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明細書 :イリジウム添加Ni基超耐熱合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3646155号 (P3646155)
公開番号 特開平10-183281 (P1998-183281A)
登録日 平成17年2月18日(2005.2.18)
発行日 平成17年5月11日(2005.5.11)
公開日 平成10年7月14日(1998.7.14)
発明の名称または考案の名称 イリジウム添加Ni基超耐熱合金
国際特許分類 C22C 19/03      
FI C22C 19/03 H
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願平09-295552 (P1997-295552)
出願日 平成9年10月28日(1997.10.28)
優先権出願番号 1996285119
優先日 平成8年10月28日(1996.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2000-013445(P2000-013445/J1)
審査請求日 平成9年10月28日(1997.10.28)
審判請求日 平成12年8月24日(2000.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】小林 敏治
【氏名】小泉 裕
【氏名】村上 秀之
【氏名】呂 芳一
【氏名】山邊 容子
【氏名】中沢 静夫
【氏名】原田 広史
【氏名】山縣 敏博
参考文献・文献 特開昭51-30529(JP,A)
特開昭55-47351(JP,A)
特開平9-67632(JP,A)
特開平1-168836(JP,A)
特開昭56-35305(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
イリジウムが0.1原子%以上5原子%以下の範囲で添加され、γ相及びγ′相が整然と整列した合金組織を有し、γ相及びγ′相中にイリジウムが固溶していることを特徴とする高温強度及び耐高温腐食性が改善されたイリジウム添加Ni基超耐熱合金。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、イリジウム添加Ni基超耐熱合金に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、発電用ガスタービンをはじめ、ジェットエンジン、ロケットエンジンなどの高温機器の出力及び効率の向上に有効なイリジウム添加Ni基超耐熱合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
Ni基超耐熱合金は、Niを基本構成元素とし、Co,Cr,Mo,W,Al,Ti,Ta,Nb,Re,Hf等を主要構成元素として含有する合金である。
このNi基超耐熱合金は、優れた高温強度を有することから、発電用ガスタービンやジェットエンジン、ロケットエンジンのタービンブレード、タービンベーン等の、高温機器において高温・高応力下で使用される部材に利用されている。これら高温機器の出力及び効率を高めるには、燃焼ガス温度を上昇させるのが最も効果的であるが、そのためには、Ni基超耐熱合金の特性改善が急務となる。
【0003】
特性改善は、2つの見地から検討されなければならない。一つは、高温強度であり、もう一つは耐高温腐食性である。
Ni基超耐熱合金の高温強度の改善については、たとえば、W,Mo,Ta,Reなどの添加が試みられている。しかしながら、これらの元素の添加は、添加量が多量となると、合金組織が不安定となり、有害相が析出してNi基超耐熱合金の強度が逆に低下することが確認されている。
【0004】
耐高温腐食性の改善は、高温機器において高温・高応力下で使用される部材が腐食性の高い雰囲気で使用されることから重要な課題である。たとえば、ガスタービンのタービンブレードなどには、燃焼ガスの激しい酸化性の雰囲気中で使用される上に、燃料中にイオウが含まれ、しかも、火力発電所は一般に海岸近くに立地するため、燃焼空気中に多量の塩が混入してもいるという条件が加わる。このように過酷な腐食性雰囲気中で使用される部材の耐高温腐食性の改善を耐食性の良好なコーティングにのみ依存することは、コーティング層が破れないことが保証されない限り危険である。Ni基超耐熱合金自体の耐高温腐食性を改善することがより確実である。
【0005】
この発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、優れた高温強度及び耐高温腐食性を有するNi基超耐熱合金を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、イリジウムが0.1原子%以上5原子%以下の範囲で添加され、γ相及びγ′相が整然と整列した合金組織を有し、γ相及びγ′相中にイリジウムが固溶していることを特徴とする高温強度及び耐高温腐食性が改善されたことを特徴とするイリジウム添加Ni基超耐熱合金を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明は、高い融点を有するイリジウムをNi基超耐熱合金に添加し、優れた高温強度及び耐高温腐食性を実現する。
イリジウム(Ir)を添加すると、合金組織はγ相及びγ′相が整列し、組織安定性が良好に保たれ、また、析出強化が進む。同時に、イリジウムは、γ相及びγ′相中に固溶し、固溶強化も進む。たとえば後述の図2のように、イリジウム添加前のNi基超耐熱合金の組織(a)は、イリジウムの添加によってγ相及びγ′相が整然と整列した合金組織(b)を有し、イリジウムは、素地のγ相と黒い結晶に写し出されているγ′相に固溶している。このようなイリジウム添加による析出強化と固溶強化によって高温強度が大きく改善されることになる。イリジウムは、Niと同じ面心立方構造を有しており、このため、Niと容易に置換する。一方、従来、添加元素としていたW,Mo,Taなどは体心立法構造であり、また、Reなどは稠密六方構造であり、これが組織安定性を低下させる一つの原因であったと考えられる。
