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明細書 :表面皮膜の剥離・密着性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3113908号 (P3113908)
公開番号 特開平11-142319 (P1999-142319A)
登録日 平成12年9月29日(2000.9.29)
発行日 平成12年12月4日(2000.12.4)
公開日 平成11年5月28日(1999.5.28)
発明の名称または考案の名称 表面皮膜の剥離・密着性測定方法
国際特許分類 G01N 19/04      
G01N 13/00      
FI G01N 19/04 Z
G01N 13/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願平09-312289 (P1997-312289)
出願日 平成9年11月13日(1997.11.13)
審査請求日 平成9年11月13日(1997.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390002901
【氏名又は名称】科学技術庁金属材料技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】村松 由樹
【氏名】黒田 聖治
審査官 【審査官】▲高▼見 重雄
参考文献・文献 特開 平5-223727(JP,A)
特開 平9-243580(JP,A)
特開 平3-51750(JP,A)
村松由樹、黒田聖治、H.G.グロス、”レーザースペックル法による溶接部の相変態途上のひずみ検出-レーザ-スペックルによるひずみ測定法の溶接への適用(第3報)-”、溶接学会論文集、社団法人溶接学会、平成8年11月5日、第14巻、第4号、p.741-747
村松由樹、黒田聖治、入江宏定、”高温連続変形体の動的歪のその場測定に関する基礎的研究”、科学技術庁金属材料技術研究所研究報告集、科学技術庁金属材料技術研究所、平成6年3月25日、第15巻、p.163-172
調査した分野 G01N 19/00 - 19/10
G01N 3/00 - 3/62
G01N 25/00 - 25/72
特許請求の範囲 【請求項1】
基板表面に形成された皮膜の剥離を非接触で検出する方法であって、基板に対して所定の外力や熱を加え、基板に既知のひずみを生じさせ、皮膜表面にレーザー光を照射し、スペックル相関法により皮膜のひずみを測定し、得られる基板と皮膜のひずみ曲線において、皮膜のひずみが基板のひずみに追従しなくなる時点を皮膜の剥離発生として検出し、この時点の基板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とし、これをもって皮膜の密着性を評価することを特徴とする表面皮膜の剥離・密着性測定方法。

【請求項2】
皮膜を形成していないひずみが未知の基板にひずみを生じさせ、レーザー光を照射し、スペックル相関法により基板に発生するひずみを測定し、測定したひずみを基板の既知のひずみとする請求項1記載の表面皮膜の剥離・密着性測定方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、表面皮膜の剥離・密着性測定方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、構造材料の表面改質等のために形成された溶射皮膜の密着性評価法等として有用な、非接触による表面皮膜の剥離・密着性測定方法に関するものである。

【02】

【従来の技術とその課題】構造材料等としての基板材料の表面には、耐熱、耐食、耐摩耗性の向上等の目的のもとに、セラミックス、金属、合金等の皮膜による被覆が施される場合がある。この皮膜はたとえばプラズマ溶射などの手段により形成される。しかしながら、このような基板表面の皮膜については、その剥離の的確な検出、そして密着性の評価のための方法が必ずしも確立されていないのが現状である。

【03】
たとえば従来の皮膜の密着性評価法としては円柱の端面に皮膜を形成し、その表面に対向させて円柱を接着し、両円柱を引張って皮膜が剥離する時の限界荷重を測定する引張り試験法や、皮膜表面にダイヤモンドなどの硬質の圧子を押しつけて引っかき、皮膜に割れが生じる時の押しつけ荷重を測定するスクラッチ試験法などがある。しかし、これらは、いずれも接触式の評価法であ一方、剥離を生じる限界ひずみの測定法として曲げ試験やカップ試験のように基板に変形を与え、皮膜に亀裂が生じた位置・時点を目視で検出する方法がある。だが、この方法には目視検出という限界があり、構造材表面の皮膜の密着性の評価手法としては信頼性の点で問題がある。

【04】
また、上記方法において、AE(音響放出)信号を検出する方法もあるが、この方法では、損傷部位の特定が容易ではないという問題がある。そこでこの出願の発明は、以上のような従来の接触式、あるいは非接触式の皮膜の密着性評価法の問題点を解消し、非接触式で、しかも的確に皮膜の剥離発生を検出し、ひずみ量の測定により皮膜の密着性の評価も可能な、新しい表面皮膜の剥離・密着性測定方法を提供することを課題としている。

【05】

【課題を解決するための手段】この出願は、上記の課題を解決するものとして、基板表面に形成された皮膜の剥離を非接触で検出する方法であって、基板に対して所定の外力や熱を加え、基板に既知のひずみを生じさせ、皮膜表面にレーザー光を照射し、スペックル相関法により皮膜のひずみを測定し、得られる基板と皮膜のひずみ曲線において、皮膜のひずみが基板のひずみに追従しなくなる時点を皮膜の剥離発生として検出し、この時点の基板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とし、これをもって皮膜の密着性を評価することを特徴とする表面皮膜の剥離・密着性測定方法(請求項1)を提供する。

【06】
また、この出願は、皮膜を形成していなずみが未知の基板にひずみを生じさせ、レーザー光を照射しスペックル相関法により基板に発生するひずみを測定し、測定したひずみを基板の既知のひずみとすること(請求項2)を好ましい態様として提供する。

【07】

【発明の実施の形態】この出願の発明の表面皮膜の剥離・密着性測定方法においては、上記の通り、非接触式のスペックル相関法により皮膜のひずみを測定する。スペックル相関法は、物体表面のひずみを非接触で測定できる方法であり、物体表面の測定点にレーザービームを照射したときに乱反射するレーザービームとの相互干渉により観察面上に生じる不規則な斑紋(レーザースペックルと呼ばれる)の移動・変化より物体表面のひずみを測定するものである。このスペックル相関法は、一般的には、たとえば山口、町田「レーザースペックルひずみ計の開発」、非破壊検査vol.30(1981)、No.8、p.564 を参考にすることができる。

