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明細書 :蛍石型またはその派生構造の酸化物焼結体とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3223267号 (P3223267)
公開番号 特開平11-189469 (P1999-189469A)
登録日 平成13年8月24日(2001.8.24)
発行日 平成13年10月29日(2001.10.29)
公開日 平成11年7月13日(1999.7.13)
発明の名称または考案の名称 蛍石型またはその派生構造の酸化物焼結体とその製造方法
国際特許分類 C04B 35/50      
C04B 35/48      
C04B 35/626     
FI C04B 35/50
C04B 35/48
C04B 35/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 3
出願番号 特願平09-367208 (P1997-367208)
出願日 平成9年12月25日(1997.12.25)
審査請求日 平成9年12月25日(1997.12.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】斎藤 紀子
【氏名】羽田 肇
【氏名】池上 隆康
審査官 【審査官】武重 竜男
参考文献・文献 特開 平7-149521(JP,A)
調査した分野 C04B 35/00 - 35/22
C04B 35/42 - 35/50
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する多結晶酸化物焼結体製造用の酸化物原料粉末であって、Si不純物の量が1000ppm以下の精製されていない酸化物原料粉末に0.1μm以下の粒径の表面活性なSi酸化物コロイドが添加され、乾燥および/または仮焼されてなることを特徴とする酸化物原料粉末

【請求項2】
請求項1記載の酸化物原料粉末を成形し、次いで焼結することによって形成された結晶粒界に酸素イオン伝導のバリアとなる不純物としてのSiが存在していない蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する多結晶酸化物焼結体

【請求項3】
3重点にのみ不純物としてのSiが存在していることを特徴とする請求項2記載の酸化物焼結

【請求項4】
蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物原料粉末の水溶液に、0.1μm以下の粒径の表面活性なSi酸化物コロイドを酸化物原料粉末の金属イオンに対する比[Si]/[M]として10-310-4モル%の量で添加し、沈殿物を乾燥および/または仮焼することを特徴とする請求項1記載の酸化物原料粉末の製造方法

【請求項5】
請求項1記載の酸化物原料粉末を成形し、次いで3重点に添加したSi酸化物コロイドによる不純物の固まりが粒界に存在していたシリケートの液相を引き寄せるように焼結することによって、結晶粒界から酸素イオン伝導のバリアとなる不純物としてのSiを除去することを特徴とする蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する多結晶酸化物焼結体の製造方法
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物焼結体とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、O2ガスセンサー、COガスセンサー、O2 ポンプ、不完全燃焼センサー、高温固体電解質燃料電池などの酸素イオン伝導体として有用な、蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物焼結体とその製造方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術とその課題】従来より、希土類金属の酸化物の結晶形態の1つである蛍石型結晶構造、例えば、ZrO2、CeO2等における結晶構造や、この構造から誘導される類似構造(本明細書において「派生構造」という)を有する酸化物の、例えば、Y23などのC型構造、Y2Ti27などのパイロクロア構造は、酸素の占める空隙スペースが広く、酸素の拡散が容易な構造を有するため、高い酸素イオン伝導性を示すことが知られている。

【0003】
しかしながら、多結晶焼結体においては、SiやAlなどの固溶量の低い不純物が存在する場合には、結晶粒界にそれらの不純物が析出し、それが酸素イオン伝導のバリアとなって、イオン伝導性が妨げられるという問題点があった。そこで、この問題を解決するために、原料粉末を精製し、不純物を取り除くことが行われてきた。しかしながら、これらの従来の方法においては、粉末の製造条件の厳密な制御が必要とされるため、多額の経費を要するという問題が生じていた。

【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のような従来技術の問題点を解消し、原料粉末の精製を行わずに製造することのできる、酸素イオン伝導性に優れた蛍石型及びその派生構造の結晶構造を有する酸化物焼結体とその製造方法を提供することを目的としている。

【0005】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する多結晶酸化物焼結体であって、結晶粒界には酸素イオン伝導のバリアとなる不純物としてのSiが存在していないことを特徴とする酸化物焼結体提供する。

【0006】
また、この出願の発明は、上記の酸化物焼結体であって、3重点にのみ不純物としてのSiが存在している酸化物焼結体提供する。そして、この出願の発明は、Siの活性酸化物のコロイドを原料化合物に混合して得た酸化物粉末を成形し、次いで焼成することにより結晶粒界には酸素イオン伝導のバリアとなる不純物としてのSiが存在していない蛍石型またはその類似型の結晶構造を有する多結晶酸化物焼結体を製造することを特徴とする酸化物焼結体の製造方法提供する。

【0007】
さらに、この発明は、添加するSiの活性酸化物は、その量が、金属イオンに対する比として10-3~10-4モル%であるこ、添加するSiの活性酸化物0.1μm以下の粒径の表面活性な酸化物であるこ等の態様をも提供する。

