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明細書 :α付加型アリル化反応による選択的ホモアリルアルコール誘導体の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5372556号 (P5372556)
公開番号 特開2010-215513 (P2010-215513A)
登録日 平成25年9月27日(2013.9.27)
発行日 平成25年12月18日(2013.12.18)
公開日 平成22年9月30日(2010.9.30)
発明の名称または考案の名称 α付加型アリル化反応による選択的ホモアリルアルコール誘導体の製造法
国際特許分類 C07C  29/40        (2006.01)
C07C  33/30        (2006.01)
C07C  41/26        (2006.01)
C07C  43/23        (2006.01)
C07C 201/12        (2006.01)
C07C 205/19        (2006.01)
C07C  33/48        (2006.01)
C07C  33/28        (2006.01)
C07C 241/04        (2006.01)
C07C 243/38        (2006.01)
C07C  67/343       (2006.01)
C07C  69/732       (2006.01)
C07D 213/30        (2006.01)
C07D 333/16        (2006.01)
C07D 307/42        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 29/40
C07C 33/30
C07C 41/26
C07C 43/23 B
C07C 201/12
C07C 205/19
C07C 33/48
C07C 33/28
C07C 241/04
C07C 243/38
C07C 67/343
C07C 69/732 Z
C07D 213/30
C07D 333/16
C07D 307/42
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 7
全頁数 23
出願番号 特願2009-060333 (P2009-060333)
出願日 平成21年3月12日(2009.3.12)
審査請求日 平成22年6月7日(2010.6.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】上野 雅晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】岩井 好子
参考文献・文献 特開2003-277391(JP,A)
特開2008-255094(JP,A)
特開2008-255093(JP,A)
調査した分野 C07C 29/40
C07C 33/28
C07C 33/30
C07C 33/48
C07C 41/26
C07C 43/23
C07C 67/343
C07C 69/732
C07C 201/12
C07C 205/19
C07C 241/04
C07C 243/38
C07D 213/30
C07D 307/42
C07D 333/16
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつ、
置換基として炭素数1~30の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3~15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;若しくは、炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40のアリールアルキル基を有してもよい1,10-フェナントロリン又は次の一般式(1)
-NH-R-NH-R (1)
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、Rの一部とRの一部が隣接する窒素原子と共に飽和若しくは不飽和の環を形成してもよく、前記R及びRが置換基を有する場合の置換基は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2~20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3~15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40のアリールアルキル基である。)
で表わされるアルキレンジアミン誘導体であるアキラルなリガンドの存在下又は不存在下で、
次の一般式(4)
【化1】
JP0005372556B2_000021t.gif
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、R10は水素原子又は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示。)
で表わされるアリルボラン化合物と、
次の一般式(2)
-CO-R (2)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、前記R及びRが置換基を有する場合の置換基は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2~20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3~15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40のアリールアルキル基である。)
で表わされるカルボニル化合物や次の一般式(3)
-C(=N-NH-X-R)-R (3)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Xは-CO-又は-SO-を表し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表し、前記R、R及びRが置換基を有する場合の置換基は炭素数1~30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基;炭素数2~20の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基;炭素数3~15の飽和若しくは不飽和の単環式、多環式若しくは縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基;又は、炭素数6~36の単環式、多環式、若しくは縮合環式の炭素環式芳香族基に、炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40のアリールアルキル基である。)
で表されるカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的に次の一般式(5)
【化2】
JP0005372556B2_000022t.gif
(式中、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ前記してきたものを表し、Zは水酸基又はN-アシルヒドラジノ基を表し、アスタリスクは不斉炭素原子となることを表す)で表わされるα付加型アリル化化合物を製造する方法。
【請求項2】
金属触媒が、0価金属、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属からなる金属触媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属触媒が、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素からなる金属触媒である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(1)におけるアキラルなアルキレンジアミン誘導体のRが、エチレン基である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
