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明細書 :片面放射アンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5213039号 (P5213039)
公開番号 特開2010-074344 (P2010-074344A)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
公開日 平成22年4月2日(2010.4.2)
発明の名称または考案の名称 片面放射アンテナ
国際特許分類 H01Q  13/08        (2006.01)
H01Q   9/26        (2006.01)
FI H01Q 13/08
H01Q 9/26
請求項の数または発明の数 9
全頁数 24
出願番号 特願2008-237554 (P2008-237554)
出願日 平成20年9月17日(2008.9.17)
審査請求日 平成23年9月6日(2011.9.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】吉田 啓二
【氏名】金谷 晴一
個別代理人の代理人 【識別番号】100116573、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 幸司
審査官 【審査官】佐藤 当秀
参考文献・文献 米国特許第04070676(US,A)
米国特許第04401988(US,A)
英国特許出願公開第02147744(GB,A)
H.KANAYA, R.NABESHIMA, R.POKHAREL, K.YOSHIDA, M.TSUJII and R.IINO,Development of an electrically small one-sided directional antenna with matching circuit,2008 IEEE Radio and Wireless Symposium Proceedings,米国,IEEE,2008年 1月,pp.739 - 742,ISBN 1-4244-1463-6, IEEE Catalog Number: 08TH8966C
調査した分野 H01Q 9/04
H01Q 13/08
特許請求の範囲 【請求項1】
電気的に絶縁された導体面である遮断用導体面層を中間層に有する多層構造を備える片面放射アンテナであって、
前記多層構造において、前記遮断用導体面層を基準として、
一方には、誘電体である第1誘電体層、並びに、アンテナパターン及び放射用導体面が配置される放射用導体面層を有し、前記放射用導体面層は、前記アンテナパターンの一端から前記放射用導体面の一端までにおいて前記アンテナパターンの給電部から入力される信号周波数によって共振し、前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面は前記入力される信号周波数において共振せず、
他方には、誘電体である第2誘電体層、及び、電気的に接地された導体面であるグランド用導体面層を有することにより、前記グランド用導体面層は、信号線及び/又はグランド線を配置することができる、片面放射アンテナ。
【請求項2】
前記放射用導体面層において、
前記アンテナパターンは、前記給電部に対して対称であるスロットアンテナであり、
前記放射用導体面の長さは、放射される信号の半波長であり、
前記スロットアンテナのスロットから前記放射用導体面の一端までの距離L2において前記給電部から入力される信号周波数によって共振することを利用したアンテナであり、
前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面の長さはL2とは異なる、
請求項1記載の片面放射アンテナ。
【請求項3】
前記グランド用導体面層において、前記電気的に接地された導体面は信号端子接続部を有し、ビアホールを介して前記放射用導体面に給電する構造を有する請求項1又は2に記載の片面放射アンテナ。
【請求項4】
前記放射用導体面は、ビアホールを介して前記電気的に接地された導体面の信号端子に接続し、さらに、コンデンサ、コイル成分及び抵抗成分の少なくとも1つを介して外部信号端子と接続される信号端子を有する、請求項1から3のいずれかに記載の片面放射アンテナ。
【請求項5】
前記グランド用導体面層において、前記電気的に接地された導体面上に、信号の送受信を行う高周波回路、電源回路、データ記憶回路及びデジタル回路を備えた回路素子が配置され、
前記グランド用導体面層は、信号接続端子及びビアホールによって前記放射用導体面層に接続される、
請求項1から4のいずれかに記載の片面放射アンテナ。
【請求項6】
