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明細書 :偏波可変フェーズドアレーアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3010208号 (P3010208)
公開番号 特開平11-234037 (P1999-234037A)
登録日 平成11年12月10日(1999.12.10)
発行日 平成12年2月21日(2000.2.21)
公開日 平成11年8月27日(1999.8.27)
発明の名称または考案の名称 偏波可変フェーズドアレーアンテナ
国際特許分類 H01Q 21/24      
H01Q 23/30      
H01Q 21/06      
FI H01Q 21/24
H01Q 23/30
H01Q 21/06
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願平10-046193 (P1998-046193)
出願日 平成10年2月12日(1998.2.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 電子情報通信学会、1997年通信ソサイエティ大会講演論文集1、B-1-78に発表
審査請求日 平成10年2月12日(1998.2.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391027413
【氏名又は名称】郵政省通信総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】田中 正人
審査官 【審査官】羽鳥 賢一
参考文献・文献 特開 昭62-225003(JP,A)
特開 平1-162401(JP,A)
特開 昭62-6502(JP,A)
電子通信学会技術研究報告(信学技報Vol.83 No.110),A・P83-57,「シーケンシャル円偏波アレーアンテナ」,手代木扶他4名,pp49-54,昭和58年8月19日
調査した分野 H01Q 21/24
H01Q 3/30
H01Q 21/06
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、給電位相を変えるだけで右旋円偏波と左旋円偏波のビーム走査可能なこと、および給電位相を変えるだけで右旋円偏波に対するNull(放射電界がゼロになるところ)と左旋円偏波に対するNullをビーム走査可能なことを特徴とする偏波可変フェーズドアレーアンテナ。

【請求項2】
複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、給電位相を変えるだけで所望の楕円偏波のビームを走査可能なことを特徴とする偏波可変フェーズドアレーアンテナ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は左右両円偏波を送受信でき、例えば左旋円偏波区域と右旋円偏波区域の間を移動しても両偏波に対応できるフェーズドアレーアンテナに関するものである。

【0002】

【従来の技術】左右両円偏波による周波数再利用システムで、左旋円偏波区域と右旋円偏波区域の間を移動した場合、両偏波に対応する2組のフェーズドアレーを必要とする。例えば、マルチビーム衛星による移動体通信システムで、左右両円偏波による周波数再利用が図られたシステムにおいて、左右両円偏波に対応したフェーズドアレーを移動体局に使用することでどのビーム領域においても通信可能となる。

【0003】
現に、日本と韓国の衛星放送は同じ周波数を使用しているが、アイソレーションを取るためにアンテナビームによる空間分割とともに逆旋円偏波が用いられている。日本と韓国の間を行き来する移動体局(船舶や航空機)で左右両円偏波に対応したフェーズドアレーを使用することにより、両国の衛星放送の受信が可能となる。

【0004】
また、リモートセンシング用のレーダで、左右両偏波を利用するポーラメトリックレーダがあるが、左旋円偏波用と右旋円偏波用のアンテナは別々のアンテナを用いている。

【0005】
ミリ波構内通信システムでは親局から子局に直接到達した電波を使用するが、親局と子局の間に人などが入り込んで直接波が遮断されたときに、壁などで反射された電波を使用することも考えられる。

【0006】
しかしながら、円偏波が壁などにぶつかって反射された場合、一般に逆旋の楕円偏波となり、楕円偏波率は壁の材質や電波の入射角に依存する。そして、壁などで反射された電波を利用しようとすると楕円偏波に適合するアンテナが必要になるが従来のアンテナではこれを容易に受信することができなかった。

【0007】

【発明が解決しようとする課題】すなわち、右旋円偏波の素子アンテナからなるフェーズドアレーと左旋円偏波の素子アンテナからなるフェーズドアレーの2つのフェーズドアレーを用いる方法では、フェーズドアレーが2台必要であることから、1台のフェーズドアレーによる場合に比べてコスト、重量、容積が約2倍になり、非効率である。

