよい。
【0024】
本発明においては、野生型左アーム領域、及び野生型右アーム領域も使用されるが、これらを構成する配列の例は、それぞれ配列番号:8及び13である。
また、下記のものも、本明細書でいう「野生型」の範疇に含まれ、本発明に使用することができる:
(d) 配列番号:8又は配列番号:13のヌクレオチド配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:8又は13からなるアーム領域と同じ機能(すなわち、Creによる挿入反応を起こすことができるが、逆反応である削除反応も促進することができる機能)を有するポリヌクレオチド;
(e) 配列番号:8又は配列番号:13のヌクレオチド配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:8又は13からなるアーム領域と同じ機能を有するするポリヌクレオチド。
(f) 配列番号:8又は配列番号:13のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号:8又は13からなるアーム領域と同じ機能を有するポリヌクレオチド;
本発明においてはさらに、複数の、各々独立して機能可能なスペーサー領域を組み合わせて用いる。スペーサー領域は、2種のみならず、それより多く(例えば、3種又は4種)を組み合わせて使用することができる。スペーサー領域の配列の例は、配列番号:10及び11である。
【0025】
また、下記のものも、スペーサー領域として、本発明に使用することができる:
(g) 配列番号:10又は配列番号:11のヌクレオチド配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:10又は11からなるスペーサー領域と同じ機能(すなわち、Creによる挿入反応を起こすことができ、かつ他のスペーサー領域とは各々独立して機能可能である)を有するポリヌクレオチド;
(h) 配列番号:10又は配列番号:11のヌクレオチド配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:10又は11からなるスペーサー領域と同じ機能を有するするポリヌクレオチド。
(i) 配列番号:10又は配列番号:11のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号:10又は11からなるスペーサー領域と同じ機能を有するポリヌクレオチド;
本明細書でスペーサー領域に関し「(各々)独立して機能可能」というときは、特別な場合を除き、ターゲットサイト中にそれぞれを用いた場合に、それぞれのターゲットサイトが互いに組換え反応をしないことをいう。
【0026】
ターゲットサイト1の例は、野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなる。このような場合、ターゲットサイト2は、変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなることとすればよく;ターゲットサイト3は、野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなることとすればよく;そしてターゲットサイト4は、変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなることとすればよい。ターゲットサイト5を用いる場合、これは野生型左アーム領域、スペーサー領域3、及び変異型右アーム領域からなることとすればよい。
【0027】
より具体的には、ターゲットサイト1として、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものを用いることができ;ターゲットサイト2として、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものを用いることができ;ターゲットサイト3として、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものを用いることができ;そしてターゲットサイト4として、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものを用いることができる。
【0028】
また、下記のものも、ターゲットサイトとして、本発明に使用することができる:
(j) 配列番号:2~5のいずれか一のヌクレオチド配列において1若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:2~5のいずれか一からなるターゲットサイトと同じ機能を有するポリヌクレオチド;
(k) 配列番号:2~5のいずれか一のヌクレオチド配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ配列番号:2~5のいずれか一からなるターゲットサイトと同じ機能を有するするポリヌクレオチド。