前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面の面積は、前記放射用導体面の面積よりも広く、
前記グランド用導体面層の前記電気的に接地された導体面の大きさは、前記電気的に絶縁された導体面とも前記放射用導体面とも独立に設計可能である、
請求項1から5いずれかに記載の片面放射アンテナ。
【請求項7】
前記多層構造において、前記グランド用導体面層を基準として、前記他方の向きに、さらに、誘電体である第3誘電体層、及び、電気的に絶縁された導体面である第2遮断用導体面層又は電気的に接地された導体面である第2グランド用導体面層がある、請求項1から6のいずれかに記載の片面放射アンテナ。
【請求項8】
前記電気的に絶縁された導体面、前記電気的に接地された導体面及び前記放射用導体面の少なくとも1つは、金属、金属を含有するペースト、導電性を有する炭素系の物質、又は、導電性を有するプラスチックにより形成された、請求項1から7いずれかに記載の片面放射アンテナ。
【請求項9】
前記誘電体は、プリント配線板用材料の誘電体である、請求項1から8いずれかに記載の片面放射アンテナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波、ミリ波などの無線通信システムにおいて利用される片面放射アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器においては、有線ケーブルを使わずに、周波数の高い電波による送受信で情報交換が行える無線通信が普及している。これらの無線電子機器には、無線通信で使用される信号波を送受信するためのアンテナが必要不可欠である。ただし、電子機器内の送受信用アンテナは、その設置場所によって、近傍に導電性物体もしくは磁性体が存在する場合がある。これは、アンテナの放射の性能に影響を及ぼす。
【0003】
片面放射のアンテナとして、パッチアンテナが知られている。また、発明者らは、非特許文献1にあるように、プリント基板を用いた片面放射アンテナを提案している。図12は、(a)背景技術であるパッチアンテナと、(b)背景技術である発明者らが提案した片面放射アンテナを示す図である。
【0004】
パッチアンテナは、図12(a)にあるように、放射用導体面とこの放射用導体面に向かい合うように設けられたグランド用導体面によって形成される。放射電磁界は、放射用導体面とグランド用導体面との間から放射される。パッチアンテナは、放射用導体面からの放射がグランド用導体面によって遮断されるため、グランド用導体面の面積を放射用導体面に比べて大きくすることにより、放射用導体面の側からのみ放射を行う片面放射のアンテナである。
【0005】
他方、発明者らが提案したプリント基板を用いた片面放射アンテナ(以下、「非特許文献1記載のアンテナ」という。)は、図12(b)にあるように、上部放射用導体面により構成したスロットアンテナと下部の電気的に絶縁された遮断用導体面とで構成されたものである。
【0006】

【非特許文献1】H.Kanaya, 他5名著、”Development of an Electrically Small One-Sided Directional Antenna with Matching Circuit”,2008 IEEE Radio and Wireless Symposium Proceedings,pp.739-742,2008.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パッチアンテナは、グランド用導体面の裏側に導電性物体や磁性体があっても、放射用導体面からの放射に影響を受けにくい。そのため、アンテナの設置場所近傍に導電性物体もしくは磁性体が想定される場合、パッチアンテナが利用されている。また、グランド用導体面は電気的に接地されているので送受信回路素子及びデジタル回路素子の実装が可能となる。
【0008】
しかしながら、パッチアンテナは、放射用導体面とグランド用導体面との間隔は、最適値が使用する周波数の4分の1であり、これが使用する周波数から換算した波長に比べて短くなると急激に放射しなくなり、また、周波数帯域が狭まるという問題がある。そのため、無線通信を目的として電子機器に取り付けるアンテナに、プリント基板などの誘電体基板を用いたパッチアンテナを用いる場合、アンテナ特性を維持するために放射用導体面とグランド用導体面間の距離をある程度設ける必要がある。また、信号線とグランド線は、線間から電界が漏れるため、配置することができない。よって、誘電体を薄膜化することによる、アンテナ自体及びアンテナを搭載した電子機器の薄型化、及びそれに伴うコストダウンなどができなかった。
【0009】
表1は、基板厚と放射利得の関係を示す表である。パッチアンテナは、基板厚が1.6mmの場合には、非特許文献1記載の片面放射アンテナと同程度の値を示すものの、基板厚が0.8mm、0.4mmの場合には、性能が劣化している。
