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明細書 :ホモアリルエーテルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5110537号 (P5110537)
公開番号 特開2010-209031 (P2010-209031A)
登録日 平成24年10月19日(2012.10.19)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 ホモアリルエーテルの製造方法
国際特許分類 C07C  41/30        (2006.01)
C07C  43/166       (2006.01)
C07D 333/16        (2006.01)
C07C  43/176       (2006.01)
C07C  67/343       (2006.01)
C07C  69/76        (2006.01)
C07C  43/205       (2006.01)
C07C  43/178       (2006.01)
C07C  43/15        (2006.01)
C07C  43/162       (2006.01)
C07C 201/12        (2006.01)
C07C 205/34        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 41/30
C07C 43/166
C07D 333/16
C07C 43/176
C07C 67/343
C07C 69/76 Z
C07C 43/205 A
C07C 43/178 A
C07C 43/15
C07C 43/162
C07C 201/12
C07C 205/34
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 15
出願番号 特願2009-058950 (P2009-058950)
出願日 平成21年3月12日(2009.3.12)
審査請求日 平成22年6月22日(2010.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】ウーベ シュナイダー
個別代理人の代理人 【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】岩井 好子
参考文献・文献 特開2008-255093(JP,A)
特開2005-330235(JP,A)
Tetrahedron Letters,1989年,Vol.30, No.15,p.2013-2016
調査した分野 C07C 41/30
C07C 43/15
C07C 43/162
C07C 43/166
C07C 43/176
C07C 43/178
C07C 43/205
C07C 67/343
C07C 69/76
C07C 201/12
C07C 205/34
C07D 333/16
C07B 61/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ホウ素を含むアリル化剤によってアセタールをアリル化するホモアリルエーテルの製造方法であって、前記アセタールに対し1~50mol%のInOTfを触媒として用い
前記アリル化剤は、式(1)
【化1】
JP0005110537B2_000027t.gif
(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又はシリル基;Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基)で表されるか、
又は式(2)
【化2】
JP0005110537B2_000028t.gif
(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又はシリル基)で表されるピコナールアリルボレートであり、
前記アセタールは、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、3-フェニルプロパナールジメチルアセタール、
又は
【化21】
JP0005110537B2_000029t.gif
(式中、R5、R6の組み合わせは、それぞれC6H5、H;3-O2N-C6H4、H;3-F3C-C6H4、H;4-MeO2C-C6H4、H;4-Br-C6H4、H;4-MeO-C6H4、H;3-HO-C6H4、H;2-チエニル、H;Ph-CH2、H;Ph(CH2)2、H;Me(CH2)10、H;Me(CH2)3 CH(Et)、H;Ph、Me;Cl(CH2)4、Me;-(CH2)5 -、-(CH2)5 -;のいずれか)で表されるホモアリルエーテルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、アリル化剤によってアセタールをアリル化するホモアリルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセタールは、糖類合成への応用を含む有機合成において有用な合成中間体であり、様々な求核剤とのカップリングによって炭素-炭素結合を形成する。アセタールに用いる有効な求核剤としては、シリルエノールエーテル、ビニルエーテル、オレフィン、シアン化合物、アリル化試薬などがある。
また、アセタールのアリル化によって生成するホモアリルエーテルは、水酸基の保護基として多段階の有機合成における重要なビルディングブロックとなる。但し、アセタールのアリル化方法は数少なく、有毒性、腐食性、基質の制限性、触媒使用量などの点で様々な問題がある。
【0003】
