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明細書 :偏波適応フェーズドアレーアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3084398号 (P3084398)
公開番号 特開平11-234038 (P1999-234038A)
登録日 平成12年7月7日(2000.7.7)
発行日 平成12年9月4日(2000.9.4)
公開日 平成11年8月27日(1999.8.27)
発明の名称または考案の名称 偏波適応フェーズドアレーアンテナ
国際特許分類 H01Q 21/24      
H01Q 23/24      
H01Q 23/30      
FI H01Q 21/24
H01Q 23/24
H01Q 23/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願平10-046241 (P1998-046241)
出願日 平成10年2月12日(1998.2.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1997年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1、社団法人電子情報通信学会発行(1997年8月13日)、B-1-78偏波切替シーケンシャルフェーズドアレー、田中正人(通信総研)
審査請求日 平成10年2月12日(1998.2.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391027413
【氏名又は名称】郵政省通信総合研究所長
発明者または考案者 【氏名】田中 正人
審査官 【審査官】浜野 友茂
調査した分野 H01Q 3/24 - 3/42
H01Q 21/00 - 25/04
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、各素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を取り出して検出し、上記各素子アンテナのうちで到来楕円偏波に対して回転方向が異なる3方向以上の素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)に基づいて、到来電波の楕円偏波率と楕円の傾き角を求め、アレーアンテナの合成波の偏波を左旋円偏波と右旋円偏波に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)の大きさを比較することに基づいて、楕円偏波の回転方向を求めることにより、位相の測定を行わずに到来電波の偏波状態を同定することを特徴とするフェーズドアレーアンテナ。

【請求項2】
複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、各素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を取り出して検出し、上記各素子アンテナのうちで到来楕円偏波に対して回転方向が異なる3方向以上の素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)に基づいて、到来電波の楕円偏波率と楕円の傾き角を求め、アレーアンテナの合成波の偏波を左旋円偏波と右旋円偏波に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)の大きさを比較することに基づいて、楕円偏波の回転方向を求めることにより、位相の測定を行わずに到来電波の偏波状態を同定し、その偏波状態に適合した偏波のアンテナビームを形成することを特徴とする偏波適応フェーズドアレーアンテナ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は偏波が未知の到来電波の偏波状態を同定でき、また、同定した偏波に合わせて偏波状態を可変し、その楕円偏波ビームを操作できるフェーズドアレーアンテナに関するものである。

【0002】

【従来の技術】一般に、偏波が未知の到来電波に対して偏波状態を同定し、同定した偏波に合わせて偏波状態を可変にできるアンテナを構成することは困難である。例えば、ミリ波構内通信用アンテナにおいて、ミリ波構内通信では親局から子局に直接到達した電波を使用するが、親局と子局の間に人などが入り込んで直接波が遮断されたときに、壁などで反射された電波を使用することも考えられる。

【0003】
しかしながら、円偏波が壁などにぶつかって反射された場合、一般に逆旋の楕円偏波となり、楕円偏波率は壁の材質や電波の入射角に依存する。そして、壁などで反射された電波を利用しようとすると不確定な偏波に適合するアンテナが必要になるが従来のアンテナではこれを容易に受信することができなかった。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】しかし、到来電波の偏波状態を同定するためには、楕円偏波率、楕円の傾き角(Tilte angle )、偏波の回転方向の3つのパラメータが必要である。一般に、到来電波の電界の振幅と位相を直交する2方向で測定することにより上記の楕円偏波の3つのパラメータが分かるが、位相を正確に測定するには高価な装置が必要である。

【0005】
また、同定した偏波に合わせて楕円偏波ビームを走査しようとした場合にフェーズドアレーアンテナとしては、図11に示す2点給電のマイクロストリップアンテナを用いて構成される図12のようなフェーズドアレーアンテナが考えられる。このフェーズドアレーでは、ビーム走査用の移相器以外に素子アンテナの偏波を変化させるための移相器が各素子アンテナに取付けてあり、これにより素子アンテナ自体の偏波を可変させることができ、楕円偏波のビームを走査可能である。

【0006】
ただし、図12の構成のフェーズドアレーアンテナではビーム走査用の移相器以外に素子アンテナ用移相器が必要であり、また、2点給電マイクロストリップアンテナであることから2電力分配器が各素子アンテナに必要となり、コストが高くなる問題がある。

