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明細書 :マイクロ真空計

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5002861号 (P5002861)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
発明の名称または考案の名称 マイクロ真空計
国際特許分類 G01L  21/10        (2006.01)
FI G01L 21/10
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2009-551589 (P2009-551589)
出願日 平成21年1月30日(2009.1.30)
国際出願番号 PCT/JP2009/051533
国際公開番号 WO2009/096504
国際公開日 平成21年8月6日(2009.8.6)
優先権出願番号 2008021826
優先日 平成20年1月31日(2008.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年6月21日(2010.6.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
発明者または考案者 【氏名】木股 雅章
個別代理人の代理人 【識別番号】100080182、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 三彦
審査官 【審査官】三田村 陽平
参考文献・文献 特開平07-325002(JP,A)
特開2006-153782(JP,A)
特開平08-166269(JP,A)
調査した分野 G01L 21/10
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を計測する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、
前記浮遊構造体は、前記発熱体と前記温度センサの周囲を覆う第1部材と、前記第1部材の少なくとも表面に接合される前記第1部材より放射率の低い第2部材とにより形成され、該第2部材の上面視での面積が前記第1部材より大きいことを特徴とするマイクロ真空計。
【請求項2】
前記第2部材が、前記第1部材よりも反射率が高いことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ真空計。
【請求項3】
前記第1部材が酸化シリコンまたは窒化シリコンであって、前記第2部材がアルミニウム、チタン、金、タングステン、または白金であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ真空計。
【請求項4】
基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を計測する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、
前記浮遊構造体は、前記発熱体と前記温度センサの周囲を覆う第1部材と前記第1部材の少なくとも表面に接合される前記第1部材より放射率の低い第2部材とにより形成され、
前記第2部材が、前記第1部材よりも透過率が高いことを特徴とするマイクロ真空計。
【請求項5】
前記第1部材が酸化シリコンまたは窒化シリコンであって、前記第2部材が単結晶シリコン、多結晶シリコン、またはアモルファスシリコンであることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ真空計。
【請求項6】
前記基板の上面に窪み部が形成され、前記浮遊構造体が前記支持構造体によって前記窪み部の上方に保持されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のマイクロ真空計。
【請求項7】
前記基板の上面が平坦に形成され、前記浮遊構造体が前記支持構造体によって前記基板の上面より上方に持ち上げるように保持されることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のマイクロ真空計。
【請求項8】
前記第2部材が、複数の薄膜の積層構造からなることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のマイクロ真空計。
【請求項9】
基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を測定する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、
前記基板の上面に窪み部が形成されるとともに該窪み部の上方に前記浮遊構造体が前記支持構造体によって保持される一方、赤外線を反射して前記浮遊構造体からの輻射によるエネルギー損失を減少させる部材が、前記基板の裏面に形成されることを特徴とするマイクロ真空計。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧以下に減圧された真空容器内の圧力を計測するマイクロ真空計に関する。特に、MEMS(Micro-Electro-Mechanical
Systems)技術を利用したデバイスに必要な低圧域を測定するマイクロ真空計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスのうちMEMS技術を利用したデバイス等の中には、真空封止されたパッケージに実装することによって性能が飛躍的に向上するものがある。
【0003】
例えば、熱型赤外線センサにおいては、センサ構造体からの熱放散が性能に大きな影響を与え、大気を通した熱伝導を可能な限り減らすことが望まれている。また、加速度センサや角速度センサにおいては、特定の用途では大気によるダンピング(空気の機械的な抵抗)を減らすために真空環境で動作させる必要があるものもある。さらに、高周波デバイスにおいては、振動するデバイスであるレゾネーターの特性を向上させる目的や、スイッチなど機械的接触を伴うデバイスのスティッキング(可動構造体の基板への付着)を防止する目的で真空封止が行われている。
【0004】
こうした真空封止が必要な電子デバイスの信頼性試験あるいは自己診断(製品が正常に動作していることをチェックするために製品に搭載された機能)のために、デバイスを収納するパッケージ内の圧力(気圧)を計測する必要がある。
【0005】
電子デバイスのパッケージのような微小空間の気体の圧力測定としては、半導体プロセスで作製可能な微小なヒータを半導体基板から断熱(熱コンダクタンスの低い状態)に保持し、この気体の熱伝導の圧力依存性を利用した熱伝導方式のマイクロ真空計等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】