α付加型アリル化化合物が、シン体又はアンチ体のいずれかのエナンチオマーが過剰に存在しているものである請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素-窒素結合を切断して対応するアミノエステル類を製造する方法。
【請求項7】
窒素-窒素結合の切断が、還元的切断である請求項6に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつリガンドの存在下又は不存在下で、アリルボラン化合物と、カルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的にα付加型アリル化化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性なホモアリルアミン誘導体は、その二重結合を種々変換することが可能なことから、天然物や生理活性物質などの合成中間体として重要な化合物である。光学活性ホモアリルアミン誘導体は、通常はイミン類に対する不斉アリル化反応によって合成されており、中でもα-イミノエステルへの触媒的不斉アリル化反応は光学活性α-アミノ酸誘導体を直接合成できることから、非常に期待されている手法の一つである。
しかしながら、これまでにα-イミノエステルを含むイミン類に対する触媒的不斉アリル化反応は幾つか報告がなされているが、そのほとんどが厳密な無水条件下での反応であり(非特許文献1~10参照)、水中または水と有機溶媒の混合溶媒中などの穏和な条件下での高選択的不斉アリル化反応の例は限られている。
山本らのグループはパラジウム触媒を用いる水共存下でのイミンの高選択的なアリル化反応を報告しているが、α-イミノエステル類を基質とする検討例がないことや用いているアリルスズ誘導体に強い有害性があることなどにおいて改善の余地がある(非特許文献11参照)。
【0003】
また、本発明者らは光学活性亜鉛触媒存在下アリルシラン誘導体を用いる水と有機溶媒の混合溶媒中でのα-ヒドラゾノエステルの不斉アリル化反応を報告している(特許文献1、及び非特許文献12参照)。この手法で得られるヒドラジノエステルはその窒素-窒素結合を切断することによりアミノエステルに導けることから(非特許文献12)、光学活性α-アミノ酸誘導体合成法として有効である。しかしながら、その反応自体の選択性に改善の余地を残している。一方、クック(Cook)らはアシルヒドラゾンの不斉アリル化を報告しているが、有機溶媒中での反応であり、またインジウムを過剰量必要とする(非特許文献13)。
アリルホウ素によるアリル化は、通常は、γ位から反応が起こり、γ-選択的に付加するが、本発明者らは特殊な反応条件下においてはα位から反応することを報告してきた(非特許文献14、及び15参照)。非特許文献14の記載の方法は、グリオキシル酸エステル(HOC-COOR)のヒドラゾンを、フッ化亜鉛及びキラルなジアミン誘導体の存在下にアリルホウ素化合物と反応させるものであり、非特許文献15に記載の方法は、水中でケトン類を0価のインジウムの存在下でアリルホウ素化合物と反応させるものである。
これらのα付加型アリル化反応は、限られた反応条件での方法を開示するものであり、より一般的な手法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-262873号公報
【0005】

【非特許文献1】H. Nakamura, K. Nakamura, Y. Yamamoto, J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 4242-4243.
【非特許文献2】D. Ferraris, T. Dudding, B. Young, W. J. Drury III, T. Lectka, J. Org. Chem. 1999, 64, 2168-2169.
【非特許文献3】K. Nakamura, H. Nakamura, Y. Yamamoto, J. Org. Chem. 1999, 64, 2614-2615.
【非特許文献4】X. Fang, M. Johannsen, S. Yao, N. Gathergood, R. G. Hazell, K. A. Jφrgensen, J. Org. Chem. 1999, 64, 4844-4849.
【非特許文献5】T. Gastner, H. Ishitani, R. Akiyama, S. Kobayashi, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1896-1898.
【非特許文献6】D. Ferraris, B. Young, C. Cox, T. Dudding, W. J. Drury III, L. Ryzhkov, A. E. Taggi, T. Lectka, J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 67-77.
【非特許文献7】R. A. Fernandes, Y. Yamamoto, J. Org. Chem. 2004, 69, 735-738.
【非特許文献8】G. R. Cook, R. Kargbo, B. Maity, Org. Lett. 2005, 7, 2767-2770.
【非特許文献9】R. Wada, T. Shibuguchi, S. Makino, K. Oisaki, M. Kanai, M. Shibasaki, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 7687-7691.
【非特許文献10】K. L. Tan, E. N. Jacobsen, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 1315-1317
【非特許文献11】R. A. Fernandes, A. Stimac, Y. Yamamoto, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 14133-14139.
【非特許文献12】T. Hamada, K. Manabe, S. Kobayashi, Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 3927-3930.
【非特許文献13】R. Kargbo, Y. Takahashi, S. Bhor, G. R. Cook, G. C. Lloyd-Jones, I. R. Shepperson, J. Am.Chem. Soc. 2007, 129, 3846-3847
【非特許文献14】M. Fujita, T. Nagano, et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 2914-2915.
【非特許文献15】U. Schneider, M. Ueno, S. Kobayashi, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 13824-13825.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水と有機溶媒との混合溶媒中でのアリルボラン誘導体を用いるカルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体に対する触媒的不斉α付加型アリル化反応において、より広範囲な反応条件での方法を提供するものであり、かつより高収率で、高立体選択的に光学活性なα付加型アリル化反応によるホモアリル化合物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来のアリルシラン誘導体を用いる方法は、アリルスズ誘導体に比べ毒性は低く、優れた方法であったが、収率や立体選択性が必ずしも充分ではなく、さらなる改良が求められていた。本発明者らは、アリル化剤として種々のものを検討してきたところ、かつアリルシラン誘導体よりも反応性が高い特徴を有しているアリル化剤である、アリルボラン誘導体が亜鉛触媒を用いる方法において極めて優れた特性を有していることを見出してきた。