アセタールのアリル化反応については多数報告されており、それらは大きく、(1)アリルシランを用いる反応(細見-桜井反応)、(2)アリルホウ素を用いる反応、(3)臭化アリルを用いる反応(バービアー反応)、に分けられる。
【0004】
アリルシランを用いる反応は、アセタールのアリル化反応では最も研究されている方法であり、さらに、(i) 化学量論量のルイス酸を用いるもの、(ii) 触媒量のルイス酸を用いるもの、(iii) ブレンステッド酸を用いるもの、がある。
化学量論量のルイス酸としては、マイクロ波を用いた反応系での臭化銅(I)(CuBr)(非特許文献1参照)、四塩化チタニウム(TiCl4)(非特許文献2参照)、三塩化アルミニウム(AlCl3)又は三塩化ホウ素-ジエチルエーテル(BF3-OEt2)(非特許文献3参照)が挙げられる。
触媒量のルイス酸としては、塩化ニオブ(V)—過塩素酸銀(I)(NbCl5-AgClO4)(非特許文献4参照)、三臭化アルミニウム-臭化銅(AlBr3-CuBr)(非特許文献5参照)、二座の有機アルミニウム化合物(非特許文献6参照)、三塩化鉄(FeCl3)(非特許文献7参照)、トリメチルシリルトリフラート(TMSOTF)(非特許文献8,9参照)、ビスマス(III)トリフラート(Bi(OTf)3)(非特許文献10参照)、スカンジウム(III)トリフラート(Sc(OTf)3)(非特許文献11参照)、トリメチルシリルビス(フルオロスルホニル)イミド(TMSN(SO2F)2)(非特許文献12参照)、モンモリロナイト(非特許文献13参照)、過塩素酸トリチル又は
ジフェニルボリルトリフラート(非特許文献14参照)、トリメチルシリルヨウ化物(非特許文献15参照)、トルエンスルホン酸鉄(III)(Fe(OTs)3)(非特許文献16参照)が挙げられる。
ブレンステッド酸としては、2,4-ジニトロベンゼンスルホン酸(DNBA) (非特許文献17参照)が挙げられる。
【0005】
アリルホウ素としては、ブチルリチウム(BuLi)(ルイス塩基、1等量)で活性化されたトリアリルボランとTMSOTf(ルイス酸、>1等量)(非特許文献18参照)や、アリルー9-BBNと四塩化チタニウム(TiCl4)(非特許文献19参照)が挙げられる。
【0006】
臭化アリルを用いる反応としては、バービアー反応(非特許文献20参照)が挙げられる。
なお、本発明者らはすでに、インジウム(I)触媒により活性化されたピナコリルアリルボロネートを用いた、ケトンやN-ベンゾイルヒドラゾンのアリル化反応を報告している(非特許文献21~23参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】M. E. Jung, A. Maderna, J. Org. Chem. 2004, 69, 7755-7757.
【非特許文献2】A. Hosomi, E. Masahiko, H. Sakurai, Chem. Lett. 1976, 941-942.
【非特許文献3】A. Hosomi, M. Endo, H. Sakurai, Chem. Lett. 1978, 499-500.
【非特許文献4】S. Arai, Y. Sudo, A. Nishida, Tetrahedron 2005, 61, 4639-4642.
【非特許文献5】M. E. Jung, A. Maderna, Tetrahedron Lett. 2004, 45, 5301-5304.
【非特許文献6】T. Ooi, M. Takahashi, M. Yamada, E. Tayama, K. Omoto, K. Maruoka, J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 1150-1160.
【非特許文献7】T. Watahiki, Y. Akabane, S. Mori, T. Oriyama, Org. Lett. 2003, 5, 3045-3048.
【非特許文献8】H. M. Zerth, N. M. Leonard, R. S. Mohan, Org. Lett. 2003, 5, 55-57.
【非特許文献9】T. Tsunoda, M. Suzuki, R. Noyori, Tetrahedron Lett. 1980, 21, 71-74.
【非特許文献10】L. C. Wieland, H. B. Zerth, R. S. Mohan, Tetrahedron Lett. 2002, 43, 4597-4600.
【非特許文献11】J. S. Yadav, B. V. S. Reddy, P. Srihari, Synlett 2001, 673-675.
【非特許文献12】A. Trehan, A. Vij, M. Walia, G. Kaur, R. D. Verma, S. Trehan, Tetrahedron Lett. 1993, 34, 7335-7338.
【非特許文献13】M. Kawai, M. Onaka, Y. Izumi, Chem. Lett. 1986, 381-384.
【非特許文献14】T. Mukaiyama, H. Nagaoka, M. Murakami, M. Ohshima, Chem. Lett. 1985, 977-980.
【非特許文献15】H. Sakurai, K. Sasaki, A. Hosomi, Tetrahedron Lett. 1981, 22, 745-748.
【非特許文献16】M. J. Spafford, E. D. Anderson, J. R. Lacey, A. C. Palma, R. S. Mohan, Tetrahedron. Lett. 2007, 48, 8665-8667.
【非特許文献17】D. Kampen, B. List, Synlett 2006, 2589-2592.