A. W. van Herwaarden and P. M. Sarro, J.Vac. Sci. Technol., Vol. A 5, No. 4, pp. 2454- 2457, 1987.
【0006】
従来の熱伝導方式のマイクロ真空計90は、図16および図17に基本構造を示すように、半導体基板91に形成された空洞Sの上方に保持された浮遊構造体92を有しており、浮遊構造体92にはヒータ93と温度センサ94が配置されている。図で示した例では、浮遊構造体92が半導体基板91の上面とほぼ同じ高さに支持するように支持構造体98にて支持されているが、浮遊構造体92を半導体基板91の上面から上方に持ち上げた構造とすることも可能である。
【0007】
次に、マイクロ真空計90の動作について説明する。ヒータ93に電流を流してジュール熱を発生させると浮遊構造体92の温度が上昇する。温度上昇は、ヒータ93に投入する電力と浮遊構造体92からヒートシンクとなる半導体基板91および図示しない周囲の構造に流れる熱損失(伝達される熱量)とにより決まる。この熱損失は、浮遊構造体92を取り巻く気体を通した熱伝導、支持構造体98を通した熱伝導、浮遊構造体92からの熱輻射の3つからなる。
【0008】
浮遊構造体92からの熱損失Qと周囲の気体の圧力Pとの関係は、縦軸、横軸ともに対数軸をとった図18に示すように、3つの領域R1、R2、R3に分割して考えることができる。領域R1は、高い気圧の領域であるので気体の平均自由行程が空洞Sの長さに比べて短く、気体の熱伝導が圧力Pに依存しないことを反映して、対流の効果により僅かな圧力依存性は有するが、熱損失Qが圧力Pにほとんど依存しない領域である。領域R2は、気体の平均自由行程が空洞Sの長さより長いため、気体を通した熱伝導が気体の圧力(分子密度)に比例し、圧力の減少とともに熱損失が減少する領域である。領域R3は、気体の圧力Pには依存せず、支持構造体98を通した熱伝導による熱損失と浮遊構造体92からの熱放射(熱輻射)による熱損失を加算した最低レベルの熱損失Qとなる低圧領域である。
【0009】
上述した熱損失の周囲の気体の圧力依存性を考慮すると、温度センサ94にて計測される温度は、ヒータ93に一定電流を投入した場合、領域R1では変化なく圧力の計測はできないが、領域R2では気体を通した熱伝導が圧力の低下とともに減少するので温度が上昇し、領域R3では再び圧力依存性がなくなり一定温度となる。従って、従来の熱伝導方式のマイクロ真空計90は、領域R2の範囲内でのみ圧力を計測することができ、その下限は1Pa程度であった。
【発明の開示】
発明が解決しようとする課題
[0010]
従来の熱伝導方式のマイクロ真空計90は、十分に低い圧力を計測することができないという問題があった。特に、真空封止されて使用される熱型赤外線センサのパッケージ内の圧力変化を計測することができないという問題があった。すなわち、熱伝導方式マイクロ真空計の熱損失メカニズムは、真空封止されて使用される熱型赤外線センサの熱損失メカニズムと同じであり、熱型赤外線センサの感度が封止されたパッケージ内の気体の圧力に依存する圧力領域は、領域R2とほぼ一致している。そのため、通常パッケージ内の気体の圧力が感度に影響を与えないよう十分低い圧力に保たれているので、パッケージ内の圧力変化を計測することができず、信頼性試験や自己診断を行う際に問題となっていた。僅かな真空度の劣化を検出することが可能となれば、欠陥の発生等を早期に検出できる利点がある。
[0011]
熱型赤外線センサ以外の真空封止デバイスでも、パッケージ内の僅かな真空度の劣化を検出することは、デバイス開発の中で重要であるが、これまでこうした要求を満たすマイクロ真空計は存在しなかった。
[0012]
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、MEMSデバイスなどに集積化された熱伝導方式のマイクロ真空計によりデバイスの信頼性試験や自己診断を行えるよう低圧側に計測可能な圧力範囲を拡大し、計測下限を向上することを目的とする。さらに、微小な空間の圧力計測が可能な超小型の熱伝導方式のマイクロ真空計の計測範囲を拡大することにより、マイクロ真空計の応用分野を拡大することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0013]