【0007】

【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の欠点に鑑み提案されたもので、直線偏波の素子アンテナからなるフェーズドアレーであって、各素子アンテナから受信電力(または受信電圧の振幅値)およびフェーズドアレーアンテナで円偏波の回転方向を左旋と右旋に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を検出することにより、位相の測定を行うことなく到来電波の偏波状態を同定できるフェーズドアレーアンテナを提供するものである。

【0008】
また、同定した偏波状態に適合した偏波のビームを走査可能であるフェーズドアレーアンテナを提供するものである。

【0009】
なお、このフェーズドアレーは、ビーム走査した方向の偏波を左旋円偏波又は右旋円偏波に切り替えるのに、フェーズドアレーにスイッチ等の能動デバイスを付加することなく、給電位相量を変えるだけで設定できる。また、給電位相量を変えるだけでビーム走査した方向の偏波を所望の楕円偏波に設定できる。

【0010】
具体的には、複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、各素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を取り出して検出し、上記各素子アンテナのうちで到来楕円偏波に対して回転方向が異なる3方向以上の素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)に基づいて、到来電波の楕円偏波率と楕円の傾き角を求め、アレーアンテナの合成波の偏波を左旋円偏波と右旋円偏波に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)の大きさを比較することに基づいて、楕円偏波の回転方向を求めることにより、位相の測定を行わずに到来電波の偏波状態を同定することを特徴とするフェーズドアレーアンテナを提供する。

【0011】
更に、複数の直線偏波の素子アンテナからなるアレーアンテナであって、上記各素子アンテナをボアサイト軸の周りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数,nは素子番号,Pは1≦P≦N-1の整数)を与えて配置し、更に上記各素子アンテナはそれぞれ移相器を介して電力分配器と結合すると共に、各素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を取り出して検出し、上記各素子アンテナのうちで到来楕円偏波に対して回転方向が異なる3方向以上の素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)に基づいて、到来電波の楕円偏波率と楕円の傾き角を求め、アレーアンテナの合成波の偏波を左旋円偏波と右旋円偏波に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)の大きさを比較することに基づいて、楕円偏波の回転方向を求めることにより、位相の測定を行わずに到来電波の偏波状態を同定し、その偏波状態に適合した偏波のアンテナビームを形成することを特徴とする偏波適応フェーズドアレーアンテナを提供する。

【0012】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、直線偏波の素子アンテナを用いたアレーアンテナで各素子アンテナをボアサイト軸の回りにp(n-1)π/Nラジアンの回転(Nは全素子数、nは素子番号、pは1≦p≦N-1の整数)を与えて配置し、各素子アンテナに移相器を取り付けると共に、さらに各素子アンテナの受信電力(電圧の振幅値)を取り出せるフェーズドアレーが本発明の実施形態における基本構成である。なお、直線偏波の素子アンテナとしては、図2のマイクロストリップアンテナ等がある。

【0013】
未知の偏波を同定するには、楕円偏波率(軸比)、傾き角、偏波の回転方向がわかればよい。そこで、各素子アンテナの出力のうち最低3素子の受信電力(又は受信電圧の振幅値)をモニターすることにより楕円偏波率(軸比)と傾き角がわかる。

【0014】
次に、本アレーアンテナを円偏波切替アンテナとして動作させることにより偏波の回転方向がわかる。すなわち右旋偏波動作させたときのアレーの受信電力(又は受信電圧の振幅値)と左旋偏波動作させたときのアレーの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を比較したときに値が大きい方の偏波回転がその楕円偏波の回転方向となる。また、右旋偏波の受信電力(又は受信電圧の振幅値)と左旋偏波の受信電力(又は受信電圧の振幅値)を用いれば楕円偏波率(軸比)も求めることができる。

【0015】
左旋・右旋円偏波を切り替えるには、次のようにする。上記したフェーズドアレーの各素子アンテナを図3のXY平面上に配置し、(θ0 ,φ0 )方向にビーム走査した方向の偏波を左旋・右旋円偏波に切り替えるには、各素子アンテナに与える位相Un (θ0 ,φ0 )を下記の数式1とする。

【0016】

【数1】
JP0003084398B2_000002t.gif【0017】なお、数式1において、変数は下記のように定義される。
n:素子番号
n :素子アンテナの位置を示す位置ベクトル
r(θ0 ,φ0 ):ビーム走査方向(θ0 ,φ0 )の単位ベクトル
0 :自由空間中の波数
この数式1の第1項はビーム走査用の位相である。第2項は円偏波用の位相であり、数式2で表される。

