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明細書 :肺癌、肺癌合併LEMS及びLEMSの検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5585811号 (P5585811)
公開番号 特開2010-190893 (P2010-190893A)
登録日 平成26年8月1日(2014.8.1)
発行日 平成26年9月10日(2014.9.10)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 肺癌、肺癌合併LEMS及びLEMSの検査方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/53 N
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2010-012639 (P2010-012639)
出願日 平成22年1月22日(2010.1.22)
優先権出願番号 2009013654
優先日 平成21年1月23日(2009.1.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月9日(2013.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】丸田 高広
【氏名】吉川 弘明
【氏名】角 弘諭
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】吉田 将志
参考文献・文献 特開平03-211462(JP,A)
特開平05-304993(JP,A)
特開平05-269000(JP,A)
特開2008-039472(JP,A)
免疫性神経疾患に関する調査研究班 研究報告書 2008,URL,2008年,URL,http://nimmunol.umin.jp/official/2008/reportber2008.html
渡邊修,傍腫瘍性神経症候群:診断と治療の進歩,日本内科学会雑誌,日本,2008年 8月10日,第97巻第8号,78-83
Tschernatsch M,Synaptophysin is an autoantigen in paraneoplastic neuropathy.,Journal of neuroimmunology,2008年 6月15日,Vol. 197, No. 1,pp. 81-6
調査した分野 G01N 33/48-98
MEDLINE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)を検査するために、抗シナプトフィジン抗体を測定する方法
【請求項2】
前記LEMSが肺癌合併LEMSであることを特徴とする請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記肺癌が肺小細胞癌であることを特徴とする請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記LEMSは、seronegative LEMSであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の方法
【請求項5】
前記抗シナプトフィジン抗体に加えて、抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体及び抗VGCC抗体から選ばれるいずれか1以上の抗体をさらに測定とすることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1に記載の方法
【請求項6】
前記抗シナプトフィジン抗体、抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体及び/又は抗VGCC抗体のレベルが免疫学的方法によって測定されることを特徴とする、請求項5に記載の方法
【請求項7】
肺癌合併LEMS、肺小細胞癌合併LEMS又はLEMSの検査用キットであって、シナプトフィジン又はその断片を含み、被験者の肺癌合併LEMS、肺小細胞癌合併LEMS又はLEMSの検査ができることを特徴とするキット。
【請求項8】
さらに、アセチルコリン受容体若しくはその断片、シナプトタグミン若しくはその断片及びVGCC若しくはその断片から選らばれる1以上を含むことを特徴とする請求項7に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、肺癌、肺癌合併Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)及びLEMSの検査方法に関する。より詳細には、肺癌、特に肺小細胞癌、LEMSと肺癌の合併、LEMSを、被験者から得られた試料を用いて検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、大きく肺小細胞癌(SCLC)と非肺小細胞癌(NSCLC)に大別され、非肺小細胞癌はさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の3タイプに分類される。なお、それぞれのタイプによって発生する部位がある程度決まっており、小細胞癌と扁平上皮癌は肺門部に、腺癌と大細胞癌は肺野部にできやすい肺癌といわれている。
加えて、肺小細胞癌の存在を検出するための方法として、proGRP、α-コノトキシンペプチドMII及びU002を使用して肺小細胞癌の存在または位置を特定する方法や、血清中の肺癌マーカーとして優れた血管透過性因子を測定することにより、肺癌の早期診断、さらには治療効果の判定、治療経過観察を行う方法等が知られている。
しかしながら、様々な腫瘍マーカーが開発されているが、擬陽性が多く初期の肺癌の検出が困難であるなど改善の余地が多く残されている。特に、肺癌・胃癌・大腸癌など難治性の癌のマーカーの開発が求められている。
現在日本における肺癌は、男性の癌死亡率の第1位であり、女性の癌死亡率では上位3に入るので、肺癌の早期かつ正確な診断は重要である(特許文献1、2)。
【0003】
LEMSは、四肢近位筋の筋力低下を呈し、反復運動とともに一時的で回復する易疲労性を特徴とする。重症筋無力症と異なり外眼筋麻痺や球麻痺の頻度は低く、約6割の患者で肺小細胞癌が合併する。LMESの約9割の患者でP/Q型電位依存性カルシウムチャンネルに対するIgGクラスの自己抗体(抗VGCC抗体)が検出される。
【0004】
LEMSの検査方法としては、誘発筋電図検査、血液中の抗VGCC抗体の検出等がある。
しかし、LMESの約8~9割の患者では、血液中の抗VGCC抗体が検出されない。いわゆるseronegative LEMSの患者が存在する。すなわち、現在使用されている抗VGCC抗体マーカーは、LEMS検査としては不完全である。
【0005】
一方、被験者から得られた試料、特に血清中のシナプトフィジンを腫瘍マーカーとして使用することが報告されている(非特許文献1、特許文献1、3、4、5)。
しかし、報告された特許文献及び非特許文献では、抗シナプトフィジン抗体を腫瘍マーカーとして使用することについての開示はない。抗シナプトフィジン抗体はイムノグロブリンの一種であり、シナプトフィジンとは全く別のタンパク質である。さらに、抗シナプトフィジン抗体は血液中に浮遊するタンパク質であるのに対し、シナプトフィジンは抗シナプトフィジン抗体やサイトカイニンであるIL-12等とは異なり、神経終末という組織中に固定する形で存在する。すなわち、血中のシナプトフィジン濃度と血中の抗シナプトフィジン抗体濃度とは比例又は反比例関係はない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平3-211462号公報
【特許文献2】特開2008-249587号公報
【特許文献3】特開平5-304993号公報
【特許文献4】特開平5-269000号公報
【特許文献5】特表2007-521015号公報
【0007】