上記目的を達成するための本発明に係るマイクロ真空計は、基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を計測する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、前記浮遊構造体は、前記発熱体と前記温度センサの周囲を覆う第1部材と、前記第1部材の少なくとも表面に接合される前記第1部材より放射率の低い第2部材とにより形成され、該第2部材の上面視での面積が前記第1部材より大きいことを特徴としている。
[0014]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記第2部材が、前記第1部材よりも反射率が高いことを特徴としている。
[0015]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記第1部材が酸化シリコンまたは窒化シリコンであって、前記第2部材がアルミニウム、チタン、金、タングステン、または白金であることを特徴としている。
[0016]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を計測する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、前記浮遊構造体は、前記発熱体と前記温度センサの周囲を覆う第1部材と、前記第1部材の少なくとも表面に接合される前記第1部材より放射率の低い第2部材とにより形成され、前記第2部材が、前記第1部材よりも透過率が高いことを特徴としている。
[0017]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記第1部材が酸化シリコンまたは窒化シリコンであって、前記第2部材が単結晶シリコン、多結晶シリコン、またはアモルファスシリコンであることを特徴としている。
[0019]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記基板の上面に窪み部が形成され、前記浮遊構造体が前記支持構造体によって前記窪み部の上方に保持されることを特徴としている。
[0020]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記基板の上面が平坦に形成され、前記浮遊構造体が前記支持構造体によって前記基板の上面より上方に持ち上げるように保持されることを特徴としている。
[0021]
また、本発明に係るマイクロ真空計は、前記第2部材が、複数の薄膜の積層構造からなることを特徴としている。
【0023】
また、本発明に係るマイクロ真空計は、基板と、該基板から延びる支持構造体によって前記基板から熱分離された状態で前記基板の上方に保持された浮遊構造体と、該浮遊構造体に配置されて発熱する発熱体と、前記浮遊構造体に配置されて前記基板と前記浮遊構造体との温度差を測定する温度センサと、を備えてなるマイクロ真空計において、前記基板の上面に窪み部が形成されるとともに該窪み部の上方に前記浮遊構造体が前記支持構造体によって保持される一方、赤外線を反射して前記浮遊構造体からの輻射によるエネルギー損失を減少させる部材が、前記基板の裏面に形成されることを特徴としている。
[0024]
[0025]
[0026]
[0027]
[0028]
[0029]
発明の効果
[0030]
本発明に係るマイクロ真空計によれば、浮遊構造体は、発熱体と温度センサの周囲を覆う第1部材と、第1部材の少なくとも表面に接合される第1部材より放射率の低い第2部材とにより形成され、該第2部材の上面視での面積が第1部材より大きいので、浮遊構造体全体が第1部材と同じ材質からなる従来のマイクロ真空計に比べて、浮遊構造体からの熱輻射による熱損失が小さくなる。そのため、マイクロ真空計にて計測可能な圧力範囲を低圧側に拡大することが可能となる。
[0031]
また、本発明に係るマイクロ真空計によれば、第2部材が第1部材よりも反射率が高いので、第2部材の放射率を第1部材よりも低くすることが可能となる。
[0032]
また、本発明に係るマイクロ真空計によれば、第2部材が第1部材よりも透過率が高いので、第2部材の放射率を第1部材よりも低くすることが可能となる。
[0033]
また、本発明に係るマイクロ真空計によれば、浮遊構造体が基板の上面に形成された窪み部の上方に保持されるので、浮遊構造体と基板との間に容易に空洞を設けることができる。
[0034]
また、本発明に係るマイクロ真空計によれば、基板の上面が平坦に形成され、浮遊構造体が支持構造体によって基板の上面より上方に持ち上げるように保持されるので、浮遊構造体と基板との間に容易に空洞を設けることができる。
[0035]
[0036]
