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明細書 :血流観測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5582520号 (P5582520)
公開番号 特開2010-187925 (P2010-187925A)
登録日 平成26年7月25日(2014.7.25)
発行日 平成26年9月3日(2014.9.3)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 血流観測装置
国際特許分類 A61B   1/00        (2006.01)
A61B   5/026       (2006.01)
A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 1/00 300D
A61B 5/02 340D
A61B 10/00 E
A61B 10/00 U
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2009-035451 (P2009-035451)
出願日 平成21年2月18日(2009.2.18)
審査請求日 平成24年2月13日(2012.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】山本 徳則
【氏名】服部 良平
【氏名】後藤 百万
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】安田 明央
参考文献・文献 特表2002-517269(JP,A)
特開2006-223761(JP,A)
特表2007-530197(JP,A)
特表2003-510112(JP,A)
特開平06-209933(JP,A)
特開平06-018539(JP,A)
阿川雄資,相関法を用いた微小循環血流の速度分布計測,電子情報通信学会論文誌,電子情報通信学会,1993年 2月,Vol.J76-D-II, No.2,pp.397-405
長江貞彦,血液細胞のレオロジー測定における血流可視化と画像処理による簡易診断システムの開発,Mem. School. B.O.S.T.,Kinki University,2005年,No.16,pp.37-45
調査した分野 A61B 1/00-1/32
A61B 5/026
A61B 10/00
G02B 23/24-23/26
特許請求の範囲 【請求項1】
血管内の血液の流れを観測する血流観測装置であって、
血管の画像を撮影する撮影装置と、
撮影された画像に基づいて、その画像に含まれる血管内の複数個所において、血液の移動速度と移動方向の少なくとも一方を特定する特定装置と、
特定された移動速度と移動方向の少なくとも一方の度数分布グラフを出力する分布データ出力装置、
を有する血流観測装置。
【請求項2】
撮影装置が、ヒトの腎臓の糸球体の画像を撮影することを特徴とする請求項1の血流観測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内の血液の流れを観測する血流観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、血管の画像を撮影し、撮影した画像に基づいて、その画像に含まれる血管内のうちの複数個所における血流(血液の移動速度と移動方向)を観測する技術が開示されている。この技術によれば、撮影用のマーカ等を投与することなく血管内の血流を観測することが可能であり、生理的な状態での血流の観測が可能である。この技術では、観測した血流ベクトル(血液の移動速度と移動方向を示すベクトル)を撮影した画像に重ねてマッピング表示する。これによって、血管内における血流を視覚的に把握することが可能とされている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】「脈管学」,Vol.40, No.7, 2000, p381-387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、非特許文献1の技術では、観測した血流ベクトルをマッピング表示することで、血流を視覚的に把握可能とする。しかしながら、マッピング表示だけでは、正常検体と病態検体との間での差異を特定することは困難である。
また、非特許文献1の技術では、正常検体と病態検体(糖尿病)とで血液の平均移動速度を比較し、血液の平均移動速度に有意差があることを見出している。しかしながら、血液の平均移動速度は個体差等の他の要因によっても変動し易く、病態の重度を示す指標としては用い難い。