さらに、本発明者らは、特殊な反応条件下では、α付加型アリル化反応が生起することを報告してきた(非特許文献14、及び15参照)。このような選択的なα付加型アリル化反応は有機合成化学の分野において極めて有用な方法であることから、この方法をより一般的な方法とするための開発を検討してきた。本発明者らは、アリル化剤としてアリルボラン誘導体を用い、これを有機溶媒と水との混合溶媒中で反応させることにより、キラルなリガンドが存在しなくても高収率、高選択性で各種のカルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体を、触媒的不斉α付加型アリル化反応により反応させることができることを見出し、簡便な方法で各種のカルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体を触媒的不斉α付加型アリル化反応させる一般的な方法についての発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつリガンドの存在下又は不存在下で、アリルボラン化合物と、カルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的にα付加型アリル化化合物を製造する方法に関する。
また、本発明は、前記した方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素-窒素結合を切断して対応するアミノ化合物を製造する方法に関する。
【0009】
本発明をより詳細に説明すれば以下のとおりとなる。
(1) 水と有機溶媒との混合溶媒中で、金属触媒の存在下で、かつリガンドの存在下又は不存在下で、アリルボラン化合物と、カルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体とを反応させる触媒的不斉α付加型アリル化反応により、立体選択的にα付加型アリル化化合物を製造する方法。
(2) 金属触媒が、0価金属、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属からなる金属触媒である前記(1)に記載の方法。
(3) 金属触媒が、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素からなる金属触媒である前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4) リガンドが、アキラルなリガンドである前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5) アキラルなリガンドが、置換基を有してもよい1,10-フェナントロリンである前記(4)に記載の方法。
(6) アキラルなリガンドが、次の一般式(1)、
-NH-R-NH-R (1)
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、Rの一部とRの一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい。)
で表されるアルキレンジアミン誘導体である前記(4)に記載の方法。
(7) 一般式(1)におけるアキラルなアルキレンジアミン誘導体のRが、エチレン基である前記(6)に記載の方法。
(8) カルボニル化合物が、次の一般式(2)、
-CO-R (2)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基を表し、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表す。)
で表される化合物である前記(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9) カルボニル化合物のヒドラゾン誘導体が、次の一般式(3)、
-C(=N-NH-X-R)-R (3)
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Rは水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基を表し、Xは-CO-又は-SO-を表し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるヒドラゾン化合物である前記(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(10) α付加型アリル化化合物が、シン体又はアンチ体のいずれかのエナンチオマーが過剰に存在しているものである前記(1)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 前記(10)に記載の方法で製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物の窒素-窒素結合を切断して対応するアミノエステル類を製造する方法。
(12) 窒素-窒素結合の切断が、還元的切断である前記(11)に記載の方法。
【0010】
以下に、本発明の態様をさらに詳細に説明する。
本発明のカルボニル化合物としては、カルボニル基(-CO-)の両端が炭素原子又は水素原子が結合したものであればよい。好ましいカルボニル化合物としては、前記した一般式(2)で表されるカルボニル化合物が挙げられる。
本発明のカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体としては、前記した本発明のカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体であり、好ましいヒドラゾン誘導体としては、前記した一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体が挙げられる。
本発明の一般式(2)又は(3)で表されるカルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体における基R及び基Rの「炭化水素基」としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~20、好ましくは炭素数2~15、炭素数2~10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基;炭素数3~15、好ましくは炭素数3~10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基;炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)などが挙げられ、このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、などが挙げられ、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ビシクロ[1.1.0]ブチル基、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[2.2.2.]オクチル基、アダマンチル基(トリシクロ[3.3.1.1]デカニル基)、ビシクロ[4.3.2]ウンデカニル基、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカニル基、などが挙げられ、炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられ、アリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチル-メチル基などが挙げられる。好ましい炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、又は炭素数7~15のアリールアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0011】