(l) 配列番号:2~5のいずれか一のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号:2~5のいずれか一からなるターゲットサイトと同じ機能を有するポリヌクレオチド;
ターゲットサイト1において、上述の例とは逆に、変異型左アーム領域及び野生型右アーム領域を用いる場合は、ターゲットサイト2は、野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなることとすればよく;ターゲットサイト3は、変異型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなることとすればよく;そしてターゲットサイト4は、野生型左アーム領域、スペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなることとすればよい。ターゲットサイト5を用いる場合、これは変異型左アーム領域、スペーサー領域3、及び野生型右アーム領域からなることとすればよい。
【0029】
本発明においてはまた、組込カセット及び置換カセットを組み合わせて用いる。各々のカセットは、プラスミド(環状DNA)の形態であり得る。各々のカセットにおいては、目的遺伝子(染色体に組込もうとする遺伝子)の両側に、ターゲットサイトが連結されるが、連結は、ターゲットサイトが機能可能であり、かつ目的遺伝子が宿主内で発現可能であるように行われる。各々のカセットはさらに、Cre反応後に必要のない領域が削除されるような配列を含んでもよい。例えば、組込カセットは、目的遺伝子の下流に連結されたターゲットサイトのさらに下流に、野生型の左右アーム領域及び所定のスペーサー領域からなるターゲットサイトを含むことができる。なお、組込カセットは、遺伝子の組込を目的として使用されるのみならず、遺伝子の組込及び削除(置換)又は入替のために用いられることもあり、また置換カセットは、置換又は入替を目的として使用されるのみならず、組込のために用いられることもある。
【0030】
各々のカセットの目的遺伝子は、同じでもよく、異なっていてもよい。目的遺伝子の例としては、医薬として利用される有用タンパク質、例えば抗体、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、腫瘍壊死因子、ウロキナーゼ、インターフェロン、インターロイキン、B型肝炎ワクチン、コロニー刺激因子があげられる。
【0031】
各々のカセットはまた、目的遺伝子以外に、他の遺伝子、例えば、クロラムフェニコール、テトラサイクリン又はアンピシリン等の薬剤に対する耐性を付与する遺伝子を含んでもよい。
【0032】
本発明の遺伝子組換え方法を染色体上において実施するに際しては、所定のターゲットサイトが予め宿主染色体に組み込まれるが、この宿主染色体へのターゲットサイトの組込は、当業者であれば公知の技術を用いて適宜行いうる。例えば、CHO細胞において行う場合は、適切な遺伝子導入試薬を用いて、ターゲットサイト及び薬剤耐性遺伝子を含むプラスミドをトランスフェクションし、薬剤耐性を利用して染色体に組換えの生じた細胞株を選抜し、必要に応じ細胞株からゲノムDNAを抽出し、ターゲットサイトの存在をPCRにより確認すればよい。より詳細な条件は、本明細書の実施例を参照することができる。
【0033】
また、本発明の遺伝子組換え方法の実施に際しては、組換え酵素Creが用いられるが、Creは宿主動物細胞内で発現させてもよく、Creタンパク質自体を細胞内に導入してもよい。Creを宿主動物細胞内で発現させるためには、Cre遺伝子を宿主細胞内で機能可能な発現ベクターに挿入したものを、組込カセット又は置換カセットと共に宿主細胞に供与すればよい。
【0034】
本発明の遺伝子組換え方法により、動物細胞の染色体上での遺伝子組換えや遺伝に増幅が好適に実施可能である。宿主動物細胞は、培養細胞であっても、動物個体であってもよい。なお、本発明の方法は、染色体上のみならず、プラスミド上での遺伝子操作にも用いることができる。
【0035】
本発明の方法の原理を、2種の独立して機能可能なスペーサー領域を用いて実施する場合の染色体上での遺伝子増幅を例に説明すると(図2A)、まずスペーサー1を有し、片側にアーム変異があるターゲットサイト(loxS1-Rとする)を予め細胞ゲノムに導入しておく。プラスミド(環状DNA)上に目的遺伝子(遺伝子1)をはさんで、スペーサー1を有し、先ほどと反対側(かつ目的遺伝子側)にアーム変異を有するターゲットサイト(loxS1-L)と、スペーサー2を有し、loxS1-Rと同じ側(かつ目的遺伝子側)にアーム変異を有するターゲットサイト(loxS2-R)を配置したものを用意し(プラスミド1)、先ほどの細胞ゲノムに組み込んだloxS1-RとCreによって反応させると、スペーサー1をもつもの同士が反応しゲノム上での挿入反応がおこる。