病態のより正確な診断、及び、病態の解析のためには、病態の重度に応じてより顕著に変動する指標が必要となる。
【0005】
本発明は上述した実情を鑑みて創作されたものであり、血管内の血流から病態の重度をより正確に判定することができる血流観測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、血管内の各箇所における血液の移動速度と移動方向の分布が、病態の重度に応じて大きく変化することを発見した。例えば、腎糸球体の毛細血管内の各箇所の血液の移動速度は、糖尿病が重度になるほど大きくばらつく。また、腎糸球体の毛細血管内の各箇所の血液の移動方向は、糖尿病が重度になるほど特定の方向に偏って分布する傾向がある。このような、病態の重度と血液の移動速度及び移動方向の分布との相関は、糖尿病以外の病態においても生じると考えられる。
したがって、本発明は、血管内の血液の流れを観測する血流観測装置を提供する。この血流観測装置は、血管の画像を撮影する撮影装置と、撮影された画像に基づいて、その画像に含まれる血管内のうちの複数個所における血液の移動速度と移動方向の少なくとも一方を特定する特定装置と、特定された移動速度と移動方向の少なくとも一方の分布を示すデータを出力する分布データ出力装置を有する。
この血流観測装置によれば、血管内の各箇所における血液の移動速度と移動方向の分布を示すデータが出力(例えば、表示)される。したがって、出力されたデータによって、病態の重度を診断することができる。
布データ出力装置は、特定された移動速度と移動方向の少なくとも一方の度数分布グラフを出力する。
撮影装置は、ヒトの腎臓の糸球体の画像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、病態のより正確な診断が可能となる。また、これによって、病態を解析し、病態の原因究明に役立つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】血流観測装置10の概略構成を示す図。
【図2】演算装置40が実施する画像解析処理を示すフローチャート。
【図3】毛細血管内の血液を示す図。
【図4】フレーム間の画素の輝度値の差分についての説明図。
【図5】時空間画像の説明図。
【図6】正常な検体の赤血球の移動速度の分布を示すグラフ。
【図7】糖尿病の検体の赤血球の移動速度の分布を示すグラフ。
【図8】正常な検体の赤血球の移動方向の分布を示すグラフ。
【図9】糖尿病の検体の赤血球の移動方向の分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記に詳細に説明する実施例の構成を最初に列記する。
(特徴1)撮影装置は、略同一範囲内の血管の画像を複数回撮影する。
(特徴2)特定装置は、撮影された複数の画像に基づいて、それらの画像に含まれる血管内のうちの複数個所における血液の移動速度と移動方向の少なくとも一方を特定する。
(特徴3)データ出力装置は、血液の各移動速度を速度範囲ごとに累計したデータと血液の各移動方向を方向範囲ごとに累計したデータの少なくとも一方を出力する。
【実施例】
【0010】
以下に、実施例の血流観測装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、血流観測装置10の概略構成を示している。図1に示すように、血流観測装置10は、ビデオ内視鏡20と、演算装置40と、記憶装置50と、モニタ60を備えている。
【実施例】
【0011】
ビデオ内視鏡20は、筐体筒22と、拡大光学系24と、CCDカメラ26と、光ファイバ群28と、光源30を有している。
筐体筒22は、内部に空間を有する筒状の筐体であり、その先端部は先端に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐筒形状に形成されている。
拡大光学系24は、円錐レンズ24aと、凸レンズ24bと、グリーンフィルタ24c等を備えている。円錐レンズ24aは、筐体筒22の先端部内に設置されている。凸レンズ24bとグリーンフィルタ24cは、筐体筒22の内部に設置されている。円錐レンズ24aと凸レンズ24bは、筐体筒22の先端の先の画像をCCD上に拡大して結像する。グリーンフィルタ24cは、円錐レンズ24aと凸レンズ24bから導入される光から緑色の光だけを透過させる。