【0008】
また、左右両円偏波の素子アンテナを用いる場合、例えば、図10(a)に示すようなマイクロストリップアンテナでは、給電点1で給電すると右旋円偏波が、給電点2で給電すると左旋円偏波が得られる。また、図10(b)に示すようなマイクロストリップアンテナでは、給電点3で給電すると右旋円偏波が、給電点4で給電すると左旋円偏波が得られる。すなわち、図10(a)及び図10(b)のアンテナは、2つの給電点に対応して左右両円偏波の放射が可能である。

【0009】
これら図10(a)及び図10(b)のアンテナをアレーの素子アンテナとして使用してフェーズドアレーを構成しようとすると、通常は図11のように移相器のセットを1つ用意して、スイッチで給電点を切り替えることにより、左右両円偏波のビームを走査可能である。また、図10(b)の素子アンテナについては図11の構成以外に、図12に示すようにスイッチで給電点を切り替える代わりに移相器のセットを右旋円偏波用と左旋円偏波用の2セット用意することにより左右両円偏波のビームを走査可能である。

【0010】
ただし、図11の構成のフェーズドアレーではスイッチおよびスイッチ制御回路が必要となり、コストが高くなる問題がある。また、図12の構成では移相器のセットが2つ必要であり、コスト、重量、容量の面で問題があった。

【0011】
また、楕円偏波ビームを走査しようとした場合のフェーズアレーアンテナとしては、図13に示す2点給電のマイクロストリップアンテナを用いて構成される図14のようなフェーズドアレーアンテナが考えられる。このフェーズドアレーでは、ビーム走査用の移相器以外に素子アンテナの偏波を変化させるための移相器が各素子アンテナに取り付けてあり、これにより素子アンテナ自体の偏波を可変させることができ、楕円偏波のビームを走査可能である。

【0012】
ただし、図14の構成のフェーズドアレーではビーム走査用の移相器以外に素子アンテナ用移相器が必要であり、また、2点給電マイクロストリップアンテナであることから2電力分配器が各素子アンテナに必要となり、コストが高くなる問題がある。

【0013】

【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の欠点に鑑み提案されたもので、フェーズドアレーは通常、素子アンテナと移相器と合成器から構成されているが、これ以外にスイッチ等の能動デバイスやもう1セットの移相器・合成器を付加することなく、左旋円偏波と右旋円偏波の両方のビームを走査できるフェーズドアレーアンテナを提供するものである。

【0014】
また、このフェーズドアレーアンテナは左旋円偏波に対するNull(放射電界がゼロになるところ)、右旋円偏波に対するNullも走査できる。さらに、所望の楕円偏波率や楕円の傾き角に設定でき、設定した楕円偏波ビームを走査可能であるものを提供するものである。

【0015】
具体的には、複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、給電位相を変えるだけで右旋円偏波と左旋円偏波のビーム走査可能なこと、および給電位相を変えるだけで右旋円偏波に対するNull(放射電界がゼロになるところ)と左旋円偏波に対するNullをビーム走査可能なことを特徴とする偏波可変フェーズドアレーアンテナを提供する。

【0016】
また、複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、給電位相を変えるだけで所望の楕円偏波のビームを走査可能なことを特徴とする偏波可変フェーズドアレーアンテナを提供する。

【0017】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、直線偏波の素子アンテナを用いたアレーアンテナで各素子アンテナをボアサイト軸の回りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数、nは素子番号、pは1≦p≦N-1の整数)を与えて配置し、各素子アンテナに移相器を取り付けたフェーズドアレーが本発明の実施形態における基本構成である。なお、直線偏波の素子アンテナとしては図2のマイクロストリップパッチアンテナ等がある。

【0018】
左旋・右旋円偏波切替ビーム走査および左旋・右旋円偏波に対するNullの走査においては、上記したフェーズドアレーの各素子アンテナを図3のXY平面上に配置し、左旋・右旋円偏波を切り替えて(θ0 ,φ0 )方向にビーム走査するには、各素子アンテナに与える位相Un (θ0 ,φ0 )を下記の数式1とする。