また、本発明に係るマイクロ真空計によれば、基板の上面に窪み部が形成されるとともに該窪み部の上方に浮遊構造体が支持構造体によって保持される一方、赤外線を反射して浮遊構造体からの輻射によるエネルギー損失を減少させる部材が、基板の裏面に形成されるので、当該部材を容易に形成することができる。また、当該部材の追加も容易に行なうことができる。
[0037]
[0038]
[0039]
[0040]
[0041]
【図面の簡単な説明】
[0042]
[図1]本発明の第1の実施形態に係るマイクロ真空計10を示す平面図である。
[図2]マイクロ真空計10を示し、図1におけるA-A断面図である。
[図3]マイクロ真空計10の熱損失-圧力特性を示すグラフである。
[図4]本発明の第2の実施形態に係るマイクロ真空計20を示す断面図である。
[図5]本発明の第3の実施形態に係るマイクロ真空計30を示す平面図である。
[図6]マイクロ真空計30を示し、図5におけるB-B断面図である。
[図7]本発明の第4の実施形態に係るマイクロ真空計40を示す平面図である。
[図8]マイクロ真空計40を示し、図7におけるC-C断面図である。
[図9]本発明の第5の実施形態に係るマイクロ真空計50を示す断面図である。
[図10]本発明の第5の実施形態の変形に係るマイクロ真空計50´を示す断面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係るマイクロ真空計60を示す断面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態の変形に係るマイクロ真空計60´を示す断面図である。
【図13】本発明の第7の実施形態に係るマイクロ真空計70を示す断面図である。
【図14】本発明の第7の実施形態の変形に係るマイクロ真空計70´を示す断面図である。
【図15】本発明の第8の実施形態に係るマイクロ真空計80を示す断面図である。
【図16】従来のマイクロ真空計90を示す平面図である。
【図17】従来のマイクロ真空計90を示し、図16におけるD-D断面図である。
【図18】従来のマイクロ真空計90の熱損失-圧力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
10、20、30、40、50、50´、60、60´、70、70´、80 マイクロ真空計
11、41、71 半導体基板(基板)
12、22、32、42、52、62、72 浮遊構造体
13 ヒータ(発熱体)
14 温度センサ
15、25、55、55´、75 第1部材
16、26a、26b 第2部材(高反射率薄膜)
36 第2部材(高透過率薄膜)
17 窪み部
18、48、78 支持構造体
19、49、79 絶縁膜
56、56´、66、66´、76、76´、86 部材(高反射薄膜)
L マイクロ真空計素子
M パッケージ基板
N パッケージキャップ
S 空洞
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ真空計10について、図面に基づき説明する。マイクロ真空計10は、図1および図2に示すように、半導体基板(基板)11と、半導体基板11から熱分離された浮遊構造体12とを備える熱伝導方式のマイクロ真空計である。浮遊構造体12には、ヒータ(発熱体)13および温度センサ14が配置されている。浮遊構造体12は、ヒータ13および温度センサ14の周囲を覆う第1部材15と、第1部材15よりも放射率の低い第2部材16とからなっている。半導体基板11の上面に窪み部17が形成され、浮遊構造体12が窪み部17の上方に支持構造体18にて保持されており、半導体基板11と浮遊構造体12との間に空洞(空隙)Sを有し空間を隔てている。
【0045】
半導体基板11および第1部材15は、MEMS技術の代表的な材料であるシリコン酸化膜SiOまたはシリコン窒化膜SiNを用いることができる。半導体基板11は、窪み部17が形成された部分以外の上面は、絶縁体薄膜19で覆われている。支持構造体18は、絶縁物質からなり、半導体基板11の窪み部17の周囲から延びて浮遊構造体12を窪み部17の上方にて保持する支持脚として構成されている。
【0046】