【0010】
【表1】
JP0005213039B2_000002t.gif

【0011】
また、非特許文献1では、上部放射用導体面の長手方向の長さを、入力される信号周波数に対応した波長の1/2と同一の長さとし、電気的に絶縁された遮断用導体面の長手方向の長さは、放射用導体面の長手方向とは異なる長さにすることにより、遮断用導体面を入力される信号周波数で共振させない。これにより、片面放射を実現している。
【0012】
しかしながら、非特許文献1の構造では、遮断用導体面が電気的に絶縁されているため、送受信回路素子及びデジタル回路素子の接地導体として使用できない。そのため、これら素子の実装が不可能である。
【0013】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、マイクロ波、ミリ波などの無線通信システムにおいて、より効果的に利用可能な片面放射アンテナを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、電気的に絶縁された導体面である遮断用導体面層を中間層に有する多層構造を備える片面放射アンテナであって、前記多層構造において、前記遮断用導体面層を基準として、一方には、誘電体である第1誘電体層、並びに、アンテナパターン及び放射用導体面が配置される放射用導体面層を有し、前記放射用導体面層は、前記アンテナパターンの一端から前記放射用導体面の一端までにおいて前記アンテナパターンの給電部から入力される信号周波数によって共振し、前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面は前記入力される信号周波数において共振せず、他方には、誘電体である第2誘電体層、及び、電気的に接地された導体面であるグランド用導体面層を有することにより、前記グランド用導体面層は、信号線及び/又はグランド線を配置することができるものである。

【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の片面放射アンテナであって、前記放射用導体面層において、前記アンテナパターンが、前記給電部に対して対称であるスロットアンテナであり、前記放射用導体面の長さが、放射される信号の半波長であり、前記スロットアンテナのスロットから前記放射用導体面の一端までの距離L2において前記給電部から入力される信号周波数によって共振することを利用したアンテナであり、前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面の長さはL2とは異なるものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の片面放射アンテナであって、前記グランド用導体面層において、前記電気的に接地された導体面が信号端子接続部を有し、ビアホールを介して前記放射用導体面に給電する構造を有するものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記放射用導体面が、ビアホールを介して前記電気的に接地された導体面の信号端子に接続し、さらに、コンデンサ、コイル成分及び抵抗成分の少なくとも1つを介して外部信号端子と接続される信号端子を有するものである。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記グランド用導体面層において、前記電気的に接地された導体面上に、信号の送受信を行う高周波回路、電源回路、データ記憶回路及びデジタル回路を備えた回路素子が配置され、前記グランド用導体面層は、信号接続端子及びビアホールによって前記放射用導体面層に接続されるものである。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項1から5いずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記遮断用導体面層の前記電気的に絶縁された導体面の面積は、前記放射用導体面の面積よりも広く、前記グランド用導体面層の前記電気的に接地された導体面の大きさは、前記電気的に絶縁された導体面とも前記放射用導体面とも独立に設計可能である。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1から6のいずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記多層構造において、前記グランド用導体面層を基準として、前記他方の向きに、さらに、誘電体である第3誘電体層、及び、電気的に絶縁された導体面である第2遮断用導体面層又は電気的に接地された導体面である第2グランド用導体面層があるものである。
