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明細書 :β-ヒドロキシカルボニル化合物の製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5004138号 (P5004138)
公開番号 特開2010-207766 (P2010-207766A)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 β-ヒドロキシカルボニル化合物の製法
国際特許分類 B01J  31/22        (2006.01)
C07C  49/82        (2006.01)
C07C  49/83        (2006.01)
C07C  49/84        (2006.01)
C07C  45/72        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/22 Z
C07C 49/82
C07C 49/83 Z
C07C 49/84 F
C07C 45/72
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2009-059249 (P2009-059249)
出願日 平成21年3月12日(2009.3.12)
審査請求日 平成22年6月22日(2010.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】永野 高志
【氏名】小久保 雅也
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2007-238543(JP,A)
特開2008-214218(JP,A)
特開2002-275118(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下式(化1)
【化1】
JP0005004138B2_000012t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基を表し、mは2~4の整数を表す。)で表される配位子又はその対掌体、M(XR又はMYで表されるルイス酸(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Xは-OSO-、-OSO-、-COO-、-OPO-又は-O-を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCFを表す。)、界面活性剤、及び塩基を混合させて得られる、不斉アルドール反応によりβ-ヒドロキシカルボニル化合物を製造するための触媒。

【請求項2】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記界面活性剤が、一般式RSOM'又はROSOM'(式中、Rは炭素数が9~21の直鎖炭化水素基であり、M'はアルカリ金属である。)で表わされるスルホン酸塩又は硫酸エステル塩である請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記塩基が、水酸化アルカリ金属又はアミンである請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記塩基が、NR(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、炭素数が1~6の直鎖アルキレン基又はアルキレンオキシド基を表す。)で表わされる3級アミン、又は脂肪族若しくは芳香族の5員環若しくは6員環の含窒素複素環化合物である請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
がアルキル基、アルキルアリール基、アリール基又はスルフィドを表し、Rが水素原子又はアルキル基を表し、但し、RとRは共にその一部が芳香族環を形成していてもよい炭素及び任意にヘテロ原子から成る5~6員環を形成してもよく、Rが水素原子、アルキル基、アルキルアリール基、又はアリール基を表する請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
水中で、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒の存在下で、下式(式2)
【化2】
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(式中、Rは、脂肪族炭化水素基、単環又は多環の脂環式炭化水素基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、又は複素環基を表し、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、脂肪族炭化水素基、単環又は多環の脂環式炭化水素基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、又は複素環基を表し、またR及びRは共に環を形成してもよい。)で表されるカルボニル化合物と下式
CHO
(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、若しくはこれらの混合基を表す。)で表されるアルデヒド化合物とを反応させることから成る下式(式2)
【化3】
JP0005004138B2_000014t.gif
で表わされるβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、不斉アルドール反応によりβ-ヒドロキシカルボニル化合物を製造する方法と触媒に関し、より詳細には、カルボニル化合物を反応基質として用いることのできるβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製造方法及びそのための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水は無害かつ低コストである環境に優しい溶媒として近年有機合成反応に盛んに取り入れられつつある。一方で不斉アルドール反応は光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を与える重要な反応であり、様々な光学活性触媒を用いる触媒的な反応が開発されているが、水のみを溶媒として用いる触媒的不斉アルドール反応の報告は少ない。近年プロリン誘導体を用いる水のみを溶媒として用いる反応が報告されている(非特許文献1など)。
本発明者らは、ビピリジル誘導体とスカンジウム化合物からなる光学活性スカンジウム触媒が水と有機溶媒の混合溶媒中で有効に機能し、高エナンチオ選択的に進行するホルムアルデヒドとエノラートとの反応であるヒドロキシメチル化反応を開発した(特許文献1~3)。
また、本発明者らは、本願発明と同様のプロリン誘導体から成る配位子にスカンジウム塩を配位させた不斉触媒を用いて、シリルエノールエノラートから光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】WO2005/073156
【特許文献2】WO2006/080425
【特許文献3】特開2008-214218
【0004】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 734-735.