【0018】

【数2】
JP0003084398B2_000003t.gif【0019】なお、数式2において、変数は下記のように定義される。
p:1≦p≦N-1の整数
N:アレー素子数
n:素子アンテナの番号
数式2の位相と素子アンテナのボアサイト軸回りの回転角p(n-1)π/Nラジアンにより、円偏波が得られる。ここでmは円偏波の回転方向を決める係数であり、m=0のとき左旋円偏波、m=1のとき右旋円偏波となる。

【0020】
フェーズドアレーでは、数式1で表される位相は移相器により与えられることから、mの制御は容易に可能であり、このことから、ビーム走査した方向の偏波を右旋・左旋円偏波に切り替えることが可能である。

【0021】
偏波適応ビーム走査においては、到来電波の偏波状態を同定し、その偏波状態に適合した偏波のアンテナビームを形成する。

【0022】
偏波状態が可変なフェーズドアレーとして動作をさせるためには図3の平面フェーズドアレーの各素子アンテナへ数式3で表される位相Vn (θ0 ,φ0 )を与える。

【0023】

【数3】
JP0003084398B2_000004t.gif【0024】なお、数式3においてnは素子番号をあらわす。この数式3の第1項はビーム走査用の位相である。第2項は数式2で表される円偏波用の位相である。また、第3項のΔΨn は合成電界を楕円偏波にするための位相であり、ΔΨn の与えかたにより楕円偏波率と楕円の傾き角(tiltangle)が決まる。数式3で表される位相Vn (θ0 ,φ0 )は各素子アンテナに接続されている移相器により実現可能である。

【0025】

【実施例】本発明の第1実施例を以下に示す。到来電波の偏波状態を同定する機能について、図4に示す4素子アレーで説明する。

【0026】
簡単のためにアレーアンテナの正面方向から未知の偏波を持つ電波について偏波同定を行うこととする。また、電波の形式はC.W.とする。通信波を扱う場合はCMA方式のアダプティブアレーと同様に出力電圧の包絡線が一定な位相変調や周波数変調の信号の包絡線をモニターすれば同等の性能となり得る。

【0027】
図5に示すように、楕円偏波の異なる3方向の電圧の振幅が与えられたときの楕円偏波率と傾き角について考える。簡単のために、3方向のうち、1つの方向をS軸方向、もう1つの方向をT軸方向とする。残りの方向は、S軸からξだけ回転した方向とする。そして、各3方向の電圧の振幅値をそれぞれa,b,cとすると楕円偏波率ARは数式4で与えらる。

【0028】

【数4】
JP0003084398B2_000005t.gif【0029】また、傾き角τは数式5で与えられる。

【0030】

【数5】
JP0003084398B2_000006t.gif【0031】ここで、

【0032】

【数6】
JP0003084398B2_000007t.gif【0033】初めに、図4の4素子アレーが図3のXY平面上に配列されており、この4素子アレーのボアサイト方向(Z軸方向)から図5の楕円偏波が到来したとする。簡単のために、4素子アレーのうち素子番号1と素子番号3の素子アンテナの直線偏波の方向が各々図3のX軸とY軸に一致しており、かつ、各々図5の楕円偏波のS軸とT軸と一致しているとする。素子番号3の素子アンテナの直線偏波の方向は図5の楕円偏波のξ=π/4の方向となる。素子番号1、2、3の各素子アンテナの受信電圧の振幅値a1 、b1 、c1 とすると、qは数式7で与えられる。

【0034】

【数7】
JP0003084398B2_000008t.gif【0035】このqとa=a1 、b=b1 、c=c1 を数式4と数式5に代入することにより、楕円偏波率と傾き角が求まる。

【0036】
次に、図4の4素子アレーのボアサイト方向から離れた方向から楕円偏波が到来した場合について考える。ただし、到来方向は未知であるとする。

【0037】
一般に、θがボアサイト方向から離れると素子アンテナのE面パターンとH面パターンは一致しなくなるが、よく用いられるマイクロストリップ円形パッチアンテナ等ではかなり広い範囲までほぼ一致するとみなせる。このため、広い範囲のθに対して、素子アンテナはアジマス方向(φ方向)にわたってほぼ均一な受信利得があるとみなせる。