【0019】

【数1】
JP0003010208B2_000002t.gif【0020】なお、数式1において、変数は下記のように定義される。
n :素子番号
n :素子アンテナの位置を示す位置ベクトル
r(θ0 ,φ0 ):ビーム走査方向(θ0 ,φ0 )の単位ベクトル
0 :自由空間中の波数
この数式1の第1項はビーム走査用の位相である。第2項は円偏波用の位相であり、数式2で表される。

【0021】

【数2】
JP0003010208B2_000003t.gif【0022】なお、数式2において、変数は下記のように定義される。
p:1≦p≦N-1の整数
N:アレー素子数
n:素子アンテナの番号
数式2の位相と素子アンテナのボアサイト軸回りの回転角p(n-1)π/Nラジアンにより、円偏波が得られる。ここでmは円偏波の回転方向を決める係数であり、m=0のとき左旋円偏波、m=1のとき右旋円偏波となる。

【0023】
フェーズドアレーでは、数式1で表される位相は移相器により与えられることから、mの制御は容易に可能であり、このことから、右旋、左旋の両方の円偏波のビームを走査できる。また、逆に考えると左旋・右旋円偏波に対するNullを走査できるということになる。

【0024】
偏波可変ビーム走査においては、図3の平面フェーズドアレーを偏波状態が可変なフェーズドアレーとして動作をさせるために各素子アンテナへ与えるの位相Vn (θ0 ,φ0 )は数式3で表される。

【0025】

【数3】
JP0003010208B2_000004t.gif【0026】なお、数式3においてnは素子番号をあらわす。この数式3の第1項はビーム走査用の位相である。第2項は数式2で表される円偏波用の位相である。また、第3項のΔΨn は合成電界を楕円偏波にするための位相であり、ΔΨn の与えかたにより楕円偏波率と楕円の傾き角(tiltangle)が決まる。数式3で表される位相Vn (θ0 ,φ0 )は各素子アンテナに接続されている移相器により実現可能である。

【0027】

【実施例】本発明の第1実施例を以下に示す。左旋・右旋円偏波切替ビーム走査および左旋・右旋円偏波に対するNullの走査の動作原理を図4に示す4素子アレーの場合で説明する。

【0028】
まず、はじめに、アレーのボアサイト方向での動作を考える。各素子アンテナをボアサイト軸の回りに(n-1)π/4ラジアンの回転(nは素子番号、p=1)を与えて配置された後の各素子アンテナの偏波は、図5(1)のようになる。各素子アンテナは直線偏波である。直線偏波は、図5(2)のように右旋円偏波成分と左旋円偏波成分に分解できる。アレーのボアサイト方向に右旋円偏波のビームを走査するには、各素子アンテナに数式4の位相をあたえる。

【0029】

【数4】
JP0003010208B2_000005t.gif【0030】この数式4は数式2でm=1の場合である。なお、数式4でnは素子番号を表す。この場合、図6のように、右旋円偏波成分に対しては各素子アンテナの電界ベクトルが同位相で合成されるが、左旋円偏波成分に対しては各素子アンテナの電界ベクトルが合成されると零になるようにはたらく。したがって、アレー全体としては右旋円偏波が得られ、左旋円偏波成分は零となる。逆に、アレーのボアサイト方向に左旋円偏波のビームを走査するには、各素子アンテナに数式5の位相をあたえる。

【0031】

【数5】
JP0003010208B2_000006t.gif【0032】この数式5は数式2でm=0の場合である。なお、数式5でnは素子番号をあらわす。この場合、図7のように、左旋成分は同位相で合成されるが、右旋成分は零となる。フェーズドアレーにおいては、位相の制御は移相器でおこなえることから、右旋円偏波用の給電位相と左旋円偏波用の給電位相の切り替えは容易である。

【0033】
次に、ビームをある方向に走査した場合を考える。フェーズドアレーでビームを走査した方向(θ0 ,φ0 )での第n番目の素子アンテナの電界は数式6で表される。