【非特許文献2】Angew. Chem.Int. Ed. 2008, 47, 6909-6911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成をするための不斉アルドール反応(非特許文献2など)は、反応基質としてケトンを用いることができず、ケトンを一旦シリルエノラートに変換して、アルドール反応を行う必要があるという問題があった。
本発明者らは、この問題を克服できる不斉アルドール反応用の触媒を開発し、カルボニル化合を反応基質として用いて光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成することのできる触媒及びこの触媒を用いて不斉アルドール反応により光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成する方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、いままでの光学活性β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成を合成するための不斉アルドール反応に用いた触媒(非特許文献2など)を検討した結果、スカンジウムトリフラート、プロリンより誘導した不斉配位子、界面活性剤及び塩基を混合して得られる触媒の存在下で、ホルムアルデヒドとカルボニル化合物から、対応するヒドロキシメチル化体がエナンチオ選択的に得られることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下式(化1)
【化1】
JP0005004138B2_000002t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基を表し、mは2~4の整数を表す。)で表される配位子又はその対掌体、M(XR又はMYで表されるルイス酸(式中、MはSc、Y又はランタノイド元素を表し、Xは-OSO-、-OSO-、-COO-、-OPO-又は-O-を表し、Rは、炭素数が6以上の炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCFを表す。)、界面活性剤、及び塩基を混合させて得られる、不斉アルドール反応によりβ-ヒドロキシカルボニル化合物を製造するための触媒である。

【0008】
また本発明は、水中で、この触媒の存在下で、下式(式2)
【化2】
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(式中、Rは、脂肪族炭化水素基、単環又は多環の脂環式炭化水素基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、又は複素環基を表し、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、脂肪族炭化水素基、単環又は多環の脂環式炭化水素基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、又は複素環基を表し、またR及びRは共に環を形成してもよい。)で表されるカルボニル化合物と下式
CHO
(式中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、若しくはこれらの混合基を表す。)で表されるアルデヒド化合物とを反応させることから成る下式(式2)
【化3】
JP0005004138B2_000004t.gif
で表わされるβ-ヒドロキシカルボニル化合物の製法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の触媒と製法により、反応基質としてカルボニル化合物を用いることのできる不斉アルドール反応系を可能とした。反応基質であるカルボニル化合物をシリルエノラートに変換して、アルドール反応を行う必要がないため、反応工程の簡略化が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる配位子は下式(化1)又はその対掌体で表わされる。
【化1】
JP0005004138B2_000005t.gif



【0011】
及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基を表す。ナフチル基はα又はβナフチル基であってもよい。
置換基としては、炭素数が1~4のアルキル基、炭素数が1~4のアルコキシ基、又はフェニル基が挙げられる。
置換基の数は、フェニル基又はナフチル基あたり、それぞれ1~4、好ましくは1~2である。
置換基は、フェニル基又はナフチル基のアミド基結合炭素原子に対してオルト位にあることが好ましい。
【0012】
本発明で用いるルイス酸は、M(XR又はMY、好ましくはMYで表される。
MはSc、Y又はランタノイド元素(57La~71Lu)、好ましくはScを表す。
Xは、-OSO-、-OSO-、-COO-、-OPO-又は-O-であるが、好ましくは-OSO-又は-OSO-である。
は、炭化水素基であって、その炭素数は6以上、好ましくは8~30である。この炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基から成る群から選択される少なくとも1種であってもよい。またこれらは、任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCF(OTf)、好ましくはOTfを表す。
【0013】