一般式(2)又は(3)で表されるカルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体における基R及び基Rの「複素環基」としては、1個~4個、好ましくは1~3個又は1~2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3~8員、好ましくは5~8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の複素環基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピロリル基、4-ピリジル基、2-インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基や複素環基は、本発明のアリル化反応に悪影響を与えない各種の官能基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、前記してきたアルキル基、前記してきたアルケニル基、前記してきたシクロアルキル基、前記してきたアリール基、前記してきたアラルキル基、塩素原子などのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、1個~4個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3~8員の環を有する複素環基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~21のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7~37のアリール-カルボニルオキシ基、炭素数8~41のアラルキルカルボニルオキシ基、炭素数2~21のアルコキシカルボニル基、炭素数7~37のアリールオキシカルボニル基、炭素数8~41のアラルキルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換のアミノ基、アルキルシリル基、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
一般式(2)で表されるカルボニル化合物における基Rの「炭化水素オキシカルボニル基」は、一般式RO-CO-(式中、Rは炭化水素基を表す。)で表される基であり、当該炭化水素基としては前記してきた炭化水素基が挙げられる。
【0013】
カルボニル化合物における特に好ましい基Rとしては、炭素数6~36の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基が挙げられ、これらの各基は前記した置換基を有していてもよい。より好ましくはフェニル基、ナフチル基、フェネチル基、4-ピリジル基、2-チエニル基、2-フリル基、ベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。カルボニル化合物のヒドラゾン誘導体における特に好ましい基Rとしては、炭素数6~36の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、炭素数7~15のアリールアルキル基、複素環基、又は炭化水素オキシカルボニル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数6~36の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基、又は炭素数7~15のアリールアルキル基が挙げられる。これらの各基は前記した置換基を有していてもよい。さらに好ましくはフェネチル基が挙げられる。
カルボニル化合物又はそのヒドラゾン誘導体における特に好ましい基Rとしては、水素原子、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
【0014】
本発明の一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体の基Rにおける「炭化水素基」としては、前記してきた炭化水素基が挙げられる。これらの各基は前記した置換基を有していてもよい。好ましい基Rにおける「炭化水素基」としては、炭素数1~20又は炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6~36の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。より好ましい基Rとしては、メチル基、フェニル基、p-メチルフェニル基などが挙げられる。
本発明の一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体の基Xとしては、-CO-(アシル基)や、-SO-(スルホニル基)などが挙げられる。
本発明の一般式(3)で表されるヒドラゾン誘導体の基X-Rの好ましい例としては、アセチル基、フェニルカルボニル基、p-メチルフェニルカルボニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-メチルベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0015】
本発明の好ましいカルボニル化合物としては、芳香族アルデヒド、芳香脂肪族アルデヒド、複素環式アルデヒドなどのアルデヒド化合物、α-ケトエステルなどのケト化合物、特にケトエステルなどが挙げられる。
本発明の好ましいカルボニル化合物のヒドラゾン誘導体としては、前記したカルボニル化合物とN-アシルヒドラジンから誘導されるN-アシルヒドラゾン誘導体が挙げられる。好ましいヒドラゾン誘導体としては、芳香族アルデヒド、芳香脂肪族アルデヒド、複素環式アルデヒドなどのアルデヒド化合物から誘導されるヒドラゾン誘導体が挙げられる。
【0016】
本発明のアリルボラン化合物としては、炭素-炭素二重結合におけるアリル位にホウ素原子が結合したボラン化合物が挙げられるが、好ましいアリルボラン誘導体としては、次の一般式(4)、
【0017】
【化1】
JP0005372556B2_000002t.gif

【0018】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示し、R10は水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、又は保護されていてもよいメルカプト基を示す。)
で表されるアリルボラン化合物が挙げられる。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR及びRの「炭化水素基」としては、前記した炭化水素基が挙げられ、これらの炭化水素基は前記した置換基で置換されていてもよい。一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR及びRの好ましい基としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらのR及びRは同一であっても異なっていてもよい。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR、R、R、及びR10の「脂肪族炭化水素基」としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数2~20、好ましくは炭素数2~15、炭素数2~10の直鎖状又は分枝状のアルケニル基、炭素数3~15、好ましくは炭素数3~10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式の脂環式炭化水素基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。好ましいR、R及びRとしては、水素原子が挙げられ、R10としては、水素原子又は炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
【0019】
また、本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR10のハロゲン基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子などが挙げられる。