【0021】
請求項8に係る発明は、請求項1から7いずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記電気的に絶縁された導体面、前記電気的に接地された導体面及び前記放射用導体面の少なくとも1つは、金属、金属を含有するペースト、導電性を有する炭素系の物質、又は、導電性を有するプラスチックにより形成されたものである。
【0022】
請求項9に係る発明は、請求項1から8いずれかに記載の片面放射アンテナであって、前記誘電体は、プリント配線板用材料の誘電体であるものである。
【0023】
なお、請求項4において、コンデンサ、コイル成分、抵抗成分は、直列又は並列に接続されたものであってもよい。
【0024】
また、請求項8において、金属は、例えば、銅箔、アルミ箔であり、金属を含有するペーストは、例えば、銅ペースト、銀ペーストである。」)
【0025】
さらに、請求項9において、プリント配線板用材料の誘電体は、例えば、ポリイミド基板、ガラスエポキシ基板、セラミクス基板である。
【発明の効果】
【0026】
図13は、(a)背景技術であるパッチアンテナと、(b)背景技術である発明者らが提案したプリント基板を用いた片面放射アンテナと、(c)本願発明の構成の比較を示す図である。
【0027】
図13(a)にあるように、パッチアンテナは、誘電体の幅hpを薄膜化することによる、アンテナ自体及びアンテナを搭載した電子機器の薄型化、及びそれに伴うコストダウンなどができなかった。
【0028】
また、図13(b)にあるように、発明者らが提案したプリント基板を用いた片面放射アンテナでは、遮断用導体面103が電気的に絶縁されているため、送受信回路素子及びデジタル回路素子の接地導体として使用できない。そのため、これら素子の実装が不可能である。
【0029】
本願の各請求項に係る発明は、図13(c)にあるように、導体面103が接地されておらず、この中間層にある浮いた導体面103の下部に、さらに誘電体層104及び電気的に接地された導体面105を有する。
【0030】
図14は、(a)背景技術である単層の場合、(b)2層の場合、及び、(c)短絡した場合の放射特性の比較を示す図である。表2は、指向性利得(Peak Directivity)、効率(Efficiency)、最大利得(Peak Gain)及びQ値を示す図である。単層の場合にも、2層の場合にも、短絡した場合にも、放射パターンに大きな変化が見られない。これにより、発明者らは、多層化が可能であり、グランド基板の追加が可能であることを示した。発明者らは、このような知見を示すにより、遮断用導体面103の下層に位置する電気的に接地された導体面105に受信回路素子及びデジタル回路素子やLSI等の接地端子を接続することが可能であることを示した。
【0031】
【表2】
JP0005213039B2_000003t.gif

【0032】
また、本願の各請求項に係る発明によれば、遮断用導体面を浮いた導体面とし、その上部に誘電体層と放射用導体面に、アンテナパターンを配し、その前方に半波長の導体を設けた構造とすることにより、放射用導体面に配置したアンテナとその放射用導体面自身による共振によるアンテナを構成し、そのとき遮断導体面は共振しない長さに調整する。そのため、従来のパッチアンテナのように設計の際に導体面間の距離を考慮する必要がなく、本願のアンテナをプリント基板等で作成するときに、誘電体厚を薄くすることができる。
【0033】
さらに、従来のパッチアンテナの放射用導体面は、半波長の正方形であることが必要である。それに対して、本願発明は、アンテナパターン(例えばスロットアンテナのスロット部)で調整可能である。
【0034】
さらに、パッチアンテナのグランド用導体面は、放射用導体面よりも大きくする必要があり、さらに、信号線とグランド線を配置できない。また、非特許文献1記載の片面放射アンテナでは、裏面の遮断導体面は、入力ポートまで含めると同じサイズが必要であり、かつ、グランド線を配置することができない。それに対して、本願発明は、遮断導体面は入力ポートまで含めると同じサイズが必要であるが、放射電磁界は、遮断用導体面によりその下層には発生しないため、電気的に接地された導体面のサイズは自由に選ぶことができ、さらに、電気的に接地された導体面に信号線とグランド線を配置でき、これに接続された受信回路素子及びデジタル回路素子やLSI等へ、アンテナから発せられる電磁波が雑音として進入することを遮断することができる。
【0035】
さらに、インピーダンス整合は、パッチアンテナは放射用導体面の中心付近に給電する必要があるが、本願発明では、端面の入力ポートに直接給電可能である。
【0036】