本発明で用いる界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤が好ましく、例えば、スルホン酸塩、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられる。この中で、特に、一般式RSOM'又はROSOM'(式中、Rは炭素数が9~21の直鎖炭化水素基であり、M'は金属イオン又はアンモニウムイオンであり、好ましくはアルカリ金属、より好ましくは、K又はNa、さらに好ましくはNaである。)で表わされるスルホン酸塩又は硫酸エステル塩が好ましい。このスルホン酸塩として、例えば、C1225SONa、C1225SONa、C1123SONa、C1123SONaが挙げられる。
【0014】
本発明で用いる塩基としては、水酸化アルカリ金属又はアミン、好ましくはアミンが挙げられる。アミンとしては、3級アミンが好ましい。アミンとしては、NR(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、炭素数が1~6の直鎖アルキレン基又はアルキレンオキシド基を表す。)で表わされる3級アミン、又は脂肪族若しくは芳香族の5員環若しくは6員環の含窒素複素環化合物が好ましい。このNRで表わされる3級アミンとしては、モノアミン類(例えば、TEA、DMEDA等)、ジアミン類(例えば、TMEDA、TMPDA、TMHMDA、PMDETA、PMDPTA、TMG等)、アルコールアミン類(例えば、DMEA、DMAEE、TMAEEA、MHEP、HEMO等)、エーテルアミン類(例えば、BDMEE、TMEGDA等)が挙げられる。脂肪族若しくは芳香族の含窒素複素環化合物としては、ピリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾールなどが挙げられる。この含窒素複素環化合物は置換基として炭素数が1~6のアルキル基若しくはアルキレンオキシド基又は-NR10(式中、R10は、それぞれ同じであっても異なってもよく、メチル基又はエチル基を表す。)で表わされるアミノ基を1~3個程度有してもよい。このような置換基を有する含窒素複素環化合物としては2,6-ルチジン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0015】
上記配位子、ルイス酸、界面活性剤及び塩基を水中で混合すると、金属Mが配位子に配位し、触媒を形成する。
水中の配位子の濃度は、好ましくは0.001~0.1 mol/l、より好ましくは0.01~0.1 mol/lである。
水中のルイス酸の濃度は、好ましくは0.001~0.1 mol/l、より好ましくは0.01~0.1 mol/lである。
水中の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.1~5.0 mol/l、より好ましくは0.1~2.0 mol/lである。
水中の塩基の濃度は、好ましくは0.01~2.0 mol/l、より好ましくは0.01~0.5 mol/lである。
【0016】
本発明においては、この触媒の存在下で、下式に示すように、アルデヒド化合物とカルボニル化合物との不斉アルドール反応により、β-ヒドロキシカルボニル化合物を製造する。
【化4】
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【0017】
~Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、単環又は多環の脂環式炭化水素基、単環又は多環の芳香族炭化水素基、又は複素環基を表す。但し、Rは水素原子ではない。なお、Rが水素原子の場合(アルデヒド化合物がホルムアルデヒドの場合)は、R及びRは同一ではないことが好ましい。また、R及びRは共に環を形成してもよく、これらは置換基を有していてもよい。この炭化水素基あるいは複素環基としては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルビニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、シリルオキシ基等が例示される。またこれらの有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、炭化水素基等の各種のものであってよい。
~Rは好ましくは以下のとおりである。
はアルキル基、アルキルアリール基、アリール基又はスルフィドを表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、但し、RとRは共に環を形成してもよく、環は任意にヘテロ原子又は芳香環の一部を含んでいてもよく、好ましくは炭化水素からなる5~7員環である。Rは水素原子、アルキル基、アルキルアリール基、アリール基、又はトリアルキルシリルオキシ基を表す。
【0018】
アルデヒド化合物は、下式で表される。
CHO
は、水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、若しくはこれらの混合基であり、好ましくは、水素原子、又は炭素数が1~20、好ましくは1~8のアルキル基、アラルキル基、若しくはアリール基である。置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、炭化水素基等が挙げられる。
なお、このアルデヒド化合物は三量体構造(RCHO)をとっていてもよい。
【0019】
この反応は、水中において行われる。水は、通常は、原料物質と触媒の使用量に対して、たとえばこれらの2~50重量倍の割合で使用される。