本発明の一般式(4)で表されるアリルボラン化合物におけるR10の水酸基、アミノ基、又はメルカプト基は必要により適当な保護基で保護されていてもよく、このような保護基としては、本発明の方法における化学反応においては反応に関与しないように化学的に変性することができる基であって、当該反応の後は加水分解や加水素分解などにより容易に脱離してもとの官能基に復元することができる基であればよく、例えば、ペプチド合成などに使用される水酸基、アミノ基、又はメルカプト基の保護基などが挙げられる。このような保護基としては、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;ベンジル基などの炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~12のアラルキル基;t-ブチルカルボニル基などの炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルキルアシル基;例えば、フェニルカルボニル基などの炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基からなるアリールカルボニル基;例えばベンジルカルボニル基などの炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~12のアラルキル基からなるアラルキルカルボニル基;例えば、t-ブトキシカルボニル基などの炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルキルオキシカルボニル基;例えば、ベンジルオキシカルボニル基などの炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~12のアラルキル基からなるアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基は、フッ素原子などのハロゲン基などで適宜置換されていてもよい。R10における好ましい「保護されていてもよい水酸基」としては、炭素数7~30、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、より具体的にはベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0020】
前記一般式(4)で表されるアリルボラン化合物を用いて本発明の方法により製造される化合物としては、次の一般式(5)、
【0021】
【化2】
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【0022】
(式中、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ前記してきたものを表し、Zは水酸基又はN-アシルヒドラジノ基を表し、アスタリスクは不斉炭素原子となることを表す。)
で表される化合物が挙げられる。
原料化合物としてカルボニル化合物を使用した場合にはアルコール(Z=-OH)が得られ、原料化合物としてヒドラゾン誘導体を使用した場合には、ヒドラジン誘導体(Z=-NH-NH-アシル)が得られる。したがって、原料化合物としてカルボニル化合物を使用した場合には、生成物はホモアリルアルコール誘導体となり、原料化合物としてヒドラゾン誘導体を使用した場合には、ホモアリルヒドラジン誘導体となる。
アスタリスクで示される炭素原子は不斉炭素原子となることがあることを示している。この炭素原子における基ZとR10が同じ側にあるものを「シン体」と呼び、互いに反対側にあるものを「アンチ体」と呼ぶ。
また、二重結合において、R10が結合している炭素原子とRとが同じ側にあるものをZ体と呼び、反対側にあるものをE体と呼ぶ。
【0023】
本発明の方法は、リガンドの不存在下で行うこともできる。特に原料化合物としてヒドラゾン誘導体を使用する場合には、リガンドの不存在下で反応を行うことができるが、アキラルなリガンドの存在下で行うことが好ましい。
また、原料化合物としてケトン化合物を使用する場合においてもリガンドの不存在下で反応を行うことができる。また、原料化合物としてケトエステルを使用する場合には、キラルなリガンドの存在下で反応を行うこともできる。キラルなリガンドとしては、2個の飽和の窒素原子を有するキラルなジアミン化合物が挙げられる。好ましいキラルなジアミン化合物としては、例えば、キラルなN,N’-ジベンジル-1,2-ジフェニル-エチレンジアミンが挙げられる。
本発明の方法は、リガンドの不存在下で行うこともできるが、好ましい態様としては、アキラルなリガンドの存在下で行うことが挙げられる。アキラルなリガンドとしては、2個又はそれ以上の窒素原子を有し、不斉炭素原子を有していない含窒素化合物が挙げられる。
好ましいアキラルなリガンドとしては、置換基を有してもよい1,10-フェナントロリン、又は次の一般式(1)、
-NH-R-NH-R (1)
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、Rに一部とRの一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい。)
で表されるアルキレンジアミン誘導体が挙げられる。
前記一般式(1)における炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数2~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられ、これらのアルキレン基の炭素原子は不斉炭素原子となっていないものが挙げられる。これらのアルキレン基は環状となっていてもよい。直鎖状又は分岐状のアルキレン基の隣接する2個の炭素原子と共に5~10員の脂肪族環式基を形成するものが挙げられる。形成される環は飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは飽和環が挙げられる。また、このように形成された環にさらに他の環が結合または縮合したものであってもよい。好ましい例としては、隣接する炭素原子と共にシクロヘキサン環を形成する場合が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基などが挙げられる。
前記一般式(1)における炭化水素基としては、前記してきた炭化水素基が挙げられる。好ましい炭化水素基としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20、炭素数1~10の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基;炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基(アリール基)に、前記した炭素数1~20のアルキル基が結合した、炭素数7~40、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアリールアルキル基(炭素環式芳香脂肪族基)が挙げられる。好ましい炭化水素基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
の一部とRの一部が隣接する窒素原子と共に飽和又は不飽和の環を形成してもよい場合の好ましい例としては、アルキレン基であるRにおける窒素原子と隣接する炭素原子と、アルキル基であるRの窒素原子と隣接する炭素原子が、一緒になって飽和又は不飽和の環、例えばピリジン環のような環を形成する場合が挙げられる。このような場合の典型的な例としては、置換基を有してもよい2,2’-ジピリジル又はその誘導体が挙げられる。
前記一般式(1)におけるアルキレンジアミン誘導体の好ましい例としては、
-C-N-C-C-N-
構造を有する鎖状又は環状の化合物が挙げられる。
1,10-フェナントロリンや、炭化水素基における置換基としては、前記してきた炭化水素基の置換基が挙げられる。好ましい置換基としては、メチル基やエチル基などの炭素数1~10のアルキル基、メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
置換基の置換位置としては特に制限はないが、好ましくは、アリール基のオルト位や、1,10-フェナントロリンの2位や9位が挙げられる。
【0024】