【非特許文献18】R. Hunter, G. D. Tomlinson, Tetrahedron Lett. 1989, 30, 2013-2016; R. Hunter, J. P. Michael, G. D. Tomlinson, Tetrahedron 1994, 50, 871-888.
【非特許文献19】Y. Yamamoto, S. Nishii, J. Yamada, J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 7116-7117.
【非特許文献20】H. Tanaka, S. Yamashita, Y. Ikemoto, S. Torii, Tetrahedron Lett. 1988, 29, 1721-1724.
【非特許文献21】For our earlier work related to indium(I) catalysis: (a) U. Schneider, S. Kobayashi, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5909-5912.
【非特許文献22】U. Schneider, I-H. Chen, S. Kobayashi, Org. Lett. 2008, 10, 737-740.
【非特許文献23】S. Kobayashi, H. Konishi, U. Schneider, Chem. Commun. 2008, 46, 2313-2315.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記したようにインジウム(I)触媒がケトンやN-ベンゾイルヒドラゾンのアリル化反応に有効であることから、インジウム(I)触媒をアセタールのアリル化反応に適用することを試み、本発明に至った。
従って、本発明は、1価のインジウムを触媒として用いてアセタールをアリル化するホモアリルエーテルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、1価のインジウム触媒としてInOTfを用い、さらにホウ素を含むアリル化剤を用いることにより、触媒量のインジウムでアリル化反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のホモアリルエーテルの製造方法は、ホウ素を含むアリル化剤によってアセタールをアリル化するホモアリルエーテルの製造方法であって、前記アセタールに対し1~50mol%のInOTfを触媒として用い、前記アリル化剤は、式(1)
【化1】
JP0005110537B2_000002t.gif
(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又はシリル基;Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基)で表されるか、又は式(2)
【化2】
JP0005110537B2_000003t.gif
(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又はシリル基)で表されるピコナールアリルボレートであり、前記アセタールは、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、3-フェニルプロパナールジメチルアセタール、又は
【化21】
JP0005110537B2_000004t.gif
(式中、R5、R6の組み合わせは、それぞれC6H5、H;3-O2N-C6H4、H;3-F3C-C6H4、H;4-MeO2C-C6H4、H;4-Br-C6H4、H;4-MeO-C6H4、H;3-HO-C6H4、H;2-チエニル、H;Ph-CH2、H;Ph(CH2)2、H;Me(CH2)10、H;Me(CH2)3 CH(Et)、H;Ph、Me;Cl(CH2)4、Me;-(CH2)5 -、-(CH2)5 -;のいずれか)で表される
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、触媒量の1価インジウムを用いてアセタールをアリル化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1価のインジウム触媒としてInOTfの存在下、ホウ素を含むアリル化剤によってアセタールをアリル化するものである。
ホウ素を含むアリル化剤としては、以下の式(1)
【化1】
JP0005110537B2_000005t.gif
に示すアリルボロネート(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又は置換基を有するシリル基;Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基)が挙げられる。
は好ましくは水素原子又はメチル基である。
特に、アリル化剤として、式(2)
【化2】
JP0005110537B2_000006t.gif
で表されるピコナールアリルボレート(式中、Rは水素原子、炭化水素基、クロロ基、アルコキシ基、又は置換基を有するシリル基)を用いることが好ましい。
は好ましくは水素原子又はメチル基である。

【0014】
InOTf中の一価のインジウムが、ホウ素原子と置換する(トランスメタル化)ことで高活性なアリルインジウムが生成するか、又はインジウムがホウ素原子に配位することでアリルボロネートの活性が向上すると考えられる。

【0015】
アセタールとしては、特に制限されず、例えば、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、3?フェニルプロパナールジメチルアセタールを用いることができる。又、ケタールを用いてもよい。

【0016】
アセタールのアリル化の触媒として、アセタールに対し1~50mol%の1価のインジウムを用いる。アセタールに対するインジウムの量は、好ましくは1~20mol%、より好ましくは5~20mol%である。