【08】
そして、この出願の発明の表面皮膜の剥離・密着性測定方法では、基板に外力や熱膨張によって既知のひずみを生じさせ、皮膜のひずみをスペックル相関法により測定する。このとき得られる基板と皮膜のひずみ曲線において、ひずみ量の増加にともなって皮膜のひずみが基板のひずみに追従しなくなる時点を皮膜の剥離発生として検出する。また、この時点の基板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とし、これをもって皮膜の密着性を定量的に評価する。

【09】
たとえば、この出願の発明の表面皮膜の剥離・密着性測定方法においては、後述する実施例にも示すように、表面に皮膜が形成された基板の任意の箇所に(すなわち、局所的に)急峻な温度分布を生じさせ、これによる基板と皮膜の膨張率の差に基づく応力により剥離試験を行い、皮膜に発生するひずみをその場測定することにより、皮膜の剥離発生を検出し、皮膜の剥離と加えたひずみ量との関係を定量的に評価することできる。ひずみの測定位置を変更または増加させることにより皮膜の剥離範囲の特定も可能である。

【10】
なお、実際の構造物にこの出願の発明の表面皮膜の剥離・密着性測定方法を適用するに当たって、基板が複雑な形状を持ち、外力や熱によるひずみを簡単に求めることができず、未知である場合には、皮膜なしの状態で局所的に外力または熱を加え、基板にひずみを生じさせ、これを上記の通りのスペックル相関法によって測定し、得られるひずみを既知のひずみとして用い、皮膜の密着性評価の基準とする

【11】
測定対象については特に制限はな、たとえば、基板は、金属(合金を含めて)、セラミックス、金属・セラミックス複合材、樹脂、樹脂と金属および/またはセラミックスとの複合材等とすることができた、皮膜、セラミックス、金属(合金も含めて)樹脂、またはこれらの複合材の任意ものとすることができこの皮膜は、たとえばプラズマ溶射法、塗布法、焼結法、またはその他種方法によって形成することができる

【12】
基板および皮膜に加える外力は、たとえば物理的な衝撃や曲げ、または熱的な応力等とすることができる。以下実施例を示し、この出願の発明の表面皮膜の剥離・密着性測定方法についてさらに詳しく説明する。

【13】

【実施例】実施例1
図1に示したように、SUS304ステンレス矩板(60×120×4mm)の片側全面に大気中溶射(セラミックス系皮膜、ZrO2 -8Y2 3 、膜厚0.3mm)を行い試験片とし、その基板側中央を60mmの長さにティグ・アークで加熱した(アーク電流40~100A、熱源移動速度120mm/min、加熱方向は板の長手方向)。そして皮膜側の中央加熱線直下Arイオンレーザーを照射(照射スポット径約2.5mm)スペックル相関法により皮膜のひずみを連続的に測定した。また、これとは別に同一寸法の溶射を施していない試験片に同一条件において加熱し裏面中央に発生するひずみを測定し、皮膜のひずみと比較した。

【14】
図2は、皮膜が完全に剥落した場合(アーク電流100A)の皮膜のひずみ曲線を基板のひずみ曲線とともに示している。皮膜のひずみ曲線には明瞭な乱高下が認められる。また、この乱高下に先立ち、皮膜のひずみ曲線は基板のひずみ曲線から離れ始めている。の時点の基板のひずみ量を基板の限界ひずみ量とする。なお、光学顕微鏡観察から、皮膜のひずみ曲線が基板のひずみ曲線から離れ始めた時点で皮膜の剥離が発生したことが確認された。また、ビデオカメラによる観察から、皮膜のひずみ曲線の乱高下は皮膜の完全な剥離に対応していることが確認された。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により試験し、アーク電流70Aの場合について評価した。

【15】
図3図4は、各々、皮膜と基板の両ひずみ曲線を示しているひずみ曲線の間には皮膜の剥離を示すずれが現れている。だが、目視によっては明瞭に皮膜の剥離発生を確認することはできなかった方、加熱後室温に冷却し皮膜の加熱部ポンチを介してハンマーで打撃したところ、皮膜は直ちに剥落した。このことから皮膜の剥離が発生していたことが確認された。なお、皮膜の非加熱部では同様の処置を行っても剥落は全く生じなかった。

【16】
また、図5に示したように、加熱前および加熱後の皮膜付き試験片より短冊形の曲げ試験片を精密カッターにより切り出し4点曲げ試験を実施した(皮膜側下側すなわち引張り側)ところ、70Aでの加熱部を含む試験片はれを含まない試験片、および次の実施例3に示す40Aでの加熱部を含む試験片より早い時期に音とともに明瞭に皮膜が剥離または剥落した。
実施例3
実施例1と同様の方法により試験し、アーク電流40Aの場合について評価した。

【17】
図6、図7は、各々、皮膜と基板の両ひずみ曲線を示しているひずみ曲線には大きな差は生じていない。皮膜の剥離は生じていなかった。

【18】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この出願の発明により、非接触式の測定として可能であって、
(1)的確な皮膜の剥離と密着性測定することができる、
(2)基板に加えるひずみが未知の場合にも皮膜の剥離と密着性測定することができる、
(3)任意の場所の皮膜の剥離と密着性測定することができる、
(4)測定の位置に特別な処置を必要としない、
(5)剥離範囲の特定も可能、
(6)既に存在する剥離の検出も可能、という優れた効果が奏せられる。
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5
【図7】
6