本発明の方法は金属触媒の存在下で行われる。このような金属触媒の金属元素としては、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素が挙げられる。好ましい金属元素としては、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、鉄、及びマグネシウムからなる群から選択される金属元素が挙げられる。より好ましい金属元素としては、亜鉛、スズなどが挙げられる。
これらの金属触媒は、0価金属であってもよく、また、酸化金属、金属水酸化物、又はハロゲン化金属などの金属化合物であってもよい。
金属触媒としては、例えば、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素の0価金属;酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化銀、酸化カドミウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される酸化金属;水酸化亜鉛、水酸化スズ、水酸化ゲルマニウム、水酸化カドミウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される金属水酸化物;塩化亜鉛、塩化スズ、塩化ゲルマニウム、塩化銀、塩化カドミウム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化鉛、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される金属塩化物;臭化亜鉛、臭化スズ、臭化ゲルマニウム、臭化銀、臭化カドミウム、臭化マンガン、臭化鉄、臭化鉛、及び臭化マグネシウムからなる群から選択される金属臭化物などが挙げられる。
好ましい金属触媒としては、亜鉛、スズ、ゲルマニウム、銀、カドミウム、マンガン、鉄、鉛、マグネシウム、及びアルミニウムからなる群から選択される金属元素の0価金属;酸化亜鉛、酸化スズ、水酸化亜鉛、水酸化スズ、塩化亜鉛、塩化スズ、臭化鉛などが挙げられる。
【0025】
本発明の方法における金属触媒は、前記したようなリガンドとを、あらかじめ混合して使用してもよいし、あるいは反応系において金属触媒とリガンドと添加して、これを混合して使用するようにしてもよい。金属触媒としての使用割合については、金属触媒とリガンドとをほぼ当量、好ましくは配位子がやや過剰になるような量で使用される。また、原料化合物のカルボニル化合物やそのヒドラゾン誘導体に対して、通常は、0.1~50モル%、好ましくは5~30モル%程度の割合とすることができる。
【0026】
本発明の方法は、水と有機溶媒の混合溶媒中で行う。有機溶媒としては、水と相溶性のある有機溶媒として均一系で行うことが好ましい。このような有機溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは水-アセトニトリル系、水-THF系の溶媒が挙げられる。特に水-アセトニトリル系が好ましい。
水と有機溶媒の混合比は特に制限はないが、好ましくは水:有機溶媒の比が1:1以上、より好ましくは1:1~1:10、さらに好ましくは1:1~1:5が挙げられる。
また、有機溶媒としてトルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、デカンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒:ブタノール、オクタノールなどの高級アルコール系溶媒などの水と難溶性又は不溶性の有機溶媒を使用することもできる。この場合には、溶媒系は相分離した二相系になるが、相間移動触媒などの使用により反応を行うことができるので、このような溶媒系も本発明の方法における好ましい溶媒系の例とすることができる。
反応温度としては、好ましくは-20℃~溶媒の沸点、-20℃~40℃程度の範囲で適宜選択することができる。室温で反応させることもできる。雰囲気は大気中もしくはアルゴンガスなどの不活性雰囲気とすることができる。
【0027】
前記したような本発明の金属触媒を使用することにより、光学活性ホモアリルアルコールやホモアリルヒドラジン誘導体の一方のエナンチオマーが立体選択的に生成し、原料のカルボニル基の炭素原子において(R)又は(S)のいずれか一方の鏡像体が優位に生成する。
本明細書ではこの位置における(R)体又は(S)体のいずれか一方の過剰率をエナンチオマー過剰率(ee)(%)として表す。このエナンチオマー過剰率は、((R)-(S))/((R)+(S))×100、又は((S)-(R))/((R)+(S))×100として計算される値である。
【0028】
本発明の方法により製造される光学活性ホモアリル化合物の代表的なものとしては、前記した一般式(5)で表される化合物が挙げられる。これらの生成物はいずれもα付加型アリル化反応によるものである。本発明における「α付加型アリル化反応」とは、アリルボラン化合物におけるアリル基のα位が、カルボニル化合物のカルボニル基の炭素原子と結合したものである。
これらの本発明の方法により製造される光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物は、カルボニル基の炭素原子の特定の立体配置を有する窒素原子が結合したものであり、ヒドラジノ基の窒素-窒素結合は、公知の方法により還元的方法により簡単かつ立体配置を保持したままで切断できることから、本発明の方法で得られた光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物から光学活性アミノ類を製造することができることになる。
したがって、本発明は、本発明の方法により製造された光学活性ホモアリルヒドラジノ化合物を還元して、対応する光学活性ホモアリルアミノ化合物を製造する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、水と有機溶媒との混合溶媒中でのアリルボラン化合物を用いる光学活性ホモアリルアルコールや、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を、選択的なα付加型アリル化反応により製造する方法を提供するものであり、さらに、本発明の方法は、触媒的不斉α付加型アリル化反応を、高収率で、かつ高立体選択的に行うことができる方法を提供するものである。本発明の方法によれば高純度の生成物を効率的に製造することができ、副生物が少なく生成物の分離が容易なだけでなく、水性溶媒中で行うことができるので、有機溶媒による環境等への問題も少なく、工業的にも優れた方法を提供するものである。
本発明の方法によって製造される光学活性ホモアリルヒドラジン化合物は、その窒素-窒素結合を切断することにより、対応する光学活性ホモアリルアミノ化合物に誘導することができ、様々な光学活性アミノ化合物を合成できることから光学活性医薬品や食品類などや、その中間体の製造方法として有用となる。
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
H-NMRと13C-NMRは、JEOL JNM-ECX-400、JNM-ECX-500又はJNM-ECX-600を使用し、CDClを溶媒とし(他の溶媒を使用した場合は個別に記載)、テトラメチルシラン(δ=0、H-NMR)又はCDCl(δ=77.0、13C-NMR)を内部標準物質として測定した。
溶媒は定法に従い蒸留したものを使用した。
【実施例1】
【0031】
アルデヒドの形式的α-付加型アリル化反応(表1)
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1)とアリルボラン化合物(2)とを、アキラルなリガンド(3)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
【0032】
【化3】
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【0033】
乾燥した30mLのナス型フラスコに水酸化亜鉛(4.0mg,0.04mmol)及び2,9-ジメチルフェナントロリン(ネオクプロイン3d;10.0mg,0.048mmol)及び撹拌子を投入し、これに水(3.2mL)及びアセトニトリル(12.8mL)を加え室温下30分撹拌する。この触媒溶液にベンズアルデヒド(1a;41μL,0.4mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(2a;97μL,0.48mmol)を順次投入し室温下でさらに1時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)することにより対応する化合物4aを収率82%で得た。α付加体である4aの化合物が99%以上であった。