反応生成物において、スペーサー1を有する片側のターゲットサイトでは、両方のアーム変異が生成する(loxS1-X)ため、削除反応が起こらなくなり、挿入状態が安定化される(もう1つの生成したスペーサー1を有するターゲットサイトはアームの変異がないものである; loxS1)。次に、プラスミド(環状DNA)上に目的遺伝子(遺伝子2)をはさんで、スペーサー2を有し、loxS2-Rと反対側(かつ目的遺伝子側)にアーム変異を有するターゲットサイト(loxS2-L)と、loxS1-R(アーム変異が目的遺伝子側にある)を配置したものを用意し(プラスミド2)、Creによって反応させると、今度は、スペーサー2をもつもの同士が反応しゲノム上での挿入反応がおこるとともに、プラスミド2のloxS1-Rとゲノム上で先の反応で生成したloxS1とが削除反応をおこし、結果としてターゲットサイトではさまれた領域間での入替反応がおきる。スペーサー2を有するターゲットサイトでは、両方のアーム変異が生成する(loxS2-X)ため削除反応が起こらなくなり、挿入状態が安定化される。これら2種類のプラスミドによる2回の組込反応によって、2種類の目的遺伝子を挿入可能であり、反応性のloxS1-Rのみが残ることになる。残ったloxS1-Rは、はじめに細胞に導入しておいたものと同じであるため、また一連の反応を繰り返し行うことが可能であり、反応のたびに目的遺伝子を挿入することができる。
【0036】
本発明の方法を、3種の各々独立して機能可能なスペーサー領域を用いて実施する場合を、図2B及び図2Cに示した。
【実施例】
【0037】
本システムの有効性を証明するために、プラスミドを用いた試験管内でのCre反応によるプラスミド上での遺伝子増幅と、あらかじめloxS1-Rを導入した細胞を用いて、染色体上での遺伝子増幅を試みた。
【0038】
本実験で用いた変異loxP配列を表1にまとめて示す。
【0039】
【表1】
JP0004883532B2_000002t.gif

【0040】
図2AのloxS1-RloxS2-RloxS1-LloxS2-Lに相当するものがそれぞれloxP1loxP2loxP3loxP4である。図3に、反応の進行を確認するためのシステムを示した。ここでは、図2の目的遺伝子1として緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を用い、目的遺伝子2として赤色蛍光タンパク質(DeRed)遺伝子を用いた。組込反応を目的遺伝子の発現によって確認するために、組み込まれる側のプラスミド(アクセプタープラスミド;ここではP1)に動物細胞で働くプロモーター(CMVプロモーター)をターゲットサイトのすぐ上流に配置した。GFP遺伝子やDsRed遺伝子をIRES配列と同時に、決められたターゲットサイトではさんで、遺伝子を供与する側のプラスミド(ドナープラスミド;ここではP2又はP3)に導入することで、Cre依存的にターゲットサイトで組込反応がおこった場合のみ、プロモーター下流に目的遺伝子が配置し生成した転写産物から目的タンパク質が翻訳・生産される。反応の進行の確認は、試験管内で精製Creタンパク質を使って組込/置換反応を行わせた後、生成したプラスミドから特異的なプラーマーを使ったPCR法によって特異的な遺伝子産物の増幅がみられるかによって評価するとともに、大腸菌へ形質導入し大量生産させた後、遺伝子配列解析によっておこなった。また、Cre発現ベクターを用いて、動物細胞内でも反応の進行を目的タンパク質の発現によって評価するとともに、ゲノムDNAを抽出してPCR法によっても行った。
【0041】
[1.実験材料の作製]
1.1.pCEP4/NCreの作製(図4)
SV40由来の核移行シグナル配列を有するCreリコンビナーゼ遺伝子を、pxCANCre (Riken,Tsukuba)を鋳型としてプライマー5’-ATCGGCTAGCAGCGGCCCTCCAAAAAAG-3’(配列番号:14)及び5-ATCCAAGCTTGTTAATGGCTAATCGCCATCTTCC-3’(配列番号:15)(下線部は制限酵素NheI及びHindIII)を用いてPCRにより増幅した(DNA ポリメラーゼ;KOD-plus-、Toyobo, Osaka、94℃, 15秒、60℃, 30秒、68℃, 70秒:30サイクル)。このDNA断片を制限酵素NheI及びHindIIIで消化したpET28a (Takara, Otsu)に連結し(DNA Ligation Kit , Takara)、pET28a/NCreを作製した。
【0042】
導入したDNA配列は遺伝子配列解析により確認した。制限酵素XbaI及びXhoIで消化したpET28a/NCre由来のCre遺伝子断片を制限酵素NheI及びXhoIで消化したpCEP4 (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に連結し、pCEP4/NCreを作製した。
【0043】
1.2.pcDNA4/loxP1 (P1) の作製(図5)