さらに、表面信号入力は、パッチアンテナは、給電線がマイクロストリップ構造になるので、信号線幅が基板厚hpに依存するのに対して、本願発明では、CPW(Coplanar wave guide)のため、基板厚h1又はh2に依存しない。
【0037】
さらに、裏面信号入力は、パッチアンテナは、同軸線路で給電するか、3層構造にしてマイクロストリップ構造を作るかで行い、裏面回路実装は、3層構造にすれば可能であった。また、非特許文献1記載の片面放射アンテナは、グランド線がないために、裏面信号入力も裏面回路実装もできなかった。それに対して、本願発明は、裏面信号入力は、3層構造により、裏面グランドはGSG(コプレーナ線路の構造であり、信号線の両端にギャップをはさんでグランドメタルがある、信号線をSとしグランドメタルをGとして、G-S-Gとした構造。)を自由に配線できるので可能であり、裏面回路実装も可能である。
【0038】
以上より、本願発明により、薄型化が可能で、かつ、アンテナの裏面に送受信回路を実装することが可能となり、マイクロ波、ミリ波などの無線通信システムにおいて、より効果的に利用可能である。
【0039】
さらに、本願の請求項2に係る発明において、スロットアンテナ(スロットダイポールアンテナ)の入力インピーダンスと、半導体素子のインピーダンスが合致していなかった場合、リターンロスが大きくなるという問題があるが、給電部にインピーダンス整合回路を設けることで、半導体素子からスロットダイポールアンテナへのリターンロスを軽減した片面放射アンテナ素子を提供することができる(非特許文献1参照)。
【0040】
また、本願の請求項6に係る発明によれば、遮断用導体面が放射用導体面より大きくすることで、放射用導体面からの放射を遮断用導体面がより強力に遮断するので、片面放射をより強くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本願発明の片面放射アンテナ素子の実施例を、図を用いて説明する。なお、本願発明の実施の形態は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
図1は、本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナを示した模式構成の(a)正面図及び(b)断面図である。
【0043】
図1の(a)、(b)に示したように、平板状の放射用導体面101、任意の厚さh1をもつ誘電体102、遮断用導体面103、任意の厚さh2をもつ誘電体104、電気的に接地された導体面105で形成されている。
【0044】
放射用導体面101には対称な長方形状に導体を除去した開口部106a及び106bが、放射用導体面101の一辺に対して平行に配置形成され、その開口部(スロット)106a及び106bは引出し線107及びインピーダンス整合用のインターディジタルギャップ108を介して給電部109をとおり同軸コネクタ及び同軸ケーブル110から信号を入力することができるようになっている。ここで、インターディジタルギャップとは、信号線にくし型の切り込みを入れたコンデンサである。
【0045】
また、導体面105は同軸ケーブル110の接地導体に接続されているので、電気的に接地された構造となっている。
【0046】
このとき、給電部109では、すでにインピーダンス整合されているので、給電部109の長さは任意に決めても特性の変化はない。なお、引出し線107及び給電部109はコプレーナ線路構造になっており、信号線の両側に金属の剥離部分を介して接地導体線が形成されている。
【0047】
図1の(a)のダミーメタル111は、銅のエッチングの特性を安定させるために設けたパターンであり、アンテナの特性に影響しない。
【0048】
開口部106a及び106bの長さはそれぞれL1であり、107の長さをL4とすると、全体でスロットアンテナとして動作する。
【0049】
開口部106a及び106bは導体が無いので、開放とみなせる。従って、放射用導体面101のうち、106a及び106bと一方の端までの距離L2は両端開放の共振部112となり、その共振条件のときにアンテナとして動作する。
【0050】
本構造により、スロットダイポールアンテナである開口部106a及び106bの共振による放射だけでなく、放射用導体面の共振部112の共振に伴って生じるアンテナからも放射する構造となっている。スロットと、放射金属面の形状のみで構成できるアンテナなので、誘電体102の厚さh1によらないため、特に薄膜の誘電体を使用した際にパッチアンテナよりも利得及び放射効率のよい片面放射アンテナを提供することができる。
【0051】
図1の(a)、(b)に示した片面放射アンテナを、2.4GHzで動作させるため、平板状の厚さ30μmの放射用導体面101、厚さh1=635μm、比誘電率ε=10.2、誘電正接tanδ=0.0023の誘電体102、厚さ12μmの遮断用導体面103、厚さh2=200μm、比誘電率ε=4.2、誘電正接tanδ=0.02の誘電体104、厚さ12μmの電気的に接地された導体面105で構成する。