CCDカメラ26は、筐体筒22の後端に設置されている。CCDカメラ26は、拡大光学系24によって結像された画像を各画素で輝度として検出する。これによって、画像が撮影される。CCDカメラ26は、演算装置40に接続されており、CCDカメラ26から演算装置40に画像(画像データ)が入力される。
光ファイバ群28は、筐体筒22の外壁内に設置されている。光ファイバ群28は、筐体筒22の周方向に配列されている複数の光ファイバによって構成されている。各光ファイバは筐体筒22の先端から基端に向かって伸びており、各光ファイバの先端は円錐レンズ24aの周囲において筐体筒22の先端に露出している。各光ファイバの基端には、光源30が接続されている。光源30は、各光ファイバ内に光を導入する。各光ファイバ内に導入された光は、光ファイバの先端から放出される。したがって、光源30を作動させることで、筐体筒22の先端の先に光が照射される。
【実施例】
【0012】
演算装置40は、CCDカメラ26と、記憶装置50と、モニタ60に接続されている。演算装置40には、CCDカメラ26から画像が入力される。演算装置40は、ユーザからの指令を受けて、データの演算、モニタ60への画像の出力等を実施する。
【実施例】
【0013】
次に、血流観測装置10によって、血流を観測する方法の一例について説明する。ヒトの左右の腎臓の内部には、それぞれ約100万個の腎小体が存在する。腎小体は、毛細血管の塊である糸球体を袋で包んだ構造を有している。以下に説明する例は、血流観測装置10によって、ヒトの腎臓内の糸球体における血流を測定した例である。
【実施例】
【0014】
(画像の撮影)
最初に、光源30とCCDカメラ26を作動させる。CCDカメラ26は、約33msecの間隔で画像を撮影し、撮影した画像を演算装置40に入力する。演算装置40は、入力される画像を逐次モニタ60に出力する。したがって、モニタ60には、CCDカメラ26で撮影されたリアルタイムの動画が映し出される。ユーザがビデオ内視鏡20の先端を腎臓に接触させると、光ファイバ群28の先端から照射された光によって腎臓の接触箇所近傍が照らされる。したがって、光ファイバ群28から照射された光の反射光が筐体筒22内の拡大光学系24に導入され、CCDカメラ26で接触箇所近傍の画像が撮影される。本実施例では、拡大光学系24の焦点深度が約60μmであるので、CCDカメラ26によって、焦点深度の厚さ範囲内の画像(血管等)が撮影される。ユーザは、モニタ60を見ながら撮影箇所(接触箇所)を移動させて、撮影対象となる糸球体を探すことができる。撮影対象の糸球体をモニタ60に表示した状態で所定操作を行うことにより、画像の取り込みが開始される。すなわち、演算装置40が、CCDカメラ26から入力される画像を記憶装置50に記憶させる。演算装置40は、連続する30フレームの画像(33msec間隔で連続して撮影した画像)を記憶装置50に記憶させる。
【実施例】
【0015】
画像を記憶装置50に記憶させたら、画像解析処理を実施する。ユーザが所定の操作を行うことで、演算装置40は画像解析処理を実施する。演算装置40は、図2に示すフローチャートにしたがって画像解析処理を実施する。
【実施例】
【0016】
(画像の前処理)
最初に、演算装置40は、撮影した画像を前処理する。
ステップS2では、演算装置40は、撮影した画像(画像データ)の位置補正を行う。すなわち、上述した糸球体の撮影は定点で行っているが、自発呼吸の影響等によって連続して撮影された各画像には位置ズレが生じる。したがって、フレーム毎に相関をとって、各画像の位置ズレを補正する。
ステップS4では、演算装置40は、撮影した画像に対して照度補正、コントラスト強調、及び、バックグラウンド除去処理を行う。すなわち、図3に示すように、糸球体の毛細血管70の内径は赤血球72の径と略等しい。血液は、赤血球72の間にプラズマポケット74(血漿成分等により構成される層)が形成された状態で糸球体の毛細血管70内を流れる。上述したように、CCDカメラ26にはグリーンフィルタ24c透過後の緑色の光が入射するので、緑色の補色である赤色の赤血球は黒色の像として撮影される。一方、プラズマポケット74は、白っぽい像として撮影される。ここでは、照度補正、コントラスト強調、及び、バックグラウンド除去処理を行って、赤血球72の像を明確化する。
【実施例】
【0017】
(関心領域の特定)