シン体/アンチ体比及び化合物5aのE/Z比はH-NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表1にエントリー6として示す。
【0034】
比較例1
水酸化亜鉛及び2,9-ジメチルフェナントロリンを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法を行った。
この結果を下記の表1にエントリー1として示す。
【実施例2】
【0035】
2,9-ジメチルフェナントロリンを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法を行った。
この結果を下記の表1にエントリー2として示す。
【実施例3】
【0036】
2,9-ジメチルフェナントロリンの代わりに、次に示す、
【0037】
【化4】
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【0038】
アキラルな含窒素リガンド3a-3cを、それぞれ添加すること以外は実施例1と同様の方法を行った。
この結果を下記の表1にエントリー3-5として示す。
これらの結果をまとめて、次の表1に示す。
【0039】
【表1】
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【0040】
この結果、水/アセトニトリル混合溶媒中、ベンズアルデヒド1aにアリル化剤2aを作用させると、γ付加したホモアリルアルコール5aが高選択的に生成する(エントリー1)が、この反応系に10mol%の水酸化亜鉛を存在させ、同様の反応を行うと形式的にα付加したホモアリルアルコール4aを主生成物として得ることができた(エントリー2)。さらに種々のリガンドの12mol%存在下で反応を行なった場合には、位置選択性、ジアステレオ選択性な生成物を得ることができた(エントリー3-6)。特に2,9-ジメチルフェナントロリン(ネオクプロイン)存在下でほぼ完全な位置選択性、ジアステレオ選択性をもって対応するホモアリルアルコールを合成することができた(エントリー6)。
【実施例4】
【0041】
各種のアルデヒド化合物を用いた選択的反応
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1)とアリルボラン化合物(2a)とを、アキラルなリガンド(3d)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
【0042】
【化5】
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【0043】
乾燥した30mLのナス型フラスコに水酸化亜鉛(2.0mg,0.02mmol)及び2,9-ジメチルフェナントロリン(ネオクプロイン3d;5.0mg,0.024mmol)及び撹拌子を投入し、これに水(3.2mL)及びアセトニトリル(12.8mL)を加え室温下30分撹拌する。この触媒溶液にベンズアルデヒド(1a;41μL,0.4mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(2a;97μL,0.48mmol)を順次投入し室温下でさらに1時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)することにより対応する化合物4aを収率83%で得た。
シン体/アンチ体比はH-NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表2にエントリー1として示す。
【実施例5】
【0044】
ベンズアルデヒドの代わりに、下記の表2に示す対応するアルデヒド1b-1kをそれぞれ用いること以外は実施例4と同様の方法を行った。
この結果を下記の表2にエントリー2-11として示す。
実施例4及び5の結果をまとめて、次の表2に示す。
【0045】
【表2】
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【0046】
表2に示されるように、5mol%の水酸化亜鉛及び6mol%の配位子3dの存在条件下、種々のアルデヒドに対してアリル化剤を作用させた所、何れもほぼ完全なα付加体を中程度から高いジアステレオ選択性をもって目的とするホモアリルアルコールを得ることができた。
【実施例6】
【0047】
α位に各種の置換基が置換したアリルボロネートを用いた反応
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1a)と、アリルボラン化合物(2a-2d)とを、アキラルなリガンド(3d)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4)を製造した。
【0048】
【化6】
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【0049】
α位にメチル基が置換したアリルボロネート2aの代わりに、次の表3に示す対応する置換型アリルボロネート2b-2dをそれぞれ添加すること以外は実施例4と同様の方法を行った。
実施例6の結果をまとめて、次の表3に示す。
【0050】
【表3】
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【0051】
この結果、表3に示されるように、アリル化剤としてα位に各種の置換基を有する種々のアリル化剤2a~2dを用いてもほぼ完全なα付加体を高いジアステレオ選択性をもって目的とするホモアリルアルコールを得ることができた。このように、本発明の方法は、一般的なα置換アリルボロネートを使用することができるものであることがわかった。
【実施例7】
【0052】
亜鉛又はスズを用いた方法
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、アキラルなリガンド(1又は3)の存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
【0053】
【化7】
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【0054】
式中のpinはピナコリル基を示す。また、使用したアキラルなリガンドを次の化学式で示す。なお、式中のBnはベンジル基を示す。
【0055】
【化8】
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【0056】
乾燥した10mLのナス型フラスコに各金属触媒(0.04mmol)及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン(11.5mg,0.048mmol)及び撹拌子を投入し、これに水(1.0mL)及びアセトニトリル(1.0mL)を加え室温下で5分撹拌する。
この触媒溶液にN’-(3-フェニルプロピリデン)ベンゾヒドラジド(50.5mg,0.2mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(61μL,0.3mmol)を順次投入し室温下でさらに6時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)することにより対応する化合物を得た。
シン体/アンチ体比はH-NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
この結果を下記の表4にエントリー2、5、8、又は11として示す。
【実施例8】
【0057】
N,N’-ジベンジルエチレンジアミンを添加しないこと以外は実施例7と同様の方法を行った。
この結果を下記の表4にエントリー1、4、7、又は10として示す。
【実施例9】
【0058】
N,N’-ジベンジルエチレンジアミンの代わりに、2,9-ジメチルフェナントロリンをそれぞれ添加し、反応を2時間で停止すること以外は実施例7と同様の方法を行った。