1価のインジウムとしてはInOTfを用いる。溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフランを例示することができる。水中では1価のインジウムは不安定で、ゼロ価や3価のインジウムを生じるので、水は溶媒として好ましくない。

【0017】
本発明において、反応系の溶媒中の各成分の濃度はそれぞれ0.01~5mol/lであることが好ましい。
この反応の温度は、好ましくは-78~60℃である。
この反応時間は、数分~数10時間程度である。
この反応系には上記成分のほか、適宜、触媒等の公知の添加剤を添加してもよい。

【0018】
本発明の製造方法によって得られる生成物としては、種々の二級又は三級ホモアリルエーテルが挙げられ、具体的には、1-(1-メトキシブテ-2-ニル)ベンゼン、1-アリル-1-メトキシシクロヘキサンを例示することができる。
生成物は、抽出、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の一般的精製法を利用して回収できる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0020】
なお、以下の各実施例において、特に記載しない限り、全ての溶媒とアセタールは使用前にアルゴン下で蒸留した。
インジウム触媒として、ヨウ化インジウム(I) (10mesh-beads or powdered form; 99.999%)はAldrich社の市販品,インジウム(I)トリフラート (powder)は文献の方法(C. L. B. Macdonald, A. M. Corrente, C. G. Andrews, A. Taylor, B. D. Ellis, Chem. Commun. 2004, 250-251.)により調製、インジウム(III)トリフラート (powder, 99+%)はAldrich社の市販品であり, さらなる精製を行わずに用いた。全ての反応操作は乾燥したガラス器具を用い、アルゴン下で行った。
【実施例】
【0021】
又、生成物の同定は、以下のNMR,IR,マススペクトル、及びクロマトグラフィーを用いた。NMR スペクトルは日本電子製のJEOL JNM-ECX400 を用い CDCl3 もしくはDMSO-d6.中で測定し、テトラメチルシラン(TMS; δ = 0.00 ppm) 及び非重水素化DMSO シグナル (δ = 2.49 ppm) を 1H NMRの内部標準とした。また、次の非重水素化溶媒シグナル (CDCl3: δ = 77.00 ppm; DMSO-d6: δ = 39.50 ppm) を13C NMRの内部標準として用いた。IR スペクトルはJASCO FT/IR-610 を用いて測定した。ESI 高分解能マススペクトル(ESI-HRMS) はブルカダルトニクスBioTOF IIを用いて測定した。 カラムクロマトグラフィーはSilica gel 60 (Merck) を用い、分取用薄層クロマトグラフィーはWakogel B-5Fを用いて行った。
【実施例】
【0022】
<実施例1>
<種々のインジウム触媒による、ベンズアルデヒドジメチルアセタールのアリル化>
アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5mLスクリュー管瓶に、表1に示す触媒を秤量し、ドライトルエン又はヘキサン(0.5-1M)、基質(アセタールまたはケタール1a、0.4-0.5mmol)、アリルボロネート(1.1-1.5等量)をシリンジを用いて注入した。表1に示す溶媒中で、室温で16時間攪拌を行い反応させた。反応終了後、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)で反応を停止した。ジクロロメタンを用いて有機層有機層を抽出する操作を3回繰り返した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して、目的のホモアリルエーテル3aを得た。
反応式を式(3)
【化3】
JP0005110537B2_000007t.gif
に示す。
【実施例】
【0023】
実施例1で得られた結果を表1に示す。
【実施例】
【0024】
【表1】
JP0005110537B2_000008t.gif
【実施例】
【0025】
表1より、インジウム(I)トリフラートを触媒として用いた実験例5、7,8の場合、アリル反応が進行し、目的物の収率は80%以上となった。
一方、ヨウ化インジウムを用いた実験例1、4、及び触媒を加えなかった実験例2の場合、アリル化反応は進行しなかった。また、有効なルイス酸として知られるインジウム(III)トリフラートを触媒として用いた実験例3の場合、アリル反応の収率は12%しか得られなかった。
又、インジウムを含まない触媒を用いた実験例6の場合も、アリル反応の収率は17%しか得られなかった。
【実施例】
【0026】
<実施例2>
<InOTfによる、アセタールのアリル化>
アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5mLスクリュー管瓶に、インジウム(I)トリフラート(1-10mol%)を秤量し、ドライトルエン又はヘキサン(0.5-1M)、基質(アセタールまたはケタール1、0.4-0.5mmol)、アリルボロネート(1.1-1.5等量)をシリンジを用いて注入した。表2に示す溶媒中で、45℃、かつ表2に示す時間攪拌を行い反応させた。反応終了後、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)で反応を停止した。ジクロロメタンを用いて有機層有機層を抽出する操作を3回繰り返した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した(表2の生成物3gの場合、塩化メチルの代わりに酢酸エチルを用いた)。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して、目的のホモアリルエーテル3を得た。