【非特許文献1】BioEssays 26:445-453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、新規な肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMSの検査方法を提供することである。
特に、肺小細胞癌は、早期に転移し、更に著しく迅速な腫瘍成長性を有するが、非肺小細胞癌とは異なり放射線療法及び化学療法に対して高い感度を有する。よって、早期に肺小細胞癌を非肺小細胞癌と区別して治療することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、新規な肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMSの検査方法を提供するために、抗シナプトフィジン抗体に注目して、患者から得られた試料中の抗シナプトフィジン抗体を測定し、肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMS患者の試料中での抗シナプトフィジン抗体のレベルが特異的に上昇していることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
「1.被験者から得られた試料における、抗シナプトフィジン抗体のレベルを指標として、当該被験者の肺癌を検査する方法。
2.被験者から得られた試料における、抗シナプトフィジン抗体のレベルを指標として、当該被験者のLambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)を検査する方法。
3.前記被験者が肺癌合併LEMSであることを特徴とする前項1又は2に記載の検査方法。
4.前記肺癌が肺小細胞癌であることを特徴とする前項1又は3に記載の検査方法。
5.前記被験者がseronegative LEMSであることを特徴とする前項2又は3に記載の検査方法。
6.前記試料中の抗シナプトフィジン抗体のレベルが健常人に比較して有意に高い場合に、前記被験者は肺癌、肺癌合併LEMS、肺小細胞癌、肺小細胞癌合併LEMS又はLEMSである可能性が高いと評価することを特徴とする、前項1~5のいずれか1に記載の検査方法。
7.前記抗シナプトフィジン抗体に加えて、抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体及び抗VGCC抗体から選ばれるいずれか1以上の抗体のレベルをさらに指標とすることを特徴とする、前項1~6のいずれか1に記載の検査方法。
8.前記抗シナプトフィジン抗体、抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体及び/又は抗VGCC抗体のレベルが免疫学的方法によって測定されることを特徴とする、前項7に記載の検査方法。
9.前記免疫学的方法が、免疫沈降法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、RIA法又はこれらの変法から選ばれるいずれか1の方法である、前項8に記載の検査方法。
10.肺癌、肺癌合併LEMS、肺小細胞癌、肺小細胞癌合併LEMS又はLEMSの検査用キットであって、シナプトフィジン又はその断片を含み、被験者の肺癌、肺癌合併LEMS、肺小細胞癌、肺小細胞癌合併LEMS又はLEMSの検査ができることを特徴とするキット。
11.さらに、アセチルコリン受容体若しくはその断片、シナプトタグミン若しくはその断片及びVGCC若しくはその断片から選らばれる1以上を含むことを特徴とする前項10に記載のキット。」
【発明の効果】
【0011】
本発明は、肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMSの免疫学的特徴を初めて明らかにしたもので、その治療及び検査において極めて有用である。
本発明によれば、肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMSを簡便かつ早期に検査することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】肺癌患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体の測定結果(図中の"sq"は及び"ad"は、それぞれ、「扁平上皮癌」及び「腺癌」を示す)
【図2】肺小細胞癌合併LEMS患者、悪性腫瘍合併LEMS患者及び悪性腫瘍非合併LEMS患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体の検出結果のグラフ
【図3】肺小細胞癌合併LEMS患者、悪性腫瘍合併LEMS患者及び悪性腫瘍非合併LEMS患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体の検出結果の図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(試料)
本発明の試料は、被験者の血液(血漿、血清)、肺分泌物、唾液等を利用できる。特に、簡便に検査することを考慮すれば、血液、特に血清を使用することが好ましい。