【0038】
簡単のため、(θ、0)方向から図5の楕円偏波が到来したとする。素子アンテナがアジマス方向(φ方向)にわたって均一な受信利得がある場合、図3のXY平面上の素子アンテナが受信した偏波は、図5の楕円偏波をXY平面に投影した楕円偏波と見かけ上等あり、したがって、素子番号1、2、3の各素子アンテナの受信電圧の振幅値a、b、cと図5の楕円偏波のa、b、cとの関係は数式8で表される。

【0039】

【数8】
JP0003084398B2_000009t.gif【0040】数式8を数式4と数式5に代入することにより、未知の電波が斜め方向から到来する場合でも、到来方向が既知の場合に、素子アンテナの受信電圧の振幅値を検出することにより偏波状態の固定ができる。

【0041】
次に図4の4素子アレーを円偏波切替アンテナとして動作させることにより偏波の回転方向がわかる。すなわち右旋偏波動作させたときのアレーの受信電力(又は受信電圧の振幅値)と左旋偏波動作させたときのアレーの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を比較したときに値が大きい方の偏波回転がその楕円偏波の回転方向となる。以上により、到来電波の楕円偏波率、傾き角、偏波の回転方向が特定できる。

【0042】
以下、図4の素子アレーを円偏波切替アンテナとして動作させる原理について説明する。

【0043】
まず、はじめに、アレーのボアサイト方向での動作を考える。各素子アンテナをボアサイト軸の回りに(n-1)π/4ラジアンの回転(nは素子番号、p=1)を与えて配置された後の各素子アンテナの偏波は、図6(1)のようになる。各素子アンテナは直線偏波である。直線偏波は、図6(2)のように右旋円偏波成分と左旋円偏波成分に分解できる。アレーのボアサイト方向に右旋円偏波のビームを走査するには、各素子アンテナに数式9の位相をあたえる。

【0044】

【数9】
JP0003084398B2_000010t.gif【0045】この数式9は、数式2でm=1の場合である。なお、数式9でnは素子番号をあらわす。この場合、図7のように、右旋円偏波成分に対しては各素子アンテナの電界ベクトルが同位相で合成されるが、左旋円偏波成分に対しては各素子アンテナの電界ベクトルが合成されると零になるようにはたらく。したがって、アレー全体としては右旋円偏波が得られ、左旋円偏波成分は零となる。逆に、アレーのボアサイト方向に左旋円偏波のビームを走査するには、各素子アンテナに数式10の位相をあたえる。

【0046】

【数10】
JP0003084398B2_000011t.gif【0047】この数式10は、数式2でm=0の場合である。なお、数式10でnは素子番号をあらわす。この場合、図8のように、左旋成分は同位相で合成されるが、右旋成分は零となる。フェーズドアレーにおいては、位相の制御は移相器でおこなえることから、右旋円偏波用の給電位相と左旋円偏波用の給電位相の切り替えは容易である。

【0048】
次に、ビームをある方向に走査した場合を考える。フェーズドアレーでビームを走査した方向(θ0 ,φ0 )での第n番目の素子アンテナの電界は数式11で表される。

【0049】

【数11】
JP0003084398B2_000012t.gif【0050】ここで、Ee (θ0 )、Eh (θ0 )はそれぞれθ=θ0 方向でのE面電界およびH面電界、eθ 、eφ はそれぞれθ方向、φ方向の単位ベクトル、jは虚数単位である。数式11の第1項は左旋楕円偏波、第2項は右旋楕円偏波を表している。アレーのボアサイト方向すなわちθ0 =0方向ではEe (0)=Eh (0)となることから数式11の第1項は左旋円偏波、第2項は右旋円偏波となり、直線偏波が左旋円偏波と右旋円偏波に分解できる。

【0051】
一般にθがボアサイト方向から離れるとEe (θ0 )とEh (θ0 )は一致しなくなるが、よく用いられるマイクロストリップ円形パッチアンテナ等ではかなり広い範囲までほぼ一致するとみなせる。このため、ビームをある方向に走査したときの動作は、上記で検討したアレーのボアサイト方向での動作とほとんど同じことになり、左旋・右旋円偏波を切替てビーム走査できることになる。