なお、分取薄層クロマトグラフィーによる精製の際の溶出液は、ヘキサン/エーテル = 9:1 ~ 7:3のものを用いた。但し、生成物3gの場合は、溶出液のヘキサン/酢酸エチル=7:3とした。又、生成物3k,3l,3m,3oの場合はカラムクロマトグラフィーで精製を行い、この際の溶出液は、ヘキサン/エーテル=8:2とした。
又、生成物3lの収率は、ジアステレオマー(1:1)混合物の値である。

反応式を式(4)
【化4】
JP0005110537B2_000009t.gif
に示す。
【実施例】
【0027】
実施例2で得られた結果を表2に示す。
【実施例】
【0028】
【表2】
JP0005110537B2_000010t.gif
【実施例】
【0029】
表2より、アセタールとして、一個のヘテロ芳香族の例を含む芳香族アルデヒドの誘導体を用いた実験例1~8の場合、アリル化反応は良好に進行した。
また、アセタールとして、脂肪族アルデヒドの誘導体を用いた実験例9~12の場合、高収率で生成物を得ることができた。さらに、実験例9~12と同じ反応条件下で、ケタールを用いた実験例13~15の場合も、アリル化反応が進行し、目的の三級ホモアリルエーテルが得られた。
以上のように、InOTfを触媒に用いることで、ヒドロキシ基、メトキシ基、クロロ基、ブロモ基、エステル、ニトロ基などを含むアセタールやケタールに対しても高い収率で目的物が得られることがわかった。さらに、インジウム(I)トリフラートが他のルイス酸触媒やブレンステッド酸触媒と比較し、より高い触媒能や選択性を示すことも判明した。
【実施例】
【0030】
生成物3a~3oの構造式、及び同定結果を以下に示す。合成したホモアリルエーテル 3a,3b,3c,3e,3f,3h,3i,3j,3k,3m,3o は既知化合物であり、文献値と一致した。ホモアリルエーテル3d,3g,3l,3n は未知化合物であることが判明した。
【実施例】
【0031】
生成物3a
【化5】
JP0005110537B2_000011t.gif
無色液体(収率: 85%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.36-2.45 (m, 1H), 2.52-2.61 (m, 1H), 3.22 (s, 3H), 4.16 (dd, J = 5.2 Hz, J = 6.0 Hz, 1H), 4.99-5.09 (m, 2H), 5.70-5.83 (m, 1H), 7.25-7.38 (m, 5H).
【実施例】
【0032】
生成物3b
【化6】
JP0005110537B2_000012t.gif
黄色い液体(収率:50%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.38-2.47 (m, 1H), 2.53-2.62 (m, 1H), 3.26 (s, 3H), 4.23 (dd, J = 6.4 Hz, J = 6.8 Hz, 1H), 5.00-5.07 (m, 2H), 5.68-5.80 (m, 1H), 7.54 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 1.0 Hz, J = 7.6 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 1.0 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.2, 57.0, 82.6, 117.9, 121.6, 122.6, 129.3, 132.7, 133.4, 144.0, 148.3.
【実施例】
【0033】
生成物3c
【化7】
JP0005110537B2_000013t.gif
無色液体(収率: 95%). Colorless liquid; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.36-2.47 (m, 1H), 2.51-2.60 (m, 1H), 3.24 (s, 3H), 4.23 (dd, J = 6.0 Hz, J = 6.0 Hz, 1H), 5.01-5.08 (m, 2H), 5.68-5.82 (m, 1H), 7.46-7.56 (m, 4H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.4, 56.9, 83.0, 117.4, 123.3, 124.4, 124.5, 128.8, 129.9, 130.7 (J = 31.6 Hz), 134.0, 142.8.
【実施例】
【0034】
生成物3d
【化8】
JP0005110537B2_000014t.gif
無色液体(収率: 94%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.36-2.45 (m, 1H), 2.51-2.60 (m, 1H), 3.23 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 4.23 (dd, J = 6.4 Hz, J = 6.8 Hz, 1H), 5.00-5.06 (m, 2H), 5.68-5.80 (m, 1H), 7.36 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.2 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.2, 52.0, 56.8, 83.1, 117.3, 126.6 (2C), 129.4, 129.6 (2C), 134.0, 146.9, 166.8.