【0008】
このように、イリジウム添加Ni基超耐熱合金は、優れた高温強度を有し、高温・高応力下での使用に耐え得る。
さらに、イリジウムは、高融点であり、高温でも拡散係数が小さい。このため、Ni基超耐熱合金の特性劣化が抑制され、耐高温腐食性が改善される。
このようなイリジウムの添加量は、高温強度及び耐高温腐食性の改善が十分に認められるには少なくとも0.1原子%必要である。一方、上限については特に厳密でなく、Ni基超耐熱合金の用途に応じて適宜調整可能である。一般には、5原子%より添加量が多くなると、比重が大きくなり、また、価格に反映する。このため、イリジウムの添加量については、好ましくは、0.1原子%以上5原子%以下が例示される。
【0009】
Ni基超耐熱合金自体には、各種のものが採用可能である。たとえば、Ni基単結晶合金の一つであるTMS-63(6.9Cr-7.5Mo-5.8Al-8.4Ta-残Ni(重量%))やNi基多結晶合金の一つであるMarM-247(10Co-10W-8.5Cr-0.7Mo-5.5Al-3Ta-1.4Hf-0.16C-0.02B-0.1Zr-残Ni(重量%))などが例示される。
【0010】
【実施例】
以下実施例を示し、この発明のイリジウム添加Ni基超耐熱合金について説明する。
実施例1
Ni基超耐熱合金TMS-63(6.9Cr-7.5Mo-5.8Al-8.4Ta-残Ni(重量%))に1原子%及び2原子%のイリジウムをアーク溶解法により添加した。
【0011】
これらイリジウム添加Ni基超耐熱合金とイリジウム未添加のTMS-63そのものについて、1100℃、大気中で圧縮試験を行った。
0.2%圧縮強度試験では、図1に示したように、イリジウム添加Ni基超耐熱合金は、316MPa(1原子%添加)及び317MPa(2原子%添加)といずれも315MPa以上の強度を示した。一方、TMS-63は、295MPaにとどまった。イリジウム添加Ni基超耐熱合金は、従来型のTMS-63に比べ、高い高温強度を有することが確認される。
【0012】
また、図2(a)(b)に示したように、イリジウム添加Ni基超耐熱合金では、合金組織はγ相とγ′相がより整然と整列していることが確認される。この整列した合金組織により析出強化が進むのである。図2(a)(b)の顕微鏡写真では、素地がγ相であり、γ′相は、黒い立方体状の結晶に写し出されている。
添加したイリジウムは、γ相及びγ′相中に固溶し、固溶強化する。2原子%の添加では、γ相及びγ′相中にイリジウムは、870℃において濃度比2:1で固溶する。
【0013】
このようなイリジウムの添加において、合金組織中に有害相は析出しなかった。
Ni基超耐熱合金の耐用温度は約1100℃であるが、イリジウム添加Ni基超耐熱合金では、イリジウムの添加によりこの温度付近での強度特性が改善され、組織安定性に優れている。
実施例2
上記Ni基超耐熱合金TMS-63に1.5原子%のイリジウムを真空溶解法により添加し、単結晶合金を作製した。このイリジウム添加Ni基超耐熱合金の組成は、重量%表記で、6.5Cr-7.1Mo-5.5Al-7.9Ta-5.7Ir-残Niと示される。
【0014】
高温強度をクリープ試験によって評価した。試験条件は、大気中で900℃、応力40kgf/mm2とした。その結果を示したのが図3のグラフである。
この図3から明らかなように、TMS-63では寿命が150時間であるのに対し、TMS-63に1.5原子%のイリジウムを添加したNi基超耐熱合金は250時間であり、クリープ寿命の改善が確認された。
【0015】
また、耐高温腐食性について評価した。
坩堝中に25%NaCl+75%Na2SO4の混合塩を12g入れ、これに直径6mm、長さ4.5mmの試料を浸漬した。試験温度は900℃とし、試験時間は5~20時間とした。図4に、TMS-63とイリジウム添加のTMS-63の浸漬時間と表面からの腐食深さの相関関係を示した。
【0016】
イリジウムを添加したNi基超耐熱合金では、20時間の浸漬でも表面に薄い酸化膜がわずかに形成される程度の酸化しか認められなかった。これに対し、TMS-63では、わずか5時間の浸漬から中心部への腐食が進行した。このような腐食はMarM-247にも認められ、TMS-63と同様の腐食形態となった。
【0017】
イリジウム添加Ni基超耐熱合金は、イリジウムの添加により耐高温腐食性も改善されている。イリジウム添加Ni基超耐熱合金が実用上極めて有益な耐熱合金であることが確認される。
【0018】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、安定した合金組織を有し、高温強度及び耐高温腐食性の改善された、実用上極めて有益なイリジウム添加Ni基超耐熱合金が提供される。このイリジウム添加Ni基超耐熱合金を発電用ガスタービンをはじめ、ジェットエンジンやロケットエンジンなどのタービンブレード、タービンベーン等の、高温機器において高温・高応力下で使用される部材に適用することにより、高温機器の出力や効率の向上が望める。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ni基超耐熱合金の0.2%圧縮強度をイリジウムの添加量との関係において示した図である。
【図2】 (a)(b)は、各々、TMS-63と、TMS-63に2原子%のイリジウムを添加したNi基超耐熱合金の合金組織を示した顕微鏡写真である。
【図3】 TMS-63と、TMS-63に1.5原子%のイリジウムを添加したNi基超耐熱合金のクリープ試験結果を示した寿命(時間)-歪み(%)曲線図である。
【図4】 TMS-63とイリジウム添加のTMS-63の浸漬時間と表面からの腐食深さの相関関係を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3