変異loxP配列(loxP1)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-GGCCGCATAACTTCGTATAGTATAGTATATACGAACGGTAT-3’(配列番号:16)及び5’-CTAGATACCGTTCGTATATACTATACTATACGAAGTTATGC-3’(配列番号:17)(下線部は制限酵素NotI及びXbaI)を、70℃、2分間の熱処理後、室温に戻すことによってアニーリングした。制限酵素NotI及びXbaIで消化したpBluescript KS(-) (Toyobo)及びpcDNA4/TO/myc-His A (Invitrogen)に連結し、それぞれpBlue/loxP1及びpcDNA4/loxP1(P1) を作製した。
【0044】
1.3.pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3 (P2) の作製(図6)
変異loxP配列(loxP2)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-GGCCGCATAACTTCGTATAGGCTATAGTATACGAACGGTAT-3’(配列番号:18)及び5’-CTAGATACCGTTCGTATACTATAGCCTATACGAAGTTATGC-3’(配列番号:19)(下線部は制限酵素NotI及びXbaI)を、70℃、2分間の熱処理後、室温に戻すことによってアニーリングした。その後、制限酵素NotI及びXbaIで消化したpBluescript KS(-)に連結し、pBlue/loxP2を作製した。
【0045】
変異loxP配列(loxP3)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-AGCTTTACCGTTCGTATAGTATAGTATATACGAAGTTATC-3’(配列番号:20)及び5’-TCGAGATAACTTCGTATATACTATACTATACGAACGGTAA3’(配列番号:21)、(下線部は制限酵素HindIII及びXhoI)を、70℃、2分間の熱処理後、室温に戻すことによってアニーリングした。制限酵素HindIII及びXhoIで消化したpBluescript KS(-) に連結し、pBlue/loxP3を作製した。
【0046】
pMSCV/ΔAWGA-IRES-EGFPを制限酵素ClaIで消化した後、制限酵素断片の平滑化を行った(DNA blunting kit, Takara)。次にBamHIで消化することにより得られたIRES-EGFP遺伝子断片を、制限酵素BamHI及びEcoRVで消化したpBlue/loxP3に連結し、pBlue/IRES-EGFP-loxP3を作製した。制限酵素BamHI及びXhoIで消化したpBlue/IRES-EGFP-loxP3由来のIRES-EGFPloxP3遺伝子断片を、制限酵素BamHI及びXhoIで消化したpBlue/loxP2に連結し、pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3(P2) を作製した。
【0047】
1.4.pBlue/loxP1-IRES-DsRed-loxP4 (P3) の作製(図7)
変異loxP配列(loxP4)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-AGCTTTACCGTTCGTATAGGCTATAGTATACGAAGTTATC-3’(配列番号:22)及び5’-TCGAGATAACTTCGTATACTATAGCCTATACGAACGGTAA-3’(配列番号:23)(下線部は制限酵素HindIII及びXhoI)を、70℃、2分間の熱処理後、室温に戻すことによってアニーリングした。制限酵素HindIII及びXhoIで消化したpBluescript KS(-) に連結し、pBlue/loxP4を作製した。
【0048】
制限酵素BamHI及びDraIで消化したpIRES2-DsRed Express (Clontech, Palo Alto, CA, USA)由来のIRES-DsRed遺伝子断片を、制限酵素BamHI及びEcoRVで消化したpBlue/loxP4に連結し、pBlue/IRES-DsRed-loxP4を作製した。制限酵素BamHI及びXhoIで消化したpBlue/IRES-DsRed-loxP4由来のIRES-DsRed-loxP4遺伝子断片を、制限酵素BamHI及びXhoIで消化したpBlue/loxP1に連結し、pBlue/loxP1-IRES-DsRed-loxP4(P3)を作製した。
【0049】
1.5.pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3-loxP5 (P2’)の作製(図8)