【0008】

【発明の実施の形態】この出願の発明は、Siの活性酸化物のコロイドを均一添加して得た酸化物原料粉末を用いることによって、焼結体中のSiの不純物を析出物として集め、結晶粒界としての界面を清浄化した焼結体を得ることができるとの知見に基づいて完成されている。

【0009】
清浄化が可能なSi不純物の量としては、一般的な目安としては1000ppm以下を対象としている。添加するSiの活性酸化物は、清浄化したい不純物元素としてのSiの酸化物であって、その粒径が0.1μm以下の表面活性な酸化物コロイド粒子であることが特に望ましい。

【0010】
この場合の「活性」の規定は、粒子の表面エネルギーが大きいことを意味している。添加する活性酸化物コロイドの量は、金属イオンに対する比、つまり、[Si]/[M]が10-3~10-4モル%が適当である。それ以下では清浄化されない不純物が界面に残ってしまい、効果が十分に現われない。また、それ以上添加すると、界面をさらに汚してしまうので適当でない。

【0011】
蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物原料粉末への活性酸化物コロイドの添加は、均一に添加することが重要である。そのためには、原料粉末を湿式プロセスによって合成する場合に、原料溶液に活性酸化物コロイドを混合したものを用いて母塩を生成し、それを仮焼して粉末とする方法によることが望ましい。もしくは、蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物原料粉末と活性酸化物コロイド粉末を分散液に混合し、乾燥させることによって調製する。ここで、原料粉末の製造方法については特に限定するものではないが、分散性に優れた易焼結性粉末を製造する方法によることが好ましい。

【0012】
不純物を含む粉末を成形して焼成すると、焼結中の粒成長とともに、固溶量の低い不純物は粒子表面へと移動し、高温で焼成すると液相化して粒界を濡らす。しかしながら、この発明の活性酸化物コロイドを添加した原料粉末を用いる方法によって、蛍石型またはその派生構造の結晶構造を有する酸化物焼結体を合成すると、シリケートの液相の濡性が低いため、3重点等に添加したコロイドによる不純物の固まりが粒界に存在していた液相を引き寄せる役割を果たす。この効果によって、不純物は3重点等に析出物として集まり、粒界から不純物が除去される。

【0013】
なお、この発明において蛍石型結晶構造の派生構造(DerivativeStructure)のものとしては、従来より知られているように、たとえばY23などのC型構造やY2Ti27などのパイロクロア構造等がある。焼結体の組成は、特に限定されることなく、蛍石型あるいはその派生構造の結晶構造を持つ各種の元素酸化物の組成であってよい。

【0014】
このような、この発明により提供される酸化物焼結体では、酸素イオン伝導性が優れたものとなり、各種センサーの材料として有用となる。イオン伝導性についてはこれまでに知られているジルコニアに比べて約1桁以上向上するものとなる。以上に実施例を示し、さらに詳しく説明する。

【0015】

【実施例】実施例1
Y量に対して50ppmのSiを不純物として含むY(NO3)3水溶液に、Y量に対して50ppmの平均粒径0.02μmのコロイダルシリカを添加した。その水溶液をNH4HCO3水溶液で中和して沈殿物を生成した。その沈殿を洗浄、乾燥した後に1100℃で仮焼して平均粒径0.3μmのY23 粉末を得た。それを成形後、真空中、1700℃で焼成して、焼結体を得た。

【0016】
結体の表面を研磨した後、2次イオン質量分析計によりSiの分析を行ったところ、Siは3重点に偏析しており、粒界には存在しなかった。
実施例2
Zr量に対して50ppmのSiを不純物として含む3mol%Y(NO33添加ZrO(NO3)2水溶液に、Zr量に対して50ppmの平均粒径0.02μmのコロイダルシリカを添加した。その水溶液をNH4水で中和して沈殿物を生成した。その沈殿を洗浄、乾燥した後で700℃で仮焼して平均粒径0.4μmのZrO2粉末を得た。それを成形後、空気中1500℃で焼成して、焼結体を得た。

【0017】
焼結体の表面を研磨した後、2次イオン質量分析計により、Siの分析を行ったところ、Siは3重点に偏析しており、粒界には存在しなかった。

【0018】
比較例1
比較として、実施例1において、コロイダルシリカを添加せずに焼結体を合成した。焼結体の表面を研磨した後、2次イオン質量分析計により、Siの分析を行ったところ、Siは粒界に沿って薄く存在していることが認められた。
比較例2
比較として、実施例1において、コロイダルシリカを1%添加した場合を調べた。焼結体の表面を研磨した後、2次イオン質量分析計により、Siの分析を行ったところ、Siは析出物として存在してはいたが、その数が多く、粒界を埋めてしまっていた。

【0019】

【発明の効果】以上詳しく説明したように、この発明によって、精製した蛍石型またはその派生構造の結晶構造を持つ酸化物粉末を原料に用いなくとも、焼結体中のi不純物を析出物として集めることによって、界面から不純物が除去された、酸素イオン伝導性に優れた、蛍石型またはその類似型の結晶構造を有する酸化物焼結体を提供することができる。