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明細書 :有害金属汚染物の浄化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5164169号 (P5164169)
公開番号 特開2010-201332 (P2010-201332A)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発行日 平成25年3月13日(2013.3.13)
公開日 平成22年9月16日(2010.9.16)
発明の名称または考案の名称 有害金属汚染物の浄化方法
国際特許分類 B09C   1/02        (2006.01)
B09C   1/08        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C02F  11/00        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
FI B09B 3/00 304K
B09B 3/00 304G
B09B 3/00 304H
C02F 11/00 ZABH
C02F 11/00 J
C02F 1/28 B
C02F 1/28 J
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2009-049287 (P2009-049287)
出願日 平成21年3月3日(2009.3.3)
審査請求日 平成24年1月26日(2012.1.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】長谷川 浩
【氏名】小林 学
【氏名】中野 正義
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】小久保 勝伊
参考文献・文献 特表2001-509734(JP,A)
特開2003-159583(JP,A)
特開平10-212470(JP,A)
特開平10-174950(JP,A)
特開平1-139142(JP,A)
調査した分野 B01J 20/00-20/34
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C02F 1/00- 1/78
C02F 11/00-11/20
特許請求の範囲 【請求項1】
有害金属に汚染された汚染物を、キレート剤含有洗浄液にて洗浄することで前記汚染物から有害金属を除去し、
前記洗浄にて発生した有害金属を含む洗浄廃液を、前記キレート剤よりも錯生成力の高い固相吸着材に接触させ、前記キレート剤含有洗浄液から有害金属を回収することで、当該キレート剤含有洗浄液を再生する有害金属汚染物の浄化方法であって、
前記固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、当該環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有すると共に前記有害金属イオンを選択的に取り込むものであり、
前記固相吸着材に吸着した有害金属を用いて回収することで、当該固相吸着材を再生することを特徴とする有害金属汚染物の浄化方法。
【請求項2】
前記キレート剤は、生分解性キレート剤であることを特徴とする請求項記載の有害金属汚染物の浄化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有害金属に汚染された、汚染土壌、産業廃棄物、焼却灰及び下水汚泥等の汚染物の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重金属等の有害金属にて汚染された土壌の修復が問題となっている。
また、産業廃棄物の最終処分場が枯渇する恐れが生じている。
汚染土壌の修復にはバイオレメディエーションによる浄化が提案されているが、長期に跨る問題がある。
溶融処理による減容化は重金属類の不溶化を目的とした技術であるが、高温処理が必要で消費エネルギーが多く、また、溶融固形物の有効利用が進んでいないのが実状である。
【0003】
特許文献1には、キレート剤を利用して土壌中の汚染物質を水中に遊離させ、これを鉄粉に吸着、結合させた後に、土壌から鉄粉を磁選機を用いて分離する技術を開示する。
しかし、同公報に開示する方法では土壌の浄化率が必ずしも高くなく、また、キレート剤等が含有する廃液の排水処理も必要である。
特許文献2には、クラウンエーテルの空洞内に金属イオンを取り込むことを利用した汚染物から金属イオン等の除去方法を開示するが、溶媒として超臨界的流体を用いるものであり、必ずしも実用的でない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-51835号公報