変異loxP配列(loxP5)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-TCGAGATAACTTCGTATAGGCTATAGTATACGAAGTTATGGTAC-3’(配列番号:24)及び5’-CATAACTTCGTATACTATAGCCTATACGAAGTTATC-3’(配列番号:25)(下線部は制限酵素XhoI及びKpnI)を、上記と同様にアニーリングした。この遺伝子断片と制限酵素BamHIおよびXhoIで消化したpBlue/IRES-EGFP-loxP3由来のIRES-EGFPloxP3遺伝子断片を、制限酵素BamHIおよびKpnIで消化したpBlue/loxP2に連結し、pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3-loxP5(P2’) を作製した。
【0050】
1.6.pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3-Cm-loxP5 (P2’Cm) の作製(図8)
クロラムフェニコール耐性遺伝子発現用ユニットを、705-Cre (Gene Bridges, Dresden, Germany)を鋳型としてプライマー5’-CCGCTCGAGCCGAAAAGTGCCACCTG-3’(配列番号:26)及び5’-CCGCTCGAGGGCGTTTAAGGGCACC-3’(配列番号:27)(下線部は制限酵素XhoI)を用いてPCRにより増幅した(DNA ポリメラーゼ ;KOD-plus-、94℃, 15秒、51℃, 30秒、68℃, 60秒:30サイクル)。このDNA断片を制限酵素XhoIで消化したpBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3-loxP5(P2’)に連結し、pBlue/loxP2-IRES-EGFP-loxP3-Cm-loxP5(P2’Cm) を作製した。
【0051】
1.7.pBlue/loxP1-Kan-loxP4 (P3Kan) の作製(図9)
カナマイシン耐性遺伝子発現用ユニットを、pMW219 (Nippon Gene, Toyama)を鋳型としてプライマー5’-CCCAAGCTTAGAACGCTCATGTTTGACAG-3’(配列番号:28)及び5’-CGGGATCCGTTCGGTGTAGGTCGTTCG-3’(配列番号:29)(下線部は制限酵素HindIII及びBamHI)を用いてPCRにより増幅した(DNA ポリメラーゼ;KOD-plus-、94℃, 15秒、52.5℃, 30秒、68℃, 60秒:30サイクル)。このDNA断片を制限酵素HindIII及びBamHIで消化したP3に連結し、pBlue/loxP1-Kan-loxP4(P3Kan)を作製した。
【0052】
1.8.pBlue/loxP1-Neo-IRES-DsRed-loxP4 (P3Neo) の作製(図9)
ネオマイシン耐性遺伝子を、pIRES2-DsRed-Expressを鋳型としてプライマー5’-CGGGATCCATGATTGAACAAGATGGATTGC-3’(配列番号:30)及び5’-CGGGATCCTCAGAAGAACTCGTCAAGAAGG-3’(配列番号:31)(下線部は制限酵素BamHI)を用いてPCRにより増幅した(DNA ポリメラーゼ;KOD-plus-、94℃, 15秒、54℃, 30秒、68℃, 60秒:30サイクル)。このDNA断片を制限酵素BamHIで消化したpBlue/loxP1-IRES-DsRed-loxP4(P3)に連結し、pBlue/loxP1-Neo-IRES-DsRed-loxP4(P3 Neo) を作製した。
【0053】
1.9.pcDNA4/loxP6-loxP2(mP12)の作製(図10)
変異loxP配列(loxP6)に対応する2つの化学合成した一本鎖ポリヌクレオチド5’-AGCTTATAACTTCGTATAGTATAGTATATACGAAGTTATCGAT-3’(配列番号:32)及び5’-CGATAACTTCGTATATACTATACTATACGAAGTTATA-3’(配列番号:33)(下線部は制限酵素HindIII及びPvuI)を、70℃、2分間の熱処理後、室温に戻すことによってアニーリングした。このloxP6断片と制限酵素PvuI及びEcoRIで消化したpBlue/loxP2由来のloxP2断片を制限酵素HindIII及びEcoRIで消化したpcDNA4 (Invitrogen)に連結し、pcDNA4/loxP6-loxP2 (mP12) を作製した。
【0054】
2.実験結果
2.1.プラスミド上での遺伝子増幅(試験管内での反応)
(1)P1とP2又はP2’の反応によるP12の生成
P1とP2を反応させてP12が生成するかを確認した。反応は、100 ng のP1 、100 ng のP2、10 ngのCreリコンビナーゼ(Clontech)を、1 μg/mlの BSA (Clontech) 及びCre 反応バッファー (Clontech)中で全量を15 μlとし、30℃、16時間行った。