ヒータ13は、ポリシリコンからなる抵抗体などを用いることができる。温度センサ14としては、抵抗ボロメータ、ダイオード、熱電素子(熱電対またはサーモパイル)などを用いることができる。ただし、半導体基板11と浮遊構造体12との温度差を計測する必要があるので、温度差に対応した出力が得られる熱電素子以外では、図示しないが、半導体基板11上に基準温度センサを配設することが好ましい。また、ヒータ13にはヒータ配線13a、13bが接続されており、温度センサ14には温度センサ配線14a、14bが接続されている。温度センサ14に熱電素子の1つであるサーモパイルを用いた場合には、浮遊構造体12と半導体基板11がヒートシンクとして働く領域の間に多数の配線を形成する必要が生じることもある。
【0047】
マイクロ真空計10は、図16および図17に示した前記従来のマイクロ真空計90と同様に、半導体基板11との間に空洞Sを介する浮遊構造体12を有している。そして、マイクロ真空計10は、浮遊構造体12以外の構造は、従来のマイクロ真空計90と同様である。しかし、浮遊構造体12のうち第1部材15の平面的な(上面視における)大きさは、ヒータ13と温度センサ14を配置するために必要な最小サイズにすることが好ましく、従来のマイクロ真空計90における浮遊構造体92が占めていたそれ以外の領域は第1部材15および浮遊構造体92と比較して放射率の低い第2部材である高反射率薄膜16にて構成されている。
【0048】
高反射率薄膜16は、半導体製造プロセスにて配線金属材料として用いられるアルミニウムから形成されている。これにより、マイクロ真空計10を製造する際に、半導体製造プロセスを適応することができ、容易に製造することが可能となる。しかしながら、アルミニウムに限定されるものではなく、放射率が低いものであればチタン、金等の金属を含めてどのような材料を用いてもいい。なお、第1部材15は通常シリコン酸化膜SiO、シリコン窒化膜SiN、またはこれらを基本として他の元素を付加したものや、化学的組成を若干変更したものに、技術的およびコスト的観点から限定される。そのため、高反射率薄膜16は、第1部材15を構成するこれらの材料と比較して高い反射率であればよい。また、高反射率薄膜16として、例えばフォトニッククリスタルのような複数の薄膜の積層構造を採用することもできる。高反射率薄膜16は、厚さ1μm程度でよい。また、高反射率薄膜16は、表面がザラザラであると反射率が低くなるので、表面は平坦かつ平滑であることが好ましい。
【0049】
支持構造体18を通した熱伝導は、支持構造体18の材料と形状により低減することが可能である。例えば、図1および図2にて示したような単純な平板形状の構造ではなく、蛇行形状などを採用することにより、支持構造体18を通した熱伝導による熱損失を第1部材15と高反射率薄膜16からの熱輻射による熱損失に比べて小さくすることが可能である。本発明は、支持構造体18の熱伝導による熱輻射が、浮遊構造体12の熱伝導による熱損失と同等レベルまたは小さい場合に特に有効である。
【0050】
マイクロ真空計10は、図1および図2においては、第1部材15と第2部材としての高反射率薄膜16は、側面で接するような構造が示されている。しかし、実際にはこれらの2つの部材15、16は、機械的および熱的に強固に接合されるよう、製造プロセスと設計ルールを満たすように構成される。例えば、高反射率薄膜16が第1部材15の一部に乗り上げた構造、第1部材15が複数の薄膜の積層構造からなり高反射率薄膜16が第1部材15の一部に食い込んだ構造、高反射率薄膜16が第1部材15の下に潜り込んだ構造にて構成される。
【0051】
次に、マイクロ真空計10の動作を説明する。マイクロ真空計10は、ヒータ13と温度センサ14を配置した第1部材15と高反射率薄膜16からの熱損失を温度変化または投入する電力変化として計測する。ここでは動作の一例としてヒータ13に一定電力を投入する場合について説明する。
【0052】
ヒータ13にヒータ配線13a、13bを通して一定電流を流し、ヒータ13にて一定電力を消費するように駆動すると、第1部材15および第1部材15と熱的に強固に結合した高反射率薄膜16の温度は上昇する。このとき、ヒータ13に通電していない時からの温度変化(半導体基板11と第1部材15および高反射率薄膜16との温度差)は、ヒータ13に投入した電力、支持構造体18の熱伝導による熱損失、第1部材15と高反射率薄膜16からこれらを取り巻く気体を通しての熱伝導による熱損失、第1部材15と高反射率薄膜16からの熱輻射による熱損失により決まる。
【0053】
上記3種類の熱損失メカニズムを考慮した第1部材15および高反射率薄膜16全体としての熱損失の気体の圧力依存性は、図3に示すように、従来のマイクロ真空計90と同様に、高い気圧の領域で気体の熱伝導が圧力に依存しないことを反映して熱損失が圧力に依存しない領域R1、気体を通した熱伝導が気体の圧力の比例し圧力の減少とともに熱損失が減少する領域R2と、気体の圧力に依存しない支持構造体18を通した熱伝導による熱損失と第1部材15と高反射率薄膜16からの熱輻射による熱損失を加算した熱損失により決まる最低レベルとなる低圧領域R3に分かれる。