【0014】
(被験者)
本発明の被験者は、ヒトを含む哺乳類を対象とする。例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ特に競馬ウマを含む。

【0015】
(シナプトフィジン)
シナプトフィジンは、その全長にわたって4つの膜貫通領域を有し、細胞膜中に組み込まれているN-グリコシル化タンパク質である。また、シナプトフィジンは、一般に神経分泌小胞、特にシナプス前小胞並びに種々の神経内分泌細胞、即ち神経表現型並びに上皮表現型の小胞中に存在する。このタンパク質のアミノ酸配列及びそれに対応するmRNAのヌクレオチド配列はヒト細胞についてもラット細胞についても知られている。

【0016】
(本発明で使用するシナプトフィジン)
本発明の検査又はキットで使用するシナプトフィジンは、全長配列若しくはその全長配列の部分配列である断片、又はそれらにタグ(GST等)が結合したものを利用することができる。
また、市販されているシナプトフィジン組換タンパク質を利用することができる。例えば、Abnova社製のSYP Recombination Protein (P01)等を利用することができる。

【0017】
なお、上記記載の「断片」は、試料中の抗シナプトフィジン抗体に認識されれば特に構造(配列)は限定されない。例えば、断片は、抗原であるシナプトフィジンの少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド(エピトープ部分のポリペプチド)、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体(例えば、N末端付加するキーホールリンペットヘモシアニン)が付加された誘導体を挙げることができる。
なお、アセチルコリン受容体の断片、シナプトタグミンの断片及びVGCCの断片も上記と同様である。

【0018】
(検査方法)
本発明の「検査」とは、被験者が肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSであるかどうかを判定することを意味する。
本発明の検査では、試料中の抗シナプトフィジン抗体のレベルを測定する。なお、レベルとは、試料中の抗シナプトフィジン抗体の含有量(濃度)又は抗体価を意味する。
また、健常者から得られた試料中の抗シナプトフィジン抗体のレベルを基にしてcut off値を設定する。そして、被験者から得られた試料の数値(抗シナプトフィジン抗体のレベル)が、予め決定したcut off値+1.5倍の標準偏差、好ましくはcut off値+2倍の標準偏差、より好ましくはcut off値+3倍の標準偏差以上であれば、該被験者が肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSであると判定される。
なお、cut off値の設定方法としては、健常者から得られる試料の数値(抗シナプトフィジン抗体のレベル)の平均値から算出できる。

【0019】
さらに、本発明の検査方法では、被験者から得られた試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルと予め設定しておいた基準値と比較して、肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSの発症予測、予後判定、使用している抗癌剤及び/又はLEMS治療剤(方法)の有効性の判定方法、抗癌剤及び/又はLEMS治療剤のスクリーニング方法等も行うことができる。
例えば、被験者の抗癌剤の有効性を判定することにより、各被験者個人に適した治療、いわゆるテーラーメイド治療が可能となる。
なお、基準値とは、肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSにおける進行度を示す標準値を示す。一般的に、試料中の抗シナプトフィジン抗体濃度は、肺癌癌又はLEMSの進行が進むにつれて上昇すると考えられる。基準値の設定方法としては、予め肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSの進行度合いを確認している患者の試料から得られる抗シナプトフィジン抗体レベルから算出する。

【0020】
本発明の抗癌剤及び/又はLEMS治療剤のスクリーニング方法としては、ヒト肺小細胞癌由来株化細胞(SBC-3、SBC-5、SBC-1、NCI-H69、NCI-H841、RERF-LC-MA、RERF-LC-FM、NCI-H128)を、抗癌剤若しくは抗癌候補物質及び/又はLEMS治療剤若しくはLEMS治療候補物質である被検物質の存在下で培養し、該細胞溶解物中の抗シナプトフィジン抗体のレベルを測定する。そして、該測定した抗体レベルを該被検物質の非存在下における場合と比較して、該抗シナプトフィジン抗体のレベルが低下しているとき、該被検物質を有効な抗癌候補物質及び/又はLEMS治療剤と判定することができる。