この結果を下記の表4にエントリー3、6、9、又は12として示す。
実施例7~9の結果をまとめて、次の表4に示す。
【0059】
【表4】
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【0060】
このように亜鉛、塩化亜鉛、スズ、塩化スズに関しても、位置選択的な付加を確認することができた。何れも金属種触媒量のリガンド存在下に高いα選択性を見いだした。特に2,9-ジメチルフェナントロリン(ネオクプロイン)を配位子として用いた場合、スズ、塩化スズとも高いα選択性で目的物を与えるが、そのジアステレオ選択性はスズの時には高いアンチ選択性だが、塩化スズの場合には高いシン選択性で目的物を与えた。
【実施例10】
【0061】
各種の金属を用いた反応
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、アキラルなリガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
【0062】
【化9】
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【0063】
式中のpinはピナコリル基を示す。
下記の表5及び表6に示す各種の金属触媒を用いて、配位子を添加する場合は2,9-ジメチルフェナントロリンを用い、下記の表5及び表6の脚注に表記してある場合(a)は反応を2時間で停止すること以外は、実施例9と同様の方法を行った。
実施例10の結果をまとめて、次の表5及び表6に示す。
【0064】
【表5】
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【0065】
【表6】
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【0066】
表5及び表6の左側はリガンドを添加しない場合を示し、右側はリガンドを添加した場合を示す。
この結果、このようなゼロ価の金属が触媒量で有機合成反応を触媒することがほとんど知られていないにもかかわらず、スズや亜鉛を含めた種々ゼロ価金属存在下での反応性及び選択性が十分であることがわかった。特に、亜鉛、ゲルマニウムの他、カドミウムに著しい加速効果が認められ、得られた目的物もα型のものが主生成物であった。また、マグネシウムはフェナントロリン系のリガンドと組み合わせた際に、著しい反応加速効果が観測された。
【実施例11】
【0067】
ヒドラゾンに対するα-付加型アリル化反応
次に示す反応式にしたがって、ヒドラゾン誘導体と、アリルボラン化合物とを、リガンドの不存在下に反応させて、光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造した。
【0068】
【化10】
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【0069】
式中のpinはピナコリル基を示す。
金属亜鉛、ゲルマニウム、カドミウム、塩化スズ、及び臭化鉛の各種の金属触媒を用いて、配位子の不存在下に、反応を8時間で停止すること以外は、実施例9と同様の方法を行った。
その結果、金属亜鉛では86%の収率で目的の生成物が得られ、ゲルマニウムでは77%の収率で目的の生成物が得られ、カドミウムでは84%の収率で目的の生成物が得られ、塩化スズでは77%の収率で目的の生成物が得られ、臭化鉛では80%の収率で目的の生成物がそれぞれ得られた。
【実施例12】
【0070】
ケトエステルのα-付加型アリル化反応
次に示す反応式にしたがって、ケトエステル(6)と、アリルボラン化合物(2a)とを、リガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(7)を製造した。
【0071】
【化11】
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【0072】
乾燥した30mLのナス型フラスコに水酸化亜鉛(2.0mg,0.02mmol)及び(1R、2R)-N,N’-ジベンジル-1,2-ジフェニルエチレンジアミン(9.4mg,0.024mmol)及び撹拌子を投入し、これに水(3.2mL)及びアセトニトリル(12.8mL)を加え室温下30分撹拌する。この触媒溶液にベンジル2-オキソプロパノエート(6;71.3mg,0.4mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(2a;97μL,0.48mmol)を順次投入し室温下でさらに4時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1を2回展開)することにより対応する化合物7を収率92%で得た。
シン体/アンチ体比はH-NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。 エナンチオ選択性はダイセル工業株式会社製のChiralpac AS-Hをカラムとした高速液体クロマトグラフィーにて決定した。
展開液:ヘキサン/2-プロパノール=500/1、流速:0.5mL/min.、 保持時間:26.1min,(シン体 少量生成物)、
28.4min,(アンチ体 主生成物)、
35.0 min.(シン体 少量生成物)、
45.1 min.(アンチ体 主生成物)。
【実施例13】
【0073】
アルデヒドのα-付加型アリル化反応
次に示す反応式にしたがって、アルデヒド(1a)と、アリルボラン化合物(2a)とを、リガンドの存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコール(4a)を製造した。
【0074】
【化12】
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【0075】
原料化合物としてベンズアルデヒドを用い、リガンドとして前記反応式で示されるジピリジン誘導体を用い、金属触媒の水酸化亜鉛の量を10モル%とし、水を0.025モルとし、反応時間を1時間として、実施例12と同様な方法を行った。
収率は75%で、4a/5a比は52/48であり、シン体/アンチ体比は97/3であり、シン体についてのeeは66%であった。
【実施例14】
【0076】
ケトンのα-付加型アリル化反応
次に示す反応式にしたがって、ケトンと、アリルボラン化合物とを、リガンドの不存在下に反応させて、光学活性ホモアリルアルコールを製造した。
【0077】
【化13】
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【0078】
乾燥した10mLのナス型フラスコに金属カドミウム(4.5mg,0.04mmol)及び撹拌子を投入し、これに水(2.0mL)を加える。これにアセトフェノン(23μL,0.2mmol)及びα位にメチル基が置換したアリルボロネート(61μL,0.3mmol)を順次投入し室温下でさらに24時間激しく撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止した後、水層を酢酸エチルで3回抽出し、併せた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥する。有機層を濃縮し、薄層クロマトグラフィーで精製(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=19/1の2回展開)することにより対応する化合物を収率47%で得た。
シン体/アンチ体比はH-NMRを測定し、文献値と比較することにより決定した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、高収率で、かつ高立体選択的にα付加生成物となった光学活性ホモアリルアルコールや光学活性ホモアリルヒドラジン化合物を製造するための工業的に優れた方法を提供するものである。
本発明の方法によって製造される光学活性ホモアリルヒドラジン化合物は、その窒素-窒素結合を切断することにより、対応する光学活性アミノ化合物に誘導することができ、様々な光学活性α-アミノ化合物を合成できることから光学活性医薬品や食品類などや、その中間体の製造方法として有用であり、本発明は産業上の利用可能性を有している。