【特許文献2】特表2002-508697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚染物から有害金属を可溶化除去するのに用いるキレート洗浄液の再利用が可能で、少量の薬剤で金属回収もできる有害金属汚染物の浄化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る有害金属汚染物の浄化方法は、有害金属に汚染された汚染物を、キレート剤含有洗浄液にて洗浄することで前記汚染物から有害金属を除去し、前記洗浄にて発生した洗浄廃液を、前記キレート剤よりも錯生成力の高い固相吸着材に接触させ、前記キレート剤含有洗浄液から有害金属を回収することで、当該キレート剤含有洗浄液を再生することを特徴とする。
【0007】
ここで、有害金属に汚染された汚染物には汚染土壌、産業廃棄物、焼却灰(飛灰を含む)、下水汚泥等の有害金属に汚染された全ての物が対象になる。
有害金属の代表例としてはクロム、ヒ素、鉛、カドミウム、セレン等のいわゆる重金属が挙げられる。
また、キレート剤よりも錯生成力が高い固相吸着材とは、溶液中にてキレート剤と金属イオンが配位結合している状態から、ゲル等の固体からなる固相吸着材にこの金属イオンが相対的に移動するだけの共有結合以外の強い結合力を有していることをいう。
例えば、キレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を指標にとると、10mM/l濃度のEDTA溶液から概ね100%金属イオンを回収できる強い結合力を有している。
このような固相吸着材の例としては、シリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものが挙げられる。
このようにすると、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合等、複数の様々な結合や相互作用が生じ、いわゆる多点相互作用が出現する。
その結果、全体として、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むようになる。
【0008】
固相吸着材に有害金属を吸着させた後のキレート剤含有洗浄液は再生されるので、繰り返し汚染物の洗浄に利用できる。
一方、固相吸着材に吸着した有害金属は少量の酸にて容易に溶出するので固相吸着材も繰り返し利用できる。
少量の酸にて溶出した金属イオンの濃度は非常に高くなっているのでそこから金属を回収するのも容易である。
【0009】
本発明において、キレート剤含有洗浄液に用いるキレート剤には下記化学式(a)で示す代表的なEDTA(エチレンジアミン四酢酸)等の各種キレート剤を用いることが可能である。
しかし、洗浄後の汚染物への残留の影響を考慮すると生分解性を有する下記化学式(b):HIDS(3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸)、化学式(c):IDS(2,2’-イミノジコハク酸)、化学式(d):MGDA(メチルグリシン二酢酸)、化学式(e):EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)、化学式(f):GLDA(L-グルタミン酸ジ酢酸)等のナトリウム塩が好ましい。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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【化4】
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【化5】
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【化6】
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【発明の効果】
【0010】
本発明においては有害金属に汚染された汚染土壌等の汚染物をキレート剤含有の洗浄剤にて洗浄した後の洗浄廃液から固相吸着材にて有害金属を除去できるので、洗浄液を繰り返し利用できるようになり、エネルギー負荷の非常に少ない浄化システムを構築できる。
これにより、自然汚染土壌も含めて浄化が容易になる。
また、汚染廃棄物に対しては廃棄物の減量化と有効利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る浄化システムのフロー図を示す。
【図2】ヒ素イオンの吸着回収実験結果を示す。
【図3】クロムイオンの吸着回収実験結果を示す。
【図4】セレンイオンの吸着回収実験結果を示す。
【図5】鉛イオンの吸着回収実験結果を示す。
【図6】カドミウムイオンの吸着回収実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る有害金属汚染物の浄化方法を図1に模式的に示す。
なお、図1において洗浄容器や洗浄液の回収容器等をビーカーで表現してあるが、これはあくまで説明用であり、工業的には、バッチ処理でも配管等にて各工程をつないだ連続処理でもよい。