【0054】
光の透過、吸収、反射に関しては、キルヒホッフの法則が成立し、1つの部材では、これらを全て加えたものが入射した光の全体を与えるため、それぞれの割合を加えたものは1になる。物体からの輻射を決定する放射率は、吸収率に一致するため、反射率が1に近い物質の放射率は非常に小さくなる。
【0055】
従来のマイクロ真空計90の特性は、図3において点線にて示されている。これから理解されるように、マイクロ真空計10においては、従来の浮遊構造体92を高反射率薄膜16に置き換えた部分からの輻射による熱損失が減少することにより、支持構造体18を通した熱伝導による熱損失と第1部材15と高反射率薄膜16からの熱輻射による熱損失を加算した熱損失がΔQだけ小さくなる。例えば、従来の支持構造体98を通した熱伝導による熱損失を浮遊構造体92からの熱輻射による熱損失に比べ無視できるほど小さくし、従来の浮遊構造体92のほとんどを高反射率薄膜16で置き換え、さらに支持構造体18を通した熱伝導による熱損失を第1部材15と高反射率薄膜16からの熱輻射による熱損失に比べ無視できるほど小さくした場合、すなわち、従来と本実施形態における計測可能領域(領域R2)の下限を熱輻射が決める場合には、領域R3の熱損失をほぼ従来の浮遊構造体92と高反射率薄膜16の放射率の比だけ小さくすることができる。
【0056】
領域R2の特性は、従来の浮遊構造体92を高反射率薄膜16で置き換えることにより、構造表面における気体とのエネルギー交換率が変化する。この変化は放射率の変化に比べ十分小さいので、本マイクロ真空計10を使用することにより、領域R2から領域R3に移行する圧力は、輻射による熱損失が低下した分のΔPだけ低圧側に移動し、計測可能な圧力範囲は低圧側に拡大されることになる。計測可能な圧力下限は、例えば、1×10-2Pa程度となる。
【0057】
マイクロ真空計10においては、支持構造体18は1つであり、長方形の平面板状構造であるが、支持構造体18は複数本からなるものであってもよく、蛇行形状などの複雑な形状であってもよい。また、支持構造体18は、第1部材15だけでなく、高反射率薄膜16に接続する構造としてもよい。
【0058】
また、マイクロ真空計10においては、第1部材15は支持構造体18に接続した長方形の平面板状構造であるが、製造プロセス、設計ルールによる制約や応力調整、構造体強度強化のために高反射率薄膜16の周囲の全部または一部に帯状に形成することや、高反射率薄膜16の広がった面に枝状に配置することも可能である。また、高反射率薄膜16は、その上面視における面積は大きい方が好ましいが、様々な設計的制約により面積が少なくなっても、比率的に効果が生ずる。
【0059】
次に、本発明による第2の実施形態に係るマイクロ真空計20について、図面に基づいて説明する。マイクロ真空計20は、図4に示すように、浮遊構造体22が窪み部17の上方をほぼ覆うように支持構造体18にて保持されており、浮遊構造体22の平面的な(上面視における)大きさとほぼ同一の第1部材25が形成され、この第1部材25の上面および下面の全面に渡って第2部材としての高反射率膜26a、26bが形成されている。上面視にては、前記マイクロ真空計10における第1部材15および高反射率膜16が占めていた領域を、第1部材25が占めることになる。すなわち、マイクロ真空計20は、図16および図17に示した従来のマイクロ真空計90の浮遊構造体92の上面および下面に高反射率薄膜26a、26bを追加して形成した構造を有している。
【0060】
反射は最表面層の材料と構造にて決まるので、マイクロ真空計20も前記マイクロ真空計10と同様に、高反射率膜26a、26bからの輻射の減少により領域R3の熱損失を低減し、計測可能範囲を低圧側に拡大することができる。マイクロ真空計20においては、高反射率薄膜26a、26bを浮遊構造体22の上下全面を覆うように第1部材25の上下両面に全面に渡って形成しているが、全面に渡っていなくともよく、上面または下面の一方のみに形成してもよい。
【0061】
次に、本発明による第3の実施形態に係るマイクロ真空計30について、マイクロ真空計10との相違点についてのみ説明する。マイクロ真空計30は、図5および図6に示すように、図1および図2に示したマイクロ真空計10の高反射率薄膜16を高透過率薄膜36に置き換えた以外は全てマイクロ真空計10と同じ構造である。