【0055】
反応液 2 μlを鋳型として、プライマー5’-AACGAGAAGCGCGATCAC-3’(配列番号:34)及び5’-ACAGTGGGAGTGGCACCTT-3’(配列番号:35)(P2及びP2’Cm)、5’-GCTCGTTTAGTGAACCGTCAG-3’(配列番号:36)及び5’-CAACAGACCTTGCATTCCTT-3’(配列番号:37)(P2’Cm)を用いてPCR反応を行った(DNAポリメラーゼ;G-Taq, Hokkaido system science、95℃, 20秒、60℃, 40秒、72℃, 30秒:25サイクル)。
【0056】
図11の下段左側の電気泳動結果にみられるように、Creを添加した場合にのみ、326 bpの期待される遺伝子断片が増幅された。また、反応より得られたプラスミドDNAを大腸菌DH5α株に形質転換し、1時間培養後抗生物質を含有したLB寒天培地に塗布することで形質転換体のコロニーを形成させた。この形質転換体クローンを抗生物質含有のLB液体培地で増殖させた後、集菌後プラスミド抽出を行うことでCreによる組換え反応後のプラスミドを得た。このプラスミドを制限酵素PvuII及びHindIIIにより消化し切断パターンを解析したところ、目的のP12のものと一致した。さらに、このプラスミド上のloxP配列は期待されるP12のものと全く同じであった(図12)。
【0057】
同様のことを、Cre反応後にドナープラスミドの組込みにおいて必要のない領域を削除できるように設計されたP2’に、さらにクロラムフェニコール耐性遺伝子を有するP2’Cmを使って行ったところ、PCRによる検定において予測される組込み反応がおこっていることが確認でき(図13)、さらに大腸菌への形質転換によって得られたプラスミドは、目的の生成プラスミドP12’Cmと同じ制限酵素切断パターン、及びターゲットサイトの配列(図14)を有しており、期待される反応生成物を取得することができた。
【0058】
(2)P1+P2+P3の反応によるP123の生成
P1とP2を反応させた後、引き続きP3の反応をさせることで、P123の生成がみられるかを確認した。反応は、100 ngのP1、100 ng のP2、10 ngの Creリコンビナーゼ、1 μg/ml のBSA及びCre 反応バッファー中で全量を15 μlとし、30℃、16時間行った。引き続き100 ng のP3を制限酵素NotI及びXhoIで消化することにより生じたDNA断片(loxP1-IRES-DsRed-loxP4)及び10 ng のCreリコンビナーゼを加え、30℃、16時間行った。
【0059】
反応液2μlを鋳型として、プライマー5’-GCTCGTTTAGTGAACCGTCAG-3’(配列番号:36)及び5’-CAACAGACCTTGCATTCCTT-3’(配列番号:37)を用いてPCR反応を行った(DNAポリメラーゼ;G-Taq、95℃, 20秒、60℃, 40秒、72℃, 30秒:25サイクル)。図15の下段左側の電気泳動結果にみられるように、Creを添加した場合にのみ、870 bpの期待される遺伝子断片が増幅された。さらに、PCRによる増幅遺伝子断片を制限酵素NotIを用いて消化して電気泳動にて切断パターンを解析したところ(図15の下段右側)、期待される693 bpと177 bpの大きさに分断され、P123の生成反応がおこっていることが確認できた。
【0060】
同様のことを図14で取得したプラスミドP12’CmとP3KanをCreにより反応させたところ、PCRによる検定において予測される組込み反応がおこっていることが確認でき、さらに大腸菌への形質転換によって得られたプラスミドは、目的の生成プラスミドP123Kanと同じ制限酵素切断パターン、及びターゲットサイトの配列(図16)を有しており、期待される反応生成物を取得することができた。
【0061】
(3)mP12+P3+P2の反応による2サイクル目の第1段反応の確認
P12と同じターゲットサイトを有するmP12とP3を反応させた後、引き続きP2の反応をおこなわせることで、1サイクル目で生成したターゲットサイトが2サイクル目でも反応に供しうるかを確認した。反応は100 ng のmP12、100 ng のP3を制限酵素NotI及びXhoIで消化することにより生じたDNA断片(loxP1-IRES-DsRed-loxP4)、10 ng のCreリコンビナーゼ、1 μg/ml のBSA及びCre 反応バッファー中で全量を15 μlとし、30℃、16時間行った。引き続き150 ng のP2及び10 ngの Creリコンビナーゼを加え、30℃、16時間行った。反応液2 μlを鋳型として、プライマー5’-AACGAGAAGCGCGATCAC-3’(配列番号:34)及び5’-CACCTTGAAGCGCATGAAC-3’(配列番号:38)を用いてPCR反応を行った(DNAポリメラーゼ;G-Taq、95℃, 20秒、60℃, 40秒、72℃, 30秒:25サイクル)。図17の下段左側の電気泳動結果にみられるように、Creを添加した場合にのみ、792 bpの期待される遺伝子断片が増幅された。さらに、PCRによる増幅遺伝子断片を制限酵素BamHIを用いて消化して電気泳動にて切断パターンを解析したところ(図17の下段右側)、期待される641 bpと151 bpの大きさに分断され、2サイクル目の反応がおこることが確認できた。