反応液中のアルデヒド化合物/カルボニル化合物のモル比は好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5程度である。また触媒は、反応系のモル%として好ましくは1~50モル%、より好ましくは5~20モル%使用する。
反応温度は通常-20~40℃、より好ましくは4~30℃である。
反応時間は、適宜定めればよく、例えば、0.5~60時間である。
この反応により、β-ヒドロキシカルボニル化合物が高い収率と選択性で合成される。
【実施例】
【0020】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。以下の実施例において、1H NMR及び13C NMRは溶媒としてCDCl3を内部標準としてテトラメチルシランを用い、日本電子株式会社製JNM-ECX400により測定した。
製造例1
文献(Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 6909)に記載の方法にて下式の構造の配位子を合成した。
【化5】
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塩化メチレン(100 mL)にBoc-(S)-プロリン(東京化成, 3.0 g, 13.9 mmol)を加え、0℃に冷却した後、トリエチルアミン(東京化成, 2.1 mL, 15.3 mmol)と蟻酸イソブチルクロリド(2.0 mL, 15.3 mmol)を加え撹拌した(0℃, 20 min)。20 分後2,6-ジメチルアニリン(1.9 mL, 15.3 mol)を加え、室温中で6時間撹拌した。反応溶液を塩化メチレン(100 mL)で希釈し、1N 硫酸水素カリウム水溶液洗浄、飽和炭酸水素ナトリウム洗浄、無水硫酸ナトリウム乾燥後、ろ過、減圧濃縮した。粗生成物は精製せずそのまま次の反応に用いた。
粗生成物(4.0 g, 12.4 mmol)に50%トリフルオロ酢酸-塩化メチレン溶液(40 mL)を加え、室温にて1時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、塩化メチレン(50 mL), 2N水酸化ナトリウム水溶液を加えた(pH=11)。塩化メチレン抽出し回収した有機層を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウム乾燥後、ろ過、減圧濃縮した。残渣にヘキサンを加え再沈殿し、(S)-N-(2,6-ジメチルフェニル)ピロリジン-2-カルボン酸アミド(2.5 g, 12.8 mmol, 2 段階収率92%, 白色粉末)を得た。生成物の分析データを以下に示す。
1H NMR δ 1.77-1.86(m, 2H), 2.06-2.13(m, 1H), 2.12-2.27(m, 1H), 2.21(s, 6H), 3.00-3.13(m, 2H), 3.93(dd, J = 5.2, 9.2 Hz, 1H), 7.06-7.07(m, 3H), 9.18(brs, 1H); 13C NMR δ 18.4, 26.3, 31.0, 47.5, 60.8, 126.7, 128.1, 134.0,134.8; FT-IR(KBr)3267, 3021, 2953, 2847, 1700, 1593, 1600, 1467, 1224, 1115, 1043, 924, 763, 711 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C13H19N2O([M+H]+): 219.1497, found: 219.1468; [α]21D -80.7(c 0.87, CHCl3).
【0021】
アセトニトリル(10 mL)に(S)-N-(2,6-ジメチルフェニル)ピロリジン-2-カルボン酸アミド(2.0 g, 9.1 mmol), 炭酸カリウム(和光純薬, 1.3 g, 9.6 mmol), 1,3-ジブロモプロパン(東京化成, 440μL, 4.3 mmol)を加え還流条件で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応溶液をセライト(R)ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2, 展開溶媒: 酢酸エチル)で精製し(2S, 2'S)-1,1'-(プロペン-1,3-ジイル)ビス(N-(2.6-ジメチルフェニル)ピロリジン-2-カルボン酸アミド)(1.9 g, 3.9 mmol, 収率91%, 白色粉末)を得た。生成物の分析データを以下に示す。
1H NMR δ 1.87-1.92(m, 6H), 2.04-2.08(m, 2H), 2.17-2.30(m, 2H), 2.21(s, 12H), 2.38-2.43(m, 2H), 2.65-2.69(m, 2H), 2.81-2.85(m, 2H), 3.23-3.30(m, 4H), 7.05-7.07(m,6H), 8.80(brs, 2H); 13C NMR δ 18.5, 24.6, 29.2, 30.8, 54.0, 54.3, 68.2, 127.0, 128.3, 133.7,134.9, 172.9; FT-IR(KBr)3267, 3021, 2952, 2847, 1700, 1593, 1519, 1466, 1224, 1115, 1043, 925, 825, 763, 711 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C29H41N4O2([M+H]+):477.3230, found: 427.3201; [α]21D -127.5(c 0.95, CHCl3).