【0062】
上述したキルヒホッフの法則を考慮すれば、透過率が1に近い材料は放射率が非常に小さくなる。そのため、マイクロ真空計10の動作の説明で述べた理由と同様の理由にて、測定可能な圧力範囲を低圧側に拡大できる。通常マイクロ真空計が動作する環境の温度領域は高い場合でも200℃から300℃であり、輻射される光は赤外線領域の光になる。高透過率薄膜36に用いる材料は、この領域の光に対して高い透過性を有する低濃度ドーピングポリシリコンなどが好ましいが、これに限定されず動作温度付近の黒体が輻射する赤外線に対して透過性の高い材料であれば同様の効果が得られる。また、マイクロ真空計30は、図5および図6に示した構造、形状に限定されず、マイクロ真空計10に関して述べた設計上の変更を適宜行うことも可能である。
【0063】
次に、本発明による第4の実施形態に係るマイクロ真空計40について、マイクロ真空計10との相違点についてのみ説明する。マイクロ真空計40は、図7および図8に示すように、マイクロ真空計10等のように浮遊構造体12を半導体基板11の上面とほぼ同一の高さに保持するのではなく、浮遊構造体42を支持構造体48にて半導体基板41の上面から上方に持ち上げた状態で保持している。そのため、半導体基板41の上面に窪み部を形成する必要がない。
【0064】
このマイクロ真空計40の動作についても、マイクロ真空計10と同様であり、高反射率薄膜16からの輻射の減少により領域R3の熱損失を低減し、計測可能範囲を低圧側に拡大することができる。また、マイクロ真空計40は、図7および図8に示した構造、形状に限定されず、マイクロ真空計10に関して述べた設計上の変更を適宜行うことも可能である。
【0065】
次に、本発明による第5の実施形態に係るマイクロ真空計50について説明する。マイクロ真空計50は、図9に示すように、前記従来のマイクロ真空計90に対して高反射率薄膜56を半導体基板11の下面に追加した構成である。半導体基板11の上面には窪み部17が形成されている。この窪み部17の上面に高反射率薄膜を形成することは困難である。そこで、半導体基板11の裏面に高反射率薄膜56を追加して形成している。
【0066】
輻射によるエネルギーの授受は浮遊構造体52と周辺物体の間にてなされるが、いずれかの物体の反射率が高くなると伝達されるエネルギーが減少する。そのため、マイクロ真空計50においては、周辺物体の反射率を高めて輻射によるエネルギー損失を減少させ、領域R3の熱損失を低減することにより、計測可能範囲を低圧側に拡大している。輻射のエネルギーを運ぶ赤外線に対し半導体基板11の材料であるシリコンは透明性が高いので、このような効果を得ることができる。
【0067】
次に、本発明による第5の実施形態の変形に係るマイクロ真空計50´について説明する。マイクロ真空計50´は、図10に示すように、前記マイクロ真空計40と同様に半導体基板41の上面に窪み部が形成されておらず、浮遊構造体52´が支持構造体48にて持ち上げられ保持されている。高反射率薄膜56´は、半導体基板41上に形成した絶縁膜49の上面に形成されている。マイクロ真空計50´は、マイクロ真空計50と同様に、浮遊構造体52´の周辺物体の反射率を高めて輻射によるエネルギー損失を減少させ、領域R3の熱損失を低減することにより、計測可能範囲を低圧側に拡大している。
【0068】
浮遊構造体52、52´は、上側と下側の両方に赤外線を輻射する。そのため、マイクロ真空計50、50´においては、浮遊構造体52、52´から輻射されるエネルギーのうち下側に輻射されたものだけを減少させる効果があり、マイクロ真空計20に比べて効果がほぼ半分になる。なお、他の実施形態と組み合わせてマイクロ真空計の効果を補完するために使用することもできる。
【0069】
次に、本発明による第6の実施形態に係るマイクロ真空計60について説明する。マイクロ真空計60は、図11に示すように、前記従来のマイクロ真空計90に対して、浮遊構造体52の上方を空間を隔てて覆う高反射率薄膜66を追加した構成である。半導体基板11の上面には窪み部17が形成されている。高反射率薄膜66は、半導体基板11上の絶縁膜19の上面に上方に延出するように形成されている。高反射率薄膜66は、上面視にて浮遊構造体52と重なり合うように形成されている。マイクロ真空計60は、マイクロ真空計50とは上下逆に、浮遊構造体52から輻射されるエネルギーのうち上側に輻射されたものだけを減少させる効果がある。なお、他の実施形態に付加した形で実現することもでき、マイクロ真空計の効果をさらに向上することが可能となる。