【0062】
2.2.細胞染色体上での遺伝子増幅(動物細胞内での反応)
(1)P1及びP2のトランスフェクションによる組換え反応(挿入反応)
動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1細胞)を用いた。CHO細胞は1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種した。翌日、遺伝子導入試薬(Lipofectamine 2000; Invitrogene) を用いて、400 ngのP1、400 ngのP2、及びCreの動物細胞での発現ベクターであるpCEP4/NCre を0、5、10、15、25、35、50 ngと変化させたものを細胞にコトランスフェクションした。48時間後目的遺伝子である緑色蛍光タンパク質(GFP)発現細胞を計数したところ(図18:左)、Cre発現ベクターを添加しなかったときにはほとんどGFP発現細胞がみられなかったが、Cre発現ベクターを添加することでGFP発現細胞が劇的に増加した。また、pCEP4/NCreを35 ngと固定し、全量800 ngのP1及びP2を1:4、1:2、1:1、2:1、4:1と比を変化させてコトランスフェクションした際には、1:1で最もGFP発現細胞の数が多くなった(図18:右)。
【0063】
(2)P12又はmP12とP3のトランスフェクションによる組換え反応(置換反応)
1サイクル目の第2段目の反応が動物細胞内でおこるかを確認した。CHO細胞は1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種した。翌日、LF2000を用いて、400 ngのP12又はmP12、400 ngのP3及び35 ngのpCEP4/NCreを細胞にコトランスフェクションした。48時間後目的遺伝子である赤色蛍光タンパク質(DsRed) 発現細胞を観察したところ、P12とmP12のいずれを使った場合にも、Cre依存的にDsRed発現細胞出現することが確認できた(図19)。
【0064】
(3)P1を組み込んだCHO細胞株での組込み反応
上の結果から、動物細胞内でも一連の組込み反応がおこることがわかったので、実際に染色体上での増幅反応を確かめるため、P1をゲノム中に組込んだ安定細胞株を樹立した。方法としては、CHO細胞を1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種し、翌日、遺伝子導入試薬を用いて、細胞に800 ngのP1をトランスフェクションした。48時間後、60 mm 培養皿に細胞を播種し、250 μg/mlのゼオシン (Invitrogen) を含む培地で培養した。その後、限界希釈法によりP1を染色体に組込んだ安定細胞株を樹立した (CHO/P1)。loxP1が含まれている細胞株の判別は、細胞株からゲノムDNAを抽出しPCRにより行い、P1をゲノムに組み込んだと思われる6つのクローンを得ることができた。そこでます、このCHO/P1細胞を使って、P2又はP2’のトランスフェクションによる染色体上での組換え反応を確認した。
【0065】
樹立したCHO/P1細胞株から2つの細胞株(F11とH6)を選択して、細胞を1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種し、翌日、遺伝子導入試薬を用いて、800 ngのP2及びpCEP4/NCreを 0、0.5、1.0、2.5、5.0、10、15 ngと変化させて細胞にトランスフェクトした。48時間後、GFP発現細胞を計数したところ、Cre発現ベクターの添加に依存してGFP発現細胞が出現した(図20、21)。また、800 ngのP2’及び10 ng のpCEP4/NCreをコトランスフェクションした場合も同様にGFP発現細胞がえられた。その後、緑色蛍光を指標にして限界希釈法により、染色体上での組込み反応が行われた細胞株(CHO/P12又はCHO/P12’)を樹立した。
【0066】
(4)CHO/P1細胞でのP2及びP3のトランスフェクションによる染色体上での組込み反応の確認