【0052】
開口部106a及び106bの幅を1mmとした。長さL1と放射用導体面の長さL2は各々連動しているので、装着する電子機器の空きスペースに応じて、任意に決定できるが、図1(a)では、L1+L4=13.5mm、とし、このとき、L2が共振する長さとしてL2=19mmとした。またL3=40mmとした。
【0053】
図2は、図1の(a)に示される片面放射アンテナにおける、インターディジタルギャップを示す図である。図2に記載の寸法は図1の(a)に示した片面放射アンテナが2.4GHzで動作するためのインターディジタルギャップの寸法である。
【0054】
2つのアンテナは同じ周波数で動作しているので、インピーダンス整合のためのインターディジタルギャップは図2に示す寸法とした。
【0055】
図3は、本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナのシミュレーションにおける、(a)放射パターンと、(b)シミュレーションにおける座標軸を示す図である。
【0056】
図3(a)は2.4GHzにおけるシミュレーション結果である。線201がスロット106a及び106bに平行な方向の放射パターンであり、線202がスロット106a及び106bに垂直な方向の放射パターンである。なお、z軸は放射用導体面の上方向を示す。図3において、放射用導体面の上方と接地導体面下方との放射利得の比を約9dB取ることができる。
【0057】
図4は、本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナの(a)試作品の写真と、(b)放射パターンの実測値を示す図である。
【0058】
図4の(a)で示すように、放射用導体面側から同軸コネクタにより給電している。また、図4の(b)の線203はスロットアンテナ106a及び106bに水平方向にスキャンした時の、放射パターンの実験値であり、これは、図3の(a)の線201に対応する。本試作品において、放射用導体面の上方と接地導体面下方との放射利得の比を約10dB取ることができている。
【0059】
図4(a)のアンテナを市販のリーダーライター装置に取り付け、RFIDタグとの通信距離を計測したところ、放射用導体面側の通信距離が、70mmであり、接地導体面側の通信距離は10mm以下であり、通信距離の比較においても片側放射特性が確認できた。
【0060】
図5は、本発明の第2の実施形態である片面放射アンテナの(a)表面からみた正面図、(b)裏面から見た平面図、(c)断面図である。なお、表面とは101側から見た正面とし、裏面とは105側から見た正面とする。
【0061】
図5の(a)、(b)、(c)に示したように、電気的に接地された導体面105のうち、給電部として新たに裏面給電部113が形成されている。113はコプレーナ構造を有しており、105とは絶縁され、109と同一の構成とする。放射用導体面101の給電部109に貫通ビアホール114、115、116を通し、113とコプレーナ構造で接続されている。113から給電することにより、アンテナ放射部の裏面からの給電が可能となる。
【実施例2】
【0062】
図6は、本発明の第2の実施形態である片面放射アンテナの試作品の写真である。
【0063】
図6のアンテナを市販のリーダーライター装置に取り付け、RFIDタグとの通信距離を計測したところ、放射用導体面側の通信距離が、150mmであり、接地導体面側の通信距離は70mmであり、接地導体面に給電面を設けても片側放射特性を確認できた。
【実施例3】
【0064】
図7は、本発明の第3の実施形態である片面放射アンテナの(a)正面図、及び(b)断面図である。
【0065】
インピーダンス整合のためのインターディジタルギャップはパターンニング後の変更ができない。従って、図7の(a)、(b)に示すように、放射用導体面の信号端子を、ビアホールを介し、裏面給電部113に接続し、さらにコンデンサ117を介して同軸コネクタと接続することで周波数や帯域の調整をすることが可能となる。
【0066】
図7の(a)及び図7の(b)では、コンデンサのみを接続した場合の模式図であるが、コンデンサのかわりに、コイル成分、抵抗成分、あるいは、コンデンサやコイルや抵抗を並列もしくは直列に接続しても良い。
【0067】
また図7の(a)及び図7の(b)では、信号線のビア115のみに、コンデンサを接続しているが、ビア114及びビア116についても、同様にコンデンサ、コイル、抵抗成分をそれぞれ、もしくは各々を並列または直列に接続しても良い。
【0068】