【実施例】
【0035】
生成物3e
【化9】
JP0005110537B2_000015t.gif
無色液体(収率: 94%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.32-2.41 (m, 1H), 2.46-2.57 (m, 1H), 3.20 (s, 3H), 4.13 (dd, J = 6.4 Hz, J = 6.8 Hz, 1H), 4.97-5.06 (m, 2H), 5.64-5.78 (m, 1H), 7.16 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.3, 56.6, 82.9, 117.2, 121.3, 128.3 (2C), 131.4 (2C), 134.1, 140.6.
【実施例】
【0036】
生成物3f
【化10】
JP0005110537B2_000016t.gif
無色液体(収率: 93%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.34-2.43 (m, 1H), 2.51-2.61 (m, 1H), 3.19 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 4.11 (dd, J = 6.4 Hz, J = 7.2 Hz, 1H), 4.98-5.08 (m, 2H), 5.68-5.81 (m, 1H), 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.4, 55.1, 56.3, 83.0, 113.6 (2C), 116.7, 127.8 (2C), 133.5, 134.8. 159.0.
【実施例】
【0037】
生成物3g
【化11】
JP0005110537B2_000017t.gif
無色液体(収率: 88%)薄い黄色液体; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.38-2.46 (m, 1H), 2.53-2.62 (m, 1H), 3.26 (s, 3H), 4.19 (dd, J = 6.0 Hz, J = 6.0 Hz, 1H), 5.00-5.09 (m, 2H), 5.69-5.81 (m, 1H), 6.33 (s, 1H), 6.77-6.84 (m, 2H), 6.92 (dd, J = 2.0 Hz, J = 2.4 Hz, 1H), 7.21 (t, J = 7.8 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.2, 56.5, 83.7, 112.8, 114.9, 117.2, 119.3, 129.6, 134.2, 142.9, 156.2.
【実施例】
【0038】
生成物3h
【化12】
JP0005110537B2_000018t.gif
無色液体(収率: 87%)。 薄い黄色液体; 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.41-2.48 (m, 1H), 2.57-2.63 (m, 1H), 3.19 (s, 3H), 4.36 (dd, J = 6.4 Hz, J = 7.2 Hz, 1H), 4.94-5.04 (m, 2H), 5.66-5.75 (m, 1H), 6.87-6.91 (m, 2H), 7.20 (dd, J = 2.8 Hz, J = 3.6 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 42.5, 56.4, 78.9, 117.3, 124.9, 125.3, 126.2, 134.2, 145.3.
【実施例】
【0039】
生成物3i
【化13】
JP0005110537B2_000019t.gif
無色液体(収率: 79%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.17-2.32 (m, 2H), 2.70-2.86 (m, 2H), 3.36 (s, 3H), 3.41-3.51 (m, 1H), 5.05-5.11 (m, 2H), 5.79-5.92 (m, 1H), 7.18-7.31 (m, 5H).
【実施例】
【0040】
生成物3j
【化14】
JP0005110537B2_000020t.gif
無色液体(収率: 76%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 1.74-1.84 (m, 2H), 2.25-2.37 (m, 2H), 2.58-2.67 (m, 1H), 2.69-2.78 (m, 1H), 3.19-3.29 (m, 1H), 3.36 (s, 3H), 5.03-5.11 (m, 2H), 5.74-5.86 (m, 1H), 7.14-7.30 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 31.4, 35.2, 37.5, 56.5, 79.4, 117.0, 125.6, 128.2 (2C), 128.3 (2C), 134.5, 142.2.
【実施例】
【0041】
生成物3k
【化15】
JP0005110537B2_000021t.gif
無色液体(収率: 97%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 1.23-1.49 (m, 20H), 2.26 (dd, J = 6.4 Hz, J = 6.8 Hz, 2H), 3.15-3.24 (m, 1H), 3.34 (s, 3H), 5.02-5.11 (m, 2H), 5.75-5.87 (m, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 14.1, 22.6, 25.2, 29.3, 29.6 (2C), 29.7 (2C), 29.8, 31.9, 33.3, 37.7, 56.5, 80.4, 116.7, 135.0.