【0021】
加えて、本発明の検査方法では、試料中の抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体及び/又は抗VGCC抗体レベルの測定結果を利用してもよい。
特に、血中の抗VGCC抗体レベルの測定は、LEMSの検査方法に使用されている。また、LEMS患者の血中には、抗アセチルコリン受容体抗体、抗シナプトタグミン抗体が発現していることが知られている。
さらに、肺癌を検査するための腫瘍マーカーである神経特異エノラーゼ(NSE)、ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)、扁平上皮癌関連抗原(SCC)及び可溶性サイトケラチン19フラグメント(CYFRA)の測定結果も利用してもよい。
これにより、試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定結果とこれらの抗体レベル及び/又は腫瘍マーカーの測定結果を組み合わせることにより、精度の高い検査を行うことができる。

【0022】
(抗シナプトフィジン抗体の検出)
本発明の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定には、定性的および定量的な検出方法の両方が含まれる。定性的な検出方法は、試料中に抗シナプトフィジン抗体が存在するかを単純に判断するものである。定量的な検出方法は、試料中に抗シナプトフィジン抗体が存在するかということ及びその量の両方を測定するものである。
定性的および定量的な検出方法はいずれも当該分野では周知なものである。このような方法には、免疫沈降法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、RIA法又はこれらに改変を加えた公知の変法等を挙げることができる。

【0023】
(被験者の肺癌、肺癌合併LEMS又はLEMSの検査キット)
本発明のキットは、被験者の肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSの検査ができることを特徴とする。本発明のキットは、必須の構成要素として、シナプトフィジン又はその断片を含む。
さらに、本発明のキットは、アセチルコリン受容体若しくはその断片、シナプトタグミン若しくはその断片及びVGCC若しくはその断片から選らばれる1以上を含むこともできる。
加えて、本発明のキットは、肺癌、特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS又はLEMSの発症予測、予後判定、使用している抗癌剤及び/又はLEMS治療方法の有効性の判定方法、抗癌剤及び/又はLEMS治療剤のスクリーニング方法にも利用することができる。