【0070】
次に、本発明による第6の実施形態の変形に係るマイクロ真空計60´について説明する。マイクロ真空計60´は、図12に示すように、浮遊構造体52´の上方を空間を隔てて覆う高反射率薄膜66´が半導体基板41上に形成した絶縁膜49の上面に形成されている。高反射率薄膜66´は、上面視にて浮遊構造体52´と重なり合うように形成されている。マイクロ真空計60´は、マイクロ真空計50´とは上下逆に、浮遊構造体52´から輻射されるエネルギーのうち上側に輻射されたものだけを減少させる効果がある。なお、他の実施形態に付加した形で実現することもでき、マイクロ真空計の効果をさらに向上することが可能となる。
【0071】
次に、本発明による第7の実施形態に係るマイクロ真空計70について説明する。マイクロ真空計70においては、図13に示すように、半導体基板11、浮遊構造体52や支持構造体18等からなるマイクロ真空計素子Lは従来と同じ構造を有している(前記従来のマイクロ真空計90と全く同じ構成である。)が、マイクロ真空計素子Lを実装するパッケージ基板Mのマイクロ真空計素子Lとの接合面に高反射率薄膜76が形成されている。高反射率薄膜76は、上面視にて浮遊構造体52と重なり合うように形成されている。マイクロ真空計70は、マイクロ真空計50と同様に、浮遊構造体52から輻射されるエネルギーのうち下側に輻射されたものだけを減少させる効果がある。なお、他の実施形態に付加した形で実現することもでき、マイクロ真空計の効果をさらに向上することが可能となる。
【0072】
次に、本発明による第7の実施形態の変形に係るマイクロ真空計70´について説明する。マイクロ真空計70´においては、図14に示すように、そのマイクロ真空計素子L´の半導体基板71に上下方向に貫通した空洞S´が形成されているとともに、浮遊構造体72が支持構造体78により両持ちにて支持されている。そして、マイクロ真空計素子L´を実装するパッケージ基板Mのマイクロ真空計素子L´との接合面に高反射率薄膜76が形成されている。さらに、空洞S´は半導体基板71を貫通して形成するために、半導体基板71の裏面からの異方性エッチングを行うのが一般的であり、この場合、空洞S´は下面に開いた形状となる。そのため、空洞S´を囲む半導体基板71の内面上に高反射率薄膜76´を形成することができ、さらに効果が高めることが可能となる。
【0073】
本発明による第8の実施形態に係るマイクロ真空計80について説明する。マイクロ真空計80においては、図15に示すように、マイクロ真空計素子Lを実装するパッケージ基板Mに装着されてマイクロ真空計素子Lを上方から覆い囲うパッケージキャップNの内面に高反射率薄膜86が形成されている。高反射率薄膜86は、上面視にて浮遊構造体52と重なり合うように形成されている。マイクロ真空計80は、マイクロ真空計60と同様に、浮遊構造体52から輻射されるエネルギーのうち上側に輻射されたものだけを減少させる効果がある。なお、他の実施形態に付加した形で実現することもでき、マイクロ真空計の効果をさらに向上することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係るマイクロ真空計は、従来のマイクロ真空計に比べ低圧側の測定範囲を拡大したので、熱型赤外線センサなどで上限圧力として要求される圧力レベルより低い圧力の計測を可能にした。本発明に係るマイクロ真空計は、熱型赤外線センサを作製する製造プロセスと同じ技術で作製することができるので、熱型赤外線センサに集積化して、信頼性試験における真空度劣化の影響の解析や、実フィールドで使用される製品の自己診断に適用することができる。MEMSデバイスでは、物理量センサである加速度センサや角速度センサや、RF MEMS(高周波MEMS)と呼ばれる技術分野でも真空封止技術が高性能化、高信頼性化のキー技術と考えられており、こうしたデバイスの中に集積化されて使用されることも期待できる。また、MEMS技術により作製していない本発明に係るマイクロ真空計は、サイズが大きいため使用する対象が限定されているが、マイクロ真空計が計測範囲で従来の真空計に匹敵する性能を有するようになると、応用分野はMEMSデバイス以外の微小領域圧力計測にも広がると考えられる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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