【実施例】
【0042】
生成物3l
【化16】
JP0005110537B2_000022t.gif
無色液体(収率: 69%; diastereoisomeric ratio 1:1); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.80-0.96 (m, 6H), 1.10-1.50 (m, 9H), 2.18-2.30 (m, 2H), 3.11-3.20 (m, 1H), 3.35 (s, 3H), 5.02-5.10 (m, 2H), 5.79-5.91 (m, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 11.8 and 11.9 (diast), 14.1, 22.2, 23.1, 28.8, 29.7 and 29.9 (diast), 34.6 and 34.7 (diast), 41.6 and 41.7 (diast), 57.3 and 57.4 (diast), 82.7 and 82.8 (diast), 116.2, 136.1.
【実施例】
【0043】
生成物3m
【化17】
JP0005110537B2_000023t.gif
無色液体(収率: 71%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 1.52 (s, 3H), 2.46-2.60 (m, 2H),3.08 (s, 3H), 4.98-5.04 (m, 2H), 5.59-5.71 (m, 1H), 7.22-7.43 (m, 5H).
【実施例】
【0044】
生成物3n
【化18】
JP0005110537B2_000024t.gif
無色液体(収率: 88%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 1.11 (s, 3H), 1.41-1.51 (m, 4H), 1.71-1.81 (m, 2H), 2.24 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 3.18 (s, 3H), 3.54 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 4.99-5.10 (m, 2H), 5.73-5.85 (m, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 20.6, 22.4, 32.9, 36.5, 42.0, 44.9, 48.8, 76.0, 117.4, 134.1.
【実施例】
【0045】
生成物3o
【化19】
JP0005110537B2_000025t.gif
無色液体(収率: 88%); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 1.18-1.73 (m, 10H), 2.21 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 3.18 (s, 3H), 5.00-5.09 (m, 2H), 5.75-5.88 (m, 1H).
【実施例】
【0046】
<実施例3>
<α-メチルアリルボロネートを用いたアセタールのアリル化>
アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5mLスクリュー管瓶に、インジウム(I)トリフラート(5mol%)を秤量し、ドライトルエン(1M)、基質(アセタールまたはケタール1、0.4-0.5mmol)、アリルボロネート(1.1等量)をシリンジを用いて注入した。室温で16時間攪拌を行い反応させた。反応終了後、ジクロロメタン(2ml)で希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)で反応を停止した。ジクロロメタンを用いて有機層有機層を抽出する操作を3回繰り返した後、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して、目的のホモアリルエーテル5aを得た。
なお、分取薄層クロマトグラフィーによる精製の際の溶出液は、ヘキサン/エーテル = 9:1 ~ 7:3のものを用いた。
アリルエーテル5aの収率を計算したところ84%であった。なお、アリルエーテル5aの収率は、シン体:アンチ体=1:1.8であった。
【実施例】
【0047】
反応式を式(5)
【化20】
JP0005110537B2_000026t.gif
に示す。
【実施例】
【0048】
生成物5aは、通常のアリルホウ素求核剤の付加反応において得られるγ-付加体ではなく、α-付加体であったことから、本発明によれば、アリルボロネートを求核剤として用いるα-選択的付加反応を進行させることができることが判明した。
生成物5aの同定結果を以下に示す。生成物5aは既知化合物であり、文献値と一致した。
無色液体(収率: 84%; syn:anti = 1:1.8); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.84 (d, J = 6.8 Hz, 1H; syn), 1.05 (d, J = 6.8 Hz, 1H; anti), 2.49-2.56 (m, 2H), 3.19 (s, 3H; syn), 3.22 (s, 3H; anti), 3.92 (d, J = 7.2 Hz, 1H; syn), 3.96 (d, J = 6.8 Hz, 1H; anti), 4.89-4.95 (m, 2H; anti), 5.00-5.06 (m, 2H; syn), 5.62-5.72 (m, 1H; anti), 5.83-5.94 (m, 1H; syn), 7.22-7.37 (m, 5H).
【実施例】
【0049】
以上のように、本発明によれば、インジウム(I)トリフラートを触媒に用いてアセタールのアリル化反応を高い収率で行うことができ、インジウム(I)トリフラートを触媒とする炭素—炭素結合形成反応としては従来なかったものである。また、アリルホウ素を用いたアセタールの触媒的なアリル化反応としても従来なかったものである。アセタールのアリル化反応は、糖類の合成への応用を含む有機合成へ適用可能である。