【0022】
塩化メチレン(30 mL)に(2S, 2'S)-1,1'-(プロペン-1,3-ジイル)ビス(N-(2.6-ジメチルフェニル)ピロリジン-2-カルボン酸アミド)(700 mg, 1.7 mmol)を加え0℃に冷却した後、mCPBA(アルドリッチ社, 77%, 829 mg, 3.7 mmol)を加え2時間、0℃で撹拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(アルミナ, 展開溶媒: 酢酸エチル/メタノール=1/0‐5/1)で精製し、目的とする不斉配位子(2S, 2'S)-1,1'-(プロペン-1,3-ジイル)ビス(N-(2.6-ジメチルフェニル)ピロリジン-2-カルボン酸アミド)-N,N'-ジオキシド(568 mg, 1.3 mmol, 78%)を得た。
生成した配位子の分析データを以下に示す。
1H NMR δ 2.04-2.08(m, 2H), 2.16(s, 12H), 2.24-2.77(m, 8H), 3.29-3.37(m, 2H), 3.65-3.80(m, 8H), 7.01-7.08(m, 6H), 12.64(brs, 2H); 13C NMR δ 18.9, 20.2, 27.9, 64.9, 67.8, 76.8, 126.7, 128.2, 133.7; FT-IR(KBr)3422, 2958, 1671, 1592, 1534, 1474, 1375, 1244, 772, 702, 501 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C29H41N4O4Na([M+H]+): 509.3128, found: 509.3129; [α]21D -65.5(c 0.88, CHCl3).
【0023】
以下の実施例では、触媒としてSc(OTf)3(文献(Tetrahedron Lett., 1993, 34, 3775)に記載の方法で合成した。)と、製造例1で合成した配位子、1‐ウンデカスルホン酸ナトリウム(東京化成)、ピリジン(和光純薬)、37% ホルムアルデヒド水溶液(ナカライテスク)を用いて不斉ヒドロキシメチル化反応を行った。
【0024】
実施例1
本実施例では、(S)-3-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを合成した。反応式を下式に示す。
【化6】
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Sc(OTf)3(14.8 mg, 0.03 mmol)、製造例1で合成した配位子(18.3 mg, 0.036 mmol)、1-ウンデカスルホン酸ナトリウム(116 mg, 0.45 mmol)、ピリジン(4.8μL, 0.06 mmol)を水(0.5 mL)中、室温で1時間よく撹拌した後、2-メチル-1-インダノン(アルドリッチ社)(43.9 mg, 0.3 mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(122 mg, 1.5 mmol)を加える。反応液を室温で24時間撹拌後、水(3 mL)で希釈して反応停止した。反応液ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧濃縮し組成生物を得た。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒: n-ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し目的とする2,3-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルインダン-1-オン(32.0 mg, 0.18 mmol)を得た。収率60% 光学純度47%。
1H NMR δ 1.22(s, 3H), 2.64(t, J = 5.2 Hz, 1H), 2.88(d, J = 17.2 Hz, 1H), 3.27(d, J = 17.2 Hz, 1H), 3.61(dd, J = 5.2, 10.8 Hz, 1H), 3.83(dd, J = 5.2, 10.8 Hz, 1H), 7.35(dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.45(d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.60(dd, J = 7.6, 8.0 Hz, 1H), 7.71(d, J = 8.0 Hz, 1H); 13C NMR δ 20.6, 37.9, 50.9, 67.7, 124.1, 126.6, 127.3, 135.1, 135.7, 153.3, 211.1; FT-IR(neat)3435, 3073, 2962, 2927, 2869, 1706, 1608, 1587, 1465, 1434, 1377, 1328, 1294, 1229, 1207, 1152, 1090, 1047, 988, 872, 798, 738, 716, 649, 579, 505, 470, 414 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C11H12O2Na([M+Na]+): 199.0735, found: 199.0726; lit. [α]21D +51.2(c 0.51, EtOH)(90% ee); HPLC(Daicel Chiralpak OB-H, n-hexane/i-PrOH = 100/1, flow rate 1.0 mL/min)tR = 42.1 min(minor), tR = 50.3 min(major).