【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。しかし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
(各患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定)
(1)肺癌患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定
本実施例では、21名の被験者{肺小細胞癌患者9名、非肺小細胞癌患者12名(扁平上皮癌患者3名、腺癌患者9名)}、健常者(正常コントロール)から得られた試料(血清)中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定を行った。
(2)肺小細胞癌合併LEMS患者、悪性腫瘍合併LEMS患者及び悪性腫瘍非合併LEMS患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定及び抗VGCC抗体の検出
本実施例では、45名の被験者{肺小細胞癌合併LEMS患者7名(51~72才、全員男性)、悪性腫瘍合併LEMS患者3名(胃癌、黒色腫、悪性リンパ腫:55~70才、男性2名)、悪性腫瘍非合併LEMS患者11名(43~75才、男性4名)、健常者(正常コントロール)24名}から得られた試料(血清)中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定及び従来LEMS検査マーカーとして使用されている抗VGCC抗体の検出を行った。
【実施例1】
【0026】
被験者は、誘発筋電図検査法、各種の腫瘍マーカー、臨床所見等に基づいて、肺小細胞癌患者、非肺小細胞癌患者(扁平上皮癌患者、腺癌患者)、肺小細胞癌合併LEMS患者、悪性腫瘍合併LEMS患者、悪性腫瘍非合併LEMS患者であると診断された。
これらを、以下の表1及び表2で示す。
【実施例1】
【0027】
【表1】
JP0005585811B2_000002t.gif
【実施例1】
【0028】
【表2】
JP0005585811B2_000003t.gif
【実施例1】
【0029】
(試料)
被験者の末梢血を採取した後に常法に従い血清を得た。
【実施例1】
【0030】
(試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定)
シナプトフィジン組換タンパク質{Abnova社製のSYP Recombination Protein(P01)}を含む溶液を、マイクロタイタープレートに添加して、被覆した。1時間インキュベートした後に、BSAを含む緩衝液を該マイクロタイタープレートに添加して、非特異結合部位をブロッキングした。
その後、希釈した血清(試料)を該マイクロタイタープレートの各ウェルに添加して、室温で2時間インキュベートした。その後、該マイクロタイタープレートを洗浄した。そして、アルカリフォスファターゼ結合抗ヒトIgG抗体の希釈物を該マイクロタイタープレートに加え、室温で2時間インキュベートした。発色のために、該マイクロタイタープレートを洗浄し、ペロキシデース基質溶液を加え、波長450nmの吸光度を測定した。
なお、健常者(正常コントロール)の平均+3×標準偏差の値を超える試料を抗シナプトフィジン抗体陽性と定義した。
【実施例1】
【0031】
(肺癌患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定結果)
測定結果を図1に示す。
肺癌患者の一部{3患者(肺小細胞癌患者2名、非肺小細胞癌1名)}では抗シナプトフィジン抗体陽性反応を示した。一方、健常者(正常コントロール)では、抗シナプトフィジン抗体陰性反応を示した。
以上の結果より、患者由来の試料で抗シナプトフィジン抗体が検出される場合には、該患者は肺癌である又は将来肺癌になる可能性が高いことが言える。すなわち、抗シナプトフィジン抗体は、肺癌患者の検査マーカーとして有用である。
【実施例1】
【0032】
(肺小細胞癌合併LEMS患者、悪性腫瘍合併LEMS患者及び悪性腫瘍非合併LEMS患者由来の試料中の抗シナプトフィジン抗体レベルの測定及び抗VGCC抗体の検出結果)
測定結果を表1、図2及び図3に示す。
(A)LEMS患者21名中8名(38%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応を示した。一方、健常者(正常コントロール)24名のすべてが、抗シナプトフィジン抗体陰性反応を示した。
(B)肺小細胞癌合併LEMS患者7名中6名(86%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応を示した。一方、悪性腫瘍非合併LEMS患者11名中2例(18%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応を示した。さらに、悪性腫瘍合併LEMS患者3名は、抗シナプトフィジン抗体陰性反応を示した。
(C)抗VGCC抗体陽性と抗シナプトフィジン抗体陽性の相関関係は、以下の(a)~(f)の通りであった。すなわち、抗VGCC抗体陽性LEMS患者15名中7名(46.7%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応であった。一方、抗VGCC抗体陰性LEMS患者であるseronegative LEMS患者6名中1名(16.7%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応であった。
抗VGCC抗体陽性例15名のうち、
(a):肺小細胞癌合併LEMS患者7名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性6名)、
(b):悪性腫瘍合併LEMS患者0名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性0名)、
(c):悪性腫瘍非合併LEMS患者8名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性1名)。
抗VGCC抗体陰性例6名のうち、
(d):肺小細胞癌合併LEMS患者0名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性0名)、
(e):悪性腫瘍合併LEMS患者3名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性0名)、
(f):悪性腫瘍非合併LEMS患者3名(抗シナプトフィジン抗体陽性陽性1名)。
【実施例1】
【0033】
上記(A)の結果より、抗シナプトフィジン抗体は、LEMS患者の検査のマーカーとして使用することができる。
【実施例1】
【0034】
上記(B)の結果より、肺小細胞癌合併LEMS患者での抗シナプトフィジン抗体陽性率が非常に高い値を示した。一方、悪性腫瘍合併LEMS患者での抗シナプトフィジン抗体陽性率が0%であった。これにより、抗シナプトフィジン抗体は、肺小細胞癌合併LEMS患者の検査マーカーとして非常に有用である。
加えて、悪性腫瘍非合併LEMS患者11名中2例(18%)が抗シナプトフィジン抗体陽性反応を示した。LEMS患者では、腫瘍の発見に数年先行して筋無力症状を発症する事があり、高い確率で肺癌を合併することが知られている。すなわち、該悪性腫瘍非合併LEMS患者11名中2例は、その後に肺癌が合併する可能性がある。これにより、抗シナプトフィジン抗体は、肺癌、特に肺小細胞癌の発症予測可能な検査マーカーとして利用することも可能である。
【実施例1】
【0035】
上記(C)の結果より、seronegative LEMS患者が抗シナプトフィジン抗体陽性反応であった。これにより、抗シナプトフィジン抗体は、従来の検査マーカーである抗VGCC抗体では検出できないLEMS患者(seronegative LEMS患者)の検査マーカーとして利用することも可能である。
【実施例1】
【0036】
(総論)
上記結果より、患者由来の試料が抗シナプトフィジン抗体陽性を示したら、該患者は肺癌である可能性が高い。さらに、該肺癌患者は肺癌の中でも肺小細胞癌患者である可能性が非常に高い。加えて、該肺小細胞癌患者は現在又は将来においてLEMSを合併する可能性が高いことが言える。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、肺癌特に肺小細胞癌、肺癌合併LEMS及びLEMSを簡便かつ早期に検査することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2