ステップS6では、演算装置40は、隣接するフレーム間において、画像の各画素の輝度値の差分を算出する。例えば、図4に示すように、第1フレームでは参照番号72aに示す位置に赤血球が写っており、第2フレームでは参照番号72bに示す位置に赤血球が写っている場合には、図4の参照番号80に示す領域(斜線領域)では第1フレームと第2フレームの間で各画素の輝度値の差分が大きくなり、その他の画素では輝度値の差分は略0となる。すなわち、輝度値の差分が大きい画素は、そのフレーム間の時間間隔において赤血球72が移動した箇所を示す。この処理は、各フレーム間で行う。次に、算出した各フレーム間における差分を画素毎に積算する。これによって、差分の積算値の大きさを示す画像を算出する。この画像では、差分の積算値が大きい画素が黒く示され、差分の積算値が小さい画素が白く示される。黒く表示される画素(すなわち、差分の積算値が大きい画素)は、撮影時間内に赤血球72が通過した軌跡(すなわち、血管)を示している。以下では、この赤血球の通過軌跡を関心領域という。関心領域は、近似により直線状の領域として特定される。
【実施例】
【0018】
(赤血球の移動速度及び移動方向の特定)
ステップS8では、演算装置40は、赤血球の移動速度を特定する。まず、演算装置40は、関心領域の画像を、各フレームの画像(ステップS4実施後の画像であって、ステップS6実施前の画像)から切り取りとる。そして、図5に示すように、切り取った各画像を関心領域と直交する方向にフレーム順(撮影時刻順)に並べた画像を作成する。以下では、図5の画像を時空間画像という。時空間画像の縦軸(関心領域に対して垂直な方向の軸)は時間を表し、横軸は関心領域内における位置を表す。演算装置40は、図5に示すように、時空間画像の各フレームの赤血球の像によって描かれる斜線75を特定する。斜線75の傾きは、赤血球の移動速度を表している。演算装置40は、斜線75の傾きから赤血球の移動速度を特定する。
ステップS10では、演算装置40は、関心領域の傾き(すなわち、赤血球の通過軌跡の傾き)とステップS8で算出された移動速度から、赤血球の移動方向を特定する。
ステップS8及びS10では、演算装置40は、全ての関心領域について、赤血球の移動方向と移動速度を特定する。
【実施例】
【0019】
(分布表示)
次に、演算装置40は、特定した各移動速度をその速度範囲ごとに分類し、各速度範囲に属する移動速度が検出された箇所の個数を示す分布データを作成する(ステップS12)。同様に、演算装置40は、算出した移動方向をその角度の範囲ごとに分類し、各角度範囲に属する移動方向が検出された箇所の個数を示す分布データを作成する(ステップS14)。そして、移動速度の度数分布グラフと移動方向の度数分布グラフをモニタ60に表示させる(ステップS16)。表示されたグラフによって、ユーザは、糸球体の毛細血管内の血液の移動速度と移動方向のばらつきを視覚的に把握することができる。
【実施例】
【0020】
図6、7は、血流観測装置10によって検出した血液の移動速度の分布を示している。図6は正常な検体の検出結果を示しており、図7は糖尿病の検体の検出結果を示している。図6、7に示すように、糖尿病の検体では、正常な検体よりも移動速度のばらつきが大きくなることが分かる。
【実施例】
【0021】
図8、9は、血流観測装置10によって検出した血液の移動方向の分布を示している。図8は正常検体の検出結果を示しており、図9は糖尿病の検体の検出結果を示している。図8、9に示すように、正常な検体では移動方向が略一様に分布しているのに対し、糖尿病の検体では移動方向が特定の方向に偏る傾向が見られる。
【実施例】
【0022】
以上に説明したように、正常検体と糖尿病の検体とでは、糸球体の毛細血管内の血液の移動速度及び移動方向の分布が異なる。したがって、糸球体の毛細血管内の血液の移動速度及び移動方向の分布を算出することで、糖尿病の進行程度を把握することができる。この血流観測装置によれば、糖尿病のより正確な診断が可能となる。
なお、上述した実施例では、糖尿病の診断のために糸球体の毛細血管内の血流を観測した。しかしながら、本発明の血流観測装置によれば、糖尿病以外の病態を診察するために、糸球体以外の血管内の血流を観測することもできる。
また、上述した実施例では、移動速度及び移動方向の分布を示す度数分布グラフを表示したが、これらの分布を識別できる値を表示してもよい。例えば、分散や標準偏差等のばらつきを示す値を表示してもよい。
【実施例】
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
10:血流観測装置
20:ビデオ内視鏡
22:筐体筒
24:拡大光学系
24a:円錐レンズ
24b:凸レンズ
24c:グリーンフィルタ
26:CCDカメラ
28:光ファイバ群
30:光源
40:演算装置
50:記憶装置
60:モニタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8