【0052】
本発明の第2実施例を以下に示す。到来電波の偏波状態を同定し、その偏波状態に適合した偏波のアンテナビームを形成する機能について説明する。

【0053】
まず、第1実施例のようにして到来電波の偏波状態を同定し、この情報をもとに偏波の回転方向に関係するmを決め、後述するように、数式12、数式13で与えられる軸比ARと傾き角τが、到来電波の偏波状態を同定により求めた軸比と傾き角に一致するように各素子アンテナに与える偏波可変用位相量ΔΨn を決める。この場合、ある軸比とある傾き角を実現できるΔΨn の組み合わせは幾通りも存在することから、ΔΨn の求め方は、たとえば、デジタル移相器を用いている場合、あらかじめすべての組み合わせのテーブルを作成しておき、それを引用する。

【0054】
以下に、ビーム走査した方向での偏波を所望の楕円偏波に設定できることを説明する。第1実施例の場合と同じで、素子アンテナとしてマイクロストリップ円形パッチアンテナ等を用い、Ee (θ0 )とEh (θ0 )がかなり広い範囲までほぼ一致するとみなせる場合について考える。図1のフェーズドアレーで、(θ0 ,φ0 )方向にビーム走査するように数式3で表される位相で給電したときの(θ0 ,φ0 )方向での楕円偏波率(軸比)ARと傾き角τは数式12、数式13で表され、数式3の中の偏波可変用位相ΔΨn に依存する。

【0055】

【数12】
JP0003084398B2_000013t.gif【0056】
【数13】
JP0003084398B2_000014t.gif【0057】ここで、Θn は数式2で表される円偏波用の位相であり各素子アンテナ毎に固定である。以上により、各素子アンテナに与える偏波可変用位相ΔΨn を適当に選ぶことにより、楕円偏波率ARと傾き角τを変えることができる。

【0058】
ここで、楕円偏波率ARと傾き角τは偏波可変用位相ΔΨn の関数であることから、偏波可変用位相ΔΨn に依存して同時に変化するように見え、楕円偏波率ARと傾き角τを独立に変化させることができないように見えるが、実は偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせの選び方により独立に変化させることが可能である。例えば、図4に示す4素子アレーにおいて偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせを、次の2つのケースとした場合の楕円偏波率ARと傾き角τを比べてみる。この場合の円偏波用位相Θn は数式2でm=1とし、右旋円偏波にしてある。

【0059】
ケース1

【0060】

【数14】
JP0003084398B2_000015t.gif【0061】ケース2

【0062】

【数15】
JP0003084398B2_000016t.gif【0063】ケース1の場合の偏波状態は図9のようになる。このときの楕円偏波率AR1と傾き角τ1は、数式16となる。

【0064】

【数16】
JP0003084398B2_000017t.gif【0065】ケース2の場合の偏波状態は図10のようになる。このときの楕円偏波率AR2と傾き角τ2は数式17となり、ケース1と比べると、楕円偏波率は等しいが、傾き角が異なる。

【0066】

【数17】
JP0003084398B2_000018t.gif【0067】したがって、偏波可変用位相ΔΨn の組み合わせを選ぶことにより、楕円偏波率ARと傾き角τを独立に変えることができる。

【0068】
以上、本発明を図面に記載された実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記した実施形態だけではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。

【0069】

【発明の効果】以上要するに、本発明によれば、下記に示すような多大な効果を奏する。直線偏波の素子アンテナからなるフェーズドアレーであって、各素子アンテナの受信電力(又は受信電圧の振幅値)のうち最低3素子の受信電力(又は受信電圧の振幅値)およびフェーズドアレーアンテナで円偏波の回転方向を左旋と右旋に切り替えたときの受信電力(又は受信電圧の振幅値)を検出することにより、位相の測定を行うことなく到来電波の偏波状態を同定できる。

【0070】
また、同定した偏波状態に適合した偏波のビームを走査可能である。

【0071】
なお、このフェーズドアレーは、ビーム走査した方向の偏波を左旋円偏波または右旋円偏波に切り替えるのに、フェーズドアレーにスイッチ等の能動デバイスを付加することなく、給電位相量を変えるだけで設定できる。また、給電位相量を変えるだけでビーム走査した方向の偏波を所望の楕円偏波に設定できる。
図面
【図2】
0
【図3】
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【図4】
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【図5】
3
【図11】
4
【図1】
5
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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