【0034】

【数6】
JP0003010208B2_000007t.gif【0035】ここで、Ee (θ0 )、Eh (θ0 )はそれぞれθ=θ0 方向でのE面電界およびH面電界、eθ、eφはそれぞれθ方向、φ方向の単位ベクトル、jは虚数単位である。数式6の第1項は左旋楕円偏波、第2項は右旋楕円偏波を表している。アレーのボアサイト方向すなわちθ0 =0方向ではEe (0)=Eh (0)となることから数式6の第1項は左旋円偏波、第2項は右旋円偏波となり、直線偏波が左旋円偏波と右旋円偏波に分解できる。

【0036】
一般にθがボアサイト方向から離れるとEe (θ0 )とEh (θ0 )は一致しなくなるが、よく用いられるマイクロストリップ円形パッチアンテナ等ではかなり広い範囲までほぼ一致するとみなせる。このため、ビームをある方向に走査したときの動作は、上記で検討したアレーのボアサイト方向での動作とほとんど同じことになり、左旋・右旋円偏波を切替てビーム走査できることになる。また、左旋・右旋円偏波に対するNullビームを走査できることになる。

【0037】
以下に本発明の第2実施例であるビーム走査した方向での偏波を所望の楕円偏波に設定できることを説明する。第1実施例の場合と同じで、素子アンテナとしてマイクロストリップ円形パッチアンテナ等を用い、Ee (θ0 )とEh (θ0)がかなり広い範囲までほぼ一致するとみなせる場合について考える。図1のフェーズドアレーで、(θ0 ,φ0 )方向にビーム走査するように数式3で表される位相で給電したときの(θ0 ,φ0 )方向での楕円偏波率(軸比)ARと傾き角τは数式7、数式8で表され、数式3の中の偏波可変用位相ΔΨn に依存する。

【0038】

【数7】
JP0003010208B2_000008t.gif【0039】
【数8】
JP0003010208B2_000009t.gif【0040】ここで、Θn は数式2で表される円偏波用の位相であり各素子アンテナ毎に固定である。以上により、各素子アンテナに与える偏波可変用位相ΔΨn を適当に選ぶことにより、楕円偏波率ARと傾き角τを変えることができる。

【0041】
ここで、楕円偏波率ARと傾き角τは偏波可変用位相ΔΨn の関数であることから、偏波可変用位相ΔΨn に依存して同時に変化するように見え、楕円偏波率ARと傾き角τを独立に変化させることができないように見えるが、実は偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせの選び方により独立に変化させることが可能である。例えば、図4に示す4素子アレーにおいて偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせを、次の2つのケースとした場合の楕円偏波率ARと傾き角τを比べてみる。この場合の円偏波用位相Θn は数式2でm=1とし、右旋円偏波にしてある。

【0042】
ケース1

【0043】

【数9】
JP0003010208B2_000010t.gif【0044】ケース2

【0045】

【数10】
JP0003010208B2_000011t.gif【0046】ケース1の場合の偏波状態は図8のようになる。このときの楕円偏波率AR1と傾き角τ1は、数式11となる。

【0047】

【数11】
JP0003010208B2_000012t.gif【0048】ケース2の場合の偏波状態は図9のようになる。このときの楕円偏波率AR2と傾き角τ2は数式12となり、ケース1と比べると、楕円偏波率は等しいが、傾き角が異なる。

【0049】

【数12】
JP0003010208B2_000013t.gif【0050】したがって、偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせを選ぶことにより、楕円偏波率ARと傾き角τを独立に変えることができる。

【0051】
以上、本発明を図面に記載された実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記した実施形態だけではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。

【0052】

【発明の効果】以上要するに、本発明によれば、下記に示すような多大な効果を奏する。フェーズドアレーにスイッチ等の能動デバイスやもう1セットの移相器・合成器を付加することなく、1つのフェーズドアレーで給電位相量を変えるだけで左旋円偏波と右旋円偏波の両方のビームを走査できる。また、給電位相を変えるだけで右旋円偏波に対するNullと左旋円偏波に対するNullをビーム走査できる。

【0053】
フェーズドアレーに能動デバイス等を付加することなく、給電位相量を変えるだけでビーム走査した方向の偏波を所望の楕円偏波にできる。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図13】
2
【図2】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図14】
12
【図12】
13