【0013】
次に、洗浄システムの流れを図1に基づいて説明する。
汚染区域1から運搬された汚染土壌2をキレート剤を含有した洗浄液3aにて洗浄する。
図1では洗浄容器3にて混合洗浄した例になっているが通水洗浄でもよい。
また、汚染土壌2に示したAs,Cr,Pbは有害金属の例を模式的に示したものでこれに限定されない。
洗浄により再生された土壌は元に戻すことになるが、キレート剤の少量が残留することも考えられるので生分解性キレート剤を用いるとよい。
固液分離された洗浄廃液4aは回収容器4にて回収され、固相吸着材5aを充填したカラム5に通水すると、有害金属は固相側に吸着され、洗浄剤は再生され再生容器6に回収される。
なお、固相吸着材が重金属は吸着するがナトリウムイオン等は吸着しない選択性を有しているので洗浄液はそのまま再生される。
再生された洗浄液は繰り返し、汚染土壌2の洗浄に用いることができる。
固相吸着材に吸着した金属は、少量の硝酸水溶液にて溶出回収できる。
その後にカラム5を洗浄することで容易に固相吸着材も再生され、繰り返し使用できる。

【0014】
(実施例)
ベントナイト、ケイ砂7号,8号にFe修飾した人工土壌モデルにCd,Pb,Asを吸着させた後に前記化学式(a)~(f)に示したキレート剤含有洗浄液で洗浄すると、金属イオンが洗浄液に取り込まれるのが確認でき、固相吸着材による実験を行ったので、次に説明する。
(試料溶液の調整)
実験にはpH4~10に調整した200μM各有害金属(Cdは50μM)、10mM EDTA含む試料溶液8mlを使用した。
有害金属はAs3+(亜ヒ酸ナトリウム)、As5+(ヒ素水素ニナトリウム七水和物)、Cd2+(硝酸カドミウム)、Cr3+(硝酸クロム)、Cr6+(酸化クロム)、Pb2+(硝酸鉛)及びSe4+(亜セレン酸)を用いた。
pH調整にはpH4~6の時0.1M MES buffer、pH7~8の時0.1M HEPES buffer、pH9~10の時0.1M TAPS bufferを入れ、6M NaOHで調整した。
また、EDTAによるマスキング効果や副反応の影響を検討するためにEDTA無添加の試料溶液を各pHで同様に調整した。

【0015】
(固相吸着材による金属イオンの除去と回収)
固相吸着材としてAnaLig(登録商標) TE-01カラム(ジーエルサイエンス社製、遷移元素用)を用いた(以下単にTE-01と称する)。
TE-01の洗浄のため0.1MHNO 2ml、純水2ml及び各pHに調整したbuffer 2mlを流速0.2~0.5ml/minでそれぞれ2回ずつ通液し、洗浄した。
洗浄後のTE-01にpH調整した試料溶液2mlを流速0.2~0.5ml/minで通液し、固相抽出した。
保持されなかった金属を完全に除去するため、純水2mlで洗浄した。
固相抽出して得た溶液と純水での洗浄による流出液に、次の固相吸着溶液を合せてトータル溶液とした。
保持された金属を溶離液1M HNO 2mlで抽出した後、6m HNO 1mlと純水1mlを用いて完全に抽出した合計を固相吸着溶液とした。
この操作を3回繰り返した。

【0016】
(比較例)
TE-01と比較を行うために、キレート樹脂カラムとして、chelex100(BioRad社)InserSEP ME-01(ジーエルサイエンス社)、CHELATE PA-1及びRB-1(日立ハイテクノロジーズ社)、イオン交換樹脂カラムとして、ION SC-1(日立ハイテクノロジーズ社)を用いて、上記と同様の実験操作で検討した。

【0017】
(フレーム原子吸光光度計による測定)
各金属、原子吸光光度計の検出限界内に測定濃度を決定するため、各250μM有害金属溶液(Cd2+は50μM)を用いて検量線の検討を行った。
それを元に、各溶液を吸光光度計で吸光度を求め、金属濃度を算出した。

【0018】
洗浄結果を図2~図6に示す。
グラフ中、白色棒グラフは通水前の試料溶液中の金属イオン量に対して、通水した後の通水液と固相吸着材から溶出回収した合計の金属イオン量(前記トータル溶液)との比較を示し、黒色の棒グラフは、固相吸着材から溶出させた金属イオン量(前記固相吸着溶液)を示す。
即ち、黒色の棒グラフが固相吸着材に吸着した金属イオンの割合を示し、白色棒グラフは通水前の試料からの全体の回収率を確認したものである。
この結果、As(五価イオン)、Cr(三価イオン)、Se(三価イオン)、Pb(二価イオン)、Cd(二価イオン)のいずれもTE-01、即ち多点相互作用を示す固相吸着材を用いると、概ね100%に近い値で金属イオンを吸着回収できることが分かる。
図面
【図2】
0
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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