【0025】
実施例2
本実施例では、(S)-2,3-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2,6-ジメチルインダン-1-オンを合成した。反応式を下式に示す。
【化7】
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Sc(OTf)3(14.8 mg, 0.03 mmol)、製造例1で合成した配位子(18.3 mg, 0.036 mmol)、1-ウンデカスルホン酸ナトリウム(116 mg, 0.45 mmol)、ピリジン(4.8μL, 0.06 mmol)を水(0.5 mL)中、30℃で1時間よく撹拌した後、2.6-ジメチル-1-インダノン(文献(Helvetica Chimca. Acta., 2005, 88, 3109.)記載の方法にて合成した。)(48.0 mg, 0.3 mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(122 mg, 1.5 mmol)を加える。反応液を30℃で48時間撹拌後、水(3 mL)で希釈して反応停止した。反応液ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧濃縮し組成生物を得た。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒: n‐ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し、(S)-2,3-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2,6-ジメチルインダン-1-オン(44.2 mg, 0.23 mmol)を得た。収率77% 光学純度70%。
1H NMR δ 1.21(s, 3H), 2.37(s, 3H), 2.68(t, J = 4.8 Hz, 1H), 2.82(d, J= 17.2 Hz, 1H), 3.21(d, J = 17.2 Hz, 1H), 3.60(dd, J = 4.8, 10.4 Hz, 1H), 3.81(dd, J = 4.8, 10.4 Hz, 1H), 7.33(d, J= 7.6 Hz, 1H), 7.41(d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.49(s, 1H); 13C NMR δ 20.6, 21.0, 37.5, 51.2, 67.7, 124.0, 126.2, 135.9, 136.4, 137.3, 150.7, 211.2; FT-IR(neat)3431, 2925, 2868, 1704, 1617, 1581, 1493, 1455, 1381, 1283, 1159, 1117, 1048, 980, 889, 818, 764 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C12H14O2Na([M+Na]+): 213.0891, found: 213.0877; [α]22D -24.1(c 0.755, CHCl3)(91% ee); HPLC(Daicel Chiralpak AD-H, n-hexane/i-PrOH = 19/1, flow rate 1.0 mL/min)tR = 14.1 min(minor, R), tR = 17.6 min(major, S).
【0026】
実施例3
本実施例では、(R)-3-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを合成した。反応式を下式に示す。
【化8】
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Sc(OTf)3(14.8 mg, 0.03 mmol)、製造例1で合成した配位子(18.3 mg, 0.036 mmol)、1-ウンデカスルホン酸ナトリウム(116 mg, 0.45 mmol)、ピリジン(4.8μL, 0.06 mmol)を水(0.5 mL)中、60℃で1時間よく撹拌した後、プロピオフェノン(東京化成)(40.2 mg, 0.3 mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(122 mg, 1.5 mmol)を加える。反応液を60℃で24時間撹拌後、水(3 mL)で希釈して反応停止した。反応液ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧濃縮し組成生物を得た。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒: n‐ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し目的とする(R)-3-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(15.7 mg, 0.096 mmol)を得た。収率32% 光学純度67%。
1H NMR δ 1.23(d, J = 7.2 Hz, 3H), 2.52(brs, 1H), 3.67(ddq, J = 4.0, 7.2, 7.2 Hz, 1H), 3.79(dd, J = 4.0, 10.8 Hz, 1H), 3.94(dd, J = 7.2, 10.8 Hz, 1H), 7.47(dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 2H), 7.58(t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.96(d, J = 7.6 Hz, 2H); 13C NMR δ 14.6, 43.0, 64.6, 128.4, 128.7, 133.3, 136.2, 204.4; FT-IR(neat)3409, 2972, 2936, 2877, 1676, 1595, 1578, 1448, 1378, 1240, 1211, 1026, 973, 794, 704 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C10H12O2Na([M+Na]+): 187.0735, found: 187.0709; lit. [α]24D -42.1(c 0.28, EtOH)(>99% ee, S); HPLC(Daicel Chiralpak AD-H, n-hexane/i-PrOH = 19/1, flow rate 1.0 mL/min)tR = 15.5 min(minor, S), tR = 18.2 min(major, R).