染色体上での組込み反応を確認するために、PCRによって組み込まれた遺伝子の特異的な増幅を試みた。CHO/P1細胞を1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種し、翌日、遺伝子導入試薬を用いて、800 ngのP2及び5 ng のpCEP4/NCreを細胞にトランスフェクトした。24-72時間後に800 ngのP3及び5 ng のpCEP4/NCreを細胞にトランスフェクトした。始めのトランスフェクションから96時間後細胞を回収し、ゲノムDNAを抽出した(Mag Extractor -Genome-, Toyobo) 。抽出したゲノムDNAを鋳型としてプライマー5’-TACACCATCGTGGAGCAGTA-3’(配列番号:39)及び5’-ACCACCCGGTGAACAG-3’(配列番号:40)、及び5’-AACGAGAAGCGCGATCAC-3’(配列番号:34)及び5’-CACCTTGAAGCGCATGAAC-3’(配列番号:38)を用いてPCR反応を行った(DNAポリメラーゼ;G-Taq、95℃, 20秒、57℃, 40秒、72℃, 30秒:35サイクル)。図22の電気泳動結果にみられるように、一段目の組込み反応の進行を確かめるためのプライマーセット(primer2/3)によって特異的な遺伝子断片の増幅が確認できた(図22:左)。また、P3を添加した場合には、二段目の置換反応が進行した際に増幅されるプライマーセット(primer6/7)を使用したPCRで、特異的な遺伝子断片の増幅が確認できた(図22:右)。
【0067】
(5)CHO/P12’細胞でのP3又はP3Neoのトランスフェクションによる染色体上での組換え反応
P1を組み込んだCHO細胞(CHO/P1細胞)に、CreによってP2’を組み込んでGFPを発現するようになった細胞(CHO/P12’細胞)をクローニングし、この細胞にP3を反応させることで、染色体上で2段目の置換反応がおこるかを確認した。このため、CHO/P12’細胞を1.2 x 105 cells/wellで24穴プレートに播種し、翌日、遺伝子導入試薬を用いて、800 ngのP3又はP3Neo及び5 ng のpCEP4/NCreを細胞にコトランスフェクションした。48時間後に DsRed発現細胞を計数したところ、Cre発現ベクターの添加に依存してDsRed発現細胞が出現した(図23)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、Cre-loxP遺伝子組換えシステムを示した図である。
【図2A】図2Aは、組換え酵素を用いた遺伝子増幅の原理を示した図である。
【図2B】図2Bは、独立して機能するスペーサーが3種類の場合(組込型)の遺伝子増幅の例を示した図である。
【図2C】図2Cは、独立して機能するスペーサーが3種類の場合(入替型)の遺伝子増幅の例を示した図である。
【図3】図3は、反応の進行を確認するためのシステムを示した図である。
【図4】図4は、pCEP4/NCreの作製を示した図である。
【図5】図5は、P1の作製を示した図である。
【図6】図6は、P2の作製を示した図である。
【図7】図7は、P3の作製を示した図である。
【図8】図8は、P2'及びP2'Cmの作製を示した図である。
【図9】図9は、P3Kan及びP3Neoの作製を示した図である。
【図10】図10は、mP12の作製を示した図である。
【図11】図11は、遺伝子挿入反応のPCRによる確認(P1+P2反応)を示した図である。
【図12】図12は、P1+P2反応後の生成物を大腸菌に形質導入してえられたプラスミドP12の制限酵素切断による確認と変異loxPの配列解析を示した図である。
【図13】図13は、遺伝子挿入反応のPCRによる確認(P1+P2'Cm)を示した図である。
【図14】図14は、P1+P2'Cm反応後の生成物を大腸菌に形質導入してえられたプラスミドP12’Cmの制限酵素切断による確認と変異loxPの配列解析を示した図である。
【図15】図15は、遺伝子挿入/置換反応のPCRによる確認(P1+P2+P3反応)を示した図である。
【図16】図16は、P12’Cm+P3Kan反応後の生成物を大腸菌に形質導入してえられたプラスミドP123Kanの制限酵素切断による確認と変異loxPの配列解析を示した図である。
【図17】図17は、組換え酵素による連続的な遺伝子挿入/置換反応(mP12+P3+P2)を示した図である。
【図18】図18は、CHO細胞における遺伝子挿入反応(プラスミド上)の結果を示したグラフである。
【図19】図19は、遺伝子組換え置換反応(プラスミド上)後のCHO細胞の写真である。A)P12+P3、B)mP12+3
【図20】図20は、CHO/P1細胞株における遺伝子挿入反応効率(Cre発現ベクターの量の変化)を示したグラフである。
【図21】図21は、染色体上でのP2挿入反応後のCHO/P1(F11)細胞の写真である。
【図22】図22は、PCR法によるCHO/P1(F11)細胞での挿入/置換反応の確認を示した頭である。
【図23】図23は、染色体上でのP3組換え反応後のCHO/P12'細胞の写真である。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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