図8は、本発明の第3の実施形態である片面放射アンテナの正面図である。図7の(a)のかわりに、信号線にギャップを設け、パターンニングによりコンデンサを作成した場合のアンテナの模式図である。
【0069】
図8のギャップ118の間隔は100μmである。
【0070】
図9(a)、(b)は給電部からアンテナを見た時の反射係数のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0071】
図9は、図1により設計されたアンテナの反射係数(a)と、図7により設計されたアンテナの反射係数(b)のシミュレーション結果である。すなわち、図9の(a)はギャップ118を設けない場合であり、図9(b)はギャップ115を設けた場合の結果である。キャパシタンス成分が変化したため、動作周波数がシフトしていることがわかる。
【0072】
図10は、本発明のうち、第2の実施形態により実現可能な、3次元実装によりアンテナを一体化した送受信回路の模式構造を示す。
【0073】
電気的に接地された導体面105上に接続された受信回路素子及びデジタル回路素子やLSIは、遮断用導体面103により、アンテナから発せられる電磁波が雑音として進入しないので、図10のようなアンテナを表面に、回路素子を裏面に配置することができるので、特性の劣化を防ぎつつ、アンテナを含めた回路全体の小型化が可能となる。また、105上に電池を搭載することにより、アクティブタグとして動作できる。
【0074】
図11は、本発明のうち、第3の実施形態により実現可能な、電気的に接地された導体面の下層にさらに誘電体層と導体面を多層に接続し、各層にインダクタやコンデンサなどを配置した送受信回路の模式構造を示す。
【0075】
以上の説明では信号の周波数が2.4GHz帯の場合について示したが、2.4GHz付近だけでなく、ミリ波、マイクロ波で特にその性能を発揮する。また、本発明の活用例としては、Zigbee、Bluetooth、無線LANなどの無線ネットワークが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナを示した模式構成の(a)正面図、及び(b)断面図である。
【図2】図1の(a)に示される片面放射アンテナにおける、インターディジタルギャップを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナのシミュレーションにおける、(a)放射パターンと、(b)シミュレーションにおける座標軸を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である片面放射アンテナの(a)試作品の写真と、(b)放射パターンの実測値を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態である片面放射アンテナの(a)表面からみた正面図、(b)裏面から見た平面図、(c)断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である片面放射アンテナの試作品の写真である。
【図7】本発明の第3の実施形態である片面放射アンテナの(a)正面図、及び(b)断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態である片面放射アンテナの正面図である。
【図9】図1により設計されたアンテナの反射係数(a)と、図7により設計されたアンテナの反射係数(b)のシミュレーション結果である。
【図10】本発明の第2の実施形態により実現可能な、3次元実装によりアンテナを一体化した送受信回路の模式構造である。
【図11】本発明の第3の実施形態により実現可能な、電気的に接地された導体面の下層にさらに誘電体層と導体面を多層に接続し、各層にインダクタやキャパシタなどを配置した送受信回路の模式構造である。
【図12】(a)背景技術であるパッチアンテナと(b)背景技術である発明者らが提案した片面放射アンテナを示す図である。
【図13】(a)背景技術であるパッチアンテナと(b)背景技術である発明者らが提案した片面放射アンテナと(c)本願発明の構成の比較を示す。
【図14】(a)背景技術である単層の場合と(b)2層の場合と(c)短絡した場合の放射特性の比較を示す。
【符号の説明】
【0077】
101・・・・放射用導体面
102・・・・誘電体
103・・・・遮断用導体面
104・・・・誘電体
105・・・・電気的に接地された導体面
106a、106b・・・・開口部
107・・・・引出し線107
108・・・・インターディジタルギャップ
109・・・・給電部
112・・・・共振部
113・・・・裏給電部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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