【0027】
実施例4
本実施例では、3,4-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルナフタレン-1(2H)-オンを合成した。反応式を下式に示す。
【化9】
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2-メチル-1-テトラロン(アクロス社)(48.0 mg, 0.3 mmol)を用いて実施例3と同様の反応の行い、3,4-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルナフタレン-1(2H)-オン(24.5 mg, 0.14 mmol)を得た。収率45%、光学純度77%。
1H NMR δ 1.23(s, 3H), 1.78(ddd, J = 3.6, 4.8, 13.2 Hz, 1H), 2.23(ddd, J = 5.2, 12.0, 13.4Hz, 1H), 2.89(brs, 1H), 2.94(ddd, J = 3.6, 5.2, 17.2 Hz, 1H), 3.15(ddd, J = 4.8, 12.0, 17.2Hz, 1H), 3.65(d, J = 11.2 Hz, 1H), 3.73(d, J = 11.2 Hz, 1H), 7.24-7.33(m, 2H), 7.47-7.51(m, 1H), 8.01-8.03(m, 1H); 13C NMR δ 18.2, 25.0, 31.3, 46.3, 69.0, 126.7, 127.7, 128.7, 131.4, 133.6, 143.4, 204.0; FT-IR(neat)3433, 2931, 2870, 1676, 1600, 1455, 1373, 1315, 1268, 1222, 1155, 1099, 1049, 977, 898, 798, 771, 741, 634, 526, 485 cm-1; HRMS(ESI-TOF, Pos.)calced for C12H14O2Na([M+Na]+): 213.0891, found: 213.0877; lit. [α]21D -4.1(c 2.04, EtOH)(94% ee);HPLC(Daicel Chiralpak OD, n-hexane/i-PrOH = 100/1, flow rate 1.0 mL/min)tR = 29.3 min(minor), tR = 34.9 min(major).
【0028】
比較例1
本発明の触媒の塩基の効果を調べるために、実施例1で用いた触媒系からピリジンを除去して同様の比較実験を行った。
Sc(OTf)3(14.8 mg, 0.03 mmol)、製造例1で合成した配位子(18.3 mg, 0.036 mmol)、1-ウンデカスルホン酸ナトリウム(116 mg, 0.45 mmol)を水(0.5 mL)中、室温で1時間よく撹拌した後、2-メチル-1-インダノン(アルドリッチ社)(43.9 mg, 0.3 mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(122 mg, 1.5 mmol)を加える。反応液を室温で24時間撹拌後、水(3 mL)で希釈して反応停止した。反応液ジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧濃縮し組成生物を得た。薄層クロマトグラフィー(展開溶媒: n-ヘキサン/酢酸エチル=3/2)により精製し目的とする2,3-ジヒドロ-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルインダン-1-オン(10.6 mg, 0.06 mmol)を得た。収率20% 光学純度41%。
実施例1と比べると、収率が極めて低い。
【0029】
比較例2
シリルエノラートを用いるヒドロキシメチル化反応との違いを調べるため、文献(Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 6909)と同様の実験を、シリルエノラートを用いる代わりに対応するカルボニル化合物を用いて行った。
Sc(SO3C11H23)3(文献(J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7202)に記載の方法で合成した。)(22.5 mg, 0.03 mmol)、製造例1で合成した配位子(18.3 mg, 0.036 mmol)、1-ウンデカスルホン酸ナトリウム(116 mg, 0.45 mmol)、を水(3.0 mL)中、20℃で1時間よく撹拌した後、2.6-ジメチル-1-インダノン(48.0 mg, 0.3 mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液(122 mg, 1.5 mmol)を加える。反応液を5℃で48時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3 mL)で希釈して反応停止した。反応液をジクロロメタンで3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧濃縮し組成生物を得た。NMR分析の結果、反応は全く進行しておらず、原料がそのまま残っていることが明らかとなった。